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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01F |
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管理番号 | 1280921 |
審判番号 | 不服2011-23351 |
総通号数 | 168 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-10-28 |
確定日 | 2013-10-31 |
事件の表示 | 特願2009-507659「磁束チャネル式高電流インダクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月 1日国際公開、WO2007/123564、平成21年10月 1日国内公表、特表2009-535804〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【第1】経緯 [1]手続 本願は、平成18年8月18日(パリ条約による優先権主張平成18年4月26日、米国)を国際出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。 条約34条補正翻訳文提出 :平成20年12月19日 拒絶理由通知 :平成22年11月19日(起案日) 意見書 :平成23年 5月27日 手続補正 :平成23年 5月27日 拒絶査定 :平成23年 6月17日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成23年10月28日 手続補正 :平成23年10月28日 手続補足 :平成23年10月31日(差出日) 前置審査報告 :平成23年12月15日 審尋 :平成24年 5月10日(起案日) 回答書 :平成24年11月 8日 [2]査定 原査定の理由は、概略、以下のとおりである。 〈査定の理由の概略〉 本願の下記の請求項に係る発明は、下記の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 記(引用刊行物については刊行物等一覧参照) 請求項1,3,8,28?31,35について刊行物1 請求項2,13,19について刊行物1?3 請求項9,10,12,14?16,18,20,21,36?38について刊行物1,2 請求項4,32について刊行物1,4 請求項5?7,33,34について刊行物1,4,5 請求項11,17,22,23,25?27,39,40について刊行物1,2,6 請求項24について刊行物1?3,6 記(刊行物等一覧) 1.特開2000-306751号公報 2.特開2001-196226号公報 3.特開2000-164431号公報 4.特開2000-068130号公報 5.特開2002-093625号公報 6.特開平11-273925号公報 請求項1記載の発明については、概略、刊行物1及び本願出願前周知技術(刊行物4、特開平5-234761号公報、特開平5-258959号公報、実願平1-9055号(実開平2-101510号)のマイクロフィルム参照)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、とするものである。 【第2】補正の却下の決定 平成23年10月28日付けの補正(以下「本件補正」という。)について次のとおり決定する。 《結論》 平成23年10月28日付けの補正を却下する。 《理由》 【第2-1】本件補正の内容 本件補正は特許請求の範囲についてする補正であり、補正前請求項1の記載を補正後請求項1とする補正を含んでおり、本件補正前および本件補正後の請求項1の記載は下記のとおりである。 記(補正前、平成23年5月27日補正によるもの) 【請求項1】 第1端部とこれに対向する第2端部とを有するインダクタ本体と、前記インダクタ本体を通って延びる只一つのみのコンダクタとを備え、 前記コンダクタが、前記インダクタ本体の第1断面領域を通り抜ける第1の方向に電流を流す第1チャネルを有し、 そして、前記第1の方向と逆方向になる第2の方向があって、前記コンダクタが、前記インダクタ本体の第2断面領域を通り抜ける前記第2の方向に電流を流す第2チャネルを少なくとも有し、 その上、前記第1チャネルと前記第2チャネルとをU字形状に配列した前記コンダクタであり、 前記インダクタ本体の前記第1及び第2断面領域で、前記コンダクタを流れる電流によって誘発された磁束が互いに逆向きに誘導されて、前記インダクタ本体の所与の1領域における磁束密度を低減することを特徴とする磁束チャネル式高電流インダクタ。 記(補正後、補正部分をアンダーラインで示す。) 【請求項1】 第1端部とこれに対向する第2端部とを有するインダクタ本体と、前記インダクタ本体を通って延びる只一つのみのコンダクタとを備え、 前記コンダクタが、前記インダクタ本体の第1断面領域を通り抜ける第1の方向に電流を流す第1チャネルを有し、 そして、前記第1の方向と逆方向になる第2の方向があって、前記コンダクタが、前記インダクタ本体の第2断面領域を通り抜ける前記第2の方向に電流を流す第2チャネルを少なくとも有し、 その上、前記第1チャネルと前記第2チャネルとをU字形状に配列した前記コンダクタであり、 前記インダクタ本体の前記第1及び第2断面領域の中で、前記コンダクタを流れる電流によって誘発された磁束が互いに逆向きに誘導され且つ前記インダクタ本体の所与の1領域における磁束密度を低減するように前記コンダクタの形状を選択することを特徴とする磁束チャネル式高電流インダクタ。 〈補正内容〉 そして、その補正内容は、 補正前の「前記インダクタ本体の前記第1及び第2断面領域で、前記コンダクタを流れる電流によって誘発された磁束が互いに逆向きに誘導されて、前記インダクタ本体の所与の1領域における磁束密度を低減する」を、 「前記インダクタ本体の前記第1及び第2断面領域の中で、前記コンダクタを流れる電流によって誘発された磁束が互いに逆向きに誘導され且つ前記インダクタ本体の所与の1領域における磁束密度を低減するように前記コンダクタの形状を選択する」とするものである。 【第2-2】本件補正の適否1(範囲、目的) 〈補正の範囲(第17条の2第3項)〉 請求人の主張するとおり、本件補正は、当初明細書の段落【0022】の記載「本発明は、2つ以上の断面領域に印加した電流によって生成された磁束をチャネリングすることで、いずれか1つの断面領域の磁場密度を低減する技術を用いる。図2は、・・・このチャネリングにより、磁気レベルは1枚の銅の細片の場合の半分になる。インダクタ内にいくつかのコンダクタループを設ければ、任意の1つの断面領域を通る磁束密度をさらに低下させることができる。使用するループが1本であっても複数であっても、コンダクタおよびプレートの形状は、磁束を適切にチャネリングするように選択される。」 を根拠とするものと認められ、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正であるといえ、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。 〈補正の目的(第17条の2第4項)〉 補正後請求項1は、対応する補正前請求項1記載の特定事項について、「・・・磁束密度を低減するように前記コンダクタの形状を選択する」の下線部分を付加して少なくとも限定するものといえ、また、補正の前後において、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、請求項の減縮を目的とするものである。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 【第2-3】本件補正の適否2 独立特許要件(第17条の2第5項) そこで、独立特許要件について検討するに、補正後請求項1に記載される発明は特許出願の際独立して特許を受けることができない。 したがって、上記「補正前請求項1の記載を補正後請求項1とする補正」を含む本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「補正後発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由の詳細は、以下のとおりである。 