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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1282587
審判番号 不服2013-2773  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-13 
確定日 2013-12-02 
事件の表示 特願2008- 7469「顔認証による画面切替装置、方法、プログラム及び携帯電話機」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 7月30日出願公開、特開2009-171259〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯
1.手続
本件出願は、平成20年1月16日の出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成24年 3月14日(起案日)
手続補正 :平成24年 5月11日
拒絶査定 :平成24年11月13日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成25年 2月13日
手続補正 :平成25年 2月13日
前置審査報告 :平成25年 4月26日
審尋 :平成25年 5月22日(起案日)
回答書 :平成25年 7月12日

2.査定
原査定の理由は、概略、以下のとおりである。

本願の請求項1ないし請求項6に係る発明は、いずれも、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の各刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記(刊行物)
刊行物1:特開2007-17596号公報
刊行物2:特開2005-100084号公報
刊行物3:特開2007-36928号公報
刊行物4:特開2003-186462号公報
刊行物5:特開2005-266061号公報
刊行物6:特表2007-534043公報

第2 補正の却下の決定
平成25年2月13日付けの手続補正について次のとおり決定する。

《結論》
平成25年2月13日付けの手続補正を却下する。

《理由》
1.補正の内容
平成25年2月13日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてする下記の補正事項を含むものである(アンダーラインは補正箇所)。

記(補正事項)
請求項1について
「顔認証による画面切替装置において、
顔を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影した画像表示、受信したテレビジョン映像及びテレビジョン電話映像を含む表示を行い、長方形をなし、横辺又は縦辺の一方を表示方向の基準と定める軸とする表示部と、
前記カメラで撮影され前記表示部に表示される顔の眼球位置関係を特定する認証を行う顔認証部と、
前記顔認証部により認証された顔の眼球位置関係の特定から顔が表示される前記表示部の軸が向く方向に基づき定めた画面に切り替え、切り替えた画面にテレビジョン映像及びテレビジョン電話映像を含む表示を行う表示制御部とを備えることを特徴とする、顔認証による画面切替装置。」(補正前)
とあるのを、

「顔認証による画面切替装置において、
顔を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影した画像表示、受信したテレビジョン映像及びテレビジョン電話映像を含む表示を行い、長方形の画面を有し、横辺又は縦辺の一方を表示方向の基準と定める軸とする表示部と、
前記カメラで撮影され前記表示部に表示される顔の眼球位置関係を特定する認証を行う顔認証部と、
前記顔認証部により認証された顔の眼球位置関係の特定から前記表示部に表示される顔に対して、顔が表示される前記表示部の軸が下から上に向く場合には縦画面にカメラで撮影された顔の正面が表示されたと定め、顔が表示される前記表示部の軸が左から右に向く場合には横画面にカメラで撮影された顔の正面が表示されたと定め、顔が表示される前記表示部の軸が上から下に向く場合には逆縦画面にカメラで撮影された顔の正面が表示されたと定め、前記表示部の軸が右から左に向く場合には逆横画面にカメラで撮影された顔の正面が表示されたと定め、前記表示部の軸が向く方向に応じて画面の向きを切り替え、切り替えた画面にテレビジョン映像及びテレビジョン電話映像を含む表示を行う表示制御部とを備えることを特徴とする、顔認証による画面切替装置。」(補正後)
と補正する。

2.本件補正の適合性
(1)補正の範囲
上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書の記載(段落【0022】,【0026】,【0027】)に基づくものであり、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。

(2)補正の目的
上記補正事項は、「表示部」及び「表示制御部」の内容を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(3)独立特許要件
上記補正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、以下、独立特許要件について検討する。

ア.補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、下記のとおりである。

記(再掲、本件補正発明)
顔認証による画面切替装置において、
顔を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影した画像表示、受信したテレビジョン映像及びテレビジョン電話映像を含む表示を行い、長方形の画面を有し、横辺又は縦辺の一方を表示方向の基準と定める軸とする表示部と、
前記カメラで撮影され前記表示部に表示される顔の眼球位置関係を特定する認証を行う顔認証部と、
前記顔認証部により認証された顔の眼球位置関係の特定から前記表示部に表示される顔に対して、顔が表示される前記表示部の軸が下から上に向く場合には縦画面にカメラで撮影された顔の正面が表示されたと定め、顔が表示される前記表示部の軸が左から右に向く場合には横画面にカメラで撮影された顔の正面が表示されたと定め、顔が表示される前記表示部の軸が上から下に向く場合には逆縦画面にカメラで撮影された顔の正面が表示されたと定め、前記表示部の軸が右から左に向く場合には逆横画面にカメラで撮影された顔の正面が表示されたと定め、前記表示部の軸が向く方向に応じて画面の向きを切り替え、切り替えた画面にテレビジョン映像及びテレビジョン電話映像を含む表示を行う表示制御部とを備えることを特徴とする、顔認証による画面切替装置。

イ.引用例の記載
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1である特開2007-17596号公報(以下「引用例1」という。)には、「携帯端末装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

