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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1281236
審判番号 不服2012-12730  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-04 
確定日 2013-11-06 
事件の表示 特願2005-272284「柔軟な材料製の容器とその製造方法及び製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月 6日出願公開、特開2006- 89137〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成17年9月20日(優先権主張2004年9月20日、欧州特許庁)の特許出願であって、平成23年4月11日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月19日に手続補正がなされ、平成24年3月13日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、平成24年7月4日に本件審判の請求とともに手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、平成25年2月14日付けで審尋がなされ、同年5月20日に回答書が提出されたものである。

第2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について補正をするものであって、請求項1について、補正前後の記載は、以下のとおりである。

(1)補正前
「底壁(a)と、
前記底壁(a)から実質的に直角に立っている複数の側壁(b)と、
前記複数の側壁(b)の間に配置され、かつブランクの角部の近傍にかつ複数の側壁(b)と前記複数の接続壁(c)との間で配置されている部分に襞を付けて襞部(d)を形成することによって得られ、かつ前記複数の接続壁(c)と、
外方へ折られている上周縁部(10)とを備えている、外周縁部(10)の襞付け及び折り曲げによって、単層又は複数層のシート材料製の多角形状のブランク(2)から得られる、柔軟な材料製の容器。」

(2)補正後
「底壁(a)と、
前記底壁(a)から実質的に直角に立っている複数の側壁(b)と、
前記複数の側壁(b)の間に配置され、かつブランクの角部の近傍にかつ複数の側壁(b)と前記複数の接続壁(c)との間で配置されている部分に襞を付けて襞部(d)を形成することによって得られ、かつ前記複数の接続壁(c)と、
外方へ折られている上周縁部(10)とを備えている、外周縁部(10)の襞付け及び折り曲げによって、単層又は複数層のシート材料製の正方形状のブランク(2)から得られる、柔軟な材料製の容器。」

2.補正の適否
本件補正の請求項1についての補正は、「多角形状のブランク(2)」を「正方形状のブランク(2)」とするものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か(いわゆる独立特許要件)について検討する。

(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、上記1.(2)のとおりのものと認める。ただし、最初の「前記複数の接続壁(c)」の「前記」については、それ以前に「複数の接続壁(c)」はないから、明らかな誤記である。

(2)刊行物に記載された発明
これに対し、原査定の拒絶理由で引用された刊行物である特開昭60-90131号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(第2ページ右上欄第2?6行)
「本発明の目的は従来試みられたことのない薄いAl箔等の金属箔を有する多層プラスチツク基材により構成された容器本体を有する缶様容器特に缶詰容器として従来の金属缶に代つて使用できるような缶様容器を提供することにある。」

(第2ページ右下欄第3?12行)
「第1図は本発明の容器を構成する容器本体(角型容器本体)の斜視図を示す。第1図にて1は内容物を収容(充填)する収納部であり、収納部1は底板(壁)2と当該底板の四辺に立設された側板(壁)3とから成る。又第1図にて、4は肩部であり、肩部4は前記側板3の上端に当該側板に対してほぼ直角方向に突出し、連設されている。
又第2図に第1図に図示の容器本体の展開図を示した。」

(第2ページ右下欄第20行?第3ページ左上欄第4行)
「本発明に係る容器本体は側板3’が折目線5により内側に折曲され、底板2’の周縁に連設して立設され、この側板3’に連設された肩部4’が折目線6により、側板3’のほぼ直角方向に外側に折曲されている。」

(第3ページ左上欄第10行?右上欄第5行)
「第2図において11A,11B,12A,12B,13A,13B,14A,14Bは多層基材の余りである。
本発明では該多層基材の余りを各コーナー部(第2図では四隅7,8,9,10)において折込んである。これを多層基材の余り11Aを例にとつて説明する。即ち第2図において、多層基材の余り11Aを折目線15により多層基材16側に折り曲げ、同時に多層基材17を折目線18により多層基材16側に折曲げる。このように多層基材11Aを折込むことにより、多層基材の余り(折込部)11Aの表面が多層基材16の表面に接合し、多層基材の余り(折込部)11Aの裏面が多層基材17の裏面に接合し、折込部11Aと多層基材16、17との三重構造を構成する。」

