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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09G
管理番号 1282107
審判番号 不服2012-16253  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-22 
確定日 2013-12-24 
事件の表示 特願2006-113367「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月1日出願公開、特開2007-286341、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
この審判事件に関する出願(以下、「本件出願」という。)は、平成18年4月17日にされた特許出願である。そして、平成23年12月8日付け手続補正書により明細書及び特許請求の範囲についての補正がされた。さらに、平成24年3月19日付け手続補正書により明細書及び特許請求の範囲についての補正がされたが、この補正は、同年5月18日付けの決定(以下、「補正の却下の決定」という。)をもって却下され、同日付けで拒絶査定がされた。査定の謄本は、同年同月29日に送達された。
これに対して、同年8月22日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に明細書及び特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がされた。そして、特許法第162条の規定による審査において、同年11月30日付けで同法第164条第3項の規定による報告がされた。
当審は、同法第134条第4項の規定に基づき、平成25年2月6日付けで請求人を審尋し、同報告に対する意見を求めた。これに対して、請求人は、同年4月30日付け回答書を提出した。

第2 本件補正の適否(1)
1.本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1についての補正と明細書の段落0008についての補正とを含む。

(1)請求項1についての補正
請求項1についての補正は、本件補正前(平成23年12月8日付け手続補正書による補正の後をいう。以下同じ。)の請求項1を、以下のように補正するものである。なお、下線は、請求人が付したものであり、補正箇所を示す。

(本件補正前)
「【請求項1】
駆動電流に応じて発光する自発光素子を表示領域にマトリクス状に配置した表示装置であって、
表示領域と異なる測定用画素内に形成され、表示領域に形成した有機EL素子と同じ工程で形成される測定用自発光素子と、
前記測定用画素内に形成され、前記測定用自発光素子に流れる駆動電流をオンオフにより制御する駆動トランジスタと、
前記駆動トランジスタのゲートに駆動電圧を供給する駆動電圧供給手段と、
前記駆動電圧供給手段により駆動電圧が供給されたときにおける測定用自発光素子の駆動状態を検出する駆動状態検出手段と、
を有し、
前記表示領域の自発光素子および測定用自発光素子は、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色を有すると共に、
前記駆動状態検出手段におけるRGB各色の測定用自発光素子の駆動状態から、所定のホワイトポイントで出力できるRGB各色の最大輝度を求め、得られた最大輝度の値が設定値に対し所定範囲内に収まっているかを判定し、収まっていれば前記ホワイトポイントを与える最大階調をRGB表示用画素の最大階調に設定し、RGB表示用画素の表示データを設定する表示データ設定手段を有することを特徴とする表示装置。」

(本件補正後)
「【請求項1】
駆動電流に応じて発光する自発光素子を表示領域にマトリクス状に配置した表示装置であって、
表示領域と異なる測定用画素内に形成され、表示領域に形成した有機EL素子と同じ工程で形成される測定用自発光素子と、
前記測定用画素内に形成され、前記測定用自発光素子に流れる駆動電流をオンオフにより制御する駆動トランジスタと、
前記駆動トランジスタのゲートに駆動電圧を供給する駆動電圧供給手段と、
前記駆動電圧供給手段により駆動電圧が供給されたときにおける測定用自発光素子の駆動状態を検出する駆動状態検出手段と、
を有し、
前記表示領域の自発光素子および測定用自発光素子は、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色を有すると共に、
前記駆動状態検出手段は、RGB各色の測定用自発光素子に共通して1系統備えられ、RGBの測定タイミングをずらして時分割でRGB各色の測定用自発光素子と接続することで駆動状態を検出し、
前記表示領域の自発光素子および測定用自発光素子に印加する電圧VDD-VSSにおいて、電源電圧VDDを固定値とし、電源電圧VSSに初期値を設定することで、前記駆動状態検出手段におけるRGB各色の測定用自発光素子の駆動状態から、所定のホワイトポイントで出力できるRGB各色の最大輝度を求め、得られた最大輝度の値が設定値に対し所定範囲内に収まっているかを判定し、収まっていれば前記ホワイトポイントを与える最大階調をRGB表示用画素の最大階調に設定し、RGB表示用画素の表示データを設定し、前記最大輝度の値が設定値に対し所定範囲内に収まっていなければ、前記電源電圧VSSを輝度に応じて変更するようにして設定し直し、前記最大輝度の値が設定値に対し所定範囲内に収まるまで前記電源電圧VSSの設定し直す動作を繰り返すことで、所定のホワイトポイントを所定の輝度で実現する表示データ設定手段を有することを特徴とする表示装置。」

なお、請求項2から8までは、いずれも請求項1の記載を直接又は間接的に引用して記載した請求項であるから、請求項1についての補正がされた結果、請求項2から8までについても同じ補正がされた。

(2)段落0008についての補正
段落0008についての補正は、補正前の段落0008の記載を、本件補正後の請求項1の記載と整合させるものである。

2.新規事項の追加についての判断
請求項1についての補正及び段落0008についての補正は、本件出願の願書に最初に添付した明細書の段落0029、0040及び0041並びに図面の図5及び7に記載された事項に基づくものであるから、本件出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、本件補正は、いわゆる新規事項の追加には該当せず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3.本件補正の目的についての判断
請求項1についての補正は、第一に、「駆動状態検出手段」を、「RGB各色の測定用自発光素子に共通して1系統備えられ、RGBの測定タイミングをずらして時分割でRGB各色の測定用自発光素子と接続することで駆動状態を検出」するものに限定する補正である。
第二に、「表示データ設定手段」が「前記駆動状態検出手段におけるRGB各色の測定用自発光素子の駆動状態から、所定のホワイトポイントで出力できるRGB各色の最大輝度を求め」る際に、「前記表示領域の自発光素子および測定用自発光素子に印加する電圧VDD-VSSにおいて、電源電圧VDDを固定値とし、電源電圧VSSに初期値を設定する」点を限定し、さらに、「表示データ設定手段」を、「前記最大輝度の値が設定値に対し所定範囲内に収まっていなければ、前記電源電圧VSSを輝度に応じて変更するようにして設定し直し、前記最大輝度の値が設定値に対し所定範囲内に収まるまで前記電源電圧VSSの設定し直す動作を繰り返すことで、所定のホワイトポイントを所定の輝度で実現する」ものに限定する補正である。
そうすると、請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものである。また、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
上記1.(1)で述べたとおり、請求項1についての補正がされた結果、請求項2から8までについても同じ補正がされたが、請求項2から8までについての補正も、本件補正前の各請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものである。そして、請求項2から8までに記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、本件補正の前後を通じて同一である。
したがって、本件補正のうち、特許請求の範囲についての補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正が特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するか(すなわち、本件補正後の請求項1から8までに記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。
なお、以下では、本件補正後の請求項1から8までに記載された発明を、対応する請求項の番号を用いて、「本件補正発明1」、「本件補正発明2」などという。

第3 本件補正の適否(2)-独立特許要件についての判断
1.刊行物に記載された事項
以下に掲げる刊行物1から3までは、いずれも本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である。刊行物1及び2は、原査定の拒絶の理由、補正の却下の決定及び審尋に引用され、刊行物3は、補正の却下の決定及び審尋に引用された。

刊行物1:特開2002-304155号公報
刊行物2:特開2002-258792号公報
刊行物3:国際公開第98/40871号

(1)刊行物1
ア.刊行物1の記載
刊行物1には、以下の記載がある。

(ア)段落0001
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基板上に形成された有機発光素子(OLED:Organic Light Emitting Device)を、該基板とカバー材の間に封入したOLEDパネルに関する。また、該OLEDパネルにICを実装したOLEDモジュールに関する。なお本明細書において、OLEDパネル及びOLEDモジュールを発光装置と総称する。本発明はさらに、該発光装置を用いた電子機器に関する。」

(イ)段落0005から0010まで
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】発光装置を実用化する上で、現在一つの重大な問題となっているのが、有機発光層が有する有機発光材料の劣化に伴う、OLEDの輝度の低下である。
【0006】有機発光層が有する有機発光材料は水分、酸素、光、熱に弱く、これらのものによって劣化が促進される。…(略)…
【0007】有機発光層に一対の電極から一定の電圧をかけていても、有機発光層が劣化することで、OLEDの輝度は低下する。そしてOLEDの輝度が低下すると、発光装置に表示される画像は不鮮明になる。なお本明細書において、一対の電極から有機発光層に印加する電圧をOLED駆動電圧(Vel)と定義する。
【0008】また、R(赤)、G(緑)、B(青)に対応した三種類のOLEDを用いたカラー化表示方式において、有機発光層を構成する有機発光材料は、OLEDの対応する色によって異なる。OLEDの有機発光層が、対応する色にごとに異なる速度で劣化すると、時間が経つにつれ、OLEDの輝度が色ごとに異なってしまい、発光装置に所望の色を有する画像を表示することができなくなる。
【0009】さらに、OLEDの発光輝度は大きな温度依存性を有するため、定電圧駆動すると、気温によって表示の輝度や、色合いが変わってしまうという問題もあった。
【0010】本発明は上述したことに鑑み、有機発光層が多少劣化したり、環境温度が変わったりしても、OLEDの輝度の変化を抑え、安定して所望のカラー表示を行うことが可能な発光装置を提供することを課題とする。」

