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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1281223
審判番号 不服2012-2220  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-06 
確定日 2013-11-06 
事件の表示 特願2008-189467「編集可能な個人辞書を提供して活用する方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月25日出願公開、特開2009-140467〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年7月23日(パリ条約による優先権主張2007年12月4日、韓国)を出願日とする出願であって、平成22年12月15日付けで拒絶理由の通知がなされ、平成23年3月17日付けで手続補正書の提出がなされ、同年9月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成24年2月6日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書の提出がなされ、当審において、同年8月29日付けで前置報告書を利用した審尋がなされたものである。



第2 平成24年2月6日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成24年2月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正内容
平成24年2月6日付けの手続補正(以下,「本件補正」という)は、本件補正前の平成23年3月17日付け手続補正書により補正された請求項1を引用する請求項5の内容を、

「 【請求項1】
公衆に通用する辞書データを収録している辞書データベース及び個人別に前記辞書データベースに含まれた前記辞書データに関する情報のうち、少なくとも一部を任意に選択して生成した個人辞書データベースのうち少なくとも一つを利用して、使用者に編集可能な個人辞書を提供する方法であって、
前記辞書データベース及び前記個人辞書データベースに含まれたそれぞれの辞書データは少なくとも一つの語彙を含み、それぞれの語彙は少なくとも一つの意味に対応し、コンピュータにより実行されるステップが、
(a)前記使用者から入力された検索条件を受信する段階と、
(b)前記辞書データベース及び前記個人辞書データベースのうち少なくとも一つに格納されている辞書データのうち、前記検索条件に合致する特定語彙に関する情報をロードしてディスプレイする段階と、
(c)前記語彙に関する情報に含まれた少なくとも一つの意味のうち、前記使用者から入力された少なくとも一部の意味に関する選択情報を受信する段階と、
(d)前記受信した選択情報に基づいて個人辞書データを生成し、これを前記使用者に属する個人辞書データベースに格納する段階と、
(e)前記使用者に属する前記個人辞書データベースに格納された個人辞書データに対する編集要求を受信した場合に、前記編集要求に対応して前記使用者によって入力された入力データを用いて、前記個人辞書データベースに格納されている該当の個人辞書データを更新する段階と、
を含むことを特徴とする編集可能な個人辞書を提供する方法。

【請求項5】
(f)前記辞書データベースまたは前記個人辞書データベースに格納されたデータに基づいて、前記使用者に対して前記語彙に関する学習診断テストを提供する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の編集可能な個人辞書を提供する方法。」

から、

「 【請求項1】
公衆に通用する辞書データを収録している辞書データベース及び個人別に前記辞書データベースに含まれた前記辞書データに関する情報のうち、少なくとも一部を任意に選択して生成した個人辞書データベースのうち少なくとも一つを利用して、使用者に編集可能な個人辞書を提供する方法であって、
前記辞書データベース及び前記個人辞書データベースに含まれたそれぞれの辞書データは少なくとも一つの語彙を含み、それぞれの語彙は少なくとも一つの意味に対応し、コンピュータにより実行されるステップが、
(a)前記使用者から入力された検索条件を受信する段階と、
(b)前記辞書データベース及び前記個人辞書データベースのうち少なくとも一つに格納されている辞書データのうち、前記検索条件に合致する特定語彙に関する情報をロードしてディスプレイする段階と、
(c)前記語彙に関する情報に含まれた少なくとも一つの意味のうち、前記使用者から入力された少なくとも一部の意味に関する選択情報を受信する段階と、
(d)前記受信した選択情報に基づいて個人辞書データを生成し、これを前記使用者に属する個人辞書データベースに格納する段階と、
(e)前記使用者に属する前記個人辞書データベースに格納された個人辞書データに対する編集要求を受信した場合に、前記編集要求に対応して前記使用者によって入力された入力データを用いて、前記個人辞書データベースに格納されている該当の個人辞書データを更新する段階と、
(f)前記辞書データベースまたは前記個人辞書データベースに格納されたデータに基づいて、前記使用者に対して前記語彙に関する学習診断テストを提供する段階と、
を含み、
前記(f)段階は、前記個人辞書データベースに格納されたデータに基づいて前記使用者に対して前記語彙の意味を問う学習診断テストを提供する場合に、前記使用者が入力した答えの正誤を、当該個人辞書データベースに格納された内容を参照して処理することを特徴とする編集可能な個人辞書を提供する方法。」

