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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1281168
審判番号 不服2012-25412  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-21 
確定日 2013-11-07 
事件の表示 特願2008-115528「決済システムおよび決済装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月12日出願公開、特開2009-265991〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成20年4月25日の出願であって,平成23年3月3日に手続補正がなされ,平成24年6月7日付けで拒絶理由通知がなされ,同年7月31日に手続補正がなされたが,同年11月9日付けで拒絶査定がなされ,同年12月21日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成24年7月31日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「複数の装置を対象として電子決済する決済システムにおいて、
前記装置のそれぞれに対応した複数の電子マネー端末装置と、前記電子マネー端末装置と通信ネットワークを介して接続された決済装置とを具備し、
前記電子マネー端末装置は、決済用ICカードに記憶されている決済情報の書き換えを行うカード処理手段と、前記決済装置と通信を行い該決済装置の指示に基づいて前記カード処理手段との間で決済情報を送受信させるとともに前記決済装置から決済成立通知を受けた場合に前記装置に利用許可を与える決済制御手段とを具備し、
前記決済装置は、前記電子マネー端末装置を介して前記決済用ICカードから読み取った決済情報に基づいて決済処理を行うとともに該決済処理が成立した場合に前記電子マネー端末装置を介して前記決済用ICカードに新たな決済情報を書き込ませる決済処理手段を2つと、前記決済処理手段により決済処理が成立した場合に前記電子マネー端末装置に前記決済成立通知を送信する決済成立通知手段と、前記決済処理手段による決済処理に関する処理情報を前記通信ネットワーク以外の通信手段を含む通信経路で前記決済処理手段による決済処理と非同期で上位決済装置に通知する処理情報通知手段と、前記電子マネー端末装置からの決済要求を受けた際に前記処理情報通知手段が前記決済処理手段の一方の処理情報を前記上位決済装置に通知している場合は、前記決済処理手段の他方に決済処理を行わせる要求振分手段とを具備する
ことを特徴とする決済システム。」

第3 引用文献

原査定の拒絶の理由において引用された特開2005-107734号公報には,次の事項が記載されている。

ア.「【0023】
図1に示すように、この遊技場における電子マネー処理システムは、遊技店Aと、プリペイドカード管理センタBと、電子マネー管理センタCとから成る。
【0024】
遊技店Aには、台間処理機1と遊技機2からなる遊技ユニット3を複数個配置した遊技島4が設けられると共に、その遊技島4における各種遊技データ[例えば、プリペイドカードデータや、会員カードデータや、遊技機における遊技情報(出玉情報や大当たり情報など)]を上位管理装置側に中継伝送すると共に、その上位管理装置からの各種信号を遊技島4の遊技ユニット3に中継伝送する島コントローラ5と、その島コントローラ5からの各種遊技データを取得して各種遊技データの管理を行う上位管理装置となるターミナルコントローラ(T/C)6と、商品注文処理端末7とを備えて構成される。
【0025】
尚、各遊技島4(1)?4(m)(m:任意の整数)の各遊技ユニット3は、自島の島コントローラ5とLAN8等の伝送路で接続され、また、各島コントローラ5(1)?5(m)(m:任意の整数)は、ターミナルコントローラ(T/C)6とLAN9等の伝送路で接続される。」

イ.「【0029】
電子マネー管理センタCは、センターコンピュータC-1等を用いて遊技店Aのターミナルコントローラ(T/C)6と通信を行うことで、加盟店となる遊技店Aからの電子マネーカードXによる取引情報(遊技媒体Zの貸出しや商品の販売提供に伴い利用された電子マネーの金額情報を含む)を受信する。そして、その受信した取引情報に基づき加盟店となる遊技店Aに対して、利用額に応じた手数料の徴収処理を行う。
【0030】
即ち、本実施例では、従来、電子マネーカードから情報を読取るアンテナユニットが具わる台間処理機1台毎に必ず一つ必要であった電子マネー決済処理部[Edy(登録商標)モジュール]を、各台間処理機1台毎に一つづつ設ける構成を採らず、複数台の台間処理機1(1)?1(n)各々毎に具わる共用アンテナユニット11複数個に対応して、各遊技島4(1)?4(m)毎にそれぞれ設置される島コントローラ5毎に、該当する島コントローラ5に具わる複数の共用アンテナユニット11で読取られた個々の情報に基づき、それぞれ該当する台間処理機で行われる遊技媒体Zの貸出しに伴う決済処理或いは該当する台間処理機の後述の受付手段(電子マネー価値を用いて商品を購入する商品購入要求を受け付けるタッチパネル等)で受付けた商品購入要求に対応した商品の販売提供に伴う決済処理を並行して実行管理する電子マネー処理部51を1つ設ける構成を採る。
【0031】
これにより、電子マネー決済システムを利用した遊技システムを低コストで提供することができると共に、遊技場に設置される従来機器のサイズを変更しなくとも電子マネー決済システムを適用することができる。
【0032】
図2は、上記図1に示した各台間処理機1(1)?1(n)の詳細な構成を示す図である。尚、この台間処理機1は、遊技機と遊技機との台間に配置され、各遊技機毎に1対1の関係で取り付けられ、対応する遊技機で使用する遊技媒体(パチンコ玉)Zの貸出し処理を行う。
【0033】
図2に示すように、この台間処理機1は、制御部10と、共用アンテナユニット11と、表示・操作処理部12と、プリペイドカード処理部13と、遊技媒体貸出処理部14と、作業メモリ部15と、通信処理部16とを具えて構成される。
【0034】
ここで、制御部10は、この台間処理機の他の構成要素の処理動作を制御して機器全体を統括的に制御する。基本的には、カード挿入口11aに挿入されたプリペイドカードYの残高内で遊技機2で使用する遊技媒体(パチンコ玉)の貸出し処理を制御すると共に、カード挿入口11aに挿入された電子マネーカードXの残高内で遊技機2で使用する遊技媒体(パチンコ玉)の貸出し処理を制御する。特に、本実施例では、例えば、共用アンテナユニット11で読取った暗号解読前のカード情報をプリペイドカード処理部13に受け渡す処理を制御すると共に、そのプリペイドカード処理部13で暗号解読されなかった場合に該プリペイドカード処理部13から解読できない旨のレスポンスがあった場合に、その暗号化カード情報に電子マネーデータを示すカード種別識別情報を付加すると共に、予め割り振られている台識別情報(台番号情報)を付加して通信処理部16を用いて島コントローラ5に転送する処理動作を制御する。
【0035】
共用アンテナユニット11は、制御部10の制御のもと、電子マネーカードX及びプリペイドカードYのデータ読取り及び書込みを行う。具体的には、例えば、使用者が入金した金額情報が都度書込まれ、固有のIDがオフィシャルエリア(IC記録部)に書込まれている電子マネーカードXからデータ(金額情報やID)を読取ったり、後述の島コントローラ5の電子マネー処理部51の指示のもと、その電子マネーカードXのデータ(金額情報)の更新書込みを行う。」