《発明が解決しようとする課題》
「【0015】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、携帯端末装置の小型化を妨げるようなセンサを新たに設けることなく、携帯端末装置の表示部の表示画面と使用者との位置関係に応じて望ましい向きで表示画面に情報を表示することが可能な携帯端末装置を提供することを目的とする。」

《課題を解決するための手段》
「【0016】
本発明の携帯端末装置は、
少なくとも文字情報を表示可能な表示部を有する本体と、
前記本体に設けられた撮像手段と、
前記撮像手段が撮影した画像に基づいて被写体(例えば使用者の顔)の情報を取得し、当該被写体(例えば少なくとも顔)の向きと前記本体の向きとの相対的な位置関係を把握する画像認識手段と、
前記画像認識手段が把握した位置関係に従って、前記表示部の表示画面に表示する情報の向きを決定する表示制御手段と、
を備える。
【0017】
この構成では、撮像手段によって撮影された画像から被写体(例えば使用者の顔)を検出するので、被写体(例えば使用者の顔)の向きと携帯端末装置の向きとの相対的な位置関係を把握することができる。従って、検出された前記位置関係に基づいて表示画面に表示する文字や画像の向きを制御することにより、例えば使用者が携帯端末装置を持つ向きを90度回転させたような場合であっても、使用者が携帯端末装置の表示画面を見た時に、表示内容が正立状態で見えるように表示を制御することができ、表示される文字や画像や使用者に対して横向きになったり、あるいは逆さになるのを防止できる。
【0018】
例えば、携帯無線電話端末装置のような携帯端末装置の場合には、撮像手段としてデジタルカメラ機能が標準装備されている場合が多いので、このデジタルカメラを利用して被写体(例えば使用者の顔)を撮影すれば、新たに撮像手段を設ける必要はない。従って、携帯端末装置の大型化や製造コストの上昇を抑制できる。
【0019】
また、本発明の携帯端末装置では、当該携帯端末装置に所定の動作を行わせるためのアプリケーションプログラムが新たに起動されるときに、前記撮像手段が新たに画像を撮影し、前記画像認識手段は前記撮像手段が撮影した画像から被写体(例えば使用者の顔)の向きと前記本体の向きとの相対的な位置関係を検出し、前記表示制御手段は前記画像認識手段から位置関係の情報を取得して前記アプリケーションプログラムによって生成される表示情報の表示の向きを決定する。」

《発明を実施するための最良の形態》
「【0029】
以下、図1?図6を参照しながら本発明に係る携帯端末装置の一実施形態について説明する。尚、ここでは、近年世の中で非常に普及しているデジタルカメラを備えた携帯無線電話端末装置(即ち、いわゆる携帯電話機)を本発明に係る携帯端末装置の好適な実施形態として説明する。勿論、携帯無線電話端末装置以外の携帯端末装置、例えばPDA等の携帯情報端末装置にも本発明は適用できる。
【0030】
図1は本発明の携帯無線電話端末装置の外観を示す斜視図である。図2は本発明の携帯無線電話端末装置の縦向きの場合の外観を示す正面図である。図3は本発明の携帯無線電話端末装置の横向きの場合の外観を示す正面図である。図4は本発明の携帯無線電話端末装置の縦向きの場合の外観を示す正面図である。図5は本発明の携帯無線電話端末装置の主要動作を示すフローチャートである。図6は本発明の携帯無線電話端末装置の主要な構成要素を示すシステムブロック図である。
【0031】
図1に示されるように、携帯無線電話端末装置の本体10は、下側筐体部11と上側筐体部12とをヒンジ13を介して連結したものであり、折り畳み可能になっている。
【0032】
下側筐体部11には操作部103が設けられている。操作部103にはテンキー等の機能が割り当てられた多数の操作キースイッチ(即ち、ボタン)が具備されている。
【0033】
また、上側筐体部12にはカメラ部101および表示部102が設けられている。カメラ部101は、二次元画像を撮影するために上側筐体部12に内蔵された撮像素子を有するデジタルカメラであって、表示部102の表示画面が配置された上側筐体部12の表側面と対向する位置に存在する被写体を撮影する。表示部102は液晶表示装置で構成され、その平面形状の表示画面に文字や画像といった可視情報を表示することができる。
【0034】
このように携帯無線電話端末装置の本体10の片側面上でカメラ部101、表示部102および操作部103が部分的に露出されている。
【0035】
この携帯無線電話端末装置は、通常は使用者の手によって支持され、図2に示すように縦向きに配置された状態で使用される場合もあるし、また図3に示されるように横向きに配置された状態で使用される場合もある。
【0036】
使用者が携帯無線電話端末装置の表示部102を見ながら使用するときには、カメラ部101の正面に使用者が対向した状態になるので、カメラ部101が撮影する画像には使用者の顔等が映ることになる。このカメラ部101が撮影した画像は、例えば図2あるいは図3に示すように表示部102の表示画面に表示される。」