に、変更する補正を含むものである。


2.補正の適否
上記補正は、補正前の請求項5における「(f)段階」の処理について、「前記(f)段階は、前記個人辞書データベースに格納されたデータに基づいて前記使用者に対して前記語彙の意味を問う学習診断テストを提供する場合に、前記使用者が入力した答えの正誤を、当該個人辞書データベースに格納された内容を参照して処理する」ことを限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。


3.引用文献
(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-293295号公報(以下、「引用文献1」という)には、下記の事項が記載されている。

(あ)「【0053】
[1.1 構成]
電子辞書には、国語辞書、英和辞書、和英辞書、英英辞書、ことわざ辞典等の各種電子辞書データ(辞書DB)が内蔵されている。この辞書DBには、見出語に対応づけて、当該見出語を説明するための文字データや、画像データ、動画データ、音声データ等の説明情報が記憶される。ユーザは辞書種別を選択して単語を入力することにより、当該単語の説明情報を表示させることができる。」

(い)「【0057】
[1.1.1 記憶装置]
ROM20は、各種初期設定、ハードウェアの検査、或いは必要なプログラムのロード等を行うための初期プログラムを格納する読み出し専用メモリである。CPU10は、電子辞書1の電源投入時においてこの初期プログラムを実行することにより、電子辞書1の動作環境を設定する。
【0058】
また、ROM20は、メニュー表示処理、各種設定処理、各種検索処理等の電子辞書1の動作に係る各種プログラムや、電子辞書1の備える検索機能、表示機能、設定機能等の種々の機能を実現するためのプログラム等を格納すると共に、辞書DBとして英和辞書DB202を格納する。また、置換テーブル204を格納し、さらにプログラムとしてメインプログラム210を格納する。
【0059】
英和辞書DB202は、英和辞書に関するコンテンツを記憶している辞書DBである。図4に示すように、英和辞書DB02には、見出語(例えば、「consistent」)と説明情報とが対応づけて記憶されている。さらに、説明情報には、語義番号(例えば、「1」)と、語義別説明情報(例えば、「1 [叙述]<人・言行が>…」とが記憶されている。」

(う)「【0065】
EEPROM40は、各種データファイル等の情報を記憶する電気的に書き換え可能な不揮発性メモリである。EEPROM40には、データファイル402が記憶されている。ここで、データファイルとは、熟語帳表示処理又は単語帳表示処理において参照されるファイルであり、第1登録部分である第1文字列と第2登録部分である第2文字列とを対応づけて記憶するファイルである。
【0066】
熟語帳404は、図8に示すように第1文字列として熟語見出語(上段に置換後の文字列が記憶されており、下段に置換前(指定文字列)が記憶されている)が、第2文字列として熟語説明部分情報とが記憶されている。また、単語帳406は、図9に示すように第1文字列として単語見出語が、第2文字列として指定説明部分情報とが記憶されている。さらに、第1文字列及び第2文字列に対応づけてチェック用のフラグで表されるチェック状態が記憶されている。」

(え)「【0069】
CPU10は、例えば英和辞書キー15が押下されるとメイン処理が実行される。メイン処理において、CPU10は熟語帳キー7aが押下されると熟語帳表示処理を実行する。また、単語帳キー7cガ押下されると単語帳表示処理を実行する。他方、入力文字列が入力された場合には、CPU10は入力文字列に適合する見出語の説明情報を表示する。そして、熟語登録キー7bが押下された場合には、CPU10は熟語帳登録処理を実行し、単語登録キー7dが押下された場合には単語帳登録処理を実行する。」