ウ.「【0039】
遊技媒体貸出処理部14は、電子マネーカードXやプリペイドカードYの金額情報(有価価値)に基づき遊技機2で使用する遊技媒体Zを貸出す処理を行う。具体的には、この台間処理機機1では、対応して設置される遊技機からの玉貸出要求(遊技媒体貸出ボタン202の押下)に応じてカードの残高情報内でその遊技機の玉投出機構に対し遊技媒体Z(パチンコ玉)の投出指示を出す。」

エ.「【0043】
図3に示すように、この島コントローラ5は、制御部50と、電子マネー処理部51と、作業メモリ部52と、通信処理部53とを具えて構成される。
・・・(中略)・・・
【0047】
通信処理部53は、第1通信インタフェース部53-1が、LAN8を介して、自島の各遊技ユニット3からの各種情報信号を受信する通信処理を行ったり、LAN8を介して、電子マネー処理部51が上記金額情報(残高情報)の表示処理や決済処理で用いる各種情報信号を該当する遊技ユニット3との間で通信処理する。本実施例では、例えば、解読後のプリペイドカードデータや解読前の電子マネーカードデータを取得したり、暗号解読後の電子マネーカードデータに基づき残高情報を該当する遊技ユニット3に送信したり、該当する台間処理機の共用アンテナユニットに遊技媒体の貸出しに伴う金額情報の更新書込み指示を送信する。
【0048】
また、第2通信インタフェース部53-2が、LAN9を介して、この島コントローラ5の上位装置となるターミナルコントローラ(T/C)6との間で通信処理する。本実施例では、例えば、プリペイドカードYによる遊技媒体の貸出しに伴う売上情報や電子マネーカードXによる遊技媒体Zの貸出しに伴う売上情報をターミナルコントローラ(T/C)6に送信したり、電子マネーカードXによる商品購入に係わる商品発注情報を商品注文処理端末7に送信する。なお、第1通信インタフェース部53-1および第2通信インタフェース部53-2は、説明の便宜上記載したもので、実際は上記通信が1つの通信処理53により実行される(以下、同様)。」

