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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1281157
審判番号 不服2012-18853  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-26 
確定日 2013-11-07 
事件の表示 特願2009-114203「携帯端末装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 8月13日出願公開、特開2009-181588〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年5月11日の特許出願であって、特願2003-400717号(平成15年11月28日出願)の分割出願として出願されたものであり、平成23年10月28日付けで拒絶理由の通知がなされ、平成24年1月10日付けで手続補正書の提出がなされ、平成24年6月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成24年9月26日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書の提出がなされ、当審において、平成25年5月16日付けで前置報告書を利用した審尋がなされ、平成25年7月22日付けで回答書の提出がなされたものである。



第2 平成24年9月26日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成24年9月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成24年9月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1(平成24年1月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1)を補正して、補正後の特許請求の範囲の請求項1とするものであり、補正前後の請求項1は、各々次のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】
文字を入力する入力手段と、
位置情報に対応する第1の文字情報を、入力された第2の文字情報の変換候補として表示する表示手段と、
前記第2の文字情報が入力された際の位置情報に対応する前記第1の文字情報を、前記表示手段に前記第2の文字情報の前記変換候補として他の変換候補より下位に表示させる制御手段と、
を備えることを特徴とする携帯端末装置。」

(補正後)
「【請求項1】
文字を入力する入力手段と、
位置情報に対応する第1の文字情報を、入力された第2の文字情報の変換候補として表示する表示手段と、
前記第2の文字情報が入力された際の位置情報に対応する前記第1の文字情報を外部装置から取得し、当該取得した第1の文字情報を前記表示手段に前記第2の文字情報の前記変換候補として他の変換候補より下位に表示させる制御手段と、
を備えることを特徴とする携帯端末装置。」

ここで、本件補正前の請求項1と本件補正後の請求項1を比較すると、本件補正後の請求項1に係る本件補正には、以下の補正事項が含まれる。

(補正事項)
補正前の請求項1の「前記第2の文字情報が入力された際の位置情報に対応する前記第1の文字情報を、前記表示手段に前記第2の文字情報の前記変換候補として他の変換候補より下位に表示させる制御手段」を「前記第2の文字情報が入力された際の位置情報に対応する前記第1の文字情報を外部装置から取得し、当該取得した第1の文字情報を前記表示手段に前記第2の文字情報の前記変換候補として他の変換候補より下位に表示させる制御手段」とする補正。


2.補正の適否
上記補正は、補正前の請求項1における「第1の文字情報」を、「外部装置から取得」したものに限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、補正事項により補正された部分は、当初明細書の段落【0043】、【0079】に記載されているものと認められるから、補正事項は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項に規定する要件を満たすものである。

次に、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、本件補正後の上記請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。


3.独立特許要件について
3.1 補正後の発明
本願の本件補正による補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という)は、上記「1.」の「(補正後)」の箇所に記載したとおりのものであり、再掲すると次のとおりである。

「【請求項1】
文字を入力する入力手段と、
位置情報に対応する第1の文字情報を、入力された第2の文字情報の変換候補として表示する表示手段と、
前記第2の文字情報が入力された際の位置情報に対応する前記第1の文字情報を外部装置から取得し、当該取得した第1の文字情報を前記表示手段に前記第2の文字情報の前記変換候補として他の変換候補より下位に表示させる制御手段と、
を備えることを特徴とする携帯端末装置。」


3.2 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-303186号公報(以下、「引用文献」という)には、下記の事項が記載されている。