(お)「【0104】
[1.3.2 第2動作例]
続いて、第2動作例として、単語帳登録処理及び単語帳表示処理を実行する場合について、図17を用いて説明する。
【0105】
(1)単語の登録
図17(a)は、入力文字列に適合する見出語「consistent」の説明情報が表示されている表示画面W150の一例である。表示画面W150が表示されている状態から、単語登録キー7dが押下されると(図10のステップA20;Yes)、CPU10は単語帳登録処理を実行する(図10のステップA22)。
【0106】
単語帳登録処理が実行された場合の表示画面W152の一例を示したのが図17(b)である。図17(b)に示すように、領域R150にメッセージが表示されることにより、ユーザに登録を促している。さらに、説明情報の中で指定された文字列に反転表示M150及び反転表示M152を施す。ここでは、反転表示M150によって指定された文字列「〔…と〕一致する」を指定説明部分情報とし、下線T1が付されている単語見出語「consistent」と、語義番号「1」とに対応づけて単語データ格納領域304に記憶する。また、反転表示M152によって指定された文字列「〔言行・主義などで〕一貫した」を指定説明部分情報とし、単語見出語「consistent」と、語義番号「3」とに対応づけて単語データ格納領域304に記憶する。そして、単語登録キー7dが押下されると(ステップD16;Yes)、CPU10は単語データ格納領域304に記憶された単語データを単語帳406に追記する。このとき、CPU10は、単語見出語を第1文字列とし、語義番号と指定説明部分情報とを併せた文字列を第2文字列として単語帳406に記憶する。
【0107】
(2)単語の表示
図17(c)は、単語帳406に記憶されている見出語と指定説明部分情報を表示した表示画面W154の一例を示す図である。CPU10は、見出語に対応する指定説明部分情報を単語帳406から読み出して、表示画面W154に表示する(ステップE20)。具体的には、単語見出語「consitent」(反転表示M154)が表示されている。さらに、語義番号「1」及び選択された文字列「〔…と〕一致する」と、語義番号「3」及び選択された文字列「〔言行・主義などで〕一貫した」とが表示されている。」

(か)「【0155】
[3.5 変形例]
なお、本実施形態において、第1文字列に問題文(例えば例文)と第2文字列に解答文(例えば訳文)と指定することにより例文を学習することとして説明したが、これに限られない。例えば、例文問題帳422に代えて、第1実施形態で利用された熟語帳404又は単語帳406を用いて学習することとしても良い。
【0156】
簡単に、熟語帳404を用いた場合について説明をすると、最初の問題文(第1文字列)として熟語見出語を読み出す。この際に、熟語見出語に対応するチェック状態が「ON」である場合には、CPU10は、熟語見出語を表示部60に表示しない(ステップH16;Yes)。
【0157】
ここで、熟語見出語に対応するチェック状態が「OFF」である場合には、CPU10は問題文の代わりに熟語見出語を表示する(ステップH18)。そして、決定キー9が押下されると、CPU10は解答文の代わりに熟語見出語に対応する熟語説明部分情報を表示する(ステップH22)。
【0158】
そして、チェックキー13が押下されると、CPU10はチェック状態を「ON」にして、熟語帳404を更新する(ステップH24?H28)。そして、熟語見出語が他に記憶されている場合には、次の熟語見出語を表示部60に表示する。」

(き)上記(あ)乃至(う)には、見出語と見出語に対応付けられた説明情報からなる英和辞書DB202がROM20内に格納され、第1文字列である単語見出語と第2文字列である指定説明部分情報とからなる単語帳がEEPROM40内に記憶されていることが記載されている。

(く)上記(え)には、英和辞書キーの押下によりメイン処理が実行され、入力文字列が入力されると、入力文字列に適合する見出語の説明情報が表示されることが記載されている。

(け)上記(お)及び図17には、単語帳登録処理として、英和辞書の単語見出語と該単語見出語に対応する説明情報が表示されている状態で、ユーザにより該説明情報の中の文字列が指定されて単語登録キーが押下されると、単語見出語を第1文字列としユーザに指定された文字列である指定説明部分情報を第2文字列として単語帳に記憶することが記載されている。

(こ)上記(き)乃至(け)の記載から、引用文献1には、入力文字列が入力されると、英和辞書DBから入力文字列に適合する見出語と該見出語の説明情報とが読み出されて表示され、ユーザにより該説明情報の中の文字列が指定されると、単語見出語を第1文字列とし指定説明部分情報を第2文字列として単語帳に記憶することが記載されている。

(さ)引用文献1には、直接的に単語帳に記憶した単語に基づいて学習テストを実施することは記載されていないが、上記(か)に、第1文字列を問題文とし第2文字列を解答文とすることで学習が実施できること、例文問題帳の代わりに熟語帳や単語帳を用いることができること、熟語帳を用いる場合には、最初の問題文として熟語見出語を読み出して表示部に表示し、決定キーが押下されると熟語見出語に対応する熟語説明部分情報を表示することが記載されていることを鑑みれば、引用文献1には、単語帳の第1文字列から単語見出語を読み出して問題を表示し、単語帳の第2文字列から単語見出語に対応する指定説明部分情報を読み出して解答を表示することが間接的に記載されているといえる。

