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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1280974
審判番号 不服2011-13229  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-22 
確定日 2013-10-30 
事件の表示 特願2007-123636「プラスチック容器」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月22日出願公開、特開2007-302344〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成19年5月8日(パリ条約による優先権主張、2006年5月9日アメリカ合衆国、2007年3月9日アメリカ合衆国)の出願であって、平成23年2月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成23年6月22日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に同日付けで手続補正がなされ、当審において平成24年10月17日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、これに対して平成25年4月23日付けで意見書が提出されたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年6月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。

「 閉口した下側の支持用基部と、前記閉口した基部から上方に延びる側壁部と、注出口をその内部に有し且つ前記側壁部から上方に延在する上部とを有する中空のプラスチック容器、および
前記側壁部上にデジタル印刷されたベースコートを有してなり、
前記ベースコートが、前記デジタル印刷されたインクからなると共に1?200ミクロンの厚さを有しており、および前記ベースコートの少なくとも一部に設けられた盛り上げ印刷領域を含んでおり、
前記盛り上げ印刷領域が、デジタル印刷されたインクから構成され、三次元的な外観を有しており、および
前記ベースコートの少なくとも一部の厚さを変えることで前記ベースコートの明暗を変化させている、ことを特徴とする容器。」


3.刊行物の記載事項
(1)当審拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-244077号公報(以下「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。

1a 「【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る立体模様付き容器を示している。
すなわち、この立体模様付き容器1は、容器本体10表面に付された印刷面の模様20の上に厚盛りインキ層30を重ねて模様20を立体的に浮き立たせた構成となっている。
容器は円筒型の金属容器で、模様20,21は円筒状の胴部表面に模様が施されている。模様20,21は、文字,記号,図形等が含まれもので、図示例では大サイズの模様20として比較的広い面積の丸形状および三角形状を例示し、小サイズの模様21として文字を例示している。
【0009】
厚盛りインキ層30には透明インキが用いられ、大サイズの模様20の輪郭を縁取るように線状に重ねられている(図1(A),(B),(C)参照)。
厚盛りインキ層の幅dおよび高さhは、視覚的に立体感が得られる大きさが必要である。検討の結果、厚盛りインキ層30の幅dは、0.5?5mm程度に設定することが好適である。また、その高さhは、おおよそ、20?300μm程度とすることが好適である。この線幅d以内の幅の小サイズの模様21の場合には、図1(D),(E)に示すように、輪郭ではなく、模様21全体を覆うように重ねて塗布する。
【0010】
図1(C),(E),(F)は金属容器表面の層構造を示している。
すなわち、容器本体10を構成する金属材11表面に、模様が形成された印刷層12(下地処理層を含む)が設けられ、印刷層12の上に仕上げニス層13が設けられ、仕上げニス層13の上に厚盛りインキ層30が設けられている。
厚盛りインキ層30は、仕上げニス層13に付着する樹脂インキによって構成されるもので、この実施の形態では透明のインキが用いられる。透明インキを用いることにより、下の印刷表示の視認性に全く影響を与えることはない。もっとも、無色透明に限らず、色味のある透明インキを用いることもできるし、下層の印刷表示に影響を与えない範囲で、顔料を加えた不透明の着色インキを用いることもできる。
【0011】
厚盛りインキ層30の印刷は、スクリーン印刷によって行われる。スクリーン印刷以外の印刷方法を適用してもよいが、スクリーン印刷を用いれば、樹脂インキがスクリーンに形成された孔を通って被印刷体表面に盛り付けられるので、樹脂インキの厚盛りが可能で、本発明の厚盛りインキ層の形成に最適である。
厚盛りインキ層30の幅dおよび高さhは、使用する樹脂インキの粘度、スクリーンのメッシュの大きさ、版の厚さなどによって調整可能である。樹脂インキの粘度については、1?450ポアズ程度に設定することが好ましく、スクリーンのメッシュ,版の厚さを調整することにより、厚盛りインキ層の幅および高さを調整する。たとえば、スクリーンのメッシュを60?200程度、版の厚さを150?350μm程度とすることが好適である。
【0012】
樹脂インキの樹脂材料としては、最表層の材質にもよるが、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂等が好適である。乾燥方式としては、紫外線硬化型、酸化重合型等が用いられる。
また、樹脂インキとしては、メディウムタイプが好適である。」

1b 「【0015】
なお、本発明が適用される容器としては、2ピース缶,3ピース缶,エアゾール缶,ボトル,カップ等の金属容器が好適である。また、金属容器だけでなく、ガラス,プラスチック,陶器等の容器について適用可能である。」

