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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01K 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 F01K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01K |
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管理番号 | 1282055 |
審判番号 | 不服2012-14139 |
総通号数 | 169 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-07-23 |
確定日 | 2013-11-27 |
事件の表示 | 特願2007-526179「ガス?スチーム・ディーゼル・エンジン」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月 9日国際公開、WO2006/024209、平成20年 4月 3日国内公表、特表2008-510096〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2005年(平成17年)6月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年8月19日,中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって,平成23年5月26日付けで拒絶の理由が通知され,平成23年8月30日付けで意見書が提出されたところ,平成24年3月14日付けで拒絶査定がなされ,それに対して,平成24年7月23日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに同日付けで手続補正書が提出されたものである。 第2 平成24年7月23日付け手続補正書による手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年7月23日付け手続補正書による手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正後の本願発明 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,次のように補正された。 (1)本件補正前 「【請求項1】 ガス?スチーム・ディーゼル・エンジンは,2ストロークのディーゼル・エンジンである,このエンジンは,特徴は:三元性ガス入り系統によってガス入り,ガス配給,ガス掃除を制御し,多孔排気とはねかけ潤滑を利用して,及び,排気回収冷却器,三元性ガス入り系統,シリンダー蓋,シリンダー,燃焼室,多排気口及び排気パイプ,クランクケース,ピストンとピトリング,クランク・シャフト連接棒を含める,前に述べた2ストロークは,第一ストロークと第二ストロークがある,第一ストロークでは,ピストンは下から上まで動き,圧縮前にシリンダー内に高圧水霧を噴き入り,同時にガス掃除する,その時はシリンダー内は温度が高いから,水霧はガス掃除後,水蒸気になり,同時にもシリンダーを冷却して,圧縮過程の中期あるいは後期,一回或いは数回もシリンダー内に酸素を噴いて燃料と相対噴射或いは噴霧器型の噴射して混合させて,ピストンは上止点に近く行き続く,混合気は圧縮効力で自然発火あるいは点火される;2ストロークでは,ピストンは上から下まで動き,慣性でピストンが上止点を過ぎ,激しく燃えて発生した高温高圧のガスは,同時にシリンダー内の圧縮された大量低温低圧の水蒸気を加熱し,激しい膨張が起こり,共にピストンが下への移動を推進して,同時に連接棒のクランク・シャフトを通じて外に仕事をして,ピストンが下止点に近く着いた時に排気口が開いて,廃気を排出してからまた第一ストロークに入る,排出した廃気を冷却器に入れて,クランク・シャフト或いは同時性の扇風機や自然風,水の流れが冷却後,高温の液体水に戻る,そして,濾してからまた水直噴系統に入って循環し,燃焼から出たH_(2)Oも一緒に液化されて,きわめて少量のCO_(2)は冷却器の上の排気口から排出される。」(平成23年1月31日付け手続補正書参照。) (2)本件補正後 「【請求項1】 ガス?スチーム・ディーゼル・エンジンは,2ストロークのディーゼル・エンジンであり, このエンジンは,三元性ガス入り系統によってガス入り,ガス配給,ガス掃除を制御し,多孔排気とはねかけ潤滑を利用して,及び,排気回収冷却器,三元性ガス入り系統,シリンダー蓋,シリンダー,燃焼室,多排気口及び排気パイプ,クランクケース,ピストンとピストンリング,クランク・シャフト及び連接棒を備え, 前に述べた2ストロークは,第一ストロークと第二ストロークがあり, 第一ストロークでは,ピストンは下から上まで動き,ピストンが下死点に位置したときにシリンダー内に高圧水霧を噴き入り,同時にガス掃除する,その時はシリンダー内は温度が高いから,水霧はガス掃除後,水蒸気になり,同時にもシリンダーを冷却して,圧縮過程の中期あるいは後期,一回或いは数回もシリンダー内に酸素を噴いて燃料と相対噴射或いは噴霧器型の噴射して混合させて,ピストンは上死点に近く行き続く,混合気は圧縮効力で自然発火あるいは点火され, 第二ストロークでは,ピストンは上から下まで動き,慣性でピストンが上死点を過ぎ, 激しく燃えて発生した高温高圧のガスは,同時にシリンダー内の圧縮された大量低温低圧の水蒸気を加熱し,激しい膨張が起こり,共にピストンが下への移動を推進して,同時に連接棒のクランク・シャフトを通じて外に仕事をして,ピストンが下死点に近く着いた時に排気口が開いて,排気を排出してからまた第一ストロークに入り, 排出した排気を冷却器に入れて,クランク・シャフトとともに回転する扇風機や自然風によって水の流れを冷却後,高温の液体水に戻る,そして,濾してからまた水直噴系統に入って循環し,燃焼から出たH_(2)Oも一緒に液化されて,きわめて少量のCO_(2)が冷却器の上の排気口から排出される, ことを特徴とするガス?