よって、上記(あ)乃至(さ)及び関連図面の記載から、引用文献1には、実質的に下記の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。

「英和辞書DBと単語帳とを有し、
入力文字列が入力されると、英和辞書DBから入力文字列に適合する見出語と該見出語の説明情報とが読み出されて表示され、ユーザにより該説明情報の中の文字列が指定されると、単語見出語を第1文字列とし指定説明部分情報を第2文字列として単語帳に記憶し、
学習時には単語帳の第1文字列から単語見出語を読み出して問題を表示し、単語帳の第2文字列から単語見出語に対応する指定説明部分情報を読み出して解答を表示する、
単語帳を提供する方法。」

(2)引用文献2について
原査定の備考欄において参考文献として引用された特開2007-219824号公報(以下、「引用文献2」という)には、下記の事項が記載されている。

(し)「【0009】
また、本発明に係る電子辞書の制御方法は、文字情報を入力する文字情報入力手段と、辞書情報を記憶した辞書情報記憶手段と、表示手段とを具備する電子辞書の制御方法であって、前記文字情報入力手段により入力された文字情報に対応する単語の辞書情報を前記辞書情報記憶手段から検索する検索手順と、前記検索手順により検索された単語の履歴を格納する履歴情報格納手順と、抽出条件を指定する抽出条件指定手順と、前記履歴情報格納手順で格納された単語から前記指定された抽出条件に該当する単語を抽出する抽出手順と、前記抽出した単語を単語帳として使用されるデータ領域に登録する単語帳登録手順と、前記単語帳登録手順で登録された単語の辞書情報に基づいて作成したテスト問題を前記表示手段に表示するテスト問題表示手順とからなることを特徴とする。」

(す)「【0027】
単語帳の作成が終了すると、ステップS203又はステップS204で行った設定に従い、単語帳の先頭に登録された単語(検索された時刻が最も新しい単語)から順次、当該単語に対応する辞書情報に対して見出し語部分を隠す加工を行った後に、表示手段14に表示して単語テストを実施する(ステップS206)。単語テストが終了すると、制御手段11は一連の単語テストの結果を表示手段14に表示する(ステップS207)。
【0028】
続いて、図3を参照し、ステップS206における制御手段11の処理を詳細に説明する。
制御手段11は、試験回数カウンタ及び正解回数カウンタを0にセットし、履歴情報に登録された単語の中から、検索された日時が最も新しい単語に対応する辞書情報を表示手段14に表示する(ステップS301)。ここで、制御手段11は、当該辞書情報から見出し語の表示を隠す加工を行い(表示制御手段)、ユーザの入力するエリアを設けた上で図4(c)に示す画面を表示手段14に表示する(テスト問題表示手段)。この場合、ユーザは隠された見出し語を解答することになる。
【0029】
続いて、入力手段12はユーザからの操作による解答入力を受け付け、その解答入力を制御手段11へと出力する。制御手段11は入力手段12から解答入力を入力するまで待機し、入力した場合には(ステップS302:Yes)、続いて正解判定を行う(ステップS303)。なお、本実施形態では、制御手段11が正解判定を行う形態としているが、ユーザが正解判定を行う形態としてもよい。
【0030】
ステップS302における解答入力と上記隠された見出し語とが一致する場合には、制御手段11は正解と判定し、正解回数カウンタを1増やした上で図5(d)に示す画面を表示手段14に表示する。一方、解答入力と上記隠された見出し語とが一致しなかった場合には、制御手段11は不正解と判定し、制御手段11は不正解である旨を表示手段14に表示する。」

よって、上記(し)及び(す)の記載及び関連図面の記載から、引用文献2には、実質的に下記の事項(以下、「引用文献2記載事項」という)が記載されている。

「単語帳を備える電子辞書において、単語帳に登録した単語に基づいてユーザに対して単語テストを実施し、ユーザが入力した答えに対して正解となる文言と一致するか否かにより正解判定を行うこと。」