(ウ)段落0011から0026まで
「【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者は、OLED駆動電圧を一定に保って発光させるのと、OLEDに流れる電流を一定に保って発光させるのとでは、後者の方が、劣化によるOLEDの輝度の低下が小さいことにまず着目した。なお本明細書において、OLEDに流れる電流をOLED駆動電流(Iel)と呼ぶ。
【0012】図2に、OLED駆動電圧を一定にしたときと、OLED駆動電流を一定にしたときの、OLEDの輝度の変化を示す。図2に示すとおり、OLED駆動電流が一定のOLEDの方が、劣化による輝度の変化が小さい。これは、OLEDは劣化すると、L-I直線の傾きが小さくなるだけではなく、I-V曲線自体が下側に移動してしまうからである。(図18(A)、(B)参照)
【0013】よって本発明者は、劣化等によってOLED駆動電流が変化しても、常にOLED駆動電流が一定になるように、OLED駆動電圧を補正することができる簡易な構成の発光装置を考案した。
【0014】具体的に本発明では、画像を表示するための画素部とは別に、OLED駆動電流を測定するための画素部を発光装置に設けた。モニター用画素部も表示部として有効利用するために、何らかの画像を表示できることが好ましいが、画像表示が可能であることが必須なわけではない。以下本明細書では、上述した2つの画素部を明確に区別するために、映像を表示することを主眼とした画素部を表示用画素部(第1の画素部)、OLED駆動電流を測定することを主眼とした画素部をモニター用画素部(第2の画素部)と呼ぶ。
【0015】表示用画素部とモニター用画素部は、互いに各画素の構成が同じであり、同じ回路図で表すことができる。そして、表示用画素部の画素(以下、表示用画素または第1の画素)とモニター用画素部の画素(以下、モニター用画素または第2の画素)がそれぞれ有するOLEDは、発光輝度が最大のときにおけるOLED駆動電圧が可変電源によって制御されており、好ましくは両電圧値は等しくなるように保たれる。
【0016】なお本明細書において可変電源とは、回路や素子に供給する電圧が一定ではなく可変である電源を意味する。
【0017】そしてさらに本発明の発光装置は、モニター用画素部のOLED(以下、モニター用OLEDまたは第2のOLED)のOLED駆動電流を測定する第1の手段と、その測定値からOLEDに印加する電圧を算出する第2の手段と、実際に電圧値の制御を行う第3の手段とを有している。
【0018】なお、第2の手段は電流測定値と基準値の比較をする手段、第3の手段は測定値と基準値との間にある程度の差があった場合に、その差を縮めるように可変電源を制御し、表示用画素のOLED(以下、表示用OLEDまたは第1のOLED)及びモニター用OLEDのOLED駆動電圧を補正する手段であっても良い。
【0019】そして、モニター用画素部には、表示用画素部に入力するビデオ信号とは異なった系統のビデオ信号が入力されている。ただし、両ビデオ信号とも、階調の情報を含んでいるという点では同じであり、表示する画像の系統が別個であるにすぎない。以下、表示用画素部に入力するビデオ信号を表示用ビデオ信号、モニター用画素部に入力するビデオ信号をモニター用ビデオ信号と呼ぶ。
【0020】モニター用OLEDのOLED駆動電流を測定するときは、モニター用画素部には、モニター用ビデオ信号によりモニター用の画像(以下、モニター用画像)が表示されている。モニター用画像は静止画でも動画でもどちらでも良い。また全ての画素において同じ階調を表示するようにしても良い。さらに、表示用OLEDとモニター用OLEDの劣化の度合いが同じくなるように、表示用OLEDとモニター用OLEDのOLED駆動電流の時間的に平均した値がほぼ同じになるような、モニター用画像を表示することが好ましい。
【0021】…(略)…
【0022】上記構成によって、本発明の発光装置は、有機発光層が劣化してもOLEDの輝度の低下を抑えることができ、その結果鮮明な画像を表示することができる。
【0023】また、R(赤)、G(緑)、B(青)に対応した三種類のOLEDを用いたカラー化表示方式の場合、各色に対応したモニター用画素部をそれぞれ設け、各色のOLEDごとにOLED駆動電流を測定し、OLED駆動電圧を補正するようにしても良い。この構成によって、OLEDの有機発光層が、対応する色にごとに異なる速度で劣化しても、各色の輝度のバランスが崩れるのを防いで所望の色を表示することができる。
【0024】また、有機発光層の温度は、外気温やOLEDパネル自身が発する熱等に左右されるが、一般的にOLEDは定電圧で駆動すると、温度によって流れる電流の値が変化する。図3に、有機発光層の温度を変化させたときの、OLEDの電圧電流特性の変化を示す。電圧が一定のとき、有機発光層の温度が高くなると、OLED駆動電流は大きくなる。そしてOLED駆動電流とOLEDの輝度はほぼ比例関係にあるため、OLED駆動電流が大きければ大きいほど、OLEDの輝度は高くなる。図2において、定電圧輝度が約24時間の上下周期を示しているのも、昼夜温度差が反映されているためである。しかし、本発明の発光装置では、有機発光層の温度が変化しても、OLED駆動電圧を補正することでOLED駆動電流を常に一定に保つことができる。よって、温度変化に左右されずに一定の輝度を得ることができ、また温度の上昇に伴って消費電力が大きくなるのを防ぐことができる。
【0025】さらに、一般的に、有機発光材料の種類によって温度変化におけるOLED駆動電流の変化の度合いが異なるため、カラー表示において各色のOLEDの輝度が温度によってバラバラに変化することが起こりうる。しかし本発明の発光装置では、温度変化に左右されずに一定の輝度を得ることができるので、各色の輝度のバランスが崩れるのを防ぐことができ、所望の色を表示することができる。
【0026】なお本発明は、デジタル時間階調駆動のアクティブマトリクス型発光装置に特に有効であるが、アナログ階調駆動のアクティブマトリクス型発光装置にも有効である。またパッシブ型の発光装置にも用いることができる。」

(エ)段落0028から0049まで
「【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成について説明する。
【0029】図1に本発明のOLEDパネルの構成を、ブロック図で示す。101は表示用画素部であり、複数の表示用画素102がマトリクス状に形成されている。また、103はモニター用画素部であり、複数のモニター用画素104がマトリクス状に形成されている。また、105はソース線駆動回路、106はゲート線駆動回路である。
【0030】表示用画素部101とモニター用画素部103は同じ基板上に形成していても良いし、異なる基板上に形成していても良い。なお図1ではソース線駆動回路105とゲート線駆動回路106とが、表示用画素部101及びモニター用画素部103と同じ基板上に形成されているが、本発明はこの構成に限定されない。ソース線駆動回路と105とゲート線駆動回路106とが画素部101またはモニター用画素部103と異なる基板上に形成され、FPC等のコネクターを介して、画素部101またはモニター用画素部103と接続されていても良い。また、図1ではソース線駆動回路105とゲート線駆動回路106は1つづつ設けられているが、本発明はこの構成に限定されない。ソース線駆動回路105とゲート線駆動回路106の数は設計者が任意に設定することができる。
【0031】また図1では、表示用画素部101にソース線S1?Sx、電源線V1?Vx、ゲート線G1?Gyが設けられている。また、モニター用画素部103には、ソース線S(x+1)、電源線V(x+1)、ゲート線G1?Gyが設けられている。なおソース線と電源線の数は必ずしも同じであるとは限らない。またこれらの配線の他に、別の異なる配線が設けられていても良い。また図1では、モニター用画素部103に、ソース線S(x+1)を有する一列分の画素のみが設けられている例を示しているが、本発明の発光装置はこの構成に限定されない。モニター用画素部103に、複数のソース線を有する数列分の画素が設けられていても良い。モニター用画素部103に設けられる画素の数は、設計者が適宜選択することが可能である。
【0032】各表示用画素102には表示用OLED107が設けられている。また各モニター用画素104にはモニター用OLED108が設けられている。表示用OLED107及びモニター用OLED108は陽極と陰極を有しており、本明細書では、陽極を画素電極(第1の電極)として用いる場合は陰極を対向電極(第2の電極)と呼び、陰極を画素電極として用いる場合は陽極を対向電極と呼ぶ。
【0033】表示用OLED107の画素電極は、1つまたは複数のTFTを介して電源線V1?Vxのいずれか1つに接続されている。そして電源線V1?Vxは全て表示用可変電源109に接続されている。表示用OLED107の対向電極は全て表示用可変電源109に接続されている。なお表示用OLED107の対向電極は、1つまたは複数の素子を介して表示用可変電源109に接続されていても良い。
【0034】一方、モニター用OLED108の画素電極は、1つまたは複数のTFTを介して電源線V(x+1)に接続されている。そして電源線V(x+1)は、電流計111を介して、全てモニター用可変電源110に接続されている。モニター用OLED108の対向電極は全てモニター用可変電源110に接続されている。なおモニター用OLED108の対向電極は、1つまたは複数の素子を介してモニター用可変電源110に接続されていても良い。
【0035】なお図1では、表示用可変電源109及びモニター用可変電源110が、電源線側が高い電位(Vdd)に、対向電極側が低い電位(Vss)に保たれるように接続されている。しかし本発明はこの構成に限定されず、表示用可変電源109及びモニター用可変電源110は表示用OLED107及びモニター用OLED108に流れる電流が順バイアスになるように接続されていれば良い。
【0036】…(略)…
【0037】そして112は補正回路であり、電流計111において測定された電流の値(測定値)に基づいて、表示用可変電源109及びモニター用可変電源110を制御する。具体的には、表示用可変電源109から表示用OLED107の対向電極及び電源線V1?Vxに供給される電圧と、モニター用可変電源110からモニター用OLED108の対向電極及び電源線V(x+1)に供給される電圧を制御する。
【0038】…(略)…
【0039】またカラー化表示方式の場合、各色ごとに表示用可変電源、モニター用可変電源、補正回路、電流計を設け、各色のOLEDにおいてOLED駆動電圧を補正するようにしても良い。なおこのとき、補正回路は色毎に設けても良いし、複数の色のOLEDに共通の補正回路を設けても良い。
【0040】図4にモニター用画素104の詳しい構成を示す。なお、表示用画素102は、素子の接続構成はモニター用画素104と同じである。
【0041】図4に示したモニター用画素104は、ソース線S(x+1)、ゲート線Gj(j=1?y)、電源線V(x+1)、スイッチング用TFT120、駆動用TFT121、コンデンサ122及びモニター用OLED108を有している。なお図4に示した画素の構成はほんの一例であり、画素が有する配線や素子の数、種類及びその接続は、図4に示した構成に限定されない。本発明の発光装置は、可変電源により各画素のOLEDのOLED駆動電圧が制御可能であるならば、どのような構成を有していても良い。
【0042】図4では、スイッチング用TFT120のゲート電極がゲート線Gjに接続されている。そしてスイッチング用TFT120のソース領域とドレイン領域は、一方はソース線S(x+1)に、もう一方は駆動用TFT121のゲート電極に接続されている。そして、駆動用TFT121のソース領域とドレイン領域は、一方は電源線V(x+1)に、もう一方はモニター用OLED108の画素電極に接続されている。コンデンサ122は駆動用TFT121のゲート電極と電源線V(x+1)との間に形成されている。
【0043】図4に示したモニター用画素104では、ゲート線Gjの電位がゲート線駆動回路106によって制御され、ソース線S(x+1)にはソース線駆動回路105によってモニター用ビデオ信号が入力される。スイッチング用TFT120がオンになると、ソース線S(x+1)に入力されたモニター用ビデオ信号は、スイッチング用TFT120を介して駆動用TFT121のゲート電極に入力される。そして駆動用TFT121がモニター用ビデオ信号によりオンになると、モニター用可変電源110によりモニター用OLED108の画素電極と対向電極の間にOLED駆動電圧が印加され、モニター用OLED108が発光する。
【0044】モニター用OLED108が発光しているときに、電流計111において電流が測定され、その測定値がデータとして補正回路112に送られる。電流を測定する期間は電流計111の性能により異なり、計測可能な長さ以上の期間であることが必要である。また電流計111では、計測する期間に流れる電流の平均値もしくは最大値が読み取られるようにする。
【0045】補正回路112では、電流の測定値と、定められた電流の値(基準値)とが比較される。そして、測定値と基準値の間にある程度の差がある場合に、補正回路112はモニター用可変電源110及び表示用可変電源109を制御して、電源線V(x+1)とモニター用OLED108の対向電極の間の電圧、及び電源線V1?Vxと表示用OLED107の対向電極の間の電圧を補正する。これにより、表示用OLED107及びモニター用OLED108においてOLED駆動電圧が補正され、所望する大きさのOLED駆動電流が流れる。
【0046】なお、OLED駆動電圧は、電源線側の電位が制御されることで補正されていても良いし、対向電極側の電位が制御されることで補正されていても良い。また、電源線側の電位と対向電極側の電位とが共に制御されることで、補正されていても良い。
【0047】図5に、カラーの発光装置において、電源線側の電位を制御する場合の、各色のOLEDのOLED駆動電圧の変化を示す。図5において、VrはR用の表示用OLED(R)における補正前のOLED駆動電圧であり、Vr0は補正後のOLED駆動電圧である。同様に、VgはG用の表示用OLED(G)における補正前のOLED駆動電圧であり、Vg0は補正後のOLED駆動電圧である。VbはB用の表示用OLED(B)における補正前のOLED駆動電圧であり、Vb0は補正後のOLED駆動電圧である。
【0048】図5の場合、対向電極の電位(対向電位)は全ての表示用OLEDにおいて同じ高さに固定されている。各色の表示用OLEDごとにOLED駆動電流を測定し、電源線の電位(電源電位)を表示用可変電源において制御することで、OLED駆動電圧が補正される。
【0049】なお図1では、表示用画素部に対応した表示用可変電源と、モニター用画素部に対応したモニター用可変電源と、2つの可変電源を用いているが、本発明はこの構成に限定されない。表示用可変電源とモニター用可変電源を1つの可変電源で賄っても良い。」