スチーム・ディーゼル・エンジン。」 (下線は,請求人が補正箇所を明示するために付したものである。) なお,補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)には「ピトリング」と記載されているが,請求人から送付された平成25年6月19日付けFAXにより,「ピトリング」は「ピストンリング」の誤記と認め,本願補正発明を上記のように認定した。 上記補正は,補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第一ストローク」について,それが「ピストンが下死点に位置にたときにシリンダー内に高圧水霧を噴き入」る点,「扇風機」について,それが「クランクシャフトとともに回転する」点を限定するものであって,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.刊行物 (1)原査定の拒絶の理由に引用文献2として示された米国特許第3672341号明細書(以下「刊行物1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。 (ここで{}内は当審による仮訳である。)。 ア.「It is an object of this invention to provide an engine which is air pollution-free. With hydrogen as the fuel, the only production of combustion is water and with a liquid hydrocarbon fuel such as gasoline, the products of combustion are water, carbon dioxide and other nonpollutants.」(第3欄第46?50行) {この発明の目的は,大気汚染のないエンジンを提供することである。燃料として水素を使用する場合には,唯一の燃焼生成物は水であり,ガソリン等の液体炭化水素燃料を使用する場合には,燃焼生成物は,水,二酸化炭素や他の非汚染物質である。} イ.「It is another object of the present invention to provide a pollution-free engine whereby water is recovered from the engine exhaust and recycled for water spray cooling the cylinder, pistons and exhaust gas during the exhaust stroke. A feature and advantage of the invention lies in the fact that water is the major combustion product of the fuel. Cooling fluids for water spray may thus be provided without requiring excessive fluid storage in the car. Such cooling fluids are regenerated during operation.」(第3欄第46?50行) {本発明のもう一つの目的は,エンジン排気から水が回収され,排気行程中にシリンダ,ピストン,排気ガスを水噴射により冷却するために水が再利用される無公害エンジンを提供することである。本発明の特徴及び利点は,水が燃料の主要な燃焼生成物であるという事実にある。水噴射のための冷却流体は,このようにして車の中で過剰な流体貯蔵を必要とすることなく提供することができる。このような冷却流体は,運転中に再生される。} ウ.「Referring to FIG. 1, showing one cylinder of the 2-stroke, four cylinder, in-line engine illustrating the instant invention, each cylinder has a bore of 2.6 inches and a stroke of 4 inches. The exhaust is removed from cylinder 31 through single overhead valve 35 via exhaust port 35' and exhaust manifold 35" with valve 35 operated by an overhead cam driven in conventional manner, not shown. With an expansion ratio of 20:1, the volume of each combustion chamber is 1.04 cubic inches. The engine, generally designated 12, uses the crankshft from a conventional internal combustion engine having a 4-inch stroke. The water injector 36, oxygen injector 38, fuel injector 39 and a glowplug 41 are all located in the head. Water injector 36 is centered in the bore to provide a uniform spray to piston 32 and the walls of cylinder 31.」(第4欄第47?60行) {図1を参照すると,2ストロークの気筒で,直列4気筒のエンジンが例示されており,各気筒は2.6インチの内径及び4インチのストロークを有している。排気は,シリンダ31からオーバーヘッド弁35,排気口35 '及び排気マニホールド35" を介して流出する。