オ.「【0058】
次に、1つの遊技島4における電子マネー処理の流れについて図5を用いて説明する。尚、この図5の例では、遊技島4(1)における処理の流れを示している。
【0059】
また、以下の説明では、台間処理機1(1)において遊技客Aにより残高「5000円」の電子マネーカードを用いた「500円」分の遊技媒体(パチンコ玉)の貸出要求と、台間処理機1(n)において遊技客Nにより残高「1000円」の電子マネーカードを用いた「150円のアイスコーヒー」の購入を希望する商品発注要求とが略同タイミングで発生し、島コントローラ5(1)の電子マネー処理部51で並行して決済処理を行う場合を例にして述べる。
【0060】
まず、台間処理機1(1)において遊技客Aが自己の所有する電子マネーカード(残高「5000円」)をカード挿入口11aに挿入すると(ステップS1)、台間処理機1(1)では、共用アンテナユニット11がカード挿入口11aに挿入されたカードの暗号化カードデータを読み取る(ステップS2)。
【0061】
そして、台間処理機1(1)では、その読取った暗号化カードデータを制御部10が取得し、プリペイドカード処理部13に受け渡す。すると、プリペイドカード処理部13が所定のプリペイドカード用の暗号解読キーを用いて暗号解読処理を行う(ステップS3)。
【0062】
ところが、この場合、電子マネーカードのデータであるため、暗号解読が行えない(ステップS4NO)、そこで、プリペイドカード処理部13は、暗号解読できなかった暗号化カードデータ[金額情報「5000円」とIDを含む]と共に暗号解読できない旨のレスポンスを制御部10に返す。すると、制御部10は、その暗号化カードデータに、電子マネーカードデータを示すカード種別識別情報を付加すると共に、予め固有に割り振られている台識別情報(例えば、1番)を付加して(ステップS5)、それらデータを通信処理部16を用いて島コントローラ5(1)に送出制御する(ステップS6)。
【0063】
これに対し、島コントローラ5(1)は、通信処理部53を介してデータを受信すると、制御部50が上記カード種別識別情報以外のデータを電子マネー処理部51に受け渡す。そして、電子マネー処理部51が暗号化カードデータ[金額情報「5000円」とIDを含む]部分に対し、所定の電子マネーカード用の暗号解読キーを用いて暗号解読処理を行う(ステップS101)。その後、島コントローラ5(1)は、電子マネー処理部51の解読処理により認識される金額情報(残高情報ともいう)「5000円」を制御部50の制御のもと、該当する台間処理機1(1)に通信処理部53を用いて送信する(ステップS102)。
【0064】
すると、台間処理機1(1)では、通信処理部16を介して上記金額情報「5000円」を受信すると(ステップS7)、タッチパネル12aに残高及びメニュー選択画面の表示を行うと共に、自機に対応して設置される遊技機2(1)の残高情報表示部201に金額情報(残高情報)「5000円」を表示させる(ステップS8)。
【0065】
その後、遊技客Aのメニュー選択操作を受付ける(ステップS9)。
【0066】
尚、ここでの例では、遊技客Aは残高「5000円」内で「500円」分の遊技媒体(パチンコ玉)の貸出要求を選択する(ステップS10)。
【0067】
すると、台間処理機1(1)では、島コントローラ5(1)に対し、「500円」分の遊技媒体(パチンコ玉)の貸出要求を通知する(ステップS11)。
【0068】
これに対し、島コントローラ5(1)では、電子マネー処理部51が減算処理を行う(ステップS103)。即ち、この場合、残高「5000円」から遊技媒体貸出のため「500円」を差し引き、減算後の残高として「4500円」を求める。その後、電子マネー処理部51が減算後の残高「4500円」の金額情報を所定の電子マネーカード用の暗号化情報に基づき暗号化データとして生成し、その暗号化データを制御部50に渡す。そして、制御部50がその暗号化データに減算指示を付加して台間処理機1(1)に転送処理制御する(ステップS104)。
【0069】
すると、台間処理機1(1)では、減算指示が付加された暗号化データ(金額情報「4500円」)を受信すると(ステップS14YES)、制御部10が共用アンテナユニット11に暗号化データ(金額情報「4500円」)を渡し、共用アンテナユニット11が挿入されている電子マネーカードの残高減算書き込み処理を行い、また、制御部10がステップS10で選択された金額分「500円」を現在表示している残高額「5000円」から減算する残高更新表示処理を行う(ステップS15)。
【0070】
その後、台間処理機1(1)では、ここでの処理が遊技媒体貸出時であるので(ステップS16YES)、選択指定された金額「500円」分の遊技媒体を貸出処理し(ステップS17)、その貸出処理完了後に減算完了通知を島コントローラ5(1)に転送する(ステップS18)。これにより、島コントローラ5(1)では、制御部50の制御のもと、上位装置となるターミナルコントローラ6に対し、電子マネーカードの売上情報(この例では、「500円」)を予め電子マネー処理部51に固有に割り振られているモジュール番号と共に転送処理する(ステップS105)。尚、商品購入時であれば、ステップS105の処理において、上記ターミナルコントローラ6への売上情報の通知処理以外に、商品注文処理端末7に遊技客Aにより選択された商品情報の転送処理を行う。」

カ.「【0073】
尚、ここでの処理の例においては、島コントローラ5(1)は、上述の台間処理機1(1)との間における電子マネー処理以外にも、台間処理機1(n)との間における電子マネー処理も並行して処理する。」

キ.「【0088】
尚、上記処理において、ターミナルコントローラ(T/C)6は、例えば、遊技店Aの1日の営業が終了した場合に、1日当たりの電子マネーによる売上情報を各電子マネー処理部のモジュール番号と共に電子マネー管理センタCに通信網9を介して取引情報として通知する。」

前記ア.?キ.によれば,引用文献には次の事項が記載されているといえる。

・前記ア.の「【0023】
図1に示すように、この遊技場における電子マネー処理システムは、遊技店Aと、プリペイドカード管理センタBと、電子マネー管理センタCとから成る。
【0024】
遊技店Aには、台間処理機1と遊技機2からなる遊技ユニット3を複数個配置した遊技島4が設けられる」の記載,
前記イ.の「【0034】・・・(中略)・・・それぞれ該当する台間処理機で行われる遊技媒体Zの貸出しに伴う決済処理或いは該当する台間処理機の後述の受付手段(電子マネー価値を用いて商品を購入する商品購入要求を受け付けるタッチパネル等)で受付けた商品購入要求に対応した商品の販売提供に伴う決済処理を並行して実行管理する電子マネー処理部51を1つ設ける構成を採る。」の記載,
前記ウ.の「この台間処理機機1では、対応して設置される遊技機からの玉貸出要求(遊技媒体貸出ボタン202の押下)に応じてカードの残高情報内でその遊技機の玉投出機構に対し遊技媒体Z(パチンコ玉)の投出指示を出す。」の記載によれば,
引用文献には,「遊技機により投出される遊技媒体の貸出に伴う決済処理を行う電子マネー処理システム」が記載されているといえる。

・前記ア.の「【0024】
遊技店Aには、・・・(中略)・・・ターミナルコントローラ(T/C)6と、商品注文処理端末7とを備えて構成される。」の記載,
前記キ.の「ターミナルコントローラ(T/C)6は、例えば、遊技店Aの1日の営業が終了した場合に、1日当たりの電子マネーによる売上情報を各電子マネー処理部のモジュール番号と共に電子マネー管理センタCに通信網9を介して取引情報として通知する。」の記載によれば,
引用文献には,「遊技店Aと電子マネー管理センタCとが,通信網9を介して接続され」が記載されているといえる(引用文献には,「通信網9」のほかに「通信網10」の記載もあるが,番号を統一して「通信網9」と表記する。)。

