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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1281936
審判番号 不服2013-988  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-18 
確定日 2013-12-16 
事件の表示 特願2008-547675「アンロック画像上でジェスチャを行うことによる機器のアンロッキング」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月 5日国際公開、WO2007/076210、平成21年 6月 4日国内公表、特表2009-521753、請求項の数(24)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2006年11月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年12月23日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成23年3月8日付けで拒絶理由が通知され、同年7月20日付けで手続補正がされ、同年10月28日付けで拒絶理由が通知され、平成24年4月12日付けで手続補正がされ、これに対し、同年9月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成25年1月18日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?24に係る各発明は、平成24年4月12日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?24に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
タッチセンシティブディスプレイと、
メモリと、
1つ以上のプロセッサと、
前記メモリに記憶されると共に、前記1つ以上のプロセッサにより実行されるように構成された1つ以上のプログラムと、
を備える携帯用電子機器であって、前記1つ以上のプログラムは、
前記タッチセンシティブディスプレイ上の第1の所定の位置に表示されたアンロック画像において、前記タッチセンシティブディスプレイとの接触を検出するための命令と、
前記タッチセンシティブディスプレイとの持続的な接触を維持している間の前記検出された接触の動きに従って前記タッチセンシティブディスプレイ上の前記アンロック画像を移動するための命令と、
前記アンロック画像が前記タッチセンシティブディスプレイ上の前記第1の所定の位置から前記タッチセンシティブディスプレイ上の所定のアンロック領域へ移動する場合に、前記携帯用電子機器をアンロックし、前記アンロック画像の表示を終了するための命令と、
を含み、
前記アンロック画像は、ユーザが前記携帯用電子機器をアンロックするために交信するグラフィカルでインタラクティブなユーザインタフェースオブジェクトである
ことを特徴とする携帯用電子機器。
【請求項2】
前記移動することは、任意の所望の経路に沿った動きを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯用電子機器。
【請求項3】
前記移動することは、前記第1の所定の位置から前記所定のアンロック領域への所定の表示経路に沿った動きを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯用電子機器。
【請求項4】
前記携帯用電子機器はハンドヘルド電子機器である、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の携帯用電子機器。
【請求項5】
前記携帯用電子機器をアンロックするのに必要な前記アンロック画像の動きの方向を通知する視覚的な合図を表示するための命令をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の携帯用電子機器。
【請求項6】
前記視覚的な合図はテキストを含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の携帯用電子機器。
【請求項7】
前記視覚的な合図は動きの方向を示す矢印を含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の携帯用電子機器。
【請求項8】
前記アンロック画像は単一の画像である、
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の携帯用電子機器。
【請求項9】
タッチセンシティブディスプレイを備えた携帯用電子機器によって実行される場合に、
該携帯用電子機器に、
前記タッチセンシティブディスプレイ上の第1の所定の位置に表示されたアンロック画像において、前記タッチセンシティブディスプレイとの接触を検出させるための命令と、
前記タッチセンシティブディスプレイとの持続的な接触を維持している間の前記検出された接触の動きに従って前記タッチセンシティブディスプレイ上の前記アンロック画像を移動させるための命令と、
前記タッチセンシティブディスプレイ上の前記アンロック画像が動く結果として前記アンロック画像が前記タッチセンシティブディスプレイ上の前記第1の所定の位置から所定のアンロック領域へ移動する場合に、前記携帯用電子機器をアンロックさせ、前記アンロック画像の表示を終了させるための命令と、
を含み、
前記アンロック画像は、ユーザが前記携帯用電子機器をアンロックするために交信するグラフィカルでインタラクティブなユーザインタフェースオブジェクトである
ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
前記移動することは、任意の所望の経路に沿った動きを含む、
ことを特徴とする請求項9に記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
前記移動することは、前記第1の所定の位置から前記所定のアンロック領域への所定の表示経路に沿った動きを含む、
ことを特徴とする請求項9に記載のコンピュータプログラム。
【請求項12】
前記携帯用電子機器はハンドヘルド電子機器である、
ことを特徴とする請求項9乃至11の何れか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項13】
前記携帯用電子機器をアンロックするのに必要な前記アンロック画像の動きの方向を通知する視覚的な合図を前記携帯用電子機器に表示させる命令をさらに含む、
ことを特徴とする請求項9乃至12の何れか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項14】
前記視覚的な合図はテキストを含む、
ことを特徴とする請求項13に記載のコンピュータプログラム。
【請求項15】
前記視覚的な合図は動きの方向を示す矢印を含む、
ことを特徴とする請求項13に記載のコンピュータプログラム。
【請求項16】
前記アンロック画像は単一の画像である、
ことを特徴とする請求項9乃至15の何れか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項17】
タッチセンシティブディスプレイを含む携帯用電子機器をアンロックする方法であって

