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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1280958
審判番号 不服2013-5137  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-18 
確定日 2013-10-31 
事件の表示 特願2008-249627「垂直磁気記録媒体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月 8日出願公開、特開2010- 80022〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成20年9月29日の出願であって、原審において平成24年12月12日付けで拒絶査定され、これに対し、平成25年3月18日に審判請求がなされたものであるところ、
本件出願の請求項1に係る発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、平成24年5月18日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(以下「本願発明」という。)

(本願発明)
「 【請求項1】
非磁性基板上に、軟磁性層、垂直磁性層を含む積層構造を形成する垂直磁気記録媒体の製造方法であって、
非磁性基板上に積層構造を形成する前に非磁性基板表面を平滑化する研磨工程を有し、
前記研磨工程に用いる研磨液はダイヤモンド粒子を0.001?0.05質量%の範囲内、研磨促進剤をダイヤモンド粒子に対して10?100倍の範囲内でそれぞれ含み、
前記研磨促進剤はスルホン酸基またはカルボン酸基を有する平均分子量が4000?10000の有機重合物であり、
前記研磨工程の終了後、前記非磁性基板上に積層構造を形成するまでの時間が10時間以内であり、
前記ダイヤモンド粒子がクラスターダイヤモンド粒子であり、ダイヤモンド粒子の1次粒子径は1nm?10nmの範囲内、2次粒子径が50nmから100nmの範囲内であり、
前記スルホン酸基またはカルボン酸基を有する前記研磨促進剤が、スルホン酸ナトリウムまたはカルボン酸ナトリウムを有する研磨促進剤であり、
前記非磁性基板がガラス基板であることを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。」


2.引用例に記載された発明
A. 原査定の拒絶理由に引用された刊行物である特開2005-310324号公報(以下、「引用例1」という。)には、「垂直磁気記録ディスク用ガラス基板及びその製造方法」として図面と共に次の記載がある。

イ.「【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均表面粗さが2.0Å以下の範囲にあり、0.05mm?0.5mmの範囲にある波長の円周方向と半径方向の起伏の高低差が1Å以下の範囲にある垂直磁気記録ディスク用のガラス基板。
【請求項2】
平均表面粗さが2.0Å以下の範囲にあり、0.05mm?0.5mmの範囲にある波長の円周方向と半径方向の起伏の高低差が1Å以下の範囲にある垂直磁気記録ディスク用のガラス基板を製造する方法であって、
当該方法が、
ガラス基板の表面を研磨する研磨工程、
から成り、
この研磨工程が、
前記ガラス基板を回転させる工程、
前記ガラス基板の表面に研磨スラリーを供給する工程、及び
前記ガラス基板の表面に研磨テープを押し付け、この研磨テープを前記ガラス基板の回転方向と反対の方向に送り出す工程、
から成り、
前記研磨スラリーが、
砥粒、及び
分散媒、
から成り、
前記砥粒として、衝撃法により生成される人工ダイヤモンドからなる粒径50nm未満の人工ダイヤモンド粒子が使用され、
前記砥粒の含有量が、前記研磨スラリーの全量を基準として、0.005重量%?0.5重量%の範囲にあり、
前記研磨テープとして、少なくとも前記ガラス基板の表面に押し付けられる表面部分が太さ0.1μm?5.0μmの範囲にある繊維からなる織布、不織布、植毛布又は起毛布からなるテープが使用される、
ところの方法。
【請求項3】
前記砥粒の含有量が、前記研磨スラリーの全量を基準として、0.005重量%?0.1重量%の範囲にある、請求項2の方法。
【請求項4】
前記分散媒が、
水、及び
添加剤、
から成り、
前記添加剤として、グリコール化合物、高級脂肪酸アマイド、有機リン酸エステル及び界面活性剤から選択される一種又は二種以上の剤が使用され、
前記添加剤の含有量が、前記研磨スラリーの全量を基準として、1重量%?10重量%の範囲にある、
ところの請求項1の方法。」(2頁)

