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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1280759
審判番号 不服2012-19251  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-02 
確定日 2013-10-24 
事件の表示 特願2007-309735「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月18日出願公開、特開2009-134042〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成19年11月30日の出願であって、平成24年6月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月2日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、当審において、平成25年5月8日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月16日付けで手続補正がなされたものである。
なお、請求人は、当審拒絶理由に対して平成25年7月16日付けで意見書を提出している。

2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成25年7月16日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項によりそれぞれ特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、平成25年7月16日付け補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものであると認める。

「複数の像担持体と、
前記複数の像担持体上の潜像にそれぞれトナーを供給してトナー像とする複数の現像手段と、
中間転写体と、
前記中間転写体を介して前記複数の像担持体とそれぞれ対向する位置に配置され、前記中間転写体の裏面に当接する複数の一次転写ローラと、
前記複数の一次転写ローラのそれぞれの両端に設けられた加圧スプリングと、を備え、
両端の前記スプリングの力の合計により前記複数の像担持体に対して前記中間転写体を加圧した状態で、前記複数の像担持体のそれぞれから前記トナー像が前記中間転写体上に順次重ね合わせて転写された後、
前記複数の像担持体から順次重ね合わせて前記中間転写体上に転写されたトナー像を前記中間転写体から記録体上に転写する画像形成装置において、
前記トナーは、遠心分離法によって測定されるトナーと前記像担持体間に働く付着力の内、トナーの帯電に起因しない非静電的付着力の平均値をFne[nN]とした場合に、トナーの円相当径D[μm]を横軸とし、Fneを縦軸としてプロットしたグラフにおける一次回帰直線の比例係数Kが5.1[nN/μm]?30[nN/μm]であり、
ホソカワミクロン社製アグロボットを用いて、アグロボット用の直径15[mm]の二分割可能なセルに充てんし、圧縮荷重を5?50[kg]の範囲で印加した時のセルを分割するに要する引っ張り破断力から、横軸を圧縮荷重、縦軸を引っ張り破断力としてプロットしたグラフにおける一次回帰直線の比例係数Lが0.3×10^(-3)以下であり、
前記像担持体と前記中間転写体とのニップ部における当接圧力P[N/m^(2)]が、4.0×10^(3)?4.0×10^(4)の範囲にある
ことを特徴とする画像形成装置。」(以下「本願発明」という。)

3 刊行物の記載事項
(1)当審拒絶理由に引用した「本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-127889号公報(以下「引用例1」という。)」には、図とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、FAXなどの画像形成装置に関するものであり、詳しくは、複数の像担持体上の画像を転写体に転写して、この転写体上で複数色のトナー像を形成する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような画像形成装置として、中間転写体である中間転写ベルトを用いた画像形成装置が知られている。中間転写ベルトを使用する電子写真方式の画像形成装置では、像担持体としての潜像担持体上に形成されたトナー像を、潜像担持体と中間転写ベルトで形成される一次転写ニップでトナーに圧力と転写電界を作用させることにより中間転写ベルト上に転写を行う。そして、紙等の記録媒体上に二次転写を行い、加圧及び加熱による定着工程を経た後、最終画像を得る。
カラー画像を得る際には、一つまたは複数の静電潜像担持体上に形成された複数色トナー画像を中間転写ベルト上に順次重ね合わせることにより、カラー画像を形成した後、記録媒体への二次転写、定着工程を経て最終画像を得る。そして、高品位画像を得るためには、潜像担持体上に形成されたトナー画像を過不足なく、潜像担持体上の潜像に忠実に、正確に重ね合わせて中間転写ベルト上へ転写し、この状態を保持したまま定着工程を終わらせる必要がある。
【0003】
静電潜像担持体上のトナーは、前述したように、静電潜像担持体と中間転写ベルトで形成される一次転写ニップ近傍での転写電界と圧力とで中間転写ベルト上に移動する。そして、一次転写ニップの転写バイアスによって、中間転写ベルト上に転写されたトナーが受ける静電気力は、一次転写ニップ通過後は速やかに減少する。このためトナーを中間転写ベルト側に抑え付ける力が弱まりトナー間の静電反発力によりトナーが飛散し、チリ画像となり画質を損なうおそれがあった。
この一次転写ニップ通過後に発生するチリ画像は、特に中間転写ベルト上で複数色のトナー像が重ねられ、画像を形成するトナー量が増えた場合に顕著となる。良好な最終画像を得るためには、この一次転写ニップ通過後に発生するチリ画像を抑制することが必要である。
【0004】
このような、一次転写ニップ通過前後のチリを抑制するために、一次転写ニップの電界を制御する方法がある。
一次転写ニップの電界を制御する方法として、特許文献1では、一次転写ニップ下流側でトナーと同極性の電位を中間転写ベルトに与え、中間転写ベルトと像担持体とが離れる箇所で生じる剥離放電によるトナーのチャージアップを防いでいる。また特許文献2では、一次転写ニップ下流側に二つの電極を設け、トナーとは逆極性の電位を中間転写ベルト裏面に与えることにより転写チリを抑制している。
【0005】
【特許文献1】特開2005-77861号公報
【特許文献2】特開2000-89583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、一次転写ニップの電界を制御する方法は、電界制御のため電極を付加し制御する必要があり、構造が複雑になる他、製造コストが上昇することが問題となる。
【0007】
本発明は、以上の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、転写体上に複数色のトナー像を形成する画像形成装置で、より簡易な構造によって、トナー像を像担持体から転写体へ転写する際の転写チリを低減し、良好な画像を得ることが出来る画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、複数の像担持体と、各像担持体上に互いに異なる色のトナー像を形成する複数の画像形成手段を有し、各像担持体と対向するそれぞれの転写ニップで各色のトナー像に圧力と転写電界とを作用させることで該トナー像を転写体に転写して該転写体上に複数色のトナー像を形成する画像形成装置において、複数の該転写ニップすべてについて、該転写ニップを通過する前の該像担持体部分に担持された該トナー像を構成するトナーのトナー間非静電付着力よりも、該転写ニップを通過した後の該転写体部分に担持された該トナー像を構成するトナーのトナー間非静電付着力の方が、3[nN]以上大きくなるように、該転写ニップにかかる荷重が調整されていることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記転写ニップのいずれを通過した後であっても、各色の上記トナーの上記トナー間非静電付着力が20[nN]以下となるように該転写ニップにかかる荷重が調整されていることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2の画像形成装置において、上記転写体の表面移動方向下流側の該転写ニップで転写される上記トナーほど、該転写ニップ通過後の上記トナー間非静電付着力が大きくなるように、該転写ニップのそれぞれにかかる荷重が調節されていることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1、2または3の画像形成装置において、上記複数の像担持体のうちの少なくとも一つの像担持体の線速と上記転写体の線速とに速度差を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1、2、3または4の画像形成装置において、複数の上記画像形成手段のうち少なくとも一つは、真円度が1.3未満の上記トナーを使用するものであって、この画像形成手段によって表面にトナー像が形成される上記像担持体の表面の摩擦係数μ0と、上記転写体の表面の摩擦係数μtとの間に、0.25≧μt>μ0の関係が成り立つように該像担持体を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1、2、3、4または5の画像形成装置において、複数の上記画像形成手段のうち少なくとも一つは、真円度が1.3以上の上記トナーを使用するものであって、この画像形成手段によって表面にトナー像が形成される上記像担持体の表面の摩擦係数μ0と、上記転写体の表面の摩擦係数μtとの間に、μt-μ0>0.2の関係が成り立つように該像担持体を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1、2、3、4、5または6の画像形成装置において
、上記転写体が中間転写体であることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1、2、3、4、5、6または7の画像形成装置において、上記転写体が記録媒体であることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1、2、3、4、5、6、7または8の画像形成装置において、上記転写ニップの面積をSn、該転写ニップに掛かる荷重をFとした場合に、PC=I×F/Sn(Iは1以上の任意の実数)によって、転写ニップ圧PのI倍の圧力PCを求め、該圧力PCに相当する圧縮圧をトナーに印加後に測定されるトナーの破断応力をStとして、トナー粒径をD、トナー層空隙率をεとしたときに、Rumpfの式:Ft=St×D2×ε/(1-ε)によって算出されるFtを上記トナー間非静電付着力として用いることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項9の画像形成装置において、上記Iは、画像面積率をvとした時に、I=100/vであることを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項10の画像形成装置において、上記画像面積率v=5[%]であることを特徴とするものである。
【0009】
上記請求項1乃至11の画像形成装置においては、トナー像が転写ニップ通過通過する前よりも、転写ニップ通過通過した後の方が、トナー間非静電付着力が3[nN]以上大きくなるように、転写ニップにかかる荷重が調整されている。このように転写ニップにかかる荷重を調節することにより、トナー間付着力が転写チリの原因となるトナー間の静電反発力を上回り、転写チリを低減することができることが、後述する実験によって明らかになった。また、転写チリを軽減するために転写ニップの荷重を調節するものであるので、電界制御のため電極を付加し制御する構造に比べてより簡易な構造とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1乃至11の発明によれば、簡易な構造によってトナー像を像担持体から転写体へ転写する際の転写チリを低減し、良好な画像を得ることができるという優れた効果がある。」

イ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[実施形態1]
以下、本発明を、カラー画像形成装置に適用した実施形態1について説明する。
図1は、実施形態1に係るカラー画像形成装置としてのプリンタ100の装置全体の概略構成図である。図1においてプリンタ100は、互いに異なる4色(イエロー:Y、マゼンタ:M、シアン:C、ブラック:K)のトナーを用いる4組の画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Kが、中間転写体としての中間転写ベルト5の移動方向に沿って並設されたタンデム型の画像形成装置である。
各画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Kは、感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kと、各感光体ドラムの表面をコロナ放電によって帯電する帯電装置3K、3C、3M、3Yとを備えている。また、画像情報に基づいて、各感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kの帯電された表面を、露光することにより表面に潜像を形成する露光装置としてのLEDアレイヘッド8Y、8M、8C、8Kが備えられている。また、各感光体ドラム2Y、2M、2C、2K上の潜像をトナー像化する画像形成手段としての現像装置1Y、1M、1C、1Kと、各感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kの表面をクリーニングする感光体クリーニング装置10Y、10M、10C、10Kとを備えている。さらに、感光体クリーニング装置10Y、10M、10C、10Kの下流側で、感光体表面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給ローラ11Y、11M、11C、11Kを備えた潤滑剤塗布装置を有している。
【0012】
上記4組の画像形成ユニットの感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kは、不図示の感光体ドラム駆動装置によって回転駆動される。また、ブラック用の感光体ドラム2Kと、カラー用の感光体ドラム2Y、2M、2Cとを独立に回転駆動できるようにしても良い。これにより、例えば、モノクロ画像を形成するときにはブラック用の感光体ドラム2Kのみを回転駆動し、またカラー画像を形成するときには4つの感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kを同時に回転駆動することができる。ここで、モノクロ画像を形成するときは、カラー用の感光体ドラム2Y、2M、2Cから離間するように中間転写ベルト5を有する中間転写ユニットが部分的に揺動させられる。
【0013】
中間転写ベルト5は例えば中抵抗の無端状のベルト材で構成され、二次転写ローラ7及び支持ローラ51、52といった複数の支持ローラに掛け回されている。この支持ローラの一つを回転駆動することにより、中間転写ベルト5を図中矢印方向に無端移動させることができる。
【0014】
また、各感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kから中間転写ベルト5にトナー像を転写する一次転写位置には、中間転写ベルト5を間に挟んで各感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kに対向するように一次転写ローラ4Y、4M、4C、4Kが設けられている。転写体としての中間転写ベルト5は、一次転写ローラ4Y、4M、4C、4Kによって押圧されることにより、感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kに対して圧接し、それぞれの感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kとの対向部(審決注;「対抗部」は「対向部」の明らかな誤記なので訂正して摘記した。)で一次転写ニップを形成している。
【0015】
上述の構成のプリンタ100で、カラー画像を形成するときは、各感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kに形成された各色のトナー像が、各一次転写ニップで圧力と転写電界の作用により中間転写ベルト5上に順次重ね合わせて転写される。これにより、中間転写ベルト5上に4色のトナー像からなるフルカラートナー像が形成される。この中間転写ベルト5上に重ね合わされたフルカラートナー像は、二次転写装置6と二次転写ローラ7との間に形成された二次転写ニップで記録媒体としての転写紙P上に転写され、定着装置9で定着される。
【0016】
次に、実施形態1の特徴部について説明する。但し、以下の各実施例に用いられている構成部品の種類等は本発明の範囲を限定するものではない。
特に実施例では、既存の画像形成装置を用いて評価用画像の形成を行うが、本発明の本質は一次転写ニップ通過後のトナー間相互作用の変化と絶対値の規定であり、一次転写ニップ部への荷重の掛け方は任意で良い。」