前記タッチセンシティブディスプレイ上の第1の所定の位置に表示されたアンロック画像において、前記タッチセンシティブディスプレイとの接触を検出するステップと、
前記タッチセンシティブディスプレイとの持続的な接触を維持している間の前記検出された接触の動きに従って前記タッチセンシティブディスプレイ上の前記アンロック画像を移動するステップと、
前記タッチセンシティブディスプレイ上の前記アンロック画像が動く結果として前記アンロック画像が前記センシティブディスプレイ上の前記第1の所定の位置から所定のアンロック領域へ移動する場合に、前記携帯用電子機器をアンロックし、前記アンロック画像の表示を終了するステップと、
を含み、
前記アンロック画像は、ユーザが前記携帯用電子機器をアンロックするために交信するグラフィカルでインタラクティブなユーザインタフェースオブジェクトであることを特徴とする方法。
【請求項18】
前記移動することは、任意の所望の経路に沿った動きを含む、
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記移動することは、前記第1の所定の位置から前記所定のアンロック領域への所定の表示経路に沿った動きを含む、
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記携帯用電子機器はハンドヘルド電子機器である、
ことを特徴とする請求項17乃至19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記携帯用電子機器をアンロックするのに必要な前記アンロック画像の動きの方向を通知する視覚的な合図を表示するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項17乃至20の何れか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記視覚的な合図はテキストを含む、
ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記視覚的な合図は動きの方向を示す矢印を含む、
ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記アンロック画像は単一の画像である、
ことを特徴とする請求項17乃至23の何れか1項に記載の方法。」
(以下、本願の請求項1?24に係る各発明を「本願発明1」、「本願発明2」、・・・「本願発明24」のように表す。)

第3 原査定の理由の概要
本願発明1?24は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物1:Catherine Plaisant and Daniel Wallace, "Touchscreen toggle design", CHI'92 Proceedings of the SIGCHI conference on Human factors in computing systems, 1992年, p.667-668
刊行物2:特開2003-91370号公報
刊行物3:特開平8-263215号公報

第4 当審の判断
1.本願発明1について
(1)刊行物の記載事項
刊行物1には、図面とともに以下の事項が記載されている。
a)「INTRODUCTION
This video describes and compares six different touchscreen based toggle switches to be used by novice or occasional users to control two state (on/off) devices in a touchscreen enviroment.
Computer based toggle switches can be very confusing. The most common problem encountered is the confusion between state indication and possible action label;does the label ON indicates the state of the device or does it indicate the resulting state when the toggle is activated? Another common problem comes from the difficulty of deciding what to do to change the state of the device. The design needs to signal to the user the appropriate activity necessary to perform the desired action. For example, Valk showed that users were confused by a design which showed a slider switch where only touches on the end of the slider were permitted, but "sliding" was not possible[5].」(第667頁左欄第1?17行の記載。下線は当審で付与。以下、同様。)(当審訳:序論
このビデオは、タッチスクリーン環境にある、2つの状態(オン/オフ)になる装置を制御する、初心者や時々しか使わないユーザーによって使用される、6つの異なるタッチスクリーンに基づいたトグル・スイッチを描写し、比較します。

