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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1280937
審判番号 不服2012-22082  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-07 
確定日 2013-10-31 
事件の表示 特願2005-368606「半導体発光素子及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月 5日出願公開、特開2007-173482〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成17年12月21日に出願したものであって、平成20年12月22日、平成23年7月14日及び平成24年2月3日に手続補正がされたが、平成24年7月27日付けで平成24年2月3日にされた手続き補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月7日に拒絶査定不服審判請求がなされ、これと同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成24年11月7日になされた手続補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1ないし9に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
窒化物半導体層と、該窒化物半導体層に接続された導電性酸化物膜とを含んで構成される半導体素子であって、
前記導電性酸化物膜が、表面に凹凸を有し、該表面の最大高さと最小高さとの中間高さよりも表面高さが高い領域が、表面高さが低い領域より多く占め、かつ、前記中間高さにおける累積度数分布が81.0%以上であり、
前記凹部の底が不規則な高さを有する凹優勢の導電性酸化物膜であることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
凹優勢の導電性酸化物膜が、不規則な凹凸である請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
凹優勢の導電性酸化物膜が、中間高さよりも底面の高さが高い凹部を有する請求項1又は2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
導電性酸化物膜が、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム及びマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含んでなる請求項1?3のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項5】
導電性酸化物膜が、p型窒化物半導体層上に形成されてなる請求項1?4のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項6】
窒化物半導体層と、該窒化物半導体層に接続された導電性酸化物膜とを含んで構成される半導体素子の製造方法であって、
表面の最大高さと最小高さとの中間高さよりも表面高さが低い領域が、表面高さが高い領域より多く占める凹凸を有する凸優勢の導電性酸化物膜をスパッタ法によって形成し、該導電性酸化物膜の表面を、表面の最大高さと最小高さとの中間高さよりも表面高さが高い領域が、表面高さが低い領域より多く占める凹凸を有する凹優勢の導電性酸化物膜にスパッタ法によるエッチングによって加工することを含む半導体発光素子の製造方法。
【請求項7】
凸優勢の導電性酸化物膜は、表面の最大高さと最小高さとの中間高さにおける累積度数分布が50%より小さく、凹優勢の導電性酸化物膜は、表面の最大高さと最小高さとの中間高さにおける累積度数分布が50%より大きい請求項6に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項8】
加工を、導電性酸化物膜自体の全表面の加工により行う請求項6又は7に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項9】
凸優勢の導電性酸化物膜の表面を、熱処理を行なうことなく、凹優勢の導電性酸化物膜に加工する請求項6?8のいずれか1つに記載の半導体発光素子の製造方法。」

第3 原査定の理由

原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

「この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
本願の発明の詳細な説明には、「凹優勢」のものとする、特別の具体的な条件が記載されていないから、当業者は過度な試行錯誤なくして、本願発明を実施できない。よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。」

第4 判断

1 上記「凹優勢」の導電性酸化物膜を形成することに関する説明は、発明の詳細な説明【0015】、【0016】、【0025】、【0026】段落に認められるところ、そこには「ウェットエッチング、ドライエッチング、導電性酸化物膜の一部の元素(例えば、In)を揮発させるような温度での熱処理及びこれら方法の組み合わせ等」や、ドライエッチング法におけるスパッタリングにおいて「アルゴンガス流量を調整し、RFパワー100W」、「RFパワー400W」とすることが記載されているものの、一般的な成膜方法が説明されているにすぎず、当該段落及び明細書全体を仔細にみても、上記「凹優勢」の導電性酸化物膜を形成することの具体的内容を把握するに足りる記載を見出すことはできない。

してみると、本願請求項1?9に係る発明における「凹優勢」の導電性酸化物膜を形成することの具体的内容は、発明の詳細な説明を参酌しても理解し得ないことになるから、本願の発明の詳細な説明には、当業者が容易に本願請求項1?9に係る発明の実施をすることができる程度に記載されているということはできない。

2 請求人は、回答書の(4頁14行?7頁24行)において、スパッタ法による成膜条件を制御するためには、比較的限られたパラメータを調整することにより実行でき、当業者であれば、限られた条件をその範囲内で選択して組み合わせることは過度の試行錯誤することなく実行し得るものであり、凸優勢の表面状態の成膜及び凹優勢の表面状態の加工の実現のために、これらの条件を選択/組み合わせることは、例えば、添付資料2に具体的に示すように、当業者であれば実現し得ることが明らかである旨主張する。
しかし、本願発明の詳細な説明においては、上記「ウェットエッチング、ドライエッチング、導電性酸化物膜の一部の元素(例えば、In)を揮発させるような温度での熱処理及びこれら方法の組み合わせ等」の方法であるのに対して、上記添付資料2においては、ターゲットを用いて基板上に成膜させるスパッタ法であり、前者が膜を削り取るものに対して後者が膜を堆積させるものであることで異なっている。
添付資料2をもって、上記「ウェットエッチング、ドライエッチング、導電性酸化物膜の一部の元素(例えば、In)を揮発させるような温度での熱処理及びこれら方法の組み合わせ等」の方法において、凹優勢の膜を過度の試行錯誤することなく形成しえる根拠となるものとは認められない。
よって、請求人の主張は、上記判断を左右するものではない。

第5 むすび

以上のとおり、本願は、その明細書の記載が不備であって、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-30 
結審通知日 2013-09-03 
審決日 2013-09-17 
出願番号 特願2005-368606(P2005-368606)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高椋 健司  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 小松 徹三
畑井 順一
発明の名称 半導体発光素子及びその製造方法  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  
代理人 堀川 かおり  
代理人 小野 由己男  

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