ウ 「【0017】
[実施例1]
次に、実施例1で使用されるトナーとトナー間非静電付着力の測定方法について説明する。
本実施例で用いたトナーの製法を以下に示す。
樹脂としてスチレンモノマーを90[重量部]、メタクリル酸n-ブチルを55[重量部]を、帯電制御剤としてサリチル酸亜鉛塩を3.5[重量部](ボントロンE84、オリエント化学社製)を用いる。着色剤として、ブラックトナーはカーボンブラックを7.5[重量部](カーボンブラック#44、三菱化学社製)を用いる。イエロートナーはC.I.ピグメントイエロー180を5[重量部](PV Fast Yellow HG(クラリアント))を用いる。マゼンタ-トナーはC.I.ピグメントレッド122を4[重量部](Hostaperm Pink E(クラリアント))を用いる。そして、シアントナーはC.I.ピグメントブルー15:3を2.5[重量部](Lionol Blue FG-7351(東洋インキ))を用いる。
上述の材料をそれぞれ配合後、重合開始剤(2,2-アゾビスイソブチロニトリル)を用いて重合を行い、粒径6.7[μm]のところで重合を停止して、得られた粒子を水洗した後乾燥して、ブラック、イエロー、マゼンタ、重合トナー粒子を得る。
【0018】
このトナー粒子を電子顕微鏡で観察し、真円度を求めた結果、各色トナーとも1.2であった。これら各色トナーを100[重量部]に対して、シリカ微粉体R972(日本アエロジル社製)を0.5[重量部]の割合で混合して負帯電性の現像用トナーを作製した。
尚、真円度は、
真円度=(トナーの周囲長)2/(4π×投影面積)
より求めた値を使っている。
【0019】
実施例1で用いるキャリアは次のようにして作製することができる。
シリコン樹脂SR2411(トーレダウコーニング社製)を300[重量部]とトルエンを1200[重量部]を混合しコーテング液を調合後、前記コーティング液と平均粒径35[μm]のフェライトキャリア5[kg]を混合してキャリアを被覆する。更に、被覆済みキャリアを250[℃]で120[分]加熱して被覆膜熟成を行う。
【0020】
評価用画像出力機に投入する現像剤は、トナー濃度が5[%]でトナーと被覆済みキャリアの総重量が1000[g]になるように調合、作成した。
トナー間非静電付着力をFtとし、粉体層圧縮・引張強度自動計測システム、アグロボット(ホソカワミクロン製)を用いて所定の圧縮圧PCを印加して測定された破断応力をSt、トナー粒径をD、トナー層空隙率をεとしたときに、
Rumpfの式:Ft=St×D2×ε/(1-ε)
を用いて算出することができる。
【0021】
次に、実施例1で用いるシアントナーを用いて、粉体層圧縮・引張強度自動計測システム、アグロボットで、圧縮圧PCの値を変えて、複数の圧縮圧PCの値に対する破断応力Stを測定した。そして、この破断応力Stを用いてトナー間非静電付着力Ftを求めたところ、トナー間非静電付着力Ftとトナー層への圧縮圧PCは図2中の丸印のように求められた。なお、ブラック、マゼンタ、イエローについても同様な実験結果が得られた(各色で有意差は認められなかった)。
【0022】
図2に示すように、圧縮圧PCの値を変化させた時のトナー間非静電付着力Ftの値のプロットは直線的になるため、破断応力Stを計測していない圧縮圧PCについても、この回帰直線よりトナー間非静電付着力Ftを求めることができる。そして、圧縮圧が印加されない場合である未圧縮時のトナー間非静電付着力Ftは、図1中記された回帰直線より圧縮圧PCが零の時の縦軸の値として求める。また、回帰直線から測定データのない圧縮圧PCに対するトナー間非静電付着力Ftを求めて、圧縮圧PCが零の場合のトナー間非静電付着力Ftとの差を検討しても良い。本実施例では、測定データを直線回帰して非圧縮時のトナー間非静電付着力を求めたが、測定データの補間には回帰直線に限らず任意の関数を用いて良い。
なお、上述の方法で実施例1で用いる各色の未圧縮時のトナー間非静電付着力Ftを求めたところイエロー、シアン及びマゼンタは4.9[nN]となり、ブラックは4.7[nN]となった。
【0023】
一次転写ニップ面積Snは所定の荷重Fを一次転写部材(本実施例では発泡ゴムを用いた一次転写ローラ4Y、4M、4C、4K)に掛けた状態で、圧力分布測定システム I-SCAN(ニッタ株式会社製)を用いて行う。ここで一次転写ニップに掛かる荷重Fは一次転写部材押圧手段から与えられる荷重の他、自重を含んでいることに注意する。
【0024】
次に、評価用画像出力機としてIPSio CX400を用いた。この評価用画像出力機での荷重Fに対する一次転写ニップ幅Nを測定したところ、表1に示すような値となった。
【0025】
【表1】

【0026】
表1より、荷重F[N]に対する一次転写ニップ幅N[mm]が求めることができ、これに一次転写ローラ軸方向の接触長さ(上述の評価用画像出力機では240[mm])をかけることで一次転写ニップ面積S[mm^(2)]が求まる。そして、荷重F[N]を一次転写ニップ面積S[mm^(2)]で割ることで、荷重印加状態での一次転写ニップ圧P[N/mm^(2)]を求めることが出来る。
さらに、この一次転写ニップ圧Pに任意の値Iをかけることで、圧縮圧PC[N]を求めることができる。ここで、任意の値Iについて、ニップ部では、トナー像がある箇所のみが接触して非画像部は浮いた状態であり、トナー像に圧力が集中すると考えることができる。よって、トナーに掛かる圧力は概ね、トナーの面積率に依存する。ニップ内がトナーで満たされていルトすれば、I=1でトナーにかかる圧力を求めることができる。
そこで、実施例1では、画像面積率をvとした時に、I=100/vで求まる値を採用した。そして、標準的な画像評価では面積率は5[%]であるので、実施例1では、v=5とし、I=20として、圧縮圧PC[N]=一次転写ニップ圧P×20として検討した。
なお、Iの値としては、一般に画像形成装置で使用される画像面積率vに対応した値が望ましく、通常は画像面積率v=1?10[%]であるのでI=100?10、望ましくは20である。
【0027】
そして、この一次転写ニップ圧Pを20倍した圧縮圧PC印加時のトナー間非静電付着力を図2に示した回帰直線から各色トナーについて求め、各色トナーのトナー間非静電付着力Ftが8[nN]となる荷重F[N]を求めたところ、各一次転写ニップにおいて、荷重Fを8[N]と設定すれば良いことが分かった。
ここで、未圧縮時のトナー間非静電付着力Ftは、イエロー、シアン及びマゼンタは4.9[nN]、ブラックは4.7[nN]であるので、荷重Fを8[N]と設定し、トナー間非静電付着力Ftを8[nN]とすることで、トナー間非静電付着力Ftの増加量を3[nN]以上とすることができる。
【0028】
[実験1]
次に、実施例1と比較例1とで転写チリの発生状態を比較した実験1について説明する。
比較例1として、上述の評価用画像出力機で一次転写ニップ部に掛ける荷重Fを各色ともに2[N]とした場合の画像評価も併せて行った。この場合には、トナー間非静電付着力の増加は各色トナーとも約1.5[nN]となった。
評価用画像出力機での画像形成条件は、実施例1、比較例1の一次転写ニップ荷重で同等のトナー転写効率が得られるように調整を行い、中間転写ベルト上のトナー量が同等となるようにしてある。また、評価用画像出力機では、中間転写ベルト搬送速度と各静電潜像担持体の回転速度(線速)を等しくしてある。更に、オイラーベルト法を用いて測定された、潜像担持体である感光体ドラム2と中間転写ベルト5との摩擦係数はそれぞれ、0.20と0.35とであった。
【0029】
評価用画像として、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、レッド(イエロー+マゼンタ)、グリーン(イエロー+シアン)、ブルー(マゼンタ+シアン)、三色ブラック(イエロー+マゼンタ+シアン)を採用した。この各色で中間転写ベルト搬送方向に幅4ドット(600[dpi])のライン(長さは中間転写ベルト幅方向に最大)を各10本づつの画像面積率が5[%]程度の画像を印画し、定着終了後の最終画像100枚について画像のチリ出現状況を各ランクのサンプル画像と見合わせて5段階でランク付けした。
なお、ランク5は「チリのない状況」、ランク4は「チリは存在するが、ほとんど目視では確認出来ず、画質的には問題のない状況」、ランク3は「目視で若干のチリが確認される程度で画質的にやや問題があると考えられる状況」、ランク2は「目視で確認されるチリが多く画質として問題のある状況」であり、ランク1は「画像として成立しない状況」として目視で評価した。そして、最終画像100枚のランクの平均を評価値とした。
実験1の結果を表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
表2に示すように、実施例1では、何れの評価画像においてもランクが4.5以上となり、転写チリの殆どない良好な画像が得ることができた。一方比較例1では、単色ラインについては実施例1とほぼ同等の良好な画像が得られたものの、複数色のトナーを重ねたラインについては、いづれもランク3前後と、急激にチリ発生量が増え、十分な画質は得られなかった。
このように、トナー間非静電付着力の増加量が3[nN]以上である実施例1では、複数色のトナー像からなるカラー画像であっても転写チリを低減し、良好な画像を得ることができた。一方、トナー間非静電付着力の増加量が約1.5[nN]の比較例1では、複数色のトナー像からなるカラー画像では転写チリが多く発生した。これにより、トナー間非静電付着力の増加量が3[nN]以上となるように、荷重Fを調節するこことにより、トナー間付着力が転写チリの原因となるトナー間の静電反発力を上回り、転写チリを低減することができることが明らかになった。
【0032】
次に、荷重Fの調節について説明する。
まず、粉体層圧縮・引張強度自動計測システム、アグロボット(ホソカワミクロン製)を用いて、使用するトナーに掛かる圧縮圧とその時のトナー間非静電付着力を圧縮圧を変えて何点か測定し、図2に示すような回帰直線を求める。なお、測定データの補間には回帰直線に限らず、任意の関数を用いてよい。ここで、この回帰直線を荷重0の点に外挿した時のトナー間非静電付着力をそのトナーに荷重を掛けない場合の非静電付着力をFt0
とする。
次に一次転写ローラに付属のバネを調節することで一次転写ニップに掛かる荷重Fを調整する。そして、I-SCANを用いて荷重Fを加えた時のニップ内の平均圧力Pとニップ幅を測定する。測定されたニップ幅に一次転写部材の軸方向接触長さを掛けたものがニップ面積Snになり、荷重Fの値がF=P×Snによって求められる。
そして、先に求めた回帰直線を用いることで、荷重F時の圧力PのI倍の圧縮圧を掛けた場合のトナー間非静電付着力を求めることが出来る。この値をFtとしてFt-Ft0≧3[nN]になるように一次転写ローラのバネを調整することで、画像形成に適した荷重Fとすることができる。」

