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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B05B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B05B
管理番号 1280944
審判番号 不服2012-25057  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-18 
確定日 2013-10-31 
事件の表示 特願2007-222699「塗料供給システム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月12日出願公開、特開2009- 50830〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年8月29日に出願されたものであって、同年9月4日付けで手続補正書が提出され、平成24年6月25日付けで拒絶理由が通知され、同年8月28日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月26日付けで拒絶査定がなされ、同年12月18日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において平成25年3月14日付けで書面による審尋がなされ、それに対して同年4月9日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成24年12月18日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成24年12月18日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成24年12月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲については、本件補正により補正される前の(すなわち、願書に最初に添付した)下記(1)に示す特許請求の範囲の記載を下記(2)に示す特許請求の範囲の記載へ補正するものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
複数種類の塗料及び洗浄液を選択的に供給可能なカラーチェンジバルブと、
上面が開口し横断面が円形または円形に類似した形状とされた凹部を有する本体部に、前記凹部の上面を覆うように圧力調整用ダイアフラムを設けて調圧室を形成すると共に、該本体部に、前記凹部の底部中央にて開口し前記カラーチェンジバルブから供給される前記塗料及び洗浄液を前記調圧室内に流入させる流入口、及び前記凹部の側面にて開口し前記調圧室内に供給された前記塗料及び洗浄液をスプレイガンに向けて流出させる流出口を有する塗料レギュレータとを有して構成され、
前記カラーチェンジバルブから前記塗料レギュレータの調圧室内に洗浄液を供給し該調圧室内を洗浄する洗浄工程を実行する洗浄手段を備えてなる塗料供給システムにおいて、
前記塗料レギュレータの本体部にあって前記凹部の中心から外周側にずれた位置に、径方向に対して傾きを有した形態で開口する洗浄用流入口を設けると共に、
前記洗浄手段は、
前記洗浄用流入口からの洗浄液または空気の供給を制御することにより、前記調圧室内の洗浄液に旋回流を発生させて前記洗浄工程を実行するように構成されていることを特徴とする塗料供給システム。
【請求項2】
前記洗浄手段は、前記洗浄工程として、
前記調圧室内に前記洗浄用流入口から前記洗浄液を供給する工程と、前記流入口から前記洗浄液を供給する工程とを交互に実行するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の塗料供給システム。
【請求項3】
前記洗浄手段は、前記洗浄工程として、
前記調圧室内に前記洗浄液を供給する工程と、前記洗浄用流入口から空気を供給することにより前記調圧室内の洗浄液に旋回流を発生させる工程と、前記流入口から空気を供給することにより前記調圧室内の洗浄液を前記流出口から排出させる工程とを順に実行するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の塗料供給システム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
複数種類の塗料及び洗浄液を選択的に供給可能なカラーチェンジバルブと、
上面が開口し横断面が円形または円形に類似した形状とされた凹部を有する本体部に、前記凹部の上面を覆うように圧力調整用ダイアフラムを設けて調圧室を形成すると共に、該本体部に、前記凹部の底部中央にて開口し前記カラーチェンジバルブから供給される前記塗料及び洗浄液を前記調圧室内に流入させる流入口、及び前記凹部の側面にて開口し前記調圧室内に供給された前記塗料及び洗浄液をスプレイガンに向けて流出させる流出口を有する塗料レギュレータとを有して構成され、
前記カラーチェンジバルブから前記塗料レギュレータの調圧室内に洗浄液を供給し該調圧室内を洗浄する洗浄工程を実行する洗浄手段を備えてなる塗料供給システムにおいて、
前記塗料レギュレータの本体部にあって前記凹部の中心から外周側にずれた位置に、径方向に対して傾きを有した形態で洗浄液に旋回流を発生させる方向に開口する洗浄用流入口を設けると共に、
前記洗浄手段は、
前記洗浄用流入口からの洗浄液または空気の供給を制御することにより、前記調圧室内の洗浄液に旋回流を発生させて前記洗浄工程を実行するように構成されていることを特徴とする塗料供給システム。
【請求項2】
前記洗浄手段は、前記洗浄工程として、
前記調圧室内に前記洗浄用流入口から前記洗浄液を供給する工程と、前記流入口から前記洗浄液を供給する工程とを交互に実行するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の塗料供給システム。
【請求項3】
前記洗浄手段は、前記洗浄工程として、
前記調圧室内に前記洗浄液を供給する工程と、前記洗浄用流入口から空気を供給することにより前記調圧室内の洗浄液に旋回流を発生させる工程と、前記流入口から空気を供給することにより前記調圧室内の洗浄液を前記流出口から排出させる工程とを順に実行するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の塗料供給システム。」
(なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。)

