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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H02G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02G
管理番号 1281986
審判番号 不服2012-25070  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-18 
確定日 2013-12-10 
事件の表示 特願2007-172690「コルゲートチューブ」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月15日出願公開、特開2009- 11136、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年 6月29日の出願であって、平成24年 1月13日付けの拒絶理由通知に対して、同年 3月19日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年 9月13日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年12月18日に審判請求がされるとともに手続補正書が提出されたものである。


第2 平成24年12月18日に提出された手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)の適否

1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲及び明細書を補正するものであり、平成24年 3月19日に提出した手続補正書により補正された(以下「補正前」という。)請求項1の「該一部中空部はチューブ内の空間に続いたこと」を「該一部中空部はチューブ内の空間に続き、該一部中実部の突出方向中間部に該凸条の外周面が交差し、該一部中実部と該一部中空部との境界が該凸条の外周面と該凹溝の外周面との間に位置したこと」と補正をし、明細書中において請求項1の構成に関する【0014】の記載を、不明りょうな記載の釈明を目的として前記請求項1の補正に合わせる補正を行うものである。

2 本件補正の目的の適否
上記補正事項は、補正前の請求項1の「一部中実部」及び「一部中空部」と「凸条の外周面」及び「該凹溝の外周面」との位置関係を、出願当初明細書の 「【0049】・・(略)・・一部中空の度合いは、図2(c)の如く、谷部2の外周面2aと山部3の外周面3aとの間を中空としてもよく、あるいは山部3の外周面3aから突出したリブ部分(符号hで示す部分)の下半部にかけて中空としてもよい。図2(c)のコルゲートチューブを符号11´で示す。」との記載及び図2(c)を根拠として、「該一部中実部の突出方向中間部に該凸条の外周面が交差し、該一部中実部と該一部中空部との境界が該凸条の外周面と該凹溝の外周面との間に位置した」と、特許請求の範囲を限定的に減縮するものであり、出願当初明細書に記載された範囲内においてなされていることは明らかである。

したがって、本件補正は、特許法17条の2第3項及び5項2号に規定する要件を満たすものである。

そこで、本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定を満たすか)どうかを、以下検討する。

3 独立特許要件を満たすかどうかの検討
(1)本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
周方向の凹溝と凸条とをチューブ長手方向に交互に配列した合成樹脂製のコルゲートチューブにおいて、チューブ長手方向に該凹溝の外周面から該凸条の外周面を超えて高く補強用のリブが突出形成され、該リブの内側に、該凹溝の外周面寄りの一部中空部と、該凸条の外周面寄りの一部中実部とが形成され、該一部中空部はチューブ内の空間に続き、該一部中実部の突出方向中間部に該凸条の外周面が交差し、該一部中実部と該一部中空部との境界が該凸条の外周面と該凹溝の外周面との間に位置したことを特徴とするコルゲートチューブ。」

(2)原査定で引用された引用文献の表示
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1?4は、以下のとおり。
引用文献1:特開2001-132871号公報
引用文献2:特開2000-217229号公報
引用文献3:特開2006-192939号公報
引用文献4:特開2007-60754号公報

(3)引用文献1?4の記載事項
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2001-132871号公報(以下「引用文献1」という。)には、「ワイヤーハーネス用グロメット」(発明の名称)に関して、図1、図2及び図4とともに、次の記載がある。