A.「【0054】次に、端末装置30について説明する。端末装置30は、携帯電話機あるいはPDA(Personal Digital Assistance)等により実現され、地域に依存しない共通辞書のデータ(共通辞書データ)およびユーザの変換履歴を反映して作成されるユーザ辞書のデータ(ユーザ辞書データ)を自装置に記憶している。また、端末装置30は、自装置が属している“地域”に対応する地域辞書のデータ(地域辞書データ)を基地局20から受信し、文字入力が行われる場合に、地域辞書データを参照して変換文字候補を提示することが可能である。
【0055】さらに、端末装置30は、基地局20のページングチャネルをスキャンすることにより、現在通信可能な基地局20が、いずれのページングチャネルを使用しているか否かを監視し、使用されるページングチャネルが変化したことにより、自装置が属する“地域”が変化したものと判定する。そして、自装置が属する“地域”が変化した場合、その“地域”に対応する地域辞書データを基地局20から受信し、文字入力において参照する。
【0056】なお、端末装置30は、携帯電話ネットワークシステム等によって提供される位置情報サービス(端末装置30の位置を通知するサービス)を用いて、自装置の属する地域の変化を検出することとしてもよい。図4は、端末装置30の機能構成を示すブロック図である。図4において、端末装置30は、中央演算装置31と、入力装置32と、主記憶装置33と、補助記憶装置34と、表示装置35と、通信装置36とを含んで構成される。なお、図示しないが、端末装置30は、GPS(Global Positioning System)測位手段等の位置計測手段を任意に備えることが可能であり、位置計測手段によっても自装置の属する地域の変化を検出することが可能である。
【0057】中央演算装置31は、端末装置30全体を制御するもので、入力装置32から入力される各種の指示信号に従って、補助記憶装置34に記憶された各種処理に関するプログラムを読み出して実行する。また、中央演算装置31は、地域辞書受信処理(後述)、地域辞書登録処理(後述)および代名詞変換処理(後述)を実行する。そして、中央演算装置31は、各種プログラム等を実行した処理結果や基地局20から送信された地域辞書データを主記憶装置33や補助記憶装置34の所定の領域に格納したり、表示装置35に表示させたりする。」(下線は、当審において記載したものであり、以下の記載においても同様。)

B.「【0062】次に、動作を説明する。初めに、端末装置30の中央演算装置31が実行する地域辞書受信処理について説明する。図5は、端末装置30の中央演算装置31が実行する地域辞書受信処理を示すフローチャートである。地域辞書受信処理は、端末装置30の動作中に、常に実行するあるいは所定時間おきに実行するといったように、所定のタイミングで実行されるものである。
【0063】図5において、端末装置30の中央演算装置31は、基地局20から送信されるページングチャネルの変化の有無を検出することにより、自装置の属する“地域”が変化したか否かの判定を行う(ステップS1)。なお、端末装置30は、位置情報サービスあるいは位置計測手段によって自装置の属する位置の変化を検出する場合、一定時間毎に自装置の位置を確認する処理を実行する。」

C.「【0066】そして、中央演算装置31は、自装置が地域辞書データを記憶しているか否かの判定を行い(ステップS5)、自装置が地域辞書データを記憶していないと判定した場合、ステップS9の処理に移行する。」

D.「【0069】ステップS10において、ユーザが新たな地域辞書データを受信しない旨の選択を行ったと判定した場合、中央演算装置31は、地域辞書受信処理を終了する。一方、ステップS10において、ユーザが新たな地域辞書データを受信する旨の選択を行ったと判定した場合、中央演算装置31は、基地局20から新たな地域辞書データを受信し(ステップS11)、受信した地域辞書データを使用される辞書として登録する処理(後述する地域辞書登録処理)を行い(ステップS12)、地域辞書受信処理を終了する。」