2 本件補正の適否
2-1 本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲については、本件補正前の請求項1の「前記塗料レギュレータの本体部にあって前記凹部の中心から外周側にずれた位置に、径方向に対して傾きを有した形態で開口する洗浄用流入口を設ける」という記載を「前記塗料レギュレータの本体部にあって前記凹部の中心から外周側にずれた位置に、径方向に対して傾きを有した形態で洗浄液に旋回流を発生させる方向に開口する洗浄用流入口を設ける」という記載にするものであり、洗浄用流入口の設け方に限定を加えたものである。
したがって、本件補正は、特許請求の範囲については、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2-2 独立特許要件の検討
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて、さらに検討する。

(1)引用文献の記載
原査定の拒絶の理由で引用した本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である実願平5-1645号(実開平6-60458号)のCD-ROM(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の記載がある(以下、順に「記載1a」ないし「記載1i」という。)。

1a 「【0002】
【従来の技術】
図4は従来の多色切替型の塗料供給装置の全体構成を示す図、図5は同じく制御弁の内部構成を示す図である。
【0003】
図4において、10は塗色切替ユニット,20は塗料噴射ユニット,40はユニット10,20を連通する塗料配管(管路)である。
【0004】
ここで、塗色切替ユニット10は、マニホールド11にX(例えば赤)色用カラーチェンジバルブ12X,Y(例えば白)色用カラーチェンジバルブ12Y,Z(例えば黒)色用カラーチェンジバルブ12Zならびに洗浄流体供給手段(エアーバルブ13および洗浄液バルブ14等)を取り付けてなる。なお、エアーバルブ13には圧搾空気源(図示省略)が接続され、洗浄液バルブ14には塗料洗浄液(シンナー)の供給源(図示省略)が接続されている。また、塗料噴射ユニット20は、塗色切替ユニット10から塗料配管40を介して供給された塗料をスプレーガン21から噴射可能に形成されている。なお、塗料の噴射・噴射停止は、切替弁装置45(トリガバルブ,ダンプバルブ等)によって制御される。また、スプレーガン21からの塗料噴射量は、制御盤28および電空リレー29等の協働により開度コントロールされる制御弁(30)によって一定となるように調節される。」(段落【0002】ないし【0004】)

1b 「【0007】
ここで、制御弁30は、図5に示す如く、本体31を有している。本体31には、ダイヤフラム32により隔離された塗料供給室33および圧搾空気供給室34と,塗料供給室33に連通され入口側および出口側端部35a,35bが塗料配管40の対応する各接続端部40a,40bに接続された塗料流路35と,ダイヤフラム32の中央部に組付けられ圧搾空気供給室34内の空気圧に応じた位置に位置決めされ塗料流路35の入口側に配設された弁座部39の開度を調節可能な弁体37とが収容されている。上記圧搾空気供給室34内の空気圧は、制御盤28等によって所定圧力に設定される。なお、図3中、38は、弁体37を弁座部39へ向けて付勢するスプリングである。」(段落【0007】)