《理由:独立特許要件に適合しない理由の詳細》 [1]補正後発明 補正後発明(補正後の請求項1)は、以下のとおりである。 「第1端部とこれに対向する第2端部とを有するインダクタ本体と、前記インダクタ本体を通って延びる只一つのみのコンダクタとを備え、 前記コンダクタが、前記インダクタ本体の第1断面領域を通り抜ける第1の方向に電流を流す第1チャネルを有し、 そして、前記第1の方向と逆方向になる第2の方向があって、前記コンダクタが、前記インダクタ本体の第2断面領域を通り抜ける前記第2の方向に電流を流す第2チャネルを少なくとも有し、 その上、前記第1チャネルと前記第2チャネルとをU字形状に配列した前記コンダクタであり、 前記インダクタ本体の前記第1及び第2断面領域の中で、前記コンダクタを流れる電流によって誘発された磁束が互いに逆向きに誘導され且つ前記インダクタ本体の所与の1領域における磁束密度を低減するように前記コンダクタの形状を選択することを特徴とする磁束チャネル式高電流インダクタ。」 [2]引用刊行物の記載の摘示 刊行物1:特開2000-306751号公報 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2000-306751号公報(上記刊行物1)には、以下の記載(下線は、注目箇所を示すために当審で施したものである。)が認められる。 (K1)〈特許請求の範囲〉 「【請求項1】 薄板状の金属板からなるとともに、第1の背部と前記第1の背部に連接した2つの脚部とを有したU字形状端子と、第2の背部と前記第2の背部に連接した中脚部および側脚部とを有するとともに、前記中脚部と前記側脚部との間に溝部を有し、前記溝部に前記U字形状端子の脚部を配置したE字形状コアとを備え、2つの前記E字形状コアで、前記U字形状端子の前記脚部を挟み込み、閉磁路を形成するとともに、前記U字形状端子の前記脚部の端部を前記E字形状コアの溝部より突出させて実装部としたチョークコイル。 【請求項2】 U字形状端子の第1の背部に実装部を設けた請求項1記載のチョークコイル。 【請求項3】 E字形状コアの材質をNi-Zn系とするとともに、U字形状端子を非絶縁被覆端子とした請求項1記載のチョークコイル。 【請求項4】 U字形状端子の脚部の厚さは、E字形状コアの溝部の深さよりも大きくした請求項1記載のチョークコイル。 【請求項5】 E字形状コアの溝部は直線状とした請求項1記載のチョークコイル。 【請求項6】 U字形状端子の脚部の端部にE字形状コアの側面と係止する係止部を設け、前記係止部を溝部より突出させて実装部とした請求項1記載のチョークコイル。 【請求項7】 U字形状端子の第1の背部を収納する凹部をE字形状コアに設けた請求項1記載のチョークコイル。」 (K2)〈技術分野〉 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は各種民生機器に使用するチョークコイルに関するものである。」 (K3)〈従来技術(図7)、従来技術の課題、目的〉 「【0002】 【従来の技術】以下、従来のチョークコイルについて図面を参照しながら説明する。 【0003】図7は従来のチョークコイルの斜視図である。 【0004】図7において、従来のチョークコイルは、両端に鍔を有した円柱状のドラムコア1と、このドラムコア1に巻回した巻線2と、この円柱状のドラムコア1の下端に植設するとともに、この巻線2と電気的接続した端子3とを備えている。 【0005】また、巻線2は絶縁被覆を施した絶縁被覆線であり、ドラムコア1は電気導電性のあるNi-Zn系コアである。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】近年、パソコン等の電源回路に用いるチョークコイルとしては、5?20(A)程度の大電流で、0.1(μH)以下の微小インダクタンスで、5(mΩ)以下の直流抵抗値の小さいものが要求されている。 【0007】しかし、上記従来のチョークコイルにおいて、大電流に対応し、微小インダクタンスで、直流抵抗値も小さくするためには、巻線2は線径が大きくなり、この線径の大きい巻線2を開磁路のドラムコア1に1ターン程度のみ巻回する必要が生じ、しかも、線径の大きい巻線2を端子3に接続しなければならず、小型化が困難になるとともに、生産性が悪いという問題点を有していた。 【0008】本発明は上記問題点を解決するもので、小型化を図るとともに、生産性を向上したチョークコイルを提供することを目的としている。」 〈請求項1、2記載の発明の説明〉 (K4)「【0011】 【発明の実施の形態】本発明の請求項1記載の発明は、薄板状の金属板からなるとともに、第1の背部と前記第1の背部に連接した2つの脚部とを有したU字形状端子と、第2の背部と前記第2の背部に連接した中脚部および側脚部とを有するとともに、前記中脚部と前記側脚部との間に溝部を有し、前記溝部に前記U字形状端子の脚部を配置したE字形状コアとを備え、2つの前記E字形状コアで、前記U字形状端子の前記脚部を挟み込み、閉磁路を形成するとともに、前記U字形状端子の前記脚部の端部を前記E字形状コアの溝部より突出させて実装部とした構成である。 【0012】上記構成により、薄板状の金属板からなるU字形状端子の脚部をE字形状コアで挟み込めば形成できるので、特に上下方向の低背化による小型化を図ることができるとともに、生産性も向上させることができる。 【0013】本発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、U字形状端子の第1の背部に実装部を設けた構成である。 【0014】上記構成により、基板等に実装する際に、一側面に突出した実装部だけでなく、一側面と反対の側面に突出した突出部によっても実装できるので、はんだ接続におけるブリッジ現象の発生を防止し、実装部と基板等の確実な実装ができる。」 〈実施の形態(図1?図5)〉 (K5)「【0025】(実施の形態)以下、本発明の一実施の形態におけるチョークコイルについて図面を参照しながら説明する。 【0026】図1(a)?(c)は本発明の一実施の形態におけるチョークコイルの製造工程を示す斜視図、図2は同チョークコイルの斜視図、図3は同チョークコイルの底面図、図4は同チョークコイルのU字形状端子をE字形状コアに配置した際の拡大上面図、図5は同チョークコイルの断面図である。 【0027】図1?図5において、本発明の一実施の形態におけるチョークコイルは、薄板状の金属板10からなるとともに、背部11とこの背部11に連接した2つの脚部12とを有したU字形状端子13と、背部14とこの背部14に連接した中脚部15および側脚部16とを有するとともに、中脚部15と側脚部16との間に溝部17を有し、溝部17にU字形状端子13の脚部12を配置したE字形状コア18とを備え、2つのE字形状コア18で、U字形状端子13の脚部12を挟み込み、閉磁路を形成するとともに、その周りはモールドして外装部19を形成している。 【0028】また、U字形状端子13の脚部12の端部をE字形状コア18の溝部17より突出させて実装部20とするとともに、U字形状端子13の背部11にも実装部20を設けている。 【0029】さらに、U字形状端子13の脚部12の端部にE字形状コア18の側面と係止する係止部21を設け、この係止部21を溝部17より突出させて実装部20にするとともに、U字形状端子13の脚部12の厚さを、E字形状コア18の溝部17の深さよりも大きくし、E字形状コア18の溝部17を直線状としている。 【0030】その上、E字形状コア18の材質をNi-Zn系とするとともに、U字形状端子13を非絶縁被覆端子としている。」 (K6)〈効果等〉 「【0032】上記構成により、薄板状の金属板10からなるU字形状端子13の脚部12をE字形状コア18で挟み込めば形成できるので、特に上下方向の低背化による小型化を図ることができるとともに、生産性も向上させることができる。 【0033】また、U字形状端子13の背部11に実装部20を設けているので、基板等に実装する際に、E字形状コア18の一側面に突出した実装部20だけでなく、一側面と反対の側面に突出した実装部20によっても実装できるので、はんだ接続におけるブリッジ現象の発生を防止し、実装部20と基板等の確実な実装ができる。 