「【0043】
表示制御部110は、表示部102の表示画面に表示する情報の制御を実施する。例えば、表示画面に表示する画像や文字を90度回転するような処理を表示制御部110が実施する。
【0044】
記憶部111は、主制御部100のマイクロプロセッサ等からの画像処理情報等といった様々なデータを保存したり、主制御部100のマイクロプロセッサが実行可能なシステムプログラムやアプリケーションプログラムを保持するために利用される。システムプログラムは、携帯無線電話端末装置の例えば図6に示される電気的構成要素の動作制御を主制御部100のマイクロプロセッサに行わせるためのプログラムである。また、アプリケーションプログラムは、例えば、様々なゲームを実行するためのプログラム、テレビ放送受信機能を実現するためのプログラム、等であって、このようなアプリケーションプログラムに従って主制御部100のマイクロプロセッサは携帯無線電話端末装置の例えば図6に示される電気的構成要素の動作制御を行う。
【0045】
ところで、図2に示されるように携帯無線電話端末装置を縦向きで使用する場合には、画像やアプリケーションプログラムが生成する情報が表示部102の表示画面にも縦向きで表示されることが望ましく、そして図3に示されるように携帯無線電話端末装置を横向きで使用する場合には、画像やアプリケーションプログラムが生成する情報が表示部102の表示画面にも横向きで表示されることが望ましい。これにより、使用者は常に正立状態で画像等を見ることができる。
【0046】
表示部102に表示する画像等の情報の向きを使用者から見て正立状態になるように自動的に制御するためには、携帯無線電話端末装置と使用者との相対的な位置関係(特に向き)を検出する必要がある。しかし、上述したように、使用者を検出するために特別なセンサを設けると、携帯無線電話端末装置の小型化の妨げになり、また製造コストの上昇も避けられない。
【0047】
そこで、本実施形態では、既に備わっているカメラ部101を用いて使用者の顔等を撮影し、撮影により得られた画像を解析することにより位置関係を検出する。
【0048】
この形態の携帯無線電話端末装置の動作について、図5を参照しながら説明する。尚、図5に示す動作は主に主制御部100のマイクロプロセッサによる処理および制御により実現する。勿論、専用のハードウェアで制御することも可能である。
【0049】
まず、自動的に、あるいは使用者による操作部103への入力操作によって、記憶部111上に保持されたいずれか一つのアプリケーションプログラムが主制御部100によって起動されると、主制御部100の処理はステップS1からステップS2に進む。
【0050】
ステップS2では、主制御部100がカメラ部101の処理を起動する。これにより、カメラ部101の撮像素子は表示部102の表示画面と対向する位置に存在する被写体を撮影する。使用者が表示部102を見ながら携帯無線電話端末装置を使用すれば、被写体として使用者の顔等がカメラ部101により撮影される。
【0051】
ステップS3では、主制御部100が主に画像認識手段として処理を行う。即ち、主制御部100は、カメラ部101によって撮影された画像を処理し、顔の位置を識別する公知の顔認識技術を用いることにより、画像中に顔が存在するか否かを区別したり、顔の方向を識別する。
【0052】
例えば、主制御部100は、顔全体を認識した後で、目、鼻、口、等の個別の特徴領域を認識し、目、鼻、口、等の相対的な位置関係を調べることにより、顔が正立状態か、あるいは横向き状態か、あるいは逆さの状態かを区別することができる。
【0053】
カメラ部101自体は携帯無線電話端末装置の本体10に固定されているので、カメラ部101が撮影した画像から認識される顔の向きは、本体10と使用者の顔との相対的な位置関係(向き)を表す。
【0054】
主制御部100は、ステップS3の処理の結果に基づき、顔が認識できない第1の状態(即ち、ステップS4)と、正立状態で顔を検出した第2の状態(即ち、ステップS5)と、正立状態から右回りに90度回転した状態で顔を検出した第3の状態(即ち、ステップS6)と、正立状態から180度回転した状態で顔を検出した第4の状態(即ち、ステップS7)と、正立状態から左回りに90度回転した状態で顔を検出した第5の状態(即ち、ステップS8)とを区別し、いずれの状態であるかを判定する。
【0055】
上述の第1の状態、即ち、顔が認識できなかった場合には、ステップS4からステップS9に進み、ステップS1で起動したアプリケーションプログラムを強制的に終了する。つまり、表示部102の表示画面と対向する位置に使用者が存在しないので、使用者は携帯無線電話端末装置を現在は使用していないものと見なす。これにより、使用者が携帯無線電話端末装置をから離れた位置に移動したような場合の無駄な電力消費を抑制できる。
【0056】
また、使用者が意識的に入力操作を行わないのに携帯時等でたまたま操作部103が操作されてアプリケーションプログラムが起動する場合もありうるが、このような場合にもアプリケーションプログラムを終了することができる。尚、アプリケーションプログラムを終了する代わりに、表示部102のバックライトを消灯するだけでも電力消費の抑制には効果がある。
【0057】
一方、上述した第2の状態、第3の状態、第4の状態、および第5の状態では、それぞれステップS5、ステップS6、ステップS7、ステップS8にて表示部102に表示される文字や画像の向きが使用者から見て正立状態になるように表示の向きが決定される。
【0058】
例えば、図2に示されるように縦向きで携帯無線電話端末装置が使用されているときには、図2の左側図のようにカメラ部101が撮影した画像中に正立状態で使用者の顔が検出されるので、ここで主制御部100は表示制御手段としても働き、アプリケーションプログラムの実行によって表示される様々な情報についても、縦向きの携帯無線電話端末装置の表示部102の表示画面上で図2の右側図のように縦向き、つまり正立状態になる向きで表示されるように表示制御部110を制御する。
【0059】
例えば、図3に示されるように横向きで携帯無線電話端末装置が使用されているときには、図3の上側図のようにカメラ部101が撮影した画像中に横向き(右回りまたは左回りで90度回転した状態)で使用者の顔が検出されるので、ここでも主制御部100は表示制御手段として働き、アプリケーションプログラムの実行によって表示される様々な情報についても、横向きの携帯無線電話端末装置の表示部102の表示画面上で図3の下側図のように横向き、つまり正立状態になる向きで表示されるように表示制御部110を制御する。」

