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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C12N
管理番号 1281048
審判番号 不服2011-2833  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-07 
確定日 2013-11-22 
事件の表示 特願2003-582268「インターロイキン-5に対するヒトモノクローナル抗体および方法およびこれを含む組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月16日国際公開、WO03/85089、平成17年10月13日国内公表、特表2005-530490、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年(2003年)3月27日(パリ条約による優先権主張2002年3月29日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年10月5日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成23年2月7日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正がされたものである。
そして、当審において、平成23年7月19日付けで審査官により作成された前置報告書について、平成24年6月28日付けで審尋を行ったところ、審判請求人は平成24年11月5日付けで回答書を提出した。

第2 平成23年2月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を次のとおり補正するものである。

補正前:「IL-5と特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体またはフラグメントが、以下:
(i)
(a)配列番号2のアミノ酸配列;
(b)配列番号6のアミノ酸配列;
(c)配列番号2の残基50?127のアミノ酸配列;ならびに、
(d)配列番号8、10および12それぞれのCDR1、CDR2およびCDR3アミノ酸配列、
からなる群より選択される、重鎖アミノ酸配列;ならびに、
(ii)
(a)配列番号4のアミノ酸配列;
(b)配列番号4の残基23?130のアミノ酸配列;
(c)配列番号4の残基46?119のアミノ酸配列;ならびに、
(d)配列番号14、16および18それぞれのCDR1、CDR2およびCDR3アミノ酸配列、
からなる群より選択される、軽鎖アミノ酸配列、
を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント。」

補正後:「IL-5と特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体またはフラグメントが、以下:
(i)
(a)配列番号2のアミノ酸配列;
(b)配列番号6のアミノ酸配列;および、
(c)配列番号2の残基50?127のアミノ酸配列;
からなる群より選択される、重鎖アミノ酸配列;ならびに、
(ii)
(a)配列番号4のアミノ酸配列;
(b)配列番号4の残基23?130のアミノ酸配列;および、
(c)配列番号4の残基46?119のアミノ酸配列;
からなる群より選択される、軽鎖アミノ酸配列、
を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント。」

2.補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「重鎖アミノ酸配列」について、選択肢である「(d)配列番号8、10および12それぞれのCDR1、CDR2およびCDR3アミノ酸配列」を削除するものであり、また、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「軽鎖アミノ酸配列」について、選択肢である「(d)配列番号14、16および18それぞれのCDR1、CDR2およびCDR3アミノ酸配列」を削除するものであるから、択一的記載の要素の削除に該当する。そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、平成18年改正前特許法第17条の2第3項に違反するところはない。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たすものであるか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に文献3として引用されたJ. Immunol.,(1995),Vol.154, No.12,p.6355-6364(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する。)。

(ア)「通常のハイブリドーマ及びコンビナトリアル抗体ライブラリーが、ヒトIL-5に対する中和マウスモノクローナル抗体(mAb)を開発するために使用された。マウスがrIL-5で免疫された。二匹のマウスの脾臓がハイブリドーマの作製に使用された。・・・抗体は、rIL-5で被覆した96-ウェルプレートを使用したELISAにより同定及び選択された。これらの抗体は、ヨード化したrIL-5とヒトIL-5受容体のα鎖(IL-5Rα)との結合を阻止する能力、及びIL-5依存性の細胞の増殖を阻害する能力について試験された。ハイブリドーマ技術によって、16のmAbが得られ、そのうち11がIL-5Rαへの結合を阻害し、増殖を阻害する3つを含んでいた。」(6355頁要約1行?7行)