1c 「【0009】
上記制御弁30は、塗色切替時に洗浄流体供給手段(13,14等)から供給される洗浄エアおよび洗浄液(例えばシンナー)によって内部洗浄される。
上記塗料供給装置では、例えば塗色切替ユニット10のX色用カラーチェンジバルブ12Xを開放すれば、X色塗料が塗料配管40の上流側部分を介して制御弁30に送り込まれる。そして、X色塗料は、制御弁30により定量とされた後スプレーガン21から噴射される。
【0010】
次に、Y色塗料に切替える場合には、塗色切替ユニット10(マニホールド11),制御弁30,塗料配管40,切替弁装置45および塗料噴射ユニット20を洗浄する。
マニホールド11,制御弁30ならびにマニホールド11および切替弁装置45間の塗料配管40を内部洗浄するには、エアーバルブ13と洗浄液バルブ14とを交互に開放して、マニホールド11および制御弁30等内の残留塗料を切替弁装置45のダンプバルブ(図示省略)を介して外部排出して当該マニホールド11および弁30内等を清浄化する。次に、エアーバルブ13と洗浄液バルブ14とを交互に開放して、洗浄エアおよび洗浄液(シンナー)によって、マニホールド11,制御弁30,塗料配管40,切替弁装置45(トリガバルブ),塗料噴射ユニット20を洗浄する。洗浄後の洗浄液(シンナー)は排液としてスプレーガン21から排出される。この際、弁座部39をフルオープンしてクリーニングの迅速化を図っている。」(段落【0009】及び【0010】)

1d 「【0013】
【考案が解決しようとする課題】
ところで、上記した塗料供給装置においては、制御弁30の洗浄等を迅速かつ前使用塗料(X色)が残らないように完全に行わなければならないが、制御弁30の塗料供給室33の外周部33gに残色しやすい。すなわち、制御弁30の弁座部39と弁体37の弁部37bとの間隙がフルオープンしても狭いため、当該間隙を介して塗料供給室33内に流入される洗浄液(シンナー)が当該供給室33の中央部にしか勢いよく当たらず外周部へ行くほど勢いが弱くなる。そのため、塗料供給室33の外周部33gに前使用塗料(X色)が残りやすい。かかる残色は洗浄液圧力を増大しても圧損が大であるため解消できない。」(段落【0013】)

1e 「【0015】
【課題を解決するための手段】
本考案に係る塗料供給装置は、管路で連結された塗色切替ユニットおよび塗料噴射ユニットと、管路中に配設され塗色切替ユニットから塗料噴射ユニットに供給される塗料流量を制御する制御弁と、塗色切替時に制御弁に洗浄流体を供給して内部洗浄可能な洗浄流体供給手段とを有し、制御弁が、ダイヤフラムにより区画形成された塗料供給室と,この塗料供給室に連通され入口側および出口側端部が管路の対応する各接続端部に接続された塗料流路と,ダイヤフラムに組付けられ当該ダイヤフラムに作用する空気圧に応じた位置に位置決めされて塗料流路の入口側に配設された弁座部の開度を調節可能な弁体とを含み形成された塗料供給装置において、前記制御弁の塗料供給室に開口する洗浄液噴射孔を有し塗色切替時に該洗浄液噴射孔を介して洗浄液を塗料供給室の外周部へ向けて噴出可能な補助洗浄液供給手段を設けたことを特徴とする。」(段落【0015】)

