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審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1282515
審判番号 不服2013-8043  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-01 
確定日 2013-12-05 
事件の表示 特願2012-136308「筐体、半導体製造装置および搬送ロボット」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月20日出願公開、特開2012-182502〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成20年11月10日(優先権主張平成19年11月21日、日本国)を国際出願日とする特願2009-542521号の一部を平成24年6月15日に新たな特許出願としたものであって、同24年9月24日付けで拒絶の理由が通知され、同24年11月12日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同25年2月7日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し、同25年5月1日に本件審判の請求がされ、同時に特許請求の範囲及び明細書を補正対象書類とする手続補正(以下「本件補正」という。)がされ、その後、当審の平成25年7月29日付け審尋に対して回答書が提出されなかったものである。

第2 本件補正の内容とその適否
1 補正の内容の概要
本件補正は、特許請求の範囲及び明細書について補正をするものであって、補正前後の請求項1の記載を、補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(1) 補正前の請求項1
「 【請求項1】
上部に設置したフィルタを通過した清浄なダウンフローの気流を外部と隔離する筐体であって、
昇降機構を有する胴体と、前記胴体の上で水平方向に回転自在な第1アームと、前記第1アームの先端上で水平方向に回転自在な第2アームと、前記第2アームの先端上で水平方向に回転自在なハンドとを有しており前記ハンドに搭載した基板を搬送する搬送ロボットを前記筐体における正面側または背面側の側壁である第1の側壁寄りの内部に備え、
前記筐体は、
平面視した場合に略矩形であり、
前記第1アームの長さである第1アーム長は、
前記第1アームの回転軸である第1アーム回転軸と前記第1の側壁との距離よりも長く、かつ、前記第1の側壁と対向する第2の側壁と接触しない程度に該第2の側壁に近づけられ、
前記昇降機構の昇降軸は、
前記第1アームの旋回範囲内、かつ、前記第1の側壁からみて前記第1アーム回転軸よりも前記筐体内の奥側に配置されること
を特徴とする筐体。」
(2) 補正後の請求項1
「 【請求項1】
上部に設置したフィルタを通過した清浄なダウンフローの気流を外部と隔離する筐体であって、
昇降機構を有する胴体と、前記胴体の上で水平方向に回転自在な第1アームと、前記第1アームの先端上で水平方向に回転自在な第2アームと、前記第2アームの先端上で水平方向に回転自在なハンドとを有しており前記ハンドに搭載した基板を搬送する搬送ロボットを前記筐体における正面側または背面側の側壁である第1の側壁寄りの内部に備え、
前記筐体は、
平面視した場合に略矩形であり、
前記第1アームの長さである第1アーム長は、
前記第1アームの回転軸である第1アーム回転軸と前記第1の側壁との距離よりも長く、かつ、前記第1の側壁と対向する第2の側壁の近傍へ到達する長さであり、
前記昇降機構の昇降軸は、
前記第1アームの旋回範囲内、かつ、前記第1の側壁からみて前記第1アーム回転軸よりも前記筐体内の奥側に配置されること
を特徴とする筐体。」
2 補正の適否
請求項1における補正は、第1アーム長を「第2の側壁と接触しない程度に該第2の側壁に近づけられ」るものから、「第2の側壁の近傍へ到達する長さであ」るものとしたものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであることは明らかである。
以上のとおり、審判請求時の補正は、明りょうでない記載の釈明であると認めることができ、適法である。

第3 本件出願の発明と引用発明
1 本件発明
本件出願の請求項1ないし17に係る発明は、本件補正により補正がされた特許請求の範囲及び明細書、出願当初の図面の記載からみて、その請求項1ないし17に記載されたとおりの発明であると認められるところ、請求項1に記載された発明(以下、「本件発明」という。)は、上記第2の1(2)に記載されたとおりである。