【0034】さらに、U字形状端子13は係止部21によりE字形状コア18に係止されるので、U字形状端子13が位置ずれしにくくなり、確実に配置することができる。 【0035】特に、U字形状端子13の脚部12の厚さを、E字形状コア18の溝部17の深さよりも大きくしているので、2つのE字形状コア18で、U字形状端子13の脚部12を挟み込み、閉磁路を形成した際、E字形状コア18が互いに大きくずれたりすることがなく、磁束の漏洩を防止することができるとともに、E字形状コア18の溝部17を直線状としているので、U字形状端子13を配置しやすく、配置ずれ等による特性劣化を防止でき、E字形状コアの溝部の加工性も良い。 【0036】そして、E字形状コア18の材質がNi-Zn系であり、電気絶縁性を有しているので、U字形状端子13とE字形状コア18とは、確実に絶縁を図ることができるとともに、特別に絶縁被覆等を施す必要もなく、容易に絶縁を図ることができる。 【0037】このように本発明の一実施の形態によれば、小型化を図り、生産性を向上させ、U字形状端子13を確実に配置することができるとともに、実装部20と基板等の確実な実装をすることができる。 【0038】また、E字形状コア18が互いに大きくずれたりすることがなく、磁束の漏洩を防止することができるとともに、E字形状コア18の溝部17を直線状としているので、U字形状端子13を配置しやすく、配置ずれ等による特性劣化を防止でき、E字形状コア18の溝部17の加工性も良い。 【0039】さらに、E字形状コア18の材質がNi-Zn系であり、電気絶縁性を有しているので、U字形状端子13とE字形状コア18とは、確実に絶縁を図ることができるとともに、特別に絶縁被覆等を施す必要もなく、容易に絶縁を図ることができる。」 「【0042】 【発明の効果】以上のように本発明によれば、薄板状の金属板からなるU字形状端子の脚部をE字形状コアで挟み込めば形成できるので、特に上下方向の低背化による小型化を図ることができるとともに、生産性も向上したチョークコイルを提供することができる。」 [3]刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明」という。) ア 刊行物1概要 刊行物1には、 〔技術分野〕 「大電流に対応し、微小インダクタンスで、直流抵抗値も小さい」「チョークコイル」{(K1)(K2)}に関し、 (→引用発明のp) 〔従来技術、課題・目的〕 7図の従来のチョークコイル-「両端に鍔を有した円柱状のドラムコア1と、このドラムコア1に巻回した巻線2と、この円柱状のドラムコア1の下端に植設するとともに、この巻線2と電気的接続した端子3とを備えている」{(K3)段落【0004】}もの- では、「線径の大きい巻線2を開磁路のドラムコア1に1ターン程度のみ巻回する必要が生じ、しかも、線径の大きい巻線2を端子3に接続しなければならず、小型化が困難になるとともに、生産性が悪いという問題点を有して」おり{(K3)段落【0007】}、 「上記問題点を解決するもので、小型化を図るとともに、生産性を向上したチョークコイルを提供」{(K6)段落【0032】}し、 「特に上下方向の低背化による小型化を図ることができるとともに、生産性も向上したチョークコイルを提供する」{(K3)段落【0008】}ことを目的とし、 (→引用発明のp) 概要構成を特許請求の範囲{前掲(K1)}とする発明が、図1?図5に示される実施の形態{(K5)}と共に記載されている。(→引用発明のv) イ 請求項1,実施例の形態{(K5)段落【0027】} 請求項1及びこれに対応する段落【0027】によれば、 「薄板状の金属板10からなるとともに、第1の背部11とこの背部11に連接した2つの脚部12とを有したU字形状端子13と、 背部14と背部14に連接した中脚部15および側脚部16とを有するとともに、中脚部14と側脚部16との間に溝部17を有し、溝部17にU字形状端子13の脚部12を配置したE字形状コア18とを備え、 2つの前記E字形状コア18で、U字形状端子13の脚部12を挟み込み、閉磁路を形成するとともに、その周りはモールドして外装部19を形成し」(段落【0027】)、 (→引用発明のqrs) 「U字形状端子13の脚部12の端部をE字形状コア18の溝部17より突出させて実装部20と」(段落【0028】)「としたチョークコイル。」 が認められる。 (→引用発明のt) ウ 請求項2、実施例の形態{(K5)段落【0027】} 請求項2「U字形状端子の第1の背部に実装部を設けた請求項1記載のチョークコイル。」及びこれに対応する段落【0027】によれば、 そのチョークコイルは、さらに 「U字形状端子13の背部11にも実装部20を設けている。」 (→引用発明のu) エ 図面 また、そのチョークコイルは、製造工程の斜視図が図1、斜視図が図2、底面図が図3、U字形状端子をE字形状コアに配置した際の拡大上面図が図4、断面図が図5で示されるものである。 (→引用発明のv) オ 引用発明 以上を総合すれば、補正後発明と対比する引用発明として、下記の発明を認めることができる(便宜上、p?vに分説しておく)。 記(引用発明) p:大電流に対応し、微小インダクタンスで、直流抵抗値も小さく、特に上下方向の低背化による小型化を図ることができるとともに、生産性も向上したチョークコイルであって、 q:薄板状の金属板10からなるとともに、第1の背部11とこの背部11に連接した2つの脚部12とを有したU字形状端子13と、 r:背部14と背部14に連接した中脚部15および側脚部16とを有するとともに、中脚部14と側脚部16との間に溝部17を有し、溝部17にU字形状端子13の脚部12を配置したE字形状コア18とを備え、 s:2つの前記E字形状コア18で、U字形状端子13の脚部12を挟み込み、閉磁路を形成するとともに、その周りはモールドして外装部19を形成し、 t:U字形状端子13の脚部12の端部をE字形状コア18の溝部17より突出させて実装部20とし、 u:U字形状端子13の背部11にも実装部20を設け、 v:斜視図が図2、底面図が図3、U字形状端子をE字形状コアに配置した際の拡大上面図が図4、断面図が図5で示されるチョークコイル。 [4]補正後発明と引用発明との対比(対応関係) (1)補正後発明(構成要件の分説) 検討の便宜上、補正後発明の要件を、以下のように要件A,B,B1,B2,B3,C、Dに分説しておく。 補正後発明(分説) A :第1端部とこれに対向する第2端部とを有するインダクタ本体と、 B :前記インダクタ本体を通って延びる只一つのみのコンダクタとを備え、 B1:前記コンダクタが、前記インダクタ本体の第1断面領域を通り抜ける第1の方向に電流を流す第1チャネルを有し、 B2:そして、前記第1の方向と逆方向になる第2の方向があって、前記コンダクタが、前記インダクタ本体の第2断面領域を通り抜ける前記第2の方向に電流を流す第2チャネルを少なくとも有し、 B3:その上、前記第1チャネルと前記第2チャネルとをU字形状に配列した前記コンダクタであり、 C:前記インダクタ本体の前記第1及び第2断面領域の中で、前記コンダクタを流れる電流によって誘発された磁束が互いに逆向きに誘導され且つ前記インダクタ本体の所与の1領域における磁束密度を低減するように前記コンダクタの形状を選択すること D:を特徴とする磁束チャネル式高電流インダクタ。 (2)補正後発明と引用発明との対比(対応関係) 補正後発明の各構成要件について、引用発明と対応する。 ア 要件D「を特徴とする磁束チャネル式高電流インダクタ。」について 引用発明は、p「大電流に対応し」た「チョークコイル」であるところ、「チョークコイル」は「インダクタ」ともいい得るから、「高電流インダクタ」である点では一致する。もっとも「磁束チャネル式」(インダクタ)とはしておらず、この点、補正後発明と相違が認められる。(→相違点2) イ 要件A,Bについて A「第1端部とこれに対向する第2端部とを有するインダクタ本体と、」 B「前記インダクタ本体を通って延びる只一つのみのコンダクタとを備え、」 〈補正後発明〉 補正後発明の「インダクタ本体」とは、要件Bで「前記インダクタ本体を通って延びる只一つのみのコンダクタとを備え、」としていること、請求項1全体の「インダクタ」がこの「インダクタ本体」と「コンダクタ」とを備えているとしていること、及びこれらに対応する明細書の記載(図2,図3,段落【0022】等)に照らせば、 図2の12,14で示される『「2つの強磁性プレート」を含んでいうこと』は明らかであるものの、請求項1において「磁性体」であることを特定していないものであり、『コンダクタを通すボディとしてのインダクタ本体』と解される。 