(引1ア)「【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1乃至図3は車体パネルP1と開閉可能なバックドアのドアパネルP2との間に架設されるワイヤハーネス用グロメット11の第一実施形態を示し、該グロメット11はゴムまたはエラストマーにより一体成形している。
【0012】上記グロメット11は、ワイヤハーネスW/Hが挿通される細長い蛇腹筒部12と、・・(略)・・
【0013】蛇腹筒部12の両端部には所要範囲にわたって側面部の両側対向位置(180°位相した位置)に、蛇腹筒部12の折り畳み時に、中間位置の屈曲部12aが所定方向に向けて折り畳まれるように、その方向を規制する変形規制部15を軸方向に沿って設けている。変形規制部15の形成位置は、ドアパネルP2の開閉方向の平面に一致させる蛇腹筒部12の折り畳み方向の平面に直交する方向の両側面部とし、蛇腹筒部12が折り畳み方向以外の方向へ屈曲するのを規制するようにしている。また、変形規制部15は、図1に示すように、中間位置の屈曲部12a付近を除いた範囲に形成されている。これは、蛇腹筒部12が二つ折りに折り畳まれる際、屈曲部12a付近を屈曲ポイントとして折り曲げ易くするためである。第一実施形態における変形規制部15は、蛇腹筒部12の外面における山部12bと谷部12cとの間の隙間を埋めるようにして直線状に延びるリブ15aを一体突設することで構成している。」

(引1イ)「【0016】図4(A)(B)はグロメット21の第二実施形態を示し、変形規制部25の構成を第一実施形態とは異なる構成としたものである。なお、その他の構成は第一実施形態と同様のため、同一符号を付して説明を省略する。変形規制部25の形成位置および範囲は第一実施形態と同様であるが、第二実施形態では、リブ25aとして蛇腹筒部12の山部12bよりも更に1mm程度外方へ突出させるようにしている。これにより、蛇腹筒部12の折り畳み時における変形規制部25の屈曲方向規制作用を一層効果的にすることができる。」

(引1ウ)図1、図2及び図4に示された蛇腹筒部12には、その周方向に形成された山部12b及び谷部12cが、その長手方向に交互に配列され、リブ15a、25aが、蛇腹筒部12の外面における山部12bと谷部12cとの間の隙間を埋めるようにして直線状に延びていることが、また、図2(A)及び図4(A)からは、リブ15a、25aの内部にハッチングが施され、リブ15a、25aが中実であることが、さらに、図4(A),(B)の示されたリブ25aは、山部12bよりも外方へ突出していることが、それぞれ看取できる。

上記(引1ア)?(引1ウ)によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
「周方向に形成された山部12b及び谷部12cが、蛇腹筒部12の長手方向に交互に配列されゴムまたはエラストマーからなるワイヤーハーネス用グロメットにおいて、蛇腹筒部12の外面における山部12bと谷部12cとの間の隙間を埋めるようにして、山部12bよりも外方へ突出して直線状に延びているリブ25aが形成されており、当該リブ25aが中実であるワイヤーハーネス用グロメット」

イ 引用文2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2000-217229号公報(以下「引用文献2」という。)には、「グロメット」(発明の名称)に関して、図1とともに、次の記載がある。

(引2ア)「【請求項1】 ゴムまたはエラストマーで一体成形され、長い蛇腹筒部の両端に拡径部を備え、これら拡径部にパネル係止用の凹部を設け、内部にワイヤハーネスを挿通させるグロメットにおいて、
取付時に上面となる位置に、上記蛇腹筒部の山部と谷部とに連続した背びれ状の突片を一体的に設けたことを特徴とするグロメット。」

(引2イ)「【0009】本発明は上記した問題に鑑みてなされたもので、グロメットの上下位置を正確に位置決めして本体パネルとドアパネルとに取り付けることができると共に、長尺な蛇腹筒部に伸縮を余り発生させず、かつ、該伸縮時に発生しやすい捩れの発生を防止することを課題としている。」

