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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1282629
審判番号 不服2013-806  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-16 
確定日 2013-12-19 
事件の表示 特願2012- 97169「装置、方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月 9日出願公開、特開2013- 84237〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年1月26日を出願日とする特願2012-14666号(優先権主張平成23年9月28日)の一部を、平成24年4月20日に新たに特許出願したものであって、平成24年7月11日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成24年9月24日に補正書が提出されたが、平成24年10月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年1月16日に拒絶査定不服の審判請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?12に係る発明は平成24年9月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項3】
フォアグランドのアプリケーションの画面を表示するタッチスクリーンディスプレイと、
一のアプリケーションをフォアグランドにしており他のアプリケーションをバックグランドにしている第1の場合に前記タッチスクリーンディスプレイに対して第1ジェスチャが行われると、フォアグランドのアプリケーションに当該第1ジェスチャに応じた動作を行わせ、前記第1の場合に前記タッチスクリーンディスプレイに対して第2ジェスチャが行われると、フォアグランドのアプリケーションをバックグランドにすると共にバックグランドのアプリケーションをフォアグランドにするコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、一のアプリケーションをフォアグランドにしており複数のアプリケーションをバックグランドにしている第2の場合には、前記タッチスクリーンディスプレイに対して前記第2ジェスチャが行われる度に、バックグランドの複数のアプリケーションを、当該複数のアプリケーションが実行された順序と逆順にフォアグランドにする
装置。」

第3 引用例
平成24年7月11日付けの拒絶理由通知にて引用された、本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、全てのiPadユーザー必見!マルチタスク用ジェスチャの設定で超快適!!,nori510.com,2011年5月6日[2012年7月11日検索],[online],インターネット (以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

ア)「Macのトラックパッドの操作って、ホントにヤバい程快適ですよね。

iPadの画面上でソレが出来てしまう。それが、iPadのマルチタスク用ジェスチャ機能。 」(本文第1?2行。下線は当審で付与。以下同様。)

イ)「マルチタスク用ジェスチャで何ができるの!?
4本指または、5本指で、iPadを操作出来るようになります。追加される操作は以下です。

1.4本または、5本指でピンチ - ホーム画面に移動
2.4本または、5本指で上にスワイプ - マルチタスクバーを表示
3.4本または、5本指で左右にスワイプ - App を切り替える」(本文第8?12行。)

ウ)引用例の「1.4本または、5本指でピンチ-ホーム画面に移動」の項に記載された写真には、「5本の指をすぼめるピンチで、アプリを閉じてホーム画面へ」と記載され、iPad2 の画面上で操作を行っている様子が記載されている。

エ)「3.4本または、5本指で左右にスワイプ - Appを切り替える

コレがまた、超イイ。ほんとにイイ。今まで、アプリを切り替えるとき、ホームボタン二度押しで、マルチタスクバーを表示して、アプリを選択。という工程だったものが、4本指で左右にスワイプする事でヌルヌルとアプリを切り替えることが出来ます。」(「3.4本または、5本指で左右にスワイプ - Appを切り替える」の項、第1?4行。)

オ)引用例の「3.4本または、5本指で左右にスワイプ - Appを切り替える」の項に記載された写真には、iPad2 の画面上を4本指で左右にスワイプ操作してアプリを切り替える様子が記載されている。


上記引用例記載事項及び図面の記載、及び、iPad という用語は、iPad 及び iPad2 を総称して用いられるものであることがよく知られていること、及び、引用例では、全体を通して iPad2 についての操作の例が示されていることを総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「iPad2 のマルチタスク用ジェスチャ機能は、Mac のトラックパッドの操作を iPad2 の画面上で出来るものであり、
マルチタスク用ジェスチャでは、4本指または、5本指で、iPad2を操作出来るようになり、
追加される操作としては、4本または、5本指でピンチしてホーム画面に移動する操作と、4本または、5本指で左右にスワイプして App を切り替える操作があり、
ホーム画面に移動する操作は、iPad2 の画面上で5本の指をすぼめるピンチを行うものであり、
当該 App を切り替える操作は、今まで、アプリを切り替えるとき、ホームボタン二度押しで、マルチタスクバーを表示して、アプリを選択という工程だったものが、4本指で左右にスワイプする事でアプリを切り替えることが出来るものである
iPad2。」


本願の優先日前に頒布された刊行物である、タブレット&スレートPC大集合 iPad2 WiFiモデル 16GB ホワイト 洗練されたデザインと操作性が魅力のiPad2、週刊アスキー、株式会社アスキー・メディアワークス、2011年6月21日、第23巻、通巻838号、第23頁(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