4.対比
(1)本件補正発明と引用発明との対応関係について
(ア)引用文献1の段落【0194】?【0202】には、英和辞書DBが内蔵されている電子辞書の形態がスタンドアローン型に限定されるものではなく、インターネットを介して電子辞書端末とサーバを接続することで、電子辞書端末側に英和辞書DB等を記憶せず、サーバ側にEEPROM40に対応する記憶部714を設けたクライアント/サーバ型として実現できることが記載されていることから、引用発明の「英和辞書DB」及び「単語帳」は、サーバ側に記憶された形態も含まれており、そのような形態では、「英和辞書DB」は公衆で利用されるものであり、かつ、「単語帳」は該サーバを使用する使用者に対して個人別に設けられるものであることは明らかであるから、引用発明の「英和辞書DB」及び「単語帳」は、本件補正発明の「辞書データベース」及び「個人辞書データベース」に対応している。
また、引用発明の「単語帳」は、「説明情報の中の文字列が指定されると、単語見出語を第1文字列とし指定説明部分情報を第2文字列」として記憶したものであるから、英和辞書DBに含まれた説明情報のうち、少なくとも一部を任意に選択して生成したものであるともいえる。
してみると、本件補正発明と引用発明は、「公衆に通用する辞書データを収録している辞書データベース及び個人別に前記辞書データベースに含まれた前記辞書データに関する情報のうち、少なくとも一部を任意に選択して生成した個人辞書データベースのうち少なくとも一つを利用して、使用者に個人辞書を提供する方法」である点で共通している。

(イ)引用発明の「英和辞書DB」には見出語と該見出語の説明情報が含まれ、引用発明の「単語帳」には単語見出語と指定説明部分情報が含まれていることから、引用発明の「英和辞書DB」及び「単語帳」も、「前記辞書データベース及び前記個人辞書データベースに含まれたそれぞれの辞書データは少なくとも一つの語彙を含み、それぞれの語彙は少なくとも一つの意味に対応」したものとなっている。

(ウ)引用発明における単語帳への記憶処理や学習のための処理はコンピュータによって実行されるものであることは明らかである。

(エ)引用発明では、「入力文字列」は英和辞書DBを検索するために利用されるものであり、「見出語」と「該見出語の説明情報」は検索条件である「入力文字列」に適合したものが英和辞書DBから検索結果として読み出されたものであるから、引用発明の「入力文字列」、「見出語」、「該見出語の説明情報」は、本件補正発明の「検索条件」、「特定語彙」、「特定語彙に関する情報」に相当している。
してみると、引用発明の「入力文字列が入力されると、英和辞書DBから入力文字列に適合する見出語と該見出語の説明情報とが読み出されて表示され」は、本件補正発明の「(a)前記使用者から入力された検索条件を受信する段階と、(b)前記辞書データベース及び前記個人辞書データベースのうち少なくとも一つに格納されている辞書データのうち、前記検索条件に合致する特定語彙に関する情報をロードしてディスプレイする段階と」に相当している。

(オ)引用発明のユーザにより指定された「該説明情報の中の文字列」は、本件補正発明の「前記語彙に関する情報に含まれた少なくとも一つの意味のうち、前記使用者から入力された少なくとも一部の意味に関する選択情報」に相当し、また、引用発明の「指定説明部分情報」はユーザにより指定された「該説明情報の中の文字列」である。
してみると、引用発明の「ユーザにより該説明情報の中の文字列が指定される」は、本件補正発明の「(c)前記語彙に関する情報に含まれた少なくとも一つの意味のうち、前記使用者から入力された少なくとも一部の意味に関する選択情報を受信する段階」に相当し、引用発明の「単語見出語を第1文字列とし指定説明部分情報を第2文字列として単語帳に記憶し」は、本件補正発明の「(d)前記受信した選択情報に基づいて個人辞書データを生成し、これを前記使用者に属する個人辞書データベースに格納する段階と」に相当している。

(カ)引用発明では、ユーザに対して単語帳に格納された単語見出語を問題として表示することで、該単語見出語の意味を問う学習テストを行っていることから、本件補正発明と引用発明とは、「(f)前記辞書データベースまたは前記個人辞書データベースに格納されたデータに基づいて、前記使用者に対して前記語彙に関する学習テストを提供する段階と、
を含み、
前記(f)段階は、前記個人辞書データベースに格納されたデータに基づいて前記使用者に対して前記語彙の意味を問う学習テストを提供する」ものである点で共通している。

