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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1280559 |
審判番号 | 不服2013-2898 |
総通号数 | 168 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-02-14 |
確定日 | 2013-10-16 |
事件の表示 | 特願2009-191614「基板、特に半導体ウェハの加工」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月21日出願公開、特開2010- 16392〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2002年10月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年10月1日、アイルランド、2002年4月26日、アイルランド)を国際出願日とする特願2003-532249号に係る出願の一部を、平成21年8月21日に新たな出願としたものであって、その主な手続の経緯は、以下のとおりである。 平成21年 9月16日 手続補正書提出 平成24年 1月10日 拒絶理由通知 平成24年 4月16日 意見書及び手続補正書提出 平成24年10月12日 拒絶査定 平成25年 2月14日 審判請求 2.本願発明 本願の請求項1ないし19に係る発明は、平成24年4月16日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)の記載は以下のとおりである。 「 【請求項1】 半導体ウェハに、メタライズされたビアを形成する方法であって、 (a)可視または紫外放射を発するレーザで、前記半導体ウェハの第1の面内に、前記半導体ウェハの全深さには満たない、前記第1の面から所定の深さのブラインドビアの加工が、レーザ加工前、レーザ加工中及びレーザ加工後の少なくともいずれかにおいて、反応ガス、及び、パッシブガスの少なくとも一方を用いて、非雰囲気制御ガス環境(non-ambient controlled gas)で行われるステップと、 (b)前記ブラインドビアに金属を充填するステップと、 (c)続いて、ラッピング及び研磨による機械的除去、化学的エッチング、プラズマエッチングおよびレーザアブレーションのうちの一つを用いて、前記第1の面に対向する、前記半導体ウェハの第2の面から、材料を、前記第1の面からの深さが所定のところまで除去し、前記ビアの金属の部分を前記第2の面に露出させるステップと、を有し、 パッシブガスは、アルゴン及びヘリウムの一方を用い、 反応ガスは、クロロフルオロカーボン基ガス及びハロカーボン基ガスの少なくとも一方を用いる 方法。」 3.刊行物の記載事項及び刊行物記載の発明 原査定において通知した平成24年1月10日付け拒絶理由通知書で引用した、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2001-85363号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の技術的事項及び発明が記載されている。 (1)段落【0001】 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、半導体装置の製造方法に関し、詳しくは各半導体装置エリア毎に配線パターン等の形成および組立ての実施されたウェハを分割することにより、個々の半導体装置を製造する方法に関するものである。」 (2)段落【0017】ないし【0020】 「【0017】・・・(中略)・・・積層型半導体装置を製造するには、先ず、上述した半導体装置10の製造方法と同じく、ウェハ1’における各半導体装置エリア1A’に、それぞれ配線パターン(図示せず)および電極パッド2’(図7参照)を形成する。 【0018】この後、図1(a)および図7に示す如く、ウェハ1’において電極パッド2’が形成されている面(デバイス面)1a’側から、ウェハ1’における各半導体装置エリア1A’に、レーザ加工、エッチング、スタンピング、ドリル加工等の加工方法により、所定深さのスルーホール用の孔(盲孔)1h’を形成する。 【0019】・・・(中略)・・・ 【0020】次いで、ウェハ1’に形成した各孔1h’に、導電性樹脂、ワイヤー、クリームメタル等の導電体1m’を充填する。なお、上記各孔1h’に導電体1m’を充填する方法としては、ボンダーによるワイヤー突き刺し、導電性樹脂の塗布、スピンコート、印刷、スパッタリング等を採用し得る。」 (3)段落【0024】ないし【0026】 「【0024】上述した如く、ウェハ1’に支持体Hを取り付けた後、前記ウェハ1’において電極パッド2’が形成されていない面1b’を、図6(e)に示す如くツールTを用いて所定寸法、詳しくはウェハ1’の肉厚が半導体チップ1c’の厚さになるまで研削/研磨(バックグラインド)する。 【0025】・・・(中略)・・・ 【0026】また、上述の如くウェハ1’に形成された孔1hs’は、半導体チップ1c’の肉厚と同寸法以上の深さに形成されているため、ウェハ1’の面1b’をツールTによって所定寸法だけ研削/研磨することで、図1(e)に示す如く孔1h’に充填された導電体1m’がウェハ1’の面1b’から露出することとなる。」 (4)図6の図示 図6(a)には、孔1h’がウェハ1’を貫通していないこと、すなわち孔1h’の深さがウェハ1’の全深さには満たないことの図示がある。 (5)刊行物記載の発明 以上の記載事項を、技術常識をふまえて本願発明の記載に沿って整理すると、刊行物には、以下の発明(以下、「刊行物記載の発明」という。)が開示されていると認める。 「ウェハ1’に、クリームメタルの導電体1m’が充填された孔1h’を形成する方法であって、 (a)レーザで、ウェハ1’のデバイス面1a’内に、ウェハ1’の全深さには満たない、前記デバイス面1a’から所定の深さの孔1h’の加工が、行われるステップと、 (b)前記孔1h’にクリームメタルの導電体1m’を充填するステップと、 (c)続いて、ツールTによる研削/研磨を用いて、前記デバイス面1a’に対向する、前記ウェハ1’の面1b’から、材料を、前記デバイス面1a’からの深さが所定のところまで除去し、前記孔1h’のクリームメタルの導電体1m’を前記面1b’から露出させるステップと、を有する、 方法。」 4.対比 本願発明と、刊行物記載の発明とを対比すると、刊行物記載の発明の「ウェハ1’」が本願発明の「半導体ウェハ」に相当することは明らかであって、以下同様に、「クリームメタルの導電体1m’が充填された孔1h’」が「メタライズされたビア」に相当し、「ウェハ1’のデバイス面1a’」が「半導体ウェハの第1の面」に相当し、「孔1h’」が「ブラインドビア」ないしは「ビア」に相当し、「クリームメタルの導電体1m’」が「金属」に相当し、「ツールTによる研削/研磨」が「ラッピング及び研磨による機械的除去」に相当し、「ウェハ1’の面1b’」が「半導体ウェハの第2の面」に相当する。 以上から、本願発明と刊行物記載の発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「半導体ウェハに、メタライズされたビアを形成する方法であって、 (a)レーザで、前記半導体ウェハの第1の面内に、前記半導体ウェハの全深さには満たない、前記第1の面から所定の深さのブラインドビアの加工が、行われるステップと、 (b)前記ブラインドビアに金属を充填するステップと、 (c)続いて、ラッピング及び研磨による機械的除去を用いて、前記第1の面に対向する、前記半導体ウェハの第2の面から、材料を、前記第1の面からの深さが所定のところまで除去し、前記ビアの金属の部分を前記第2の面に露出させるステップと、を有する、 方法。」である点。 <相違点1> 本願発明のレーザは、「可視または紫外放射を発するレーザ」であるのに対して、刊行物記載の発明のレーザは、どのようなレーザであるのか不明である点。 <相違点2> 本願発明のブラインドビアの加工は、「レーザ加工前、レーザ加工中及びレーザ加工後の少なくともいずれかにおいて、反応ガス、及び、パッシブガスの少なくとも一方を用いて、非雰囲気制御ガス環境(non-ambient controlled gas)で行われ」るうえに、「パッシブガスは、アルゴン及びヘリウムの一方を用い、反応ガスは、クロロフルオロカーボン基ガス及びハロカーボン基ガスの少なくとも一方を用いる」ものであるのに対して、刊行物記載の発明の孔1h’の加工は、反応ガスやパッシブガスを用いるかどうか不明である点。 5.相違点についての検討及び判断 (1)相違点1について 可視または紫外放射を発するレーザが存在することは、改めて例示するまでもない周知の技術的事項であるし、レーザ加工に用いるレーザとして、どのような波長のレーザを用いるかは、それぞれのレーザが有する特徴に応じて、当業者が適宜に選択すべき事項である。 したがって、刊行物記載の発明のレーザとして「可視または紫外放射を発するレーザ」を選択したことは、当業者にとって容易に想到できた事項である。 (2)相違点2について レーザを用いて加工を行う際に、加工箇所の酸化を防止するように、レーザ加工中に加工箇所へアルゴンガスを供給することは、原査定において通知した上記の拒絶理由通知書で引用した、特開平4-364088号公報の段落【0012】及び【0016】ないし【0017】や、同じく引用した特開平7-314169号公報の段落【0020】ないし【0021】に示すように、周知の技術的事項である。 また、アルゴンガスは、雰囲気、すなわち空気や大気ではないし、空気や大気を構成する主要なガスでもないから、アルゴンガスが供給される環境は、非雰囲気制御ガス環境であるといえる。 そして、刊行物記載の発明の孔1h’の加工はレーザ加工により行われるものであって、当該レーザ加工において加工箇所の酸化という課題を内在しているといえるから、刊行物記載の発明の孔1h’の加工に周知の技術的事項を適用することは、当業者が当然に試みることといえる。 したがって、刊行物記載の発明の孔1h’の加工を、レーザ加工中において、パッシブガスを用いて非雰囲気制御ガス環境で行い、パッシブガスはアルゴンを用いるように選択することは、当業者にとって格別に困難な事項とはいえない。 (3)作用効果について 本願発明が奏する作用や効果は、刊行物記載の発明や、周知の技術的事項が奏する作用や効果を超えるものとはいえない。 6.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、上記刊行物記載の発明、及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-05-20 |
結審通知日 | 2013-05-21 |
審決日 | 2013-06-03 |
出願番号 | 特願2009-191614(P2009-191614) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 太田 良隆、西中村 健一 |
特許庁審判長 |
野村 亨 |
特許庁審判官 |
長屋 陽二郎 刈間 宏信 |
発明の名称 | 基板、特に半導体ウェハの加工 |
代理人 | 特許業務法人湘洋内外特許事務所 |