コンピュータに基づいたトグル・スイッチは、非常にわかりにくいことがありえます。発生する最も一般的な問題は、状態の表示と可能な操作のラベルとの間の混乱です;ONラベルは、装置の状態を表示しているのか、または、それは、トグルが操作された結果として生じる状態を表示しているのか?もう一つの一般的な問題は、装置の状態を変えるために何をするべきかについて決めることの難しさから来ます。設計は、望ましい動作を実行するのに必要な、適切な活動をユーザーに合図する必要があります。たとえば、Valk は、スライダーの終端へのタッチだけが許され、しかし「スライドする」ことは可能でないスライダー・スイッチを示した設計によって、ユーザーはまごつくことを示しました[5]。)

b)「DESCRIPTION OF THE TOGGLES
A requirement imposed by our particular application was to design toggles allowing lists of devices or options to be presented on the screen. This limited us to horizontal toggles (Figure 2) to increase the number of possible toggles and labels per page.」(第667頁右欄第18?23行の記載。)(審判訳:トグルの説明
我々の特定のアプリケーションに必要不可欠な条件は、装置またはオプションのリストをスクリーン上で提供されることを許可するトグルを設計することでした。これは、ページ 毎の可能なトグルとラベルの数を増やすために、我々を水平トグル(図2)に制限しました。)

c)「・Slider toggle; In this toggle a sliding/dragging movement is required to change the position of the yellow pointer from one side of the toggle to the other. A simple three step animation shows the movement of the pointer along the slide. If the device is ON the pointer is on the ON side. Users can then grab the pointer and slide it to the other side. If the finger is released before reaching the other side the pointer springs back to its previous position.」(第668頁左欄第20?27行の記載。)(当審訳:・スライダー・トグル;このトグルにおいて、スライド/ドラッグの動きは、トグルの一側から他側に黄色のポインターの位置を変えることを要求されます。単純な3ステップのアニメーションが、スライドに沿ったポインターの動きを示します。装置がONならば、ポインターはON側です。それから、ユーザーはポインターをつかむことができて、そして、他側にそれをスライドさせることができます。他側に着く前に指が離されるならば、ポインターは、それが前あった位置に跳ねるように戻ります。)

d)「Another advantage of the sliding movement is that it is less likely to be done inadvertently therefore making the toggle very secure (the finger has to land on and lift off the right locations). This advantage can be pushed further and controls can be designed to be very secure by requiring more complex gestures (e.g. a U or W shape slider can be used for a 2 or 3 setting control respectively).」(第668頁右欄第18?24行の記載。)(当審訳:スライド動作のもう一つの長所は、不用意に行われそうになく、したがって、トグルを非常に安全なものにすることです(指は適切な場所に乗せられ、それから持ち上げなければなりません)。この長所は、更に推し進めることができ、そして、制御は、より複雑なジェスチャーを必要とすることによって、制御は非常に安全なものに設計できます(例えば、UまたはW形スライダーが、2つまたは3つの調節制御のためにそれぞれ使われることができます)。)

してみると、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「タッチスクリーン環境にある、2つの状態(オン/オフ)になる装置を制御する、初心者や時々しか使わないユーザーによって使用される、タッチスクリーンに基づいたトグル・スイッチであり、コンピュータに基づいたトグル・スイッチにおいて、
スライダー・トグルは、スライド/ドラッグの動きは、トグルの一側から他側に黄色のポインターの位置を変えることを要求され、
装置がONならば、ポインターはON側であり、それから、ユーザーはポインターをつかむことができて、そして、他側にそれをスライドさせることができ、
スライド動作の長所は、不用意に行われそうになく、したがって、トグルを非常に安全なものにすることである
トグル・スイッチ。」

刊行物2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
e)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はタッチパネルディスプレイを使用するシステム関し、特にタッチパネルディスプレイの清掃モード及び通常モードへの切替制御方法に関する。」(【0001】の記載。)

