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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K |
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管理番号 | 1281131 |
審判番号 | 不服2013-849 |
総通号数 | 168 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-01-17 |
確定日 | 2013-11-05 |
事件の表示 | 特願2008-322085「多層フレキシブルプリント回路基板を用いたモジュールおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年1月21日出願公開、特開2010-16339〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成20年12月18日(優先権主張平成20年6月3日)の出願であって、平成24年11月26日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年11月30日)、これに対し、平成25年1月17日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。 第2 平成25年1月17日付け手続補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成25年1月17日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 〔理由〕 1 本願補正発明 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前(平成24年7月6日付け手続補正)の請求項1に、 「【請求項1】 屈曲可撓部により接続された複数の部品実装部からなる多層フレキシブルプリント回路基板を、前記屈曲可撓部を屈曲させて折り畳むことにより重ね合わせてなるモジュールにおいて、 折り畳み前の前記多層フレキシブルプリント回路基板の前記部品実装部における各一方の面に能動素子を、各他方の面に受動素子を搭載し、 前記多層フレキシブルプリント回路基板の前記部品実装部における各面にモールド樹脂が塗工され、 折り畳み後に、前記能動素子同士または前記受動素子同士が相互間の空間に配されるように構成された ことを特徴とするモジュール。」 とあったものを、 「【請求項1】 屈曲可撓部により接続された複数の部品実装部からなる多層フレキシブルプリント回路基板を、前記屈曲可撓部を屈曲させて折り畳むことにより重ね合わせてなるモジュールにおいて、 折り畳み前の前記多層フレキシブルプリント回路基板の前記部品実装部における各一方の面に能動素子を、各他方の面に受動素子を搭載し、 前記多層フレキシブルプリント回路基板の前記部品実装部における各面にモールド樹脂が塗工され、 折り畳み後に、前記能動素子同士または前記受動素子同士が相互間の空間に入れ子状に配されるように構成された ことを特徴とするモジュール。」 と補正(下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)することを含むものである。 上記補正は、発明を特定するために必要な事項である「前記能動素子同士または前記受動素子同士が相互間の空間に配される」ことについて「入れ子状に」と限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定の規定に適合するか)否かについて検討する。 2 刊行物 (1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された特開2002-237568号公報(以下「刊行物1」という。)には、「基板上垂直組立体用の折り曲げた相互接続体上にスタックしたチップスケールパッケージ」に関して、図面(特に、図2Aないし図2E、図2G、図2I参照。)と共に次の事項が記載されている。 ア 「【0027】本発明の構造と方法は、2つの例で記述される。システムとフローIは、図1A?1Hに例示される。システムとフローIIは、図2A?2Iに例示される。 【0028】システムとフローIにおいて、図1Aは、矩形ストリップ状相互接続体101の概略上面図である。この相互接続体は、可撓性の電気絶縁材料で出来ている。・・・(略)・・・図1Cは底面図であり第1表面102を示し、図1Aは上面図であり第2表面103を示す。 【0029】複数の電気的導電性ライン104が、相互接続体101と一体になっている。これらは図1Aの上面図に例示されている。)(審決注:「)」は誤記。)これらの導電性ライン104は、通常好ましくは約15から40μmの厚さの薄い金属ホイルからパターン化される。