エ 「【0033】
[実施例2]
次に、実施例2で使用されるトナーとトナー間非静電付着力の測定方法について説明する。
本実施例で用いたトナーの製法を以下に示す。
樹脂としてポリエステル樹脂を100[重量部]、を帯電制御剤としてサリチル酸亜鉛塩を2[重量部](ボントロンE84、オリエント化学社製)を、着色剤として、ブラックトナーはカーボンブラックを7.5[重量部](カーボンブラック#44、三菱化学社製)を用いる。イエロートナーはC.I.ピグメントイエロー180を5[重量部](PV Fast Yellow HG(クラリアント))を用いる。マゼンタ-トナーはC.I.ピグメントレッド122を4[重量部](Hostaperm Pink E(クラリアント))を用いる。そして、シアントナーはC.I.ピグメントブルー15:3を2[重量部](Lionol Blue FG-7351(東洋インキ))を用いる。
上述の各処方量の剤を作成後、ミキサーで予備混練を行ない、次いで3本ロールミルで溶融混練を実施した。次に混練物を冷却し、約0.5?3[mm]に粗粉砕した後IDS2型ジェット粉砕機で粉砕した。そして、分級して平均粒径7.75[μm]、5[μm]以下の個数[%]が12.85、16[μm]以上の体積[%]が0.07のトナーを得た。
得られたトナーの真円度は各色トナーとも1.5であった。
上述のようにして得られたトナーは、実施例1の球形トナーに対して、不定形(粉砕)トナーである。
【0034】
実施例2で用いるキャリアは次のようにして作成することができる。
2ヒドロキシエチルメタルリレ-ト/メチルメタクリレ-ト/スチレンの共重合体とビニリデンフルオロライド/テトラフルオロエチレンの共重合体を75/25の重量比の樹脂を平均粒径35[μm]のフェライト芯材に0.75[重量%](芯材基準)をコ-テイングして得られる被覆キャリアを用いる。
【0035】
現像剤としては、トナー濃度が5[%]になるように、また、トナーとキャリアの合計量が1000[g]になるように計量して現像剤を作製する。
なお、実施例2においてもトナー間非静電付着力Ftの測定は実施例1と同様な方法で行った。
次に、実施例2(審決注;「実施例1」は「実施例2」の明らかな誤記であるので訂正して摘記した。)で用いるシアントナーを用いて、粉体層圧縮・引張強度自動計測システム、アグロボットで、圧縮圧PCの値を変えて、複数の圧縮圧PCの値に対する破断応力Stを測定した。そして、この破断応力Stを用いてトナー間非静電付着力Ftを求めたところ、トナー間非静電付着力Ftとトナー層への圧縮圧PCは図3中の丸印のように求められた。なお、ブラック、マゼンタ、イエローについても同様な実験結果が得られた(各色で有意差は認められなかった)。
さらに、実施例1と同様の方法で、実施例2で用いる各色の未圧縮時のトナー間非静電付着力Ftを求めたところイエロー、及びシアンは、11.3[nN]となり、マゼンタは10.9[nN]となり、ブラックは10.7[nN]となった。
【0036】
次に、評価用画像出力機として実施例1と同様にIPSio CX400を用い、同様の方法で一次転写ニップへの荷重を設定した。また、評価用画像出力機では、中間転写ベルト搬送速度と各静電潜像担持体の回転速度(線速)を等しくしてある。更に、オイラーベルト法を用いて測定された、感光体ドラム2と中間転写ベルト5との摩擦係数も実施例1と同様にそれぞれ0.20と0.35とであった。
【0037】
[実験2]
次に、実施例2と比較例2とで転写チリの発生状態を比較した実験2について説明する。
実施例2では、各一次転写ニップにおいて、荷重Fを3[N]に設定した。この時の、各色トナーのトナー間非静電付着力は約18[nN]となった。
一方、比較例2として、評価用画像出力機で一次転写ニップに掛ける荷重Fを各色8[N]とした場合の画像評価も併せて行った。この場合には、トナー間非静電付着力は各色トナーとも約22[nN]となる。
評価用画像出力機での画像形成条件は、実施例2と比較例2とのそれぞれの一次転写ニップ荷重で同等のトナー転写効率が得られるように調整を行い、中間転写ベルト上のトナー量が同等となるようにしてある。
なお、評価用画像として実験1と同様のパターンを用いた。
実験2の結果を表3に示す。
【0038】
【表3】

【0039】
表3が示すように、実施例2、比較例2とも転写チリの発生は殆どない画像を得ることが出来たが、比較例2では、中抜け画像が発生し、総合的な画像としては低品質なものとなってしまった。一方、実施例2では中抜け画像の発生もなく高品質の画像を得ることが出来た。」

オ 図2から、回帰直線は、圧縮圧0MPs[0N/mm^(2)](0kgf/mm^(2))のときのトナー間非静電付着力5nN/mm^(2)[5×10^(-9)N/mm^(2)](0.51×10^(-9)kgf/mm^(2))の点及び圧縮圧2MPs[2N/mm^(2)](0.2039kgf/mm^(2))のときのトナー間非静電付着力22.4nN/mm^(2)[22.4×10^(-9)N/mm^(2)](2.28×10^(-9)kgf/mm^(2))の点を通過することが見て取れるから、その傾きは、8.7×10^(-9)(=(22.4×10^(-9)N/mm^(2)-5×10^(-9)N/mm^(2))÷(2N/mm^(2)-0N/mm^(2))=(2.28×10^(-9)kgf/mm^(2)-0.51×10^(-9)kgf/mm^(2))÷(0.2039kgf/mm^(2)-0kgf/mm^(2)))であることが分かる。

カ 図3から、回帰直線は、圧縮圧0MPs[0N/mm^(2)](0kgf/mm^(2))のときのトナー間非静電付着力11.3nN/mm^(2)[11.3×10^(-9)N/mm^(2)](1.15×10^(-9)kgf/mm^(2))の点及び圧縮圧2MPs[2N/mm^(2)](0.2039kgf/mm^(2))のときのトナー間非静電付着力70.0nN/mm^(2)[70.0×10^(-9)N/mm^(2)](7.14×10^(-9)kgf/mm^(2))の点を通過することが見て取れるから、その傾きは、2.9×10^(-8)(=(70.0×10^(-9)-11.3×10^(-9)N/mm^(2))÷(2N/mm^(2)-0N/mm^(2))=(7.14×10^(-9)kgf/mm^(2)-1.15×10^(-9)kgf/mm^(2))÷(0.2039kgf/mm^(2)-0kgf/mm^(2)))であることが分かる。

キ 上記アないしカから、引用例1には、
「互いに異なる4色であるイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーを用いる4組の画像形成ユニットが、中間転写体としての中間転写ベルトの移動方向に沿って並設され、
各画像形成ユニットは、感光体ドラムと、各感光体ドラムの表面をコロナ放電によって帯電する帯電装置と、画像情報に基づいて各感光体ドラムの帯電された表面を露光することにより表面に潜像を形成する露光装置としてのLEDアレイヘッドと、各感光体ドラム上の潜像をトナー像化する画像形成手段としての現像装置と、各感光体ドラムの表面をクリーニングする感光体クリーニング装置とを備え、
前記中間転写ベルトは、例えば中抵抗の無端状のベルト材で構成され、二次転写ローラ及び複数の支持ローラに掛け回されており、
各感光体ドラムから中間転写ベルトにトナー像を転写する一次転写位置には、中間転写ベルトを間に挟んで各感光体ドラムに対向するように一次転写ローラが設けられており、
前記中間転写ベルトは、各一次転写ローラによって押圧されることにより、各感光体ドラムに対して圧接し、それぞれの感光体ドラムとの対向部で一次転写ニップを形成しており、
各一次転写ローラにはバネが付属しており、該バネを調節することで各一次転写ニップに掛かる荷重Fを調整するようになっており、
カラー画像を形成するときは、各感光体ドラムに形成された各色のトナー像が、各一次転写ニップで圧力と転写電界の作用により中間転写ベルト上に順次重ね合わせて転写され、これにより、中間転写ベルト上に4色のトナー像からなるフルカラートナー像が形成され、この中間転写ベルト上に重ね合わされたフルカラートナー像は、二次転写装置と二次転写ローラとの間に形成された二次転写ニップで記録媒体としての転写紙上に転写され、定着装置で定着されるようになっている、タンデム型の画像形成装置において、
感光体ドラム上のトナーは、感光体ドラムと中間転写ベルトで形成される一次転写ニップ近傍での転写電界と圧力とで中間転写ベルト上に移動して、一次転写ニップの転写バイアスによって中間転写ベルト上に転写されたトナーが受ける静電気力は一次転写ニップ通過後は速やかに減少するため、トナーを中間転写ベルト側に抑え付ける力が弱まりトナー間の静電反発力によりトナーが飛散しチリ画像となり画質を損なうおそれがあったので、
前記一次転写ローラを、その軸方向の接触長さが240mmであって、2N、5N、8N、10N及び15Nの荷重Fに対する前記一次転写ニップ幅がそれぞれ0.9mm、1.7mm、1.8mm、2.0mm及び2.5mmになり、それぞれの荷重F印加状態での一次転写ニップ圧Pが0.00926(=2÷(240×0.9))N/mm^(2)、0.01225(=5÷(240×1.7))N/mm^(2)、0.01852(=8÷(240×1.8))N/mm^(2)、0.02083(=10÷(240×2.0))N/mm^(2)及び0.02500(=15÷(240×2.5))N/mm^(2)になるものとし、
一次転写ニップ圧Pに乗算することで圧縮圧PC[N]を求める任意の値Iとして、100を画像面積率vで割り算して求まる値を採用し、標準的な画像評価での画像面積率vを5%、Iを20(=100÷5)として、圧縮圧PC[N]=一次転写ニップ圧P×20とすると、それぞれの荷重F印加状態での圧縮圧PCは0.1852(=0.00926×20)N/mm^(2)、0.2450(=0.01225×20)N/mm^(2)、0.3704(=0.01852×20)N/mm^(2)、0.4166(=0.02083×20)N/mm^(2)及び0.5000(=0.02500×20)N/mm^(2)になり、
ホソカワミクロン製の粉体層圧縮・引張強度自動計測システムであるアグロボットを用いて、使用するトナーに掛かる圧縮圧PCとその時のトナー間非静電付着力Ftを圧縮圧PCを変えて何点か測定して第1回帰直線を求めるとその傾きは8.7×10^(-9)であり、この第1回帰直線を用いて求めた、それぞれの圧縮圧PC印加状態での各色トナーのトナー間非静電付着力Ftは、6.4nN、7.0nN、8.2nN、8.5nN及び9.3nNであり、
イエロー、シアン及びマゼンタトナーの未圧縮時のトナー間非静電付着力Ftは4.9nNであり、ブラックトナーの未圧縮時のトナー間非静電付着力Ftは4.7nNであり、
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、レッド(イエロー+マゼンタ)、グリーン(イエロー+シアン)、ブルー(マゼンタ+シアン)、三色ブラック(イエロー+マゼンタ+シアン)の各色で、中間転写ベルト搬送方向に幅600dpi長さ中間転写ベルト幅方向に最大のラインを、各10本づつ印画し、その印画し定着終了した画像面積率が5%程度の最終画像100枚について、ランク5は、チリのない状況、ランク4は、チリは存在するが、ほとんど目視では確認出来ず、画質的には問題のない状況、ランク3は、目視で若干のチリが確認される程度で画質的にやや問題があると考えられる状況、ランク2は、目視で確認されるチリが多く画質として問題のある状況であり、ランク1は、画像として成立しない状況として、画像のチリ出現状況を各ランクのサンプル画像と見合わせて5段階でランク付けしたところ、
前記一次転写ニップ部に掛ける前記荷重Fを各色ともに8Nとした実施例1の場合、この荷重F印加状態でのトナーのトナー間非静電付着力Ftは8.2nNになり、トナー間非静電付着力の増加は各色トナーとも約3.3nNとなり、何れの評価画像においてもランクが4.5以上となり、転写チリの殆どない良好な画像が得ることができるのに対して、
前記一次転写ニップ部に掛ける前記荷重Fを各色ともに2Nとした比較例1の場合、この荷重F印加状態でのトナーのトナー間非静電付着力Ftは6.4nNになり、トナー間非静電付着力の増加は各色トナーとも約1.5nNとなり、イエロー、シアン及びマゼンタのランクの平均はそれぞれ4.8、4.7、4.7であり、単色ラインについては実施例1とほぼ同等の良好な画像が得られたものの、複数色のトナーを重ねたラインについては、いづれもランク3前後と、急激にチリ発生量が増え、十分な画質が得られないので、
簡易な構造によって、トナー像を感光体ドラムから中間転写ベルトへ転写する際の転写チリを低減するために、
複数の一次転写ニップすべてについて、該一次転写ニップを通過する前の感光体ドラム部分に担持された該トナー像を構成するトナーのトナー間非静電付着力よりも、該一次転写ニップを通過した後の該中間転写ベルトに担持された該トナー像を構成するトナーのトナー間非静電付着力の方が、実施例1のように、3nN以上大きくなるように、前記一次転写ローラに付属のバネを調節することで該一次転写ニップにかかる荷重Fを調節することにより、電界制御のため電極を付加し制御する構造に比べてより簡易な構造で、トナー間付着力が転写チリの原因となるトナー間の静電反発力を上回って転写チリを低減するようにした、画像形成装置であって、
イエロー及びシアントナーの未圧縮時のトナー間非静電付着力Ftがいずれも11.3nNであり、マゼンタトナーの未圧縮時のトナー間非静電付着力Ftが10.9nNであり、ブラックトナーの未圧縮時のトナー間非静電付着力Ftが10.7nNである各トナーに前記トナーを変更し、前記アグロボットを用いて、変更したトナーに掛かる圧縮圧PCとその時のトナー間非静電付着力Ftを圧縮圧PCを変えて何点か測定して第2回帰直線を求めるとその傾きは2.9×10^(-8)であり、この第2回帰直線を用いて求めた、それぞれの圧縮圧PC印加状態での各色トナーのトナー間非静電付着力Ftは、17.3nN、18.8nN、22.6nN、23.8nN及び26.3nNであり、
前記一次転写ニップ部に掛ける前記荷重Fを各色ともに3Nに設定した実施例2の場合、この荷重F印加状態でのトナーのトナー間非静電付着力Ftは約18nNになり、トナー間非静電付着力の増加は各色トナーとも約7nNとなり、何れの評価画像においてもランクが4.5以上となり、転写チリの殆どない良好な画像が得ることができるとともに中抜け画像の発生もなく高品質の画像を得ることが出来たのに対して、
前記一次転写ニップ部に掛ける前記荷重Fを各色ともに8Nに設定した比較例2の場合、この荷重F印加状態でのトナーのトナー間非静電付着力Ftは約22nNになり、トナー間非静電付着力の増加は各色トナーとも約11nNとなり、何れの評価画像においてもランクが4.6以上となり、転写チリの発生は殆どない画像を得ることが出来たが、中抜け画像が発生し、総合的な画像としては低品質なものとなってしまったので、
前記一次転写ニップ部のいずれを通過した後であっても、各色のトナーの前記トナー間非静電付着力が20nN以下となり、該一次転写ニップを通過した後の該中間転写ベルトに担持された該トナー像を構成するトナーのトナー間非静電付着力が該一次転写ニップを通過する前の感光体ドラム部分に担持された該トナー像を構成するトナーのトナー間非静電付着力よりも増加する量が各色トナーとも8.7nN以下となるように前記荷重Fを調整するようにして、中抜け画像の発生もなく高品質の画像を得ることが出来るようにした、画像形成装置。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