このオーバーヘッド弁35はオーバーヘッドカムにより作動される。20:1の割合の膨張比とするため,各燃焼室の容積は1.04立方インチある。12で示されるエンジンは,4インチのストロークを有する従来の内燃機関と同様のクランクシャフトを使用する。水インジェクタ36,酸素インジェクタ38,燃料噴射装置39とグロープラグ41は,すべてのエンジンヘッドに位置している。水インジェクタ36はピストン32とシリンダ31の壁に均一なスプレーを提供するために,エンジンの中央に配置される。} エ.「In one embodiment of the invention, hydrogen gas is used as a fuel and oxygen gas is used as the oxidant. In another embodiment a liquid hydrocarbon such as diesel fuel or gasoline is used as the fuel and oxygen gas as the oxidant.」(第4欄第69?72行) {本発明の一実施形態では,水素ガスを燃料として,酸素ガスを酸化剤として使用される。別の実施形態では,例えば,ディーゼル燃料またはガソリンなどの液体炭化水素を燃料として,酸素ガスを酸化剤として使用される。} オ.「The exhaust valve 35 opens just before bottom dead center and the hot gas in the cylinder blows down to low pressure, the gas in the cylinder expanding adiabatically. Shortly after the blowdown of the superheated vapor in the cylinder, water injection is initiated through injector 36 to cool the cylinder walls, pistons, and exhaust valve (see FIG. 2B). The exhaust valve 35 is left open during a portion of the exhaust stroke to permit discharge of a portion of the exhaust gas out port 35'. During this exhaust portion of the stroke, the piston 32 has scavenged the majority of the high temperature vapor from the cylinder. Some of the vapor will be cooled directly by vaporizing the injected water as it is sprayed toward the wall.」(第5欄第26?38行) {排気弁35は,シリンダーの高温ガスが低圧となり,断熱膨張する下死点の直前で開く。シリンダ内の加熱蒸気の排出直後に,シリンダ壁,ピストン,排気弁(図2B参照)を冷却するために,インジェクタ36から水の噴射が開始される。排気弁35は, 排気口35'から排気ガスの排出を可能にする一部の排気行程の間,開いたままになっている。この一部の排気行程の間に,ピストン32がシリンダから高温蒸気の大部分を掃気している。蒸気の一部は,壁に向かって噴射されるように注入された水の蒸発によって直接冷却される。} カ.「Exhaust valve 35 is closed (see FIG. 2C) prior to completion of the exhaust stroke to entrain a limited amount of exhaust gas in the cylinder as a working fluid. Typically, the exhaust valve is closed when the piston has reached a position where only about 5:1 volume ratio remains.At the time the exhaust valve is closed, the volume remaining above the piston in the cylinder is filled with saturated steam. At the time of closing the exhaust valve 35, injection of substantially pure gaseous oxygen from injector 38 is initiated (see FIG. 2C). This injection occurs between closing of the exhaust valve and prior to the piston reaching top dead center and while relatively low pressures, e.g., less than about 300 psia, exist in the cylinder. Approximately 15 percent excess oxygen is preferably injected at this point to assure complete combustion. Fuel injection is initiated after a substantial amount of the metered amount of oxygen has been injected so that the fuel is progressively injected into the oxygen rich environment existing within the cylinder. Fuel injection is initiated after oxygen has been injected (as shown in FIG. 2C) but prior to the cylinder reaching top dead center on the exhaust stroke. 