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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R
管理番号 1281139
審判番号 不服2012-11046  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-13 
確定日 2013-11-07 
事件の表示 特願2001-201176「導電性接触子」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月15日出願公開、特開2003- 14779〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年7月2日の出願であって、平成23年7月12日付けで明細書及び特許請求の範囲についての補正がなされ(以下、「補正1」という。)、平成24年3月8日付け(送達:同年3月13日)で拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月13日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書及び特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2.補正却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、次のように補正するものである。
(補正前)
「被接触体に当接させる接触面を先端に有する導電性針状体と、前記接触面を前記被接触体に接触させる向きに前記針状体を弾発付勢するためのコイルばねとを有する導電性接触子であって、
前記針状体が硬度及び耐摩耗性が高い貴金属合金からなり、
かつ前記針状体の少なくとも前記コイルばねとの結合部を含む全体が電気伝導率の高い物質によりメッキされていると共に、
前記針状体の前記接触面は、前記針状体の先端を研削して前記貴金属合金を露出させた面であることを特徴とする導電性接触子。」

(補正後)
「被接触体に当接させる接触面を先端に有する導電性針状体と、前記接触面を前記被接触体に接触させる向きに前記針状体を弾発付勢するためのコイルばねとを有する導電性接触子であって、
前記針状体が硬度及び耐摩耗性が高い貴金属合金からなり、
かつ前記針状体と前記コイルばねとの結合部の電気伝導率を高い状態に保持するべく前記針状体の少なくとも前記コイルばねとの結合部を含む全体が電気伝導率の高い物質によりメッキされていると共に、
前記針状体の前記接触面は、前記針状体の先端を研削して汚れをクリーニングしかつ初期状態の電気的特性が得られるように前記貴金属合金を露出させた平坦面であることを特徴とする導電性接触子。」
(下線は補正箇所。)

この補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「針状体」に関して、「前記針状体の少なくとも前記コイルばねとの結合部を含む全体が電気伝導率の高い物質によりメッキされている」を、「前記針状体と前記コイルばねとの結合部の電気伝導率を高い状態に保持するべく」と、また、「貴金属合金を露出させた面」を「汚れをクリーニングしかつ初期状態の電気的特性が得られるように前記貴金属合金を露出させた平坦面」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

(2)引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である米国特許第5521519号明細書(以下「引用例1」という。)には、スプリングプローブ装置に関し、次の事項(a)、(b)が図面と共に記載されている。
(a)
「Spring probe apparatus 10 in accordance with this invention is illustrated in FIG. 1. ・・・ Probe 12 slides freely up and down in a hollow cylindrical space 24 drilled in probe guide 11, and space 24' drilled in guide plate 22. 」(第2欄第11行ないし第25行参照)
(b)
「Contact probes 12 are composed of a suitable conductive material including copper alloys such
1. berrylium copper (BeCu),
2. a ductile alloy which can be altered significantly by heat treatment comprising a high palladium content alloy of Ag, Au, Pt, Cu and a little zinc such as Paliney (Registered Trademark of Ney)
3. brass;
or other materials such as:
4. tungsten (W)
5. nickel (Ni).
The probes 12 have formed or etched contact tips 18.
Cone shaped pilots 16 formed on the top of cylindrical contact heads 14 on the distal ends of contact probes 12 fit into the proximal ends of coiled, gold-plated, metallic compression springs 17. The pilots 16 and the springs 17 can be bonded together by means of soldering or laser welding and the like. The springs 17 provide the required probing forces when the cylindrical-contact probe tips 18 at the proximal end of probe 12 are lowered against product pads (not shown for convenience of illustration, which are well known to those skilled in the art.) Connections to test equipment (also not shown for the same reason) are made by means of wires 20 (of a space transformer) whose coned tips 21 fit into the distal end of coil springs 17. 」(第2欄第37行ないし第62行参照)
(以下、参考までに当審による日本語訳を付す。)
(a’)
「本発明に関するスプリングプローブ装置10が、図1に図示されている。・・・プローブガイド11にドリルによりあけられた円筒状の空間24と、ガイドプレート22にあけられた円筒状の空間24’の中を、プローブ12は、上下に自由にスライドする。」
(b’)
「コンタクトプローブ12は、下記のような銅合金を含む適切な導体材料からできている。
1.ベリリウム銅(BeCu)、
2.Paliney(Neyの登録商標)のような、Ag、Au、Pt、Cu及び少しの亜鉛を含むパラジウム合金からなる、熱処理によって著しく変更することができる、展性のある合金。
3.黄銅;
あるいは次のもののような他の材料:
4.タングステン(W)
5.ニッケル(Ni)。
コンタクトプローブ12は、成型またはエッチングにより形成された接触先端部18を有する。
コンタクトプローブ12の円柱状の接触部頭部上に形成された円錐形のパイロット16は、金メッキされた金属の圧縮コイルスプリング17の近接端部内に配置されている。
パイロット16およびスプリング17は、はんだ付けあるいはレーザー溶接およびその他同種のものによってともに接合することができる。
コンタクトプローブ12の近接端に形成された円柱状の先端部18が、製品の端子(当業者によく知られているので、便宜上図示されない)に向かって下降された際に、スプリング17は、必要な探測する力を提供する。
試験装置(さらに同じ理由で図示されない)への接続は、コイルスプリング17の遠方端部内に配置された円錐形先端部21を有する電線20(スペース変換器の)によってなされる。」