・・・(略)・・・これらの導電性ラインが、第1表面102上に電気的入口ポート105の第1アレーと、出口ポート106の第2アレーを形成する。図1Cに示すように、これらのアレーは、相互接続体の分離した領域にグループ化され、入口ポート105は、実際に複合アレーで示される。」 イ 「【0034】図1Bの概略断面図では、相互接続体の第1表面102上の出口ポートは、他の(外部の)部品に取付けるための結合部材としてとして半田ボール107が取付けられている。(略)」 ウ 「【0036】図1Aの上面図には、カプセル封じしたデバイス108があり、これらは図1Bの断面にも示される。このようなデバイスの例は、米国テキサス州ダラスのテキサスインスツルメントにより製造されるMicroStar^(TM)ボールグリッドアレー(BGAs)と、MicroStarJunior^(TM)パッケージである。これらのデバイスは、相互接続体薄膜に取付けられた集積回路チップ(IC)と、ワイヤボンディングと、トランスファモールドしたパッケージとを備える。 【0037】図1Aに示す電気的に導電性ライン104は、導電性ラインに一体化した少なくとも1つの受動電気素子(図1Aには示さず)を含んでいてもよい。例としては、抵抗器、キャパシター、インダクター、分散した素子、受動素子と相互接続構造のネットワーク等がある。これらの集積素子の製造方法は、最近2000年10月31日出願の米国特許出願第60/244,673号(Pritchettら、「Plastic Chip-Scale Package having Integrated Passive Components」)に記述されていて、この出願をここに参照する。 【0038】図1Dに示すように、可撓性相互接続体ストリップ101は、入口ポートと出口ポートの間の一体化した導電性ラインの領域120で折り曲げられる。入口ポートが1方向を向き、出口ポートが反対方向を向くように折り曲げられる。この折り曲げの結果、パッケージのボディ108は相互に接触し、ほぼチップスケールパッケージの外形を有する垂直にスタックした組立体になる。所望により、パッケージボディはともに糊付けし、恒久的にスタックするようにすることも出来る。」 エ 「【0045】システムとフローIIにおいて、図2Aは矩形ストリップ状相互接続体201の概略上面図、図2Bは断面図、図2Cは底面図を示す。材料、処理、導電性ライン204、出口ポート206、オプションの一体化受動電気部品、半田ボール207、パッケージデバイス208に関する記述は、図1A、1B、1Cについての記述と近似している。重要な違いは、図2Bと2Cに示される、相互接続体201の第1表面202に取付けられた別体の受動素子210である。その結果、図2Cに示す入口ポートのパターンは、図1Cのパターンと比較してかなり簡単になっている。図2Cでは特に強調していないが、カスタム化した受動素子210の取付けを示唆している。 【0046】同様に、図2Dに示すように、可撓性相互接続体ストリップ201を、入口と出口ポートの隣接する領域の間の一体化した導電性ラインの領域220で折り曲げるが、これは図1Dに示すように相互接続体101を折り曲げることに近似している。この折り曲げの結果、パッケージボディ208は相互に接触し、その結果ほぼチップスケールパッケージの外形を有する垂直スタック組立体ができる。所望により、パッケージボディは糊付けし、恒久的にスタックすることが出来る。 【0047】図2Eに結果を示す。これは、チップスケールパッケージ208と、垂直にスタックした別体の受動電気素子210の組立体(全体を240で示す)で、他の部品に取付けるのに適した複数の結合部材207(通常は半田ボール)を有する。この図2Eに示す組立体は、図1Gと1Hの近似した組立体と同様、本発明の第1実施の形態の例を示す。 【0048】・図1G、1H、2E: 本発明の第1実施の形態では、2つのシングル又はデュアルチップパッケージ(合計4つのチップまで)を受動素子と、又は複合の細かいピッチのチップスケールパッケージと、又は複合のバンプ付きフリップチップと組み合わせる。 【0049】(略) 【0050】・図2G: 本発明の第3実施の形態では、3つのシングル又はデュアルチップパッケージ(合計6つのチップまで)を、受動素子と、又は複合の細かいピッチのチップスケールパッケージと、又は複合のバンプ付きフリップチップと組み合わせる。 【0051】(略) 【0052】・図2I: 本発明は、更に色々の他の異なる組み合わせを与える。製品は、能動と受動の電気素子とデバイスからなるほぼチップスケールのフットプリントの垂直スタックである。 【0053】本発明を例示のための実施の形態を参照して説明したが、この説明は本発明を限定する意図の下になされたものではない。当分野に精通していれば、以上の説明から、図示実施の形態のさまざまな変更及び組合せ、並びに本発明の他の実施の形態が明白であろう。