1f 「【0018】
【実施例】
図1は、本考案の実施例の要部である制御弁の内部構成を説明するための側断面図、図2は同じく全体構成を示す図、図3は同じく補助洗浄液供給手段の洗浄液噴射孔から噴出された洗浄液の様子を示す図である。
【0019】
以下、本考案の一実施例を図面に基づき説明する。
本塗料供給装置は、図1?3に示す如く、基本的構成〔塗色切替ユニット10,洗浄流体供給手段(13,14等),塗料噴射ユニット20,制御弁30,塗料配管40,切替弁装置45および洗浄液供給装置(図示省略)等〕が従来例(図4,5)と同様とされ、制御弁30の塗料供給室33に開口する洗浄液噴射孔61を有し塗色切替時に該洗浄液噴射孔61を介して洗浄液を塗料供給室33の外周部33gに向けて噴出可能な補助洗浄液供給手段60を設けた構成とされている。かかる構成により、残色のない塗色切替を確約しつつ制御弁30を迅速に内部洗浄することができる。
なお、従来例(図4,5)と共通する構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0020】
ここで、本塗料供給装置の特徴部である補助洗浄液供給手段60は、図1,2に示す如く、洗浄液噴射孔61と,この洗浄液噴射孔61を介して塗料供給室33内に洗浄液を噴出可能な洗浄液供給部63とを含み構成されている。洗浄液噴射孔61は、図1に示す如く、制御弁30の本体31側面に塗料供給室33に開口するように貫通穿設されており、当該噴出孔61には配管65を介して洗浄液供給部63が接続されている。
【0021】
より具体的には、洗浄液噴射孔61は、当該穴61より噴出される洗浄液が積極的に塗料供給室33の外周部33gに当たるように伸延方向が図3に示す如く円状の外周部33gの接線方向となるように形成されている。これにより、洗浄液噴射孔61から塗料供給室33内に噴出された洗浄液は外周部33gと積極的に接触しつつ供給室33内で高速回転する。
【0022】
次に、本実施例の作用について説明する。
塗色切替時には、エアーバルブ13およびシンナーバルブ14ならびに洗浄流体供給装置から洗浄エアーおよび洗浄液(シンナー)が制御弁30の塗料供給室33内に塗料流路35の入口側端部35aならびに弁座部39と弁体37の弁部37bとの間隙を介して供給される。この供給室33に供給された洗浄液等によって当該供給室33の中央部等が洗浄される。
【0023】
また、同時的に、補助洗浄液供給手段60の洗浄液供給部63が作動されて、洗浄液噴射孔61から洗浄液が塗料供給室33内に直接噴出される。この噴出された洗浄液は供給室33内で外周部33gと積極的に接触しつつ高速回転する。したがって、補助洗浄液供給手段60等からの洗浄液によって供給室33等から前使用塗料が迅速に払拭される。」(段落【0018】ないし【0023】)

1g 「【0025】
また、補助洗浄液供給手段60の洗浄液噴射孔61の伸延方向が円状の外周部33gの接線方向となるように形成されているので、噴射孔61から塗料供給室33内に噴出された洗浄液は当該供給室33内で高速回転する。そのため、より一層迅速かつ効果的に塗料供給室33等に付着した前使用塗料を払拭することができる。」(段落【0025】)

1h 図1、3及び5から、本体31のダイヤフラム32より下の部分は、上面が開口し横断面が円形とされた凹部を有すること、前記凹部の上面を覆うようにダイヤフラム32が設けられていること、前記凹部の底部中央に弁座部39と弁体37の弁部37bとの間隙が開口されていること及び前記凹部の側面に出口側端部35bが開口されていることが看取される。

1i 図1及び3から、本体31のダイヤフラム32より下の部分にあって凹部の中心から外周側にずれた位置に、洗浄液噴射孔61が設けられていることが看取される。

(2)引用文献の記載事項
引用文献の記載1aないし1i及び図面の記載から、引用文献には、次の事項が記載されていると認める(以下、順に「記載事項2a」ないし「記載事項2e」という。)。

2a 引用文献の記載1aの「ここで、塗色切替ユニット10は、マニホールド11にX(例えば赤)色用カラーチェンジバルブ12X,Y(例えば白)色用カラーチェンジバルブ12Y,Z(例えば黒)色用カラーチェンジバルブ12Zならびに洗浄流体供給手段(エアーバルブ13および洗浄液バルブ14等)を取り付けてなる。なお、エアーバルブ13には圧搾空気源(図示省略)が接続され、洗浄液バルブ14には塗料洗浄液(シンナー)の供給源(図示省略)が接続されている。」という記載及び記載1fの「本塗料供給装置は、図1?3に示す如く、基本的構成〔塗色切替ユニット10,洗浄流体供給手段(13,14等),塗料噴射ユニット20,制御弁30,塗料配管40,切替弁装置45および洗浄液供給装置(図示省略)等〕が従来例(図4,5)と同様とされ」という記載によると、引用文献には、X色、Y色、Z色の塗料及び洗浄液を切替えて供給可能な塗色切替ユニット10が記載されている。