(引2ウ)「【0012】しかも、蛇腹筒部の山部と谷部に連続して背びれ状の突片を設けているため、蛇腹筒部は伸縮しにくく、グロメットをドアパネルと本体パネルとの間に装着した場合には、ドア閉時に、伸縮せずに湾曲して曲がり、ドア開時には直線状となるだけである。よって、蛇腹筒部の伸縮により従来発生しやすかった蛇腹筒部の捩れを無くすことができ、その結果、グロメット内部のワイヤハーネスの電線群に捩れを発生させず、電線群の損傷を防止でき、かつ、蛇腹筒部の干渉材への噛み込み等も防止できる。」
(引2エ)「【0020】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明によれば、蛇腹筒部を有するグロメットにおいて、蛇腹筒部の山部と谷部とに連続した背びれ状の突片を設けているため、目視あるいは手触りで蛇腹筒部の位置確認が容易にでき、パネルへのグロメットの取付位置を正確に位置決めすることができる。
【0021】さらに、自動車の本体パネルとドアパネルとの間に取り付ける場合、ドアの開閉に応じてグロメットの蛇腹筒部が伸縮せず、湾曲および直線状となって追従するため、蛇腹筒部の伸縮時に発生しやすい蛇腹筒部の捻れ発生も防止することができる。」

(引2オ)図1(C)から背びれ状の突片16の内部にハッチングが施され、背びれ状の突片16が中実であることが看取できる。

上記(引2ア)?(引2オ)によれば、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。
「ゴムまたはエラストマーで一体成形され、長い蛇腹筒部の両端に拡径部を備え、これら拡径部にパネル係止用の凹部を設け、内部にワイヤハーネスを挿通させるグロメットにおいて、取付時に上面となる位置に、上記蛇腹筒部の山部と谷部とに連続した中実で背びれ状の突片を一体的に設けたことを特徴とするグロメット。」

ウ 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2006-192939号公報(以下「引用文献3」という。)には、「余長吸収装置のコルゲートチューブ構造及び余長吸収装置」(発明の名称)に関して、図3及び図6とともに、次の記載がある。

(引3ア)「【請求項1】・・(略)・・前記コルゲートチューブの長手方向に外力受け部が形成され、該外力受け部が前記スライドドアの開閉時における該コルゲートチューブの伸縮を阻止することを特徴とする余長吸収装置のコルゲートチューブ構造。
【請求項2】・・(略)・・
【請求項6】
前記外力受け部が凸部又は凹部であることを特徴とする請求項1?5の何れかに記載の余長吸収装置のコルゲートチューブ構造。」

(引3イ)「【0017】・・(略)・・ワイヤハーネスの屈曲部において前記外力受け部が屈曲外側に位置するように該コルゲートチューブの一方の側面に該外力受け部が配置されたことを特徴とする。
【0018】・・(略)・・ワイヤハーネスが・・(略)・・横方向(左右方向)に屈曲(湾曲)するが、この際、コルゲートチューブの外力受け部が屈曲部の屈曲外側面に位置しているから、外力受け部が引張方向の力を受けつつスムーズに屈曲し、ワイヤハーネスの屈曲がスムーズに行われる。・・(略)・・
【0023】
請求項6に係る余長吸収装置のコルゲートチューブ構造は、請求項1?5の何れかに記載の余長吸収装置のコルゲートチューブ構造において、前記外力受け部が凸部又は凹部であることを特徴とする。
【0024】
上記構成により、請求項1?3の何れかに記載の余長吸収装置のコルゲートチューブ構造においては、外力受け部としての凸部又は凹部がコルゲートチューブに長手方向の剛性を付与し、スライドドアの開閉時にコルゲートチューブを長手方向に伸縮しにくくする。また、請求項4又は5記載の余長吸収装置のコルゲートチューブ構造においては、外力受け部としての凸部又は凹部がコルゲートチューブに長手方向の剛性を付与し、コルゲートチューブを長手方向に伸縮しにくくする。これらにより、コルゲートチューブ内の各電線の伸縮が阻止される。凸部はコルゲートチューブの周方向の凸条に直交してチューブ長手方向に真直に続く。凸部の突出高さは凸条と同じあるいは凸条よりも低くても有効である。また、凹部は凸条を横断してチューブ長手方向に真直に続く。凹部の高さはコルゲートチューブの周方向の凹溝と同一高さ又はそれよりも低くても有効である。凸部や凹部はコルゲートチューブの樹脂成形時に一体に形成される。」