ロ.「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録ディスク用のガラス基板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
文字、画像、音声などの情報を記録し再生する情報処理装置が、コンピュータだけでなく、テレビジョン、カメラ、電話機などにも搭載されるようになり、情報処理装置には、より高い処理能力(すなわち記録容量の増大)と、再生の正確さが要求され、さらに情報処理装置の小型化が要求されている。
【0003】
情報は、情報処理装置の磁気ヘッドによって、磁気記録媒体に磁気的に記録され、また磁気記録媒体から再生される。
【0004】
磁気記録媒体として、垂直磁気記録ディスクが検討されている(非特許文献1及び2参照)。この垂直磁気記録ディスクは、ディスク状のガラス基板の表面に磁性層と保護層をスパッタリングなどの成膜技術を利用して順次積層したものである。磁性層は、高温のガラス基板の表面に堆積させた磁性層材料の組成分離による偏析構造をもった柱状の結晶子が集合したものであり、各結晶子は、ガラス基板の表面と垂直な方向に伸びる強磁性の柱状の中心部分とこの中心部分の周囲に形成される非磁性の周囲部分とから構成され、これら柱状の結晶子によって、ガラス基板の表面と垂直な方向に磁化する記録ビットが形成される。
【0005】
このように、垂直磁気記録ディスクでは、ガラス基板の表面と垂直な方向に伸びる柱状の結晶子からなる磁性層を形成するため、ガラス基板の表面には高い平滑性(平均表面粗さ2Å以下)が要求されている。
【0006】
情報の記録容量の増大と、再生の正確さは、磁気ディスクの表面と磁気ヘッドとの間の距離に大きく依存する。すなわち、情報は、磁気ヘッドから磁気信号を出力して磁性層に小さな磁石を形成することによって記録され、この小さな磁石からの磁気信号を磁気ヘッドで読み取ることによって再生されるので、磁気ヘッドが磁気ディスクの表面から遠ざかると、磁気ヘッドから出力される磁気信号が拡散し、単位面積当りの記録量(記録密度又は記録容量)が低下するので、情報の記録容量を増大し、正確に再生するためには、磁気ディスクの表面と磁気ヘッドとの間の距離を小さくしなければならず、また、単位面積当りの記録量を増大させると、磁気ディスクを小型化できるのである。このため、磁気ディスクの表面と磁気ヘッドとの間の距離を15nm以下にすることが要求されている。
【0007】
磁気ヘッドとして、浮上型と接触型の磁気ヘッドがある(例えば、非特許文献3参照)。浮上型磁気ヘッドは、磁気ディスクに対面する側にスライダを設けることで、磁気ディスクの表面との間に15nm以下の距離(これを浮上距離という)で磁気ヘッドを安定させようとするものであり、磁気ディスクの表面に高低差の大きい起伏があると、磁気ヘッドのスライダがこの起伏に接触又は衝突して磁気ディスクを損傷させるだけでなく、磁気ヘッドを15nm以下の浮上距離で安定させることができなくなる。また、接触型磁気ヘッドは、弾力性のあるパッドを介して磁気ディスクの表面に磁気ヘッドを接触させようとするものであり、磁気ディスクの表面に起伏があったり、表面が粗いと、磁気ヘッドが振動して磁気ヘッド自体が破損し得る。
【0008】
このため、垂直磁気記録ディスク用のガラス基板には、高い平滑性(平均表面粗さが2.0Å以下の範囲)と、高い平坦性(0.05mm?0.5mmの範囲にある波長の円周方向と半径方向の起伏の高低差が1Å以下の範囲)が要求されている。
【0009】
一般に、ガラス基板は、定盤又はテープを使用して遊離砥粒研磨されている。
【0010】
そして、従来、この遊離砥粒研磨に使用される研磨スラリーとして、人工又は天然ダイヤモンド、酸化セリウム、酸化ジルコニウムなどから選択される材料からなる平均粒径10nm?1μmの範囲にある砥粒を、研磨スラリーの全量を基準として、0.5重量%?20重量%の範囲で分散させたものが使用されている(特許文献1参照)。
【0011】
しかし、このような従来の研磨スラリーでは、ガラス基板に平均表面粗さ2Å以下の表面を形成できない(従来の研磨スラリーでは、平均表面粗さが5Åを超える)。
【特許文献1】特開平9-314458号公報
【非特許文献1】IBM東京基礎研究所ホームページ、研究分野プロジェクト、“垂直磁気記録”(http://www.trl.ibm.com/projects/perpen/)
【非特許文献2】東京工業大学電子物理工学科中川研究室ホームページ、研究紹介、“Co-Cr系高密度垂直磁気記録媒体の作成”(http://spin.pe.titech.ac.jp/hp/research/nfts2/)
【非特許文献3】科学技術振興事業団報第22号“「ハードディスク用接触型薄膜磁気ヘッド」の開発に成功”(http://www.jst.go.jp/pr/report/report22/)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、平均表面粗さが2.0Å以下の範囲にあり、0.05mm?0.5mmの範囲にある波長の円周方向と半径方向の起伏の高低差が1Å以下の範囲にある垂直磁気記録ディスク用のガラス基板及びその製造方法を提供することである。」(2?4頁)