・前記ア.の「【0024】
遊技店Aには、台間処理機1と遊技機2からなる遊技ユニット3を複数個配置した遊技島4が設けられると共に、その遊技島4における各種遊技データ[例えば、プリペイドカードデータや、会員カードデータや、遊技機における遊技情報(出玉情報や大当たり情報など)]を上位管理装置側に中継伝送すると共に、その上位管理装置からの各種信号を遊技島4の遊技ユニット3に中継伝送する島コントローラ5と、その島コントローラ5からの各種遊技データを取得して各種遊技データの管理を行う上位管理装置となるターミナルコントローラ(T/C)6と、商品注文処理端末7とを備えて構成される。
【0025】
尚、各遊技島4(1)?4(m)(m:任意の整数)の各遊技ユニット3は、自島の島コントローラ5とLAN8等の伝送路で接続され、また、各島コントローラ5(1)?5(m)(m:任意の整数)は、ターミナルコントローラ(T/C)6とLAN9等の伝送路で接続される。」の記載,
前記イ.の「【0032】・・・(中略)・・・尚、この台間処理機1は、遊技機と遊技機との台間に配置され、各遊技機毎に1対1の関係で取り付けられ」の記載によれば,
引用文献には,「遊技店Aは、複数の遊技機2と,各遊技機毎に1対1の関係で取り付けられた台間処理機1と,島コントローラ5と,ターミナルコントローラ6とを有し,
台間処理機1と遊技機2からなる遊技ユニット3を複数個配置した遊技島4が設けられ,各遊技島4の各遊技ユニット3は、自島の島コントローラ5とLAN8で接続され,各島コントローラ5は、ターミナルコントローラ6とLAN9で接続され」が記載されているといえる。

・前記イ.の「【0033】
図2に示すように、この台間処理機1は、制御部10と、共用アンテナユニット11と、表示・操作処理部12と、プリペイドカード処理部13と、遊技媒体貸出処理部14と、作業メモリ部15と、通信処理部16とを具えて構成される。
【0034】
ここで、制御部10は、この台間処理機の他の構成要素の処理動作を制御して機器全体を統括的に制御する。」の記載によれば,
引用文献には,「台間処理機1は,台間処理機の他の構成要素の処理動作を制御する制御部10と,共用アンテナユニット11と,遊技媒体貸出処理部14と、通信処理部16とを備え」が記載されているといえる。

・前記エ.の「【0043】
図3に示すように、この島コントローラ5は、制御部50と、電子マネー処理部51と、作業メモリ部52と、通信処理部53とを具えて構成される。」の記載によれば,
引用文献には,「島コントローラ5は、制御部50と,電子マネー処理部51と,通信処理部53とを備え」が記載されているといえる。

・前記イ.の「【0030】 ・・・(中略)・・・該当する島コントローラ5に具わる複数の共用アンテナユニット11で読取られた個々の情報に基づき、それぞれ該当する台間処理機で行われる遊技媒体Zの貸出しに伴う決済処理或いは該当する台間処理機の後述の受付手段(電子マネー価値を用いて商品を購入する商品購入要求を受け付けるタッチパネル等)で受付けた商品購入要求に対応した商品の販売提供に伴う決済処理を並行して実行管理する電子マネー処理部51を1つ設ける構成を採る。」の記載によれば,
引用文献には,「前記電子マネー処理部51は,島コントローラ5に1つ設けられ,遊技媒体Zの貸出しに伴う決済処理を並行して実行管理し」が記載されているといえる。

・前記オ.の「【0060】
まず、台間処理機1(1)において遊技客Aが自己の所有する電子マネーカード(残高「5000円」)をカード挿入口11aに挿入すると(ステップS1)、台間処理機1(1)では、共用アンテナユニット11がカード挿入口11aに挿入されたカードの暗号化カードデータを読み取る(ステップS2)。」の記載,
前記イ.の「【0035】
共用アンテナユニット11は、制御部10の制御のもと、電子マネーカードX及びプリペイドカードYのデータ読取り及び書込みを行う。具体的には、例えば、使用者が入金した金額情報が都度書込まれ、固有のIDがオフィシャルエリア(IC記録部)に書込まれている電子マネーカードXからデータ(金額情報やID)を読取ったり、」の記載によれば,
引用文献には,「台間処理機1において遊技客が電子マネーカードをカード挿入口11aに挿入すると(ステップS1),共用アンテナユニット11は電子マネーカードのIC記録部から金額情報を含む暗号化カードデータを読み取り(ステップS2)」が記載されているといえる。

・前記オ.の「【0062】
ところが、この場合、電子マネーカードのデータであるため、暗号解読が行えない(ステップS4NO)、そこで、プリペイドカード処理部13は、暗号解読できなかった暗号化カードデータ[金額情報「5000円」とIDを含む]と共に暗号解読できない旨のレスポンスを制御部10に返す。すると、制御部10は、その暗号化カードデータに、電子マネーカードデータを示すカード種別識別情報を付加すると共に、予め固有に割り振られている台識別情報(例えば、1番)を付加して(ステップS5)、それらデータを通信処理部16を用いて島コントローラ5(1)に送出制御する(ステップS6)。」の記載によれば,
引用文献には,「台間制御機1の制御部10は,当該暗号化カードデータを受けとり,通信処理部16を用いて島コントローラ5に送出制御し,」