(略)」 オ 上記アの段落【0029】の「第1表面102上に電気的入口ポート105の第1アレーと、出口ポート106の第2アレーを形成する。図1Cに示すように、これらのアレーは、相互接続体の分離した領域にグループ化され」との記載及び上記ウの段落【0038】の「可撓性相互接続体ストリップ101は、入口ポートと出口ポートの間の一体化した導電性ラインの領域120で折り曲げられる。」との記載、並びに図1C及び図1Dからみて、可撓性相互接続体ストリップ101は、折り曲げられる導電性ライン120の領域と当該導電性ラインの領域で分離された2つの領域からなるものといえる。 カ 上記ウの段落【0036】の「カプセル封じしたデバイス108があり、これらは図1Bの断面にも示される。・・・これらのデバイスは、相互接続体薄膜に取付けられた集積回路チップ(IC)と、ワイヤボンディングと、トランスファモールドしたパッケージとを備える。」との記載からみて、パッケージデバイス108内に集積回路チップ(IC)を備えるといえる。 キ 図2Aないし図2Cを合わせみると、受動電気素子210がパッケージデバイス208と重なる位置に配置されているといえる。 ク 図2Iには、矩形ストリップ状相互接続体201を3回折り曲げるものにおいて、その第1表面202(パッケージボディ208が設けられている表面の反対面)の少なくとも2つの分離された領域に受動電気素子210を設けることが示されるとともに、折り曲げ後に2つの分離された領域で挟まれた空間(図中、上下方向の中間部)において、受動電気素子210と半田ボールが上下方向で接触しないことが示されている。 刊行物1のシステムとフローIIが「材料、処理、導電性ライン204、出口ポート206、オプションの一体化受動電気部品、半田ボール207、パッケージデバイス208に関する記述は、図1A、1B、1Cについての記述と近似している」(上記エの段落【0045】)ことを踏まえて、上記記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、システムとフローII(図2A?2I)に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「導電性ラインの領域220により接続された当該導電性ラインの領域220で分離された複数の領域からなる矩形ストリップ状相互接続体201を、前記導電性ラインの領域220を屈曲させて折り畳むことにより重ね合わせてなる組立体240において、 折り畳み前の前記矩形ストリップ状相互接続体201の前記分離された領域における各第2表面にパッケージデバイス208内の集積回路チップ(IC)を搭載し、第1表面202の一方の前記分離された領域に受動電気素子210を搭載し、第1表面202の別の前記分離された領域に半田ボール207を搭載し、 折り畳み後に、前記パッケージデバイス208同士が相互に接触するように構成された組立体240。」 (2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された特開2002-9231号公報(以下「刊行物2」という。)には、「半導体装置」に関して、図面(特に、図5、図6参照。)と共に次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、フレキシブル回路基板を用いた半導体装置に係り、特に安価で小型化、薄型化、軽量化が要求される3次元実装モジュールを構成する半導体装置に関する。」 イ 「【0012】フレキシブル回路基板11において、第1領域111にはそれぞれ主に電子部品121,122がフェイスダウン実装されている。電子部品121,122は、メモリチップやシステムLSIチップ、コントロールユニットその他様々考えられる。」 ウ 「【0027】なお、図示しないが、上記電子部品121,122に関係する小型の電子部品(周辺素子)も幾つか実装されることも考えられる。例えばチップコンデンサやチップ抵抗等である。さらにはクロック生成に必要なクリスタルも実装されることがある。これらの周辺素子も実装する上で適当な形に変えられたスペーサ14によって保護される。」 エ 「【0041】図5は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の要部構成であり、電子部品のレイアウトの第1変形例である。前記第1実施形態では、第1領域111は実装部を含み、第2領域112は配線部のみで実装部を含まない構成であったが、これに限定されることはない。この第3実施形態のように、第2領域112に実装部を設定してもかまわない。素子(電子部品121,122)が互いに重なり合わないようにレイアウトすれば折り曲げ形態に支障はない。また、図示しないスペーサは、各素子(電子部品121,122)を保護するため最小限の高さを有していればよい。セパレート型を採用したり、また、フレキシブル回路基板11全体領域に重なる一体型を採用してもよい(開口部13は除く)。 