(2)本件補正発明と引用発明の一致点について
上記の対応関係から、本件補正発明と引用発明は、下記の点で一致する。

「公衆に通用する辞書データを収録している辞書データベース及び個人別に前記辞書データベースに含まれた前記辞書データに関する情報のうち、少なくとも一部を任意に選択して生成した個人辞書データベースのうち少なくとも一つを利用して、使用者に個人辞書を提供する方法であって、
前記辞書データベース及び前記個人辞書データベースに含まれたそれぞれの辞書データは少なくとも一つの語彙を含み、それぞれの語彙は少なくとも一つの意味に対応し、コンピュータにより実行されるステップが、
(a)前記使用者から入力された検索条件を受信する段階と、
(b)前記辞書データベース及び前記個人辞書データベースのうち少なくとも一つに格納されている辞書データのうち、前記検索条件に合致する特定語彙に関する情報をロードしてディスプレイする段階と、
(c)前記語彙に関する情報に含まれた少なくとも一つの意味のうち、前記使用者から入力された少なくとも一部の意味に関する選択情報を受信する段階と、
(d)前記受信した選択情報に基づいて個人辞書データを生成し、これを前記使用者に属する個人辞書データベースに格納する段階と、
(f)前記辞書データベースまたは前記個人辞書データベースに格納されたデータに基づいて、前記使用者に対して前記語彙に関する学習テストを提供する段階と、
を含み、
前記(f)段階は、前記個人辞書データベースに格納されたデータに基づいて前記使用者に対して前記語彙の意味を問う学習テストを提供することを特徴とする個人辞書を提供する方法。」

(3)本件補正発明と引用発明の相違点について
本件補正発明と引用発明は、下記の点で相違する。

(相違点A)
本件補正発明は、「(e)前記使用者に属する前記個人辞書データベースに格納された個人辞書データに対する編集要求を受信した場合に、前記編集要求に対応して前記使用者によって入力された入力データを用いて、前記個人辞書データベースに格納されている該当の個人辞書データを更新する段階」を有し、編集可能な個人辞書を提供する方法であるのに対し、引用文献1には個人辞書の編集を行うことが記載されていないため引用発明が個人辞書を編集するものであるか定かではない点。

(相違点B)
本件補正発明は、「前記使用者が入力した答えの正誤を、当該個人辞書データベースに格納された内容を参照して処理する」ことを含む「学習診断テスト」を提供する段階を有するものであるのに対し、引用発明は正誤の処理は行わないため学習診断テストは行っていない点。


5.当審の判断
(1)相違点Aについて
電子辞書では、英和辞書や国語辞書のように最初から電子辞書内に記録されている辞書以外に、電子辞書の使用者の学習等の便宜を図るため、最初から記録されている辞書とは別個に使用者が辞書で検索した単語を登録できる単語帳を備えることも広く普及しているところ、このような単語帳に登録したデータに対して、使用者がデータの修正や削除等の編集を行ってデータの更新することは、例えば、特開2003-43905号公報(段落【0012】、【0026】、【0059】には、電子辞書から検索された単語により作成された単語帳ファイルを表示して、利用者が内容を修正したり削除することが記載されている)や、特開2006-301066号公報(段落【0025】には、記憶装置16に記憶された単語帳データがメモリ14に読み出され、データの登録や削除の更新が行われてから記憶装置16に書き戻されることが記載されている)に記載されているように周知技術である。

また、カシオ計算機株式会社が電子辞書「XD-GT6800」を2006年2月24日に発売したものであることがカシオ計算機株式会社のホームページに記載されており(公知日に関して、Internet Archive <URL:http://web.archia.org> にて2006年4月11日時点のhttp://web.archive.org/web/20060411152749/http://casio.jp/exword/products/varie.htmlを参照)、該電子辞書「XD-GT6800」には、単語帳に登録した単語や例文を削除する機能が搭載されている(具体的な編集内容については、取扱説明書(Internet Archive <URL:http://web.archia.org> にて、2006年5月16日時点のhttp://web.archive.org/web/20060516072626/http://casio.jp/support/manual/exword/XDGT6800.htmlにPDFファイルとして添付されているhttp://web.archive.org/liveweb/http://ftp.casio.co.jp/pub/manual/exword/XDGT6800_2.pdf)の271頁「登録した単語/例文を削除する」欄を参照)ことから、本願優先日前に発売されていた電子辞書では、単語帳に登録したデータを削除する機能が普通に設けられていたと認められる。

一方、引用文献1には、単語帳が書き換え可能なEEPROMに記録されることが段落【0065】に記載されているので、引用発明の単語帳に記憶された単語見出語等のデータは、単語帳に記憶された後に修正や削除等の編集により更新が可能なものとなっていること、ユーザが記憶できる容量は限定されていることから記憶が必要無くなった単語については適宜削除する必要がある。