(2)当審拒絶理由に引用した「本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-318485号公報(以下「引用例2」という。)」には、図とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】乾式二成分あるいは一成分現像剤を用いた電子写真装置において、画像不良の発生が少なく、生産性に優れる電子写真用トナーとこれを用いた画像形成方法並びに装置を提供する。又、乾式二成分あるいは一成分現像剤を用いた複写機、プリンター、ファクシミリの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、電子写真方式には多様な方法が知られており、一般的には像担持体(感光体)表面を帯電させ、帯電させた像担持体を露光して静電潜像を形成する。次いで、静電潜像を電子写真用トナーを用いて可視像として、該像担持体上にトナー像を形成する。さらに、該トナー像を転写体に転写して加熱、圧力もしくはこれらの併用によって定着することにより、転写体上に画像が形成された記録物が得られる。なお、トナー像転写後の像担持体上に残ったトナーは、ブレード、ブラシ、ローラ等の既知の方法によりクリーニングされる。
【0003】近年の電子写真技術の動向としてデジタル化及び高画質化が要求されており、例えば解像度は1200dpi以上の高解像のものが検討されていて、これを実現するために従来以上に高精細の画像形成方式が望まれている。潜像を可視化するトナー及び現像剤に対しても、高精細画像を形成するためにさらなる小粒径化が検討され実現化されつつある。例えば特開平1-112253号公報、特開平2-284158号公報、特開平3-181952号公報、特開平4-162048号公報などに特定の粒径分布を有する小粒径トナーが各種提案されている。
【0004】しかしながら、小粒径トナーは従来と較べて、トナー同士あるいは感光体に代表される他部材との付着力が無視できなくなる。該付着力は電子写真装置のほぼ全ての画像形成工程に影響してその画質を左右するが、特に現像工程における地肌汚れ、転写工程における中抜け現象及び転写チリ、クリーニング工程におけるクリーニング残など画像不良の発生機構に直接的に関与し、トナーの小粒径化によりこれらの効果が助長されるため、トナーの付着力制御はトナー粒子設計における重要な課題の1つである。
【0005】現像工程、特に、二成分現像剤を例とすると、現像ニップ内ではベタ現像をするために充分に多量のトナーが一旦感光体表面に接触(付着)し、現像電界によるクーロン力の向きと大きさによって、最終的に感光体側に付着する(現像される)か、キャリア側に戻る(スキャベンジされる)かが決まる。現像電界が一定ならば、クーロン力の向きと大きさはトナー粒子の帯電量で決まるが、トナー粒子の帯電量は分布を持っており、それぞれトナー粒子の挙動が異なる。一般に、現像ニップには地肌汚れを減少させる目的で現像バイアスが印加されており、現像ニップ内で地肌部上に存在する多数の正常に帯電したトナーに対してはキャリア側にスキャベンジされる大きなクーロン力が働くため、地肌汚れは抑制される。しかし、現像剤中に存在する少数の逆帯電トナーに対しては、感光体側に付着する方向にクーロン力が働くため、地肌部には逆帯電トナーが付着する。また、弱帯電トナーの場合はキャリア側へのクーロン力が小さいため、キャリアにスキャベンジされずに地肌部に残り易くなる。したがって、感光体上の地肌汚れトナーは現像剤中に含まれる逆帯電トナー及び弱帯電トナーが主に地肌部に付着していると考えられてきた。これは、主に現像剤の経時劣化や現像剤の混合攪拌不足による現像剤中の逆帯電及び弱帯電トナー数の増加が原因であると予測される。
【0006】そこでこれらの問題対策として、現像剤中の逆・弱帯電トナーを減少させるような手段が従来提案されており、例えば特開平4-110861号公報に現像剤のトナー粒子帯電量分布における適正帯電領域の分布面積を規定することで現像剤中の逆・弱帯電トナー量を規制した地肌汚れの無いシステムが開示され実際に電子写真装置内で利用されている。
【0007】しかしながら、近年の動向として、高画質化に向けたトナーの小粒径化や、低エネルギー定着の為に軟化点を低くしたトナーが順次開発され、上記のような工夫のみでは対応できないような問題が生じてきており、単に現像剤中のトナー帯電量分布の規制のみでは解決できない問題、すなわち新規トナーを用いた場合には前述のような従来の対策だけでは地肌汚れがよくならないという問題が顕在化し、トナー付着力の制御が重要な課題となってきた。
【0008】また、転写工程は電界による静電気力でトナーを感光体から転写体上に移動させる行程であり、転写特性はトナーの付着力と電界による静電気力の力関係で決定されるので、トナーの付着力制御は転写設計上重要な要素になる。ローラ転写、ベルト転写を用いた場合、感光体上のトナー像が転写体に押し付けられると、反作用により該トナーが感光体上に押し固められて、トナーと感光体間の付着力およびトナー粒子/トナー粒子間付着力が大きくなり、トナーが転写体に転写されることなく感光体上に残留しやすくなる。この現象は、特に圧力がかかりやすい細線部の中心に起こり易く、画像の中抜けが発生する。このため、画像の中抜けを改善するためには、トナーと感光体間の付着力およびトナー粒子/トナー粒子間付着力または感光体と転写体間にかかる圧力を低減させることが必要である。
【0009】トナーと感光体間の付着力は、トナーの帯電に起因する静電的付着力とそれ以外の非静電的付着力に分類されるが、静電的付着力はトナーの帯電量に依存し、帯電量を下げることによって低減することができる。しかし、トナーの帯電量が小さすぎると、電界による静電気力でトナーを転写させることができなくなるという問題があった。
【0010】トナーの付着力に関する報告例として、例えば特開平5-333757号、公報特開平6-167825号公報、特開平6-167826号公報等がある。しかしながら、上記報告例ではトナーの付着力を静電的付着力と非静電的付着力に分類して検討していない。また、特開平8-305075号では、トナーの非静電的付着力と画質の関係について検討し、トナーの非静電的付着力を一定値以下に規定している。トナーの非静電的付着力はトナーの粒径に依存して変化するが、特開平8-305075号では、非静電的付着力とトナー粒径の関係については規定していない。
【0011】一般に、トナー同士あるいはトナー/他部材間の付着力は分布を有している。トナーの付着力分布が広く、付着力が大きすぎる、または小さすぎるトナーが多い場合は画像不良が発生し易いため、トナーの付着力分布をシャープにする必要がある。一般に、トナー粒子の付着力は粒径に依存して変化する。このため、トナーの付着力分布をシャープにするには、粒径分布をシャープにする必要がある。しかし、粒径分布をシャープにするには、製造工程において従来以上の粉砕精度が要求される、あるいは厳しい分級精度が要求されるなどの課題があり、例えば特開平5-134455号公報、特開平6-273978号公報、特開平7-333890号公報などで様々な新規製造技術による対策を講じてはいるが、結果的には製造コストの増加を招く要因となっていた。また、厳しい精度による分級を実施する場合従来以上に廃棄物量が増加するために、環境エコロジーの面からも、トナー粒径分布のシャープ化以外の簡便な方法による付着力分布の制御技術を確立する要求が高まっていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、トナー粒子と他部材間の非静電的付着力(トナー電荷に起因しない付着力)を制御することにより、画像不良の発生が無い高画質な画像形成を可能とし、さらに原材料のロスを助長する極端な分級処理などを必要としない生産性に優れる電子写真用トナーと、これを用いた画像形成方法、及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題を鑑みて、様々な電子写真用トナー粒子と電子写真用感光体間の付着力を遠心分離法によって定量的に評価し、画像不良との関係を検討した結果、非静電的付着力がある条件を満たした電子写真用トナーを使用することにより、上記画像不良を改善し得ることを見出し、本発明に至った。
【0014】即ち、本発明のトナーは、遠心分離法によって測定される電子写真用トナーと電子写真感光体間に働く付着力の内、トナーの帯電に起因しない非静電的付着力に関して、該電子写真用トナーにおける粒径範囲がD±d(μm)、dが2μm以下であるトナー粒子群に対する非静電的付着力の平均値をFne(D)(nN)とした場合に、トナー粒径Dを横軸とし、Fne(D)を縦軸としてプロットしたグラフにおける一次回帰直線の比例係数が5(nN/μm)以下であることを特徴とする。ここで、電子写真用トナーと電子写真用感光体の非静電的付着力は、ファンデルワールス力、液架橋力、分子間力等から構成される。」