2 刊行物記載事項及び刊行物に記載された発明
この出願の原出願における優先日前に頒布された刊行物である特開2003-188231号公報(以下「刊行物1」という。)及び特開2005-197542号公報(以下「刊行物2」という。)に記載された事項及び発明は、以下の通りである。
(1) 刊行物1
刊行物1には以下の記載がある。
ア 段落【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶基板製造装置や半導体製造装置等において、基板やウェーハ等のワークを搬送するために用いるワーク搬送用ロボット及びこのロボットを備えたワーク加工装置に関するものである。」
イ 段落【0053】?【0061】
「【0053】図1ないし図3において、Aはアーム機構駆動装置、B及びCはそれぞれ前段側アーム機構及び後段側アーム機構、Dはハンドであり、これらによりワーク搬送用ロボットRが構成されている。なお図2に示したWは、ハンドDの上に保持されたワーク(例えば半導体ウェハ)である。
【0054】図3に示したように、アーム機構駆動装置Aは、円筒状に形成されたケーシング1を備えている。ケーシング1は駆動装置Aの機構部を収容するためのもので、図示のケーシング1は、正方形状に形成された底板101と、該底板に下端が着脱可能に固定された円筒状の筒状部102とからなり、筒状部102はその軸線O-Oを垂直方向に向けた状態で配置されている。ケーシング1の底板101の四隅には、ロボットを取付け箇所に固定するためのボルトを挿通する取付け孔103が形成されている。またケーシング1の筒状部102の下端寄りの部分の外面には、1対の把手104,104が固定されている。
【0055】ケーシング1の内側には、上下方向に延びる支柱2が設けられていて、この支柱2に昇降フレーム3が昇降自在に支持され、ケーシング1と昇降フレーム3とにより、アーム機構を支持する支持フレーム4が構成されている。
【0056】更に詳述すると、支柱2は、図5に示されているように、ケーシング1と中心軸線を共有する円筒面の形状を呈する外周面201と、ケーシングの中心軸線と平行に延びる平坦な側面202と、ケーシングの軸線方向に延びる溝203とを有している。溝203は、側面202側に開口するように設けられていて、該溝203の両側に、ケーシングの中心軸線と平行に延びる対のレール取付け面202a,202aが形成されている。支柱2は、その下端をケーシングの底板101に固定することにより、ケーシング1に対して固定され、対のレール取付け面202a,202aに、互いに平行に配置された対のガイドレール5,5が固定されている。支柱2の上端及び下端寄りの位置には、溝203の上端及び下端をそれぞれ終端する端部壁204及び205が形成されている。
【0057】ガイドレール5,5にはそれぞれスライダ6,6がスライド自在に結合され、これらのスライダ6,6に昇降フレーム3が固定されている。図示の例では、ガイドレール5,5がそれぞれ鳩尾状の断面形状を有するように形成されていて、昇降フレーム3に固定されたスライダ6,6にそれぞれ設けられた断面鳩尾状の溝にガイドレール5,5がスライド自在に嵌合されている。
【0058】この例では、支柱2と、ガイドレール5,5と、スライダ6,6とにより、昇降フレーム3をケーシング1に対して昇降自在に支持する昇降フレーム支持機構が構成されている。
【0059】支柱2の上端側及び下端側の端部壁204及び205にはそれぞれ軸受8及び9(図3及び図6参照)が取り付けられ、これらの軸受により、支柱2の溝203内を上下方向(垂直方向)に延びるネジ棒(図示の例ではボールネジ)10が支持されている。昇降フレーム3の下端には、溝203内に挿入された張り出し部301が形成され、この張り出し部301に固定されたナット(図示の例ではボールナット)11にネジ棒10が螺合されている。ケーシング1内の下部には昇降用モータ12が、その出力軸を下方に向けた状態で配置されている。昇降用モータ12は、ケーシング1の底板101に架台13を介して固定され、モータ12の回転軸に取り付けられた歯付きプーリ14と、ボールネジ10の下端に取り付けられた歯付きプーリ15とに歯付きベルト16が巻き掛けされている。
【0060】したがって、モータ12が駆動されると、その回転がプーリ14とベルト16とプーリ15とを介してネジ棒10に伝達され、このネジ棒の回転により、ナット11が昇降フレーム3とともに昇降させられる。この例では、ネジ棒10及びナット11からなる螺進機構と、昇降用モータ12と、プーリ14及び15と、ベルト16とにより、昇降フレーム3をケーシングの中心軸線に沿って昇降させる昇降機構が構成されている。