また、補正後発明の「第1端部」,「第2端部」とは、 明細書の記載{段落【0012】「コンダクタの第1および第2部分が第1端部の一部周囲に巻き付けられることで、第1接触パッドと第2接触パッドが提供され、また、コンダクタの第3部分が第2端部の一部周囲に巻き付けられることで第3接触パッドが提供される。」, 段落【0016】「インダクタ本体の第1端部から延びているコンダクタの第1、第2部分を、第1端部の一部の周囲に巻き付けて、第1接触パッドと第2接触パッドを形成することを含む。またこの方法はさらに、インダクタ本体の第2端部から延びているコンダクタの第3部分を第2端部の一部の周囲に巻き付けて、第3接触パッドを形成することを含むこともできる。」, 段落【0026】「コンダクタ86は第1区画92、第2区画88を有し、また、図7に示すように、コンダクタ86は第2強磁性プレート94の周囲で曲げられて、3個の半田面93、95、97を形成している。」},図6,図7に照らせば、 『コンダクタを通すボディとしてのインダクタ本体』を通って延びるコンダクタに垂直な面、すなわち、要件B1・B2でいう「断面」に平行な対向する2つの端面、を指していうものと解される。 そうすると、要件Aは、『2つの強磁性プレートを含んでいうものであるが、磁性体に限定・特定されない、只一つのみのコンダクタを通すボディとしてのインダクタ本体であって、そこを通って延びるコンダクタに垂直な面(要件B1・B2でいう「断面」)に平行な対向する2つの端面を有する本体』をいうものと理解される。 〈引用発明との比較〉 引用発明でも、これ(「インダクタ本体」)に対応するものとして、s「2つの前記E字形状コア18で、U字形状端子13の脚部12を挟み込み、閉磁路を形成する」とする「2つの前記E字形状コア18」であって、r「背部14と背部14に連接した中脚部15および側脚部16とを有するとともに、中脚部14と側脚部16との間に溝部17を有し、溝部17にU字形状端子13の脚部12を配置したE字形状コア18」を備えており、 その2つの「コア18」は「チョークコイル」の「コア」であるから「強磁性」体であることは明らかであり「強磁性プレート」ともいい得るものである。 そして、引用発明の「U字形状端子13」は、q「薄板状の金属板10からなる」から導体、すなわち、「コンダクタ」といえ、 引用発明のチョークコイルは、s「2つの前記E字形状コア18で、U字形状端子13の脚部12を挟み込」んでいて、その「U字形状端子13」は「只一つ」であるから、 引用発明の2つの「コア18」は、『只一つのみのコンダクタを通すボディとしてのインダクタ本体』といえ、 また、図1(b)等からみて、2つの「コア18」「を通って延びるコンダクタ(U字形状端子13)に垂直な面に平行な対向する2つの端面」を有している。 すなわち、補正後発明でいう「第1端部とこれに対向する第2端部」とを有しているといい得るものである。 そうすると、引用発明の「U字形状端子13の脚部12を挟み込んだ」「2つの前記E字形状コア18」も、要件Aでいう「インダクタ本体」、すなわち、『2つの強磁性プレートを含んでいうものであるが、磁性体に限定・特定されない、只一つのみのコンダクタを通すボディとしてのインダクタ本体であって、そこを通って延びるコンダクタに垂直な面に平行な対向する2つの端面を有する本体』といえ、したがって、要件Aにおいて補正後発明と引用発明は相違しない。 そして、引用発明も、要件Aでいう、かかる「インダクタ本体」、「を通って延びる只一つのみのコンダクタとを備え、」といい得るから、 引用発明も要件Bを備えているといえ、この点、補正後発明と相違しない。 ウ 要件B1,B2、B3について B1「前記コンダクタが、前記インダクタ本体の第1断面領域を通り抜ける第1の方向に電流を流す第1チャネルを有し、」 B2「そして、前記第1の方向と逆方向になる第2の方向があって、前記コンダクタが、前記インダクタ本体の第2断面領域を通り抜ける前記第2の方向に電流を流す第2チャネルを少なくとも有し、」 B3「その上、前記第1チャネルと前記第2チャネルとをU字形状に配列した前記コンダクタであり、」 引用発明(チョークコイル)のqの「薄板状の金属板10からなるとともに、第1の背部11とこの背部11に連接した2つの脚部12とを有したU字形状端子13」の一方の「脚部12」、例えば、図5(断面図)の右側の「脚部12」は、図4・図5を参照すれば、図5において右上がりのハッチングで示される上記「2つのコア18」の矩形断面部分の「右側断面領域」を通り抜ける「第1の導電チャネル」といえ、 他方の「脚部12」、すなわち、図5(断面図)の左側の「脚部12」は、上記「2つのコア18」の矩形断面部分の「左側断面領域」を通り抜ける「第2の導電チャネル」ということができる。 そして、上記「U字形状端子13」は、右側の「脚部12」(第1の導電チャネル)と左側の「脚部12」(第2の導電チャネル)とをU字形状に配列した導体(コンダクタ)ともいうことができる。 また、上記「2つのコア18」の矩形断面部分の上記「右側断面領域」は「第1断面領域」、上記「2つのコア18」の矩形断面部分の上記「左側断面領域」は「第2断面領域」ともいうことができる領域である。 すなわち、B「前記インダクタ本体を通って延びる只一つのみのコンダクタ」といい得る引用発明の「薄板状の金属板10からなるとともに、第1の背部11とこの背部11に連接した2つの脚部12とを有したU字形状端子13」は、 B1’「前記インダクタ本体の第1断面領域を通り抜ける第1チャネルを有し、」 B2’「そして、前記コンダクタが、前記インダクタ本体の第2断面領域を通り抜ける第2チャネルを少なくとも有し、」 B3「その上、前記第1チャネルと前記第2チャネルとをU字形状に配列した前記コンダクタであり、」といい得るものであり、この点、補正後発明と相違しない。 次に、引用発明における電流の流れについてみるに、引用発明はチョークコイルである以上、その導体(コンダクタ)である「U字形状端子13の脚部12」のどこかを電流が流れることは当然であるが、 実装部が3つ存在{「U字形状端子13の脚部12の端部をE字形状コア18の溝部17より突出させ」た2つの「実装部20」(t)と「U字形状端子13の背部11」の1つの「実装部20」}していて、 「第1チャネル」・「第2チャネル」といい得る「U字形状端子13」の上記2つの「脚部12」に、具体的にどのように電流が流れるのか、刊行物1に明示的記載は無く明瞭ではない。 すなわち、引用発明は、「第1チャネル」が「第1の方向に電流を流す」チャネルであるとも、「第2チャネル」が「第2の方向に電流を流す」チャネルであるともしておらず、この点、相違が認められる。(→相違点1) エ 要件Cについて C「前記インダクタ本体の前記第1及び第2断面領域の中で、前記コンダクタを流れる電流によって誘発された磁束が互いに逆向きに誘導され且つ前記インダクタ本体の所与の1領域における磁束密度を低減するように前記コンダクタの形状を選択することを特徴とする」 前記のとおり、引用発明は、チョークコイルであることから、「U字形状端子13の脚部12」のどこかを電流が流れることは当然であり、その電流によって磁束が誘発されることも明らかではあるものの、「U字形状端子13の脚部12」の第1及び第2チャネルに具体的にどのように電流が流れるのか、刊行物1に明示的記載は無く、明瞭でない。 すなわち、引用発明は、要件Cとしておらず、この点、補正後発明と相違する。 (→相違点2) [5]一致点、相違点 以上の対比結果によれば、補正後発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりであることが認められる。 [一致点] A 第1端部とこれに対向する第2端部とを有するインダクタ本体と、 B 前記インダクタ本体を通って延びる只一つのみのコンダクタとを備え、 B1’前記コンダクタが、前記インダクタ本体の第1断面領域を通り抜ける第1チャネルを有し、 B2’そして、前記コンダクタが、前記インダクタ本体の第2断面領域を通り抜ける第2チャネルを少なくとも有し、 B3 その上、前記第1チャネルと前記第2チャネルとをU字形状に配列した前記コンダクタであり、 D’ を特徴とする高電流インダクタ。 [相違点] [相違点1] 補正後発明では、 B1’「前記コンダクタが、前記インダクタ本体の第1断面領域を通り抜ける第1チャネルを有し、」とする第1チャネルが、 第1の方向に電流を流すチャネルであり、 B2’「そして、前記コンダクタが、前記インダクタ本体の第2断面領域を通り抜ける第2チャネルを少なくとも有し、」とする第2チャネルが、 前記第1の方向と逆方向になる第2の方向があって、前記第2の方向に電流を流すチャネルである、とするのに対して、 引用発明では、そのようにするとはしていない点。 [相違点2] 補正後発明では、 C 前記インダクタ本体の前記第1及び第2断面領域の中で、前記コンダクタを流れる電流によって誘発された磁束が互いに逆向きに誘導され且つ前記インダクタ本体の所与の1領域における磁束密度を低減するように前記コンダクタの形状を選択すること、とし、 磁束チャネル式(インダクタ)とするのに対して、 引用発明では、そのようにする、とはしていない点。 [6]相違点等の判断 (1)〔相違点の克服〕 引用発明を出発点とし、 〔相違点1の克服〕 引用発明の「第1チャネル」{qの「薄板状の金属板10からなるとともに、第1の背部11とこの背部11に連接した2つの脚部12とを有したU字形状端子13」の一方の「脚部12」で、 図5において右上がりのハッチングで示される「2つのコア18」の矩形断面部分の「右側断面領域」を通り抜ける「第1のチャネル」}を、 第1の方向に電流を流すチャネルとし、 引用発明の「第2チャネル」{qの「薄板状の金属板10からなるとともに、第1の背部11とこの背部11に連接した2つの脚部12とを有したU字形状端子13」の他方の「脚部12」で、 図5において右上がりのハッチングで示される「2つのコア18」の矩形断面部分の「左側断面領域」を通り抜ける「第2のチャネル」}を、 前記第1の方向と逆方向になる第2の方向があって、前記第2の方向に電流を流すチャネルとすること(以下、〔相違点1の克服〕という)で、上記[相違点1]は克服され、 〔相違点2の克服〕 C 前記インダクタ本体の前記第1及び第2断面領域の中で、前記コンダクタを流れる電流によって誘発された磁束が互いに逆向きに誘導され且つ前記インダクタ本体の所与の1領域における磁束密度を低減するように前記コンダクタの形状を選択すること、とし、 磁束チャネル式(インダクタ)とすること(以下、〔相違点2の克服〕という)で、上記[相違点2]も克服され、 補正後発明に到達する。 (2)相違点についての判断(〔相違点の克服〕の容易想到性) ア 相違点1についての判断(〔相違点1の克服〕の容易想到性) ア-1 〈刊行物1の請求項1の記載〉 引用発明として、刊行物1の図1?5に即するものとして、uの「U字形状端子13の背部11」の「実装部20」を具備するものを認定したが、 請求項1{(K1)}には、かかる「実装部20」を構成要件としては含まないものをも「チョークコイル」としていて、これは、かかる「実装部20」がなくても「チョークコイル」として成立していることを意味していると理解される。 そして、同時に、そのような「チョークコイル」では、「U字形状端子13の脚部12の端部をE字形状コア18の溝部17より突出させ」た2つの「実装部20」の一方を電流の入力端子とし、その他方を電流の出力端子として用いるものであると、当業者は困難なく普通に理解するものである。 以上のことは、(K4)の段落【0013】「本発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、U字形状端子の第1の背部に実装部を設けた構成である。」に続いて、段落【0014】で「上記構成により、基板等に実装する際に、一側面に突出した実装部だけでなく、一側面と反対の側面に突出した突出部によっても実装できるので、はんだ接続におけるブリッジ現象の発生を防止し、実装部と基板等の確実な実装ができる。」としていることからも首肯されることである。 そうすると、刊行物1に接した当業者は、引用発明の「U字形状端子13の脚部12の端部をE字形状コア18の溝部17より突出させ」た2つの「実装部20」のうちの、一方を電流の入力端子とし、他方を電流の出力端子として用い、「U字形状端子13の背部11」の1つの「実装部20」は電流の入出力として用いない、ことを容易に想定すると言うべきである。 ア-2〈周知事項〉 また、一般に、U字型導体の2つの脚部が磁性体中を貫通する構成のインダクタンス素子は、普通、一方の露出脚部端から他方の露出脚部端へと電流を流す、すなわち、露出する2つの脚部端を電流の入出力端として用いるものであり、このことは周知の技術常識である{例えば、下記周知例1?3参照。} さらに、かかるインダクタンス素子において、2つの脚部の連結部分にも端子(電流の入出力用ではないダミー端子)を設けて、基板等への取り付けの安定性を図ることも普通である{例えば、下記周知例1参照。}。 かかる周知事項からみても、当業者は、引用発明の「U字形状端子13の脚部12の端部をE字形状コア18の溝部17より突出させ」た2つの「実装部20」のうちの、一方を電流の入力端子とし、他方を電流の出力端子として用い、「U字形状端子13の背部11」の1つの「実装部20」は電流の入出力として用いない、ことを容易に想定すると言うべきである。 記(周知例) ・周知例1:特開2000-68130号公報(上記刊行物4に同じ) {特に、段落【0014】,【0015】,【0025】,【0026】,図1?図5。 〈摘示〉 【0001】本発明は、コイル装置に関し、更に詳しくは、高周波大電流を通すのに適したコイル装置に係る。 【0004】【発明が解決しようとする課題】上述した先行技術の問題点は、U形状のコイル導体の両端を、外部接続用端子として用いる構造であるので、片持ち状態で回路基板等に実装せざるを得ず、取り付け状態が不安定になったり、機械的接続強度が不充分になる等の不具合を生じ易いことである。 【0006】本発明の課題は、高周波大電流を通すのに適したコイル装置を提供することである。 【0014】更に、第1の導体辺及び第2の導体辺は、間隔を隔てて互いに対向し、それぞれの一端が端子部となっていて、端子部が貫通孔の外部に導出され、一方向に折り曲げられている。したがって、第1の導体辺及び第2の導体辺の両端子部を、外部接続用端子として用い、回路基板等に備えられた導体パターンに半田付け等の手段によって接続固定できる。 【0015】しかも、第1の導体辺及び第2の導体辺の両端子部とは反対側に位置する第3の導体辺が、貫通孔の外部で、端子部と同一方向に折り曲げられている。したがって、第1の導体辺及び第2の導体辺の両端子部とは反対側においても、第3の導体辺を、ダミー端子として、回路基板上のダミー導体パターンに、半田付け等の手段によって、接続固定できる。 【0026】しかも、第1の導体辺31及び第2の導体辺32の両端子部311、321とは反対側に位置する第3の導体辺33の少なくとも一部が、貫通孔21、22の外部で、端子部311、321と同一方向に折り曲げられている。したがって、図5に示すように、第1の導体辺31及び第2の導体辺32の両端子部311、321とは反対側においても、第3の導体辺33を、ダミー端子として、回路基板5上のダミー導体パターン52に、半田付け62等の手段によって、接続固定できる。 【0027】結局、実装状態としては、第1の導体辺31及び第2の導体辺32の両端子部311、321のみならず、その反対側にある第3の導体辺33をも、回路基板5上の導体パターン51、52に、半田付け61、62等の手段によって接続固定した構造となる。このため、回路基板5へ実装した場合、高度の取り付け安定性、及び、大きな機械的接続強度を確保し得る。} ・周知例2:実願平1-9055号(実開平2-101510号)のマイクロフィルム。 {特に、図1,図2、第1実施例参照。 〈摘示〉「〔実施例〕 本考案に係る第1実施例の斜視図を第1図に示す。この実施例は、第2図に示すコイル1を絶縁板ではさんだ扁平コイルを断面E形の扁平なフェライト磁芯2ではさんだものである。