イ 「【0021】
【発明の実施の形態】まず、遠心分離法によるトナーと感光体間の付着力測定方法について説明する。トナーの付着力を測定する方法は、トナーの付着している物体からトナーを分離するのに必要な力を見積もる方法が一般的である。トナーを分離させる方法としては、遠心力、振動、衝撃、空気圧、電界、磁界等を用いた方法が知られている。この内、遠心力を利用した方法は定量化が容易で、かつ測定精度が高い。このため、本発明ではトナーと感光体間の付着力を測定する方法として、遠心分離法を用いた。
【0022】以下、遠心分離によるトナー付着力測定方法について説明するが、IS&TNIP7th p.200(1991)などに記載されている方法が知られている。
【0023】まず、トナー付着力測定を実施する際の装置について説明する。図1、図2は、本発明に係るトナー付着力測定装置の測定セル、遠心分離装置の一例を示す図である。
【0024】図1は、トナー付着力測定装置の測定セルの説明図である。図1において、1は測定セルであり、測定セル1は、トナーを付着させた試料面2aを有する試料基板2と、試料基板2から分離したトナーを付着させる付着面3aを有する受け基板3と、試料基板2の試料面2aと受け基板3の付着面3aの間に設けられたスペーサ4から構成される。
【0025】図2は、遠心分離装置の一部断面図である。図2において、5は遠心分離装置であり、遠心分離装置5は、測定セル1を回転させるロータ6と、保持部材7を備えている。ロータ6は、自身の回転中心軸9に対して垂直な断面で穴形状であり保持部材7を設置する試料設置部8を有している。保持部材7は、棒状部7aと、棒状部7aに設けられ測定セル1を保持するセル保持部7b、測定セル1をセル保持部7bから押し出すための穴部7c、棒状部7aを試料設置部8に固定する設置固定部7dを備えている。セル保持部7bは、測定セル1を設置したときに、測定セル1の垂直方向がロータの回転中心軸9に垂直となるように構成される。
【0026】次に、上記の装置を用いてトナーの非静電的付着力を測定する方法を説明する。まず、試料基板2上に直接感光体を形成するか、または感光体の一部を切り出して試料基板2上に接着剤で貼り付ける。次に、未帯電のトナーを、試料基板2上の感光体(試料面2a)上に付着させる。次に、図1のように、試料基板2、受け基板3及びスペーサ4を用いて測定セル1を構成する。測定セル1を、保持部材7をロータ6の試料設置部8に設置したときに、試料基板2が受け基板3とロータ6の回転中心軸9の間になるように、保持部材7のセル保持部7bに設置する。保持部材7を、測定セル1の垂直方向がロータの回転中心軸9に垂直となるように、ロータ6の試料設置部8に設置する。遠心分離装置5を稼働してロータ6を一定の回転数で回転させる。試料基板2に付着したトナーは回転数に応じた遠心力を受け、トナーの受ける遠心力がトナーと試料面2a間の付着力よりも大きい場合は、トナーが試料面2aから分離し、付着面3aに付着する。
【0027】トナーの受ける遠心力Fは、トナーの重量m、ロータの回転数f(rpm)、ロータの中心軸から試料基板のトナー付着面までの距離rを用いて、式(1)より求められる。
F=m×r×(2πf/60)^(2) (1)
【0028】トナーの重量mは、トナーの真比重ρ、円相当径dを用いて、式(2)より求められる。
m=(π/6)×ρ×d^(3) (2)
【0029】式(1)と式(2)より、トナーの受ける遠心力Fは、式(3)から求められる。
F=(π^(3)/5400)×ρ×d^(3)×r×f^(2) (3)
【0030】遠心分離終了後、保持部材7をロータ6の試料設置部8から取り出し、保持部材7のセル保持部7bから測定セル1を取り出す。受け基板3を交換し、測定セル1を保持部材7に設置し、保持部材7をロータ6に設置し、ロータ6を前回よりも高回転数で回転させる。トナーの受ける遠心力が前回よりも大きくなり、付着力の大きなトナーが、トナーが試料面2aから分離して付着面3aに付着する。
【0031】遠心分離装置の設定回転数を低回転数から高回転数へ変えて同様の操作を実施することにより、各回転数で受ける遠心力と付着力の大小関係に応じて、試料面2a上のトナーが付着面3aに移動する。
【0032】全ての設定回転数について遠心分離を実施後、各回転数の受け基板3の付着面3aに付着したトナーの粒径を計測することにより、式(3)を用いて各トナーの付着力を求めることができる。
【0033】トナーの粒径及び個数の測定は、光学顕微鏡で付着面3a上のトナーを観察し、その画像をCCDカメラを通して画像処理装置に入力し、画像処理装置を用いて各トナーの粒径測定をおこなうことができる。
【0034】図3に、上記の方法によって測定したトナーと感光体間の非静電的付着力Fneの常用対数分布の一例を示す。図3のように、非静電的付着力分布は平均値Favと標準偏差σで特徴づけられる。平均値Favと標準偏差σは、トナーの平均粒径、粒径分布、形状、構成材料、添加剤等の様々な条件によって変化する。
【0035】上記の測定方法では、受け基板3の付着面3aに付着した各トナーの粒径を測定しているので、各粒径毎の非静電的付着力の平均値を求めることができる。このため、一回の付着力測定によって、測定したトナーに関する粒径と付着力の関係を求めることができる。任意のトナー粒径D(μm)を横軸、粒径範囲D±0.5(μm)における各非静電的付着力の平均値Fne(D)(nN)を縦軸として、測定値をプロットした結果を図4に示す。なお、図4における平均値Fne(D)は、粒径がD±0.5(μm)の範囲内にあるトナーに対する非静電的付着力の常用対数について算術平均値Aを算出し、Fne(D)=10^(A)から求めた。
【0036】図4のように、各粒径における非静電的付着力の平均値Fne(D)は粒径Dに比例する。図4における直線は測定値の一次回帰直線で、この一次回帰直線の比例係数をKとする。同じ構成材料を用いて作製したトナーでも、トナーの粒径分布や平均粒径が異なると、トナー全体の非静電的付着力の平均値Favは異なる値をとる。しかし、各粒径毎のトナー数が変わっても、各粒径毎の非静電的付着力の平均値Fne(D)は変わらないので、比例係数Kはトナーの粒径分布、平均粒径に依存しない。このため、比例係数Kを用いることにより、粒径分布や平均粒径の違いを考慮せずに、トナー付着力の大小関係を比較することができる。ただし、非静電的付着力の平均値Fne(D)を求める際の粒径範囲が広すぎると、Fne(D)が粒径分布によって変わってしまうので、検討の結果、粒径範囲D±d(μm)におけるdは2μm以下にする必要があることが判明した。」

ウ 「【0074】残留トナーを除去された感光体ドラム21は除電ランプ39で初期化され、次回の画像形成プロセスに供される。なお、図5の例は一つの感光体ドラムと一つの現像装置を用いた白黒画像形成装置だが、本発明は白黒画像形成装置には限定されず、一つの感光体ドラムと複数の現像装置、または複数の感光体ドラムと現像装置を用いたカラー画像形成装置にも適用できる。」

エ 「【0075】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により、何等限定されるものではない。まず、実施例に使用した不定形のトナー母粒子について説明する。なお、以下で示す部はすべて重量基準である。
【0076】
ポリエステル樹脂(重量平均分子量25万) 80部
スチレン-メチルメタアクリレート共重合体 20部
酸価ライスワックス(酸価15) 5部
カーボンブラック(三菱化成工業社製、#44) 8部
含金属モノアゾ染料 3部
【0077】上記組成の混合物をヘンシェルミキサー中で十分撹拌混合した後、ロールミルで130?140℃の温度で約30分間加熱溶融し、室温まで冷却後、ハンマーミルを用いて得られた混練物を約1mm?2mmに粗粉砕し、ジェットミルで微粉砕し、得られた微粉末を分級し、体積平均粒径が4.1μm(トナー母粒子A)、7.2μm(トナー母粒子B)、9.1μm(トナー母粒子C)の不定形トナー母粒子を得た。また、分級条件を変えることにより、粒径分布の狭い体積平均粒径が7.2μmのトナー母粒子(トナー母粒子D)も作製した。トナー粒径分布の測定は、中性界面活性剤を添加した電解水溶液中にトナーを分散し、コールター社製粒径測定装置TA-II型を用いて実施した。図6にトナー母粒子B、図7にトナー母粒子Dの粒径分布を示す。
【0078】(実施例1)外添剤として一次粒子径の平均値が14nmの疎水性シリカ(キャボット製TS-720)を用い、トナー母粒子Aと該シリカ(シリカA)とを、シリカAの添加量がトナー重量の0.6重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって混合処理してトナーを作製した。ヘンシェルミキサーの混合羽根の回転数は1500rpmで、回転時間は5分間とした。
…略…
【0101】有機感光体を形成したPETフィルムを直径7.8mmの円板状に切り出し、遠心分離に使用する試料基板上にプラスチック用接着剤を用いて貼り付けた。圧縮空気によって未帯電のトナーを飛散させて、有機感光体上にトナーを付着させた。
【0102】前述した遠心分離法によってトナーと感光体間の非静電的付着力を測定し、比例係数Kと標準偏差σを求めた。比例係数Kと標準偏差σの測定結果を表1に示す。
【0103】付着力測定に使用した装置及び測定条件は以下のとおりである。
遠心分離装置:日立工機製CP100α(最高回転数:100000rpm、最大加速度:800,000g)
ロータ:日立工機製アングルロータP100AT
画像処理装置:インタークエスト製Hyper700
試料基板と受け基板:直径8mm、厚み1.5mmの円板で、材料はアルミニウム
スペーサ:外径8mm、内径5.2mm、厚み1mmでのリングで、材料はアルミニウム
保持部材:直径13mm、長さ59mmの円筒で、材料はアルミニウム
ロータの中心軸から試料基板のトナー付着面までの距離:64.5mm
設定回転数f:1000、1600、2200、2700、3200、5000、7100、8700、10000、15800、22400、31600、50000、70700、86600、100000(rpm)
【0104】(複写試験)実施例及び比較例のトナーを、リコー製Imagio MF3550(二成分現像方式のモノクロ複写機)用のキャリアと、トナー濃度が2.5重量%となるように混合して2成分現像剤を作製した。各現像剤について、リコー製Imagio MF3550を使用して5万枚の連続複写を実施した。なお、複写試験では、前記付着力測定の際に使用した感光体材料をアルミニウム製の感光体ドラム(φ60mm)上に浸漬法で形成し、Imagio MF3550((株)リコー製)の感光体ドラムとして用いた。主な複写条件を以下に示す。
【0105】複写速度:35CPM
感光体の線速:180mm/s
画素密度:400dpi
感光体表面電位:-150V?-950V
現像電圧:-550V
【0106】現像剤を交換後の初期の画像及び5万枚の連続複写後の画像について、地肌汚れ、中抜け画像の評価を実施した。なお、現像剤を交換する時には、同時に感光体も未使用品に変更した。
【0107】各評価項目に対する4段階の評価見本を用意し、複写画像及び感光体表面を目視及びCCD顕微鏡カメラ(キーエンス社ハイパーマイクロスコープ)によって観察し、評価見本と比較することによって4段階に評価した。複写試験の評価結果を表1に示す。各段階の評価はそれぞれ以下の状態を表す。
4:問題が無い
3:ほぼ問題が無い
2:やや問題がある
1:問題がある
【0108】表1において、実施例1?実施例5は平均粒径4.1μmのトナー母粒子A、実施例6?実施例10は平均粒径7.2μmのトナー母粒子B、実施例11?実施例15は平均粒径9.1μmのトナー母粒子Cに対して外添剤添加量を変えた場合の結果を示している。表1のように、外添剤被覆率はトナー母粒子の粒径と外添剤添加量の組み合わせによって変化する。実施例2?実施例5、実施例7?実施例10、実施例12?実施例15は外添剤被覆率が8%以上で、比例係数Kが5(nN/μm)以下、標準偏差σが0.65以下となって、初期及び5万枚複写後に画像不良が無く、良好な複写画像を形成することができた。また、実施例1、実施例6、実施例11の場合は、外添剤被覆率は8%以下で、標準偏差σが0.65以上だが、比例係数Kは5(nN/μm)以下で、他の実施例よりは複写試験の評価が低いが、ほぼ問題のない画像が得られた。これに対して、比較例1?比較例3は、比例係数Kが5(nN/μm)以上、標準偏差σが0.65以上となって、初期及び5万枚複写後に画像不良が発生した。
【0109】
【表1】

