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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1281767
審判番号 不服2013-4601  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-11 
確定日 2013-11-14 
事件の表示 特願2007-225385「自立型袋」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月19日出願公開、特開2009- 57071〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成19年8月31日の出願であって、平成24年4月19日付けで拒絶理由が通知され、同年6月19日に手続補正がなされたが、同年12月25日付けで拒絶をすべき旨の査定がされた。
これに対し、平成25年3月11日に本件審判の請求と同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、同年5月17日付けで審尋がなされたところ、同年7月12日に回答書が提出されたものである。

第2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。

(1)補正前
「少なくとも紙基材と最内層に熱接着性樹脂層が積層された紙基材積層シートでなる二枚の胴部形成用シートの熱接着性樹脂層面を対向して配置し、該胴部形成用シート間の下端部に最内層に少なくとも熱接着性樹脂層を備えた積層シートでなる底部形成用シートを最内層面を外面にして中央で山折りして挿入し、周縁を熱接着してなる自立型袋であって、
前記二枚の胴部形成用シートの側辺と上辺とからなる一方の上隅部に外方に突出した注出口部を設け、
前記注出口部は注出軸方向が斜め上方に延びるように形成され、
前記注出口部には注出軸方向に直線状の注出口部形成用罫線が1本のみ、前記二枚の胴部形成用シートにそれぞれ施されており、
前記注出口部の周縁が熱接着され先端を切り取って内容物を注ぎ出す構成を備えていることを特徴とする自立型袋。」

(2)補正後
「少なくとも紙基材と最内層に熱接着性樹脂層が積層された紙基材積層シートでなる二枚の胴部形成用シートの熱接着性樹脂層面を対向して配置し、該胴部形成用シート間の下端部に最内層に少なくとも熱接着性樹脂層を備えた積層シートでなる底部形成用シートを最内層面を外面にして中央で山折りして挿入し、周縁を熱接着してなる自立型袋であって、
前記胴部形成用シートを構成する紙基材積層シートは、自立型袋の総重量に対して、紙基材の占める重量割合が50%以上であり、
前記二枚の胴部形成用シートの側辺と上辺とからなる一方の上隅部に外方に突出した注出口部を設け、
前記注出口部は注出軸方向が斜め上方に延びるように形成され、
前記注出口部には注出軸方向に直線状の注出口部形成用罫線が1本のみ、前記二枚の胴部形成用シートにそれぞれ施されており、
前記注出口部の周縁が熱接着され先端を切り取って内容物を注ぎ出す構成を備えていることを特徴とする自立型袋。」

2.補正の適否
請求人が審判請求書の【請求の理由】の(3)(3-2)で主張するとおり、本件補正は、請求項1において、胴部形成用シートについて「前記胴部形成用シートを構成する紙基材積層シートは、自立型袋の総重量に対して、紙基材の占める重量割合が50%以上であり、」という限定を追加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正の特許請求の範囲の請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か(いわゆる独立特許要件)について検討する。

(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された明細書、特許請求の範囲、及び、図面の記載からみて、上記1.(2)のとおりのものと認める。

(2)刊行物に記載された発明
これに対し、原査定の拒絶理由で引用され、本件出願日前に頒布された刊行物である特開2001-213444号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、改良された自立袋に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来、相対向する一対の側面部と、底面部とを有し、内容物の充填後に密封されて、上方に向かうに従って横断面の断面積が漸減する立体形状をなす、スタンディングパウチと称される樹脂フィルム製の自立袋が、詰替用組成物の収容容器等として家庭用品の分野を中心に汎用されている。斯かる自立袋においては、上端部角部等を切除して注出口を形成し、そこから内容物を注ぎ出すようになっている。
【0003】しかし、従来の自立袋は、容易に変形するため、詰替用組成物等の内容物を安定して他の容器内に注入することができず、内容物をこぼしたり、手を汚すおそれがあった。また、陳列時においても、袋が変形したり折れ曲がったりすることにより、表面に施された各種表示の内容が読み取り難くなったり、外観が悪化したりする不都合があった。特に省資源化のためにフィルム厚を薄くしたものは、このような問題が顕著であった。特開平11-208646号公報には、外装用の紙製容器を、樹脂フィルム製の袋本体に被せるようにした容器が提案されているが、紙製容器と袋本体からなるため、材料の使用量が多く、また構造が複雑であるため、容易且つ安価に製造することができない。
【0004】従って、本発明の目的は、内容物を安定して注出可能であり、外観に優れ、樹脂使用量を低減して容易且つ安価に製造することのできる自立袋を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、相対向する一対の側面部と、底面部とを有し、内容物の充填後に密封されて、上方に向かうに従って横断面の断面積が漸減する立体形状をなす自立袋において、少なくとも一つの側面部が、紙層と樹脂層とが積層された積層材からなり、該積層材は、該樹脂層を袋の内面側に向けて配されている自立袋を提供することにより、上記の目的を達成したものである。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。第1及び第2実施形態の自立袋1A,1Bは、それぞれ、図1に示すように、相対向する一対の側面部2,2と、底面部3とを有し、内容物の充填後に密封されて、上方に向かうに従って横断面の断面積が漸減する立体形状をなす自立袋である。
【0007】より詳細には、一対の側面部2,2それぞれを形成する側面部形成材21,21同士が、袋の上縁部及び両側縁部においてヒートシールにより液密に接合され、且つ底面部3を形成する底面部形成材31が、袋の下端部における両側面部形成材同士間に二つ折りされて折り込まれ、その周縁部が両側面部形成材21,21の下端部近傍の内面にヒートシールにより液密に接合されることによって袋状に形成されている。
【0008】自立袋内には、液状洗剤、液状柔軟剤、液状食品、飲料等の液体が収容されており、自立袋は、斯かる液体の充填によって、底面部形成材31が展開すると共に側面部形成材21,21同士間の距離が拡大し、上方に向かうに従って横断面の断面積が漸減する立体形状をなす。また、自立袋の上端角部には、内容物の注出部4が上方に突出するように形成されており、この注出部4の先端を手や鋏で切断することにより、内容物の注出口が開口するようになしてある。以上に説明した構成は、第1及び第2実施形態の自立袋1A,1Bに共通する構成である。」