ハ.「【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、平均表面粗さが2.0Å以下の範囲にあり、0.05mm?0.5mmの範囲にある波長の円周方向と半径方向の起伏の高低差が1Å以下の範囲にある垂直磁気記録ディスク用のガラス基板及びその製造方法である。
【0021】
ガラス基板として、二酸化珪素(SiO_(2))、酸化ナトリウム(Na_(2)O)、酸化カルシウム(CaO)を主成分とするソーダライムガラス、二酸化珪素(SiO_(2))、酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))、R_(2)O(R=カリウム(K)、ナトリウム(Na)又はリチウム(Li))を主成分とするアルミシリケートガラス、ボロシリケートガラス、酸化リチウム(Li_(2)O)-SiO_(2)系ガラス、Li_(2)O-Al_(2)O_(3)-SiO_(2)系ガラス、R´O-Al_(2)O_(3)-SiO_(2)系ガラス(R´=マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba))が使用でき、これらガラスに酸化ジルコニウム(ZrO_(2))、酸化チタン(TiO_(2))などを添加した化学強化ガラスが使用できる。また、ガラス基板として、化学的に表面強化処理したものが使用できる。さらに、ガラス基板として、主結晶がα-クリストバライト(α-SiO_(2))及び二酸化リチウム(Li_(2)O・SiO_(2))からなる結晶化ガラスが使用できる。
【0022】
この垂直磁気記録ディスク用のガラス基板は、図1に示すような研磨装置10を使用してガラス基板の表面を研磨することによって製造できる。図示の研磨装置10は、ガラス基板の両面を同じに研磨するものであるが、この研磨装置に代えて、ガラス基板の片面のみを研磨する片面研磨装置(図示せず)を使用してもよい。
【0023】
図示のように、ガラス基板の表面の研磨は、駆動モータに連結したシャフト(図示せず)にガラス基板15を取り付けた後、駆動モータを駆動してガラス基板15を矢印Rの方向に回転させる。そして、このガラス基板15の表裏両面にノズル12、12を通じて研磨スラリーを供給し、コンタクトローラ11、11を介して研磨テープ14、14をガラス基板15の表裏両面に押し付け、これら研磨テープ14、14をガラス基板15の回転方向Rと反対の矢印T、Tの方向に送り出すことにより行われる。研磨後は、ガラス基板15を矢印Rの方向に回転させたまま、ノズル13、13を通じて水等の洗浄液をガラス基板15の表裏両面に吹きかけてガラス基板15の洗浄を行う。
【0024】
好適に、ガラス基板の表面は、予め粗研磨されていてもよい。上記の研磨工程にかかる時間が長いと、ガラス基板の表面に不要の起伏が形成されるので、粗研磨を予め行っておくことで、研磨工程にかかる時間を短縮することができる。
【0025】
ガラス基板の表面は、平均表面粗さが2Å?5Åの範囲にあり、0.05mm?0.5mmの範囲にある波長の円周方向と半径方向の起伏の高低差が1Å?10Åの範囲となるように粗研磨される。粗研磨は、定盤又はテープを使用する既知の遊離砥粒研磨技術(例えば、特開平11-114792号公報、特開平11-221741号公報を参照)を利用して行われる。
【0026】
好適に、この粗研磨工程の後にガラス基板に表面強化処理を施してから上記の研磨工程を行ってもよい。この表面強化処理は、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合溶融塩の加熱溶融液中にガラス基板を浸漬して、ガラス基板表面の一部のイオンを、これよりも大きいイオン径のイオンと交換することにより化学的に行われる。
【0027】
研磨スラリーは、砥粒、及び分散媒から構成される。
【0028】
砥粒として、衝撃法により生成される人工ダイヤモンドからなる粒径50nm未満の人工ダイヤモンド粒子が使用される。
【0029】
この人工ダイヤモンド粒子は、既知の衝撃法(爆発合成法とも呼称される)(例えば、特開2000-136376号公報を参照)によって製造される。衝撃法は、黒鉛の粉末からなるダイヤモンド原料を衝撃を与えて高温で圧縮した後、不純物を除去してダイヤモンドの粒子を人工的に得る方法であり、この方法によると、密度3.2g/cm^(3)?3.4g/cm^(3)(天然のダイヤモンド粒子の密度は3.51g/cm^(3)である)の範囲にあるダイヤモンドの粒子が人工的に得られる。このようにして得られた人工ダイヤモンド粒子は、不純物を溶解して除去するため、塩酸や硝酸を使用して化学的に処理され、不純物の除去後、水で洗浄される。そして、粒径が50nm又はそれ以上であると、ガラス基板の表面に図5に示すような条痕が形成されたり、表面が粗くなるため、分級して、粒径50nm未満の人工ダイヤモンド粒子を採取し、この人工ダイヤモンド粒子を砥粒として使用する。