(第3ページ右下欄第10?16行)
「上記成形に際して、一連の連続した多層基材から打抜きした多層基材の各コーナー部を、第2図に示すように、例えば、鋸歯状にカツト36しておき、多層基材の余り11A,11Bの折込みに際し、肩部の端線37A,38A,39A;37B,38B,39Bを一線に揃えるようにしておくのがよい。」

(第1図、第2図)
打抜きした多層基材の四辺に立設された側板3の間に接続壁が配置され、多層基材のコーナー部の近傍で、複数の側板3と複数の接続壁との間の部分に、折目線15、18により折り曲げた三重構造が形成されていること、折目線15、18により折り曲げた三重構造が肩部4にも形成されていること。

これらを、補正発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。

「底板2と、
前記底板2から四辺に立設された側板3と、
前記四辺に立設された側板3の間に配置され、かつ各コーナー部を鋸歯状にカツトした多層基材のコーナー部の近傍に、複数の側板3と複数の接続壁との間で配置されている部分である多層基材の余り11Aを折目線15により多層基材16側に折り曲げ、多層基材17を折目線18により多層基材16側に折り曲げた三重構造を形成することによって得られ、かつ前記複数の接続壁と、
外側に折曲されている肩部4とを備えている、肩部4の折り曲げによって、薄いAl箔等の金属箔を有する多層プラスチック基材製の打抜きした多層基材から得られる、角型容器。」

(3)対比
補正発明と刊行物1発明とを、技術常識を踏まえ、対比する。
刊行物1発明の「底板2」は補正発明の「底壁(a)」に相当し、同様に「四辺に立設された」は「立っている複数の」に、「側板3」は「側壁(b)」に、「カツトした多層基材」は「ブランク」に、「コーナー部」は「角部」に、「外側に折曲されている肩部4」は「外方へ折られている上周縁部(10)」及び「外周縁部(10)」に、「折り曲げ」は「襞付け及び折り曲げ」に、「多層プラスチック基材」は「単層又は複数層のシート材料」に、それぞれ相当する。
刊行物1発明の「多層基材の余り11Aを折目線15により多層基材16側に折り曲げ、多層基材17を折目線18により多層基材16側に折り曲げた三重構造」と、補正発明の「襞を付けて襞部(d)」とは、「襞を付けられた襞部」である限りにおいて一致する。

したがって、補正発明と刊行物1発明とは、次の点で一致している。
「底壁と、
前記底壁から立っている複数の側壁と、
前記複数の側壁の間に配置され、かつブランクの角部の近傍にかつ複数の側壁と前記複数の接続壁との間で配置されている部分に襞を付けられた襞部を形成することによって得られ、かつ前記複数の接続壁と、
外方へ折られている上周縁部とを備えている、外周縁部の襞付け及び折り曲げによって、単層又は複数層のシート材料製のブランクから得られる、容器。」

そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。
相違点1:「複数の側壁」について、補正発明は底壁から「実質的に直角に」立っているが、刊行物1発明は明らかでない点。
相違点2:「襞を付けられた襞部」について、補正発明は「襞を付けて襞部(d)」であるが、刊行物1発明は「多層基材の余り11Aを折目線15により多層基材16側に折り曲げ、多層基材17を折目線18により多層基材16側に折り込んだ三重構造」である点。
相違点3:「ブランク」の形状について、補正発明は「正方形状」であるが、刊行物1発明は「各コーナー部を鋸歯状」の「角型」である点。
相違点4:「ブランク」の材質について、補正発明は「柔軟な材料製」であるが、刊行物1発明は「薄いAl箔等の金属箔を有する多層プラスチック基材」である点。

(4)相違点の検討
相違点1について検討する。
底壁から側壁が「実質的に直角に」形成された容器は、周知であり、いかなる角度とするかは、用途等に応じて、適宜選択すべき事項にすぎない。

相違点2について検討する。
補正発明の「襞を付けられた襞部」は、その文言上、「襞を付けられた襞部」における折り目の上下関係を特定するものではない。このことは、補正発明(請求項1)を限定する請求項3で、折り目の上下関係について特定していることからみても、明らかである。
よって、刊行物1発明の「多層基材の余り11Aを折目線15により多層基材16側に折り曲げ、多層基材17を折目線18により多層基材16側に折り込んだ三重構造」が、補正発明の「襞を付けられた襞部」に含まれることは明らかであるから、この点は、実質的相違点ではない。
仮に、実質的相違点であるとしても、折り目の上下関係については、二者択一であり、適宜選択しうる設計的事項にすぎない。