2b 引用文献の記載1aの「塗料噴射ユニット20は、塗色切替ユニット10から塗料配管40を介して供給された塗料をスプレーガン21から噴射可能に形成されている。」という記載、記載1bの「ここで、制御弁30は、図5に示す如く、本体31を有している。本体31には、ダイヤフラム32により隔離された塗料供給室33および圧搾空気供給室34と,塗料供給室33に連通され入口側および出口側端部35a,35bが塗料配管40の対応する各接続端部40a,40bに接続された塗料流路35と,ダイヤフラム32の中央部に組付けられ圧搾空気供給室34内の空気圧に応じた位置に位置決めされ塗料流路35の入口側に配設された弁座部39の開度を調節可能な弁体37とが収容されている。」という記載、記載1fの「なお、従来例(図4,5)と共通する構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。」及び「塗色切替時には、エアーバルブ13およびシンナーバルブ14ならびに洗浄流体供給装置から洗浄エアーおよび洗浄液(シンナー)が制御弁30の塗料供給室33内に塗料流路35の入口側端部35aならびに弁座部39と弁体37の弁部37bとの間隙を介して供給される。」という記載、記載1h、図面並びに記載事項2aによると、引用文献には、上面が開口し横断面が円形とされた凹部を有する本体31のダイヤフラム32より下の部分に、前記凹部の上面を覆うようにダイヤフラム32を設けて塗料供給室33を形成すると共に、該本体31のダイヤフラム32より下の部分に、前記凹部の上面を覆うようにダイヤフラム32を設けて塗料供給室33を形成すると共に、該本体31のダイヤフラム32より下の部分に、前記凹部の底部中央にて開口し前記塗色切替ユニット10から供給されるX色、Y色、Z色の塗料及び洗浄液を塗料供給室33内に供給させる弁座部39と弁体37の弁部37bとの間隙、及び前記凹部の側面にて開口し前記塗料供給室33内に供給された前記X色、Y色、Z色の塗料及び洗浄液をスプレーガン21に向けて供給する出口側端部35bを有する制御弁30が記載されている。

2c 引用文献の記載1cの「次に、Y色塗料に切替える場合には、塗色切替ユニット10(マニホールド11),制御弁30,塗料配管40,切替弁装置45および塗料噴射ユニット20を洗浄する。
マニホールド11,制御弁30ならびにマニホールド11および切替弁装置45間の塗料配管40を内部洗浄するには、エアーバルブ13と洗浄液バルブ14とを交互に開放して、マニホールド11および制御弁30等内の残留塗料を切替弁装置45のダンプバルブ(図示省略)を介して外部排出して当該マニホールド11および弁30内等を清浄化する。次に、エアーバルブ13と洗浄液バルブ14とを交互に開放して、洗浄エアおよび洗浄液(シンナー)によって、マニホールド11,制御弁30,塗料配管40,切替弁装置45(トリガバルブ),塗料噴射ユニット20を洗浄する。」という記載及び記載1fの「塗色切替時には、エアーバルブ13およびシンナーバルブ14ならびに洗浄流体供給装置から洗浄エアーおよび洗浄液(シンナー)が制御弁30の塗料供給室33内に塗料流路35の入口側端部35aならびに弁座部39と弁体37の弁部37bとの間隙を介して供給される。この供給室33に供給された洗浄液等によって当該供給室33の中央部等が洗浄される。」という記載によると、引用文献には、塗色切替ユニット10から制御弁30の塗料供給室33内に洗浄液を供給し該塗料供給室33内を洗浄する洗浄工程を実行する洗浄手段が記載されている。

2d 引用文献の記載1fの「ここで、本塗料供給装置の特徴部である補助洗浄液供給手段60は、図1,2に示す如く、洗浄液噴射孔61と,この洗浄液噴射孔61を介して塗料供給室33内に洗浄液を噴出可能な洗浄液供給部63とを含み構成されている。洗浄液噴射孔61は、図1に示す如く、制御弁30の本体31側面に塗料供給室33に開口するように貫通穿設されており、当該噴出孔61には配管65を介して洗浄液供給部63が接続されている。」、「より具体的には、洗浄液噴射孔61は、当該穴61より噴出される洗浄液が積極的に塗料供給室33の外周部33gに当たるように伸延方向が図3に示す如く円状の外周部33gの接線方向となるように形成されている。これにより、洗浄液噴射孔61から塗料供給室33内に噴出された洗浄液は外周部33gと積極的に接触しつつ供給室33内で高速回転する。」及び「同時的に、補助洗浄液供給手段60の洗浄液供給部63が作動されて、洗浄液噴射孔61から洗浄液が塗料供給室33内に直接噴出される。この噴出された洗浄液は供給室33内で外周部33gと積極的に接触しつつ高速回転する。」という記載並びに記載1iによると、引用文献には、制御弁30の本体31のダイヤフラム32より下の部分にあって凹部の中心から外周側にずれた位置に、伸延方向が塗料供給室33の外周部33gの接線方向となるような形態で洗浄液に高速回転を発生させるように開口する洗浄液噴射孔61が記載されている。