このコイル1は、銅板をU字形状に形成し、その端部3をほぼ直角に折り曲げ、更に先端をくし形に形成し、プリント基板等へ挿入し接続できるようにしている。」(3頁2行?10行)} ・周知例3:特開平5-234761号公報 {特に、図7,図8,段落【0002】?【0004】参照。摘示略} ア-3 まとめ 上記ア-1,2のとおり、当業者は、引用発明の「U字形状端子13の脚部12の端部をE字形状コア18の溝部17より突出させ」た2つの「実装部20」のうちの、一方を電流の入力端子とし、他方を電流の出力端子として用いることを容易に想定する。 そして、かかる2つの「実装部20」を、そのように用いれば、上記〔相違点1の克服〕がなされることは自明である。 すなわち、かかる2つの「実装部20」を、そのように用いれば、 引用発明の「第1チャネル」{qの「薄板状の金属板10からなるとともに、第1の背部11とこの背部11に連接した2つの脚部12とを有したU字形状端子13」の一方の「脚部12」で、 図5において右上がりのハッチングで示される「2つのコア18」の矩形断面部分の「右側断面領域」を通り抜ける「第1のチャネル」}を、 第1の方向に電流を流すチャネルとし、 引用発明の「第2チャネル」{qの「薄板状の金属板10からなるとともに、第1の背部11とこの背部11に連接した2つの脚部12とを有したU字形状端子13」の他方の「脚部12」で、 図5において右上がりのハッチングで示される「2つのコア18」の矩形断面部分の「左側断面領域」を通り抜ける「第2のチャネル」}を、 前記第1の方向と逆方向になる第2の方向があって、前記第2の方向に電流を流すチャネルとすること、 となるのであり、上記〔相違点1の克服〕がなされることになる。 以上のとおりであるから、上記〔相違点1の克服〕は、刊行物1及び周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。 イ 相違点2についての判断(〔相違点1の克服〕の容易想到性) イ-1 相違点2の構成の解釈 (ア)前提部分 相違点2の構成である、 ・要件C「前記インダクタ本体の前記第1及び第2断面領域の中で、 前記コンダクタを流れる電流によって誘発された磁束が互いに逆向きに誘導され且つ前記インダクタ本体の所与の1領域における磁束密度を低減するように前記コンダクタの形状を選択する」こと、及び、 ・「磁束チャネル式」とすること、 のうちの、Cの前段の「前記インダクタ本体の前記第1及び第2断面領域の中で、」は、要件B,B1,B2とともに、後段の「前記コンダクタを流れる電流によって・・・前記コンダクタの形状を選択する」の前提をなす部分であり、 かかる前提部分は、補正後発明が含む本願図2及び段落【0022】に記載される実施形態における、「インダクタ本体」の断面における「コンダクタ」・「2つのチャネル」の配置構成をいうものであることは明らかであり、 上記前提部分(上記実施形態の配置構成)は、端的にその本質をいえば、 『互いに逆方向に電流を流す、コンダクタの第1チャネルと第2チャネルを間隔を開けて(磁性体に限定・特定されない)インダクタ本体内に平行に配置した構成』 『におけるインダクタ本体の断面領域(第1チャネルが通り抜ける右側部分の断面領域及び第2チャネルが通り抜ける左側部分の断面領域)の中で』 と理解される。 ・・・前提(a) (イ)要件Cの「前記コンダクタを流れる電流によって誘発された磁束が互いに逆向きに誘導され」とは、図2の実施形態の、これに対応する構成部分でいえば、 『図2の矢印で示されるごとく、一方のコンダクタの電流によってその周囲に誘発される磁束の回転方向と他方のコンダクタの電流によってその周囲に誘発される磁束の回転方向が逆である』ことをいうものと解される。 ・・・(b) (ウ)「磁束チャネル式」とは、(「電流」のチャネルではなく)「磁束」の「チャネル」と理解されるところ、明細書の記載{段落【0022】の「矢印50、52、54および56は、誘発された磁束を示す。このように磁束をチャネリングすると、・・・」}に照らせば、矢印50、52、54および56に示されるように、『断面において回転方向が互いに逆向きの磁束が生成されるタイプ』を含んでいうものと解される。 ・・・(c) (エ)「且つ前記インダクタ本体の所与の1領域における磁束密度を低減するように前記コンダクタの形状を選択する」については、簡単化したモデルを用いて検討する。 (エ-1)モデル1(本願図1対応、参考図1) 本願の図1に対応するモデルとして、簡単化のため、コンダクタのチャネルを太さ0の直線導体としたものであって、直線導体1に紙面に入っていく方向に電流I=Iが流れるモデル1を想定する。 断面において直線導体1が座標の原点(0、0)に位置するとすると、 当該電流に誘発される磁場Hは、 原点からの距離をrとして、 大きさは、H=I/2πr ・・・(式d-1) 方向は、右手の法則に従い右回りとなる(各象限で以下のとおり)。 第2象限:右上方向 | 第1象限:右下方向 第3象限:左上方向 | 第4象限:左下方向 ・・・(方向d-1) そして、以上のことは、μH(μ:媒体の透磁率)で与えられる磁束、磁束密度においても同様に該当する。 〈本願図1との対応〉 以上は、電流が流れる導体の太さを0と想定したモデルでの考察であるが、太さが0でなく、本願図1のように断面が矩形形状の導体であっても、磁場・磁束(密度)が断面矩形形状の導体の周りに形成され、上記(式d-1)は正確には成立しなくなるものの、上述した磁場の形成状況に本質的に変わりのないことは、当業者に自明であり、 インダクタ本体が磁性体でない場合、上記(方向d-1)もそのまま該当する。磁性体である場合は、磁場も磁束(密度)もインダクタ本体内を通ろうとするからその円状の分布は上下につぶした扁平に変わり、参考図1から変化し上記(式d-1)は成立しなくなるものの、分布が扁平になってもその方向性については上記(方向d-1)のとおりであることに変わりはない。 (エ-2)モデル2(補正後発明の図2対応、参考図2) 次に、上述した、上記前提部分(上記実施形態の配置構成)である上記(a)に対応するモデルとして、モデル2を想定する。 モデル2は、モデル1と同様、簡単化のため、チャネルを太さ0の直線導体としたものであって、モデル1に、直線導体1から距離dの位置に、モデル1の電流の方向と逆向き(紙面から出て行く方向)に電流Iが流れる直線導体2を導入したモデルである(参考図2;図2では、導体1の電流をI1、導体2の電流をI2と表しているが、共に大きさは同じIで方向が逆の電流である。)。 これら2つの電流に誘発される磁場は、 直線導体1の電流I1(=I)に誘発される磁場H1と、直線導体2の電流I2(=-I)に誘発される磁場H2が重畳した合成磁場H12=H1+H2となる。磁束も同様である。 このとき、磁場の形成状況・合成・低減態様は以下のとおりとなる。 すなわち、 「断面上で、一方のチャネルを(0,0)に他方のチンネルを(d、0)に配置したとき、 磁場の形成状況・合成・低減態様(以下、(e)という)は、 ・x<0の領域(参考図2の領域A)及び x>dの領域(参考図2の領域C) では、磁場H1と磁場H2は、x方向成分もy方向成分も互いに弱め 合うように作用し、結果、合成磁場は常に低減する。 ・0<x<dの領域(参考図2の領域B)では、 x成分については、磁場H1と磁場H2は、互いに弱め合うように作 用し、結果、合成磁場のx成分は常に低減する。 y成分については、磁場H1と磁場H2は、互いに強め合うように作 用し、結果、合成磁場のy成分は常に増強される。 ・そして、合成される磁場は近い導体から誘発される磁場の方が強度大 で支配的となるから、結果、合成磁場H1+H2は、本願図2の「矢 印50、52、54および56に示されるように」、『断面において 回転方向が互いに逆向きの磁場が生成される」 ・・・(e) そして、以上のことは、μH(μ:媒体の透磁率)で与えられる磁束、磁束密度においても同様に該当するものである{以後、“磁場・磁束の形成状況・合成・低減の態様(e)という}。 〈本願図2の実施形態との対応〉 以上は、電流が流れる導体の太さを0と想定したモデルでの考察であるが、太さが0でなく、本願図2の実施形態のように断面が矩形形状のの導体であっても、磁場・磁束(密度)が断面矩形形状の導体の周りに形成される点を除き、上述した“磁場・磁束の形成状況・合成・低減の態様(e)”と本質的に変わりのないことは当業者に自明である。 