【0110】(実施例16)トナー母粒子DとシリカAとを、シリカAの添加量がトナー量の0.2重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理してトナーを作製した。ヘンシェルミキサーの混合羽根の回転数は1500rpmで、回転時間は5分間とした。
【0111】(実施例17)トナー母粒子DとシリカAとを、シリカAの添加量がトナー量の0.3重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理してトナーを作製した。ヘンシェルミキサーの混合羽根の回転数は1500rpmで、回転時間は5分間とした。
【0112】(実施例18)トナー母粒子DとシリカAとを、シリカAの添加量がトナー量の1重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理してトナーを作製した。ヘンシェルミキサーの混合羽根の回転数は2000rpmで、回転時間は5分間とした。
【0113】(比較例4)トナー母粒子DとシリカAとを、シリカAの添加量がトナー量の0.1重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理してトナーを作製した。ヘンシェルミキサーの混合羽根の回転数は1500rpmで、回転時間は5分間とした。
【0114】実施例16?実施例18、比較例4のトナーについて、前記の方法で外添剤被覆率及び非静電的付着力の測定、複写試験を実施し、その結果を表2に示す。
【0115】表2は、体積平均粒径が7.2μmで粒径分布の狭いトナー母粒子Dについて、外添剤添加量を変えた場合の結果を示している。実施例17の場合、外添剤被覆率は8%以下だが、比例係数Kが5(nN/μm)以下、標準偏差σが0.65以下となって、初期及び5万枚複写後に画像不良が無く、良好な複写画像を形成することができた。実施例13の場合は、トナー母粒子の粒径分布がシャープなので、付着力分布もシャープになり、外添剤被覆率が8%以下でも標準偏差σが0.65以下になったと考えられる。実施例14の場合は、外添剤被覆率が8%以上で、比例係数Kが5(nN/μm)以下、標準偏差σが0.65以下となって、初期及び5万枚複写後に画像不良が無く、良好な複写画像を形成することができた。また、実施例16の場合は、標準偏差σが0.65以上だが、比例係数Kが5(nN/μm)以下で、他の実施例よりは複写試験の評価が低いが、ほぼ問題のない画像が得られた。これに対して、比較例4の場合、外添剤被覆率が8%以下で、比例係数Kが5(nN/μm)以上、標準偏差σが0.65以上となって、初期及び5万枚複写後に画像不良が発生した。
【0116】
【表2】

【0117】(実施例19)外添剤として一次粒子径の平均値が40nmの疎水性シリカ(日本エアロジル製RY-50)を用い、トナー母粒子Bと該シリカ(シリカB)とを、シリカBの添加量がトナー重量の1.0重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって混合処理してトナーを作製した。ヘンシェルミキサーの混合羽根の回転数は2000rpmで、回転時間は5分間とした。
【0118】(実施例20)トナー母粒子BとシリカBとを、シリカBの添加量がトナー量の2.0重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理してトナーを作製した。ヘンシェルミキサーの混合羽根の回転数は2500rpmで、回転時間は5分間とした。
【0119】(実施例21)トナー母粒子BとシリカBとを、シリカBの添加量がトナー量の3.0重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理してトナーを作製した。ヘンシェルミキサーの混合羽根の回転数は3000rpmで、回転時間は5分間とした。
【0120】(比較例5)トナー母粒子BとシリカBとを、シリカBの添加量がトナー量の0.3重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理してトナーを作製した。ヘンシェルミキサーの混合羽根の回転数は1500rpmで、回転時間は5分間とした。
【0121】(比較例6)トナー母粒子BとシリカBとを、シリカBの添加量がトナー量の0.8重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理してトナーを作製した。ヘンシェルミキサーの混合羽根の回転数は2000rpmで、回転時間は5分間とした。
【0122】実施例19?実施例21、比較例5、比較例6のトナーについて、前記の方法で外添剤被覆率及び非静電的付着力の測定、複写試験を実施し、その結果を表3に示す。
【0123】表3は、体積平均粒径が7.2μmのトナー母粒子Bに対して、一次粒子径の平均値が40nmの疎水性シリカの外添剤添加量を変えた場合の結果を示している。トナー母粒子Bと一次粒子径の平均値が14nmの疎水性シリカを組み合わせている実施例6?実施例10の結果と比較すると、一定の外添剤被覆率にするために必要な外添剤添加量や、比例係数K及び標準偏差σの値が外添剤の一次粒子径によって異なることがわかる。実施例20?実施例22はいずれも外添剤被覆率が8%以上で、比例係数Kが5(nN/μm)以下、標準偏差σが0.65以下となって、初期及び5万枚複写後に画像不良が無く、良好な複写画像を形成することができた。これに対して、比較例5、比較例6の場合、外添剤被覆率が8%以下で、比例係数Kが5(nN/μm)以上、標準偏差σが0.65以上となって、画像不良が発生した。
【0124】
【表3】

【0125】(実施例22)外添剤として一次粒子径の平均値が15nmの疎水性酸化チタン(テイカ製MT150A)を用い、トナー母粒子Bと該酸化チタン(酸化チタンA)とを、酸化チタンAの添加量がトナー重量の0.3重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって混合処理してトナーを作製した。ヘンシェルミキサーの混合羽根の回転数は1500rpmで、回転時間は5分間とした。
【0126】(実施例23)トナー母粒子Bと酸化チタンAとを、酸化チタンAの添加量がトナー量の0.4重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理してトナーを作製した。ヘンシェルミキサーの混合羽根の回転数は1500rpmで、回転時間は5分間とした。
【0127】(実施例24)トナー母粒子Bと酸化チタンAとを、酸化チタンAの添加量がトナー量の1.0重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理してトナーを作製した。ヘンシェルミキサーの混合羽根の回転数は2000rpmで、回転時間は5分間とした。
【0128】(実施例25)トナー母粒子Bと酸化チタンAとを、酸化チタンAの添加量がトナー量の2.0重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理してトナーを作製した。ヘンシェルミキサーの混合羽根の回転数は2500rpmで、回転時間は5分間とした。
【0129】(実施例26)トナー母粒子Bと酸化チタンAとを、酸化チタンAの添加量がトナー量の3.0重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理してトナーを作製した。ヘンシェルミキサーの混合羽根の回転数は3000rpmで、回転時間は5分間とした。
【0130】(比較例7)トナー母粒子Bと酸化チタンAとを、酸化チタンAの添加量がトナー量の0.1重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理してトナーを作製した。ヘンシェルミキサーの混合羽根の回転数は1500rpmで、回転時間は5分間とした。
【0131】実施例22?実施例26、比較例7のトナーについて、前記の方法で外添剤被覆率及び非静電的付着力の測定、複写試験を実施し、その結果を表4に示す。
【0132】表4は、体積平均粒径が7.2μmのトナー母粒子Bに対して、一次粒子径の平均値が14nmの疎水性酸化チタンの外添剤添加量を変えた場合の結果を示している。トナー母粒子Bと一次粒子径の平均値が14nmの疎水性シリカを組み合わせている実施例6?実施例10の結果と比較すると、比例係数K及び標準偏差σの値が外添剤の素材によって異なることがわかる。実施例23?実施例26はいずれも外添剤被覆率が8%以上で、比例係数Kが5(nN/μm)以下、標準偏差σが0.65以下となって、初期及び5万枚複写後に画像不良が無く、良好な複写画像を形成することができた。また、実施例22の場合は、外添剤被覆率が8%以下で、標準偏差σが0.65以上だが、比例係数Kは5(nN/μm)以下で、他の実施例よりは複写試験の評価が低いが、ほぼ問題のない画像が得られた。これに対して、比較例7の場合、比例係数Kが5(nN/μm)以上、標準偏差σが0.65以上となって、初期及び5万枚複写後に画像不良が発生した。
【0133】
【表4】

【0134】次に、実施例に使用した球形のトナー母粒子について説明する。
モノマー
スチレン 20部
n-ブチルアクリレート 17.8部
カーボンブラック(三菱化学社製:MA-100) 1部
帯電性御剤(オリエント化学社製:E-84) 0.3部
開始剤:ADVN 1部
水系分散媒
イオン交換水 150部
ポリビニルアルコール 5.2部
【0135】モノマーと水系分散媒を撹拌槽に入れ、ホモジナイザー(特殊機化工業社製)により9500rpmで10分間懸濁させた。この懸濁液を60℃の湯浴中で8時間撹拌させながら重合を行った。重合終了後、一晩放置し、自然沈降させ、これをイオン交換水にて再沈処理を行い、その後#150メッシュに通して凝集物を取り除き、さらに遠心沈降を行った。これを濾過し減圧乾燥を行って、体積平均粒径が7.3μmの球形トナー母粒子(トナー母粒子E)を得た。
【0136】(実施例27)トナー母粒子EとシリカAとを、シリカAの添加量がトナー量の0.2重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理してトナーを作製した。ヘンシェルミキサーの混合羽根の回転数は1500rpmで、回転時間は5分間とした。
…略…
【0148】実施例27?実施例35、比較例8?比較例10のトナーについて、前記の方法で外添剤被覆率及び非静電的付着力の測定、複写試験を実施し、その結果を表5に示す。
【0149】表5において、体積平均粒径が7.3μmの球形トナー母粒子Eに対して、実施例27?実施例29は一次粒子径の平均値が14nmの疎水性シリカ、実施例30?実施例32は一次粒子径の平均値が40nmの疎水性シリカ、実施例33?実施例35は一次粒子径の平均値が15nmの疎水性酸化チタンの外添剤添加量を変えた場合の結果を示している。体積平均粒径が7.2μmの不定形トナー母粒子Bに対する結果と比較すると、一定の外添剤被覆率にするために必要な外添剤添加量や、比例係数K及び標準偏差σの値がトナー母粒子の形状によって異なることがわかる。いずれの実施例も外添剤被覆率が8%以上で、比例係数Kが5(nN/μm)以下、標準偏差σが0.65以下となって、初期及び5万枚複写後に画像不良が無く、良好な複写画像を形成することができた。これに対して、比較例8?比較例10は外添剤被覆率が8%以下で、比例係数Kが5(nN/μm)以上、標準偏差σが0.65以上となって、初期及び5万枚複写後に画像不良が発生した。以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0150】
【表5】