2e 引用文献の記載1fの「次に、本実施例の作用について説明する。
塗色切替時には、エアーバルブ13およびシンナーバルブ14ならびに洗浄流体供給装置から洗浄エアーおよび洗浄液(シンナー)が制御弁30の塗料供給室33内に塗料流路35の入口側端部35aならびに弁座部39と弁体37の弁部37bとの間隙を介して供給される。この供給室33に供給された洗浄液等によって当該供給室33の中央部等が洗浄される。」及び「同時的に、補助洗浄液供給手段60の洗浄液供給部63が作動されて、洗浄液噴射孔61から洗浄液が塗料供給室33内に直接噴出される。この噴出された洗浄液は供給室33内で外周部33gと積極的に接触しつつ高速回転する。したがって、補助洗浄液供給手段60等からの洗浄液によって供給室33等から前使用塗料が迅速に払拭される。」という記載並びに記載事項2cによると、引用文献には、洗浄液噴射孔61からの洗浄液の供給を制御することにより、塗料供給室33内の洗浄液に高速回転を発生させて洗浄工程を実行する洗浄手段が記載されている。

(3)引用文献に記載された発明
引用文献の記載1aないし1i、記載事項2aないし2e及び図面の記載を整理すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「X色、Y色、Z色の塗料及び洗浄液を切替えて供給可能な塗色切替ユニット10と、
上面が開口し横断面が円形とされた凹部を有する本体31のダイヤフラム32より下の部分に、前記凹部の上面を覆うようにダイヤフラム32を設けて塗料供給室33を形成すると共に、該本体31のダイヤフラム32より下の部分に、前記凹部の底部中央にて開口し前記塗色切替ユニット10から供給されるX色、Y色、Z色の塗料及び洗浄液を塗料供給室33内に供給させる弁座部39と弁体37の弁部37bとの間隙、及び前記凹部の側面にて開口し前記塗料供給室33内に供給された前記X色、Y色、Z色の塗料及び洗浄液をスプレーガン21に向けて供給する出口側端部35bを有する制御弁30とを有して構成され、
前記塗色切替ユニット10から前記制御弁30の塗料供給室33内に洗浄液を供給し該塗料供給室33内を洗浄する洗浄工程を実行する洗浄手段を備えてなる塗料供給装置において、
前記制御弁30の本体31のダイヤフラム32より下の部分にあって前記凹部の中心から外周側にずれた位置に、伸延方向が塗料供給室33の外周部33gの接線方向となるような形態で洗浄液に高速回転を発生させるように開口する洗浄液噴射孔61を設けると共に、
前記洗浄手段は、
前記洗浄液噴射孔61からの洗浄液の供給を制御することにより、前記塗料供給室33内の洗浄液に高速回転を発生させて洗浄工程を実行するように構成されている塗料供給装置。」