1c 上記1aの記載及び図1から、厚盛りインキ層30が三次元的な外観を有していることが認められる。

上記1a?1cから、刊行物1には次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

「容器の表面に、模様が形成された印刷層が設けられ、印刷層の上に仕上げニス層が設けられ、前記仕上げニス層の上に厚盛りインキ層が設けられ、前記厚盛りインキ層が三次元的な外観を有している容器。」

(2)当審拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2000-503920号公報(以下「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。

2a 「2.デジタル画像を直接に包装材料にデジタル式に印刷する前記段階が、予め成形されたボトルにデジタル画像を直接デジタル式に印刷する段階を含む、請求項1に記載された方法。
3.デジタル画像を予め成形されたボトルに直接デジタル式に印刷する前記段階が、直接にPETボトルにデジタル式に印刷する段階を含む、請求項2に記載された方法。」(第2頁第6?11行)

(3)当審拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2004/043702号(以下「刊行物3」という。)には、次の事項が記載されている(日本語訳は当審による)。

3a 「The present invention relates to the use of Inkjet Printing
and other spraying techniques for providing a suitable opaque
under-layer on transparent plastic surfaces such as those of the
walls of a bottle, over a limited and defined area onto which ink
jet inks can be printed to enable the production of color fidelity
and large color gamut of the ink jet inks.」(第1頁第5?9行)
(日本語訳:本発明は、インクジェットインクの色忠実性及び広い色階調の呈示を可能にするようにインクジェットインクを印刷可能な制限され定められた範囲上で、ボトルの壁の表面のような透明なプラスチック表面上に適当な不透明な下層を提供するためのインクジェット印刷及びその他のスプレー技術の使用に関する。)

(4)当審拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平8-72885号公報 (以下「刊行物4」という。)には、次の事項が記載されている。

4a 「【0013】また、シルクスクリーン印刷方式やホットメルトインキをインキジェット方式で吹き付けてから固化させる方式を使用すれば、樹脂成形品や紙器を始めとして、ガラス瓶、金属缶、パウチ等の任意の容器本体に対しても凸状の識別表示を施すことができる。さらには、発泡型インキを印刷するか噴射してから発泡させたり、光硬化型インキを印刷するか噴射してから固化させる方法でも任意の容器本体に凸状の識別表示を施すことができる。」

(5)当審拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2005-119243号公報(以下「刊行物5」という。)には、次の事項が記載されている。

5a 「【0004】
本発明の印刷物は、被印刷物上にベース画像、絵柄画像を順に形成し、絵柄画像をベース画像と重ねることにより、重なった領域の絵柄画像の印刷層を盛り上げた印刷物であって、ベース画像は、絵柄画像を視覚的に得やすい色の印刷材料(インク)を硬化させた印刷層で形成され、絵柄画像は、色の異なる複数の印刷材料(インク)を硬化させた印刷層からなる着色層で形成されており、前記各印刷材料(インク)は、紫外線硬化インクであり、ベース画像および絵柄画像は、それぞれの印刷材料(インク)をインクジェット方式により印刷して紫外線硬化形成したものであることを特徴とするものである。
そして、上記の印刷物であって、前記絵柄画像を視覚的に得やすい色のベース画像の印刷材料(インク)は、無色透明なもの、あるいは被印刷物と同色のもの、あるいは被印刷物と同系色で且つ透明なものであることを特徴とするものである。
そしてまた、上記のいずれかの印刷物であって、ベース画像の層厚に変化を持たせていることを特徴とするものである。
また、上記のいずれか1に記載の印刷物であって、絵柄画像の層厚に変化をもたせていることを特徴とするものである。」

5b 「【0013】
他の実施の形態例としては、ベース画像の層厚を部分的に変えたものや、絵柄画像の層厚を部分的に変えたもの、あるいは、ベース画像の層厚、絵柄画像の層厚を、それぞれ、部分的に変えたものが挙げられる。」

(6)当審拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2005-313457号公報以下「刊行物6」という。)には、次の事項が記載されている。

6a 「【0011】
〈発明の適用範囲〉
1.透明性又は半透明性を有するボトルにかけるシュリンクラベル。
2.透明性又は半透明性ラベル及びシール。
3.転写箔
4.タックシール
5.インモールド転写フイルム
6. インサートラベル
7. 各種シール又はラベル
8. 透明性又は半透明性容器」

6b 「また、隠蔽B層4-2、隠蔽C層4-3のような隠蔽層は、単層又は複数層の構成も可能で、各層の順番、顔料の含有率、重ね刷りの回数によっても見え方の調整が可能である。」(第6頁第23?25行)