「【0065】
なお、本実施形態においては、主制御部100が主に画像認識手段として、カメラ部101により撮影した顔に基づいて顔の情報を取得し、顔の向きと本体10の向きとの相対的な位置関係を把握するようにしていたが、顔に限られることはなく、例えば、目、鼻、口、等の情報を取得し、目、鼻、口、等の向きと本体10の向きとの相対的な位置関係を把握するようにしたとしても構わない。」
(引用例1の記載、以上)

ウ.引用発明
(ア)携帯端末装置
引用例1の段落【0016】の「本発明の携帯端末装置は、少なくとも文字情報を表示可能な表示部を有する本体と、前記本体に設けられた撮像手段と、前記撮像手段が撮影した画像に基づいて被写体(例えば使用者の顔)の情報を取得し、当該被写体(例えば少なくとも顔)の向きと前記本体の向きとの相対的な位置関係を把握する画像認識手段と、前記画像認識手段が把握した位置関係に従って、前記表示部の表示画面に表示する情報の向きを決定する表示制御手段と、を備える。」の記載によれば、引用例1は、「顔認識により表示部の表示画面に表示する情報の向きを決定する携帯端末装置」の発明である。

(イ)カメラ部
引用例1の上記(ア)で摘示した記載に加えて、段落【0036】の「使用者が携帯無線電話端末装置の表示部102を見ながら使用するときには、カメラ部101の正面に使用者が対向した状態になるので、カメラ部101が撮影する画像には使用者の顔等が映ることになる。このカメラ部101が撮影した画像は、例えば図2あるいは図3に示すように表示部102の表示画面に表示される。」の記載によれば、引用例1は、「顔を撮影する撮像手段(カメラ部101)」を有する。

(ウ)表示部
引用例1の上記(ア)、(イ)で摘示した記載に加えて、段落【0019】の「本発明の携帯端末装置では、当該携帯端末装置に所定の動作を行わせるためのアプリケーションプログラムが新たに起動されるときに、前記撮像手段が新たに画像を撮影し、前記画像認識手段は前記撮像手段が撮影した画像から被写体(例えば使用者の顔)の向きと前記本体の向きとの相対的な位置関係を検出し、前記表示制御手段は前記画像認識手段から位置関係の情報を取得して前記アプリケーションプログラムによって生成される表示情報の表示の向きを決定する。」、また、段落【0044】の「アプリケーションプログラムは、例えば、様々なゲームを実行するためのプログラム、テレビ放送受信機能を実現するためのプログラム、等であって」の記載によれば、引用例1の「表示部102」は、「テレビ放送受信機能を実現するためのプログラム等のアプリケーションプログラムが生成する情報の表示を行い」といえる。さらに、図1,2等によれば、「表示部102」は、「長方形の画面を有する」といえる。
また、段落【0053】の「カメラ部101自体は携帯無線電話端末装置の本体10に固定されているので、カメラ部101が撮影した画像から認識される顔の向きは、本体10と使用者の顔との相対的な位置関係(向き)を表す。」、段落【0054】の「主制御部100は、ステップS3の処理の結果に基づき、顔が認識できない第1の状態(即ち、ステップS4)と、正立状態で顔を検出した第2の状態(即ち、ステップS5)と、正立状態から右回りに90度回転した状態で顔を検出した第3の状態(即ち、ステップS6)と、正立状態から180度回転した状態で顔を検出した第4の状態(即ち、ステップS7)と、正立状態から左回りに90度回転した状態で顔を検出した第5の状態(即ち、ステップS8)とを区別し、いずれの状態であるかを判定する。」、及び、段落【0058】の「図2に示されるように縦向きで携帯無線電話端末装置が使用されているときには、図2の左側図のようにカメラ部101が撮影した画像中に正立状態で使用者の顔が検出される」、段落【0059】の「図3に示されるように横向きで携帯無線電話端末装置が使用されているときには、図3の上側図のようにカメラ部101が撮影した画像中に横向き(右回りまたは左回りで90度回転した状態)で使用者の顔が検出される」の記載によれば、引用例1は、「縦向きで携帯無線電話端末装置が使用されているときに画像中に正立状態で使用者の顔が検出される第2の状態を、本体10と使用者の顔との相対的な位置関係(正立状態、正立状態から右回りに90度回転した状態、正立状態から180度回転した状態、正立状態から左回りに90度回転した状態)を判定するための基準としている」ものであり、図2に示される本体10と表示部102の配置を考慮すれば、引用例1の「表示部102」は、「顔の向きを判断する際に縦辺(長辺)を表示方向の基準とする」ものといえる。
すなわち、引用例1は、「撮像手段(カメラ部101)で撮影した画像の表示、テレビ放送受信機能を実現するためのプログラム等のアプリケーションプログラムが生成する情報の表示を行い、長方形の画面を有し、顔の向きを判断する際に縦辺(長辺)を表示方向の基準とする表示部102」を有する。