(引3ウ)「【0038】・・(略)・・余長吸収装置1において、ワイヤハーネス2の外周保護部材として合成樹脂製の断面長円形(楕円形)のコルゲートチューブ3を用い、・・(略)・・
【0040】
コルゲートチューブ3の外力受け部4とは、図3・・(略)・・5に示す如く、断面長円形のコルゲートチューブ3の一方の長辺側の側面3aすなわち短径側の湾曲状の壁部の高さ方向中央において、周方向の凸条8や凹溝9と直交してチューブ長手方向に真直に連続して形成された凸部4_(1),4_(3)(図3,図5)・・(略)・・を言う。
【0041】・・(略)・・
【0043】
図3のコルゲートチューブ3_(1)の外力受け部である凸部4_(1)は、周方向の環状の複数の凸条8すなわち山部に直交して凸条8と同じ高さでチューブ長手方向に真直に続いている。各凸条8の間の凹溝9すなわち谷部は凸部4_(1)で横断され、凸部4_(1)の上下の壁面4a,4bは凹溝9の底面(符号9で代用)に直交し、且つ凸条8の前後の壁面8a,8bに直交している。凸条8と凹溝9と凸部4_(1)の各壁部の板厚はほぼ同じであり、凸条8及び凸部4_(1)の内側面は凹溝状にへこんでチューブ内側のハーネス挿通空間10に連通している。」

(引3エ)「【0048】
図6の平型のコルゲートチューブ3_(4)の凸部4_(4)は図3の凸部4_(1)と同様の形態である。・・(略)・・また、図3や図5等の凸部4_(1),4_(3),4_(4)を中空ではなく中実とすることも可能である。」

(引3オ)図3から、周方向の凸条8と凹溝9とがチューブ長手方向に交互に配列した合成樹脂製のコルゲートチューブ3_(1)が看取できる。
上記(引3ア)?(引3オ)によれば、引用文献3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているといえる。
「周方向の凸条8と凹溝9とがチューブ長手方向に交互に配列した合成樹脂製のコルゲートチューブ3_(1)において、周方向の環状の複数の凸条8すなわち山部に直交して凸条8と同じ高さでチューブ長手方向に真直に続いている外力受け部である凸部4_(1)を設け、凸部4_(1)を中空或いは中実としたコルゲートチューブ3_(1)」

エ 引用文献4の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2007-60754号公報(以下「引用文献4」という。)には、「コルゲートチューブとそれを用いたハーネス配索構造」(発明の名称)に関して、図1?図5とともに、次の記載がある。

(引4ア)「【0014】・・(略)・・屈曲すべき方向には柔軟に屈曲し、屈曲を阻止すべき方向には確実に屈曲を抑止することのできるコルゲートチューブとそれを用いたハーネス配索構造を提供することを目的とする。」

(引4イ)「【0031】
図1の如く、このコルゲートチューブ1は、合成樹脂を材料として、周方向の凸条2と凹溝3とをチューブ長手方向に交互に等ピッチで複数並列に形成したものにおいて、各凹溝3の間で各凸条2をチューブ長手方向(軸線方向)の屈曲抑止用のリブ4で一直線上に相互に連結し、各凹溝3の間でリブ4の両側壁を断面半円状に湾曲させた湾曲壁5とし、リブ4の中心から両側の湾曲壁5に向かう方向(矢印B方向)の良好な屈曲性を確保し、且つリブ4の頂部6に向かう方向(矢印C方向)及びその反対方向の強い剛性を確保したものである。
【0032】・・(略)・・
【0035】
図2の如く、リブ4は、凹溝3の湾曲底面7から略垂直(略直角、正確にはやや傾斜状)に立ち上げられた上下の湾曲壁5と、両凸条2の頂部8と同一面で左右の湾曲壁5を連結する頂壁6とで構成されており、リブ4の内部は中空になっている。凹溝3の底面は湾曲底面7であり、湾曲壁5は凹溝3内で前後の凸条2の前後の内側壁9を相互に連結しており、頂壁6は凸条2の頂部6の表面(外周面)と同一半径の円弧面を有する。
【0036】・・(略)・・
【0038】
リブ4の上下両側の湾曲壁7は断面半円状になっているが、・・(略)・・断面半円状ではなく円弧状のもの、すなわち湾曲壁5が接線方向に凹溝3の両側壁9に続いていないものでも屈曲性を高める上で有効である。
【0039】・・(略)・・リブ4の断面は略台形状となっている。これによってもコルゲートチューブ1の屈曲性が高められている。・・(略)・・」