相違点3について検討する。
補正発明の明細書段落0028には、以下の記載がある。
「図2及び3に示すように、形成された容器は、上縁部に関して外方に突出している角部15を有している。被覆シートを当てた後に、容器の上縁部は、実質的に矩形の境界線を得るように、切り取られる又は打ち抜かれる。」
すなわち、補正発明は、ブランクが「正方形状」であるため、得られる容器の上縁部は、角部が外方に突出する。そのため、得られる容器の上縁部を「正方形状」とする場合、容器の上縁部を、切り取り、又は打ち抜く必要がある。
刊行物1発明においては、上記(2)の(第3ページ右下欄第10?16行)として摘記したとおり、コーナー部が「鋸歯状」であるため、得られる容器の上縁部は「一線に揃える」「角型」容器となる。
「正方形」の容器は、ありふれた形状であり、珍しいものではないから、刊行物1発明において、「正方形」容器とすることは、用途等、必要に応じて選択しうる事項にすぎない。
刊行物1発明において、「各コーナー部を鋸歯状」としている意義は、上記のとおり、容器の上縁部が「一線に揃う」ことにある。そして、上縁部が「一線に揃う」ことは、内容物を入れるという容器の本来機能上、必要のない機能である。
よって、製造工数・コスト削減という課題のもと、刊行物1発明において、必要のない機能を実現するためのものであるコーナー部を「鋸歯状」とすることを止めることに、困難性は認められない。
また、補正発明は、上記のとおり、容器の上縁部を、容器形成「後」に、切り取り、又は打ち抜くものを含む。
「切り取り、又は打ち抜く」工程は、刊行物1発明においては、コーナー部を「鋸歯状」とするため容器形成「前」に行っているが、かかる工程は、容器形成「前」に行う必然性はなく、最終製品に至る工程のいずれかで行えば良いものである。
そうであれば、「切り取り、又は打ち抜く」工程を、容器形成「後」とすることは、適宜選択すべき事項にすぎない。
以上から、相違点3は、格別なものではない。

相違点4について検討する。
補正発明の明細書段落0017?0018には、以下の記載がある。
「本発明の容器は、・・・非常に薄いアルミニウム層と結合した、特に単層又は複数層のプラスチック製の柔軟な材料で作られている。
容器は、3次元トレイ形状を有する容器に一定容量と垂直方向の堅さを与えるように、角部近傍の領域が襞を付けられる、内方及び外方へ適切に折られる、・・・ブランクから得られる。」
すなわち、補正発明の「柔軟な材料製」とは、「非常に薄いアルミニウム層と結合した、特に単層又は複数層のプラスチック製」のものを含み、「適切に折られる」ことが可能なものである。
刊行物1発明のものも、「薄いAl箔等の金属箔を有する多層プラスチック基材」であって、「折り曲げ」可能である。
よって、この点は、実質的相違点ではない。

以上のことから、補正発明は、刊行物1発明、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は、回答書で、概略「八角形」である旨の限定を希望する旨、主張しているが、かかる主張には、法的根拠がない。
仮に、その旨限定したとしても、「八方形」の容器は、ありふれた形状であり、珍しいものではないから、この点は、用途等、必要に応じて選択しうる事項にすぎない。

3.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし13に係る発明は、平成23年7月19日付けで補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2.1.(1)に示す請求項1に記載されたとおりである。

2.刊行物等
これに対して、原査定の際にあげられた刊行物及びその記載内容は、上記第2.2.(2)に示したとおりである。

3.対比・検討
本願発明は、補正発明において付加された事項を削除するものである。
そうすると、本願発明も、上記第2.2.(4)と同様の理由により、刊行物1発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-05 
結審通知日 2013-06-11 
審決日 2013-06-24 
出願番号 特願2005-272284(P2005-272284)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
P 1 8・ 575- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 楠永 吉孝  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 渡邊 真
栗林 敏彦
発明の名称 柔軟な材料製の容器とその製造方法及び製造装置  
代理人 青木 篤  
代理人 三橋 庸良  
代理人 島田 哲郎  
代理人 森本 有一  
代理人 篠田 拓也  
代理人 三橋 真二  

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