(エ)画像認識手段
引用例1の上記(ア)ないし(ウ)で摘示した記載に加えて、段落【0051】の「ステップS3では、主制御部100が主に画像認識手段として処理を行う。即ち、主制御部100は、カメラ部101によって撮影された画像を処理し、顔の位置を識別する公知の顔認識技術を用いることにより、画像中に顔が存在するか否かを区別したり、顔の方向を識別する。」、また、段落【0052】の「例えば、主制御部100は、顔全体を認識した後で、目、鼻、口、等の個別の特徴領域を認識し、目、鼻、口、等の相対的な位置関係を調べることにより、顔が正立状態か、あるいは横向き状態か、あるいは逆さの状態かを区別することができる。」、さらに、段落【0065】の「なお、本実施形態においては、主制御部100が主に画像認識手段として、カメラ部101により撮影した顔に基づいて顔の情報を取得し、顔の向きと本体10の向きとの相対的な位置関係を把握するようにしていたが、顔に限られることはなく、例えば、目、鼻、口、等の情報を取得し、目、鼻、口、等の向きと本体10の向きとの相対的な位置関係を把握するようにしたとしても構わない。」の記載によれば、引用例1は、「撮像手段(カメラ部101)が撮影した画像に基づいて顔の目、鼻、口、等の相対的な位置関係を調べて、当該顔の向きと携帯端末装置の向きとの相対的な位置関係を把握する画像認識手段」を有する。

(オ)表示制御手段
引用例1の上記(ア)ないし(エ)で摘示した記載に加えて、段落【0054】には、「主制御部100は、ステップS3の処理の結果に基づき、顔が認識できない第1の状態(即ち、ステップS4)と、正立状態で顔を検出した第2の状態(即ち、ステップS5)と、正立状態から右回りに90度回転した状態で顔を検出した第3の状態(即ち、ステップS6)と、正立状態から180度回転した状態で顔を検出した第4の状態(即ち、ステップS7)と、正立状態から左回りに90度回転した状態で顔を検出した第5の状態(即ち、ステップS8)とを区別し、いずれの状態であるかを判定する。」こと、また、段落【0057】には、「一方、上述した第2の状態、第3の状態、第4の状態、および第5の状態では、それぞれステップS5、ステップS6、ステップS7、ステップS8にて表示部102に表示される文字や画像の向きが使用者から見て正立状態になるように表示の向きが決定される。」こと、がそれぞれ記載されている。
それらの記載によれば、引用例1は、「顔の向きと携帯端末装置の向きとの相対的な位置関係を把握し、把握した位置関係に基づいて表示部の表示画面に表示する文字や画像の向きを決定するものであり、例えば、カメラ部101が撮影した画像から認識される顔の向き(方向)を認識し、正立状態で顔を検出した第2の状態(即ち、ステップS5)と、正立状態から右回りに90度回転した状態で顔を検出した第3の状態(即ち、ステップS6)と、正立状態から180度回転した状態で顔を検出した第4の状態(即ち、ステップS7)と、正立状態から左回りに90度回転した状態で顔を検出した第5の状態(即ち、ステップS8)とを区別し、いずれの状態であるかを判定し、表示部102に表示される文字や画像の向きが使用者から見て正立状態になるように表示の向きを決定し、決定された向きで、アプリケーションプログラムの実行によって表示される様々な情報であるテレビジョン映像の表示を行う表示制御手段」を有する。

(カ)以上によれば、引用例1には、下記の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

記(引用発明)
顔認識により表示部の表示画面に表示する情報の向きを決定する携帯端末装置において、
顔を撮影する撮像手段(カメラ部101)と、
撮像手段(カメラ部101)で撮影した画像の表示、テレビ放送受信機能を実現するためのプログラム等のアプリケーションプログラムが生成する情報の表示を行い、長方形の画面を有し、顔の向きを判断する際に縦辺(長辺)を表示方向の基準とする表示部102と、
撮像手段(カメラ部101)が撮影した画像に基づいて顔の目、鼻、口、等の相対的な位置関係を調べて、当該顔の向きと携帯端末装置の向きとの相対的な位置関係を把握する画像認識手段と、
顔の向きと携帯端末装置の向きとの相対的な位置関係を把握し、把握した位置関係に基づいて表示部の表示画面に表示する文字や画像の向きを決定するものであり、例えば、カメラ部101が撮影した画像から認識される顔の向き(方向)を認識し、正立状態で顔を検出した第2の状態(即ち、ステップS5)と、正立状態から右回りに90度回転した状態で顔を検出した第3の状態(即ち、ステップS6)と、正立状態から180度回転した状態で顔を検出した第4の状態(即ち、ステップS7)と、正立状態から左回りに90度回転した状態で顔を検出した第5の状態(即ち、ステップS8)とを区別し、いずれの状態であるかを判定し、表示部102に表示される文字や画像の向きが使用者から見て正立状態になるように表示の向きを決定し、決定された向きで、アプリケーションプログラムの実行によって表示される様々な情報であるテレビジョン映像の表示を行う表示制御手段とを備えることを特徴とする、携帯端末装置。