【0061】上記のように、対のガイドレール5,5に対して共通に支柱2を設けて、この支柱2に対のガイドレールを取り付ける構造にしておくと、対のガイドレール5,5をケーシング1内に組み込む前に、支柱2を衝として所定の位置関係に位置決め固定した後に、支柱2をガイドレール5,5とともにケーシング1内に挿入する組み立て方法をとることができるため、2本のガイドレールを位置決めしたり、固定したり、ガイドレール相互間の位置関係の微調整を行ったりする面倒な作業を狭いケーシング内で行う必要がなく、対のガイドレールを精度良く位置決めして取り付ける作業を容易に行うことができる。」
ウ 段落【0082】?【0086】
「【0082】図4及び図5に示したように、昇降フレーム3の上部に前段側アーム駆動用モータ60がその出力軸を上方に向けた状態で取り付けられ、モータ60の出力軸に歯付きプーリ61が取り付けられている。歯付きプーリ61とプーリ23とに歯付きベルト62が巻き掛けされ、モータ60の回転がプーリ61とベルト62とプーリ23とを介して減速機20の入力部に伝達されている。この例では、プーリ23及び61とベルト62とにより、前段側アーム駆動用モータ60の回転を前段側アーム用減速機20の入力部に伝達する前段側アーム用伝導機構が構成され、この伝導機構と減速機20とにより、モータ60の回転を前段側アームBの一端に伝達する前段側アーム用動力伝達装置が構成されている。
【0083】昇降フレーム3の上部にはまた、ハンド駆動用モータ65(図3参照)が取り付けられ、このハンド駆動用モータ65の出力軸に歯付きプーリ66が取り付けられている。歯付きプーリ66とハンド駆動軸の下端に取り付けられた歯付きプーリ27とに歯付きベルト67が巻き掛けされ、ハンド駆動用モータ65の回転がプーリ66とベルト67とプーリ27とを介してハンド用駆動軸24に伝達されている。
【0084】本実施形態では、プーリ27及び66とベルト67とにより、ハンド駆動用モータ65の回転をハンド用駆動軸24に伝達する第1のハンド用伝導機構が構成され、前段側アームBの中空部内に配置されたプーリ28及び48とベルト56とにより、前段側アームの中空部内でハンド用駆動軸24の回転をハンド用中継軸45に伝達する第2のハンド用伝導機構が構成されている。また、後段側アームCの中空部内に配置されたプーリ46及び53とベルト57とにより、後段側アームの中空部内でハンド駆動用中継軸45の回転をハンド用減速機50の入力部に伝達する第3のハンド用伝導機構が構成され、上記第1ないし第3のハンド用伝導機構と減速機50とにより、ハンド駆動用モータ65の回転を前段側アームの中空部内及び後段側アームの中空部内を通してハンドDの一端に伝達するハンド用動力伝達装置が構成されている。
【0085】図4及び図5に示すように、昇降フレーム3の上部には、後段側アーム駆動用モータ70が取り付けられ、このモータ70の出力軸に歯付きプーリ71が取り付けられている。歯付きプーリ71と後段側アーム用駆動軸30の下端に取り付けられた歯付きプーリ35とに歯付きベルト72が巻き掛けされ、モータ70の回転がプーリ71とベルト72とプーリ35とを介して後段側アーム用駆動軸30に伝達されるようになっている。
【0086】この例では、プーリ35及び71とベルト72とにより、後段側アーム駆動用モータ70の回転を後段側アーム用駆動軸30に伝達する第1の後段側アーム用伝導機構が構成されている。またプーリ36と、ベルト55と、プーリ44とにより、前段側アームBの中空部内で後段側アーム用駆動軸30の回転を後段側アーム用減速機43の入力部に伝達する第2の後段側アーム用伝導機構が構成され、上記第1及び第2の後段側アーム用伝導機構と減速機43とにより、後段側アーム駆動用モータ70の回転を前段側アームの中空部内で後段側アーム用減速機の入力部に伝達する後段側アーム用動力伝達装置が構成されている。」
エ 段落【0089】?【0090】
「【0089】上記のワーク搬送用ロボットにおいては、前段側アーム駆動用モータ60を駆動することにより、前段側アームBをエンドレスに回動させることができる。また後段側アーム駆動用モータ70(図4参照)を駆動することにより、後段側アームCを、エンドレスに回動させることができる。更に、ハンド駆動用モータ65(図3参照)を回転させることにより、ハンドDをエンドレスに回動させることができる。
【0090】したがって、前段側アームB,後段側アームC及びハンドDのそれぞれの回動量と回動方向とを適宜に制御することにより、ハンドDを種々の方向に移動させることができる。」
オ 段落【0112】?【0121】