」(第5欄第44行?65行) {排気弁35は,シリンダ内の排気ガスが作動流体として制限された量となる排気行程の完了前に閉じられる(図2C参照)。典型的には,約5:1体積比となるピストンの位置に達したときに,排気弁が閉じられる。 排気弁が閉じている時には,シリンダ内のピストンの上方に残っている量は飽和蒸気で満たされている。排気弁35が閉じている時,インジェクタ38から純粋な酸素ガスの注入を開始する(図2C参照)。この酸素ガスの注入は,排気弁の閉止とピストンが上死点に達する前との間に,シリンダー内に約300psiaより小さい,比較的低い圧力で行われる。約15%の過剰酸素は,好ましくは完全燃焼を確保するために,この時点で噴射される。 燃料が酸素が豊富な環境内に注入されるようにするために,酸素が計量された量だけ噴射された後,燃料噴射が開始される。酸素が注入された後(図2(c)に示されている),排気行程でシリンダーが上死点に達する前に燃料噴射が開始される。} キ.「FIG. 2D shows ignition at top dead center of the exhaust stroke where combustion begins and increases the pressure and temperature in the cylinder. Next, the superheated vapor is expanded 20:1 in the power stroke to provide the work output (see FIG. 2E). The superheated vapor transfers heat to the walls which, in addition to cooling by the water jacket 31' are also cooled by the internal water spray on the exhaust upstroke. When the cylinder reaches bottom dead center (FIG. 2A) the cycle begins anew with initiation of the upward exhaust stroke.」(第6欄第10?19行) {図2Dは,燃焼が開始される排気行程における上死点での点火を示しており,シリンダ内の圧力と温度を上昇させる。次に,加熱された水蒸気は膨張行程で20:1に膨張して,外部に仕事をする(図2E参照。)。加熱された水蒸気は,ウォータージャケット31'による冷却に加え,排気工程の内部の水のスプレーで冷却された壁に熱を伝える。シリンダが下死点に到達したとき(図2A),再び排気行程のサイクルが開始される。} ク.「Referring to FIG. 5, water for internal water spray cooling of the cylinder walls, piston, dome, combustion chamber wall and exhaust gas is provided by condensing the water vapor of the working fluid and cooling spray emanating from exhaust port 35'. Exhaust manifold 35" is connected, by line 71, to the top of desuperheater 72, connected near its bottom to condenser 75. Because the amount of water for water spray cooling is less than the amount of water vapor exhausted through exhaust valve 35 and manifold 35", a part of the exhaust may be discharged, through line 71', to the atmosphere.Water or coolant from the radiator and coolant system of engine 12 is circulated through coil 74 in condenser 75. Optionally, liquid oxygen from storage tanks 51 can be circulated through coil 74 as discussed hereinabove to vaporize the liquid oxygen prior to its injection into cylinder 31. Water condensed from the exhaust in condenser 75 is discharged through line 77 into reservoir 76, having an overflow conduit 80 for discharging excess water to the atmosphere and, through line 77', to line 76' connected, at one end, to reservoir 76 and, at its other end, to pump 78. From pump 78 the water is fed, through throttle valve 79, to water spray injector 36, and, through valve 79' and line 73, to the spray head in desuperheater 72.」