・前記オ.の「【0063】
これに対し、島コントローラ5(1)は、通信処理部53を介してデータを受信すると、制御部50が上記カード種別識別情報以外のデータを電子マネー処理部51に受け渡す。そして、電子マネー処理部51が暗号化カードデータ[金額情報「5000円」とIDを含む]部分に対し、所定の電子マネーカード用の暗号解読キーを用いて暗号解読処理を行う(ステップS101)。その後、島コントローラ5(1)は、電子マネー処理部51の解読処理により認識される金額情報(残高情報ともいう)「5000円」を制御部50の制御のもと、該当する台間処理機1(1)に通信処理部53を用いて送信する(ステップS102)。」の記載によれば,
引用文献には,「島コントローラは,通信処理部53を介して暗号化カードデータを受信して,電子マネー処理部51に受け渡し,暗号化カードデータの金額情報を台間処理機1に送信し(ステップS101,S102)」が記載されているといえる。

・前記オ.の「【0064】
すると、台間処理機1(1)では、通信処理部16を介して上記金額情報「5000円」を受信すると(ステップS7)、タッチパネル12aに残高及びメニュー選択画面の表示を行うと共に、自機に対応して設置される遊技機2(1)の残高情報表示部201に金額情報(残高情報)「5000円」を表示させる(ステップS8)。」の記載によれば,
引用文献には,「台間処理機1は、タッチパネル12aに前記金額情報とメニュー選択画面を表示し(ステップS7,S8)」が記載されているといえる。

・前記オ.の「【0065】
その後、遊技客Aのメニュー選択操作を受付ける(ステップS9)。
【0066】
尚、ここでの例では、遊技客Aは残高「5000円」内で「500円」分の遊技媒体(パチンコ玉)の貸出要求を選択する(ステップS10)。
【0067】
すると、台間処理機1(1)では、島コントローラ5(1)に対し、「500円」分の遊技媒体(パチンコ玉)の貸出要求を通知する(ステップS11)。」の記載によれば,
引用文献には,「台間処理機1は,遊技客のメニュー選択操作を受付け,選択された所定金額分の遊技媒体の貸出要求を島コントローラに通知し(ステップS10、S11)」が記載されているといえる。

・前記オ.の「【0068】
これに対し、島コントローラ5(1)では、電子マネー処理部51が減算処理を行う(ステップS103)。即ち、この場合、残高「5000円」から遊技媒体貸出のため「500円」を差し引き、減算後の残高として「4500円」を求める。その後、電子マネー処理部51が減算後の残高「4500円」の金額情報を所定の電子マネーカード用の暗号化情報に基づき暗号化データとして生成し、その暗号化データを制御部50に渡す。そして、制御部50がその暗号化データに減算指示を付加して台間処理機1(1)に転送処理制御する(ステップS104)。」の記載,
前記エ.の「【0047】
通信処理部53は、第1通信インタフェース部53-1が、LAN8を介して、自島の各遊技ユニット3からの各種情報信号を受信する通信処理を行ったり、LAN8を介して、電子マネー処理部51が上記金額情報(残高情報)の表示処理や決済処理で用いる各種情報信号を該当する遊技ユニット3との間で通信処理する。本実施例では、・・・(中略)・・・該当する台間処理機の共用アンテナユニットに遊技媒体の貸出しに伴う金額情報の更新書込み指示を送信する。」の記載によれば,
引用文献には,「島コントローラ5の電子マネー処理部51は,金額情報から所定金額を差し引く減算処理を行い(ステップS103),減算後の残高の金額情報を暗号化して,暗号化データを制御部50に渡し,
島コントローラ5の制御部50が,その暗号化データに減算指示を付加して台間処理機1に転送処理制御し(ステップS104)、通信処理部53が、暗号化データを台間処理機1に送信して,金額情報の更新書込みを指示し,」が記載されているといえる。

・前記イ.の「【0035】
共用アンテナユニット11は、制御部10の制御のもと、電子マネーカードX及びプリペイドカードYのデータ読取り及び書込みを行う。具体的には、・・・(中略)・・・後述の島コントローラ5の電子マネー処理部51の指示のもと、その電子マネーカードXのデータ(金額情報)の更新書込みを行う。」の記載,
前記オ.の「【0069】
すると、台間処理機1(1)では、減算指示が付加された暗号化データ(金額情報「4500円」)を受信すると(ステップS14YES)、制御部10が共用アンテナユニット11に暗号化データ(金額情報「4500円」)を渡し、共用アンテナユニット11が挿入されている電子マネーカードの残高減算書き込み処理を行い」の記載によれば,
引用文献には,「台間処理機1は、減算指示が付加された暗号化データを受信すると(ステップS14YES)、制御部10が共用アンテナユニット11に暗号化データを渡し、共用アンテナユニット11が電子マネーカードに暗号化データの更新書込みを行い(ステップS15)」が記載されているといえる。

・前記オ.の「【0070】
その後、台間処理機1(1)では、ここでの処理が遊技媒体貸出時であるので(ステップS16YES)、選択指定された金額「500円」分の遊技媒体を貸出処理し(ステップS17)、その貸出処理完了後に減算完了通知を島コントローラ5(1)に転送する(ステップS18)。」の記載,
前記ウ.の「【0039】
遊技媒体貸出処理部14は、電子マネーカードXやプリペイドカードYの金額情報(有価価値)に基づき遊技機2で使用する遊技媒体Zを貸出す処理を行う。具体的には、この台間処理機機1では、対応して設置される遊技機からの玉貸出要求(遊技媒体貸出ボタン202の押下)に応じてカードの残高情報内でその遊技機の玉投出機構に対し遊技媒体Z(パチンコ玉)の投出指示を出す。」の記載によれば,
引用文献には,「台間処理機1は,遊技媒体貸出処理部14によって遊技機の玉投出機構に対し遊技媒体の投出指示を出し(ステップS17),減算完了通知を島コントローラ5に転送し(ステップS18)」が記載されているといえる。