E.「【0083】図9において、単語「ここ」が入力されると、端末装置30の中央演算装置31は、自装置に地域辞書データが登録されているか否かの判定を行い(ステップS201)、自装置に地域辞書データが登録されていないと判定した場合、共通辞書データを参照して、単語「ここ」の変換候補を表示する(ステップS202)。そして、中央演算装置31は、代名詞変換処理を終了する。
【0084】一方、ステップS201において、自装置に地域辞書データが登録されていると判定した場合、中央演算装置31は、自装置にGPS測位手段等の位置計測手段が備えられているか否かの判定を行う(ステップS203)。ステップS203において、自装置に位置計測手段が備えられていないと判定した場合、中央演算装置31は、現在登録している地域辞書データが対応する“地域”を取得し(ステップS204)、単語「ここ」の変換候補として、その“地域”の名称を表示する(ステップS205)。
【0085】そして、中央演算装置31は、ユーザによって、その“地域”の名称が変換候補として確定されたか否かの判定を行い(ステップS206)、その“地域”の名称が変換候補として確定されていないと判定した場合、ステップS202の処理に移行する。一方、ステップS206において、その“地域”の名称が変換候補として確定されたと判定した場合、中央演算装置31は、代名詞変換処理を終了する。
【0086】ステップS203において、自装置に位置計測手段が備えられていると判定した場合、中央演算装置31は、その位置計測手段によって自装置の位置を計測し(ステップS207)、地域辞書データを参照して、現在地に対応する地名を変換候補として検索する(ステップS208)。図10は、地域辞書データの内容の一例(「諏訪地域」に対応する地域辞書データ)を示す図である。図10において、地域辞書データには、地名等の読みと、それに対応する漢字と、地名の緯度および経度とが対応付けて格納されている。なお、緯度および経度を含まない項目は、より細かい地名あるいは地域特有の読み方を有する人名等である。
【0087】図9に戻り、ステップS208の後、中央演算装置31は、現在位置に基づいて、単語「ここ」に対応する変換候補があるか否かの判定を行い(ステップS209)、単語「ここ」に対応する変換候補がないと判定した場合、ステップS204の処理に移行する。一方、ステップS209において、単語「ここ」に対応する変換候補があると判定した場合、中央演算装置31は、その変換候補を単語「ここ」の変換候補として表示し(ステップS210)、ユーザによって、その変換候補が確定されたか否かの判定を行う(ステップS211)。
【0088】ステップS211において、その変換候補が確定されていないと判定した場合、中央演算装置31は、ステップS208の処理に移行し、その変換候補が確定されたと判定した場合、代名詞変換処理を終了する。図11は、代名詞変換処理において表示される変換候補の例を示す図である。図11(a)は、端末装置30が位置計測手段を備え、かつ、「諏訪地域」の地域辞書データを登録している場合に表示される変換候補の例を示す図であり、代名詞変換処理のステップS210に対応している。図11(a)において、単語「ここ」に対する変換候補として、図10に示す地域辞書データに含まれる単語が優先的に表示されている。」

F.図11(a)には、「ここ」の変換候補として、地域辞書データの「諏訪湖」、「諏訪」、「長野」、「信州」が共通辞書データの「ここ」より優先的に表示されることが記載されている。

ここで、上記引用文献の記載事項について検討する。
(あ)上記Aには、端末装置30が携帯電話機により実現され、端末装置30が中央演算装置31、入力装置32、表示装置35、GPS、地域辞書データを格納した補助記憶手段を備えることが記載されている。

(い)上記Eには、端末装置への入力例として、単語「ここ」が入力されることが記載されているので、上記(あ)の記載を加味すれば、引用文献には、「単語を入力する入力装置を備えた携帯電話機」が記載されているといえる。

(う)上記E及びFには、単語「ここ」が入力されると、GPSが計測した位置に対応した地域辞書データ内の地名である「諏訪湖」、「諏訪」、「長野」、「信州」が、共通辞書データの「ここ」より、変換候補として優先的に表示されることが記載されているので、上記(あ)の記載を加味すれば、引用文献には、「位置に対応する地域辞書データ内の地名を、入力された単語の変換候補として表示する表示装置を備えた携帯電話機」が記載されているといえる。

(え)上記Aには、中央演算装置31が、地域辞書受信処理、代名詞変換処理を実行し、実行した処理結果を表示装置35に表示させることが記載されている。

(お)中央演算装置31が実行する地域辞書受信処理については、所定時間おきに自装置が属する地域が変化したかを判定し、自装置が属する地域が変化し、自装置が地域辞書データを記憶していないと判定した場合に、基地局20から地域辞書データを受信して登録することが、上記B乃至Dに記載されている。

(か)中央演算装置31が実行する代名詞変換処理については、単語「ここ」が入力されると、GPSにより自装置の位置を計測し、位置に対応する地域辞書データ内の地名を単語「ここ」の変換候補として表示することが、上記Eに記載されている。

(き)上記(お)及び(か)から、引用文献の構成では、例えば、携帯電話機が諏訪へ移動した場合、携帯電話機は、基地局から「携帯電話機に単語『ここ』が入力された際の位置に対応する地域辞書データ」を受信することになる。

(く)上記(え)乃至(き)から、引用文献には、「前記入力された単語が入力された際の位置に対応する前記地域辞書データを基地局から受信し、当該受信した地域辞書データ内の地名を前記表示装置に前記入力された単語の前記変換候補として表示させる中央演算装置を備えた携帯電話機」が記載されているといえる。