・「【0011】紙層22を構成する紙材としては、天然繊維を主体として抄造されたものであれば特に制限はなく、天然繊維としては、針葉樹パルプや広葉樹パルプなどの木材繊維、綿糸、サトウキビ、竹などをパルプ化した植物繊維、羊毛、絹糸などの動物性繊維などが挙げられる。具体的には、マニラボール、白ボール、黄板紙、チップボール、色板紙などが好ましく用いられる。天然繊維以外に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミドなどの合成繊維や合成樹脂粉末などを含有するものでもよい。また、紙に耐水性を付与するために、ポリエチレンやポリプロピレンなどのフィルムを、ドライラミネート、ウェットラミネート、押し出しコーティングなどにより積層することや、アクリル系、スチレン系、ウレタン系などのコーティング剤でコーティング層を設けることも可能である。
【0012】樹脂層23を構成する樹脂としては、樹脂フィルム製スタンディングパウチに従来用いられている各種の樹脂フィルムを使用することができ、例えばHDPE、LDPE、LLDPE、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩などのオレフィン系樹脂フィルム、ナイロン、PETなどの樹脂を使用することができる。上記のフィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでも良いが、少ない樹脂量でバリア性と剛性を得るためには、延伸フィルムを用いることが好ましい。さらに、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、アルミ又はシリカなどの無機物を蒸着したフィルムなどのバリアー性フィルムや、アルミ箔を積層して用いることもできる。樹脂フィルムは、単層でも多層体でもよく、特にLLDPEを最内層として、それよりも融点の大きな樹脂フィルムを外層側に配した積層フィルムが好ましい。
【0013】紙層22の坪量は100?500g/m^(2 )が好ましく、特に150?350g/m^(2 )が好ましい。また、紙層22の密度は0.6?0.9g/cm^(3 )が好ましく、紙層22の厚みは100?500μmが好ましく、特に150?300μmが好ましい。また、樹脂層23の厚みは、耐衝撃性や耐内圧性などの力学強度、容器としての形状保持性、バリア性の観点から、50?400μmが好ましく、特に100?250μmが好ましい。強度やバリア性のバランスを考慮すると、樹脂層23の厚みは、積層材21Aの厚み(紙層と樹脂層の合計厚み)の10?70%が好ましく、特に15?50%が好ましい。
【0014】また、積層材21Aは、変形に対する抵抗性や自立安定性を高める観点から、剛性の高いものが好ましく、例えばテーパーこわさ試験機によるこわさ(JISP 8125)が20?120mN・m、特に30?80mN・mであるものが好ましい。こわさの測定は、試験片の幅を38mmとして行った。上記の数値は38mm幅あたりの値である。38mm幅あたりのこわさが20mN・m以下では容器の自立性が不十分になりやすく、また容器に必要以上の変形が生じやすくなる。120mN・m以上では剛性が高すぎるために内容物充填時に適度な変形を生じさせることが困難になるため、規定量の内容物を充填することができなくなる場合があり、また、使用後に容器の容積を小さくすることが困難となる。
【0015】自立袋1Aにおける積層材からなる側面部2Aには、図3に示すように、複数の折り目線5,5・がそれぞれ自立袋の上下方向に亘って設けられており、側面部2Aは、各折り目線5で折り曲げられて、その横断面形状が、図2に示すように自立袋1Aの内面側に凹状をなすように湾曲している。積層材からなる側面部2Aに、このような湾曲形状形成用の折り目線5を設けることで、高剛性の積層材を用いても側面部2Aを容易に湾曲させることができ、外観や自立安定性に優れた自立袋を得ることができる。」