「【0112】本発明に係わるワーク搬送用ロボットは、半導体製造装置や液晶製造装置等のワーク加工装置において、ウェハや液晶基板等のワークを搬送するために用いられる。図9は本実施形態のワーク搬送用ロボットを備えたワーク加工装置の一例を示したもので、同図において80は長手方向に対向する対の側壁80a,80bと、これらの側壁の対向方向に対して直角な方向(奥行き方向)に相対する対の側壁80c,80dとを有する直方体状のトランスファチャンバ、81はトランスファチャンバ80の一つの側壁80aに接続されたロードロックチャンバ、82A及び82Bは一定の距離を隔てた状態で水平方向に並設されて、ロードロックチャンバ81が接続されたトランスファチャンバの側壁80aと直交する他の側壁80cに接続された2つのプロセスチャンバであり、トランスファチャンバ80内に本発明に係わるロボットRが配置されている。
【0113】図示のロボットRは、2つのプロセスチャンバ82A,82Bの中心Oa,Oa´間の水平方向距離を2等分する位置を両プロセスチャンバの並設方向に対して直角な方向に延びる直線Oc-Oc上の位置で、かつトランスファチャンバの相対する側壁80c,80dの対向方向の片側(図示の例ではプロセスチャンバ82A,82Bが取り付けられていない方の側壁80d側)に偏った位置に前段側アームBの回動中心(第1の軸線O_(1)-O_(1))を位置させた状態で配置されている。
【0114】半導体製造装置等のワーク加工装置において、ワークの中心位置及び向きを常に一定にしてプロセスチャンバー内に搬入する必要がある場合には、トランスファチャンバ80内にまちまちの向きで搬入されるワークの向きを一定の向きに揃えるための装置(アライナ装置と呼ばれる。)をトランスファチャンバ内に配置しておく必要がある。図9に示した例では、ロボットRの側方のデッドペースにアライナ装置83が配置されている。図示のアライナ装置83は、半導体ウェハを保持して回転させるターンテーブル83Aと、該ターンテーブルを回転させる駆動機構と、ターンテーブル83Aに保持されたウェハのノッチ(V字形の切欠)またはオリフラ(オリエンテーションフラット)の位置を検出するセンサと、検出したウェハのノッチまたはオリフラの位置を規定の方向に向けるようにターンテーブル83Aの回転を制御する制御装置とを備えたものである。アライナ装置83は、ロボットRによりウェハを保持してプロセスチャンバに搬入、搬出する際に、ロボットのハンドの移動を妨げることがないように、そのターンテーブル83Aをロードロックチャンバ81及びプロセスチャンバ82A,82Bのそれぞれの搬入、搬出口よりも下方に位置させた状態で設けられている。
・・・
【0116】図10(A)ないし(E)は、図9のワーク加工装置において、一方のプロセスチャンバ82A内のウェハ(ワーク)Wを他方のプロセスチャンバ82B内に搬送する際のロボットの動きを順を追って示している。なお図10においてはアライナ装置83の図示が省略されている。
【0117】この例では、図10(A)の過程で一方のプロセスチャンバ82A内のウェハWを受け取り、図10(B)の過程でウェハWをプロセスチャンバ82Aから搬出している。その後、図10(C)及び(D)の過程でウェハWを横方向(プロセスチャンバの並設方向)に平行移動させて、他方のプロセスチャンバ82Bの前まで移動させ、図10(E)の過程でウェハをプロセスチャンバ82B内に搬入している。
【0118】上記のように、本実施形態によれば、ロボットをチャンバの並設方向に移動させることなく、定位置に固定したままで複数のチャンバ内へのワークの搬入、搬出を行わせることができるため、ロボットをチャンバの並設方向に移動させる移動台を省略して搬送装置の構成を簡単にすることができ、半導体等の製造装置の小形化を図ることができる。
【0119】ワークを一方向にのみ移動させるように構成されていた従来のロボットを図9に示すようなワーク加工装置に用いる場合には、ロボットをトランスファチャンバ内でプロセスチャンバの並設方向に移動させる必要があるため、アライナ装置83を配置するためにトランスファチャンバ内に余分のスペースを確保する必要があり、製造装置が大形になるのを避けられなかったが、本実施形態のように、前段側アーム及び後段側アームとハンドとをエンドレスに回動させるように構成した場合には、上記のように、ロボットをチャンバの並設方向に移動させることなく、定位置に固定したままで複数のチャンバ内へのワークの搬入、搬出を行わせることができるため、図9に示したように、ロボットRの側方に形成されたデッドスペースにアライナ装置を配置することで、トランスファチャンバの小形化を図ることができる。