(4)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。

引用発明における「X色、Y色、Z色の塗料」は、その構成、機能及び技術的意義からみて、本願補正発明における「複数種類の塗料」に相当し、以下、同様に、「洗浄液」は「洗浄液」に、「切替えて」は「選択的に」に、「塗色切替ユニット10」は「カラーチェンジバルブ」に、「円形」は「円形または円形に類似した形状」に、「本体31のダイヤフラム32より下の部分」は「本体部」に、「ダイヤフラム32」は「圧力調整用ダイアフラム」に、「塗料供給室33」は「調圧室」に、「(塗料供給室33内に)供給させる」は「(調圧室内に)流入させる」に、「弁座部39と弁体37の弁部37bとの間隙」は「流入口」に、「スプレーガン21」は「スプレイガン」に、「(スプレーガン21に向けて)供給する」は「(スプレイガンに向けて)流出させる」に、「出口側端部35b」は「流出口」に、「制御弁30」は「塗料レギュレータ」に、「洗浄手段」は「洗浄手段」に、「塗料供給装置」は「塗料供給システム」に、「洗浄液に高速回転を発生させるように開口する」は「洗浄液に旋回流を発生させる方向に開口する」に、「洗浄液噴射孔61」は「洗浄用流入口」に、「高速回転を発生させて」は「旋回流を発生させて」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、
「複数種類の塗料及び洗浄液を選択的に供給可能なカラーチェンジバルブと、
上面が開口し横断面が円形または円形に類似した形状とされた凹部を有する本体部に、前記凹部の上面を覆うように圧力調整用ダイアフラムを設けて調圧室を形成すると共に、該本体部に、前記凹部の底部中央にて開口し前記カラーチェンジバルブから供給される前記塗料及び洗浄液を前記調圧室内に流入させる流入口、及び前記凹部の側面にて開口し前記調圧室内に供給された前記塗料及び洗浄液をスプレイガンに向けて流出させる流出口を有する塗料レギュレータとを有して構成され、
前記カラーチェンジバルブから前記塗料レギュレータの調圧室内に洗浄液を供給し該調圧室内を洗浄する洗浄工程を実行する洗浄手段を備えてなる塗料供給システムにおいて、
前記塗料レギュレータの本体部にあって前記凹部の中心から外周側にずれた位置に、洗浄液に旋回流を発生させる方向に開口する洗浄用流入口を設けると共に、
前記洗浄手段は、
前記洗浄用流入口からの洗浄液または空気の供給を制御することにより、前記調圧室内の洗浄液に旋回流を発生させて前記洗浄工程を実行するように構成されている塗料供給システム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本願補正発明では、「洗浄用流入口」が、「径方向に対して傾きを有した形態」で設けられているのに対し、引用発明では、本願補正発明における「洗浄用流入口」に相当する「洗浄液噴射孔61」は、「伸延方向が塗料供給室33の外周部33gの接線方向となるような形態」で設けられている点。

(5)相違点についての判断
そこで、上記相違点について、以下に検討する。

引用文献の記載1eの「前記制御弁の塗料供給室に開口する洗浄液噴射孔を有し塗色切替時に該洗浄液噴射孔を介して洗浄液を塗料供給室の外周部へ向けて噴出可能な補助洗浄液供給手段を設けたことを特徴とする。」という記載及び記載1fの「より具体的には、洗浄液噴射孔61は、当該穴61より噴出される洗浄液が積極的に塗料供給室33の外周部33gに当たるように伸延方向が図3に示す如く円状の外周部33gの接線方向となるように形成されている。これにより、洗浄液噴射孔61から塗料供給室33内に噴出された洗浄液は外周部33gと積極的に接触しつつ供給室33内で高速回転する。」という記載によると、引用発明における「伸延方向が塗料供給室33の外周部33gの接線方向となるような形態」という発明特定事項は、「穴61より噴出される洗浄液が積極的に塗料供給室33の外周部33gに当たる」ようにして、「洗浄液」を「外周部33gと積極的に接触しつつ供給室33内で高速回転」させるという目的を達成するための構成を具体的に示したものといえる。
また、引用発明において、「伸延方向」が「塗料供給室33の外周部33gの接線方向」から「塗料供給室33の外周部33g」の径方向の面上で多少角度を有した、即ち径方向に対する傾きを有したしても、「洗浄液」は「塗料供給室33の外周部33gに当たる」ことによって「外周部33gと積極的に接触しつつ供給室33内で高速回転」させられることは明らかである。
したがって、「穴61より噴出される洗浄液が積極的に塗料供給室33の外周部33gに当たる」ようにして、「洗浄液」を「外周部33gと積極的に接触しつつ供給室33内で高速回転」させるという目的を達成するための構成として、「伸延方向」が「塗料供給室33の外周部33gの接線方向」から「塗料供給室33の外周部33g」の径方向の面上で多少角度を有した方向、即ち径方向に対して傾きを有した方向が除外されるものではなく、「伸延方向」を「塗料供給室33の外周部33gの接線方向」から「塗料供給室33の外周部33g」の径方向の面上で多少角度を有した方向、即ち径方向に対して傾きを有した方向とするかどうかは、当業者が適宜決めるべき設計的事項である。
よって、引用発明において、「洗浄液噴射孔61」を設ける際に、「伸延方向が塗料供給室33の外周部33gの接線方向となるような形態」に代えて、「洗浄液」が「塗料供給室33の外周部33gに当たる」程度に、「伸延方向」として、「塗料供給室33の外周部33gの接線方向」から「塗料供給室33の外周部33g」の径方向の面上で多少角度を有した方向、即ち径方向に対して傾きを有した方向となるような形態を採用して、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