(イ)「IL-5に対するmAbsの単離及び特性評価
2匹の免疫したマウス(マウスCA96及びDA1、表I)からの免疫脾臓細胞が、IL-5へのハイブリドーマを作製するために使用された。培養上清が直接結合ELISAにより分析された。そして、rIL-5に反応するmAbを分泌する16のハイブリドーマが単離された。ハイブリドーマの上清がヨード化されたrIL-5と混合され、IL-5Rのα鎖を発現しているショウジョウバエの細胞から調製された膜抽出液に添加され、そして受容体結合が分析された。11のハイブリドーマ上清が、ヨード化したrIL-5のIL-5受容体のα鎖への結合を60%以上阻害した(図1)。3つのmAb、2B6、2E3、及び2F2は、ヒトのIL-5に応答したマウスB13細胞の増殖を70%阻害したが(図2)、マウスのIL-5に応答したマウスB13細胞の増殖を阻害しなかった(データ示さず)。・・・mAbsは精製され、そして結合親和性が、BIAcore分析から、10?100pMと見積もられた。」(6358頁右欄12行?6359頁左欄6行)

(ウ)「ヒトにおいて、IL-5は好酸球の増殖及び分化を制御している。・・・これらの及び他の研究は、好酸球増加症及び好酸球の蓄積を伴う疾患が、IL-5への中和抗体で治療できる可能性があることを示唆している。」(6355頁右欄4行?6356頁左欄9行)

(エ)表IIには、モノクローナル抗体2B6の解離定数Kdが22pMであることが記載されている。

そうすると、引用例3には、以下の発明が記載されていると認められる。
「IL-5と特異的に結合するマウス抗体」(以下、「引用発明」という。)

(2)対比
ア.本願補正発明について
本願明細書の段落【0080】及び【0083】の記載からみて、本願補正発明の配列番号2は20.13.3モノクローナル抗体の重鎖アミノ酸配列であり、配列番号4は、mAb20.13.3の軽鎖アミノ酸配列である。そして、本願明細書の実施例1の記載からみて、mAb20.13.3は、ヒト抗体である。

イ.対比
本願補正発明において、択一的に記載された「抗体またはその抗原結合フラグメント」のうち、前者の「抗体」を選択した場合に係る本願補正発明と引用発明を対比すると、両者は、「IL-5と特異的に結合する抗体」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:抗体が、本願補正発明においてはヒト抗体であって、アミノ酸配列が、
「(i)
(a)配列番号2のアミノ酸配列;
(b)配列番号6のアミノ酸配列;および、
(c)配列番号2の残基50?127のアミノ酸配列;
からなる群より選択される、重鎖アミノ酸配列;ならびに、
(ii)
(a)配列番号4のアミノ酸配列;
(b)配列番号4の残基23?130のアミノ酸配列;および、
(c)配列番号4の残基46?119のアミノ酸配列;
からなる群より選択される、軽鎖アミノ酸配列、
を含む」ものであるのに対し、引用発明においてはマウス抗体であって、アミノ酸配列は特定されていない点

(3)判断
上記相違点について検討する。
引用例3の記載事項(ウ)の、抗IL-5抗体は、ヒトの好酸球増加症及び好酸球の蓄積を伴う疾患を治療できる可能性を示唆する記載に接した当業者にとって、ヒト体内での望ましくない免疫反応を回避するために、IL-5と特異的に結合するヒト抗体を作製することは、自然な着想である。そして、その際、ヒトの抗原をヒトの抗体を産生可能なマウス(XenoMouse)に免疫してハイブリドーマを調製し、その中から抗原に結合する抗体を産生するハイブリドーマを同定及び選択する、完全ヒト抗体の製造方法は周知技術であることを考慮すれば、IL-5と特異的に結合するヒト抗体を取得すること自体は、当業者が容易に想起し得ることであるといえる。