【0151】
【発明の効果】本発明により、トナー粒子と他部材間の非静電的付着力(トナー電荷に起因しない付着力)を制御することにより、画像不良の発生が無い高画質な画像形成を可能とし、さらに原材料のロスを助長する極端な分級処理などを必要としない生産性に優れる電子写真用トナー並びに画像形成方法および画像形成装置を提供することができる。

オ 上記アないしエから、引用例2には、
「小粒径トナーは従来と較べて、トナー同士あるいは感光体に代表される他部材との付着力が無視できなくなり、特に現像工程における地肌汚れ、転写工程における中抜け現象及び転写チリ、など画像不良の発生機構に直接的に関与し、トナーの小粒径化によりこれらの効果が助長されるため、トナーの付着力制御はトナー粒子設計における重要な課題の1つであり、一般に、トナー粒子の付着力は粒径に依存して変化するため、トナーの付着力分布をシャープにするには、粒径分布をシャープにする必要があるが、粒径分布をシャープにするには、製造工程において従来以上の粉砕精度があるいは厳しい分級精度が要求されるので、トナー粒径分布のシャープ化以外の簡便な方法による付着力分布の制御技術を確立する要求が高まっていたので、トナー粒子と他部材間のトナー電荷に起因しない付着力である非静電的付着力を制御することにより、画像不良の発生が無い高画質な画像形成を可能とし、さらに原材料のロスを助長する極端な分級処理などを必要としない生産性に優れる電子写真用トナーを用いた画像形成装置を提供することを目的として、
様々な電子写真用トナー粒子と電子写真用感光体との組み合わせについて、有機感光体を形成したPETフィルムを直径7.8mmの円板状に切り出し、遠心分離に使用する試料基板上にプラスチック用接着剤を用いて貼り付け、圧縮空気によって未帯電のトナーを飛散させて、有機感光体上にトナーを付着させ、試料基板と受け基板とスペーサから構成した測定セルをセル保持部に設置し、保持部材をロータに設置し、遠心分離装置を稼働してロータを一定の回転数で回転させ、トナーの受ける遠心力がトナーと試料面間の付着力よりも大きい場合は、トナーが試料面から分離し、付着面に付着し、遠心分離終了後、セル保持部から測定セルを取り出し、受け基板を交換し、測定セルを保持部材に設置し、保持部材をロータに設置し、ロータを前回よりも高回転数で回転させると、トナーの受ける遠心力が前回よりも大きくなり、付着力の大きなトナーが、トナーが試料面から分離して付着面に付着する同様の操作を、遠心分離装置の設定回転数を低回転数から高回転数へ変えて実施し、その実施後、各回転数の受け基板の付着面に付着したトナーの粒径を計測することにより、各粒径毎の非静電的付着力の平均値を求め、任意のトナー粒径D(μm)を横軸、粒径範囲D±0.5(μm)における各非静電的付着力の平均値Fne(D)(nN)を縦軸として、測定値をプロットし、測定値の一次回帰直線を求め、この一次回帰直線の比例係数をKとし、
前記付着力測定を行った様々な電子写真用トナー粒子を、リコー製Imagio MF3550用のキャリアと、トナー濃度が2.5重量%となるように混合して2成分現像剤を作製し、各現像剤について、前記付着力測定の際に使用した感光体材料をアルミニウム製の感光体ドラム(φ60mm)上に浸漬法で形成した感光体ドラムを用いた、リコー製の二成分現像方式のモノクロ複写機であるImagio MF3550を使用して5万枚の連続複写試験を実施し、地肌汚れ、中抜け画像について、現像剤を交換後の初期の画像及び5万枚の連続複写後の画像について、4:問題が無い、3:ほぼ問題が無い、2:やや問題がある、1:問題があるの4段階の評価を実施したところ、比例係数Kが5(nN/μm)以下となった場合は、初期及び5万枚複写後においていずれも評価が3以上であり、画像不良が無く、良好な複写画像を形成することができるか、あるいはほぼ問題のない画像が得られるのに対して、比例係数Kが5(nN/μm)以上となった場合には、初期及び5万枚複写後の少なくともいずれかで評価が2以下となり画像不良が発生したので、このことから、非静電的付着力がある条件を満たした電子写真用トナーを使用することにより、上記画像不良を改善し得ることを見出し、
リコー製の二成分現像方式のモノクロ複写機であるImagio MF3550を使用する場合には、使用する感光体材料に対して、前記比例係数Kが5(nN/μm)以下であるトナーを使用することにより、原材料のロスを助長する極端な分級処理などを必要としない生産性に優れる電子写真用トナーを使用して画像不良の発生が無い高画質な画像形成を可能とした画像形成装置であって、
白黒画像形成装置には限定されず、複数の感光体ドラムと現像装置を用いたカラー画像形成装置を使用する場合にも適用できる画像形成装置。」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

4 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
(1)引用発明1の「『4組の画像形成ユニット』が各々備えている『感光体ドラム』」、「トナー」、「トナー像」、「『4組の画像形成ユニット』が各々備えている『各感光体ドラム上の潜像をトナー像化する画像形成手段としての現像装置』」、「中間転写体としての中間転写ベルト」、「『中間転写ベルトを間に挟んで各感光体ドラムに対向するように』設けられており、『前記中間転写ベルト』を『押圧』して、『各感光体ドラムに対して圧接し、それぞれの感光体ドラムとの対向部で一次転写ニップを形成』する各『一次転写ローラ』」、「バネ」、「記録媒体としての転写紙」、「画像形成装置」、「『ホソカワミクロン製の粉体層圧縮・引張強度自動計測システムであるアグロボットを用いて、使用するトナーに掛かる圧縮圧PCとその時のトナー間非静電付着力Ftを圧縮圧PCを変えて何点か測定して第1回帰直線を求めるとその傾きは8.7×10^(-9)であり、』、『前記アグロボットを用いて、変更したトナーに掛かる圧縮圧PCとその時のトナー間非静電付着力Ftを圧縮圧PCを変えて何点か測定して第2回帰直線を求めるとその傾きは2.9×10^(-8)であり、』」及び「『その軸方向の接触長さが240mmであって、2N、5N、8N、10N及び15Nの荷重Fに対する前記一次転写ニップ幅がそれぞれ0.9mm、1.7mm、1.8mm、2.0mm及び2.5mmにな』る『一次転写ローラ』に『付属のバネを調節する』ことで『前記一次転写ニップ部に掛ける前記荷重Fを各色ともに8Nとした実施例1』(一次転写ニップ圧Pは=0.01852N/mm^(2)=1.852×10^(4)N/m^(2))及び『前記一次転写ニップ部に掛ける前記荷重Fを各色ともに3Nに設定した実施例2』(2N<F<5Nなので、一次転写ニップ圧Pは、0.00926N/mm^(2)=9.26×10^(3)N/m^(2)<P<0.01225N/mm^(2)=1.225×10^(4)N/m^(2))」は、それぞれ、本願発明の「複数の像担持体」、「トナー」、「トナー像」、「前記複数の像担持体上の潜像にそれぞれトナーを供給してトナー像とする複数の現像手段」、「中間転写体」、「前記中間転写体を介して前記複数の像担持体とそれぞれ対向する位置に配置され、前記中間転写体の裏面に当接する複数の一次転写ローラ」、「加圧スプリング」、「記録体」、「画像形成装置」、「ホソカワミクロン社製アグロボットを用いて、アグロボット用の直径15[mm]の二分割可能なセルに充てんし、圧縮荷重を5?50[kg]の範囲で印加した時のセルを分割するに要する引っ張り破断力から、横軸を圧縮荷重、縦軸を引っ張り破断力としてプロットしたグラフにおける一次回帰直線の比例係数Lが0.3×10^(-3)以下であり、」及び「前記像担持体と前記中間転写体とのニップ部における当接圧力P[N/m^(2)]が、4.0×10^(3)?4.0×10^(4)の範囲にある」に相当する。

(2)引用発明1の「加圧スプリング(バネ)」は、各一次転写ローラに付属しており、これを調節することで各一次転写ニップに掛かる荷重Fを調整するものであるから、本願発明の「前記複数の一次転写ローラのそれぞれの両端に設けられた加圧スプリング」と、「前記複数の一次転写ローラのそれぞれに設けられた」ものである点で一致する。

(3)引用発明1の「画像形成装置」は、カラー画像を形成するときは、「複数の像担持体(各感光体ドラム)」に形成された各色の「トナー像」が、各一次転写ニップで圧力と転写電界の作用により「中間転写体(中間転写ベルト)」上に順次重ね合わせて転写され、これにより、「中間転写体」上に4色の「トナー像」からなるフルカラー「トナー像」が形成され、この「中間転写体」上に重ね合わされたフルカラー「トナー像」は、二次転写装置と二次転写ローラとの間に形成された二次転写ニップで「記録体(記録媒体としての転写紙)」上に転写され、定着装置で定着されるようになっている、タンデム型のものであり、前記「中間転写体」は、前記「一次転写ローラ」に付属の「加圧スプリング(バネ)」を調節することで該一次転写ニップにかける荷重Fが調節された各「一次転写ローラ」によって押圧されることにより、「複数の像担持体」に対して圧接し、それぞれの「像担持体」との対向部で一次転写ニップを形成しているから、本願発明の「両端の前記スプリングの力の合計により前記複数の像担持体に対して前記中間転写体を加圧した状態で、前記複数の像担持体のそれぞれから前記トナー像が前記中間転写体上に順次重ね合わせて転写された後、前記複数の像担持体から順次重ね合わせて前記中間転写体上に転写されたトナー像を前記中間転写体から記録体上に転写する画像形成装置」と、「前記スプリングの力により前記複数の像担持体に対して前記中間転写体を加圧した状態で、前記複数の像担持体のそれぞれから前記トナー像が前記中間転写体上に順次重ね合わせて転写された後、前記複数の像担持体から順次重ね合わせて前記中間転写体上に転写されたトナー像を前記中間転写体から記録体上に転写する」点で一致する。

(4)上記(1)ないし(3)から、本願発明と引用発明1とは、
「複数の像担持体と、
前記複数の像担持体上の潜像にそれぞれトナーを供給してトナー像とする複数の現像手段と、
中間転写体と、
前記中間転写体を介して前記複数の像担持体とそれぞれ対向する位置に配置され、前記中間転写体の裏面に当接する複数の一次転写ローラと、
前記複数の一次転写ローラのそれぞれに設けられた加圧スプリングと、を備え、
前記スプリングの力により前記複数の像担持体に対して前記中間転写体を加圧した状態で、前記複数の像担持体のそれぞれから前記トナー像が前記中間転写体上に順次重ね合わせて転写された後、
前記複数の像担持体から順次重ね合わせて前記中間転写体上に転写されたトナー像を前記中間転写体から記録体上に転写する画像形成装置において、
ホソカワミクロン社製アグロボットを用いて、アグロボット用の直径15[mm]の二分割可能なセルに充てんし、圧縮荷重を5?50[kg]の範囲で印加した時のセルを分割するに要する引っ張り破断力から、横軸を圧縮荷重、縦軸を引っ張り破断力としてプロットしたグラフにおける一次回帰直線の比例係数Lが0.3×10^(-3)以下であり、
前記像担持体と前記中間転写体とのニップ部における当接圧力P[N/m^(2)]が、4.0×10^(3)?4.0×10^(4)の範囲にある
画像形成装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
本願発明では、前記スプリングが、前記一次転写ローラの「両端」に設けられ、前記スプリングの力は両方の「力の合計」であるのに対して、
引用発明1では、前記スプリングが、前記一次転写ローラの両端に設けられるものかどうか明確でない点。