・前記ア.の「【0024】・・・(中略)・・・その島コントローラ5からの各種遊技データを取得して各種遊技データの管理を行う上位管理装置となるターミナルコントローラ(T/C)6」の記載,
前記オ.の「【0070】
その後、台間処理機1(1)では、ここでの処理が遊技媒体貸出時であるので(ステップS16YES)、選択指定された金額「500円」分の遊技媒体を貸出処理し(ステップS17)、その貸出処理完了後に減算完了通知を島コントローラ5(1)に転送する(ステップS18)。これにより、島コントローラ5(1)では、制御部50の制御のもと、上位装置となるターミナルコントローラ6に対し、電子マネーカードの売上情報(この例では、「500円」)を予め電子マネー処理部51に固有に割り振られているモジュール番号と共に転送処理する(ステップS105)。」の記載,
前記エ.の「【0048】
また、第2通信インタフェース部53-2が、LAN9を介して、この島コントローラ5の上位装置となるターミナルコントローラ(T/C)6との間で通信処理する。本実施例では、例えば、プリペイドカードYによる遊技媒体の貸出しに伴う売上情報や電子マネーカードXによる遊技媒体Zの貸出しに伴う売上情報をターミナルコントローラ(T/C)6に送信したり、電子マネーカードXによる商品購入に係わる商品発注情報を商品注文処理端末7に送信する。なお、第1通信インタフェース部53-1および第2通信インタフェース部53-2は、説明の便宜上記載したもので、実際は上記通信が1つの通信処理53により実行される(以下、同様)。」の記載によれば,
引用文献には,「島コントローラ5は,減算完了通知を受信すると,通信処理部53が,LAN9を介して,上位管理装置となるターミナルコントローラ6に電子マネーカードの売上情報を転送処理し(ステップS105)」が記載されているといえる。

・前記キ.の「【0088】
尚、上記処理において、ターミナルコントローラ(T/C)6は、例えば、遊技店Aの1日の営業が終了した場合に、1日当たりの電子マネーによる売上情報を各電子マネー処理部のモジュール番号と共に電子マネー管理センタCに通信網9を介して取引情報として通知する。」の記載によれば,
引用文献には,「ターミナルコントローラ6は、例えば,遊技店Aの1日の営業が終了した場合に、1日当たりの電子マネーによる売上情報を電子マネー管理センタCに通信網9を介して取引情報として通知し」が記載されているといえる。

・前記イ.の「【0029】
電子マネー管理センタCは、センターコンピュータC-1等を用いて遊技店Aのターミナルコントローラ(T/C)6と通信を行うことで、加盟店となる遊技店Aからの電子マネーカードXによる取引情報(遊技媒体Zの貸出しや商品の販売提供に伴い利用された電子マネーの金額情報を含む)を受信する。そして、その受信した取引情報に基づき加盟店となる遊技店Aに対して、利用額に応じた手数料の徴収処理を行う。」の記載によれば,
引用文献には,「電子マネー管理センタCは、受信した取引情報に基づき加盟店となる遊技店Aに対して、利用額に応じた手数料の徴収処理を行う」が記載されているといえる。

したがって,引用文献には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。

<引用発明>
遊技機により投出される遊技媒体(パチンコ玉)の貸出に伴う決済処理を行う電子マネー処理システムにおいて,
遊技店Aと電子マネー管理センタCとが,通信網9を介して接続され,
遊技店Aは、複数の遊技機2と,各遊技機毎に1対1の関係で取り付けられた台間処理機1と,島コントローラ5と,ターミナルコントローラ6とを有し,
台間処理機1と遊技機2からなる遊技ユニット3を複数個配置した遊技島4が設けられ,各遊技島4の各遊技ユニット3は、自島の島コントローラ5とLAN8で接続され,各島コントローラ5は、ターミナルコントローラ6とLAN9で接続され,
台間処理機1は,台間処理機の他の構成要素の処理動作を制御する制御部10と,共用アンテナユニット11と,遊技媒体貸出処理部14と、通信処理部16とを備え,
島コントローラ5は、制御部50と,電子マネー処理部51と,通信処理部53とを備え,
前記電子マネー処理部51は,島コントローラ5に1つ設けられ,遊技媒体Zの貸出しに伴う決済処理を並行して実行管理し,
台間処理機1において遊技客が電子マネーカードをカード挿入口11aに挿入すると(ステップS1),共用アンテナユニット11は電子マネーカードのIC記憶部から金額情報を含む暗号化カードデータを読み取り(ステップS2),
台間制御機1の制御部10は,当該暗号化カードデータを受けとり,通信処理部16を用いて島コントローラ5に送出制御し,
島コントローラは,通信処理部53を介して暗号化カードデータを受信して,電子マネー処理部51に受け渡し,暗号化カードデータの金額情報を台間処理機1に送信し(ステップS101,102),
台間処理機1は、タッチパネル12aに前記金額情報とメニュー選択画面を表示し(ステップS7,S8),
台間処理機1は,遊技客のメニュー選択操作を受付け,選択された所定金額分の遊技媒体の貸出要求を島コントローラに通知し(ステップS10、S11),
島コントローラ5の電子マネー処理部51は,金額情報から所定金額を差し引く減算処理を行い(ステップS103),減算後の残高の金額情報を暗号化して,暗号化データを制御部50に渡し,
島コントローラ5の制御部50が,その暗号化データに減算指示を付加して台間処理機1に転送処理制御し(ステップS104)、通信処理部53が、暗号化データを台間処理機1に送信して,金額情報の更新書込みを指示し,
台間処理機1は、減算指示が付加された暗号化データを受信すると(ステップS14YES)、制御部10が共用アンテナユニット11に暗号化データを渡し、共用アンテナユニット11が電子マネーカードに暗号化データの更新書込みを行い(ステップS15),
台間処理機1は,遊技媒体貸出処理部14によって遊技機の玉投出機構に対し遊技媒体の投出指示を出し(ステップS17),減算完了通知を島コントローラ5に転送し(ステップS18),
島コントローラ5は,減算完了通知を受信すると,通信処理部53が,LAN9を介して,上位管理装置となるターミナルコントローラ6に電子マネーカードの売上情報を転送処理し(ステップS105),
ターミナルコントローラ6は、例えば,遊技店Aの1日の営業が終了した場合に、1日当たりの電子マネーによる売上情報を電子マネー管理センタCに通信網9を介して取引情報として通知し,
電子マネー管理センタCは,受信した取引情報に基づき加盟店となる遊技店Aに対して,利用額に応じた手数料の徴収処理を行う,
電子マネー処理システム。」