また、図1には、コンタクトプローブの接触先端部18は、その製品の端子と当接する接触面は平坦面であることが図示されている。
してみると、上記記載(a)、(b)及び図1の記載によれば、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。

「製品の端子に当接させる接触先端部を有するコンタクトプローブと、前記接触先端部を前記製品の端子に向かって下降させた際に、必要な探測する力を提供するコイルスプリングとを有するスプリングプローブ装置であって、
前記コンタクトプローブがPaliney(Neyの登録商標)のようなAg、Au、Pt、Cu及び少しの亜鉛を含むパラジウム合金からなり、
かつ、前記コンタクトプローブと前記コイルスプリングとの結合部の電気伝導率を高い状態に保持するべく前記コイルスプリングの結合部が電気伝導率の高い物質によりメッキされていると共に、
前記コンタクトプローブの接触先端部は、前記合金からなる平坦面であるスプリングプローブ装置。」(以下、「引用発明1」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
(ア)
引用発明1における「コンタクトプローブ」は、円柱状の導電材料からなり、その端部に製品の端子に当接させる接触先端部を有しているので、本願補正発明における「被接触体に当接させる接触面を先端に有する導電性針状体」に相当する。
(イ)
引用発明1における「接触先端部を前記製品の端子に向かって下降させた際に、必要な探測する力を提供するコイルスプリング」は、コンタクトプローブ12が上下に自由にスライドすること、また、圧縮コイルスプリングであることから、本願補正発明の「接触面を前記被接触体に接触させる向きに前記針状体を弾発付勢するためのコイルばね」に相当する。
(ウ)
引用発明1における、コンタクトプローブとコイルスプリングを有する「スプリングプローブ装置」は、本願補正発明における、針状体を弾発付勢するためのコイルばねを有する「導電性接触子」に相当する。
(エ)
引用発明1における「Paliney(Neyの登録商標)のようなAg、Au、Pt、Cu及び少しの亜鉛を含むパラジウム合金」は、本願明細書中に例示する貴金属合金(【0020】なお、導電性針状体2の素材には、Paliney7に限定されるものではなく、成分として、パラジウム(Pd)を35%、銀(Ag)を30%、白金(Pt)を10%、金(Au)を10%、銅(Cu)を14%、亜鉛(Zn)を1%含む貴金属合金であると良い。または、他の成分を有するものであっても良く、硬度及び耐摩耗性が高い貴金属合金であれば良い。」参照)に含まれるので、本願補正発明における「硬度及び耐摩耗性が高い貴金属合金」に相当するといえる。