(第7欄第42?64行) {5図を参照すると,シリンダ壁,ピストン,ドーム,燃焼室壁,排気ガスを水噴霧により冷却するための水は,作動流体や排気口35'から排出される冷却スプレーの水蒸気を凝縮することによって提供される。排気マニホールド35は,ライン71により,下部を凝縮器75に接続された過熱防止装置72に接続されている。水噴霧冷却用の水の量は,排気弁35とマニホールド35 を介して排出される水蒸気の量よりも小さいため,排気ガスの一部が大気中に,ライン71 'を通って排出される。エンジン12のラジエータ及び冷却システムからの水又は冷却剤が凝縮器75にコイル74を通って循環される。液体酸素は,シリンダ31内に噴射する前に,これを気化させるために,必要に応じて,貯蔵タンク51から液体酸素は,コイル74を介して循環させることができる。 凝縮器75内で排気の凝縮水が,ライン77を介してリザーバ76に排出され,ライン77'を介して,一端をリザーバ76,他端がポンプ78に向かうライン76'に接続されている。このリザーバ76は,大気中に過剰な水を排出するためのオーバーフロー管80を有している。ポンプ78からの水は,スロットルバルブ79を介して,水噴射インジェクタ36に,バルブ79'やライン73を介して,過熱防止装置72に供給される。} ケ.図1,2より,エンジン12は,シリンダー蓋,燃焼室,排気パイプ,クランクケース,クランクシャフト34,連接棒33を備えていることが把握される。 また,刊行物1のエンジンは,記載カ,キで説明している「最初のストローク」と,記載クで説明している「次のストローク」に分けられる2ストロークのエンジンであり,「最初のストローク」では,記載オと図2Bより,水の噴射は排気弁35が開いた後に,ピストン32の下死点付近で行われていることが把握できる。そして,噴射された酸素と燃料が上死点付近で混合されることは自明である。「最後のストローク」では,記載クには水蒸気が膨張する膨張行程が記載されており,その際にシリンダー内のピストン32は上から下まで動くことは自明である。 以上の記載を,図1,図2A?図2E,図5に関連するものを中心にまとめ,本願補正発明にならって表現すると,刊行物1には,次の発明が記載されていると認めることができる(以下,この発明を「刊行物1記載の発明」と言う。)。 「エンジンは,2ストロークのエンジンであり, このエンジンは,水インジェクタ36,酸素インジェクタ38,燃料噴射装置39により,エンジンを制御し,及び,凝縮器75,水インジェクタ36,酸素インジェクタ38,燃料噴射装置39,シリンダ31,燃焼室,排気口35'及び排気パイプ,クランクケース,ピストン32,クランクシャフト及び連接棒を備え, 2ストロークは,最初のストロークと次のストロークがあり, 最初のストロークでは,ピストン32は下から上まで動き,排気弁35が開いた後に,ピストン32の下死点付近で,シリンダ内に水の噴射を行い,噴射された水は蒸発して,シリンダ壁を冷却して,排気弁の閉止とピストンが上死点に達する前との間にインジェクタ38から酸素ガスを噴射し,その後で燃料を噴射して混合させて,ピストン32は上死点に達する,混合気は上死点で点火され, 次のストロークでは,ピストン32は上から下まで動き,燃焼によりシリンダ内の温度は上昇し,水蒸気は加熱されて膨張し,ピストン32が下に移動して,外部に仕事をして,ピストン32が下死点となる直前に排気弁35が開いて,排気してからまた最初のストロークに入り, 排出した排気を過熱防止装置72を介して凝縮器75に入れて,ラジエータからの冷却水が流れるコイル74により水の流れを冷却後,液体水に戻る,そして,水噴射インジェクタ36に入って循環し,ライン71'と凝縮器75の横の排気口から排出されるエンジン」 (2)原査定の拒絶の理由に引用文献1として示された特開平8-193504号公報(以下「刊行物2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。 ・「【0013】 【実施例】以下に,本発明にかかる動力プラントの複合サイクルの一実施例を添付図面を参照しながら詳細に説明する。 【0014】図1は,請求項1記載の本発明にかかる動力プラントの複合サイクルの一実施例を模式的に示す説明図である。この複合サイクル14は,概説すると,水蒸気を作動流体とするクローズドループ16で水素および酸素を燃料として運転されるとともに負荷20を駆動する容積型エンジン15と,容積型エンジン15のクローズドループ16の下流に設けられ容積型エンジン15から排気される水蒸気で駆動されて負荷を駆動する排気タービン21と,排気タービン21のクローズドループ16の下流に設けられ水蒸気と熱交換されて熱回収する熱エネルギ利用系17とにより構成される。 【0015】容積型エンジン15は燃料供給装置18を装着され,容積型エンジン15の出力軸には発電機等の負荷20が接続されており,容積型エンジン15の作動エネルギを有効利用する。燃料供給装置18には水素,酸素を燃料とする燃料ライン19が接続される。 【0016】また,容積型エンジン15の吸気系には後述する熱交換器23からの水蒸気供給系が,一方,容積型エンジン15の排気系には排気タービン21がそれぞれ接続される。 【0017】図1に示す実施例では,水蒸気を作動流体とするクローズドループ16は,容積型エンジン15と,電力負荷22に接続された排気タービン21と,燃料供給装置18および排気タービン21に接続され,例えば地域冷暖房等の熱エネルギ利用系17に熱エネルギを供給するとともに水蒸気を水に戻す熱交換器23と,熱交換器23からの水を一旦蓄える水タンク24と,水タンク24に蓄えられた水を再度熱交換器23へ供給する加圧ポンプ26と,水タンク24内の余剰の水を排出するドレン弁25とにより構成される。 【0018】図1に示す本発明にかかる動力プラントの複合サイクル14では,燃料供給装置18へ,燃料ライン19から水素および酸素が,一方熱交換器23から作動流体としての水蒸気がそれぞれ送られ,燃料供給装置18から容積型エンジン15の燃焼室(図示しない)へ水素,酸素および水蒸気が供給されてクローズドループ16が構成される。 