【0120】更に、本実施形態のように、各アームB,C及びハンドDをエンドレスに回動させることができるようにしておくと、各アーム及びハンドの変位の自由度を高めることができるため、常にワークを許容される最短の経路で目標位置に移動させるように各アーム及びハンドを制御して、ワークの移動に要する時間を短縮することができる。
【0121】また本実施形態のように、前段側アームBの回動中心である第1の軸線O_(1)-O_(1)がケーシング1の中心軸線O-Oに対して一定の偏倚距離ΔDだけ偏倚した位置を垂直方向に延びるように前段側アームの回動中心を設定すると、ロボットをワーク加工装置のトランスファチャンバ内に配置して、トランスファチャンバとロードロックチャンバとの間でのワークの受け渡しと、トランスファチャンバとプロセスチャンバとの間でのワークの受け渡しとを行わせるために用いる場合に、前段側アームBの回動中心とケーシング1の中心とを結ぶ直線の方向に相対するチャンバの対向壁部間の距離L(トランスファチャンバの奥行き方向の内法寸法、図9参照)を、前段側アームの回動中心をケーシングの中心に一致させた場合に比べて、偏倚距離ΔD分だけ短縮することができるため、ワーク加工装置のトランスファチャンバの小形化を図ることができる。またワーク加工装置がクリーンルーム内に配置される場合には、クリーンルームの容積の縮小を図ることができる。」
カ 段落【0048】?【0051】
「【0048】本発明に係わるロボットは特に、直方体状に形成されたトランスファチャンバと、トランスファチャンバの長手方向に相対する2つの側壁の少なくとも一方に接続されたロードロックチャンバと、水平方向に並べて配置されてトランスファチャンバの奥行き方向に相対する2つの側壁の一方に接続された複数のプロセスチャンバとを備えたワーク加工装置において、トランスファチャンバとロードロックチャンバとの間でのワークの受け渡しと、トランスファチャンバと各プロセスチャンバとの間でのワークの受け渡しとを行わせるために用いるのに適している。この場合、本発明に係わるワーク搬送用ロボットを、トランスファチャンバの奥行き方向に相対する2つの側壁の他方にケーシングを近接させた状態で配置すると、トランスファチャンバの奥行き寸法を短縮することができるため、トランスファチャンバの容積の縮小を効果的に図ることができる。
【0049】またロボット設置ステーションと、ロボット設置ステーションの近傍に配置されたワーク加工部と、該ワーク加工部へのワークの搬入及び該ワーク加工部からのワークの搬出を行うためにロボット設置ステーションの上に設置されたワーク搬送用ロボットとを備えたワーク加工装置が用いられる場合もある。
【0050】このように、トランスファーチャンバを持たないワーク加工装置においても、本発明のロボットを用いることにより、ワーク加工部とロボットとの間の距離を短縮することができるため、ワーク加工装置の小形化を図って、クリーンルームの容積の縮小を図ることができる。
【0051】例えば、ロボット設置ステーションとして、長方形を呈するものを用い、該ロボット設置ステーションの一方の長辺の近傍に少なくとも一つのワーク加工部を配置する場合には、本発明のワーク搬送用ロボットを、そのケーシングをロボット設置ステーションの他方の長辺に近接させた状態で配置することにより、ロボット設置ステーションの奥行き寸法の縮小を図って、ワーク加工装置の小形化を図ることができる。」
キ ここで、ワーク搬送用ロボットRの前段側アーム機構B、後段側アーム機構B、ハンドDが水平方向に回動自在なものであり、また、前段側アーム機構Bの先端上に後段側アームCが設けられ、後段側アームCの先端上にハンドDが設けられていることは明らかである。
また、図面の図9、図10を参照すると、トランスファチャンバ80の一対の側壁80c、80dは、他方の一対の側壁80a、80bよりも長いことが見て取れる。一方、摘記事項カの「このように、トランスファーチャンバを持たないワーク加工装置においても、本発明のロボットを用いることにより、ワーク加工部とロボットとの間の距離を短縮することができるため、ワーク加工装置の小形化を図って、クリーンルームの容積の縮小を図ることができる。例えば、ロボット設置ステーションとして、長方形を呈するものを用い、該ロボット設置ステーションの一方の長辺の近傍に少なくとも一つのワーク加工部を配置する場合には、本発明のワーク搬送用ロボットを、そのケーシングをロボット設置ステーションの他方の長辺に近接させた状態で配置することにより、ロボット設置ステーションの奥行き寸法の縮小を図って、ワーク加工装置の小形化を図ることができる。」の記載から、図9、図10に記載された装置において、トランスファチャンバ80の代わりにクリーンルームを有するロボット設置ステーションを用いることができる。