【0030】
本発明では、砥粒として使用される人工ダイヤモンド粒子は、粒径50nm未満の範囲にあれば、一次粒子及び二次粒子のいずれの形態であってもよい。
【0031】
二次粒子は、研磨中、研磨テープによってガラス基板の表面に押し付けられ、この際に、この二次粒子よりも小さい一次粒子や二次粒子に崩壊し、この崩壊粒子がガラス基板の表面に作用する。もちろん、崩壊前の二次粒子も、崩壊するまでの間、ガラス基板の表面に作用する。このことから、崩壊粒子の粒径が50nm未満であっても、崩壊前の二次粒子の粒径が50nm又はそれ以上であれば、上記のように条痕が形成されたり表面が粗くなるので、二次粒子の粒径も50nm未満でなければならない。
【0032】
砥粒の含有量は、研磨スラリーの全量を基準として、0.005重量%?0.5重量%の範囲、好ましくは0.005重量%?0.1重量%の範囲にある。砥粒の含有量が0.005重量%未満であると、研磨力が低下し、上記の研磨工程にかかる時間がかかりすぎ、ガラス基板の表面に不要の起伏が形成される。一方、砥粒の含有量が、0.1重量%を超えると、表面に条痕が形成されるようになり、0.5重量%に至ると、表面に条痕が形成され、表面が粗くなる。接触型研磨ヘッドを使用する場合、このような条痕や表面の粗さによる凹凸が、磁気ヘッドを振動させ、破損させる原因となる。
【0033】
分散媒は、水、及び添加剤から構成される。
【0034】
添加剤として、グリコール化合物、高級脂肪酸アマイド、有機リン酸エステル及び界面活性剤から選択される一種又は二種以上の剤が使用される。
【0035】
添加剤の含有量は、研磨スラリーの全量を基準として、1重量%?10重量%の範囲にある。
【0036】
グリコール化合物は、砥粒との親和性があり、分散剤として機能する。また、グリコール化合物を使用すると、分散媒を調製する際に、分散媒の粘度を下げるので、分散媒を均一に調製できる。さらに、水との親和性があるので、研磨工程後のガラス基板の洗浄を効率的に行える。グリコール化合物として、アルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジエチレングリコールブチルエーテルなどが使用できる。
【0037】
高級脂肪酸アマイドは、研磨速度を促進させる研磨促進剤として機能する。高級脂肪酸アマイドとして、オレイン酸ジエタノールアマイド、ステアリン酸ジエタノールアマイド、ラウリン酸ジエタノールアマイド、リシノリン酸ジエタノールアマイド、リシノリン酸イソプロパノールアマイド、エルシン酸ジエタノールアマイド、トール脂肪酸ジエタノールアマイドなどが使用され、炭素数が12?22の範囲にあるものが好ましい。
【0038】
有機リン酸エステルは、ガラス基板の表面への異常突起(研磨クズがガラス基板の表面に付着して形成されるバリ)の発生を抑制する機能を有する。有機リン酸エステルは、リン酸(H_(3)PO_(4))の水素をアルキル基又はアリル基で置換したエステルであり、有機リン酸エステルとして、脂肪族系塩型、芳香族系塩型などが使用でき、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルのリン酸塩が使用できる。
【0039】
界面活性剤は、砥粒の分散性を向上させる働きがある。界面活性剤として、ノニオン系又はアニオン系の界面活性剤が使用できる。
【0040】
研磨スラリーは、水に砥粒を加え、超音波を利用して砥粒を分散した後、添加剤を添加し、再び再び超音波を利用して砥粒を分散させることにより製造できる。
【0041】
研磨テープとして、少なくとも表面部分(ガラス基板の表面に実質的に作用する部分)が太さ0.1μm?5.0μmの範囲にある繊維からなる織布、不織布、植毛布又は起毛布からなるテープが使用される。この繊維の太さが、0.1μm未満であると、研磨テープの表面部分の繊維と研磨スラリー中の砥粒との接触点が減少し、ガラス基板の表面に砥粒を十分に作用させることができない。また、繊維の太さが5.0μmを超えると、研磨テープの表面部分を構成する繊維と繊維との間の段差が増大し、ガラス基板の表面を均一に研磨できない。」(5?7頁)