第4 対比

次に,本願発明と引用発明とを対比する。

・引用発明の「複数の遊技機2」は,本願発明の「複数の装置」に相当する。

・引用発明の「電子マネー処理システム」は,複数の遊技機2を対象として,遊技媒体(パチンコ玉)の貸出しに伴う決済処理を行うから,本願発明の「複数の装置を対象として電子決済する決済システム」に相当する。

・引用発明の「台間処理機1」は,「各遊技機毎に1対1の関係で取り付け」られ,電子マネーカードを扱い,LAN8に接続された端末装置といえるから,本願発明の「前記装置のそれぞれに対応した複数の電子マネー端末装置」に相当する。

・引用発明の「島コントローラ5」は,台間処理機1とLAN8を介して接続され,決済処理を行う装置であるから,本願発明の「前記電子マネー端末装置と通信ネットワークを介して接続された決済装置」に相当する。

・引用発明の「電子マネーカード」はIC記録部を有し,本願発明の「決済用ICカード」に相当する。

・引用発明の「電子マネーカード」に記憶された「金額情報」は,本願発明の「決済情報」に相当する。

・引用発明の「共用アンテナユニット11」は,電子マネーカードから金額情報を読み出し,決済により減算された金額情報を書き込むから,本願発明の「決済用ICカードに記憶されている決済情報の書き換えを行うカード処理手段」に相当する。

・引用発明の「減算指示」は,島コントローラ5による決済処理の後に,台間処理機に送信されるから,本願発明の「決済成立通知」に相当する。

・引用発明の「制御部10」は,台間処理機に備えられ,通信処理部を制御して金額情報(暗号化カードデータ)を島コントローラに転送し,島コントローラから減算指示が付加された暗号化データを受信し,その暗号化データを共用アンテナユニット11に渡す。
また,引用発明の「遊技媒体貸出処理部14」は,島コントローラから減算指示を付加した暗号化データを受信すると,遊技機の玉投出機構に対し遊技媒体Z(パチンコ玉)の投出指示を出す。
したがって,引用発明の「制御部10」及び「遊技媒体貸出処理部14」は,全体として,本願発明の「前記決済装置と通信を行い該決済装置の指示に基づいて前記カード処理手段との間で決済情報を送受信させるとともに前記決済装置から決済成立通知を受けた場合に前記装置に利用許可を与える決済制御手段」に相当する。

・引用発明の「電子マネー処理部51」は,島コントローラ5に設けられ,台間制御機1によって電子マネーカードから読み取られた金額情報(暗号化カードデータ)に基づいて所定金額を差し引く減算処理を行う。この減算処理は,本願発明の「決済処理」に相当する。
また,「電子マネー処理部51」は,電子マネーカードに減算処理後の金額情報を書き込ませるといえる。
したがって,引用発明の「電子マネー処理部51」は,本願発明の「前記電子マネー端末装置を介して前記決済用ICカードから読み取った決済情報に基づいて決済処理を行うとともに該決済処理が成立した場合に前記電子マネー端末装置を介して前記決済用ICカードに新たな決済情報を書き込ませる決済処理手段」に相当する。
なお,引用発明の「電子マネー処理部51」は,島コントローラ5に「1つ」あるのに対し,本願発明の「決済処理手段」は,決済装置に「2つ」ある点で相違する。

・引用発明の「通信処理部53」は,島コントローラ5に設けられ,電子マネー処理部51により決済処理が行われた場合に,台間処理機1に減算指示が付加された暗号化データを送信する。
したがって,引用発明の「通信処理部53」における,減算指示が付加された暗号化データの送信手段は,本願発明の「前記決済処理手段により決済処理が成立した場合に前記電子マネー端末装置に前記決済成立通知を送信する決済成立通知手段」に相当する。

・引用発明の「売上情報」は,本願発明の「前記決済処理手段による決済処理に関する処理情報」に相当する。

・引用発明の「通信処理部53」は,島コントローラ5に設けられ,LAN9を介して,上位管理装置となるターミナルコントローラ6に電子マネーカードの売上情報を転送処理する。
したがって,引用発明の「通信処理部53」における売上情報の送信手段と,本願発明の「前記決済処理手段による決済処理に関する処理情報を前記通信ネットワーク以外の通信手段を含む通信経路で前記決済処理手段による決済処理と非同期で上位決済装置に通知する処理情報通知手段」は,「前記決済処理手段による決済処理に関する処理情報を通信経路で上位装置に通知する処理情報通知手段」の点で共通する。