さらに、摘記事項オに「図示のロボットRは、2つのプロセスチャンバ82A,82Bの中心Oa,Oa´間の水平方向距離を2等分する位置を両プロセスチャンバの並設方向に対して直角な方向に延びる直線Oc-Oc上の位置で、かつトランスファチャンバの相対する側壁80c,80dの対向方向の片側(図示の例ではプロセスチャンバ82A,82Bが取り付けられていない方の側壁80d側)に偏った位置に前段側アームBの回動中心(第1の軸線O_(1)-O_(1))を位置させた状態で配置されている。」とあるところ、ロボットRの前段側アームBの回動中心と反対側にネジ棒10が設けられていることは図5、図6を参照することにより明らかであるから、図9に示されたトランスファチャンバ80内において、ワーク搬送用ロボットRを偏らせた側の側壁80dに対して、ロボットRの前段側アームBの回動中心よりも遠い側にネジ棒10が設けられていることは明らかである。
そして、図面の図10を参照すると、前段側アームBの先端はワーク搬送用ロボットRのケーシング1の外側に設定されていることが見て取れるから、ネジ棒10が設けられているのは、前段側アームBの旋回範囲内であることは明らかである。
ク 刊行物1記載の発明
上記アないしカの摘記事項、及びキの認定事項より、刊行物1には、次の発明が記載されていると認める。
「クリーンルームを有するロボット設置ステーションであって、
昇降フレーム3と、昇降フレーム3の上部で水平方向に回転自在な前段側アームBと、前記前段側アームBの先端上で水平方向に回転自在な後段側アームCと、前記後段側アームCの先端上で水平方向に回転自在なハンドDとを有しており前記ハンドD上に保持された半導体ウエハWを搬送するワーク搬送用ロボットRを前記ロボット設置ステーション内の側壁80d側に偏らせて備え、
前記ロボット設置ステーションは、
一対の側壁80c、80dが、他方の一対の側壁80a、80bよりも長い直方体状であり、
前記昇降フレーム3を昇降させるネジ棒10は、
前記前段側アームBの旋回範囲内、かつ、前記側壁80dからみて前記前段側アームBの回動中心よりもロボット設置ステーション内の遠い側に配置されているロボット設置ステーション。」(以下「刊行物1記載の発明」という。)
(2) 刊行物2
刊行物2には以下の記載がある。
ケ 段落【0001】
「【0001】
本発明は、半導体製造技術、特に、被処理基板を処理室に収容してヒータによって加熱した状態で処理を施す熱処理技術に関し、例えば、半導体集積回路装置が作り込まれる半導体ウエハに酸化処理や拡散処理、イオン打ち込み後のキャリア活性化や平坦化のためのリフローやアニール及び熱CVD反応による成膜処理などに使用される基板処理装置に利用して有効なものに係わる。」
コ 段落【0020】?【0022】
「【0020】
予備室122および予備室123の前側には、略大気圧下で用いられる第二の搬送室121がゲートバルブ128、129を介して連結されている。第二の搬送室121にはウエハ200を移載する第二のウエハ移載機124が設置されている。第二のウエハ移載機124は第二の搬送室121に設置されたエレベータ126によって昇降されるように構成されているとともに、リニアアクチュエータ132によって左右方向に往復移動されるように構成されている。
【0021】
図2に示されているように、第二の搬送室121の左側にはオリフラ合わせ装置106が設置されている。また、図3に示されているように、第二の搬送室121の上部にはクリーンエアを供給するクリーンユニット118が設置されている。
【0022】
図2および図3に示されているように、第二の搬送室121の筐体125には、ウエハ200を第二の搬送室121に対して搬入搬出するためのウエハ搬入搬出口134と、前記ウエハ搬入搬出口を閉塞する蓋142と、ポッドオープナ108がそれぞれ設置されている。ポッドオープナ108は、IOステージ105に載置されたポッド100のキャップ及びウエハ搬入搬出口134を閉塞する蓋142を開閉するキャップ開閉機構136とを備えており、IOステージ105に載置されたポッド100のキャップ及びウエハ搬入搬出口134を閉塞する蓋142をキャップ開閉機構136によって開閉することにより、ポッド100のウエハ出し入れを可能にする。また、ポッド100は図示しない工程内搬送装置(RGV)によって、前記IOステージ105に、供給および排出されるようになっている。」
サ ここで、図面の図2を参照すると、第二の搬送室121の筐体125は、平面視した場合に略矩形であることが見て取れる。