上記引用例1の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
まず、引用例1記載の「垂直磁気記録ディスク用ガラス基板の製造方法」において、「垂直磁気記録ディスク」は、上記ロ.【0004】前段にあるように「ディスク状のガラス基板の表面」に「磁性層」などを「積層したもの」であるから、「ディスク状のガラス基板の表面」に「磁性層」を含む「積層構造」を形成したものであり、
該「磁性層」は、上記ロ.【0004】末尾にあるように「ガラス基板の表面と垂直な方向に磁化する記録ビットが形成される」ものであるから、『垂直磁性層』である。

また、引用例1記載の「垂直磁気記録ディスク用ガラス基板の製造方法」は、上記イ.請求項2にあるように「ガラス基板の表面を研磨する研磨工程」を有しており、「ガラス基板」の「研磨」後に「磁性層」を積層することは技術常識であるから、該「研磨工程」は「ガラス基板の表面」に『積層構造を形成する前に』行われるものである。

また、上記イ.請求項2にあるように前記「研磨工程」においては「研磨スラリー」が用いられ、該「研磨スラリー」は「砥粒」として「人工ダイヤモンド粒子」を含み、
上記イ.請求項3にあるように「人工ダイヤモンド粒子」である「砥粒」の含有量は「研磨スラリーの全量を基準として、0.005重量%?0.1重量%の範囲」にあり、
さらに、上記イ.請求項2及び4にあるように前記「研磨スラリー」は「分散媒」として「添加剤」をも含み、
上記イ.請求項4にあるように該「添加剤」の含有量が「研磨スラリーの全量を基準として、1重量%?10重量%の範囲」であって、上述したように「人工ダイヤモンド粒子」の含有量は「0.005重量%?0.1重量%の範囲」であるから、「研磨スラリー」は、「添加剤」を『人工ダイヤモンド粒子に対して10?2000倍の範囲』で含むといえる。

また、上記イ.請求項4にあるように「添加剤」は「グリコール化合物、高級脂肪酸アマイド、有機リン酸エステル及び界面活性剤から選択される一種又は二種以上の剤」である。

そして、上記ハ.【0030】によれば、「人工ダイヤモンド粒子」の「一次粒子」の「粒径」及び「二次粒子」の「粒径」は「50nm未満の範囲」である。

したがって、上記引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されている。

(引用発明1)
「 ガラス基板の表面に、垂直磁性層を含む積層構造を形成する垂直磁気記録ディスク用のガラス基板の製造方法であって、
ガラス基板の表面に積層構造を形成する前にガラス基板表面を研磨する研磨工程を有し、
前記研磨工程に用いる研磨スラリーは、人工ダイヤモンド粒子を0.005?0.1重量%の範囲内、添加剤を人工ダイヤモンド粒子に対して10?2000倍の範囲内でそれぞれ含み、
前記添加剤はグリコール化合物、高級脂肪酸アマイド、有機リン酸エステル及び界面活性剤から選択される一種又は二種以上の剤であり、
前記人工ダイヤモンド粒子の一次粒子の粒径及び二次粒子の粒径は50nm未満の範囲内であることを特徴とする垂直磁気記録ディスク用のガラス基板の製造方法。」


B.原査定の拒絶理由に引用された刊行物である特開2000-273445号公報(以下、「引用例2」という。)には、「研磨用組成物」として図面と共に次の記載がある。

イ.「【0018】
【課題を解決するための手段】[発明の概要]
<要旨>本発明のメモリーハードディスクの研磨用組成物は、下記の(a)?(d)の成分を含んでなること、を特徴とするものである。
(a)水、(b)ポリスチレンスルホン酸およびその塩類からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物、(c)成分(b)以外の、無機酸、有機酸、およびそれらの塩類からなる群から選択される化合物、および(d)酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、窒化ケイ素、および二酸化マンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種類の研磨材。
【0019】<効果>本発明の研磨用組成物は、メモリーハードディスクに使用されるサブストレートの鏡面研磨において、従来の研磨用組成物に比べて、消泡性が高く、また研磨速度が大きく、微細なピット、微小突起、およびその他の表面欠陥の発生を防止することができるものである。
【0020】[発明の具体的説明]
<ポリスチレンスルホン酸およびその塩類>本発明の研磨用組成物は、成分(b)として、ポリスチレンスルホン酸およびその塩類からなる群から選択される、少なくとも1種類の化合物(以下、「ポリスチレンスルホン酸化合物」という)を含んでなる。本発明において、ポリスチレンスルホン酸とは、ポリスチレンのベンゼン環の任意の水素がスルホン酸基で置換されたもののほかに、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の置換基を有するもの、ならびに基本骨格に本発明の効果を損なわない範囲で任意の繰り返し単位を含んでもよい。
【0021】また、ポリスチレンスルホン酸化合物としては、ポリスチレンスルホン酸と、ナトリウム、カリウム、およびその他のアルカリ土類金属、ならびにモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、アンモニア、およびその他のアミン化合物、との塩であることが好ましい。
【0022】このようなポリスチレンスルホン酸化合物の分子量は特に限定されないが、その重量平均分子量は、好ましくは2,000?1,000,000、さらに好ましくは10,000?50,000、最も好ましくは10,000?30,000、である。ここで、ポリスチレンスルホン酸化合物の分子量を調整することで、研磨速度と表面欠陥の抑制とのバランスを調整することが可能である。
【0023】このようなポリスチレンスルホン酸化合物は、本発明の研磨用組成物に、研磨用組成物の全重量を基準として、好ましくは0.001?2重量%、より好ましくは0.005?1重量%、さらに好ましくは0.01?0.7重量%、の割合で含有される。このポリスチレンスルホン酸化合物の含有量を増加させることで、微細なピットおよびその他の表面欠陥の発生が低減される傾向があるが、過度に増加させると研磨速度や加工能力の低下が起こり、却って微細なピットやスクラッチが発生することがある。逆に、ポリスチレンスルホン酸化合物の含有量が過度に少ないと、表面欠陥の発生を抑制するという本発明の効果が発現しにくい。」(3頁4欄-4頁6欄)