(オ)
してみると、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「被接触体に当接させる接触面を先端に有する導電性針状体と、前記接触面を前記被接触体に接触させる向きに前記針状体を弾発付勢するためのコイルばねとを有する導電性接触子であって、
かつ、前記針状体と前記コイルばねとの結合部の電気伝導率を高い状態に保持するべく結合部が電気伝導率の高い物質によりメッキされていると共に、
前記針状体が硬度及び耐摩耗性が高い貴金属合金からなり、
前記針状体の前記接触面は、前記貴金属合金を露出させた平坦面である導電性接触子。」
(相違点1)
メッキに関し、本願補正発明では、針状体の接触面以外の部分が「針状体とコイルばねとの結合部の電気伝導率を高い状態に保持するべく前記針状体の少なくとも前記コイルばねとの結合部を含む全体が電気伝導率の高い物質によりメッキされている」のに対し、引用発明1は、コイルスプリングは金メッキされているが、針状体に相当するコンタクトプローブの接触面以外の部分に電気伝導率の高い物質によりメッキをすることを特定していない点。
(相違点2)
本願補正発明では、「針状体の先端を研削して汚れをクリーニングしかつ初期状態の電気的特性が得られるように」しているのに対し、引用発明1は、クリーニングに関して特定をしていない点。

(4)判断
上記相違点1、2について検討する。
ア 引用例2
原審で引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-160355号公報(以下「引用例2」という。)(発明の名称:コンタクトプローブ)には、以下の記載がある。
(c)
「【0012】そして、コンタクトピン10の針先において、内部層11の先端部は外部に露出している(端子2との)通電用接触部であり、これをコンタクトピン10の先端部10aとする。そして、先端部10aを除いた内部層11の表面は、導電性の高いAuで被覆されて第一被覆層12とされる。ここで、内部層11の先端部10a以外の部分をAuで被覆したのは、Ni-Mn合金は電気抵抗が大きいために信号の伝送線路としては損失が大きく、信号が劣化してノイズが発生するためである。他方、高周波信号は一般にコンタクトピン10の表面を流れる特性を有する(表皮効果という)ために、コンタクトピン10の表面を導電性の良いAuで被覆することで、信号の劣化を防止できるためである。
【0013】次に上述した実施の形態によるコンタクトピン10の製造方法について説明する。コンタクトピン10を製造する工程は、例えば特公平7-82027号公報に開示されたものと同様である。即ち、ステンレス製の支持基板の上にCuめっきによりベースメタル層を形成する。このベースメタル層の上にフォトレジスト層を形成した後、フォトレジスト層に所定のパターンのマスクを施して露光し、フォトレジスト層を現像してコンタクトピンとなる部分を除去して、残存するフォトレジスト層に開口部を形成する。そして、この開口部にコンタクトピン10となるNi基合金層として、Ni-Mn合金をめっき処理により形成する。ここで、コンタクトピン10の先端部10aのみNi-Mn合金の内部層11を露出してAuの第一被覆層12で被覆する方法として、製作されたコンタクトピン10の内部層11の先端部10aを予めマスキングしてAuめっきする手法を用いる。或いは、コンタクトピン10の内部層11全体をAuめっきで被覆しておいて、先端部10aのみAuを剥離させる手法を用いてもよく、いずれを用いても良い。」
(d)
「【0015】尚、上述の第一の実施の形態によれば上述の作用効果を奏するが、コンタクトピン10の先端部10aにNi-Mn合金の内部層11が露出していることで、Ni-Mn合金が酸化し、そのために結果的に接触時の電気抵抗が増大し、接触不良が発生することがある。次に説明する本発明の第二の実施は、このような問題を改善したものであり、これを図2により説明する。図2に示すコンタクトピン14は、Ni-Mn合金からなる内部層11を、先端部14aを含めて全体に白金族元素の金属、例えば白金Ptで被覆して第二被覆層15が形成されている。ここで、白金Ptは、導電性はAuより劣るが、硬度が高く酸化しにくいので、端子2のAuが付着する粘着現象を確実に防ぐことができる。尚、第二被覆層15に用いる白金族元素の金属として、白金Pt以外に、Ru、Ph、Pd、Os、Ir等を採用することができる。
【0016】次に第二の実施の形態の変形例を図3により説明する。図3において、コンタクトピン16は、Ni-Mn合金からなる内部層11を、先端部16aを含めて全体に白金族の金属、例えば白金Ptで被覆して第二被覆層15が形成されている点で、第二の実施の形態によるコンタクトピン14と等しい。本変形例では、更に第二被覆層15の表面に、端子2との通電用接触部である先端部16aを除いた部分に導電性金属としてAuが被覆されて第三被覆層18が形成されている。この構成によれば、第二の実施の形態の効果に加えて、第二被覆層15の導電性がAuより劣っていても、端子2から先端部16aに伝送された信号は表皮効果によって導電性のよいAuからなる第三被覆層18を伝送されるから、信号の劣化によるノイズの発生を確実に防止できるという作用効果を奏する。」