f)「【0011】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るタッチパネル清掃支援装置が適用された情報処理システムのブロック構成図である。この情報処理システムは、情報処理装置3と、情報処理装置3からの表示用データを表示する画面表示部1と、この画面表示部1の前面に設けられ、画面のタッチ操作に応動して前記画面の位置座標信号を入力するタッチパネルとから構成される。
【0012】更に、情報処理装置3は、画面表示部1への表示用データを生成する表示制御部31と、タッチパネル2から入力された位置座標信号を受信するタッチ情報受信部33と、受信した位置座標情報を分析し通常モードと清掃モードを識別するタッチ情報分析部34と、この分析結果に基づき、タッチパネルのモード切替を制御する清掃モード切替部32とを有する。
【0013】次に、以上のように構成されたタッチパネル清掃支援装置によるタッチパネル清掃方法について図2及び図3を用いて説明する。図2は、本発明の実施形態に係る画面表示部1の表示態様を表すものである。この表示態様では、画面表示部1の四隅にボタン1?ボタン4を表示している。これらのボタンは、通常モードから清掃モードへの切り替え及び清掃モード完了後の通常モードへの切り替えを行う場合に利用するものである。すなわち、ボタンの表示領域に対するタッチに基づき画面の前面に設けられたタッチパネル2から位置座標信号が出力され、情報処理装置3にて清掃モードの切替制御が実行される。
【0014】次に、図3に示すフローチャートを参照して本実施の形態に係る通常モードから清掃モードへの切り替え動作について詳細に説明する。
【0015】操作者がタッチパネル2にタッチすると、位置座表信号が出力され、タッチ情報受信部33にて受信される。受信された位置座標信号は、タッチ情報分析部34により入力された位置座標に対応する表示内容を参照し、ボタン1の表示領域に対するタッチであるかどうか判断する(ステップ1)。ボタン1に対するタッチ情報であると判断されると、次のタッチ情報の受信待ち状態とし、続くタッチ情報がボタン2の表示領域に対するタッチであるかどうか判断する(ステップ2)。その結果、ボタン2に対するタッチ情報であると判断されると、次のタッチ情報の受信待ちとし、以下同様にボタン3及びボタン4にタッチ情報であるかどうか判断する(ステップ3、ステップ4)。このステップ1?4までの結果、順にボタン1からボタン4までのタッチ情報が検出されると、清掃モードの切替であると判断し、清掃モード切替部32に清掃モード切替信号を出力する。
【0016】清掃モード切替部32では、受信した清掃モード切替信号に基づき、以降入力されるタッチ情報を無効とする。
【0017】これにより、画面をタッチ操作しても情報処理装置において、他の処理が実行されることはないので、操作者によって画面の拭き清掃が行われる。拭き清掃が完了すると、操作者により通常モードへの切替作業が行われる。清掃モードから通常モードへの解除については、上記のボタン1?ボタン4までのタッチが順番に行われることで解除するようにしてもよいし、また、他の順番で入力された位置検出情報の受信に基づくものであってもよい。
【0018】以上、本実施の形態によれば、ボタン1からボタン4を画面上の四隅に配置し、そのボタンを順番にタッチしない限りモードの切り替えは行わないというように構成されているため、清掃時に誤ってボタン1?ボタン4のいずれかのボタンをタッチした場合でも、規定の順番と同様のタッチ順ですべてのボタンをタッチする可能性を極力低くする事ができる。」(【0011】?【0018】の記載。)

g)「【0021】次に、本発明の第二の実施の形態について説明する。前述の実施形態では、画面表示部1にボタン1?4を表示させ、このボタンに対するタッチの順番によりモードを切り替えるものであったが、例えばメニュー画面に清掃モード選択ボタンを設け、このボタンにタッチが有った場合に、清掃モードに切り替わるとともに、前述の説明で用いたモード切替のためのボタン1?4を有する清掃モード画面を表示させ、このボタンに対するタッチの順番により清掃モードから通常モードに切り替えるようにしてもよい。」(【0021】の記載。)

刊行物3には、図面とともに以下の事項が記載されている。
h)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種機器のキー操作可能な表示画面として用いられているタッチスクリーンの画面(特にクリーニング画面)表示方法に関する。」(【0001】の記載。)