上記引用例2の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
引用例2記載の「研磨用組成物」は、上記イ.【0019】にあるように、「メモリーハードディスク」の「サブストレート」の「研磨」に用いられるものであって、上記イ.【0019】及び【0023】にあるように「研磨速度」を「調整」する目的で、上記イ.【0020】にあるように「研磨用組成物」に「スルホン酸基」を含む「ポリスチレンスルホン酸化合物」を含ませ、上記イ.【0022】にあるように「分子量」を「2,000?1,000,000」とし、上記イ.【0021】にあるように「ポリスチレンスルホン酸化合物」として「ポリスチレンスルホン酸」と「ナトリウム」との塩、つまり、「ポリスチレンスルホン酸ナトリウム」とするものである。

したがって、上記引用例2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されている。

(引用発明2)
「メモリーハードディスクのサブストレートの研磨に用いられる研磨用組成物であって、研磨速度を調整するために、スルホン酸基を有する分子量が2,000?1,000,000のポリスチレンスルホン酸化合物であり、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムを含むことを特徴とする研磨用組成物。」


3.対比・判断
本願発明と上記引用発明1を対比する。

するとまず、引用発明1の「ガラス基板」は、「ガラス」が「非磁性」であることは技術常識であるから、本願発明の「非磁性基板」である。

また、引用発明1の「垂直磁気記録ディスク」は、情報が記録される媒体であるから、本願発明の「垂直磁気記録媒体」である。

また、引用発明1の「垂直磁気記録ディスク用のガラス基板」は、「垂直磁気記録ディスク」(垂直磁気記録媒体)の主要部品であるから、引用発明1の「垂直磁気記録ディスク用のガラス基板の製造方法」は、本願発明の「垂直磁気記録媒体の製造方法」に含まれる。

また、「研磨」によって「平滑化」を行うことは技術常識であることから、引用発明1の「研磨する研磨工程」は、本願発明の「平滑化する研磨工程」にあたる。

また、引用発明1の「研磨スラリー」において、「スラリー」とは「slurry」(泥漿、懸濁液)のことであるから液体であって、本願発明の「研磨液」にあたる。

また、引用発明1の「人工ダイヤモンド粒子」は、本願発明の「ダイヤモンド粒子」にあたる。

また、引用発明1の「研磨スラリー」はこの「人工ダイヤモンド粒子」を含むから、本願発明の「研磨液」は「ダイヤモンド粒子」を含む点で一致し、
また、引用発明1の「人工ダイヤモンド粒子」は、「0.005?0.1重量%の範囲内」であるから、本願発明の「ダイヤモンド粒子」の「0.001?0.05重量%の範囲内」と対比すると、「0.005?0.05重量%の範囲内」で一致する。

また、引用発明の「添加剤」は、「グリコール化合物、高級脂肪酸アマイド、有機リン酸エステル及び界面活性剤から選択される一種又は二種以上の剤」であるが、
ここで、引用例1の上記ハ.【0036】にあるように、「グリコール化合物」は「砥粒との親和性があり、分散剤として機能する」から、砥粒による研磨の促進に寄与しており、
上記ハ.【0037】にあるように、「高級脂肪酸アマイド」は「研磨速度を促進させる研磨促進剤」として明示的に機能するものであり、
上記ハ.【0038】にあるように、「有機リン酸エステル」も「異常突起(研磨クズがガラス基板の表面に付着して形成されるバリ)の発生を抑制する機能を有する」から研磨に寄与するといえ、
上記ハ.【0039】にあるように、「界面活性剤」も「砥粒の分散性を向上させる働き」によって、これも研磨の促進に寄与するものである。
したがって、引用発明1の「添加剤」は全体として、本願発明の「研磨促進剤」に相当するということができる。

また、引用発明1の上記「添加剤」(研磨促進剤)は、「ダイヤモンド粒子に対して10?2000倍の範囲内」であるから、「ダイヤモンド粒子に対して10?100倍の範囲内」の点で本願発明と一致する。

そして、引用発明1の上記「添加剤」に含まれる「グリコール化合物、高級脂肪酸アマイド、有機リン酸エステル及び界面活性剤」は、いずれも少なくとも「有機物」であって、
特に、「グリコール化合物」は、上記ハ.【0036】にあるように「ポリエチレングリコール」や「ポリプロピレングリコール」であって、「有機リン酸エステル」も上記ハ.【0038】にあるように「ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルのリン酸塩」が例示されており、いずれも「重合物」であるから、本願発明の「有機重合物」にあたる。