(オ)段落0053から0061まで
「【0053】
【実施例】以下に、本発明の実施例について説明する。
【0054】(実施例1)本実施例では、本発明の発光装置が有する補正回路の詳しい構成について説明する。
【0055】図6に、本実施例の補正回路の構成をブロック図で示す。補正回路203は、A/D変換回路204、測定値用メモリ205、演算回路206、基準値用メモリ207、コントローラ208を有していている。
【0056】電流計201において測定された電流の値(測定値)は、補正回路203が有するA/D変換回路204に入力される。A/D変換回路204において、アナログの測定値はデジタルに変換される。変換された測定値のデジタルデータは測定値用メモリ205に入力されて保持される。
【0057】一方、基準値用メモリ207には、OLED駆動電流基準値のデジタルデータが保持されている。演算回路206では、測定値用メモリ205において保持されている測定値のデジタルデータと、基準値用メモリ207において保持されている基準値のデジタルデータとをそれぞれ読み出し、比較する。
【0058】そして、測定値のデジタルデータと基準値のデジタルデータの比較により、電流計201に実際に流れている電流の値を基準値に近づけるために、モニター用可変電源202及び表示用可変電源209を制御する。より具体的には、モニター用可変電源202及び表示用可変電源209を制御することにより、電源線V1?Vxと表示用OLEDの対向電極の間の電圧、及び電源線V(x+1)とモニター用OLEDの対向電極の間の電圧を補正する。これにより、表示用OLED及びモニター用OLEDにおいてOLED駆動電圧が補正され、所望する大きさのOLED駆動電流が流れる。
【0059】測定値と基準値の電流の差を偏差電流とし、電源線V1?Vxと対向電極の間の、補正によって変化する分の電圧を補正電圧とすると、偏差電流と補正電圧の関係は、例えば図7のように表される。図7では偏差電流が一定の幅で変化するごとに、補正電圧を一定の大きさで変えている。
【0060】なお偏差電流と補正電圧の関係は、必ずしも図7に示したグラフに則していなくても良い。偏差電流と補正電圧は、電流計に実際に流れている電流の値が基準値に近づくような関係であれば良い。例えば偏差電流と補正電圧とが線形性を有する関係であっても良いし、偏差電流が補正電圧の二乗に比例していても良い。
【0061】なお本実施例で示した補正回路の構成はほんの一例であり、本発明はこの構成に限定されない。本発明で用いられる補正回路は、測定値と基準値を比較する手段と、電流計による測定値をもとに何らかの演算処理をして、OLED駆動電圧を補正する手段を有していれば良い。…(略)…」

(カ)段落0090から0104まで
「【0090】(実施例4)本実施例では、図1及び図4に示した本発明の発光装置の駆動方法について、図9を用いて説明する。なお、図9において横軸は時間を、縦軸は各ゲート線に接続されている表示用画素の位置を示す。なお本実施例では表示用画素部の駆動方法について説明するが、モニター用画素部も同じ駆動方法を用いて表示を行うことが可能である。
【0091】まず、書き込み期間Taが開始されると、電源線V1?Vxの電源電位は、表示用OLED107の対向電極の電位と同じ高さに保たれる。そしてゲート線駆動回路106から出力される選択信号によって、ゲート線G1に接続されている全ての表示用画素(1ライン目の表示用画素)のスイッチング用TFT120がオンになる。
【0092】そして、ソース線駆動回路105によって、ソース線(S1?Sx)に入力された1ビット目のデジタルのビデオ信号(以下、デジタルビデオ信号)が、スイッチング用TFT120を介して駆動用TFT121のゲート電極に入力される。
【0093】次に1ライン目の表示用画素のスイッチング用TFT120がオフになり、1ライン目の表示用画素と同様に、選択信号によってゲート線G2に接続されている2ライン目の表示用画素のスイッチング用TFT120がオンになる。次に、ソース線(S1?Sx)から1ビット目のデジタルビデオ信号が、2ライン目の表示用画素のスイッチング用TFT120を介して駆動用TFT121のゲート電極に入力される。
【0094】そして順に、全てのラインの表示用画素に1ビット目のデジタルビデオ信号が入力される。全てのラインの表示用画素に1ビット目のデジタルビデオ信号が入力されるまでの期間が書き込み期間Ta1である。なお本実施例において、画素にデジタルビデオ信号が入力されるとは、デジタルビデオ信号がスイッチング用TFT120を介して駆動用TFT121のゲート電極に入力されることを意味する。
【0095】書き込み期間Ta1が終了すると次に表示期間Tr1になる。表示期間Tr1では、電源線の電源電位は、電源電位がOLEDの画素電極に与えられたときにOLEDが発光する程度に、対向電極との間に電位差を有する電位になる。
【0096】そして本実施例では、デジタルビデオ信号が「0」の情報を有していた場合、駆動用TFT121はオフの状態となる。よって電源電位は、表示用OLED107の画素電極に与えられない。その結果、「0」の情報を有するデジタルビデオ信号が入力された表示用画素が有する表示用OLED107は発光しない。
【0097】逆に、「1」の情報を有していた場合、駆動用TFT121はオンの状態となっている。よって電源電位が表示用OLED107の画素電極に与えられる。その結果、「1」の情報を有するデジタルビデオ信号が入力された表示用画素が有する表示用OLED107は発光する。
【0098】このように、表示期間Tr1において表示用OLED107が発光、または非発光の状態になり、全ての表示用画素は表示を行う。表示用画素が表示を行っている期間を表示期間Trと呼ぶ。特に1ビット目のデジタルビデオ信号が表示用画素に入力されたことで開始する表示期間をTr1と呼ぶ。
【0099】表示期間Tr1が終了すると書き込み期間Ta2となり、再び電源線の電源電位はOLEDの対向電極の電位と同じになる。そして書き込み期間Ta1の場合と同様に順に全てのゲート線が選択され、2ビット目のデジタルビデオ信号が全ての表示用画素に入力される。全てのラインの表示用画素に2ビット目のデジタルビデオ信号が入力し終わるまでの期間を、書き込み期間Ta2と呼ぶ。
【0100】書き込み期間Ta2が終了すると表示期間Tr2になり、電源線の電源電位は、電源電位がOLEDの画素電極に与えられたときにOLEDが発光する程度に、対向電極との間に電位差を有する電位になる。そして全ての表示用画素が表示を行う。
【0101】上述した動作はnビット目のデジタルビデオ信号が表示用画素に入力されるまで繰り返し行われ、書き込み期間Taと表示期間Trとが繰り返し出現する。全ての表示期間(Tr1?Trn)が終了すると1つの画像を表示することができる。明細書において、1つの画像を表示する期間を1フレーム期間(F)と呼ぶ。1フレーム期間が終了すると次のフレーム期間が開始される。そして再び書き込み期間Ta1が出現し、上述した動作を繰り返す。
【0102】通常の発光装置では1秒間に60以上のフレーム期間を設けることが好ましい。1秒間に表示される画像の数が60より少なくなると、視覚的に画像のちらつきが目立ち始めることがある。
【0103】本実施例では、全ての書き込み期間の長さの和が1フレーム期間よりも短く、なおかつ表示期間の長さ比は、Tr1:Tr2:Tr3:…:Tr(n-1):Trn=2^(0):2^(1):2^(2):…:2^((n-2)):2^((n-1))となるようにすることが必要である。この表示期間の組み合わせで2^(n)階調のうち所望の階調を表示することができる。
【0104】1フレーム期間中に表示用OLEDが発光した表示期間の長さの総和を求めることによって、当該フレーム期間におけるその表示用画素の表示した階調がきまる。例えば、n=8のとき、全部の表示期間で表示用画素が発光した場合の輝度を100%とすると、Tr1とTr2において表示用画素が発光した場合には1%の輝度が表現でき、Tr3とTr5とTr8を選択した場合には60%の輝度が表現できる。」

(キ)段落0229
「【0229】図17(A)は有機発光表示装置であり、筐体2001、支持台2002、表示部2003、スピーカー部2004、ビデオ入力端子2005等を含む。本発明の発光装置は表示部2003に用いることができる。発光装置は自発光型であるためバックライトが必要なく、液晶ディスプレイよりも薄い表示部とすることができる。なお、有機発光表示装置は、パソコン用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用表示装置が含まれる。」

イ.刊行物1に記載された発明(引用発明1)
(ア)刊行物1には、発光装置を表示部2003に用いた有機発光表示装置が記載されている(上記ア.(キ))。発光装置は、有機発光素子(OLED)が形成された基板を含むOLEDパネルである(上記ア.(ア))。