ところで、本願補正発明において、重鎖アミノ酸配列及び軽鎖アミノ酸配列共に選択肢(a)を選択した場合に係る発明に相当するmAb20.13.3(配列番号2の重鎖アミノ酸配列及び配列番号4の軽鎖アミノ酸配列からなる抗体)は、116個のハイブリドーマから強い中和活性に基づいて選択されたハイブリドーマによって産生されるものであって(実施例1)、特定のアミノ酸配列からなるものである。
そして、mAb20.13.3はヒト抗体であるから、ヒトに投与したときに、ヒト体内での望ましくない免疫反応を回避することができるという用途の面から見て望ましいものであることは明らかである。さらに、本願明細書において、mAb20.13.3は、1.5×10^(-11)M又は1.95×10^(-11)Mという高親和性の解離定数を示すものであること(段落【0191】)及び、抗原誘導性肺炎症のマウス及びカニクイザルモデルを用いたインビボでの実験において、好酸球阻害を生じさせるものであること(実施例4)が確認されている。
従来技術として、マウス抗体において、mAb20.13.3と同程度である2.2×10^(-11)Mの親和性を有するもの(引用例3の2B6抗体)、及びヒト化抗体において、インビボでの好酸球阻害を示すものは、既に知られていたものの[原査定の拒絶の理由の文献1(J. Allergy Clin. Immunol.,(2001),Vol.108, No.2,pp.250-257)及び文献2(Respir. Res.,(2001),Vol.2,pp.71-79)の2B6のヒト化抗体参照]、完全なヒト抗体として、上記のような優れた効果を併せ持つ特定のアミノ酸配列からなる抗体は、引用発明に基いて当業者が容易に想到することができたものであるということはできない。
本願補正発明において、mAb20.13.3の可変領域のアミノ酸配列(本願明細書の段落【0086】参照)である選択肢(b)を選択した場合に係る発明、及び、mAb20.13.3のCDR1?CDR3の領域のアミノ酸配列(本願明細書の表2及び表3参照)である選択肢(c)を選択した場合に係る発明も、本願補正発明において選択肢(a)を選択した場合に係る発明と同様である。
さらに、本願補正発明において、「抗原結合フラグメント」を選択した場合に係る発明も、本願補正発明において「抗体」を選択した場合に係る発明と同様である。
したがって、本願補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

また、本件補正後の請求項2ないし9に記載された発明は、本願補正発明1に係る抗体またはその抗原結合フラグメントを発明特定事項とするものであるから、本願補正発明1と同様に、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

3.むすび
本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、平成18年改正前特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし9に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
IL-5と特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体またはフラグメントが、以下:
(i)
(a)配列番号2のアミノ酸配列;
(b)配列番号6のアミノ酸配列;および、
(c)配列番号2の残基50?127のアミノ酸配列;
からなる群より選択される、重鎖アミノ酸配列;ならびに、
(ii)
(a)配列番号4のアミノ酸配列;
(b)配列番号4の残基23?130のアミノ酸配列;および、
(c)配列番号4の残基46?119のアミノ酸配列;
からなる群より選択される、軽鎖アミノ酸配列、
を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸分子。
【請求項3】
請求項2に記載の核酸分子であって、該核酸分子が、発現制御配列に作動可能に連結した、核酸分子。
【請求項4】
請求項3に記載の核酸分子で形質転換された宿主細胞。
【請求項5】
IL-5と特異的に結合する免疫グロブリンまたはその抗原結合フラグメントを産生する方法であって、該方法が、請求項4に記載の宿主細胞を培養する工程を包含する、方法。
【請求項6】
請求項2に記載の核酸分子で形質転換された宿主細胞。
【請求項7】
IL-5と特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを産生する方法であって、該方法が、請求項6に記載の宿主細胞を培養する工程を包含する、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の抗体またはそのフラグメントおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む、IL-5によって誘導される細胞増殖を減少するための組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の抗体またはそのフラグメントを含むIL-5によって誘導される細胞増殖を減少するためのキット。
方法であって、該方法が、請求項4に記載の宿主細胞を培養する工程を包含する、方法。」

そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2013-11-12 
出願番号 特願2003-582268(P2003-582268)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C12N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 巌  
特許庁審判長 今村 玲英子
特許庁審判官 冨永 みどり
田中 晴絵
発明の名称 インターロイキン-5に対するヒトモノクローナル抗体および方法およびこれを含む組成物  
代理人 安村 高明  
代理人 山本 秀策  
代理人 山本 秀策  
代理人 森下 夏樹  
代理人 森下 夏樹  
代理人 安村 高明  
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