i)「【0004】そこで、そのようなタッチスクリーンだけで全ての操作を行う機器のために、キーボードでなくタッチスクリーン上の操作でクリーニング画面に切り換えることが考えられるが、この場合には、清掃が終了した時、クリーニング画面を元の画面に戻すことが問題となる。つまり、クリーニング画面を終了させるために画面上に終了ボタンを設けるようにすると、清掃中にタッチスクリーン上のボタンの部分に誤って触れることで、クリーニング画面が終了してしまう恐れがあり、それを回避しようとすると、終了ボタンの部分は清掃できなくなってしまう。
【0005】なお、機器の前面に着脱自在なタッチスクリーンパネルもあり、この場合はパネルを取り外して清掃することができる。しかし、パネル面が汚れる度に取り外して清掃し、その後再び取り付ける作業が必要であり、使用頻度の高い機器ほど、そのような作業を多く行わなければならず、煩わしいという問題がある。
【0006】本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、タッチスクリーン上の操作だけでクリーニング画面に切り換えることができると共に、クリーニング画面を終了させるボタンを設けても画面全体を充分に清掃できる画面表示方法を提供することを目的とする。」(【0004】?【0006】の記載。)

j)「【0012】本発明によれば、上記のように、キーボードを用いることなくタッチスクリーン上の操作だけで、クリーニング画面への切換えと元の画面への復帰ができると共に、クリーニング画面から元の画面への復帰は、少なくとも2つの終了ボタンを一定時間内に操作しなければ行われないので、クリーニング画面上の各ボタンの部分も布等で拭いて汚れを取ることができ、画面全体を充分に清掃できる。
【0013】
【実施例】図1は、本発明の表示方法で電子機器の表示部(CRT、液晶など)に表示されるタッチスクリーンのクリーニング画面の例を示す図である。この画面では、2つの終了ボタン1及び2が表示されると共に、両方のボタンを一定時間(この場合、3秒間)内に押すことによってこの画面を終了させることができるという操作ガイダンスが表示されている。
【0014】図2は、本発明の画面表示方法の一実施例を示す。これは、電子機器の表示制御部(例えばマイクロコンピュータ)による制御下で実行される。
【0015】初めに、電子機器の表示制御部は、清掃モードか否か、すなわち、通常の表示画面(図示省略)において操作者が清掃モードを選択したか否かを判断し(ステップST1)、“YES”のとき、清掃モードの表示画面(クリーニング画面)に切り換える(ST2)。このクリーニング画面は、画面全体を所定の表示態様(例えば黒っぽい無地のように、画面の汚れが目立つ色や模様)で表示することにより、画面上の汚れを目立たせる。そして、図1のように2つの終了ボタン1及び2を表示する。これらのボタンを表示する位置は、任意に定められる。
【0016】次に、このクリーニング画面が表示されている状態で終了ボタン1が押されたか否かを判断し(ST3)、“YES”のとき、予め定めた一定時間(図1の例の場合、3秒間)を計時するタイマをスタートさせる(ST4)。そして、一定時間の経過を判断し(ST5)、“YES”ならばタイマを終了(リセット)させて(ST6)、終了ボタン1の操作待ちの状態に戻る。一方、一定時間が経過する以前に、終了ボタン2が押されたか否かを判断し(ST7)、“NO”ならば一定時間の経過を待つが、終了ボタン2が押されたときは、清掃モードを解除することにより、クリーニング画面を元の表示画面に戻す(ST8)。
【0017】この実施例では、クリーニング画面のときに表示される2つの終了ボタン1及び2を区別し、終了ボタン1が操作された後、一定時間の経過前に終了ボタン2が押された時、清掃モードを解除するようにしているが、これらの終了ボタンの操作順を逆にしてもよい。すなわち、2つの終了ボタンを特に区別する必要はなく、どちらか一方が押されてから他方のボタンが押された時に清掃モードを解除すればよい。また、一方のボタンが押された時にそのボタンの色を変化させることで、クリーニング画面が終了可能な状態にあることを表示してもよい。
【0018】かくして、電子機器の操作者や管理者は、タッチスクリーンの清掃のためにクリーニング画面が表示されているときに、2つの終了ボタンのいずれか一方に触れても、一定時間内に他方が操作されなければ、クリーニング画面は終了しないので、各ボタンの部分も布等で拭いて清掃することができる。」(【0012】?【0018】の記載。)