図面の図3を参照すると、上部にクリーンユニット118が設けられているのが見て取れる。クリ-ンユニット118にフィルタが備えられていること、及びクリーンユニット118からのクリーンエアは、ダウンフローの気流により、筐体125内部の第二の搬送室121を外部と隔離するものであることは明らかである。
シ 刊行物2記載の発明
上記ケないしコの摘記事項、及びサの認定事項より、刊行物2には、次の発明が記載されていると認める。
「上部に設置したクリーンユニット118のフィルタを通過した清浄なダウンフローの気流を外部と隔離する筐体125であって、
エレベータ126によって昇降され、リニアアクチュエータ132によって左右方向に往復移動されるように構成されている、ウエハ200を移載する第二のウエハ移載機124を筐体125内に備え、
前記筐体125は、平面視した場合に略矩形状である筐体125。」(以下「刊行物2記載の発明」という。)

第4 対比
本件発明と刊行物1記載の発明とを対比する。
刊行物1記載の発明の「クリーンルームを有するロボット設置ステーション」、「前段側アームB」、「後段側アームC」、「ハンドD」、「ワーク搬送用ロボットR」は、それぞれ、本件発明の「筐体」、「第1アーム」、「第2アーム」、「ハンド」、「搬送ロボット」に相当する。
刊行物1記載の発明の「昇降フレーム3」、「上部」、「ネジ棒10」は、それぞれ、本件発明の「胴体」、「上」、「昇降軸」に相当する。したがって、刊行物1記載の発明の「昇降フレーム3」は「昇降機構を有する胴体」と呼ぶことができ、刊行物1記載の発明の「昇降フレーム3を昇降させるネジ棒10」は「昇降機構の昇降軸」と呼ぶことができる。
刊行物1記載の発明の「一対の側壁80c、80dが、他方の一対の側壁80a、80bよりも長い直方体状」は、本件発明の「平面視した場合に略矩形」に相当する。
刊行物1記載の発明の「側壁80d」は本件発明の「筐体における正面側または背面側の側壁である第1の側壁」に相当する。したがって、刊行物1記載の発明の「ロボット設置ステーション内の側壁80d側に偏らせて備え」ることは、本件発明の「筐体における正面側または背面側の側壁である第1の側壁寄りの内部に備え」ることに相当する。
刊行物1記載の発明の「側壁80dからみて前段側アームBの回動中心よりもロボット設置ステーション内の遠い側に配置」されることは、本件発明の「第1の側壁からみて第1アーム回転軸よりも筐体内の奥側に配置」されることに相当する。
以上のとおりであるので、両者は、次の「筐体」で一致している。
「筐体であって、
昇降機構を有する胴体と、前記胴体の上で水平方向に回転自在な第1アームと、前記第1アームの先端上で水平方向に回転自在な第2アームと、前記第2アームの先端上で水平方向に回転自在なハンドとを有しており前記ハンドに搭載した基板を搬送する搬送ロボットを前記筐体における正面側または背面側の側壁である第1の側壁寄りの内部に備え、
前記筐体は、
平面視した場合に略矩形であり、
前記昇降機構の昇降軸は、
前記第1アームの旋回範囲内、かつ、前記第1の側壁からみて前記第1アーム回転軸よりも前記筐体内の奥側に配置される筐体。」
そして、両者は、次の点で相違している。
(1) <相違点1>
筐体内の雰囲気に関して、本件発明では、「上部に設置したフィルタを通過した清浄なダウンフローの気流を外部と隔離する」ものであると特定しているのに対し、刊行物1記載の発明では、クリーンルームは有するものの、そのようなダウンフローの気流があるのかどうか不明な点。
(2) <相違点2>
搬送ロボットの第1アーム長に関して、本件発明では、「第1アームの長さである第1アーム長は、前記第1アームの回転軸である第1アーム回転軸と第1の側壁との距離よりも長く、かつ、前記第1の側壁と対向する第2の側壁の近傍へ到達する長さであ」ると特定しているのに対し、刊行物1記載の発明では、第1アームに相当する前段側アームBの長さについて不明な点。

第5 相違点の検討
上記各相違点について、以下検討する。
(1) <相違点1>について
刊行物2記載の発明は、「上部に設置したクリーンユニット118のフィルタを通過した清浄なダウンフローの気流を外部と隔離する筐体125であって、エレベータ126によって昇降され、リニアアクチュエータ132によって左右方向に往復移動されるように構成されている、ウエハ200を移載する第二のウエハ移載機124を筐体125内に備え、前記筐体125は、平面視した場合に略矩形状である筐体125。」である。ここで、刊行物2記載の発明の「筐体125」、「エレベータ126よって昇降され」、「ウエハ200を移載する第二のウエハ移載機124」は、それぞれ、本件発明の「筐体」、「昇降機構を有し」、「基板を搬送する搬送ロボット」に相当するから、刊行物2記載の発明は、「上部に設置したフィルタを通過した清浄なダウンフローの気流を外部と隔離する筐体であって、昇降機構を有し、基板を搬送する搬送ロボットを筐体内部に備え、前記筐体は、平面視した場合に略矩形状である筐体。」と言い換えることができる。すなわち、基板を搬送する搬送ロボットを有する筐体内を、上部に設置したフィルタを通過した清浄なダウンフローの気流により外部と隔離することは刊行物2記載の発明に見られるように従来知られている。