・「【0018】次に、第2実施形態の自立袋1Bについて説明する。第2実施形態の自立袋1Bは、図1及び5に示すように、相対向する一対の側面部2,2が、それぞれ、紙層22と樹脂層23とが積層された積層材21A,21Bからなり、両積層材21は、それぞれ、該樹脂層23を自立袋1の内面側に向けて配されている。底面部3は、単層又は多層の樹脂フィルムからなる。
【0019】即ち、両側面部2A,2Bを形成する側面部形成材は、それぞれ、紙層22と樹脂層23とを層間をヒートシール、インパルスシール、超音波シール等の手段により接合して一体化させてなる積層材21A,21Bであり、両側面部2は、それぞれ、その全面が積層材21A,21Bから形成されている。
【0020】紙層22を構成する紙材、樹脂層23を構成する樹脂、積層材21及びこれらの好ましい厚みや特性等に関しては、第1実施形態と同様であり、第1実施形態におけるこれらの説明が、適宜第2実施形態にも適用される。
【0021】また、第2実施形態における両側面部2A,2Bには、それぞれ、第1実施形態における側面部2Aと同様に、湾曲形状形成用の折り目線(図示せず)が設けられており、両側面部は、それぞれ、各折り目線で折り曲げられて、その横断面形状が、図3に示すように自立袋の内面側に凹状をなすように湾曲している。また、両側面部2A,2Bそれぞれにおける注出部4の近傍には、第1実施形態における側面部2Aと同様の注出路拡大用の折り目線(図示せず)が設けられおり、両側面部2A,2Bを形成する側面部形成材21は、それぞれ、その幅が、自立袋1の上方から下方に向かうに従って拡大している。側面部形成材それぞれの自立袋の上端部1aにおける幅W2に対する自立袋の下端部1bにおける幅W1の好ましい割合についても上述した通りである。斯かる構成の第2実施形態の自立袋によれば、第1実施形態の自立袋と同様の効果が奏される。」

これらの記載事項を、技術常識を考慮しながら補正発明に照らして整理すると、引用文献には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「相対向する一対の側面部と、底面部とを有し、側面部が、紙層と樹脂層とが積層された積層材からなり、該積層材は、該樹脂層を袋の内面側に向けて配されており、一対の側面部2、2それぞれを形成する側面部形成材21、21同士が、袋の上縁部及び両側縁部においてヒートシールにより液密に接合され、且つ底面部3を形成する底面部形成材31が、袋の下端部における両側面部形成材同士間に二つ折りされて折り込まれ、その周縁部が両側面部形成材21、21の下端部近傍の内面にヒートシールにより液密に接合されることによって袋状に形成されている自立袋であって、
樹脂層の厚みは、積層材の厚みの10?70%が好ましく、特に15?50%が好ましく、
自立袋の上端角部には、内容物の注出部4が上方に突出するように形成されており、この注出部4の先端を手や鋏で切断することにより、内容物の注出口が開口するようになしてあり、
両側面部2A、2Bそれぞれにおける注出部4の近傍には、注出路拡大用の折り目線が設けられている自立袋。」

(3)対比
補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「側面部形成材21,21」は、紙層と樹脂層とが積層された積層材からなり、該積層材は、該樹脂層を袋の内面側に向けて配され、袋の上縁部及び両側縁部においてヒートシールにより液密に接合されるから、補正発明の「少なくとも紙基材と最内層に熱接着性樹脂層が積層された紙基材積層シートでなる二枚の胴部形成用シート」に相当する。
引用発明の「底面部形成材31」は、補正発明の「最内層に少なくとも熱接着性樹脂層を備えた積層シートでなる底部形成用シート」に相当し、引用発明の「袋の下端部」は、補正発明の「胴部形成用シート間の下端部」に相当するから、引用発明の「側面部形成材21、21同士が、袋の上縁部及び両側縁部においてヒートシールにより液密に接合され、且つ底面部形成材31が、袋の下端部における両側面部形成材同士間に二つ折りされて折り込まれ、その周縁部が両側面部形成材21、21の下端部近傍の内面にヒートシールにより液密に接合されること」は、補正発明の「胴部形成用シート間の下端部に最内層に少なくとも熱接着性樹脂層を備えた積層シートでなる底部形成用シートを最内層面を外面にして中央で山折りして挿入し、周縁を熱接着してなる」に相当し、引用発明の「自立袋」は補正発明の「自立型袋」に相当する。
また、引用文献の自立袋の上端角部には、内容物の注出部4が上方に突出するように形成されており、この注出部4の先端を手や鋏で切断することにより、内容物の注出口が開口するようになしてあるから、引用文献に記載された発明においても、二枚の胴部形成用シートの側辺と上辺とからなる一方の上隅部に外方に突出した注出口部が設けられ、前記注出口部の周縁が熱接着され先端を切り取って内容物を注ぎ出す構成を備えているということができる。
さらに、引用文献の両側面部2A、2Bそれぞれにおける注出部4の近傍には、注出路拡大用の折り目線が設けられているから、引用文献に記載された発明においても、注出口部には注出軸方向に直線状の注出口部形成用罫線が、胴部形成用シートに施されているということができる。