(イ)OLEDパネルは、複数の表示用画素102がマトリクス状に形成された表示用画素部101と、複数のモニター用画素104がマトリクス状に形成されたモニター用画素部103とを有する(上記ア.(エ)、段落0029)。
表示用画素部101とモニター用画素部103とは、同じ基板上に形成され(同、段落0030)、表示用画素102には表示用OLED107が、モニター用画素104にはモニター用OLED108が、それぞれ設けられている(同、段落0032)。
モニター用OLED108には駆動用TFT121が接続される(同、段落0041)。表示用画素102の素子の接続構成は、モニター用画素104と同じであるから(同、段落0040)、表示用OLED107にも駆動用TFT121が接続される。

(ウ)表示用OLED107に接続された駆動用TFT121のゲート電極には、デジタルビデオ信号が入力される(上記ア.(カ)、段落0094)。
表示用OLED107は、デジタルビデオ信号が「0」であれば発光しないし、「1」であれば発光する(同、段落0096及び0097)。このことから、表示用OLED107は、駆動用TFT121によってオンオフ制御されることが分かる。
表示用OLED107とモニター用OLED108とは、素子の接続構成が同じである(上記ア.(エ)、段落0040)。また、表示用画素部101に入力される表示用デジタルビデオ信号とモニター用画素部103に入力されるモニター用デジタルビデオ信号とは、別系統ではあるが、いずれも階調の情報を含んでおり、表示用OLED107とモニター用OLED108とで劣化度合いが同じになるように選ばれる(上記ア.(ウ)、段落0019及び0020)。そうすると、モニター用OLED108も、駆動用TFT121によってオンオフ制御されることが明らかである。

(エ)OLEDパネルは、ソース線駆動回路105を有する(上記ア.(エ)、段落0029及び0030)。ソース線駆動回路105は、ソース線S(x+1)を介して、モニター用OLED108の駆動用TFT121のゲート電極にモニター用デジタルビデオ信号を入力する(同、段落0043)。
モニター用デジタルビデオ信号が入力されて駆動用TFT121がオンになると、モニター用OLED108が発光する(同、段落0043)。このとき、電流計111で電流が測定され、その測定値が補正回路112に送られる(同、段落0044)。この測定値は、モニター用OLED108の劣化の度合いを示すものである(上記ア.(ウ)、段落0011から0013まで)。
補正回路112は、電流の測定値を基準値と比較し、測定値と基準値との間にある程度の差がある場合に、表示用可変電源109及びモニター用可変電源110を制御して表示用OLED107及びモニター用OLED108に印加される電圧を補正し、表示用OLED107及びモニター用OLED108に所望の大きさの電流が流れるようにする(上記ア.(エ)、段落0045)。具体的には、電流の測定値が基準値に近づくようにする(上記ア.(オ)、段落0058から0060まで)。
表示用OLED107及びモニター用OLED108に印加される電圧の補正は、電源線側の電位Vddを固定し、対向電極側の電位Vssを制御して行うことができる(上記ア.(エ)、段落0046から0048まで)。

(オ)OLEDパネルは、R(赤)、G(緑)、B(青)に対応した3種類のOLEDを用いたカラー化表示方式を採用することができ、この場合は、モニター用画素部103も色ごとに設ける(上記ア.(ウ)、段落0023)。
したがって、表示用OLED107もモニター用OLED108も、R(赤)、G(緑)、B(青)の3種類になる。
また、表示用OLED107及びモニター用OLED108に印加される電圧の補正は、表示用可変電源109、モニター用可変電源110及び電流計111を色ごとに設ける一方、各色共通の補正回路112を設けて、色ごとに行う(上記ア.(エ)、段落0039)。表示用可変電源109及びモニター用可変電源110は、一つの可変電源で兼用してもよい(同、段落0049)。

(カ)以上のことを踏まえて、上記ア.(ア)から(キ)までの記載と、図1から7まで、9、17及び18までに示された事項とを総合すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「OLEDパネルを表示部2003に用いた有機発光表示装置であって、
前記OLEDパネルは、複数の表示用画素102がマトリクス状に形成された表示用画素部101と、複数のモニター用画素104がマトリクス状に形成されたモニター用画素部103とを有し、
前記表示用画素部101と前記モニター用画素部103とは、同じ基板上に形成されており、
前記表示用画素102には表示用OLED107が、前記モニター用画素104にはモニター用OLED108が、それぞれ設けられており、
前記モニター用OLED108には、当該モニター用OLED108をオンオフ制御する駆動用TFT121が接続され、
前記表示用OLED107及び前記モニター用OLED108は、それぞれR(赤)、G(緑)、B(青)の3種類であり、
前記OLEDパネルは、さらに、
前記駆動用TFT121のゲート電極にモニター用デジタルビデオ信号を入力するソース線駆動回路105と、
前記モニター用デジタルビデオ信号が入力されてモニター用OLED108が発光するときに流れる電流を測定する、色ごとに設けられた電流計111と、
前記表示用OLED107及び前記モニター用OLED108に電圧を印加する、色ごとに設けられた表示用可変電源109兼モニター用可変電源110と、
前記色ごとに設けられた電流計111が測定した電流の測定値を基準値と比較し、前記測定値が前記基準値に近づくように、前記色ごとに設けられた表示用可変電源109兼モニター用可変電源110の電源線側の電位Vddを固定し、対向電極側の電位Vssを制御する、各色共通に設けられた補正回路112と
を有する有機発光表示装置。」

(2)刊行物2
ア.刊行物2の記載
刊行物2には、以下の記載がある。

(ア)段落0001から0003まで
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発光素子の輝度変化を自動的に補正する表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、CRT(陰極線管)及びLCD(液晶ディスプレイ)等の種々の表示装置が多数使用されている。それらの表示装置は多かれ少なかれ表示輝度や表示色温度(RGBの発光画素の発光輝度の相対値)に経時変化を生じる。その経時変化が大きい表示装置においては、長期間の使用により画面の輝度又は色温度が初期設定時から大幅にずれてくると、表示装置を再調整する必要があった。従来の表示装置においては、ユーザが経時変化に対応して画面の輝度又は色温度を再調整しなければならなかった。ユーザは、明るさ調整や色バランス調整などを実際に画像を見ながら手動で調整していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】輝度や色温度の経時変化が比較的ゆっくりとした表示装置ではその調整頻度が少ないので、従来の方法でもユーザの負担は小さかった。しかしながら、現在作られている電流制御型発光素子を用いた表示装置は、発光素子の経時変化が大きく、且つサブピクセル(発光素子)によって(発光色によって)経時変化が異なる。電流制御型発光素子を用いた表示装置は輝度や色温度の経時変化が比較的大きい故に、ユーザが頻繁に経時変化に応じた輝度及び色温度の再調整を行わなければならないという問題があった。電流制御型発光素子を用いたディスプレイには、例えばFED(フィールド・エミッション・ディスプレイ)及び有機EL(エレクトロ・ルミネッセント)ディスプレイがある。」

(イ)段落0054から0057まで
「【0054】一般に表示装置の画面の輝度は容易に調整出来る。表示装置の周囲の明るさにより最適の画面の輝度は変化し、ユーザは画面の輝度を調整することに慣れている場合が多い。一方、色温度の調整は困難である故、表示画面の色温度を自動調整することが商品に付加する価値は大きい。実施例1においては、RとGの相対輝度の経時変化をBに合わせたが、関数部7の積算通電時間と係数の関係を変更することにより、GとBとの相対輝度の経時変化をRに揃えることも(サブピクセルRを基準サブピクセルとする。)、RとBとの相対輝度の経時変化をGに揃えることも(サブピクセルGを基準サブピクセルとする。)出来る。又、RGBの相対輝度が初期値から変化しない様に係数を定めることも出来る。
【0055】好ましくは、実施例1の表示装置の様に、経時的に最も輝度が減少するサブピクセルを基準サブピクセルとし、他のサブピクセルの発光輝度が基準ピクセルと同じように経時変化する様に、他のサブピクセルの係数を定める。即ち、色温度(色相)が経時的に変化しない様に基準サブピクセル以外のサブピクセルの係数を決める。経時変化が最も大きい(経時変化により最も輝度レベルが低下する)サブピクセルを基準サブピクセルとすることにより、基準サブピクセル以外のサブピクセルの係数は1以下の正数になる。
【0056】表示装置は、一般に最大輝度レベルを定めており(例えば255)、入力信号のレベルは最大輝度レベル以下でなければならない。経時変化が最も大きい(経時変化により最も輝度レベルが低下する)サブピクセル以外のサブピクセルを基準サブピクセルとするならば、経時変化が最も大きいサブピクセル(例えば青)の係数は1を超える(例えば1.2とする。)。もし係数が1以上の正数であり、サブピクセルの発光量を指定する入力信号と係数とを掛けた掛け算結果が最大輝度レベルを超える場合は、掛け算結果は最大輝度レベルに置き換えられる(最大輝度レベルでクリップされる。輝度レベルが飽和する。)。最大レベルの白の信号(赤(R)=255、緑(G)=255、青(B)=255とする。)が入力されるとする。正しい色相を表示するためには青の信号レベルは255×1.2=306でなければならない。しかし青の信号レベルは、306から最大信号レベルである255に置き換えられる。そのため、高輝度の入力信号においては係数による補正が不完全になり、画面の高輝度部分の色相が不正確になる。
【0057】経時的に最も輝度が減少するサブピクセルを基準サブピクセルとする表示装置においては、基準サブピクセル以外のサブピクセルの係数は1以下の正数になる故に、入力信号(最大輝度レベル以下であるとする。)と係数を掛けた掛算結果が最大輝度レベルを超える(最大輝度レベルでクリップされる)ことはない。そのため、高輝度の入力信号が入力された場合にも、1以下の係数を乗算した駆動信号で表示素子を発光させる故に、正確な色温度(色相)を表示する。又、基準サブピクセル以外のサブピクセルの係数を1以下の正数にすることにより、各サブピクセルに流す電流が少なくなるので、各サブピクセルの経時変化が小さくなる。」