よって、上記(あ)乃至(く)及び関連図面の記載から、引用文献には、実質的に下記の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。

「単語を入力する入力装置と、
位置に対応する地域辞書データ内の地名を、入力された単語の変換候補として表示する表示装置と、
前記入力された単語が入力された際の位置に対応する前記地域辞書データを基地局から受信し、当該受信した地域辞書データ内の地名を前記表示装置に前記入力された単語の前記変換候補として表示させる中央演算装置と、
を備えることを特徴とする携帯電話機。」


3.3 対比
(1)本件補正発明と引用発明との対応関係について
(ア)引用発明の「単語」、「入力装置」、「表示装置」、「基地局」、「中央演算装置」、「携帯電話機」は、それぞれ本件補正発明の「文字」、「入力手段」、「表示手段」、「外部装置」、「制御手段」、「携帯端末装置」に相当している。

(イ)引用発明の「位置に対応する地域辞書データ内の地名」は、位置という情報に対応したものであり、変換候補として表示される文字情報でもあるから、本件補正発明の「位置情報に対応する第1の文字情報」に相当している。

(ウ)引用発明の「入力された単語」は、入力された文字情報であり、「位置に対応する地域辞書データ内の地名」を変換候補とするものでもあるから、本件補正発明の「入力された第2の文字情報」に相当している。

(エ)上記(ア)及び(イ)の記載から、本件補正発明の「前記第2の文字情報が入力された際の位置情報に対応する前記第1の文字情報を外部装置から取得し、当該取得した第1の文字情報を前記表示手段に前記第2の文字情報の前記変換候補として他の変換候補より下位に表示させる制御手段」と、引用発明の「前記入力された単語が入力された際の位置に対応する前記地域辞書データを基地局から受信し、当該受信した地域辞書データ内の地名を前記表示装置に前記入力された単語の前記変換候補として表示させる中央演算装置」とは、「前記第2の文字情報が入力された際の位置情報に対応する前記第1の文字情報を外部装置から取得し、当該取得した第1の文字情報を前記表示手段に前記第2の文字情報の前記変換候補として表示させる制御手段」を備えた点で共通している。

(2)本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点について
上記の対応関係から、本件補正発明と引用発明は、下記の点で一致し、また相違する。

(一致点)
「文字を入力する入力手段と、
位置情報に対応する第1の文字情報を、入力された第2の文字情報の変換候補として表示する表示手段と、
前記第2の文字情報が入力された際の位置情報に対応する前記第1の文字情報を外部装置から取得し、当該取得した第1の文字情報を前記表示手段に前記第2の文字情報の前記変換候補として表示させる制御手段と、
を備えることを特徴とする携帯端末装置。」

(相違点)
本件補正発明は、「第1の文字情報を前記表示手段に前記第2の文字情報の前記変換候補として他の変換候補より下位に表示させる」ものであるのに対し、引用発明は第1の文字情報を第2の文字情報の変換候補として他の変換候補より下位に表示させてはいない点。


3.4 当審の判断
(1)相違点について
引用文献には、段落【0075】に、
「自装置内の辞書データが登録されていると判定した場合、優先順位をユーザ辞書データ、新たな地域辞書データ、従前から記憶されている地域辞書データ、共通辞書データの順に変更して登録し(ステップS110)、処理を終了する。」
と記載されていることから、引用発明では、共通辞書よりも地域辞書による変換候補が優先されて表示されることになる。

しかしながら、仮名漢字変換の分野では、一般的に用いる共通辞書、特定の分野に適した専門辞書、ユーザによって登録されるユーザ辞書など、複数の辞書を用いて仮名を漢字に変換することが行われているところ、その際に変換候補をどのような順序で表示するかについて、共通辞書の変換候補を最優先とすることや、複数の辞書の優先順位を適宜設定することは、例えば、特開平4-268948号公報(段落【0002】乃至【0003】には、文書作成装置が標準辞書、拡張辞書、新語辞書を備え、【0013】乃至【0015】には、初期設定として標準辞書が最優先に設定され、ユーザの指定により使用する辞書の優先度を設定できることが記載されている)、特開昭62-272355号公報(第3左上欄第7行乃至10行に、基本辞書が固有名詞辞書より優先されていると、最初に基本辞書より抽出された変換候補を出力することが記載されている)に記載されているように周知技術である。