また、図3には、端子2との通電用接触部である先端部16aは、白金Ptの第二被覆層15が露出しており、先端部16aを除いた部分は、導電性金属としてAuが被覆されて第三被覆層18が形成されている様子が図示されている。

イ 引用発明2
上記記載(c)、(d)及び図3の記載によれば、引用例2には次の発明が記載されているものと認められる。
「コンタクトピンの表面が硬度が高く酸化しにくい貴金属である白金等の被覆層からなり、端子との通電用接触部であるコンタクトピンの先端部は、前記白金等の被覆層が露出しており、コンタクトピンの前記先端部を除いた部分は、Auがめっきにより被覆されてなるコンタクトプローブ。」(以下、「引用発明2」という。)

ウ 検討
(相違点1について)
まず、引用発明2における、「Au」は、電気伝導率の高い物質であり、コンタクトピン全体にめっきされた後、端子との通電用接触部である先端部のみ剥離されることから、引用発明2は、通電用接触部以外の部分に電気伝導率の高い物質によりメッキをしたものである。
引用発明1も、引用発明2も、共にコンタクトプローブに関する発明である点で共通しているところ、このコンタクトプローブとは、端子との接触をして導通状態を試験する際に用いられるものであることから、端子との接触において電気抵抗を低減させようとすることは、コンタクトプローブにおける周知の技術的課題である。
そして、引用発明2を引用発明1に適用した際に、引用発明1における接触先端部の平坦面が端子と接触する部分であり、引用発明2における通電用接触部に相当し、平坦面である通電用接触部以外の全体に電気伝導率の高いAuをメッキすることになるから、コイルスプリングとの結合部も含めてメッキされることになる。
してみると、コンタクトプローブに関する引用発明1に、前記周知の技術的課題を解決することを目的として、引用発明2の通電用接触部以外の部分に電気伝導率の高い物質によりメッキをすることを適用し、本願補正発明における「針状体の接触面以外の部分が、針状体とコイルばねとの結合部の電気伝導率を高い状態に保持するべく前記針状体の少なくとも前記コイルばねとの結合部を含む全体が電気伝導率の高い物質によりメッキされている」ようにすることは、当業者ならば容易に想到し得るものである。
(相違点2について)
本願補正発明では、「針状体の先端を研削して汚れをクリーニングしかつ初期状態の電気的特性が得られるように」しているのに対し、引用発明1は、クリーニングに関して特定をしていない。
しかしながら、プローブ先端を研磨することでクリーニングすることは、本願出願前に周知技術であり(例えば、特開昭63-170933号公報、実願平5-51369号(実開平7-26772号公報)のCD-ROM等参照)、研磨すれば、プローブ先端が削られることは明らかである(特開平4-366768号公報等参照)。(以下、周知技術1という。)
また、上記のようにクリーニングするのは、プローブを使用しているとプローブ先端に汚れが付着し電気的接続状態が悪化するので、その汚れを除去することで電気的接続状態を回復するためであるから、本願補正発明における「初期状態の電気的特性が得られるようにする」ことに外ならない。
したがって、引用発明1に、プローブ先端を研磨することでクリーニングするという前記周知技術を適用し、本願補正発明の「針状体の先端を研削して汚れをクリーニングしかつ初期状態の電気的特性が得られるように」することは、当業者ならば容易に想到し得るものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2、及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、補正1によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。