(ウ)段落0073から0086まで
「【0073】《実施例3》以下に図2、図6、図7、図8を用いて、本発明の実施例3の表示装置を説明する。実施例3の表示装置は、電流制御型素子を用いた表示装置である(有機ELディスプレイを使用している。)。
【0074】図6は、実施例3の表示装置の構成を示す。図6において、17は表示パネル、13は表示パネル17に1?mラインの表示位置を指定するライン制御信号を出力するライン制御部、12はn画素分のサブピクセルの駆動信号を表示パネル17に出力するデータ駆動部、34は発光輝度管理画素22の各サブピクセルの駆動信号を出力するデータ駆動部、1、2、3はそれぞれ赤信号(R)、緑信号(G)、青信号(B)に対応する入力信号の入力端子、4、5、6は乗算器、20は関数部、16は平均値演算部、9はクロック(CLK Clock)入力端子、10は垂直同期信号(VD Vertical Drive)入力端子、11は水平同期信号(HD Horizontal Drive)入力端子である。
【0075】表示パネル17は、m行n列の表示領域(有効領域)の画素(総数(n×m)個)、発光輝度管理画素22及び3個の輝度センサ19を有する有機ELディスプレイである。各画素(有効領域の画素及び発光輝度管理画素22)は、それぞれ赤色(R)、緑色(G)、青色(B)で発光する3個のサブピクセル(発光素子)を有する。表示パネル17のRGBの各サブピクセル(発光素子)は相対輝度が経時的に変化する。各サブピクセルの相対輝度の経時変化を図2に示す。各サブピクセルの発光輝度の初期値をそれぞれ1とする。発光輝度管理画素22は表示領域の画素と同一の形状で同一の大きさあって、表示領域外に配置されている。3個の輝度センサ19は、それぞれ発光輝度管理画素の各サブピクセルの発光輝度を測定する。
【0076】図7は表示パネル17を図6のI-Iの線に沿って切った断面図であって、輝度センサ19の取付け部分を拡大した図である。図7において19は輝度センサ、18はカバー(遮光部)、21は表示パネルの基板、22は発光輝度管理画素のサブピクセル、23は表示領域内の画素のサブピクセルである。カバー18は、発光輝度管理画素22の発光が外部に漏れないようにし、且つ輝度センサ19に外光が入らないようにしている。
【0077】図6において、実施例1(図1)と同一のブロックには同一の符号を付している。関数部20は、RGBそれぞれの最適の係数KR、KG、KBを出力する。係数KR、KG、KBは、各サブピクセルの輝度の経時変化を補正する係数である。係数KR、KG、KBを算出する方法については後述する。
【0078】入力端子4、5、6は、それぞれRGBのサブピクセルの発光量を指定する入力信号V_(inR)、V_(inG)、V_(inB)を入力する。入力信号は、それぞれ乗算器4、5、6に伝送される。クロック入力端子9、垂直同期信号入力端子10及び水平同期信号入力端子11は、入力信号に同期して、それぞれクロック信号(入力信号のサンプリングクロック)CLK、垂直同期信号VD及び水平同期信号HDを入力する。乗算器4、5、6はそれぞれRGBの入力信号V_(inR)、V_(inG)、V_(inB)と係数KR、KG、KB(関数部20が出力する。)とを入力し、入力信号と係数とを掛け算し、掛け算結果(V_(inR)×KR)、(V_(inG)×KG)、(V_(inB)×KB)を出力する(請求項の記載の「第1の掛け算結果」に相当する。)。
【0079】データ駆動部12は1ライン(n画素)のシフトレジスタを有し、クロック信号に応じて掛け算結果(V_(inR)×KR)、(V_(inG)×KG)、(V_(inB)×KB)を入力する。1ラインの掛け算結果をロードした後、当該掛け算結果に比例した駆動信号をX_(1)、X_(2)、・・・、X_(n)の出力端子より出力する。ライン制御部13は、データ駆動部12が出力した駆動信号により表示されるラインの表示位置を指定する。ライン制御部13はクロック信号CLK、垂直同期信号VD及び水平同期信号HDを入力する。ライン制御部13は出力端子Y_(1)、Y_(2)、Y_(3)、・・・、Y_(m)を有し、第iラインを表示する場合は、Y_(i)端子をアクティブにする。次の水平同期信号HDを入力すると、アクティブになるラインをY_(i)端子からY_(i+1)端子に変える。Y_(m)端子の次には、垂直同期信号VDを入力してY_(1)端子をアクティブにする。ライン制御部13で指定されたラインの画素(表示パネル17の画素)が、データ駆動部12が出力する駆動信号により発光する。
【0080】実施例3の表示装置は、補正モードと通常表示モードとを有する。表示領域の画素は、補正モードにおいても通常表示モードにおいても、上記の方法により発光する。通常表示モードは、発光輝度管理画素22の各サブピクセルを表示領域の各サブピクセルと同程度に発光させ、同程度に経時変化させるための期間である。通常表示モードにおいては、平均値演算部16はRGBの入力信号V_(inR)、V_(inG)、V_(inB)を入力し、1画面分の入力信号(n×m画素分の入力信号)のRGBそれぞれの平均値V_(inavR)、V_(inavG)、V_(inavB)を算出し、出力する。データ駆動部34は、平均値V_(inavR)、V_(inavG)、V_(inavB)を入力し、各平均値に応じた駆動信号を出力する。データ駆動部34の各駆動信号の出力回路は、データ駆動部12の出力回路と同一の構成を有する。
【0081】1画面分の表示を終了した直後(ライン制御部13がY_(1)端子からY_(m)端子までをアクティブにした後であって、垂直同期信号VDがアクティブになる期間)、ライン制御部13はY_(d)端子をアクティブにする。発光輝度管理画素22のRGBの各サブピクセルは、平均値V_(inavR)、V_(inavG)、V_(inavB)に応じた駆動信号を入力し、発光する。この発光時間は表示領域内の各画素と同じ時間とする。上記の動作を各画面毎に繰り返す。これにより、発光輝度管理画素22の各サブピクセルは、表示領域の各サブピクセルと同程度に経時変化する。
【0082】補正モードは表示領域の各サブピクセルの発光輝度の経時変化を補正するための補正係数KR、KG、KBを求めるための期間である。補正モードにおいては、平均値演算部16は、最大レベルの信号を出力する。データ駆動部34は、最大レベルに応じた駆動信号を出力し、発光輝度管理画素22の各サブピクセルは最大輝度で発光する。3個の輝度センサ19は、それぞれ発光輝度管理画素22の各サブピクセルの光を入力し、入力光に応じた検出信号を出力する。
【0083】関数部20は3個の輝度センサ19の検出信号を入力する。関数部20は、不揮発性メモリと演算部とを有する。関数部20の不揮発性メモリは、補正モードでの各輝度センサの検出信号の初期値を保持している。関数部20の演算部は、不揮発性メモリから読み出した検出信号の初期値と、現在の補正モードでの各輝度センサの検出信号との比を計算する。
【0084】RGBの各輝度センサの検出信号をV_(detR)(t)、V_(detG)(t)、V_(detB)(t)とする(tは表示パネルの積算通電時間)。補正モードでのRGBの各輝度センサの検出信号の初期値(t=0)をV_(detR)(0)、V_(detG)(0)、V_(detB)(0)とし、現在(t=t0)の補正モードでのRGBの各輝度センサの検出信号をV_(detR)(t_(0))、V_(detG)(t_(0))、V_(detB)(t_(0))とする。関数部20の演算部は、各サブピクセル毎の係数KR、KG、KBを下記の式により求める。
KR=V_(detR)(0)/V_(detR)(t_(0))
KG=V_(detG)(0)/V_(detG)(t_(0))
KB=V_(detB)(0)/V_(detB)(t_(0))
【0085】関数部20の演算部は算出した係数KR、KG、KBを不揮発性メモリに記憶し、出力する。補正モードが終了し、通常表示モードに戻る。補正モードにおいても通常表示モードにおいても、関数部20は係数KR、KG、KBを出力する。上述の様に、乗算器4、5、6はそれぞれ係数KR、KG、KBを入力し、入力信号と掛け算する。図8は、実施例3の表示装置が積算通電時間100時間、1000時間、2000時間、10000時間において補正モードを実行した場合の、RGBの各サブピクセルの発光輝度(入力信号に係数を掛けて補正した結果である発光輝度)の経時変化を示す。各サブピクセルの発光輝度の初期値をそれぞれ1とする。
【0086】図2に示す表示パネル17の発光輝度の経時変化特性に比べて、補正を行うことにより、実施例3の表示装置の発光輝度及び色温度の経時変化は大幅に改善されている(図8)。補正モードをさらに細かい積算通電時間間隔で行うことにより、発光輝度と色温度の経時変化を更に高精度に補正することが出来る。」

イ.刊行物2に記載された技術事項(技術事項2)
上記ア.(ア)から(ウ)までの記載と、図2及び6から8までに示された事項とを総合すると、刊行物2には、以下の技術事項(以下、「技術事項2」という。)が記載されている。

「表示領域に配置された複数の画素であって、各画素がそれぞれ赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)に発光する3個の発光素子を有する複数の画素と、
前記表示領域の外に配置された発光輝度管理画素22であって、それぞれ赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)に発光する3個の発光素子を有し、前記複数の画素と形状及び大きさが同じである発光輝度管理画素22と、
前記発光輝度管理画素22の前記3個の発光素子の発光輝度を測定する3個の輝度センサ19と
を有する有機ELディスプレイにおいて、
前記発光輝度管理画素22の前記3個の発光素子を最大輝度で発光させ、
前記発光輝度管理画素22の前記3個の発光素子のそれぞれからの光を、前記3個の輝度センサ19のそれぞれで検出し、
それぞれの検出値V_(detR)(t_(0))、V_(detG)(t_(0))及びV_(detB)(t_(0))と、それぞれの検出値の初期値V_(detR)(0)、V_(detG)(0)及びV_(detB)(0)との比KR、KG及びKBを求め、
前記比KR、KG及びKBと、前記複数の画素の前記3個の発光素子のそれぞれの発光量を指定する入力信号V_(inR)、V_(inG)及びV_(inB)とを掛け算し、
その掛け算の結果に比例した駆動信号で前記複数の画素の前記3個の発光素子を発光させることにより、
前記複数の画素の輝度及び色温度の経時変化を補正する。」

(3)刊行物3
ア.刊行物3の記載
刊行物3には、以下の記載がある。

(ア)第1ページ第4行から第9行まで
「本発明は、有機のエレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と称す)等の電流駆動型発光素子及びこれを駆動する薄膜トランジスタ等の駆動素子を備えて構成される画素回路、及びこのような画素回路を各画素に備えて構成される表示装置、並びにこれらを備えた電子機器の技術分野に関し、特に、電流駆動型発光素子や駆動素子の経時劣化の影響を補正することが可能な駆動回路及び表示装置並びにこれらを備えた電子機器の技術分野に関する。」

