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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1280603
審判番号 不服2013-3979  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-01 
確定日 2013-10-17 
事件の表示 特願2006-283590「バッテリパックの係止機構及び電動工具」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月 1日出願公開、特開2008-103144〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年10月18日の出願であって、平成24年8月3日付けで拒絶理由が通知され、同年8月31日付けで手続補正がされ、同年12月17日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年3月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされると共に手続補正がされ、同年4月23日付けで前置報告がなされ、これに基づく審尋が同年5月13日付けで発せられたところ、同年7月10日に回答書が提出されたものである。

第2 本願発明について
本願の請求項1に係る発明は、平成25年3月1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
バッテリを収容したケースに、係止フックと、該係止フックと連動する係止解除ボタンとを設け、上記ケースの上部に設けられたスライドレール部を電動工具等の対象機器の下部の取付部に対して前後方向にスライドさせて装着したときに上記係止フックを上記取付部に係止させるバッテリパックの係止機構において、
上記係止フックを上記ケースの上部に上下動可能に配置し、かつ上動時に上記対象機器の取付部の下部の係止部に係止するように付勢し、上記係止解除ボタンを上記ケースの両側部にバッテリパックの前側及び下側から片手で操作できる範囲内に設け、上記係止解除ボタンを上記ケースの内側に押し込み操作したときに上記係止フックが係止解除方向に移動するように連動させ、
バッテリパックを取り外すときは、上記係止解除ボタンを両側から押し込み操作して上記係止フックの係止を解除させた後、上記対象機器の取付部に対して上記ケースをスライドさせて引き出すようにしたことを特徴とするバッテリパックの係止機構。」
(以下、本願の請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

第3 原審の拒絶理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物:特開2003-317687号公報

第4 刊行物の記載事項(以下、審決注:「・・・」は、記載事項の省略を意味する。)
1-1
「【0008】なお本発明において、「所定の加工作業を行う作業工具」としては、バッテリ式のドリル・グラインダ・インパクトドライバ・インパクトレンチ・カッタ・トリマ・丸鋸・レシプロソー等に用いられるものが広く包含される。・・・本体部は、設定された加工作業の態様に応じて・・・ハンドグリップを適宜有することが好ましい。」

1-2
「【0017】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照しつつ、詳細に説明する。図1に、本発明の実施の形態の一例である電動スクリュードライバ101が示される。・・・
【0018】・・・バッテリパック142上部には、フック143および装着ガイド145が配置されている。フック143は、特に図示しないフック操作部を適宜操作することによりバッテリパック142から上方に向かって出没自在に突出する。装着ガイド145は、バッテリパック142を符号10で示される方向にスライドさせてグリップ部101bの下端部に取り付ける際の案内手段、およびバッテリパック142がグリップ部101bの下方に落下するのを防止する機能を果たす。
【0019】バッテリパック142をグリップ部101b下端に取り付ける際、装着ガイド145に案内されつつバッテリパック141を符号10(装着方向10)方向に押し込むことにより、フック143は、装着方向10に形成されたテーパー部143aがグリップ部101bの底部に押圧されてバッテリパック142内に没入し、バッテリパック142の装着方向10への押し込みを許容する。そしてバッテリパック142がグリップ部101b下端部に正しく装着された場合、再度フック143がグリップ部101b側に突出することによりバッテリパック142がグリップ部101bに係止されることになる。換言すれば、フック143がバッテリパック142の上面からグリップ部111b内に突出することにより、バッテリパック142が本体部103から逆方向にスライドして離脱するのを防止する。」

1-3
「【0043】(第3実施形態)次に本発明の第3の実施形態について図8および図9を参照して説明する。・・・
【0044】・・・図9に示すように第3実施形態に係るバッテリパック342は両側部にフック343を有する。フック343は、フック弾発バネ343bの付勢力を介してバッテリパック341の側面部342aから離反する方向に付勢される一方、当該フック弾発バネ343bの付勢力に効して側面部342aに近接するよう操作可能とされる。フック343と側面部342aとの間にはフック動作用スペース343aが形成されている。そしてバッテリパック342は、上記フック343を両側からバッテリパック342側に押し込み操作することで、フック343がフック動作用スペース343において側面部342a方向へ移動し、符号30で示す方向(図中下方)に本体部303から取り外し可能とされる。」

1-4
「【0057】さらにバッテリパック自体をロック部で係止する上記第1および第2の実施の形態の構成と、バッテリパックを本体部に係止するためのフックの操作を規制する第3実施形態の構成と、バッテリカバーの開閉を規制する第4実施形態の構成の全部または一部を適宜組み合わせて構成することも可能である。」