【0019】容積型エンジン15の燃焼室内で圧縮された後着火し,水素および酸素燃焼が行われ,まず燃料の高温エネルギが負荷20で電気エネルギとして取り出される。また,こうして負荷20を駆動した後,水素および酸素燃焼反応により水蒸気が排ガスとして排気される。 【0020】排気された水蒸気は,まず排気タービン21に送られて排気タービン21を駆動する。排気タービン21に接続された負荷の一例としての電力負荷22により電気エネルギが取り出される。一方,排気タービン21を通過した水蒸気は熱交換器23に送られ,熱交換器23で熱交換されて熱エネルギ利用系17に熱エネルギを供給するとともに温度を低下されて一部が水となり水タンク24に送られる。なお,図1に示す実施例では,容積型エンジン15と熱交換器23との間に排気タービン21を設けるように構成したが,容積型エンジン15から排気される水蒸気の温度等によっては排気タービン21を設けずに容積型エンジン15と熱交換器23とを直結するようにしてもよい。」 ・「【0041】また,図2に示す本発明にかかる動力プラントの複合サイクル27は,往復動型エンジン28が水素および酸素を燃料とするとともに水蒸気を作動流体とするクローズドループ41を構成するため,往復動型エンジン28における燃焼に窒素を含む空気を吸入しないため,排ガスは水蒸気となりNOXの排出を防止できる。 【0042】図2に示す実施例では,容積型エンジンとして4サイクルの往復動型直噴式ディーゼルエンジンを用いた場合を例にとったが,本発明にかかる動力プラントの複合サイクルはかかる態様に限定されるものではなく,例えば2サイクルの往復動型エンジンを用いれば小型エンジンで大きな出力を得られる。また,往復動型エンジンに限られるものでもなく,例えばロータリエンジンを用いることもできる。図4は,図2に示す本発明にかかる動力プラントの複合サイクルにおいて往復動型エンジンの代わりにロータリエンジンを用いた場合を示す説明図である。なお,図4の説明では図2の説明と重複する部分は省略する。」 3.対比・判断 (1)本願補正発明と刊行物1記載の発明を対比する。 刊行物1記載の発明の「エンジン」は,記載イ?オより,ディーゼル燃料を使用する2サイクルのエンジンであり,エンジンに水を噴射するものであるから,本願補正発明の「ガススチーム・ディーゼルエンジン」に相当する。 また,刊行物1記載の発明の「水インジェクタ36,酸素インジェクタ38,燃料噴射装置39」,「凝縮器75」,「シリンダ31」,「ピストン32」,「最初のストローク」,「次のストローク」,「排気口35'」は,それぞれ,本願補正発明の「三元性ガス入り系統」,「排気回収冷却器」および「冷却器」,「シリンダー」,「ピストン」,「第1のストローク」,「第2のストローク」,「排気口」に相当する。また,エンジンのピストンに「ピストンリング」を設けることは自明である。 請求人からの平成25年6月19日付けのFAXによれば,「ガス入り」,「ガス配給」,「ガス掃除」は,「給気」,「圧縮,膨張」,「排気」を意味するものであり,2サイクルエンジンにおいては,これらの「給気」,「圧縮,膨張」,「排気」の制御は当然,行われているものである。 刊行物1記載の発明の「最初のストローク」において,排気弁35が開いた後に,水の噴射を行っているから,水の噴射は,排気弁35は開いた状態で行っており,ガス掃除,すなわち,排気も行っているといえる。また,水の噴射は,高圧水霧を噴くことで行われることは自明である。 よって,刊行物1記載の発明の「排気弁35が開いた後に,ピストン32の下死点付近で,シリンダ内に水の噴射を行」う態様と本願補正発明の「ピストンが下死点に位置したときにシリンダー内に高圧水霧を噴き入り,同時にガス掃除する」態様とは,「ピストンが下死点付近に位置したときにシリンダー内に高圧水霧を噴き入り,ガス掃除する」との概念で共通する。 また,刊行物1において,ピストンの下死点付近において,シリンダー内の温度が高く,そのために,水が水蒸気となることは自明である。さらに,酸素の噴射は,圧縮行程の圧縮比が約5:1以下となる排気弁の閉止後で,排気弁の閉止とピストンが上死点に達する前との間に行われるから,圧縮行程の中期或いは後期に行われているといえる。 よって,刊行物1記載の発明の「噴射された水は蒸発して,シリンダ壁を冷却」する態様は,本願補正発明の「その時はシリンダー内は温度が高いから,水霧はガス掃除後,水蒸気になり,同時にもシリンダーを冷却」する態様に相当し,前者の「排気弁の閉止とピストンが上死点に達する前との間にインジェクタ38から酸素ガスを噴射し,その後で燃料を噴射して混合させ」る態様と,後者の「圧縮過程の中期あるいは後期,一回或いは数回もシリンダー内に酸素を噴いて,燃料と相対噴射或いは噴霧器型の噴射して混合させ」る態様とは,「圧縮過程の中期あるいは後期,一回或いは数回もシリンダー内に酸素を噴いて,燃料と混合させ」る概念で共通する。さらに,前者の「混合気は上死点で点火され」る態様は,後者の「混合気は圧縮効力で自然発火あるいは点火され」る態様に相当する。 刊行物1記載の発明の「次のストローク」において,上死点で慣性力が作用すること,上死点を過ぎて,激しい燃焼,激しい膨張が起こること及びピストンの下への移動により連接棒のクランクシャフトを通じて外に仕事をすること,燃焼により発生した高温高圧のガスが,相対的に低温低圧の蒸気を加熱して膨張すること,そして,ガスの燃焼と水蒸気の加熱および膨張と外部への仕事が同時に起こることは,いずれも当業者にとって自明である。 よって,刊行物1記載の発明の「ピストン32は上から下まで動き,燃焼によりシリンダ内の温度は上昇し,水蒸気は加熱されて膨張し,ピストン32が下に移動して,外部に仕事をして,ピストン32が下死点となる直前に排気弁35が開いて,排気してからまた最初のストロークに入」る態様は,本願補正発明の「ピストンは上から下まで動き,慣性でピストンが上死点を過ぎ,激しく燃えて発生した高温高圧のガスは,同時にシリンダー内の圧縮された大量低温低圧の水蒸気を加熱し,激しい膨張が起こり,共にピストンが下への移動を推進して,同時に連接棒のクランク・シャフトを通じて外に仕事をして,ピストンが下死点に近く着いた時に排気口が開いて,排気を排出してからまた第一ストロークに入」る態様に相当する。 