したがって、本願発明と引用発明1とは、以下の点で一致し、また相違する。

(一致点)
「非磁性基板上に、垂直磁性層を含む積層構造を形成する垂直磁気記録媒体の製造方法であって、
非磁性基板上に積層構造を形成する前に非磁性基板表面を平滑化する研磨工程を有し、
前記研磨工程に用いる研磨液はダイヤモンド粒子を0.005?0.05質量%の範囲内、研磨促進剤をダイヤモンド粒子に対して10?100倍の範囲内でそれぞれ含み、
前記研磨促進剤は有機重合物であり、
前記非磁性基板がガラス基板であることを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。」

(相違点)
(1)「積層構造」に関し、本願発明は「軟磁性層」を含むのに対して、引用発明1はそのような構成はない点。

(2)「ダイヤモンド粒子」の濃度に関し、
本願発明は「0.001?0.05質量%の範囲内」であるのに対して、引用発明1は「0.005?0.1重量%の範囲内」である点。

(3)「有機重合物」である「研磨促進剤」に関し、
本願発明は「スルホン酸基またはカルボン酸基を有する平均分子量が4000?10000の有機重合物」であるのに対して、
引用発明1は「グリコール化合物、高級脂肪酸アマイド、有機リン酸エステル及び界面活性剤」であって、「平均分子量」は記載されていない点。

(4)本願発明は「前記研磨工程の終了後、前記非磁性基板上に積層構造を形成するまでの時間が10時間以内」であるのに対して、引用発明1はそのような記載はない点。

(5)「ダイヤモンド粒子」に関し、
本願発明は「クラスターダイヤモンド粒子」であるのに対し、引用発明1は「人工ダイヤモンド粒子」であって「クラスターダイヤモンド粒子」であるか不明な点、
及び「ダイヤモンド粒子」の粒子径に関し、
本願発明は「1次粒子径は1nm?10nmの範囲内、2次粒子径が50nmから100nmの範囲内」であるのに対して、
引用発明1は「一次粒子の粒径及び二次粒子の粒径は50nm未満の範囲内」であって、「一次粒子」、「二次粒子」各々の粒子径については記載がない点。

(6)「研磨促進剤」に関し、本願発明は「スルホン酸ナトリウムまたはカルボン酸ナトリウム」を有するのに対して、引用発明1は「グリコール化合物、高級脂肪酸アマイド、有機リン酸エステル及び界面活性剤」を有する点。


まず、相違点(1)の「軟磁性層」を含む「積層構造」について検討する。
例えば、特開昭62-107430号公報(特許請求の範囲参照)、特開2001-167423号公報(【0019】、図1参照)、特開2002-25044号公報(【0027】、図2参照)にあるように、垂直磁気記録媒体の基板表面の「積層構造」として「軟磁性層」を設けることは周知の慣用技術であり、これを引用発明1の「積層構造」に適用して「軟磁性層」を追加することは当業者が適宜になし得ることであって、相違点(1)は格別のことではない。

ついで、相違点(2)の「研磨液」に含まれる「ダイヤモンド粒子」の濃度について検討する。
するとまず、本願発明と引用発明1とは濃度が「0.005?0.05質量%」の範囲で一致するから、この範囲では何ら相違はなく、
また、本願発明における一致範囲外の部分(0.001?0.005重量%の範囲)においても、本願明細書の段落【0029】には「非磁性基板1の表面平均粗さRaは、低いほど好ましいが、2.5Å以下とすることが好ましく、1.5Å以下とする」と記載されており、引用発明1のガラス基板は、引用例1の上記イ.【請求項1】に「平均表面粗さが2.0Å以下の範囲」にあると記載されていることから、本願発明も引用発明1も同様の表面平均粗さRaを実現するものであり、
本願明細書の記載を参照しても本願発明における一致範囲外の部分の内と外で量的に顕著な差異も認められず、格別の臨界的意義を有するものとは認められない。
したがって、相違点(2)は格別のことではない。

ついで、相違点(3)及び(6)の「有機重合物」である「研磨促進剤」の具体的成分及び分子量について検討する。
すると、引用例2には前記のように、「メモリーハードディスクのサブストレートの研磨に用いられる研磨用組成物であって、研磨速度を向上させるために、スルホン酸基を有する分子量が2,000?1,000,000のポリスチレンスルホン酸化合物であり、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムを含むことを特徴とする研磨用組成物。」(引用発明2)の開示がある。
ここで、「メモリーハードディスク」、「サブストレート」は、それぞれ「磁気記録媒体」、「基板」であり、
「スルホン酸基を有する分子量が2,000?1,000,000のポリスチレンスルホン酸化合物であり、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム」は、「研磨速度を向上させるため」のものであるから、「研磨促進剤」であり、
「分子量が2,000?1,000,000」は、「分子量が4000?10000」の範囲を含み、
「ポリスチレンスルホン酸化合物」は、「有機重合物」である。
そして、引用発明1の「添加剤」に対して、「研磨促進剤」として公知材料の中から選択を行うことは当業者における通常の創作能力の発揮であり、引用発明1の「添加剤」として引用発明2の「スルホン酸基を有する分子量が2,000?1,000,000のポリスチレンスルホン酸化合物であり、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム」を選択することは当業者が適宜なし得ることである。
したがって、「研磨促進剤」が「スルホン酸基またはカルボン酸基を有する平均分子量が4000?10000の有機重合物」であるとした相違点(3)及び「研磨促進剤が、スルホン酸ナトリウムまたはカルボン酸ナトリウム」を有するとした相違点(6)は、いずれも引用発明2の適用により当業者が容易になし得たことであって格別のことではない。