(2)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア.引用発明の「トグル・スイッチ」は「タッチスクリーン環境にある、2つの状態(オン/オフ)になる装置を制御する」ために使用され「タッチスクリーンに基づいた」ものであり、「コンピュータに基づいた」ものであるから、
引用発明の「装置」が、
本願発明1の「タッチセンシティブディスプレイ」と、「メモリ」と、「1つ以上のプロセッサ」と、「前記メモリに記憶されると共に、前記1つ以上のプロセッサにより実行されるように構成された1つ以上のプログラム」のそれぞれに相当するものを有していることは明らかである。
したがって、引用発明の「装置」と本願発明1の「携帯用電子機器」とは、
「タッチセンシティブディスプレイと、
メモリと、
1つ以上のプロセッサと、
前記メモリに記憶されると共に、前記1つ以上のプロセッサにより実行されるように構成された1つ以上のプログラムと、
を備える電子機器」である点で共通するといえる。

イ.引用発明の「トグル・スイッチ」は「タッチスクリーンに基づいた」ものであり「ユーザーはポインターをつかむことができて、そして、他側にそれをスライドさせることができ」るものであるから、
上記ア.で言及した引用発明の「装置」に備えられた「1つ以上のプログラム」が、
本願発明1の「前記タッチセンシティブディスプレイ上の第1の所定の位置に表示されたアンロック画像において、前記タッチセンシティブディスプレイとの接触を検出するための命令」、「前記タッチセンシティブディスプレイとの持続的な接触を維持している間の前記検出された接触の動きに従って前記タッチセンシティブディスプレイ上の前記アンロック画像を移動するための命令」のそれぞれと、
「前記タッチセンシティブディスプレイ上の第1の所定の位置に表示された画像において、前記タッチセンシティブディスプレイとの接触を検出するための命令」、「前記タッチセンシティブディスプレイとの持続的な接触を維持している間の前記検出された接触の動きに従って前記タッチセンシティブディスプレイ上の前記画像を移動するための命令」の点で共通する命令を含んでいることは明らかである。

ウ.引用発明の「トグル・スイッチ」の「ポインター」は、「装置がONならば、ポインターはON側であり、それから、ユーザーはポインターをつかむことができて、そして、他側にそれをスライドさせることができ」るように使用されるものであるから、「ユーザが交信するグラフィカルでインタラクティブなユーザインタフェースオブジェクト」の一種であるということができ、
引用発明の「トグル・スイッチ」の「ポインター」と本願発明1の「前記アンロック画像」とは、「ユーザが交信するグラフィカルでインタラクティブなユーザインタフェースオブジェクト」の点で共通するといえる。

したがって、両者は以下の一致点と相違点とを有する。

<一致点>
「タッチセンシティブディスプレイと、
メモリと、
1つ以上のプロセッサと、
前記メモリに記憶されると共に、前記1つ以上のプロセッサにより実行されるように構成された1つ以上のプログラムと、
を備える電子機器であって、前記1つ以上のプログラムは、
前記タッチセンシティブディスプレイ上の第1の所定の位置に表示された画像において、前記タッチセンシティブディスプレイとの接触を検出するための命令と、
前記タッチセンシティブディスプレイとの持続的な接触を維持している間の前記検出された接触の動きに従って前記タッチセンシティブディスプレイ上の前記画像を移動するための命令と、
を含み、
前記画像は、ユーザが交信するグラフィカルでインタラクティブなユーザインタフェースオブジェクトである
ことを特徴とする電子機器。」

<相違点1>
本願発明1は、「ユーザが交信するグラフィカルでインタラクティブなユーザインタフェースオブジェクトである」画像が、「アンロック画像」で「ユーザが」「電子機器をアンロックするために交信する」ものであるのに対し、引用発明は、「ユーザが交信するグラフィカルでインタラクティブなユーザインタフェースオブジェクトである」画像が、「トグル・スイッチ」で「2つの状態(オン/オフ)になる装置を制御」するものである点。

<相違点2>
本願発明1は、「1つ以上のプロセッサにより実行されるように構成された1つ以上のプログラム」が「前記アンロック画像が前記タッチセンシティブディスプレイ上の前記第1の所定の位置から前記タッチセンシティブディスプレイ上の所定のアンロック領域へ移動する場合に、前記携帯用電子機器をアンロックし、前記アンロック画像の表示を終了するための命令」を含むのに対し、引用発明は、そのような命令を含まない点。