上記(引4ア)、(引4イ)によれば、引用文献4には、次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されているといえる。
「周方向の凸条2と凹溝3とをチューブ長手方向に交互に等ピッチで複数並列に形成した合成樹脂を材料としたコルゲートチューブ1であって、各凹溝3の間で各凸条2をチューブ長手方向の屈曲抑止用のリブ4で一直線上に相互に連結し、リブ4は、凹溝3の湾曲底面7から略垂直に立ち上げられた上下の湾曲壁5と、両凸条2の頂部8と同一面で左右の湾曲壁5を連結する頂壁6とで構成され内部を中空としたリブ4であり、リブ4の中心から両側の湾曲壁5に向かう方向の良好な屈曲性を確保し、且つリブ4の頂部6に向かう方向及びその反対方向の強い剛性を確保したコルゲートチューブ1」

(4)対比
ア 本願補正発明と引用発明4との対比
(ア)引用発明4の「周方向の凸条2と凹溝3とをチューブ長手方向に交互に等ピッチで複数並列に形成した合成樹脂を材料としたコルゲートチューブ1」は、本願補正発明の「周方向の凹溝と凸条とをチューブ長手方向に交互に配列した合成樹脂製のコルゲートチューブ」に相当する。
(イ)引用発明4の「各凹溝3の間で各凸条2をチューブ長手方向の屈曲抑止用のリブ4で一直線上に相互に連結し、リブ4は、凹溝3の湾曲底面7から略垂直に立ち上げられた上下の湾曲壁5と、両凸条2の頂部8と同一面で左右の湾曲壁5を連結する頂壁6とで構成され」と、本願補正発明の「チューブ長手方向に該凹溝の外周面から該凸条の外周面を超えて高く補強用のリブが突出形成され」とは、「チューブ長手方向に該凹溝の外周面から少なくとも該凸条の外周面にかけて補強用のリブが突出形成され」の点で一致する。
(ウ)引用発明4の「内部を中空としたリブ4」と、本願補正発明の「該リブの内側に、該凹溝の外周面寄りの一部中空部と、該凸条の外周面寄りの一部中実部とが形成され、」とは、「該リブの内側に、中空部が形成され」ている点で一致する。

イ 一致点及び相違点
上記「ア(ア)」?「ア(ウ)」から、本願補正発明と引用発明4の一致点と相違点は、次のとおりとなる。

(ア)一致点
「周方向の凹溝と凸条とをチューブ長手方向に交互に配列した合成樹脂製のコルゲートチューブにおいて、チューブ長手方向に該凹溝の外周面から少なくとも該凸条の外周面にかけて補強用のリブが突出形成され、該リブの内側に、中空部が形成されたコルゲートチューブ。」

(イ)相違点
a 相違点1
本願補正発明は、「凸条の外周面を超えて高く」「リブが突出形成され」ているのに対して、引用発明4は、「凸条2の頂部8と」リブ4の「頂壁6」とが「同一面で」である点。
b 相違点2
本願補正発明は、「リブの内側に、該凹溝の外周面寄りの一部中空部と、該凸条の外周面寄りの一部中実部とが形成され、該一部中空部はチューブ内の空間に続き、該一部中実部の突出方向中間部に該凸条の外周面が交差し、該一部中実部と該一部中空部との境界が該凸条の外周面と該凹溝の外周面との間に位置し」ているのに対して、引用発明4は、リブ4の内側全部が中空である点。