6c 「【0015】
1.上記のように、表面と裏面の印刷デザイン4-1、4-5の間に、従来のように、不透明なインキを用いた隠蔽層を形成するのではなく、マット顔料とパール顔料等による隠蔽層を形成し、光の透過量/反射量をコントロールすることで、本発明が解決しようとする前記課題1?5を達成することができる。
2.本発明の技法の場合、全ての印刷方式(グラビア、オフセット、シルクスクリーン、凸版、凹版、孔版等)を用いることができる。
3.シュリンクラベルのみならず、転写箔、タックシール、インモールド転写フイルム、インサートラベルにも応用が可能で、また、フイルム上に印刷した物をラミネートする事でシール/ラベルにも応用する事ができる。
4.また、シルクスクリーン印刷により、透明又は半透明容器の表面に直接本発明技法でラベル等の印刷を施した場合も、上記の効果が得られる。」

6d 「また、層を重ねる事でインキ厚みをあげる事ができ、本発明の必要な効果を得る事もできる。」(第11頁第49?50行)

(7)当審拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭62-221472号公報(以下「刊行物7」という。)には、次の事項が記載されている。

7a 「本発明は容器、プレートなどの表面に隆起模様を形成する方法に関する。」(第1頁右下欄第5?6行)

7b 「10?20μm厚の下地塗料層を形成した。」(第4頁左下欄第8?9行)


4.対比・判断
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

刊行物1発明において、「印刷層」の上に「仕上げニス層」が設けられ、さらにその上に「厚盛りインキ層」が設けられているから、積層順に関する限りにおいて、刊行物1発明における「印刷層」及び「仕上げニス層」は、本願発明における「ベースコート」に相当し、刊行物1発明における「厚盛りインキ層」は、本願発明における「盛り上げ印刷領域」に相当する。

してみると、本願発明と刊行物1発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「 容器、および
ベースコートを有してなり、
前記ベースコートの少なくとも一部に設けられた盛り上げ印刷領域を含んでおり、
前記盛り上げ印刷領域が、三次元的な外観を有している容器。」

[相違点1]
容器について、本願発明においては、「閉口した下側の支持用基部と、前記閉口した基部から上方に延びる側壁部と、注出口をその内部に有し且つ前記側壁部から上方に延在する上部とを有する中空のプラスチック容器」という限定がされているのに対して、刊行物1発明においては、そのような限定はされていない点。

[相違点2]
ベースコート及び盛り上げ印刷領域の形成場所及び形成方法について、本願発明においては、「前記側壁部上にデジタル印刷されたベースコート」及び「前記ベースコートが、前記デジタル印刷されたインクからなる」という限定、及び「前記盛り上げ印刷領域が、デジタル印刷されたインクから構成され」という限定がされているのに対し、刊行物1発明においては、それらの限定がされていない点。

[相違点3]
ベースコート層の厚さについて、本願発明においては、「1?200ミクロンの厚さを有しており」という限定、及び「前記ベースコートの少なくとも一部の厚さを変えることで前記ベースコートの明暗を変化させている」という限定がされているのに対し、刊行物1発明においては、それらの限定はされていない点。

上記相違点について検討する。

[相違点1について]
刊行物1発明において、容器の形状及び材料は、当業者が適宜に選択し得る事項である。
そして、容器として、プラスチックのボトルは周知であり、ボトルの形状として、「閉口した下側の支持用基部と、前記閉口した基部から上方に延びる側壁部と、注出口をその内部に有し且つ前記側壁部から上方に延在する上部とを有する中空の」形状はありふれた形状である。
また、刊行物1には、容器としてボトルが例示され、さらに、プラスチックの容器も例示されているから(上記3.(1)1b参照)、刊行物1において、プラスチックのボトルが示唆されているといえる。
刊行物1発明において、容器本体として、上記ありふれた形状のプラスチックのボトルを選択することに何ら困難性はく、本願発明における上記相違点1に係る限定は、当業者が適宜になし得たことである。

[相違点2について]
刊行物1発明において、印刷層、仕上げニス層及び厚盛りインキ層は、容器の模様を構成するための層であり(上記3.(1)1a参照)、当該模様を設ける場所は、意匠性等を考慮して、当業者が適宜に設定し得る事項である。そして、刊行物1発明において、容器をボトルの形状とした場合に(上記[相違点1について]参照)、前記模様を設ける場所をボトルの側壁部とすることに何ら困難性はない。
また、容器の外面に模様を構成するための層を形成する方法として、インクジェット法等のデジタル印刷を用いることは周知の技術である(例えば、刊行物2(前記3.(2))及び刊行物3(前記3.(3))に、容器の表面にデジタル印刷を施すことが記載され、刊行物4(前記3.(4))及び刊行物5(前記3.(5))に、盛り上げ印刷領域をデジタル印刷によって形成することが記載されている)。
したがって、本願発明における上記相違点2に係る限定は、当業者が容易になし得たことである。