相違点2:
前記トナーの、遠心分離法によって測定されるトナーと前記像担持体間に働く付着力の内、トナーの帯電に起因しない非静電的付着力の平均値をFne[nN]とした場合に、トナーの円相当径D[μm]を横軸とし、Fneを縦軸としてプロットしたグラフにおける一次回帰直線の比例係数Kが、
本願発明では、5.1[nN/μm]?30[nN/μm]であるのに対して、
引用発明1では、5.1[nN/μm]?30[nN/μm]の範囲内かどうか明らかでない点。

5 判断
上記相違点1及び2について検討する。
(1)相違点1について
ア 複数の一次転写ローラのそれぞれの両端に加圧スプリングが設けられており、両端の前記スプリングの力の合計により複数の像担持体に対して中間転写体を加圧するようになっている画像形成装置は、本願の出願前に周知である(以下「周知技術」という。例.特開2007-304223号公報(【0037】、図1、図4参照。)、特開2007-206171号公報(【0161】、【0162】、【0165】、図2参照。)、特開2006-259080号公報(【0020】、【0027】、図1参照。)、特開2006-146187号公報(【0034】、図1、図2参照。)、特開2006-18177号公報(【0044】、図3参照。)、特開2004-318114号公報(【0037】、図1参照。)、特開2004-117543号公報(【0004】、図8参照。)、特開2002-174942号公報(【0035】、図1、図2参照。))。

イ 上記アからみて、引用発明1において、複数の前記「一次転写ローラ」のそれぞれの両端に前記「加圧スプリング(バネ)」を設け、両端の前記「スプリング」の力の合計により複数の前記「像担持体(感光体ドラム)」に対して前記「中間転写体(中間転写ベルト)」を加圧するようになすこと、すなわち、引用発明1において、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術に基づいて適宜なし得た程度のことである。

(2)相違点2について
ア 引用例2には、上記3(2)で述べたとおりの引用発明2(上記3(2)オ参照。)が記載されている。
引用発明2は、「リコー製の二成分現像方式のモノクロ複写機であるImagio MF3550を使用する場合には、使用する感光体材料に対して、前記比例係数Kが5(nN/μm)以下であるトナーを使用することにより、原材料のロスを助長する極端な分級処理などを必要としない生産性に優れる電子写真用トナーを使用して画像不良の発生が無い高画質な画像形成を可能とした画像形成装置」であって、「複数の感光体ドラムと現像装置を用いたカラー画像形成装置」を使用する場合にも適用できるものである。

イ 引用発明1は、感光体ドラム及び現像装置を備えた画像形成ユニットが中間転写ベルトの移動方向に沿って4組並設されたタンデム型の画像形成装置であるから、上記アからみて、引用発明2を適用できるものである。
したがって、引用発明1において、
トナー粒子と他部材間のトナー電荷に起因しない付着力である非静電的付着力を制御することにより、画像不良の発生が無い高画質な画像形成を可能とし、さらに原材料のロスを助長する極端な分級処理などを必要としない生産性に優れる電子写真用トナーを用いた画像形成装置を提供することを目的として、
様々な電子写真用トナー粒子と電子写真用感光体との組み合わせについて、有機感光体を形成したPETフィルムを直径7.8mmの円板状に切り出し、遠心分離に使用する試料基板上にプラスチック用接着剤を用いて貼り付け、圧縮空気によって未帯電のトナーを飛散させて、有機感光体上にトナーを付着させ、試料基板と受け基板とスペーサから構成した測定セルをセル保持部に設置し、保持部材をロータに設置し、遠心分離装置を稼働してロータを一定の回転数で回転させ、トナーの受ける遠心力がトナーと試料面間の付着力よりも大きい場合は、トナーが試料面から分離し、付着面に付着し、遠心分離終了後、セル保持部から測定セルを取り出し、受け基板を交換し、測定セルを保持部材に設置し、保持部材をロータに設置し、ロータを前回よりも高回転数で回転させると、トナーの受ける遠心力が前回よりも大きくなり、付着力の大きなトナーが、トナーが試料面から分離して付着面に付着する同様の操作を、遠心分離装置の設定回転数を低回転数から高回転数へ変えて実施し、その実施後、各回転数の受け基板の付着面に付着したトナーの粒径を計測することにより、各粒径毎の非静電的付着力の平均値を求め、任意のトナー粒径D(μm)を横軸、粒径範囲D±0.5(μm)における各非静電的付着力の平均値Fne(D)(nN)を縦軸として、測定値をプロットし、測定値の一次回帰直線を求め、この一次回帰直線の比例係数をKとし、
前記付着力測定を行った様々な電子写真用トナー粒子を、前記タンデム型の画像形成装置用のキャリアと混合して2成分現像剤を作製し、各現像剤について、前記付着力測定の際に使用した感光体材料をアルミニウム製の感光体ドラム(φ60mm)上に形成した感光体ドラムを用いた前記タンデム型の画像形成装置を使用して5万枚の連続複写試験を実施し、地肌汚れ、中抜け画像について、現像剤を交換後の初期の画像及び5万枚の連続複写後の画像について、4:問題が無い、3:ほぼ問題が無い、2:やや問題がある、1:問題があるの4段階の評価を実施し、初期及び5万枚複写後においていずれも評価が3以上であった電子写真用トナー粒子及び感光体材料について、その比例係数Kが占める範囲と、初期及び5万枚複写後の少なくともいずれかで評価が2以下となった電子写真用トナー粒子及び感光体材料について、その比例係数Kが占める範囲とから、前記比例係数Kが満たすべき範囲を決定し、前記比例係数Kが該満たすべき範囲内であるトナーを使用することにより、原材料のロスを助長する極端な分級処理などを必要としない生産性に優れる電子写真用トナーを使用して画像不良の発生が無い高画質な画像形成を可能となすことは、当業者が引用発明2に基づいて容易に想到することができた程度のことである。

ウ 本願の発明の詳細な説明の段落【0055】及び【0056】には、実施例1の画像評価について次の記載があり、本願の発明の詳細な説明の他の実施例や比較例に関する記載においても「実施例1と同様にして画像の評価を行った」旨記載されている。
してみると、本願発明の「前記トナーは、遠心分離法によって測定されるトナーと前記像担持体間に働く付着力の内、トナーの帯電に起因しない非静電的付着力の平均値をFne[nN]とした場合に、トナーの円相当径D[μm]を横軸とし、Fneを縦軸としてプロットしたグラフにおける一次回帰直線の比例係数Kが5.1[nN/μm]?30[nN/μm]であ」るとの技術事項は、画像形成装置が「リコー製カラー複写機ImagioNeo C600改造機」である場合に良い評価が得られることを確認した技術事項であり、「複数の像担持体と、前記複数の像担持体上の潜像にそれぞれトナーを供給してトナー像とする複数の現像手段と、中間転写体と、前記中間転写体を介して前記複数の像担持体とそれぞれ対向する位置に配置され、前記中間転写体の裏面に当接する複数の一次転写ローラと、前記複数の一次転写ローラのそれぞれの両端に設けられた加圧スプリングと、を備え、両端の前記スプリングの力の合計により前記複数の像担持体に対して前記中間転写体を加圧した状態で、前記複数の像担持体のそれぞれから前記トナー像が前記中間転写体上に順次重ね合わせて転写された後、前記複数の像担持体から順次重ね合わせて前記中間転写体上に転写されたトナー像を前記中間転写体から記録体上に転写する画像形成装置」ならいずれの装置においても良い評価が得られることを確認した技術事項ではない。

「(画像評価)
次に、実施例1で得られたトナーにおいて、リコー製カラー複写機ImagioNeo C600改造機を用いて、転写加圧スプリング力10[N]で評価を行った。本装置の加圧スプリングは、一次転写ローラ14の両端に一つづつ設置されており、転写加圧スプリング力は、両端のスプリング力の合計値である。一次転写部の一次転写ローラ14の長手方向の長さLは0.30mであり、上述した方法で測定したニップ幅Wは0.0030mであった。本実施例で使用される実験装置の感光体の表面粗さRzを上述の方法で測定したところ0.5μmであった。中抜けおよび転写チリの度合いは主操作方向3[ドット]、副操作方向60[ドット]の細線が均等に配置されたテストチャートを使用して、出力された画像に対し、転写チリおよび中抜けの状態をそれぞれ1?5の5段階(1が良い、5が悪い)にランク評価したものであり、濃度ムラの度合いはA4用紙にベタ画像を出力し、同様の評価基準で評価した。
各ランクの評価基準は以下のとおりである。
ランク1:目視観察で異常部が発見されない状態。
ランク2:目視観察で異常部を判断することが難しいくらいに辛うじて異常部を発見できる状態。
ランク3:目視観察で異常部を辛うじて発見でき、その異常部が画像品質を損ねない状態。
ランク4:目視観察で異常部を比較的容易に発見できる状態。
ランク5:目視観察で誰が観察しても異常部をすぐに発見できる状態。
ここで、ランク2以下は画像として問題のない範囲である。
上述の実施例1のトナーと感光体間の付着力の比例係数Kを算出したところ、12[nN/μm]であり、トナー層の圧縮後の凝集性を示す比例係数Lを算出したところ0.02×10^(-3)となった。
画像評価は現像剤を交換後の初期の画像及び5万枚の連続通紙後の画像について評価を行った。
初期の画像評価の結果は転写チリ度は1で、中抜け度は1で、濃度ムラ度は2であった。以下結果を表1に記す。また、5万枚の連続通紙後の画像評価の結果は転写チリ度は1で、中抜け度は1で、濃度ムラ度は2であった。以下結果を表2に記す。」

エ 上記アないしウからして、引用発明1において、前記「トナー」を、遠心分離法によって測定される「トナー」と前記「像担持体(感光体ドラム)」間に働く付着力の内、「トナー」の帯電に起因しない非静電的付着力の平均値をFne[nN]とした場合に、「トナー」の円相当径D[μm]を横軸とし、Fneを縦軸としてプロットしたグラフにおける一次回帰直線の比例係数Kが、満たすべき範囲内である「トナー」を使用することにより、原材料のロスを助長する極端な分級処理などを必要としない生産性に優れる電子写真用「トナー」を使用して画像不良の発生が無い高画質な画像形成を可能となすことは、当業者が引用発明2に基づいて容易に想到することができた程度のことであり、その満たすべき範囲を、本願発明で、5.1[nN/μm]?30[nN/μm]の範囲とした点は、当業者が実際に使用する「画像形成装置」を使用して5万枚の連続複写試験を実施するなどして適宜決定することができた設計上の事項である。

(3)効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明1の奏する効果、引用発明2の奏する効果及び周知技術の奏する効果から当業者が予測することができた程度のことである。

(4)まとめ
したがって、本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-23 
結審通知日 2013-08-27 
審決日 2013-09-09 
出願番号 特願2007-309735(P2007-309735)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川口 真隆福田 由紀  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 鉄 豊郎
西村 仁志
発明の名称 画像形成装置  
代理人 奥山 雄毅  

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