本願図2の実施形態でインダクタ本体が磁性体でない場合、断面矩形形状の導体の周りに形成される点を除き、上述した磁場・磁束の形成状況・合成・低減の態様は本質的に変わらない。 磁性体である場合は、磁場も磁束(密度)もインダクタ本体内を通ろうとするから、その2つの逆向き円状の分布は上下につぶした扁平に変わり、参考図2から変化するが、それでも、断面矩形形状の導体の周りのインダクタ本体の断面領域の中における、磁場・磁束の形成状況・合成・低減の態様については、上記“磁場・磁束の形成状況・合成・低減の態様(e)”と本質的に変わらない。 そして、かかるインダクタ本体の断面領域の中での“磁場・磁束の形成・合成・低減の態様(e)”をみるに、 これは、上述した(b)の『図2の矢印で示されるごとく、一方のコンダクタの電流によってその周囲に誘発される磁束の回転方向と他方のコンダクタの電流によってその周囲に誘発される磁束の回転方向が逆である』態様と同じであり、 また、上述した(c)の、矢印50、52、54および56に示されるように、『断面において回転方向が互いに逆向きの磁束が生成される』態様と同じである。 すなわち、上記の前提(a)の構成を採ると、自ずと、上記(b)(c)は実現される、つまり、上記(b)(c)は前提(a)とする配置構成から導かれる事項ということができる。 (エ-3)「所与の1領域」 以上を踏まえ、上記要件Cの「前記インダクタ本体の所与の1領域における「磁束密度を低減する」とする「前記インダクタ本体の所与の1領域」についてみるに、 「磁束密度が低減する」といえるのは、x成分もy成分も共に常に低減する略x<0の領域(参考図2の領域A)及び略x>dの領域(参考図2の領域C)と、x成分だけが常に低減する略0<x<dの領域(参考図2の領域B)であること、 明細書中に「所与の1領域」を具体的に特定する記載がなく、しかも、上記モデル2での磁場・磁束の形成状況・合成・低減の態様(e)と異なる他の分布態様や低減態様を想定するのは困難であること、 からすれば、「前記インダクタ本体の所与の1領域」とは、かかる領域をいうものと解される。 そうすると、「前記インダクタ本体の所与の1領域における磁束密度を低減するように」とは、 『断面上で、一方のチャネルを(0,0)に他方のチンネルを(d、0)に配置したとき、 前記インダクタ本体の断面領域(断面矩形形状のチャネルの周りであることを含む)の中で、 略x<0の領域(参考図2の領域A)及び略x>dの領域(参考図2の領域C)における磁束密度を低減(x成分もy成分も低減)すること、 及び/または、 略0<x<dの領域(参考図2の領域B)における磁束密度を低減(x成分のみ低減)すること、 が満たされるように』と解される。 ・・・(f) (エ-4)「コンダクタの形状を選択する」 そして、「前記インダクタ本体の所与の1領域における磁束密度を低減するように」に続く「前記コンダクタの形状を選択する」については、 その「形状の選択の仕方」の具体について、明細書中で何ら説明しておらず、また自明でもないことからすれば、「前記インダクタ本体の所与の1領域における磁束密度を低減する」ことが満たされるとき、そのような形状が選択されたと理解され、「前記コンダクタの形状を選択する」が満たされたと解釈するほかない。 また、その「選択された形状」とは、図2・段落【0022】の実施形態のコンダクタの形状を含んでいうことは明らかであるところ、 図2・段落【0022】で示されるコンダクタの形状は『断面が矩形である第1チャネルと第2チャネルを間隔を開けて平行に配置したU字形状』であるから、 少なくとも『断面が矩形である第1チャネルと第2チャネルを間隔を開けて平行に配置したU字形状』を含んでいると解される。 (カ)まとめ 以上を総合すると、相違点2の構成 -要件C「前記インダクタ本体の前記第1及び第2断面領域の中で、 前記コンダクタを流れる電流によって誘発された磁束が互いに逆向きに誘導され且つ前記インダクタ本体の所与の1領域における磁束密度を低減するように前記コンダクタの形状を選択する」こと、及び、 「磁束チャネル式」とすること、- とは、次の(a)(b)(f)(c)をいうものと解釈される。 (a)『互いに逆方向に電流を流す、コンダクタの第1チャネルと第2チャネルを間隔を開けて(磁性体に限定・特定されない)インダクタ本体内に平行に配置した構成』 『における断面領域(第1チャネルが通り抜ける右側部分の断面領域及び第2チャネルが通り抜ける左側部分の断面領域)の中で』、 (b)『図2の矢印で示されるごとく、一方のコンダクタの電流によってその周囲に誘発される磁束の回転方向と他方のコンダクタの電流によってその周囲に誘発される磁束の回転方向が逆であり』、 (f)『断面上で、一方のチャネルを(0,0)に他方のチンネルを(d、0)に配置したとき、 前記インダクタ本体の断面領域(断面矩形形状のチャネルの周りであることを含む)の中で、 略x<0の領域(参考図2の領域A)及び略x>dの領域(参考図2の領域C)における磁束密度を低減(x成分もy成分も低減)すること、 及び/または、 略0<x<dの領域(参考図2の領域B)における磁束密度を低減(x成分のみ低減)すること、 が満たされる形状(断面が矩形である第1チャネルと第2チャネルを間隔を開けて平行に配置したU字形状を含む)』とし、 (c)『断面において回転方向が互いに逆向きの磁束が生成されるタイプ』とすること イ-2 相違点2についての判断 上記アで示したとおり、引用発明を出発点として、上記〔相違点1の克服〕をすることは、当業者が容易に想到し得ることであるところ、そのように上記〔相違点1の克服〕をするしたものは、上記イ-1(カ)の(a)(b)(f)(c)のすべてを満たすもの、すなわち、上記相違点2の構成を満たすもの、となっており、したがって、上記〔相違点2の克服〕をしたものとなっている。 以下、このことを説明する。 上記〔相違点1の克服〕をしたものが、上記(a)の『互いに逆方向に電流を流す、コンダクタの第1チャネルと第2チャネルを間隔を開けて(磁性体に限定・特定されない)インダクタ本体内に平行に配置した構成』 『における断面領域(第1チャネルが通り抜ける右側部分の断面領域及び第2チャネルが通り抜ける左側部分の断面領域)の中で』となっていることとは、図5に示される断面図(2つの脚部12(チャネル)の断面は矩形)からも明らかであって、 このとき、その「第1チャネル」、「第2チンネル」は、上記イ-1(エ-2)のモデル2と電流の向きを含めて同様の配置ということができ、 また、チャンネルの太さが0でなく、本願図2の実施形態のように断面が矩形形状の導体であっても、また、インダクタ本体が磁性体であったとしても、断面矩形形状の導体の周りのインダクタ本体の断面領域の中における、磁場・磁束の形成状況・合成・低減の態様については、上記“磁場・磁束の形成状況・合成・低減の態様(e)”と本質的に変わらないことは、前記のとおりである。 そうすると、上記〔相違点1の克服〕をしたものは、上記イ-1(エ-2)で示したとおり、 ・上記(b)の『図2の矢印で示されるごとく、一方のコンダクタの電流によってその周囲に誘発される磁束の回転方向と他方のコンダクタの電流によってその周囲に誘発される磁束の回転方向が逆である』態様も、 ・上記(c)の、矢印50、52、54および56に示されるように、『断面において回転方向が互いに逆向きの磁束が生成される』態様も、実現されており、また、 ・上記(f)の『断面上で、一方のチャネルを(0,0)に他方のチンネルを(d、0)に配置したとき、 前記インダクタ本体の断面領域(断面矩形形状のチャネルの周りであることを含む)の中で、 略x<0の領域(参考図2の領域A)及び略x>dの領域(参考図2の領域C)における磁束密度を低減(x成分もy成分も低減)すること、 及び/または、 略0<x<dの領域(参考図2の領域B)における磁束密度を低減(x成分のみ低減)すること、 が満たされる形状(断面が矩形である第1チャネルと第2チャネルを間隔を開けて平行に配置したU字形状を含む)』 となっている、 ということができる。 すなわち、上記相違点2の構成を満たすもの、となっている。 ウ まとめ(相違点についての判断) 引用発明を出発点とし、上記〔相違点1の克服〕をすることは上記のとおり当業者の容易想到であり、そのように上記〔相違点1の克服〕をしたものは上記〔相違点2の克服〕をしたものとなっているのであるから、補正後発明は、当業者が容易に想到し得たものである。 