エ.対比
補正後発明と引用発明とを対比すると次のことが認められる。

(a)「顔認証による画面切替装置」について
引用発明の「顔認識により表示部の表示画面に表示する情報の向きを決定する携帯端末装置」は、顔認識により表示部102の表示画面に表示する情報の向きを決定し、決定された向きでテレビジョン映像の表示を行うものであり、引用発明の「顔認識により表示画面に表示する情報の向きを決定する携帯端末装置」と、本件補正発明の「顔認証による画面切替装置」は相違しない。

(b)「顔を撮影するカメラ」について
引用発明の「顔を撮影する撮像手段(カメラ部101)」は、本件補正発明の「顔を撮影するカメラ」に相当する。

(c)「前記カメラで撮影した画像表示、受信したテレビジョン映像及びテレビジョン電話映像を含む表示を行い、長方形の画面を有し、横辺又は縦辺の一方を表示方向の基準と定める軸とする表示部」について
引用発明の「携帯端末装置」は、「撮像手段(カメラ部101)で撮影した画像の表示、テレビ放送受信機能を実現するためのプログラム等のアプリケーションプログラムが生成する情報の表示を行い、長方形の画面を有し、顔の向きを判断する際に縦辺(長辺)を表示方向の基準とする表示部102」を有し、撮像手段(カメラ部101)が撮影した画像に基づいて顔の情報を取得し、当該顔の向きと携帯端末装置の向きとの相対的な位置関係を把握するものである。
また、引用発明は、表示部の縦辺(長辺)を表示方向の基準として顔の向きを判断するものであり、表示部の縦辺を表示方向の基準と定める軸とするものといえる。
そうすると、引用発明は、「前記カメラで撮影した画像表示、受信したテレビジョン映像を含む表示を行い、長方形の画面を有し、縦辺を表示方向の基準と定める軸とする表示部」を有するといえ、その点では本件補正発明と相違しない。
もっとも、「テレビジョン電話映像」を含む表示を行う点、及び「横辺又は縦辺の一方」を表示方向の基準と定める軸とする点は相違する。

(d)「前記カメラで撮影され前記表示部に表示される顔の眼球位置関係を特定する認証を行う顔認証部」について
引用発明の「撮像手段(カメラ部101)が撮影した画像に基づいて顔の目、鼻、口、等の相対的な位置関係を調べて、当該顔の向きと携帯端末装置の向きとの相対的な位置関係を把握する画像認識手段」は、本件補正発明の「前記カメラで撮影され前記表示部に表示される顔の位置関係を特定する認証を行う顔認証部」と変わりがない。
もっとも、顔の「眼球」位置関係を特定する認証を行う点は相違する。