したがって,本願発明と引用発明は,以下の点で一致する。

<一致点>
「複数の装置を対象として電子決済する決済システムにおいて、
前記装置のそれぞれに対応した複数の電子マネー端末装置と、前記電子マネー端末装置と通信ネットワークを介して接続された決済装置とを具備し、
前記電子マネー端末装置は、決済用ICカードに記憶されている決済情報の書き換えを行うカード処理手段と、前記決済装置と通信を行い該決済装置の指示に基づいて前記カード処理手段との間で決済情報を送受信させるとともに前記決済装置から決済成立通知を受けた場合に前記装置に利用許可を与える決済制御手段とを具備し、
前記決済装置は、前記電子マネー端末装置を介して前記決済用ICカードから読み取った決済情報に基づいて決済処理を行うとともに該決済処理が成立した場合に前記電子マネー端末装置を介して前記決済用ICカードに新たな決済情報を書き込ませる決済処理手段と、前記決済処理手段により決済処理が成立した場合に前記電子マネー端末装置に前記決済成立通知を送信する決済成立通知手段と、前記決済処理手段による決済処理に関する処理情報を通信経路で上位装置に通知する処理情報通知手段とを具備する
ことを特徴とする決済システム。」

そして,本願発明と引用発明は,以下の点で相違する。

<相違点1>
決済処理手段が,本願発明では「2つ」あるのに対し,引用発明では「1つ」である点。

<相違点2>
処理情報通知手段による通信経路が,本願発明では「前記通信ネットワーク以外の通信手段を含む通信経路」であり,電子マネー端末装置と決済装置とを接続する通信ネットワーク(実施例のイントラネット)以外の通信手段(実施例のインターネット)を含む通信経路であるのに対し,引用発明では「LAN9」であり,台間処理機1と島コントローラ5とを接続する「LAN8」以外の通信手段を含む通信経路ではない点。

<相違点3>
上位装置が,本願発明では「上位決済装置」であるのに対し,引用発明では「上位管理装置となるターミナルコントローラ6」であり,決済装置ではない点。

<相違点4>
処理情報通知手段による通知が,本願発明では「前記決済処理手段による決済処理と非同期」であるのに対し,引用発明では,島コントローラ5が減算完了通知を受信すると通知するところから,決済処理手段による決済処理と「同期」する点。

<相違点5>
本願発明は「前記電子マネー端末装置からの決済要求を受けた際に前記処理情報通知手段が前記決済処理手段の一方の処理情報を前記上位決済装置に通知している場合は、前記決済処理手段の他方に決済処理を行わせる要求振分手段」を具備するのに対し,引用発明はこの要求振分手段を具備しない点。

第5 判断

<相違点1><相違点5>について

引用発明において,台間処理機からの決済要求が発生する時点は遊技客次第であるから,島コントローラが,その決済要求を受けた際に,売上情報の転送処理(ステップS105)を実行している場合もあることは当然想定される。その場合,島コントローラは,売上情報の転送処理と決済要求に基づく金額情報の減算処理(ステップS103)の各決済処理を,並行して実行することは明らかである。
引用発明は,これらの決済処理を1つの電子マネー処理部51によって実行するが,複数の処理を並行して実行するために,複数の処理手段と,処理要求を複数の処理手段に振り分ける要求振分手段とを用いることは,例えば,分散処理やマルチタスク処理などで周知である。分散処理では,処理要求を複数のハードウエア処理手段に振り分けることにより,並行して処理を行う。また,マルチタスク処理では,1つのコンピュータが複数のタスク処理を並行して実行するが,この機能を手段として見れば,各タスクを実行する複数の処理手段と,複数の処理手段に処理要求を振り分ける要求振分手段があるといえる。
したがって,引用発明において,決済処理を並行して実行する1つの電子マネー処理部51に代えて,2つの決済処理を並行して実行する2つの決済処理手段と要求振分手段とを用い,台間処理機から決済要求を受けた際に,一方の決済処理手段が売上情報の転送処理を実行している場合に,決済要求を他方の決済処理手段に振り分け,これらの処理を並行して実行することは,容易に想到し得ることである。

<相違点2><相違点3>について

島コントローラ5は,売上情報をターミナルコントローラ6に転送するが,ターミナルコントローラ6は,その売上情報をさらに電子マネー管理センタCに通知するから,結局,売上情報は,電子マネー管理センタCに通知されるものである。したがって,島コントローラが,売上情報を電子マネー管理センタCに通知することも格別困難ではない。
その場合,売上情報の通信経路は,LAN8以外の通信網9を含む通信経路,すなわち,「前記通信ネットワーク以外の通信手段を含む通信経路」ということができ,また,電子マネー管理センタCは,決済処理に係る手数料の徴収処理を行うから,「上位決済装置」ということができる。
してみると,引用発明において,島コントローラ5の通信処理部53が,通信網9を含む通信経路で,売上情報を電子マネー管理センタCに通知するようにして,その通信処理部53を,「前記通信ネットワーク以外の通信手段を含む通信経路」で,処理情報を「上位決済装置」に通知する処理情報通知手段とすることは,容易に想到し得ることである。

<相違点4>について

遊技店Aから電子マネー管理センタCに通知される売上情報が,例えば,遊技店Aの1日の営業が終了した場合に通知されることや,遊技店に対する手数料の徴収処理に用いられることを考慮すれば,売上情報の通知が,電子マネーカードに対する金額情報の減算処理と「同期」する必要がないことは明らかである。
したがって,引用発明において,島コントローラの通信処理部53(処理情報通知手段)が,売上情報(処理情報)を,金額情報の減算処理(決済処理)と「非同期」で,電子マネー管理センタC(上位決済装置)に通知することは容易に想到し得ることである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-30 
結審通知日 2013-09-03 
審決日 2013-09-24 
出願番号 特願2008-115528(P2008-115528)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田付 徳雄  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 西山 昇
須田 勝巳
発明の名称 決済システムおよび決済装置  
代理人 木村 高久  

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