(イ)第2ページ第9行から第21行まで
「しかしながら、有機EL素子等の電流駆動型発光素子においては、素子内を駆動電流が流れるために、大なり小なり経時劣化が存在する。例えば、有機EL素子の場合には、顕著な経時劣化が存在すると報告されている…(略)…。有機EL素子の経時劣化は、2種類に大別される。一つは、有機EL素子に印加される電圧に対して、電流量が低下する劣化である。もう一つは、有機EL素子に印加される電圧或いは有機EL素子を流れる電流に対して発光量が低下する劣化である。また、これらの経時劣化は、有機EL素子毎にバラツキをもって発生する。更に、TFT-OELでは、駆動素子としてのTFTを流れる電流によりTFTの経時劣化が発生することもある。
このため、TFT-OELを用いた表示装置では、このような有機EL素子や駆動用TFTの経時劣化が生じたときに、画質劣化が問題となる。すなわち、電流量が低下する劣化や発光量が低下する劣化は、画面輝度の低下を招き、電流量の低下のバラツキや発光量の低下のバラツキは、画面ムラを生じさせる。」

(ウ)第3ページ第10行から第14行まで
「そこで、本発明は、電流駆動型発光素子における電流量や発光量が低下する経時劣化が発生した場合や該経時劣化がバラツキをもって発生した場合に、その経時劣化を適宜補正し、画面輝度の低下や画面ムラを低減することが可能な電流駆動型発光素子を備えた画素回路及び表示装置並びにこれらを備えた電子機器を提供することを技術的課題とする。」

(エ)第24ページ第4行から第28行まで
「以下、本発明を実施するための最良の形態について実施例毎に図面に基づいて説明する。
先ず以下に説明する各実施例のTFT-OELD(即ち、駆動用の薄膜トランジスタ及び該薄膜トランジスタにより電流駆動される有機EL素子)を備えた表示装置において共通する基本的な構成について図1及び図2を参照して説明する。ここに、図1は、表示装置の基本的な全体構成を示すブロック図であり、特に4つの相隣接する画素に夫々設けられた画素回路の基本的な回路構成を示す回路図を含む。また、図2は、この表示装置の一画素の平面図である。
図1に示すように、表示装置100は、TFTアレイ基板1上に、X方向に夫々延びておりY方向に配列された複数の走査線131と、Y方向に夫々延びておりX方向に配列された複数の信号線132及び複数の共通線(共通給電線)133と、走査線131に走査信号を供給する走査線駆動回路11と、信号線132にデータ信号を供給する信号線駆動回路12と、共通線133に所定電位の正電源(又は負電源)を供給する共通線駆動回路13とを備えて構成されている。そして、TFTアレイ基板1の中央には、表示領域15が設けられており、表示領域15内には、複数の画素10がマトリクス状に規定されている。
図1及び図2に示すように、各画素10には、第2薄膜トランジスタの一例としてのスイッチングTFT221、スイッチングTFT221に制御されて各画素への電流を制御する第1薄膜トランジスタの一例としてのTFT(以下、カレントTFTと称す)223、有機EL素子224及び保持容量222からなる画素回路が設けられている。更にカレントTFT223のドレインには、ITO(Indium Tin Oxide)膜等からなる画素電極141が接続されており(図2参照)、画素電極141に対して有機EL素子224を介してAl(アルミニウム)膜等からなる対向電極が対向配置されている。この対向電極は、例えば接地されているか或いは所定電位の負電源(又は正電源)に接続されている。」

(オ)第28ページ第13行から第19行まで
「尚、本実施例では、測定した有機EL素子224を流れる測定電流量IDに対応して、共通線133に印加される電圧、即ち画素電極141に印加される電圧を調整するように構成されている。しかしながら、本実施例の変形例として、このように測定された測定電流量IDに対応して、走査線131、信号線132(走査線131及び信号線132を総称して“バス配線”と称す)、又は、対向電極(画素電極141及び対向電極を総称して“電極”と称す)に印加される電圧を調整するように構成してもよい。」

(カ)第29ページ第25行から第31ページ第2行まで
「(第2実施例)
図8は、本発明の第2実施例に係るTFT-OELDを備えた表示装置のブロック図である。図8において、図3に示した第1実施例と同じ構成要素には同じ参照符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、表示領域15に隣接して設けられた電流モニタ領域17内のモニタ用有機EL素子17aに対し共通電極及び対向電極間の電圧が印加されており、表示期間には、表示用の有機EL素子224(図1参照)とほぼ同じ条件で、モニタ用有機EL素子17aは電流駆動される。そして、経時劣化に対する補正処理を行う際には、電流量測定器16は、モニタ用有機EL素子17aを流れる電流Idmを測定する。この電流量測定器16による電流Idmの測定値である測定電流量IDを基準電流量Irefに一致させるように、比較回路21a、電圧制御回路22a及びコントローラ23により、共通電極駆動回路13の出力電圧(Vcom)を調整するように構成されている。その他の構成については、第1実施例の場合と同様である。
以上のように構成されているため第2実施例によれば、有機EL素子224やカレントTFT223(図1及び図2参照)の電流量が低下する経時劣化が発生したときに、その経時劣化による電流低下を補正し、表示領域15における画面輝度の低下を低減することが可能となる。
尚、本実施例では特に、表示用の有機EL素子224とモニタ用EL素子17aとは、同一のTFTアレイ基板1上に同一の製造工程により形成されている。従って、モニタ用有機EL素子17aを形成するための工程を別途設ける必要が無い。しかも、電流駆動される表示用の有機EL素子224とモニタ用有機EL素子17aとにおける経時劣化傾向を相類似させることができ、モニタ用有機EL素子17aを流れる電流Idmに基づいて表示用の有機EL素子224における経時劣化に対する補正をかなり適切に行うことが可能となる。
また第2実施例においても、第1実施例の場合と同様に、経時劣化に対する補正処理は、例えば表示期間に先立って表示装置100の主電源投入時や一定の期間毎に行ってもよいし、リアルタイムで行ってもよい。更に、変形例として、このように測定された測定電流量IDに対応して、走査線駆動回路11、信号線駆動回路12又は対向電極駆動回路14における出力電圧を調整するように構成してもよい。特に、信号線駆動回路12の出力電圧を調整する変形例の場合には、コントローラ23による制御下で、明るさの相異なる複数の表示を電流モニタ領域17で行うようにモニタ用有機EL素子17aを駆動すれば、各明るさに対して得られる測定電流量IDを夫々対応する基準電流量Irefに一致させるようにデータ信号の電圧Vsigを調整することにより、経時劣化による電流電圧特性に複雑な変化が生じた場合等にも対処可能である。」

(キ)第31ページ第26行から第32ページ第3行まで
「また第3実施例においても、第1実施例の場合と同様に、経時劣化に対する補正は、例えば表示期間に先立って表示装置100の主電源投入時や一定の期間毎に行ってもよいし、リアルタイムで行ってもよい。更に、変形例として、このように測定された測定発光量LDに対応して、走査線駆動回路11、信号線駆動回路12又は対向電極駆動回路14における出力電圧を調整するように構成してもよいし、経時劣化に対する補正を行う際の所定パターンは一種類でも複数種類でもよい。」

(ク)第32ページ第8行から第33ページ第15行まで
「(第4実施例)
図10は、本発明の第4実施例に係るTFT-OELDを備えた表示装置のブロック図である。図10において、図3及び図9に夫々示した第1及び第3実施例と同じ構成要素には同じ参照符号を付し、その説明は省略する。
本実施例では、表示領域15に隣接して設けられた発光モニタ領域19内のモニタ用有機EL素子19aに対し共通電極及び対向電極間の電圧が印加されており、表示期間には、表示用の有機EL素子224(図1参照)とほぼ同じ条件で、モニタ用有機EL素子19aは電流駆動される。そして、経時劣化に対する補正を行う際には、発光量測定器18は、モニタ用有機EL素子19aの発光を測定する。この発光量測定器18による発光の測定値である測定発光量LDを基準発光量Lrefに一致させるように、比較回路21b、電圧制御回路22a及びコントローラ23により、共通電極駆動回路13の出力電圧を調整するように構成されている。その他の構成については、第1及び第3実施例の場合と同様である。
以上のように構成された第4実施例によれば、第3実施例の場合と同様に、カレントTFT223(図1及び図2参照)や有機EL素子224における電圧に対する電流量が低下する経時劣化、有機EL素子224における駆動電流に対する発光量が低下する経時劣化などが発生し、最終的に有機EL素子224における発光量が低下したときに、その発光量低下分を補正し、表示領域15における画面輝度の低下を防ぐことが可能となる。
また第4実施例においても、第1実施例の場合と同様に、経時劣化に対する補正は、例えば表示期間に先立って表示装置100の主電源投入時や一定の期間毎に行ってもよいし、リアルタイムで行ってもよい。更に、変形例として、このように測定された測定発光量LDに対応して、走査線駆動回路11、信号線駆動回路12又は対向電極駆動回路14における出力電圧を調整するように構成してもよいし、経時劣化に対する補正を行う際の所定パターンは一種類でも複数種類でもよい。特に、信号線駆動回路12の出力電圧を調整する変形例の場合には、コントローラ23による制御下で、複数の所定パターンについて測定発光量LDを夫々対応する基準発光量Lrefに一致させるようにデータ信号の電圧Vsigを調整することにより、経時劣化による電流電圧特性の複雑な変化にも対処可能となる。
尚、本実施例では特に、表示用の有機EL素子224とモニタ用有機EL素子19aとは、同一のTFTアレイ基板1上に同一の製造工程により形成されている。従って、モニタ用EL素子19aを形成するための工程を別途設ける必要が無い。しかも、電流駆動される表示用の有機EL素子224とモニタ用有機EL素子19aとにおける経時劣化傾向は相類似したものにすることができ、モニタ用EL素子19aから発せられる光に基づいて表示用の有機EL素子224における経時劣化に対する補正を正確に行うことが可能となる。」

イ.刊行物3に記載された技術事項(1)(技術事項3)
上記ア.(ア)から(ク)までの記載と、図1、2、8及び10に示された事項とを総合すると、刊行物3には、以下の技術事項(以下、「技術事項3」という。)が記載されている。

「複数の画素10がマトリクス状に規定された表示領域15が中央に設けられたTFTアレイ基板1を含み、前記複数の画素10のそれぞれが表示用有機EL素子224を有する表示装置において、
前記TFTアレイ基板1の前記表示領域15に隣接して電流モニタ領域17又は発光モニタ領域19を設け、
前記電流モニタ領域17又は前記発光モニタ領域19に、モニタ用有機EL素子17a又はモニタ用有機EL素子19aを形成し、
前記モニタ用有機EL素子17aを流れる電流を電流量測定器16で測定し、又は前記モニタ用有機EL素子19aの発光量を発光量測定器19で測定し、
前記電流量測定器16で測定した測定電流量IDを基準電流量Irefに一致させるように、又は前記発光量測定器19で測定した測定発光量LDを基準発光量Lrefに一致させるように、画素電極141、走査線131、信号線132又は対向電極に印加される電圧を調整することにより、
前記表示用有機EL素子224の経時劣化を補正する。」