そして、刊行物1記載の発明も、刊行物2記載の発明も、基板を搬送する搬送ロボットを内部に有する筐体であって、基板の搬送は清浄な雰囲気で行われなければならないことがこの種の装置において当然望まれていることであること、刊行物1記載の発明も、クリーンルームを有すること、以上のことからすれば、刊行物2記載の発明におけるクリーンユニット118の構成を刊行物1記載の発明に適用し、筐体であるロボット設置ステーションの上部にもクリーンユニットを設置し、それにより上部に設置したフィルタを通過した清浄なダウンフローの気流によりロボット設置ステーション内を外部と隔離することは、当業者にとって格別困難なことではない。
(2) <相違点2>について
刊行物1には、第1アームに相当する前段側アームBの長さについての記載はない。
しかしながら、刊行物1記載の発明において、ワーク搬送用ロボットRはロボット設置ステーション内の一方の側壁80dに偏った位置に設けられたものであることから、側壁80dと対向する側壁80cとの距離が、ワーク搬送用ロボットRをロボット設置ステーション内の中心に設置した場合よりも遠くなることは明らかである。してみると、ロボット設置ステーション内の遠くなった側壁80c側に半導体ウエハを搬送するためには、遠くなった分だけワーク搬送用ロボットRのアームの長さを全体として長くすべきことは当然の設計変更である。ワーク搬送用ロボットRのアームの長さを全体として長くすれば、当然、前段側アームBの長さも長くなる。そして、前段側アームBの長さを長くすれば、前段側アームBの先端は、(側壁80dと対向する)側壁80cに近づくようになる。逆に、前段側アームBの長さが長くした場合に、ワーク搬送用ロボットRを近づけて設置した側の側壁80dは、前段側アームBの回動中心と近くなるのであるから、前段側アームBの長さは側壁80dと前段側アームBの回動中心との距離よりも長くなる。
してみると、刊行物1記載の発明において、前段側アームBのアーム長を、前記前段側アームBの回動中心と側壁80dとの距離よりも長く、かつ、側壁80dと対向する側壁80cに近づく長さとすることは、当然の設計事項である。
なお、本件発明では、第1のアーム長は、第1の側壁と対向する第2の側
壁の「近傍に到達する長さ」と特定している。
しかしながら、第1のアームに相当する前段側アームBのアーム長を側壁80cの「近傍に到達する」長さと特定しても、前段側アームBのアーム長を側壁80cに近づく長さとしたものに比較してその差異が明確ではなく、しかも、「近傍」と特定したことによる特別な作用ないし効果が認められず、また、ロボットアームのアーム長は、回動可能な範囲でできるだけ長くすればそれだけロボットアームで搬送できる距離が長くなることが自明の事項であることからすれば、上記「近傍に到達する」長さと特定することは、技術的に有意義な特定であるとすることはできない。
(3) 本件発明の作用効果について
本件発明が奏する作用効果は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の発明から当業者が予測できる程度のものであって格別のものではない。

第6 むすび
以上のとおり、本件発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、この出願の請求項2ないし17に係る発明について判断するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-07 
結審通知日 2013-10-08 
審決日 2013-10-21 
出願番号 特願2012-136308(P2012-136308)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 574- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 崇文  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 長屋 陽二郎
久保 克彦
発明の名称 筐体、半導体製造装置および搬送ロボット  
代理人 酒井 宏明  

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