[相違点3について]
刊行物1発明において、ベースコート層(印刷層及び仕上げニス層)の厚さは、当業者が適宜に設定し得る事項であり、刊行物7(前記3.(7))には、容器の表面に、厚さ10?20μmのベースコート層(下地塗料層)を設けることが記載されていることから、ベースコート層の厚さとして「1?200ミクロン」という数値範囲は格別のものとは認められない。
また、刊行物1発明において、印刷層は、仕上げニス層及び厚盛りインキ層とともに模様を形成するための層であり、前記印刷層の意匠は当業者が適宜に設定し得る事項である。そして、前記意匠として、部分的に明暗を変化させた意匠を採用することは、当業者が適宜になし得ることである。
ここで、例えば、刊行物5(前記3.(5))に、ベースコート層(ベース画像)の印刷材料として、無色透明なもののほか、有色のものあるいは有色で透明なものが記載され、さらに、前記ベースコート層の層厚を部分的に変えることが記載され、刊行物6(前記3.(6))には、表面に印刷層が設けられた容器において、印刷層の重ね塗りの回数すなわち印刷層の層厚を変えることで、光の透過量や反射量を調整して見え方の調整が可能であることが記載されている。有色の印刷材料を用いた場合に印刷層の厚さに応じて明暗が変化すること、及び光の透過量の変化によって明暗が変化することは技術常識から明らかであるから、印刷層の明暗を変化させる手段として当該印刷層の厚さを変えることは周知の技術であるといえる。
したがって、刊行物1発明において、ベースコート(印刷層及び仕上げニス層)の少なくとも一部の厚さを変えることで明暗を変化させることは、当業者が適宜になし得たことである。
よって、本願発明における上記相違点3に係る限定は、当業者が適宜になし得たことである。

そして、本願発明によって、当業者が予期し得ない格別の効果が奏されるとは認められない。

以上のことから、相違点1ないし相違点3は、いずれも当業者が容易になし得たことであり、これら相違点を総合判断しても、本願発明は当業者が容易に発明をすることができたものであるといわざるを得ない。
本願発明は、刊行物1発明及び刊行物1ないし刊行物7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである

なお、請求人は、平成25年4月23日付けの意見書において次の旨主張している。
「刊行物5の段落0013及び図3に開示された構成は、絵柄画像の立体的な高さ視覚での見え方に変化を持たせ絵柄画像の外観を強調する目的でその層厚を部分的に変えるであり、これは、本願発明の「ベースコートの明暗を変化させる」構成とは異なるものである。
刊行物6には、本願発明のような「中空プラスチック容器の表面にベースコートをデジタル印刷する」構成において、「前記ベースコートの少なくとも一部の厚さを変えることで前記ベースコートの明暗を変化させ」る技術思想は開示ないし示唆されていない。
中空のプラスチック容器の側壁部にデジタル印刷されたベースコートの少なくとも一部の厚さを変えることでベースコートの明暗を変化させる構成を、刊行物5、6に基づいて想達することは、当業者といえども、困難である。」

請求人の上記主張について検討する。
上記[相違点3について]において述べたとおり、刊行物1発明において、印刷層の模様の意匠は当業者が適宜に設定し得る事項であり、前記意匠として、部分的に明暗を変化させた意匠を採用することは、当業者が適宜になし得ることである。また、印刷層の明暗を変化させる手段として当該印刷層の厚さを変えることは周知の技術である。有色の印刷材料を用いた場合に印刷層の厚さに応じて明暗が変化すること、及び光の透過量の変化によって明暗が変化することは技術常識から明らかであることを考慮すると、例えば刊行物5及び刊行物6の記載から、印刷層の明暗を変化させる手段として当該印刷層の厚さを変えることは周知の技術であるといえる。
上記[相違点2について]で述べたとおりデジタル印刷による層形成は周知であるところ、デジタル印刷によるベースコート層形成と、印刷層の明暗を変化させる手段として当該印刷層の厚さを変えることとを組み合わせることに、格別の困難性は認められない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。


5.まとめ
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明及び刊行物1ないし刊行物7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-31 
結審通知日 2013-06-04 
審決日 2013-06-17 
出願番号 特願2007-123636(P2007-123636)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武内 大志佐々木 正章  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 栗林 敏彦
紀本 孝
発明の名称 プラスチック容器  
代理人 鈴木 正剛  

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