(5)相違点についての判断
ア 相違点1について
引用文献4の記載事項(引4ア)には、「屈曲すべき方向には柔軟に屈曲し、屈曲を阻止すべき方向には確実に屈曲を抑止することのできるコルゲートチューブ」を提供することを目的としていることが記載されている。
一方、蛇腹筒状体において、蛇腹の山部よりも高い突片をその長手方向に設けることは、引用文献1,2に記載されているように周知であり、引用文献1には、その記載事項(引1イ)に、「リブ25aとして蛇腹筒部12の山部12bよりも更に1mm程度外方へ突出させるようにしている。これにより、蛇腹筒部12の折り畳み時における変形規制部25の屈曲方向規制作用を一層効果的にすることができる。」と説明されている。
したがって、引用発明の「屈曲を阻止すべき方向には確実に屈曲を抑止する」との目的を更に効果的に発揮させるために、引用文献1,2に記載されている上記周知技術を採用し、上記相違点1に係る構成とすることは、設計的事項にすぎない。

イ 相違点2について
(ア)本願の出願当初明細書には、リブの内側を一部中空或いは一部中実とする点に関して、下記の説明がなされている。
「【0016】
請求項2に係るコルゲートチューブは、請求項1記載のコルゲートチューブにおいて、前記リブの内側を一部ないし全部中空としたことを特徴とする。
【0017】
上記構成により、リブの内側が一部ないし全部中空であることで(特に全部中空の場合に顕著であるが)、リブの幅方向(突出高さとは直交する方向)の屈曲性が確保される。特に一部中空(一部中実)の場合は、全部中空の場合に較べてリブ高さ方向と高さ反対方向の曲げ剛性が高まる。
【0018】・・(略)・・
【0020】
請求項4に係るコルゲートチューブは、周方向の凹溝と凸条とをチューブ長手方向に交互に配列したコルゲートチューブにおいて、チューブ長手方向に補強用のリブを形成し、該リブの内側を一部ないし全部中実としたことを特徴とする。
【0021】
上記構成により、リブが全部中空の場合に較べてリブ高さ方向と高さ反対方向の曲げ剛性が高まる。一部中実の場合は、リブ高さ方向とは直交する方向へのコルゲートチューブの屈曲性が良好に確保される。・・(略)・・」
即ち、上記記載には、リブの内側を「一部中空(一部中実)」とすることで、「全部中空の場合に較べてリブ高さ方向と高さ反対方向の曲げ剛性が高まり、且つ、リブ高さ方向とは直交する方向へのコルゲートチューブの屈曲性が良好に確保される」ことが説明されているものであり、リブの高さ方向及び反対方向への剛性を得ると、共に、リブの高さ方向とは直交する方向への屈曲性を良好にするという、2方向において、異なる要求を解決するために、リブの内側を「一部中空(一部中実)」としているものと理解できる。