ついで、相違点(4)の「前記研磨工程の終了後、前記非磁性基板上に積層構造を形成するまでの時間が10時間以内」とすることについて検討する。
すると、原審拒絶理由通知にも挙げた、特開2007-115388号公報(段落【0024】?【0026】、【0151】参照)のほか、例えば、特開昭61-271623号公報(第1頁左下欄、第2頁左下欄-第3頁左上欄参照)にもあるように、磁気ディスク基板のような精密部品を製造・保管するにあたって、その表面をほこりやごみ、パーティクルのような付着物から保護することは周知の課題であって、いわゆるクリーンルームのような種々の対策が周知慣用である。
その一方で、如何にクリーンな保管環境であっても、保管時間の増大と共に被保管物にとって悪い影響が生ずる可能性が増大し得るのは自明なことであるから、保管時間を短縮することは、広く一般的に用いられている手法である。
そうすると、引用発明1においても「ガラス基板」を製造した後、パーティクルなどが存在する可能性のある環境にさらされる時間を短縮し、なるべく早くその後の工程である「積層構造を形成する」工程に移行することは、当業者が通常考慮する程度のことである。
また、「前記研磨工程の終了後、前記非磁性基板上に積層構造を形成するまでの時間」の具体的な値を「10時間以内」とすることは、本願明細書を参照しても従来よりも短い時間とする以上の技術的意味を見出せず、格別の臨界的意義を有するものとも認められない。
したがって、相違点(4)は格別のことではない。

最後に、相違点(5)の「クラスターダイヤモンド粒子」の点、およびその粒子径について検討する。
すると、そもそも引用発明1の「人工ダイヤモンド粒子」も「一次粒子」及び「二次粒子」からなるものであって、引用例1のハ.【0031】には、「二次粒子は、研磨中、研磨テープによってガラス基板の表面に押し付けられ、この際に、この二次粒子よりも小さい一次粒子や二次粒子に崩壊」するとあるから、小粒径の「一次粒子や二次粒子」が集合(cluster)して、より大粒径の「二次粒子」を構成するという意味に於いて「クラスターダイヤモンド粒子」と呼べるものであり、
摘記はないが引用例1【0051】の【表3】には比較例として、「人工ダイヤモンド粒子」の「平均二次粒子径」を「100nm」に変更することで表面平均粗さを変更すること、つまり、研磨で要求する表面平均粗さにより「二次粒子径」を適宜変更することも示唆されている。
また、例えば、特開2007-149203号公報(段落【0043】-【0049】参照)や特開2008-155359号公報(段落【0061】参照)にあるように、磁気ディスクのガラス基板を研磨する際に「クラスターダイヤモンド粒子」を含む研磨剤を用い、用途に応じて「一次粒子径」及び「二次粒子径」を調整することは周知技術である。
そして、引用発明1の「研磨スラリー」に対して公知材料の中から選択を行うことは当業者における通常の創作能力の発揮であり、「クラスターダイヤモンド粒子」を採用することは当業者が適宜なし得ることである。
また、その「1次粒子径」及び「2次粒子径」に関して、本願明細書には実施例1として段落【0044】に「1次粒子径」を「5nm」、「2次粒子径」を「70nm」とすることしか記載されておらず、「1次粒子径」及び「2次粒子径」をそれぞれ「1nm?10nmの範囲内」及び「2次粒子径が50nmから100nmの範囲内」とすることは、その範囲の内と外で量的に顕著な差異も認められず、格別の臨界的意義を有するものとも認められない。
したがって、「ダイヤモンド粒子」を「クラスターダイヤモンド粒子」となし、その「1次粒子径は1nm?10nmの範囲内、2次粒子径が50nmから100nmの範囲内」とした相違点(5)も、上記周知技術の適用により当業者であれば容易になし得たことであって、格別のことではない。

そして、本願発明の効果も引用発明1、2及び周知技術から当業者が容易に予測し得る範囲のものである。


4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-30 
結審通知日 2013-09-03 
審決日 2013-09-17 
出願番号 特願2008-249627(P2008-249627)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 斎藤 眞  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 石丸 昌平
萩原 義則
発明の名称 垂直磁気記録媒体の製造方法  
代理人 鈴木 三義  
代理人 三國 修  
代理人 荒 則彦  
代理人 志賀 正武  

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