ウ.刊行物3に記載された技術事項(2)(技術事項4)
同じく、上記ア.(ア)から(ク)までの記載と、図1、2、8及び10に示された事項とを総合すると、刊行物3には、以下の技術事項(以下、「技術事項4」という。)が記載されている。

「複数の画素10がマトリクス状に規定された表示領域15が中央に設けられたTFTアレイ基板1を含み、前記複数の画素10のそれぞれが表示用有機EL素子224を有する表示装置において、
前記TFTアレイ基板1の前記表示領域15に隣接して電流モニタ領域17又は発光モニタ領域19を設け、
前記電流モニタ領域17又は前記発光モニタ領域19に、前記表示用有機EL素子224と同一の製造工程でモニタ用有機EL素子17a又はモニタ用有機EL素子19aを形成する。」

2.本件補正発明1について
(1)対比
本件補正発明1と引用発明1とを対比すると、以下のとおりである。

ア.本件補正発明1の「駆動電流に応じて発光する自発光素子」は、具体的には例えば「有機EL素子である」(請求項8)から、引用発明1の「表示用OLED107」は、本件補正発明1の「駆動電流に応じて発光する自発光素子」に相当する。
また、引用発明1の「有機発光表示装置」は、本件補正発明1の「表示装置」に相当する。

イ.引用発明1の「表示用画素部101」は、本件補正発明1の「表示領域」に相当する。
したがって、引用発明1の「OLEDパネルを表示部2003に用いた有機発光表示装置であって、前記OLEDパネルは、複数の表示用画素102がマトリクス状に形成された表示用画素部101…を有し、…前記表示用画素102には表示用OLED107が…設けられており」は、本件補正発明1の「駆動電流に応じて発光する自発光素子を表示領域にマトリクス状に配置した表示装置」に相当する。

ウ.引用発明1の「複数のモニター用画素104がマトリクス状に形成されたモニター用画素部103」は、本件補正発明1の「表示領域と異なる測定用画素」に相当する。
また、引用発明1の「表示用OLED107」及び「モニター用OLED108」は、それぞれ本件補正発明1の「表示領域に形成した有機EL素子」及び「測定用自発光素子」に相当する。
したがって、引用発明1の「前記OLEDパネルは、複数の表示用画素102がマトリクス状に形成された表示用画素部101と、複数のモニター用画素104がマトリクス状に形成されたモニター用画素部103とを有し、前記表示用画素部101と前記モニター用画素部103とは、同じ基板上に形成されており、…前記モニター用画素104にはモニター用OLED108が…設けられており」と、本件補正発明1の「表示領域と異なる測定用画素内に形成され、表示領域に形成した有機EL素子と同じ工程で形成される測定用自発光素子」とは、「表示領域と異なる測定用画素内に形成される測定用自発光素子」である点で共通する。

エ.引用発明1の「前記モニター用OLED108には、当該モニター用OLED108をオンオフ制御する駆動用TFT121が接続され」は、本件補正発明1の「前記測定用画素内に形成され、前記測定用自発光素子に流れる駆動電流をオンオフにより制御する駆動トランジスタ」に相当する。

オ.引用発明1の「前記表示用OLED107及び前記モニター用OLED108は、それぞれR(赤)、G(緑)、B(青)の3種類であり」は、本件補正発明1の「前記表示領域の自発光素子および測定用自発光素子は、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色を有する」に相当する。

カ.引用発明1の「モニター用デジタルビデオ信号」は、本件補正発明1の「駆動電圧」に相当する。
したがって、引用発明1の「前記駆動用TFT121のゲート電極にモニター用デジタルビデオ信号を入力するソース線駆動回路105」は、本件補正発明の「前記駆動トランジスタのゲートに駆動電圧を供給する駆動電圧供給手段」に相当する。

キ.本件補正発明1の「駆動状態検出手段」が検出する「駆動電圧が供給されたときにおける測定用自発光素子の駆動状態」は、具体的には例えば「測定用自発光素子に流れる駆動電流」(請求項2)や「測定用自発光素子の発光量」(請求項3)であるから、引用発明1の「前記モニター用デジタルビデオ信号が入力されてモニター用OLED108が発光するときに流れる電流」は、本件補正発明1の「前記駆動電圧供給手段により駆動電圧が供給されたときにおける測定用自発光素子の駆動状態」に相当する。
そして、引用発明1の「前記モニター用デジタルビデオ信号が入力されてモニター用OLED108が発光するときに流れる電流を測定する、色ごとに設けられた電流計111」と、本件補正発明1の「前記駆動電圧供給手段により駆動電圧が供給されたときにおける測定用自発光素子の駆動状態を検出する駆動状態検出手段」及び「前記駆動状態検出手段は、RGB各色の測定用自発光素子に共通して1系統備えられ、RGBの測定タイミングをずらして時分割でRGB各色の測定用自発光素子と接続することで駆動状態を検出し」とは、「前記駆動電圧供給手段により駆動電圧が供給されたときにおける測定用自発光素子の駆動状態を検出する駆動状態検出手段」である点で共通する。

ク.引用発明1の「表示用可変電源109兼モニター用可変電源110」が「前記表示用OLED107及び前記モニター用OLED108に…印加する」「電圧」は、本件補正発明1の「前記表示領域の自発光素子および測定用自発光素子に印加する電圧VDD-VSS」に相当する。
そうすると、引用発明1の「表示用可変電源109兼モニター用可変電源110の電源線側の電位Vddを固定し、対向電極側の電位Vssを制御する」と、本件補正発明1の「電源電圧VDDを固定値とし、電源電圧VSSに初期値を設定する」及び「前記電源電圧VSSを輝度に応じて変更するようにして設定し直し、前記最大輝度の値が設定値に対し所定範囲内に収まるまで前記電源電圧VSSの設定し直す動作を繰り返す」とは、「電源電圧VDDを固定値とし、電源電圧VSSを設定し直す」点で共通する。
したがって、引用発明1の「前記表示用OLED107及び前記モニター用OLED108に電圧を印加する、色ごとに設けられた表示用可変電源109兼モニター用可変電源110」及び「前記色ごとに設けられた電流計111が測定した電流の測定値を基準値と比較し、前記測定値が前記基準値に近づくように、前記色ごとに設けられた表示用可変電源109兼モニター用可変電源110の電源線側の電位Vddを固定し、対向電極側の電位Vssを制御する、各色共通に設けられた補正回路112」と、本件補正発明1の「前記表示領域の自発光素子および測定用自発光素子に印加する電圧VDD-VSSにおいて、電源電圧VDDを固定値とし、電源電圧VSSに初期値を設定することで、前記駆動状態検出手段におけるRGB各色の測定用自発光素子の駆動状態から、所定のホワイトポイントで出力できるRGB各色の最大輝度を求め、得られた最大輝度の値が設定値に対し所定範囲内に収まっているかを判定し、収まっていれば前記ホワイトポイントを与える最大階調をRGB表示用画素の最大階調に設定し、RGB表示用画素の表示データを設定し、前記最大輝度の値が設定値に対し所定範囲内に収まっていなければ、前記電源電圧VSSを輝度に応じて変更するようにして設定し直し、前記最大輝度の値が設定値に対し所定範囲内に収まるまで前記電源電圧VSSの設定し直す動作を繰り返すことで、所定のホワイトポイントを所定の輝度で実現する表示データ設定手段」とは、「前記表示領域の自発光素子および測定用自発光素子に印加する電圧VDD-VSSにおいて、電源電圧VDDを固定値とし、電源電圧VSSを設定し直す設定手段」である点で共通する。

ケ.以上のことをまとめると、本件補正発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「駆動電流に応じて発光する自発光素子を表示領域にマトリクス状に配置した表示装置であって、
表示領域と異なる測定用画素内に形成される測定用自発光素子と、
前記測定用画素内に形成され、前記測定用自発光素子に流れる駆動電流をオンオフにより制御する駆動トランジスタと、
前記駆動トランジスタのゲートに駆動電圧を供給する駆動電圧供給手段と、
前記駆動電圧供給手段により駆動電圧が供給されたときにおける測定用自発光素子の駆動状態を検出する駆動状態検出手段と、
を有し、
前記表示領域の自発光素子および測定用自発光素子は、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色を有すると共に、
前記表示領域の自発光素子および測定用自発光素子に印加する電圧VDD-VSSにおいて、電源電圧VDDを固定値とし、電源電圧VSSを設定し直す設定手段を有する表示装置。」

(相違点1)
本件補正発明1の「測定用自発光素子」は、「表示領域に形成した有機EL素子と同じ工程で形成される」のに対し、引用発明1の「モニター用OLED108」(本件補正発明1の「測定用自発光素子」に相当する。)は、どのような工程で形成されるか明らかでない点。

(相違点2)
本件補正発明1の「駆動状態検出手段」は、「RGB各色の測定用自発光素子に共通して1系統備えられ、RGBの測定タイミングをずらして時分割でRGB各色の測定用自発光素子と接続することで駆動状態を検出」するのに対し、引用発明1の「電流計111」(本件補正発明1の「駆動状態検出手段」に相当する。)は、「色ごとに設けられた」ものである点。

(相違点3)
本件補正発明1の「設定手段」である「表示データ設定手段」は、「前記表示領域の自発光素子および測定用自発光素子に印加する電圧VDD-VSSにおいて、電源電圧VDDを固定値とし、電源電圧VSSに初期値を設定することで、前記駆動状態検出手段におけるRGB各色の測定用自発光素子の駆動状態から、所定のホワイトポイントで出力できるRGB各色の最大輝度を求め、得られた最大輝度の値が設定値に対し所定範囲内に収まっているかを判定し、収まっていれば前記ホワイトポイントを与える最大階調をRGB表示用画素の最大階調に設定し、RGB表示用画素の表示データを設定し、前記最大輝度の値が設定値に対し所定範囲内に収まっていなければ、前記電源電圧VSSを輝度に応じて変更するようにして設定し直し、前記最大輝度の値が設定値に対し所定範囲内に収まるまで前記電源電圧VSSの設定し直す動作を繰り返すことで、所定のホワイトポイントを所定の輝度で実現する」のに対し、引用発明1の「設定手段」である「色ごとに設けられた表示用可変電源109兼モニター用可変電源110」及び「各色共通に設けられた補正回路112」は、「前記色ごとに設けられた電流計111が測定した電流の測定値を基準値と比較し、前記測定値が前記基準値に近づくように、前記色ごとに設けられた表示用可変電源109兼モニター用可変電源110の電源線側の電位Vddを固定し、対向電極側の電位Vssを制御する」点。