<相違点3>
本願発明1は、「電子機器」が「携帯用電子機器」であるのに対して、引用発明は携帯用であると記載されていない点。

(3)判断
<相違点1についての判断>
刊行物2,刊行物3に記載されるように、タッチパネルディスプレイを有する機器において、入力されるタッチ情報を無効とする清掃モード時に、表示部に表示された複数のボタン(本願発明の「アンロック画像」に相当。)をタッチすることにより、清掃モードから通常モードに切り替える(本願発明の「電子機器をアンロック」することに相当。)技術は、本願優先日前周知技術(以下、「周知技術1」という。)である。
しかしながら、該周知技術1の存在をもって、「引用発明において相違点1に係る本願発明1の構成を採用することが容易であった」ということはできない。
理由は以下のとおりである。
すなわち、引用発明において相違点1に係る本願発明1の構成を採用するということは、引用発明の「トグル・スイッチ」を電子機器のアンロックの用途に使用するということを意味するが、引用発明の「トグル・スイッチ」は、ユーザによる清掃動作時に誤って操作される虞がある形態のものであり、上記周知技術1に示される「アンロック」すなわち「清掃モードから通常モードへの切り替え」には適しないものであるから、上記周知技術1の存在は、引用発明の「トグル・スイッチ」をアンロックの用途に使用することの動機付けにはならない。

<相違点2について>
刊行物3に、「通常の表示画面(図示省略)において操作者が清掃モードを選択したか否かを判断し」「、“YES”のとき、清掃モードの表示画面(クリーニング画面)に切り換え」「このクリーニング画面は、画面全体を所定の表示態様(例えば黒っぽい無地のように、画面の汚れが目立つ色や模様)で表示」し「2つの終了ボタン1及び2を表示する」と、また、「清掃モードを解除することにより、クリーニング画面を元の表示画面に戻す」と記載されるように、清掃モードから通常モードに切り換える際に、清掃モードを終了させるためのボタンが表示された画面を元の表示画面に戻す技術、すなわち、清掃モード終了(本願発明の「電子機器をアンロック」することに相当。)時に、清掃モードを終了させるためのボタン(本願発明の「アンロック画像」に相当。)の表示を終了する技術も、本願優先日前周知技術(以下、「周知技術2」という。)である。

しかしながら、引用発明の「トグル・スイッチ」は「2つの状態(オン/オフ)になる装置を制御」するためのものであり、装置が2つの状態(オン/オフ)の何れの状態にある場合でも表示される必要のあるものであるから、引用発明に上記周知技術2を適用して、「トグル・スイッチ」を、清掃モード終了時に表示が終了する、清掃モードを終了させるためのボタン(本願発明の「アンロック画像」に相当。)とすることには、動機付けがあるとはいえない。

したがって、本願発明1は、引用発明及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明2?8について
本願発明2?8は本願発明1に従属するものであるから、上記「1.本願発明1について」にて述べたのと同様の理由により、本願発明2?8は、引用発明及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3.本願発明9について

本願発明9は本願発明1を「コンピュータプログラム」の発明として記載したものであるから、上記「1.本願発明1について」にて述べたのと同様の理由により、本願発明9は、引用発明及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

4.本願発明10?16について
本願発明10?16は本願発明9に従属するものであるから、上記「3.本願発明9について」にて述べたのと同様の理由により、本願発明10?16は、引用発明及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

5.本願発明17について

本願発明17は本願発明1を「方法」の発明として記載したものであるから、上記「1.本願発明1について」にて述べたのと同様の理由により、本願発明17は、引用発明及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

6.本願発明18?24について
本願発明18?24は本願発明17に従属するものであるから、上記「5.本願発明17について」にて述べたのと同様の理由により、本願発明18?24は、引用発明及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明1?24は、引用発明及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶するべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2013-12-03 
出願番号 特願2008-547675(P2008-547675)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中田 剛史  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 稲葉 和生
山田 正文
発明の名称 アンロック画像上でジェスチャを行うことによる機器のアンロッキング  
代理人 高柳 司郎  
代理人 永川 行光  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康弘  
代理人 下山 治  
代理人 大塚 康徳  

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