そして、引用文献の記載1dに「ところで、上記した塗料供給装置においては、制御弁30の洗浄等を迅速かつ前使用塗料(X色)が残らないように完全に行わなければならないが、制御弁30の塗料供給室33の外周部33gに残色しやすい。すなわち、制御弁30の弁座部39と弁体37の弁部37bとの間隙がフルオープンしても狭いため、当該間隙を介して塗料供給室33内に流入される洗浄液(シンナー)が当該供給室33の中央部にしか勢いよく当たらず外周部へ行くほど勢いが弱くなる。そのため、塗料供給室33の外周部33gに前使用塗料(X色)が残りやすい。かかる残色は洗浄液圧力を増大しても圧損が大であるため解消できない」、記載1fに「この噴出された洗浄液は供給室33内で外周部33gと積極的に接触しつつ高速回転する。したがって、補助洗浄液供給手段60等からの洗浄液によって供給室33等から前使用塗料が迅速に払拭される。」及び記載1gに「補助洗浄液供給手段60の洗浄液噴射孔61の伸延方向が円状の外周部33gの接線方向となるように形成されているので、噴射孔61から塗料供給室33内に噴出された洗浄液は当該供給室33内で高速回転する。そのため、より一層迅速かつ効果的に塗料供給室33等に付着した前使用塗料を払拭することができる。」と記載されているように、引用発明の奏する効果は、本願補正発明の「制御手段が洗浄用流入口からの洗浄液または空気の供給を制御することにより、洗浄工程において、調圧室内の洗浄液に旋回流を発生させることができる。これにより、調圧室内における洗浄液の流れを良好とすることができ、調圧室内において洗浄できない箇所を生じにくくできる。この結果、調圧室の洗浄性を向上することができ、少量の洗浄液で短時間に洗浄を行うことができる。」(本願明細書の段落【0009】等を参照。)という効果と差異がなく、本願補正発明により、引用発明からみて、格別顕著な効果が奏されるともいえない。

2-3 むすび
したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないので、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたため、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成24年8月28日付け手続補正書により補正された明細書並びに願書に最初に添付した特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1(1)」の【請求項1】のとおりである。

2 引用文献の記載、引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
原査定の拒絶の理由で引用した本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である実願平5-1645号(実開平6-60458号)のCD-ROM(以下、上記「第2[理由]2 2-2(1)と同様に「引用文献」という。)には、上記「第2[理由]2 2-2(1)」のとおりの記載があり、該記載及び図面から、上記「第2[理由]2 2-2(2)」のとおりの事項が記載されていると認める。
そして、引用文献には、上記「第2[理由]2 2-2(3)」のとおりの発明(以下、上記「第2[理由]2 2-2(3)と同様に「引用発明」という。)が記載されていると認める。

3 対比・判断
上記「第2[理由]2 2-1」で検討したように、本願補正発明は本願発明の発明特定事項に限定を加えたものである。そして、本願発明の発明特定事項に限定を加えた本願補正発明が、上記「第2[理由]2 2-2(4)及び(5)」のとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様に、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-28 
結審通知日 2013-09-03 
審決日 2013-09-17 
出願番号 特願2007-222699(P2007-222699)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B05B)
P 1 8・ 575- Z (B05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 太郎  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 林 茂樹
加藤 友也
発明の名称 塗料供給システム  
代理人 佐藤 強  

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