してみると、複数の辞書を用いて変換候補を表示する引用発明において、地域辞書よりも共通辞書による変換候補を優先して表示させることは、格別なこととはいえない。

よって、引用発明に周知技術を採用し相違点の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

(2)本件補正発明の作用効果について
そして、本件補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。


3.5 むすび
よって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3 補正却下の決定を踏まえた検討

1.本願発明
平成24年9月26日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、平成24年1月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記「第2」「1.」の「(補正前)」の箇所に記載したとおりのものであって、再掲すると次のとおりである。

「【請求項1】
文字を入力する入力手段と、
位置情報に対応する第1の文字情報を、入力された第2の文字情報の変換候補として表示する表示手段と、
前記第2の文字情報が入力された際の位置情報に対応する前記第1の文字情報を、前記表示手段に前記第2の文字情報の前記変換候補として他の変換候補より下位に表示させる制御手段と、
を備えることを特徴とする携帯端末装置。」


2.引用文献
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献の記載事項及び引用発明は、上記「第2」「3.」「3.2」に記載したとおりである。


3.対比・判断
本願発明は、上記「第2」「2.」で検討した本件補正発明における限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要素を全て含み、さらに特定の点に限定を施したものに相当する本件補正発明が、上記「第2」「3.」「3.4」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は、平成25年7月22日付け回答書において、
「請求項1に記載された発明(以下、本願発明)は、「第2の文字情報が入力された際の位置情報に対応する前記第1の文字情報を外部装置から取得し、当該取得した第1の文字情報を前記表示手段に前記第2の文字情報の前記変換候補として他の変換候補より下位に表示させる」、という特徴的な構成を有します。
一方で、引用発明1は、自装置の位置に対応する地名を変換候補として他の変換候補より上位に表示するものであって、他の変換候補より下位に表示するものではなく、上記特徴的な構成について記載も示唆もされるものではありません。」
と主張しているが、上記「第2」「3.」「3.4」に記載したように、仮名漢字変換分野の周知技術を考慮すれば、「引用発明1」(当審決における引用発明)において、「地域辞書よりも共通辞書による変換候補を優先して表示するようにすること」は、格別なこととはいえない。
また、回答書には補正案として、
「[請求項1]
文字を入力する入力手段と、
位置情報に対応する第1の文字情報を、入力された第2の文字情報の変換候補として表示する表示手段と、
前記第2の文字情報が入力された際の位置情報に対応する前記第1の文字情報が自装置に記憶されていなければ、当該第1の文字情報を外部装置から取得し、当該取得した第1の文字情報を前記表示手段に前記第2の文字情報の前記変換候補として他の変換候補より下位に表示させる制御手段と、
を備えることを特徴とする携帯端末装置。」(下線は、請求人が回答書で記載したもの。)
を提示しているが、上記「第2」「3.」「3.2」の、
「(お)中央演算装置31が実行する地域辞書受信処理については、所定時間おきに自装置が属する地域が変化したかを判定し、自装置が属する地域が変化し、自装置が地域辞書データを記憶していないと判定した場合に、基地局20から地域辞書データを受信して登録することが、上記B乃至Dに記載されている。」
「(き)上記(お)及び(か)から、引用文献の構成では、例えば、携帯電話機が諏訪へ移動した場合、携帯電話機は、基地局から「携帯電話機に単語『ここ』が入力された際の位置に対応する地域辞書データ」を受信することになる。」
の記載を鑑みれば、引用文献にも、「前記第2の文字情報が入力された際の位置情報に対応する前記第1の文字情報が自装置に記憶されていなければ、当該第1の文字情報を外部装置から取得」することが記載されているといえるので、上記補正案を採用したとしても進歩性を肯定することはできない。


4.むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-04 
結審通知日 2013-09-10 
審決日 2013-09-26 
出願番号 特願2009-114203(P2009-114203)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長 由紀子  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 田中 秀人
原 秀人
発明の名称 携帯端末装置  

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