「被接触体に当接させる接触面を先端に有する導電性針状体と、前記接触面を前記被接触体に接触させる向きに前記針状体を弾発付勢するためのコイルばねとを有する導電性接触子であって、
前記針状体が硬度及び耐摩耗性が高い貴金属合金からなり、
かつ前記針状体の少なくとも前記コイルばねとの結合部を含む全体が電気伝導率の高い物質によりメッキされていると共に、
前記針状体の前記接触面は、前記針状体の先端を研削して前記貴金属合金を露出させた面であることを特徴とする導電性接触子。」
(以下、「本願発明」という。)

(1)引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物に記載された発明・事項は、上記「2.(2)引用例記載の事項・引用発明」に記載したとおりである。

(2)対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。
(一致点2)
「被接触体に当接させる接触面を先端に有する導電性針状体と、前記接触面を前記被接触体に接触させる向きに前記針状体を弾発付勢するためのコイルばねとを有する導電性接触子であって、
前記針状体が硬度及び耐摩耗性が高い貴金属合金からなり、
前記針状体の前記接触面は、前記貴金属合金を露出させた面である導電性接触子。」
(相違点3)
本願発明では、「前記針状体の少なくとも前記コイルばねとの結合部を含む全体が電気伝導率の高い物質によりメッキされていると共に、前記針状体の前記接触面は、前記針状体の先端を研削して前記貴金属合金を露出させた面」であるのに対し、引用発明1は、そのような特定がされていない点。

(3)判断
引用発明2は、上記2.(4)アの記載からするに、
「コンタクトピン全体にAuのめっきがされた後、端子との通電用接触部である先端部のみ、前記めっきを剥離されることで、コンタクトピンの白金等の被覆層を露出したコンタクトプローブ。」である。
引用発明2における、「Au」は、本願発明における「電気伝導率の高い物質」のことである。
引用発明1も、引用発明2も、共にコンタクトプローブに関する発明である点で共通しているところ、コンタクトプローブとは、端子との接触をして導通状態を試験する際に用いられるものであることから、端子との接触において電気抵抗を低減させようとすることは、コンタクトプローブにおける周知の技術的課題である。
そして、引用発明2を引用発明1に適用した際に、引用発明1のコンタクトプローブの端子と接触する部分以外の全体に電気伝導率の高いAuをめっきすることになるから、コイルスプリングとの結合部も含めてめっきされることになり、また、端子との通電用接触部である先端部のみ、めっきが剥離されるから、接触面は、貴金属合金が露出されることになる。
ところで、剥離をどのようにして行うか、引用発明2には、特定されていないが、例えば、特開平11-344509号公報(特に段落【0030】の記載等参照。)に見られるように、プローブピンに形成された膜を研磨により剥離することは周知技術(以下、周知技術2という。)であり、また、ここでの研磨は、部材を部分的に除去しているので、研削と同じであることから、剥離を研削により行うことは、当業者が適宜採用し得ることである。
してみると、コンタクトプローブに関する引用発明1に、前記周知の技術的課題を解決することを目的として、引用発明2を適用し、本願発明における「前記針状体の少なくとも前記コイルばねとの結合部を含む全体が電気伝導率の高い物質によりメッキされていると共に、前記針状体の前記接触面は、前記針状体の先端を研削して前記貴金属合金を露出させた面」であるようにすることは、当業者ならば容易に想到し得るものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明2、及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-03 
結審通知日 2013-09-10 
審決日 2013-09-24 
出願番号 特願2001-201176(P2001-201176)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01R)
P 1 8・ 575- Z (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳 重幸関根 洋之  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 森 竜介
下中 義之
発明の名称 導電性接触子  
代理人 特許業務法人 大島特許事務所  

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