さらに,記載アより,液体炭化水素燃料を使用する場合には,燃焼生成物は,水,二酸化炭素等であるから,刊行物1記載の発明において,エンジンからの排気には,燃焼により生成された水も含まれており,図5を参照すれば,凝縮器75の排気口(gas vent)からは,CO_(2)等が排出されるといえる。また,凝縮器75を出た水は,水噴射インジャクタに到達するまでに,外気で温められる等により,相対的に高温の液体水となることは自明である。 よって,刊行物1記載の発明の「排出した排気を過熱防止装置72を介して凝縮器75に入れて,ラジエータからの冷却水が流れるコイル74により水の流れを冷却後,液体水に戻る」態様と,本願補正発明の「排出した排気を冷却器に入れて,クランク・シャフトとともに回転する扇風機や自然風によって水の流れを冷却後,高温の液体水に戻る」態様とは,「排出した排気を冷却器に入れて,水の流れを冷却後,高温の液体水に戻る」概念で共通する。また,前者の「水噴射インジェクタ36に入って循環し,ライン71'と凝縮器75の横の排気口から排出される」態様と,後者の「濾してからまた水直噴系統に入って循環し,燃焼から出たH_(2)Oも一緒に液化されて,きわめて少量のCO_(2)が冷却器の上の排気口から排出される」態様とは,「水直噴系統に入って循環し,燃焼から出たH_(2)Oも一緒に液化されて,CO_(2)が冷却器の排気口から排出される」概念で共通する。 そうすると,両者の一致点及び相違点は,次のとおりである。 [一致点] 「ガス?スチーム・ディーゼル・エンジンは,2ストロークのディーゼル・エンジンであり, このエンジンは,三元性ガス入り系統によってガス入り,ガス配給,ガス掃除を制御し,及び,排気回収冷却器,三元性ガス入り系統,シリンダー蓋,シリンダー,燃焼室,及び排気パイプ,クランクケース,ピストンとピストンリング,クランク・シャフト及び連接棒を備え, 前に述べた2ストロークは,第一ストロークと第二ストロークがあり, 第一ストロークでは,ピストンは下から上まで動き,ピストンが下死点付近に位置したときにシリンダー内に水の噴射を行い,ガス掃除する,その時はシリンダー内は温度が高いから,水霧はガス掃除後,水蒸気になり,同時にもシリンダーを冷却して,圧縮過程の中期あるいは後期,一回或いは数回もシリンダー内に酸素を噴いて燃料と混合させて,ピストンは上死点に近く行き続く,混合気は圧縮効力で自然発火あるいは点火され, 第二ストロークでは,ピストンは上から下まで動き,慣性でピストンが上死点を過ぎ,激しく燃えて発生した高温高圧のガスは,同時にシリンダー内の圧縮された大量低温低圧の水蒸気を加熱し,激しい膨張が起こり,共にピストンが下への移動を推進して,同時に連接棒のクランク・シャフトを通じて外に仕事をして,ピストンが下死点に近く着いた時に排気口が開いて,排気を排出してからまた第一ストロークに入り, 排出した排気を冷却器に入れて,水の流れを冷却後,高温の液体水に戻る,そして,また水直噴系統に入って循環し,燃焼から出たH_(2)Oも一緒に液化されて,CO_(2)が冷却器の排気口から排出される, ガス?スチーム・ディーゼル・エンジン。」 [相違点1] 本願補正発明は,多排気口を備えるとともに,多孔排気とはねかけ潤滑を利用しているのに対し,刊行物1記載の発明ではそのような特定がなされていない点。 [相違点2] 本願補正発明では,第一ストロークでは,ピストンは下から上まで動き,ピストンが下死点に位置したときにシリンダー内に高圧水霧を噴き入り,同時にガス掃除するのに対して,刊行物1記載の発明では,ピストンが下死点付近に位置したときにシリンダー内に高圧水霧を噴き入るものであり,ガス掃除と同時かどうか明らかではない点。 [相違点3] 本願補正発明では,シリンダー内に酸素を噴いて燃料と相対噴射或いは噴霧器型の噴射して混合させるのに対し,刊行物1記載の発明では酸素を噴いて燃料と混合させるが,噴射形態について特定がなされていない点。 [相違点4] 本願補正発明では,排出した排気を冷却器に入れて,クランク・シャフトとともに回転する扇風機や自然風によって水の流れを冷却するのに対し,刊行物1記載の発明は,排出した排気を過熱防止装置72を介して凝縮器75に入れて,ラジエータからの冷却水が流れるコイル74により水の流れを冷却する点。 [相違点5] 本願補正発明では,排気の冷却した液体水を,濾してから水直噴系統に入って循環するのに対して,刊行物1記載の発明ではそのような特定がなされていない点。 [相違点6] 本願補正発明では,きわめて少量のCO_(2)が冷却器の上の排気口から排出されるとされているのに対し,刊行物1記載の発明では,ライン71'と冷却器の排気口の横から排出される点。 (2)相違点について検討する。 [相違点1]について 2サイクルエンジンにおいて,排気口を複数設けることは,本願の優先日前に周知の技術である(例えば,特開平10-82311号公報の段落【0009】,特開平8-296444号公報の特許請求の範囲参照。)。また,はねかけ潤滑を利用したエンジンも,本願の優先日前に周知の技術である(例えば,特開平4-287818号公報,実願昭57-9162号(実開昭58-111304号)のマイクロフィルム参照。)。 そして,刊行物1記載の発明にこれらの周知の技術を適用することは,当業者が適宜なし得たことにすぎない。 [相違点2]について 刊行物1には,排気弁35が下死点の直前で開いた後に,水の噴射が開始される点が開示されているが,下死点において水の噴射を開始することは排除されていない。そして,エンジンの制御における流体の噴射時期は,当業者により適宜選択されるものであるから,水の噴射の時期を,燃料噴射のタイミング等を考慮して,ピストンが下死点に位置したときに行うことは,当業者にとって格別困難なことではない。 そして,上記刊行物1における水の噴射は,排気弁35は開いた状態で行っているから,水の噴射を行っている時は,ガス掃除,すなわち,排気も同時に行っているということができる。 