したがって、補正発明と引用発明とは、次の点で一致している。
「少なくとも紙基材と最内層に熱接着性樹脂層が積層された紙基材積層シートでなる二枚の胴部形成用シートの熱接着性樹脂層面を対向して配置し、該胴部形成用シート間の下端部に最内層に少なくとも熱接着性樹脂層を備えた積層シートでなる底部形成用シートを最内層面を外面にして中央で山折りして挿入し、周縁を熱接着してなる自立型袋であって、
前記二枚の胴部形成用シートの側辺と上辺とからなる一方の上隅部に外方に突出した注出口部を設け、
前記注出口部には注出軸方向に直線状の注出口部形成用罫線が、胴部形成用シートに施されており、
前記注出口部の周縁が熱接着され先端を切り取って内容物を注ぎ出す構成を備えている自立型袋。」

そして、補正発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
[相違点1]
補正発明では、「注出口部は注出軸方向が斜め上方に延びるように形成され、」注出口部形成用罫線が「1本のみ」施されているのに対して、引用発明では、その旨の特定がない点。
[相違点2]
補正発明では、「胴部形成用シートを構成する紙基材積層シートは、自立型袋の総重量に対して、紙基材の占める重量割合が50%以上である」のに対して、引用発明では、重量割合については特定されていない点。

(4)相違点の検討
[相違点1について]
スタンディングパウチを構成するプラスチックフイルムの側辺と上辺とからなる一方の上隅部に外方に突出したノズル部を設けた自立型袋において、前記ノズル部が注出軸方向が斜め上方に延びるように形成されたもの、及び前記ノズル部に注出軸方向に直線状の山折り線が1本のみ施されたものは、例えば特開2003-137319号公報、特開平11-310248号公報に示されるように、いずれも周知である。
引用発明の注出部4の構成として、上記周知技術に倣って「注出口部は注出軸方向が斜め上方に延びるように形成され、」注出口部形成用罫線が「1本のみ」施されている構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

[相違点2について]
請求人が審判請求書において述べているように、引用発明の「樹脂層の厚みは、積層材の厚みの10?70%が好ましく、特に15?50%が好ましい」は、紙層の重量割合に読み替えて概略的表現すると、紙層の重量は、積層材の重量(紙層と樹脂層の合計重量)の30?90重量%が好ましく、特に50?85重量%が好ましいと解することができる。すなわち、引用発明は、紙層の重量割合が50%以上のものを特に好ましいとしている。よって相違点2は実質的な相違点ではない。
また、容器を紙容器として廃棄することを想定して、紙基材の占める重量割合を50%以上とすることは、例えば特開2005-96779号公報の請求項1、段落【0049】等にみられるごとく周知である。
引用文献においても、自立袋に関し、形状保持性や自立安定性等を考慮して、紙層の坪量、密度、厚みや、積層材の厚み(紙層と樹脂層の合計厚み)との割合を選択することが記載されており、胴部形成用シートを構成する紙基材積層シートを、自立型袋の総重量に対して、紙基材の占める重量割合が50%以上とすることは、上記周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことでもあるともいえる。

以上のことから、補正発明は、引用発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
したがって、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし2に係る発明は、平成24年6月19日に補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.1.(1)に示すとおりである。

2.刊行物等
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された刊行物及びその記載内容は上記第2.2.(2)に示したとおりである。

3.対比・検討
本願発明は、上記第2.2.で検討した補正発明において、胴部形成用シートを構成する紙基材積層シートについて付加された限定事項を削除するものである。
そうすると、本願発明を構成する事項のすべてを含み、さらに他の事項を付加した補正発明が、上記第2.2.(4)で示したとおり、引用発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-11 
結審通知日 2013-09-17 
審決日 2013-09-30 
出願番号 特願2007-225385(P2007-225385)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65D)
P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸田 耕太郎  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 紀本 孝
渡邊 真
発明の名称 自立型袋  
代理人 伊藤 英生  
代理人 後藤 直樹  
代理人 伊藤 裕介  
代理人 立石 英之  
代理人 深町 圭子  
代理人 藤枡 裕実  

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