〈請求人の主張について〉 請求人は、請求書、回答書中で、本件発明は、U字コンダクタの2つの導体間の距離Dの増加に従いインダクタンスは増加するので、磁束の部分的相殺が起きないようなそして飽和電流を増やす効果がないような導体(32、34)としての独立した作用にのみに限ることないように、コンダクタの形状、すなわち、U字コンダクタの2つの導体間の距離Dを決めることで、高インダクタンスで高い飽和電流を得る2つの機能を両立させる点に、本件発明の本旨があり、かかる両立については、何れの刊行物にも示唆がなく、本件発明は進歩性を有する、旨主張している。 しかしながら、補正後請求項1には「・・・ように前記コンダクタの形状を選択する」としか記載されていないばかりか、 これに対応する記載として、明細書中に、コンダクタの形状を具体的にどのように決めるのかについても、U字コンダクタの2つの導体間の距離Dに着目することや上記「磁束の部分的相殺が起きないような・・・作用にのみに限ることないように、コンダクタの形状、すなわち、U字コンダクタの2つの導体間の距離Dを決める」ことについても、一切記載されていないのであるから、 上記請求人の主張は、請求項1の構成に基づかない主張であって、採用できない。 (3)まとめ(相違点等の判断) 以上のとおり、引用発明を出発点として、上記〔相違点1の克服〕をすることは、刊行物1記載の発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることであるところ、そのように上記〔相違点1の克服〕をしたものは、上記〔相違点2の克服〕をしたものとなっているのであるから、補正後発明は、刊行物1記載の発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 [7]まとめ(理由:独立特許要件不適合) 以上によれば、補正後の請求項1に係る発明は、上記刊行物1に記載された発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 【第3】査定の当否(当審の判断) [1]本願発明 平成23年10月28日付けの補正は上記のとおり却下する。 本願の請求項1?40に係る各発明は、本願特許請求の範囲,明細書及び図面(平成23年5月27日付けの手続補正を含む)の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?40に記載した事項により特定されるとおりのものと認められるところ、 その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は下記の通りである。 記(本願発明(請求項1)) 第1端部とこれに対向する第2端部とを有するインダクタ本体と、前記インダクタ本体を通って延びる只一つのみのコンダクタとを備え、 前記コンダクタが、前記インダクタ本体の第1断面領域を通り抜ける第1の方向に電流を流す第1チャネルを有し、 そして、前記第1の方向と逆方向になる第2の方向があって、前記コンダクタが、前記インダクタ本体の第2断面領域を通り抜ける前記第2の方向に電流を流す第2チャネルを少なくとも有し、 その上、前記第1チャネルと前記第2チャネルとをU字形状に配列した前記コンダクタであり、 前記インダクタ本体の前記第1及び第2断面領域で、前記コンダクタを流れる電流によって誘発された磁束が互いに逆向きに誘導されて、前記インダクタ本体の所与の1領域における磁束密度を低減することを特徴とする磁束チャネル式高電流インダクタ。 [2]引用刊行物の記載、引用発明、対比 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2000-306751号公報(上記刊行物1に同じ)には、前記「【第2-3】[3]」で認定したとおりの引用発明が認められ、 本願発明と引用発明との対応については、前記「【第2-3】[4]補正後発明と引用発明との対応」を援用する。 [3]一致点、相違点 本願発明は、前記補正後発明における「前記インダクタ本体の前記第1及び第2断面領域の中で、前記コンダクタを・・・逆向きに誘導され且つ前記インダクタ本体の所与の1領域における磁束密度を低減するように前記コンダクタの形状を選択すること」が、 「前記インダクタ本体の前記第1及び第2断面領域で、前記コンダクタを・・・逆向きに誘導されて、前記インダクタ本体の所与の1領域における磁束密度を低減すること」であり、 補正前請求項1記載の特定事項について、少なくとも「・・・磁束密度を低減するように前記コンダクタの形状を選択する」の下線部分を削除しているものである。 したがって、[本願発明と引用発明との一致点]は、前記「【第2-3】[5]」で示した[補正後発明と引用発明との一致点]と同じであり、 [本願発明と引用発明との相違点1]は、前記「【第2-3】[5]」で示した[補正後発明と引用発明との相違点1]と同じであり、 [本願発明と引用発明との相違点2]は、前記「【第2-3】[5]」で示した[補正後発明と引用発明との相違点2]から「・・・磁束密度を低減するように前記コンダクタの形状を選択する」の下線部分の相違を除き、「第1及び第2断面領域の中で」を「第1及び第2断面領域で」、「誘導され且つ」を「誘導されて、」と変更した以下に示す相違点2となるもので、実質上、上記下線部分の相違を除いたものとなる。 すなわち、 [本願発明と引用発明との一致点] 前記[補正後発明と引用発明との一致点]と同じである。 [本願発明と引用発明との相違点] [相違点1]前記[補正後発明と引用発明との相違点1]と同じである。 [相違点2] 本願発明では、 前記インダクタ本体の前記第1及び第2断面領域で、前記コンダクタを流れる電流によって誘発された磁束が互いに逆向きに誘導されて、前記インダクタ本体の所与の1領域における磁束密度を低減すること、とし、 磁束チャネル式(インダクタ)とするのに対して、 引用発明では、 そのようにする、とはしていない点。 [4]相違点等の判断(容易想到性の判断) 上記[本願発明と引用発明と相違点1]は、 引用発明を起点として、前記「【第2-3】[6](1)」で示した[補正後発明と引用発明との相違点の克服]をすることで克服されるところ、 [補正後発明と引用発明との相違点1の克服]が当業者が容易に想到し得ることであることは、前記「【第2-3】[6](2)ア」で理由を付して示したとおりである。 そして、引用発明を出発点として、当業者が容易に想到し得る上記〔相違点1の克服〕をしたものが、上記[本願発明と引用発明との相違点2]の構成を満たすもの、となっていることも、前記「【第2-3】[6](2)イ」で根拠を付して示したとおりである。 したがって、上記[本願発明と引用発明との相違点の克服]も、[補正後発明と引用発明との相違点の克服]が容易想到である理由と同じ理由で当業者の容易想到ということができる。 [5]まとめ(本願発明) 本願発明は、上記刊行物1に記載された発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 【第4】むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、上記刊行物1に記載された発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願の他の請求項について特に検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-05-21 |
結審通知日 | 2013-05-28 |
審決日 | 2013-06-12 |
出願番号 | 特願2009-507659(P2009-507659) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01F)
P 1 8・ 575- Z (H01F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山田 正文 |
特許庁審判長 |
乾 雅浩 |
特許庁審判官 |
関谷 隆一 石井 研一 |
発明の名称 | 磁束チャネル式高電流インダクタ |
代理人 | 飯田 伸行 |