よって,刊行物1記載の発明において,上記相違点2係る本願補正発明の発明特定事項を採用することは,当業者が格別困難なく想到し得ることである。 [相違点3]について 一般に,シリンダ内への流体の供給を噴霧器を用いた高圧噴霧で行い,酸素と燃料を混合することは,エンジン技術における慣用手段にすぎない。 よって,刊行物1記載の発明において,上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項を採用することは,上記慣用手段を考慮することにより,当業者が格別の創作能力を要することなくなし得たことである。 [相違点4]について 刊行物2には,2サイクルのディーゼルエンジンにおいて,エンジンの燃焼室に水蒸気を供給し,排ガスとして排気された水蒸気をエンジンと直結された熱交換器に送って冷却した後に,エンジンに送る点(以下,これを「排ガス冷却構造」という。)が開示されている。 また,クランクシャフトの回転により冷却ファンを回転させて冷却を行うこと及び自然風により空冷を行うことは,エンジン技術における慣用手段にすぎない。 そして,刊行物1記載の発明と刊行物2が開示するディーゼルエンジンとは,エンジンに水を噴射させて,排気を冷却して再利用する点において軌を一にするものである。 よって,刊行物1記載の発明に,刊行物2の排ガス冷却構造及び上記慣用手段を採用し,相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは,当業者にとって格別の創作能力を要することなくなし得たことである。 [相違点5][相違点6]について 水噴射エンジンにおいて,フィルタ等により濾過した水を燃料噴射弁に供給することは,本願の優先日前に周知の技術である(例えば,特開平9-144606号公報の段落【0011】参照。)。 また,冷却器に設ける排気口の位置は,当業者によりその最適な場所が適宜選択されるものであり,本願補正発明のように,冷却器の上に排気口を設けて,排ガスに含まれるCO_(2)がそこから排出されるように構成することは,当業者にとって格別困難なことではない。そのCO_(2)の量は,燃焼室内での燃焼の仕方に依存するものであり,特にそれをきわめて少量とすることも,当業者が適宜なし得ることである。 そして,刊行物2の排ガス冷却構造を採用して,エンジンと冷却器とを直結して,全ての排気を冷却器に供給して,そこから排気するように構成することも,当業者が適宜なし得ることである。 よって,刊行物1記載の発明において,相違点5及び相違点6に係る本願補正発明の発明特定事項を採用することは,当業者にとって格別の創作能力を要することなくなし得たことである。 また,本願補正発明の効果についてみても,刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術的事項及び慣用手段からみて格別顕著な効果が奏されるということもできない。 (3)以上を踏まえると,本願補正発明は,刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術的事項及び慣用手段に基づいて,当業者が容易に発明し得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (4)まとめ よって,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の各請求項に係る発明は,原審において提出された平成23年1月31日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるところ,その請求項1は「第2 1.(1)」に記載したとおりである(以下,この請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。 2.刊行物 刊行物1,2及びその記載事項並びに刊行物1記載の発明は,「第2 2.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は,「第2」で検討した本願補正発明から前記の限定事項を省いたものに相当する。 そうすると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が,「第2 3.」において検討したとおり,刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術的事項及び慣用手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本 願発明も,同様の理由により,刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術的事項及び慣用手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと言うことができる。 4.むすび 以上のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は,拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-07-01 |
結審通知日 | 2013-07-02 |
審決日 | 2013-07-16 |
出願番号 | 特願2007-526179(P2007-526179) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F01K)
P 1 8・ 572- Z (F01K) P 1 8・ 121- Z (F01K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井上 茂夫、平瀬 知明 |
特許庁審判長 |
新海 岳 |
特許庁審判官 |
藤井 昇 平城 俊雅 |
発明の名称 | ガス?スチーム・ディーゼル・エンジン |
代理人 | 森川 泰司 |
代理人 | 美恵 英樹 |
代理人 | 雨宮 康仁 |
代理人 | 毛受 隆典 |
代理人 | 桜田 圭 |
代理人 | 木村 満 |