(2)相違点についての判断
ア.相違点1について
引用発明1は、「同じ基板上に形成」された「表示用OLED107」及び「モニター用OLED108」を備える「有機発光表示装置」である。一方、技術事項4は、同じ「TFTアレイ基板1」に形成された「表示用有機EL素子224」及び「モニタ用EL素子17a又はモニタ用EL素子19a」を備える「表示装置」に関するものである。したがって、両者は、同じ基板上に形成された表示用OLED及びモニター用OLEDを備える有機発光表示装置である点で共通する。
そうすると、引用発明1の「同じ基板上に形成」された「表示用OLED107」及び「モニター用OLED108」を、技術事項4に従って「同一の製造工程で…形成する」ことは、当業者が容易に思い付くことである。
その結果、相違点1に係る構成が得られることは明らかである。

イ.相違点2について
引用発明1では、「電流計111」は色ごとに設けられる一方、「補正回路112」は各色共通に設けられる。すなわち、3種類(R(赤)、G(緑)及びB(青))の「モニター用OLED108」のそれぞれに1個ずつ、合計3個の「電流計111」に対して、1個の「補正回路112」が設けられる。このとき、3個の「電流計111」から入力される電流の測定値を同時並行処理する「補正回路112」を用いるか、3個の「電流計111」と1個の「補正回路112」との間に切り替えスイッチを設けて時分割処理する必要があることは、当業者にとって自明である。さらに、3個の「電流計111」は、接続される「モニター用OLED108」の種類が異なるだけで、機能は同一であるから、時分割処理を採用する際に、3種類の「モニター用OLED108」と1個の「電流計111」とを切り替えスイッチで接続することで、1個の「電流計111」を3種類の「モニター用OLED108」の間で兼用する程度のことは、当業者が適宜行い得ることにすぎない。
この結果、3種類の「モニター用OLED108」は、切り替えスイッチによって1個の「電流計111」及び1個の「補正回路112」に接続されることになるから、相違点2に係る構成が得られることは明らかである。

ウ.相違点3について
(ア)本件補正発明1の「表示データ設定手段」の動作
相違点3について判断するために、本件補正発明1の「表示データ設定手段」の動作を検討する。
本件補正発明1の「表示データ設定手段」は、まず、「前記表示領域の自発光素子および測定用自発光素子に印加する電圧VDD-VSSにおいて、電源電圧VDDを固定値とし、電源電圧VSSに初期値を設定することで、前記駆動状態検出手段におけるRGB各色の測定用自発光素子の駆動状態から、所定のホワイトポイントで出力できるRGB各色の最大輝度を求め、得られた最大輝度の値が設定値に対し所定範囲内に収まっているかを判定し、…前記最大輝度の値が設定値に対し所定範囲内に収まっていなければ、前記電源電圧VSSを輝度に応じて変更するようにして設定し直し、前記最大輝度の値が設定値に対し所定範囲内に収まるまで前記電源電圧VSSの設定し直す動作を繰り返す」ことにより、「電源電圧VSS」を設定する。
次に、「前記ホワイトポイントを与える最大階調をRGB表示用画素の最大階調に設定し、RGB表示用画素の表示データを設定」する。
したがって、本件補正発明1の「表示データ設定手段」は、「電源電圧VSS」及び「RGB表示用画素の表示データ」の双方を設定することにより、「所定のホワイトポイントを所定の輝度で実現する」ものである。

(イ)引用発明1と技術事項2との組み合わせ
引用発明1は、OLEDの経時劣化又は環境温度変化による輝度や色合いの変化の抑制を目的としている(上記1.(1)ア.(イ))。そして、モニター用OLED108に流れる電流が基準値に近づくように、対向電極側の電位Vssを色ごとに制御する。モニター用OLED108の劣化度合いは、表示用OLED107の劣化度合いと同程度になるようにされている(上記1.(1)ア.(ウ)、段落0019及び0020)から、モニター用OLED108に流れる電流が基準値に近づくように対向電極側の電位Vssを色ごとに制御すると、表示用OLED107に流れる電流も基準値に近づくことになる。その結果、R(赤)、G(緑)、B(青)の3種類の表示用OLED107は、それぞれを流れる基準値の電流に対応した輝度で発光し、3種類の表示用OLED107からなる表示用画素102は、全体として、基準の輝度及び基準の色合いで発光する(上記1.(1)ア.(ウ)、段落0023から0025まで)。すなわち、引用発明1は、輝度及び色合いの変化を同時に抑制するものである。
一方、技術事項2は、有機ELディスプレイに関するものであり、発光輝度管理画素22の3個(赤色(R)、緑色(G)及び青色(B))の発光素子の輝度の検出値と初期値との比を求め、その比を、表示領域に配置された各画素の3個の発光素子の発光量を指定する入力信号に乗じることで、各画素の輝度及び色温度の経時変化を補正する。技術事項2でも、各画素と発光輝度管理画素22とは経時変化が同程度である(上記1.(2)ア.(ウ)、段落0080)から、技術事項2では、要するに、各画素の3個の発光素子に入力する信号を、各発光素子の発光量が低下した分だけ大きくすることにより、各発光素子の輝度を初期値のままに保っている。その結果、各画素は、全体として初期の輝度及び初期の色合いで発光するから、技術発明2も、輝度及び色合いの変化を同時に抑制するものである。
引用発明1と技術事項2とは、モニター用OLEDの駆動状態に基づいて、輝度及び色合いの変化を同時に抑制する点で共通するから、技術事項2を引用発明1に適用することは、当業者が容易に思い付くことである。
ところが、技術事項2を引用発明1に適用したものは、以下に述べるとおり、相違点3に係る構成、特に「電源電圧VSS」を設定する構成を備えない。
引用発明1では、輝度及び色合いの変化を同時に抑制するという目的を達成するために、モニター用OLED108に流れる電流が基準値に近づくように、対向電極側の電位Vssを色ごとに制御している。一方、技術事項2は、同じ目的を達成するために、各画素の3個の発光素子に入力する信号を、各発光素子の発光量が低下した分だけ大きくすることを示唆している。したがって、技術事項2を引用発明1に適用したものは、モニター用OLED108に流れる電流が基準値に近づくように、対向電極側の電位Vssを色ごとに制御する代わりに、各画素の3個の発光素子に入力する信号を、各発光素子の発光量が低下した分だけ大きくすることになる。
技術事項2を引用発明1に適用したものは、対向電極側の電位Vssを制御しないものとなるから、「電源電圧VSS」を設定する構成を備えない。
なお、刊行物2には、輝度の経時変化が一番大きい発光素子(例えば青色(B)の発光素子)を基準に選び、他の発光素子の輝度が基準に選んだ発光素子の輝度と同じように経時変化するように、比KR、KG及びKBを決めるという技術事項も記載されている(上記1.(2)ア.(イ))。この場合、輝度の変化を抑制することはできず、色合いの変化だけを抑制することになるから、この技術事項を、輝度及び色合いの変化を同時に抑制する引用発明1に適用する動機が見いだせない。

(ウ)引用発明1と技術事項3との組み合わせ
技術事項3は、表示用有機EL素子224を有する表示装置に関するものである。そして、モニタ用有機EL素子17aを流れる電流が基準電流量Irefに一致するように、又はモニタ用有機EL素子19aの発光量が基準発光量Lrefに一致するように、画素電極141、走査線131、信号線132又は対向電極に印加される電圧を調整することで、表示用有機EL素子224の経時劣化を補正する。
引用発明1と技術事項3とは、モニター用OLEDを流れる電流に基づいて、表示用OLEDの経時劣化を補正する点で共通するから、技術事項3を引用発明1に適用することは、当業者が容易に思い付くことである。
ところで、技術事項3の「対向電極に印加される電圧」は、引用発明1の「対向電極側の電位Vss」に相当する。そして、技術事項3は、「対向電極に印加される電圧」に代えて、「画素電極141、走査線131、信号線132…に印加される電圧」を調整することを示唆している。したがって、技術事項3を引用発明1に適用したものは、モニター用OLED108に流れる電流が基準値に近づくように、対向電極側の電位Vssを色ごとに制御する代わりに、画素電極、走査線又は信号線に印加される電圧を調整することになる。
そうすると、技術事項3を引用発明1に適用したものも、相違点3に係る構成、特に「電源電圧VSS」を設定する構成を備えない。

(エ)相違点3についてのまとめ
相違点3に係る構成は、技術事項2又は3を引用発明1に適用することによって得られるものではない。

(3)本件補正発明1についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件補正発明1は、引用発明1と技術事項2又は3とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。すなわち、本件補正発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないとすることはできない。
また、他に特許出願の際独立して特許を受けることができないとすべき理由を発見しない。

3.本件補正発明2から8までについて
請求項2から8までは、いずれも請求項1の記載を引用して記載した請求項であり、本件補正発明2から8までは、いずれも本件補正発明1の発明特定事項を全て含む。
したがって、本件補正発明2から8までは、本件補正発明1と同様、引用発明1と技術事項2又は3とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。すなわち、本件補正発明2から8までも、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないとすることはできない。
また、他に特許出願の際独立して特許を受けることができないとすべき理由を発見しない。

4.独立特許要件についての判断のまとめ
本件補正発明1から8までは、いずれも特許出願の際独立して特許を受けることができるものであると認められる。したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

第4 本件出願に係る発明について
1.本件出願に係る発明
上記「第2」及び上記「第3」で述べたとおり、本件補正は適法と認められるから、本件出願に係る発明は、本件補正後の請求項1から8までのそれぞれに係る発明、すなわち、本件補正発明1から8までである。
そこで、以下では、本件補正発明1から8までのそれぞれを、改めて「本件発明1」、「本件発明2」などという。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略以下のとおりである。

「本件発明1から8までは、いずれも、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1及び2のそれぞれに記載された発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開2002-304155号公報(前掲)
刊行物2:特開2002-258792号公報(前掲)」

3.判断
上記「第3」で述べたとおり、本件発明1から8までは、いずれも、刊行物1に記載された発明(引用発明1)と刊行物2に記載された技術事項(技術事項2)とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本件出願については、原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-22 
結審通知日 2013-11-26 
審決日 2013-12-09 
出願番号 特願2006-113367(P2006-113367)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (G09G)
P 1 8・ 121- WY (G09G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 福村 拓  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 飯野 茂
森 竜介
発明の名称 表示装置  
代理人 上田 俊一  
代理人 梶並 順  
代理人 曾我 道治  
代理人 吉田 潤一郎  
代理人 武井 義一  

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