(e)「前記顔認証部により認証された顔の眼球位置関係の特定から前記表示部に表示される顔に対して、顔が表示される前記表示部の軸が下から上に向く場合には縦画面にカメラで撮影された顔の正面が表示されたと定め、顔が表示される前記表示部の軸が左から右に向く場合には横画面にカメラで撮影された顔の正面が表示されたと定め、顔が表示される前記表示部の軸が上から下に向く場合には逆縦画面にカメラで撮影された顔の正面が表示されたと定め、前記表示部の軸が右から左に向く場合には逆横画面にカメラで撮影された顔の正面が表示されたと定め、前記表示部の軸が向く方向に応じて画面の向きを切り替え、切り替えた画面にテレビジョン映像及びテレビジョン電話映像を含む表示を行う表示制御部」について
引用発明の「表示制御手段」は、「顔の向きと携帯端末装置の向きとの相対的な位置関係を把握し、把握した位置関係に基づいて表示部の表示画面に表示する文字や画像の向きを決定するものであり、例えば、カメラ部101が撮影した画像から認識される顔の向き(方向)を認識し、正立状態で顔を検出した第2の状態(即ち、ステップS5)と、正立状態から右回りに90度回転した状態で顔を検出した第3の状態(即ち、ステップS6)と、正立状態から180度回転した状態で顔を検出した第4の状態(即ち、ステップS7)と、正立状態から左回りに90度回転した状態で顔を検出した第5の状態(即ち、ステップS8)とを区別し、いずれの状態であるかを判定し、表示部102に表示される文字や画像の向きが使用者から見て正立状態になるように表示の向きを決定し、決定された向きで、アプリケーションプログラムの実行によって表示される様々な情報であるテレビジョン映像の表示を行う」ものである。
そして、顔の向きを判断する際には、表示部の縦辺(長辺)を表示方向の基準とするものであり、すなわち、「表示部の軸が向く方向」に応じて画面の向きを切り替えるものといえる。
そうすると、引用発明も、「前記顔認証部により認証された顔の位置関係の特定から前記表示部に表示される顔に対して、表示部の軸が向く方向に応じて画面の向きを切り替え、切り替えた画面にテレビジョン映像を含む表示を行う」ものといえる。
そして、表示部に表示される顔に対して、表示部の軸が向く方向に応じて画面の向きを切り替えるとは、顔の向きと顔が表示される表示部の軸の方向(例えば、「下から上」、「左から右」、「上から下」、「右から左」)に応じて定められた向きに画面を切り替えるものと理解できる。
すなわち、引用発明は、「前記顔認証部により認証された顔の位置関係の特定から前記表示部に表示される顔に対して、顔が表示される前記表示部の軸が下から上に向く場合には縦画面にカメラで撮影された顔の正面が表示されたと定め、顔が表示される前記表示部の軸が左から右に向く場合には横画面にカメラで撮影された顔の正面が表示されたと定め、顔が表示される前記表示部の軸が上から下に向く場合には逆縦画面にカメラで撮影された顔の正面が表示されたと定め、前記表示部の軸が右から左に向く場合には逆横画面にカメラで撮影された顔の正面が表示されたと定め、前記表示部の軸が向く方向に応じて画面の向きを切り替え、切り替えた画面にテレビジョン映像を含む表示を行う表示制御部」を有するといえ、その点では、本件補正発明と変わりがない。
もっとも、顔の「眼球」位置関係の特定から前記表示部に表示される顔に対して、表示制御する点、及び切り替えた画面に「テレビジョン電話映像」を含む表示を行う点は相違する。

オ.一致点・相違点
以上の対比(a)ないし(e)を踏まえると、補正後発明と引用発明との[一致点]・[相違点]は以下のとおりである。

[一致点]
顔認証による画面切替装置において、
顔を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影した画像表示、受信したテレビジョン映像を含む表示を行い、長方形の画面を有し、縦辺を表示方向の基準と定める軸とする表示部と、
前記カメラで撮影され前記表示部に表示される顔の位置関係を特定する認証を行う顔認証部と、
前記顔認証部により認証された顔の位置関係の特定から前記表示部に表示される顔に対して、顔が表示される前記表示部の軸が下から上に向く場合には縦画面にカメラで撮影された顔の正面が表示されたと定め、顔が表示される前記表示部の軸が左から右に向く場合には横画面にカメラで撮影された顔の正面が表示されたと定め、顔が表示される前記表示部の軸が上から下に向く場合には逆縦画面にカメラで撮影された顔の正面が表示されたと定め、前記表示部の軸が右から左に向く場合には逆横画面にカメラで撮影された顔の正面が表示されたと定め、前記表示部の軸が向く方向に応じて画面の向きを切り替え、切り替えた画面にテレビジョン映像を含む表示を行う表示制御部とを備えることを特徴とする、顔認証による画面切替装置。

[相違点]
[相違点1]
表示部及び表示制御部が、
本件補正発明では、受信したテレビジョン映像「及びテレビジョン電話映像」を含む表示を行うものであるのに対して、
引用発明では、テレビジョン電話映像を表示することは特定されていない点。

[相違点2]
本件補正発明では、「横辺又は縦辺の一方」を表示方向の基準と定める軸とするのであるのに対して、
引用発明では、「縦辺(長辺)」を表示方向の基準と定める軸とするものである点。

[相違点3]
顔認証部が、
本件補正発明では、顔の「眼球」位置関係を特定する認証を行うものであるのに対して、
引用発明では、そのようにしていない点。

[相違点4]
表示制御部が、
本件補正発明では、顔の「眼球」位置関係の特定から前記表示部に表示される顔に対して、表示制御をするものであるのに対して、
引用発明では、そのようにしていない点。

カ.相違点の判断
上記[相違点1]について
携帯端末装置において、テレビジョン電話映像を表示することはごく普通のことである(例えば、査定で引用した刊行物2:特開2005-100084号公報の段落【0034】?【0037】の記載参照)。
したがって、引用発明において、表示部及び表示制御部が、本件補正発明のように、テレビジョン映像のみならず「テレビジョン電話映像」を含む表示を行うようにすることは当業者が適宜になし得る。

上記[相違点2]について
表示方向の基準を定める軸とは、表示画面に表示される顔の向きと携帯端末装置の向きとの相対的な位置関係を把握する際の基準となる軸である。
そして、この軸は相対的な位置関係の基準となるものであるので、軸の方向が表示部の縦辺の方向であるか横辺の方向であるかということは相対的な位置関係を判定する際には問題とはならず、どちらの方向を基準として選択できるものであるから、引用発明の「縦辺(長辺)」を表示方向の基準と定める軸とするものを、本件補正発明のような「横辺又は縦辺の一方」を表示方向の基準と定める軸とするものとすることは当業者が適宜になし得る。