以上の点を考慮すれば、引用発明も単語帳に記憶したデータに対し削除等の編集を行うことができるものであると考えるのが自然である。

よって、引用発明において、「『(e)前記使用者に属する前記個人辞書データベースに格納された個人辞書データに対する編集要求を受信した場合に、前記編集要求に対応して前記使用者によって入力された入力データを用いて、前記個人辞書データベースに格納されている該当の個人辞書データを更新する段階』を有し、編集可能な個人辞書を提供する方法」とすることは、格別なものとはいえない。


(2)相違点Bについて
引用発明の学習テストでは、正誤の判定は行っていないが、単語帳の単語見出語を問題文として表示するだけでなく、単語帳の単語見出語に対応する指定説明部分情報を正解として表示するものである。

そして、引用発明と同様に単語帳を用いた学習テストとして、引用文献2には上記第2 3.(2)に記載したように、
「単語帳を備える電子辞書において、単語帳に登録した単語に基づいてユーザに対して単語テストを実施し、ユーザが入力した答えに対しての正解となる文言と一致するか否かにより正解判定を行うこと。」
が実質的に記載されている。

してみると、引用発明に対して引用文献2に記載された事項を適用し、ユーザが入力した答えに対して指定説明部分情報と文言が一致するか否かにより正解判定を行うことで、学習診断テストを提供するようにすることに格別の困難性は認められない。

よって、引用発明に引用文献2に記載された事項を適用して、「『前記使用者が入力した答えの正誤を、当該個人辞書データベースに格納された内容を参照して処理する』ことを含む『学習診断テスト』を提供する段階を含むものとすることは、当業者が容易に想到し得たものである。


(3)本件補正発明の作用効果について
また、本件補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。


6.むすび
よって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3 補正却下の決定を踏まえた検討

1.本願発明
平成24年2月6日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、平成23年3月17日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1を引用する請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
公衆に通用する辞書データを収録している辞書データベース及び個人別に前記辞書データベースに含まれた前記辞書データに関する情報のうち、少なくとも一部を任意に選択して生成した個人辞書データベースのうち少なくとも一つを利用して、使用者に編集可能な個人辞書を提供する方法であって、
前記辞書データベース及び前記個人辞書データベースに含まれたそれぞれの辞書データは少なくとも一つの語彙を含み、それぞれの語彙は少なくとも一つの意味に対応し、コンピュータにより実行されるステップが、
(a)前記使用者から入力された検索条件を受信する段階と、
(b)前記辞書データベース及び前記個人辞書データベースのうち少なくとも一つに格納されている辞書データのうち、前記検索条件に合致する特定語彙に関する情報をロードしてディスプレイする段階と、
(c)前記語彙に関する情報に含まれた少なくとも一つの意味のうち、前記使用者から入力された少なくとも一部の意味に関する選択情報を受信する段階と、
(d)前記受信した選択情報に基づいて個人辞書データを生成し、これを前記使用者に属する個人辞書データベースに格納する段階と、
(e)前記使用者に属する前記個人辞書データベースに格納された個人辞書データに対する編集要求を受信した場合に、前記編集要求に対応して前記使用者によって入力された入力データを用いて、前記個人辞書データベースに格納されている該当の個人辞書データを更新する段階と、
を含むことを特徴とする編集可能な個人辞書を提供する方法。

【請求項5】
(f)前記辞書データベースまたは前記個人辞書データベースに格納されたデータに基づいて、前記使用者に対して前記語彙に関する学習診断テストを提供する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の編集可能な個人辞書を提供する方法。」


2.引用文献
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及び引用文献2の記載事項、引用発明は、上記第2 3.に記載したとおりである。


3.対比・判断
本願発明は、上記第2 2.で検討した本件補正発明における限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要素を全て含み、さらに特定の点に限定を施したものに相当する本件補正発明が、上記第2 5.に記載したとおり、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


4.むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明、引用文献2記載事項及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-05 
結審通知日 2013-06-11 
審決日 2013-06-27 
出願番号 特願2008-189467(P2008-189467)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 誠  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 金子 幸一
田中 秀人
発明の名称 編集可能な個人辞書を提供して活用する方法及びシステム  
代理人 小川 英宣  
代理人 高野 弘晋  
代理人 水野 勝文  
代理人 岸田 正行  
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