【0042】図6は、本発明の第4実施形態に係る半導体装置の要部構成であり、電子部品のレイアウトの第2変形例である。上記第1変形例に習ってさらに複数の素子(ICチップや周辺素子など)を互いに重なり合わないようレイアウトしている。このようにすれば折り曲げ形態に支障はない。また、図示しないスペーサは、各素子を保護するため最小限の高さを有していればよい。セパレート型を採用したり、また、フレキシブル回路基板11全体領域に重なる一体型を採用してもよい(開口部13は除く)。」 オ 図6には、第1折り曲げ位置を表す1点鎖線に対して電子部品(ICチップや周辺素子群)を異なる距離で配置することが示されている。 3 対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「導電性ラインの領域220」は前者の「屈曲可撓部」に相当し、以下同様に、「当該導電性ラインの領域220で分離された領域」は「部品実装部」に、「矩形ストリップ状相互接続体201」は「多層フレキシブルプリント回路基板」に、「組立体240」は「モジュール」に、「第2表面」は「一方の面」に、「パッケージデバイス208内の集積回路チップ(IC)」は「能動素子」に、「第1表面202」は「他方の面」に、「受動電気素子210」は「受動素子」にそれぞれ相当する。 また、後者の「第1表面202の一方の前記分離された領域に受動電気素子210を搭載し、第1表面202の別の前記分離された領域に半田ボール207を搭載し」と前者の「各他方の面に受動素子を搭載し」とは、「他方の面に受動素子を搭載し」という限りで共通する。 したがって、両者は、 「屈曲可撓部により接続された複数の部品実装部からなる多層フレキシブルプリント回路基板を、前記屈曲可撓部を屈曲させて折り畳むことにより重ね合わせてなるモジュールにおいて、 折り畳み前の前記多層フレキシブルプリント回路基板の前記部品実装部における各一方の面に能動素子を、他方の面に受動素子を搭載する、 モジュール。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 〔相違点1〕 他方の面に受動素子を搭載することについて、本願補正発明は、多層フレキシブルプリント回路基板の部品実装部における「各」他方の面に受動素子を搭載するのに対し、 引用発明は、第1表面202の一方の分離された領域に受動電気素子210を搭載し、第1表面202の別の分離された領域に半田ボール207を搭載する点。 〔相違点2〕 本願補正発明は、「前記多層フレキシブルプリント回路基板の前記部品実装部における各面にモールド樹脂が塗工され」るのに対し、 引用発明は、かかる構成を有しない点。 〔相違点3〕 本願補正発明は、「折り畳み後に、前記能動素子同士または前記受動素子同士が相互間の空間に入れ子状に配されるように構成される」のに対し、 引用発明は、折り畳み後に、前記パッケージデバイス208が相互に接触するように構成される点。 4 当審の判断 そこで、各相違点を検討する。 (1)相違点1について 引用発明の半田ボール207は、外部の部品に取付けるための結合部材として出口ポートに取付けらたものであるが(刊行物1の段落【0034】)、刊行物1において、入口ポート、出口ポート、パッケージデバイス、及び受動電気部品は、導電性ラインによって相互に接続された回路を構成するものであるから、図2Eないし図2Iに示されるように、それらの配置は設計的事項といえるものである。また、刊行物1の図2G及び図2Iには、矩形ストリップ状相互接続体の折り曲げ回数を、回路の構成に応じて、適宜変更できることが示されている。こうしたことについて、刊行物1には、「本発明は、更に色々の他の異なる組み合わせを与える。」(同段落【0052】)及び「当分野に精通していれば、・・・図示実施の形態のさまざまな変更及び組合せ、並びに本発明の他の実施の形態が明白であろう」(同段落【0053】)と記載されている。さらに加えて、図2Iには、第1表面202(パッケージボディ208が設けられている表面の反対面)の少なくとも2つの分離された領域に受動電気素子210を設けることが示されている。 これらを総合すると、引用発明において、回路構成等を適宜変更して、「多層フレキシブルプリント回路基板の部品実装部における『各』他方の面に受動素子を搭載する」ことは、当業者が容易になし得る程度の設計変更である。 (2)相違点2について 本願の優先権主張の日前に、回路基板の部品実装面にモールド樹脂を塗工することは、周知技術(例えば、特開2006-203086号公報の段落【0002】の「従来電子部品パッケージ、特にコイル素子を有するELドライバー用等の電子部品パッケージにおいては、集合基板にIC、コイル、チップコンデンサ、チップ抵抗等の電子部品を実装し、エポキシ系の樹脂で封止、硬化後ダイシングにより単体化していた。」