上記[相違点3,4]について
携帯端末装置において、顔の眼球位置関係を特定する顔認証を行うことは周知である(例えば、査定で引用した刊行物5:特開2005-266061号公報の段落【0028】?【0030】等、同じく引用した刊行物6:特表2007-534043号公報の段落【0032】,【0033】等の記載参照)。
したがって、引用発明において、顔認証部が、本件補正発明のように、顔の「眼球」位置関係を特定する認証を行うことは当業者が適宜になし得ることといえ、それに伴い、表示制御部が、本件補正発明のように、顔の「眼球」位置関係の特定から前記表示部に表示される顔に対して、表示制御を行うことも当業者が適宜になし得ることといえる。

以上のように、本件補正発明の相違点にかかる構成は当業者が容易に想到できるものである。そして、本件補正発明の効果は、その構成から当業者が容易に予測し得るものであり、格別顕著なものがあるとは認められない。

キ.まとめ(独立特許要件)
以上、本件補正発明は、引用例1に記載の発明及び刊行物2,5,6に示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび(補正却下)
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正の却下の決定の結論のとおり、決定する。

第3 本願発明について
平成25年2月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし請求項6に係る発明は、明細書及び図面(平成24年5月11日付けの手続補正書により補正された明細書)の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項6に記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、下記のとおりのである。

記(再掲、本願発明)
顔認証による画面切替装置において、
顔を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影した画像表示、受信したテレビジョン映像及びテレビジョン電話映像を含む表示を行い、長方形をなし、横辺又は縦辺の一方を表示方向の基準と定める軸とする表示部と、
前記カメラで撮影され前記表示部に表示される顔の眼球位置関係を特定する認証を行う顔認証部と、
前記顔認証部により認証された顔の眼球位置関係の特定から顔が表示される前記表示部の軸が向く方向に基づき定めた画面に切り替え、切り替えた画面にテレビジョン映像及びテレビジョン電話映像を含む表示を行う表示制御部とを備えることを特徴とする、顔認証による画面切替装置。

第4 検討
1.引用例の記載
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1である特開2007-17596号公報には、上記「第2 2.(3)イ.引用例の記載」で述べたとおりの記載、及び上記「第2 2.(3)ウ.引用発明」で述べたとおりの引用発明が記載されている。

2.対比
本件補正発明は、請求項1に係る発明に、上記「第2 1.」の補正事項の補正をしたものである。
したがって、本願発明は、本件補正発明から上記補正事項の補正を戻す関係にあり、その内容は、「表示部」及び「表示制御部」に関する限定事項を削除する関係にある。
そして、本願発明と引用発明との対比は上記「第2 2.(3)エ.対比」と、上記削除される構成を除いて同様に対比される。

3.一致点・相違点
以上の対比から、本願発明と引用発明との[一致点]・[相違点]は、以下のとおりである。

[一致点]
顔認証による画面切替装置において、
顔を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影した画像表示、受信したテレビジョン映像を含む表示を行い、長方形をなし、縦辺を表示方向の基準と定める軸とする表示部と、
前記カメラで撮影され前記表示部に表示される顔の位置関係を特定する認証を行う顔認証部と、
前記顔認証部により認証された顔の位置関係の特定から顔が表示される前記表示部の軸が向く方向に基づき定めた画面に切り替え、切り替えた画面にテレビジョン映像を含む表示を行う表示制御部とを備えることを特徴とする、顔認証による画面切替装置。

[相違点]
[相違点1]
表示部及び表示制御部が、
本件補正発明では、受信したテレビジョン映像「及びテレビジョン電話映像」を含む表示を行うものであるのに対して、
引用発明では、テレビジョン電話映像を表示することは特定されていない点。

[相違点2]
本件補正発明では、「横辺又は縦辺の一方」を表示方向の基準と定める軸とするのであるのに対して、
引用発明では、「縦辺(長辺)」を表示方向の基準と定める軸とするものである点。

[相違点3]
顔認証部が、
本件補正発明では、顔の「眼球」位置関係を特定する認証を行うものであるのに対して、
引用発明では、そのようにしていない点。

[相違点4]
表示制御部が、
本件補正発明では、顔の「眼球」位置関係の特定から前記表示部に表示される顔に対して、表示制御をするものであるのに対して、
引用発明では、そのようにしていない点。

4.判断
[相違点]について
上記「第2 2.(3)カ.相違点の判断等」の各相違点についての判断と同様である。

第5 むすび
以上のように、本願の請求項1に係る発明は、引用例1記載された発明及び刊行物2,5,6に示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項2ないし請求項6に係る発明について特に検討をするまでもなく、本件出願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-25 
結審通知日 2013-09-30 
審決日 2013-10-11 
出願番号 特願2008-7469(P2008-7469)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 572- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅本 章子  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 渡辺 努
渡邊 聡
発明の名称 顔認証による画面切替装置、方法、プログラム及び携帯電話機  
代理人 浅野 雄一郎  

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