1-5
「【図1】



1-6
「【図8】



1-7
「【図9】



第5 当審の判断
1.刊行物に記載された発明
(1)刊行物には、電動スクリュードライバにおいて、バッテリパック上部には、フックおよび装着ガイドが配置され、フックは、特に図示しないフック操作部を適宜操作することによりバッテリパックから上方に向かって出没自在に突出すること(1-2)、バッテリパックをグリップ部下端に取り付ける際、装着ガイドに案内されつつバッテリパックを符号10(装着方向10)方向に押し込むことにより、フックは、装着方向10に形成されたテーパー部がグリップ部の底部に押圧されてバッテリパック内に没入し、バッテリパックの装着方向10への押し込みを許容し、バッテリパックがグリップ部下端部に正しく装着された場合、再度フックがグリップ部側に突出することによりバッテリパックがグリップ部に係止されること(1-2、1-5)が記載されている。
そうすると、刊行物には、バッテリパック上部にフックおよび装着ガイドが配置され、フックは、バッテリパックから上方に向かって出没自在に突出してなり、バッテリパックをグリップ部下端に取り付ける際、装着ガイドに案内されつつバッテリパックを装着方向に押し込むことにより、フックは、装着方向に形成されたテーパー部がグリップ部の底部に押圧されてバッテリパック内に没入し、バッテリパックの装着方向への押し込みを許容し、バッテリパックがグリップ部下端部に正しく装着された場合、再度フックがグリップ部側に突出することによりバッテリパックがグリップ部に係止する装置の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

(2)また、刊行物には、バッテリパックは両側部にフックを有し、フックは、フック弾発バネの付勢力を介してバッテリパックの側面部から離反する方向に付勢される一方、フック弾発バネの付勢力に効して(審決注:「抗して」の誤記と認められる)側面部に近接するよう操作可能とされ、フックと側面部との間にはフック動作用スペースが形成され、バッテリパックは、フックを両側からバッテリパック側に押し込み操作することで、フックがフック動作用スペースにおいて側面部方向へ移動すること(1-3、1-4、1-7)が記載されている。
そうすると、刊行物には、バッテリパックは両側部にフックを有し、フックは、フック弾発バネの付勢力を介してバッテリパックの側面部から離反する方向に付勢される一方、フック弾発バネの付勢力に抗して側面部に近接するよう操作可能とされ、フックと側面部との間にはフック動作用スペースが形成され、バッテリパックは、フックを両側からバッテリパック側に押し込み操作することで、フックがフック動作用スペースにおいて側面部方向へ移動する装置の発明(以下、「引用発明2」という。)も記載されている。

2.対比
(1)引用発明1と本願発明を対比すると、引用発明1の「バッテリパック」、「フック」、「グリップ部下端」、「装着ガイド」、「電動スクリュードライバ」、「バッテリパックをグリップ部下端に取り付ける際、装着ガイドに案内されつつバッテリパックを装着方向に押し込むことにより・・・バッテリパックがグリップ部下端部に正しく装着された場合」、「係止する装置」は、本願発明の「バッテリを収容したケース」、「係止フック」、「取付部」、「ケースの上部に設けられたスライドレール部」、「電動工具等の対象機器」、「スライドレール部を電動工具等の対象機器の下部の取付部に対して前後方向にスライドさせて装着したとき」、「係止機構」に相当することは明らかである。
また、引用発明1のフックは、「バッテリパックから上方に向かって出没自在」かつ「バッテリパックがグリップ部下端部に正しく装着された場合、再度フックがグリップ部側に突出する」ものであり、フックがグリップ部側に突出するための付勢があることは明らかであるから、引用発明1の「フックは、バッテリパックから上方に向かって出没自在に突出してなり、・・・バッテリパックがグリップ部下端部に正しく装着された場合、再度フックがグリップ部側に突出する」は、本願発明の「係止フックをケースの上部に上下動可能に配置し、かつ上動時に上記対象機器の取付部の下部の係止部に係止するように付勢し、」に相当することも明らかである。

そうすると、引用発明1と本願発明は、
「バッテリを収容したケースに、係止フックを設け、上記ケースの上部に設けられたスライドレール部を電動工具等の対象機器の下部の取付部に対して前後方向にスライドさせて装着したときに上記係止フックを上記取付部に係止させるバッテリパックの係止機構において、
上記係止フックを上記ケースの上部に上下動可能に配置し、かつ上動時に上記対象機器の取付部の下部の係止部に係止するように付勢し、
バッテリパックを取り外すときは、上記対象機器の取付部に対して上記ケースをスライドさせて引き出すようにしたバッテリパックの係止機構」の点で一致する。