(イ)一方、引用発明4においては、本願と同様に、2方向において柔軟性と屈曲防止という、本願と同様な目的を有するものの、柔軟性を得るために、「リブの各凹溝3の間でリブ4の両側壁を断面半円状に湾曲させた湾曲壁5と」することで、「リブ4の中心から両側の湾曲壁5に向かう方向の良好な屈曲性を確保」しているものであり、一部中実等のリブの内部構造によって、柔軟性を得ることは、引用文献4には何ら記載されていない。また、引用文献1?3についても、リブ(変形規制部)、突片或いは外力受け部の内部を一部中実とすることについては、何らの記載も認められない。
即ち、
引用発明1は、リブ25aの内部を全部中実とし、「リブ25aとして蛇腹筒部12の山部12bよりも更に1mm程度外方へ突出させるようにしている。これにより、蛇腹筒部12の折り畳み時における変形規制部25の屈曲方向規制作用を一層効果的に」しているものの、リブ25aを形成している部分において、屈曲方向規制作用を生じている方向と直角な方向において、柔軟性を得たいとの技術課題は記載されておらず、むしろ、当該方向における柔軟性の発揮については、引用文献1の記載事項(引1ア)に「変形規制部15は、図1に示すように、中間位置の屈曲部12a付近を除いた範囲に形成されている。これは、蛇腹筒部12が二つ折りに折り畳まれる際、屈曲部12a付近を屈曲ポイントとして折り曲げ易くするためである。」と説明されているように、リブ25aを設けないことで折り曲げやすくしているものである。
また、引用発明2においては、引用文献2の記載事項(引2エ)「【0020】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、本発明によれば、蛇腹筒部を有するグロメットにおいて、蛇腹筒部の山部と谷部とに連続した背びれ状の突片を設けているため、目視あるいは手触りで蛇腹筒部の位置確認が容易にでき、パネルへのグロメットの取付位置を正確に位置決めすることができる。
【0021】さらに、自動車の本体パネルとドアパネルとの間に取り付ける場合、ドアの開閉に応じてグロメットの蛇腹筒部が伸縮せず、湾曲および直線状となって追従するため、蛇腹筒部の伸縮時に発生しやすい蛇腹筒部の捻れ発生も防止することができる。」とあるように、一方向の曲がりの規制とその直角方向における柔軟性の確保に対処すべく「変形規制部15」の内部を一部中実にすることは、記載されていない。
さらに、引用発明3においては、引用文献3の記載事項(引3イ)に「外力受け部としての凸部又は凹部をコルゲートチューブに長手方向に設け」ること、また、「凸部の突出高さは凸条と同じあるいは凸条よりも低く」すること、「凹部の高さはコルゲートチューブの周方向の凹溝と同一高さ又はそれよりも低く」することが記載され、凸条よりも凸部を突出させると言うよりは、むしろ、低くする方向性が説明されており、また、記載事項(引3エ)には、蛇腹の凸条の高さと同一高さの外力受け部である凸部41、44について「中空或いは中実」のいずれでも可能であることが記載されているが、一方向の曲がりの規制とその直角方向における柔軟性の確保に対処すべく「凸部又は凹部」の内部を一部中実にすることは記載されていない。
さらに、引用文献3の「中空或いは中実」のいずれでも良いとの説明のみから、一部中実(中空)とすべき具体的な動機づけも認められない。

(ウ)したがって、引用文献1?3に記載された技術事項を参酌しても、上記相違点2に係る構成を引用発明4に適用することは当業者が容易に想到し得たとは言えない。
また、引用発明4における上記相違点2に係る構成は、引用発明1?3においても同様にそのような構成は有しておらず、引用発明1?3のいずれにおいても本願補正発明との相違点である。そして、引用発明1?3のいずれを主引用発明としても、上記(ア)、(イ)での検討のとおり当該相違点に係る構成を、当業者が容易に想到し得たとは言えない。

以上のとおり、本願補正発明は、引用文献1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合する。

(6) まとめ
本件補正は、特許法17条の2第3項ないし6項の規定に適合する。


第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法17条の2第3項ないし6項の規定に適合するから、本願の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶の理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとする理由を発見しない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2013-11-27 
出願番号 特願2007-172690(P2007-172690)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (H02G)
P 1 8・ 121- WY (H02G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 右田 勝則  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 西脇 博志
加藤 浩一
発明の名称 コルゲートチューブ  
代理人 瀧野 文雄  
代理人 鳥野 正司  
代理人 川崎 隆夫  
代理人 津田 俊明  
代理人 瀧野 秀雄  
代理人 朴 志恩  

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