との記載及び段落【0019】の「封止媒体38としては、プリプレグもしくはシリコン樹脂もしくはエポキシ樹脂等が考えられる。接着法としては、第1の基板32の集合体もしくは第2の基板30の集合体の部品面をポッティング等の方法で封止媒体38で覆い、そこに第2の基板30の集合体もしくは第1の基板32の集合体の部品面を位置合わせして重ね、脱泡後樹脂を硬化させて接着する。」との記載参照。)である。 刊行物1には、パッケージデバイス208について「カプセル封じしたデバイス108があり、・・・これらのデバイスは、相互接続体薄膜に取付けられた集積回路チップ(IC)と、ワイヤボンディングと、トランスファモールドしたパッケージとを備える」(同段落【0036】)との記載があり、ここで「トランスファモールド」がモールド樹脂を金型に流し込んで成形することであるから、引用発明において、相互接続体薄膜上にモールド樹脂を設ける際に、前記周知技術を適用して、「前記多層フレキシブルプリント回路基板の前記部品実装部における各面にモールド樹脂が塗工され」るようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、これによって、刊行物1に記載された「パッケージボディは糊付けし、恒久的にスタックする」(同段落【0046】)ことが実現できることは、当業者が容易に把握し得たことである。 (3)相違点3について 刊行物2には、薄型化が要求される3次元実装モジュールを構成する半導体装置に関して、第1折り曲げ位置に対して、ICチップや周辺素子群の電子部品を異なる距離で配置することによって、折り曲げ後に互いに重なり合わないようにして高さを低減することが記載されている。 そして、引用発明の「組立体240」と刊行物2の「3次元実装モジュール」とは、「屈曲可撓部を屈曲させて折り畳むことにより重ね合わせてなるモジュール」である点で共通し、同「ICチップ」は「集積回路チップ(IC)」に対応するから、薄型化という技術的課題を解決するために、引用発明に刊行物2に記載された事項を適用して、「折り畳み後に、前記能動素子同士が相互間の空間に入れ子状に配されるように構成」することは、当業者が容易に想到し得たことである。 (4)効果について 本願補正発明が奏する効果は、全体としてみても、引用発明、刊行物2に記載された事項、及び前記周知技術から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。 (5)まとめ したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項、及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 5 むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成24年7月6日付けの手続補正書の請求項1ないし6に記載された事項により特定されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2〔理由〕1」に補正前の請求項1として記載したとおりのものである。 2 刊行物 原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、その記載事項、及び引用発明は、前記「第2〔理由〕2」に記載したとおりである。 3 対比及び当審の判断 本願発明は、前記「第2〔理由〕」で検討した本願補正発明における「前記能動素子同士または前記受動素子同士が相互間の空間に配される」ことについての「入れ子状に」との限定を省くものである。 そうしてみると、本願発明の発明特定事項をすべて含んだものに実質的に相当する本願補正発明が、前記「第2〔理由〕3及び4」に記載したとおり、引用発明、刊行物2に記載された事項、及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明、刊行物2に記載された事項、及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項、及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-09-03 |
結審通知日 | 2013-09-06 |
審決日 | 2013-09-24 |
出願番号 | 特願2008-322085(P2008-322085) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉澤 秀明 |
特許庁審判長 |
森川 元嗣 |
特許庁審判官 |
冨岡 和人 島田 信一 |
発明の名称 | 多層フレキシブルプリント回路基板を用いたモジュールおよびその製造方法 |
代理人 | 佐藤 泰和 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 関根 毅 |
代理人 | 川崎 康 |
代理人 | 玉真 正美 |