(2)他方、本願発明が、係止解除ボタンをケースの両側部にバッテリパックの前側及び下側から片手で操作できる範囲内に設け、上記係止解除ボタンを上記ケースの内側に押し込み操作したときに上記係止フックが係止解除方向に移動するように連動させ、バッテリパックを取り外すときは、上記係止解除ボタンを両側から押し込み操作して上記係止フックの係止を解除させるものであるのに対して、引用発明1が、この点について明らかでない点で相違する。

3.相違点についての判断
そこで、上記相違点について検討する。
まず、刊行物には、引用発明1のみならず、引用発明2も記載されているところ(1-3、1-6、1-7)、引用発明2は、「バッテリパックは両側部にフックを有し、フックは、フック弾発バネの付勢力を介してバッテリパックの側面部から離反する方向に付勢される一方、フック弾発バネの付勢力に抗して側面部に近接するよう操作可能」であるのだから、引用発明2の「フック」及びバッテリパックの両側部にある楕円形状のボタン様のもの(引用発明1に係る「特に図示しないフック操作部」(1-2)に相当するとも解される。)は、それぞれ、本願発明の「係止フック」及び「係止解除ボタン」に相当すると解される(1-6)。
次に、引用発明1における装着ガイドは、バッテリパックグリップ部の下端部に取り付ける際の案内手段及びバッテリパックがグリップ部の下方に落下するのを防止する機能を果たしており、また、引用発明1におけるフックは、フック操作部を適宜操作することによりバッテリパックから上方に向かって出没自在に突出するものであるところ(1-2)、引用発明1、2は、「バッテリパックを本体部に係止するためのフックの操作を規制する」点で適宜組み合わせて構成することも可能であるから(1-4)、引用発明1のフック操作部に引用発明2を適用して、フック及びバッテリパックの両側部に楕円形状のボタン様のものを設けることは、当業者であれば容易に推考できる。
仮に、そうでないとしても、係止解除ボタンをケースの内側に押し込み操作したときに係止フックが係止解除方向に移動するように連動するものは、周知であるから(刊行物(1-3、1-6、1-7)、原査定の引用文献1【図1?10】、特開昭63-88749号公報の第3、4図)、これを引用発明1のフック操作部に適用することは、当業者であれば容易に推考できる。
また、フック操作部は、フックの近くに設けられることが明らかであるから、引用発明1のフック操作部に引用発明2を適用する際には、自ずと楕円形状のボタン様のものをケースの両側部にバッテリパックの前側及び下側から片手で操作できる範囲内に設けることになると解される。
仮に、そうでないとしても、引用発明1、2は、「ドリル・グラインダ・インパクトドライバ・インパクトレンチ・カッタ・トリマ・丸鋸・レシプロソー等」(1-1)に用いられるものであり、「ハンドグリップ」(1-1)という文言から、通常片手でグリップ部を持って操作するものと解するのが自然であること(原査定の引用文献1【0012】、特開2004-39638号公報【0015】【0018】)、グリップ部の大きさとバッテリパックの大きさを比較しても(1-5、1-6、1-7)、引用発明2のバッテリパックの両側部にある楕円形状のボタン様のものの位置であれば、優にこれがバッテリパックの前側及び下側から片手で操作できる範囲内に設けられていると解することができるし、あるいは、引用発明1、2も、バッテリパックがグリップ部の下方に落下するのを当然防止するものと解するのが技術常識であることを総合的に勘案すれば、片手でグリップ部を把持しつつ、他の片手でケースの両側部の楕円形状のボタン様のものを押し込む場合のように、楕円形状のボタン様のものをケースの両側部にバッテリパックの前側及び下側から片手で操作できる範囲内に設けることは、当業者が適宜なし得るものである。
そうとすれば、上記相違点は、当業者が容易に成し得るというべきである。

4.加えて、取り扱いが容易で確実に着脱できるバッテリパックを提供するという本願発明に係る効果も(【0013】?【0016】)、格別顕著とはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の発明について検討するまでもなく、本願は、原審の拒絶理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-13 
結審通知日 2013-08-20 
審決日 2013-09-02 
出願番号 特願2006-283590(P2006-283590)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米田 健志  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 山田 靖
小川 進
発明の名称 バッテリパックの係止機構及び電動工具  
代理人 中島 健  
代理人 瀬川 幹夫  

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