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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1280681
審判番号 不服2010-29592  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-28 
確定日 2013-10-23 
事件の表示 特願2004-557078「癌の処置および検出において有用な24P4C12と称される、核酸および対応タンパク質」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月17日国際公開、WO2004/050828、平成18年 3月 9日国内公表、特表2006-508163〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2002年11月27日を国際出願日とする出願であって、平成20年8月22日付けで拒絶理由が通知され、平成21年2月24日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月26日付けで最後の拒絶理由が通知された後、平成22年1月4日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月27日付けで、平成22年1月4日付け手続補正書でした補正を却下する決定及び拒絶査定がされたところ、同年12月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年12月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成22年12月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)は、拒絶査定不服審判の請求と同時にしたものであって、本件補正前の請求項1(平成21年2月24日付け手続補正書により補正された請求項1)と本件補正後の請求項1の記載は次のとおりである。
本件補正前:
「【請求項1】配列番号7、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17又は配列番号19のアミノ酸配列を有する単離された24P4C12タンパク質改変体。」

本件補正後:
「【請求項1】配列番号7、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17又は配列番号19のアミノ酸配列を有しかつ膀胱、結腸、卵巣及び乳房からなる群から選択される組織の癌細胞において過剰発現される単離された24P4C12タンパク質改変体或いは配列番号7、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17又は配列番号19のアミノ酸配列に1又は数個のアミノ酸が保存的に欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有する24P4C12タンパク質改変体。 」
(下線部は補正箇所である。)

2.補正の適否
本件補正は、請求項1に「或いは配列番号7、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17又は配列番号19のアミノ酸配列に1又は数個のアミノ酸が保存的に欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有する24P4C12タンパク質改変体」という事項を追加する補正を含むものであるが、かかる補正は択一的記載を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という)第17条の2第4項第1号に規定された請求項の削除、同第2号に規定された特許請求の範囲の減縮、同第3号に規定された誤記の訂正、同第4号に規定された明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とする補正にも該当しない。

3.むすび
よって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明についての進歩性の判断
1.本願発明
平成22年12月28日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成21年2月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された発明特定事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記第2 1.に「本件補正前」として記載したとおりのものである。

2.引用例の記載事項
本願の出願日前に頒布された刊行物である国際公開第00/61746号(以下、「引用例」という。原査定の拒絶理由で引用された「引用文献1」に同じ。)には、以下の事項が記載されている(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する。)。

ア.「特許請求の範囲
・・・
4. 24P4C12ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、該ポリペプチドが図1A-1D(配列番号2)に示される膜貫通ドメインを含む、ポリヌクレオチド。
・・・
11. 請求項1?4のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドによりコードされる24P4C12ポリペプチド。
・・・」(特許請求の範囲)

イ.「本明細書中に記載された発明は、新規な遺伝子およびそのコードされたタンパク質(24P4C12と称される)に関し、そして24P4C12を発現する種々のガン、特に前立腺癌の管理において有用な診断および治療方法および組成物に関する。」(1頁5?8行)

ウ.「本発明の24P4C12タンパク質は、本明細書中で特に同定されたタンパク質、ならびに以下に概説される方法に従って過度な実験を伴わずに単離/生成および特徴付けされ得る対立遺伝子改変体、保存的置換改変体およびホモログを包含する。・・・
24P4C12タンパク質の特定の実施形態は、図1A-1D(配列番号2)に示されるようなヒト24P4C12のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。あるいは、24P4C12タンパク質の実施形態は、図1A-1D(配列番号2)に示されるようなヒト24P4C12のアミノ酸配列において変更を有する改変体ポリペプチドを含む。」(25頁10?13行及び20?24行)

エ.「本明細書中に開示される本発明の実施形態は、広範な種々の当該分野で認められた24P4C12タンパク質の改変体(例えば、アミノ酸の挿入、欠失および置換を有するポリペプチド)を含む。24P4C12改変体は、当該分野において公知の方法(例えば、部位特異的変異誘発、アラニンスキャニング(alanine scanning)、およびPCR変異誘発)を使用して作製され得る。」(26頁17?21行)

上記ア.及びイ.の記載によれば、引用例には、以下の発明が記載されていると認められる。
「配列番号2のアミノ酸配列を有する24P4C12タンパク質。」(以下、「引用発明」という。)

3.対比
本願発明のうち、「配列番号7のアミノ酸配列を有する単離された24P4C12タンパク質改変体」の発明(以下、「前者」という)と引用発明(以下、「後者」という)とを対比する。
本願の配列表の配列番号7と引用例の配列番号2は、いずれも710アミノ酸からなるアミノ酸配列を示すものであり、両アミノ酸配列は、187番目のアミノ酸を除き(本願の配列番号7ではI、引用例の配列番号2ではV)、一致していることが認められる。
したがって、前者と後者は、「1?186番目及び188?710番目のアミノ酸配列を同じくする24P4C12関連タンパク質」であり、両者は以下の点でのみ相違する。

相違点:前者は187番目のアミノ酸がIである単離された24P4C12タンパク質改変体であるのに対し、後者は187番目のアミノ酸がVである24P4Cタンパク質である点。

4.相違点についての検討
上記2.ウ.及びエ.によれば、引用例には、配列番号2のアミノ酸配列を有する24P4C12タンパク質にアミノ酸の挿入、欠失および置換がされた改変体が公知の方法を使用して作製できることが記載されていると認められるから、かかる記載にしたがって、引用発明である配列番号2のアミノ酸配列を有する24P4C12タンパク質について、一箇所のアミノ酸が置換した改変体を生成し、単離することは、当業者が容易になし得ることである。
また、遺伝子の塩基配列には多型が存在し、その大部分は個体間でほぼ1000塩基当たり1塩基だけ異なる一塩基多型であり、その結果発現されるタンパク質にも違いがあることは、本願の出願日前に技術常識となっていた(「日経バイオ最新用語辞典 第5版」、日経BP社、2002年9月17日、59頁「一塩基多型」の項参照。)。このような技術常識を踏まえれば、引用例で用いられたのとは異なる個体からのサンプルには、引用発明における配列番号2のアミノ酸配列のアミノ酸が一箇所置換された、24P4C12タンパク質改変体が存在することが十分に予想されるから、このような改変体を単離することは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本願明細書の実施例には、24P4C12タンパク質について種々の実験の仕方やその結果が記載されていることは認められるものの、配列番号7に示される特定のアミノ酸配列を有する24P4C12タンパク質改変体について行われた実験やその結果が示されているとは認められないから、引用発明における配列番号2と187番目のアミノ酸のみが異なる配列番号7のアミノ酸配列を有する24P4C12タンパク質改変体が、当業者の予想を超える顕著な効果を奏するということはできない。

5.小括
以上検討したところによれば、本願発明は引用例に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 まとめ
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-22 
結審通知日 2013-05-28 
審決日 2013-06-11 
出願番号 特願2004-557078(P2004-557078)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安居 拓哉  
特許庁審判長 今村 玲英子
特許庁審判官 田中 晴絵
高堀 栄二
発明の名称 癌の処置および検出において有用な24P4C12と称される、核酸および対応タンパク質  
代理人 内田 潔人  
代理人 加藤 朝道  

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