カ)「iPad2 WiFiモデル
16GB ホワイト
●アップル ●http://www.apple.com/jp/
アップルストア価格 4万4800円

SPEC
CPU Apple A5(1GHz)
ディスプレー 9.7インチ(1024×768ドット)
メモリー 16GB(32GB、64GBモデルもあり)
インターフェース 無線LAN(802.11a/b/g/n)
本体サイズ/重量 約185.7(W)x88(D)x241.2(H)mm/約601g」(第23頁上欄第1?10行。)


キ)「ココが強い!
洗練を極めた
iOSの操作性と
外観デザイン

iPad2が直感的に使えるのはiOSの優れた操作性による。たとえば、ウェブページ上で強くフリックすると高速にスクロールして、ページの端で跳ね返る。」(第23頁中央欄、見出し?本文第6行。)


本願の優先日前に頒布された刊行物である、Apple、次世代への布石 Part 2:iOS 5 パソコンから解き放たれて大きく変貌を遂げたiOS 5、Mac People、株式会社アスキー・メディアワークス、2011年6月29日発行、Vol.17、No.12、第24?29頁(以下、「周知例2」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

ク)「かゆいところに手が届く
バージョンアップ

「メール」では、本文のテキストにボールドやイタリック、アンダーラインと言った装飾を加えられるほか、本文の引用レベルのコントロールも可能になる(図1)。「To」「Cc」「Bcc」欄に入力済みの宛先をドラッグ&ドロップで移動できる機能も加わる。
iPad版「カレンダー」には、12ヵ月ぶんのカレンダーを一覧できる年表示が追加される(図2)。ドラッグ&ドロップでスケジュールの日付や時間を変更可能だ。」(第29頁上欄第1?12行。)


本願の優先日前に頒布された刊行物である、Windows Mobile 6 アプリケーションブック、初版、株式会社毎日コミュニケーションズ、2009年2月20日、第232?234頁(以下、「周知例3」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

ケ)「Windows Mobile 初心者が最も戸惑いを覚えるのが、Windows XP・Vista とのタスク管理の違いだろう。Windows Mobile では、アプリの終了は利用頻度やメモリ占有量に応じて OSが自動的に行う。これは端末の処理速度が十分ではなかった時代に考えられた仕掛けで、1度起動したアプリを裏に回しておくことで、2度目に呼び出されたときにアプリ起動の待ち時間をゼロにできるメリットがある。Windows Mobile の[×]ボタンが「終了」ではなく、「最小化」なのはこのためだ。アプリが動作中かどうかをユーザーが意識しない作りなので、動作中のアプリを切り替える機能も表立って用意されておらず、アプリを呼び出すときには初回起動、動作中を問わず、スタートメニューを利用するというスタイルが貫かれている。」(第232頁第5?12行。)


本願の優先日前に頒布された刊行物である、BlackBerryアプリ開発入門、初版、株式会社インプレスジャパン、2010年12月1日発行、第49?58頁(以下、「周知例4」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

コ)「ここでは次の数章で繰り返し登場する基本概念を取り上げており、それにはユーザーインターフェイス(UI)のスレッドモデルや BlackBerry API の Javadoc が含まれています。また、アプリケーションのライフサイクル、フォアグランドアプリケーションとバックグラウンドアプリケーション、開発環境を使って作成できる BlackBerry プロジェクトの種類など、さまざまな種類のアプリケーションにおいて知っておくと役立つ情報も取り上げます。」(第49頁第8?12行。)

サ)「ユーザーが赤い電話キーを押すか、タスクを明示的に切り替えるときに、アプリケーションをバックグラウンドに送ることができます。」(第56頁第29?30行。)

本願の優先日前に頒布された刊行物である、iOS 4プログラミングブック、初版、株式会社インプレスジャパン、2011年2月1日発行、第39?48頁(以下、「周知例5」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

シ)「2-1-1-2 iOSのマルチタスキング
iOSのマルチタスキングは、一般的なマルチタスキングとは異なり、次の特徴を全面に出しています。

- 起動したアプリケーションの実行イメージをメモリ上に保持し、他のアプリケーションとの切換を素早く、状態を維持したまま行える
- 少し時間のかかるタスクを、他のアプリケーションに切り替えた後でも継続して実行できる
- オーディオ/GPS/VoIPを利用したアプリケーションをバックグラウンドで実行し続けられる」(第42頁第11?16行。)

ス)「2-2-1 アプリケーションのライフサイクル

iOSのアプリケーションは、常にある1つの状態を伴ってシステム内に存在しています。動作中、この状態が色々と変化(遷移)していくことで処理が行われます。
アプリケーションは、マルチタスキングが有効になっている場合は、非実行(Not Running)、アクティブ(Active)、非アクティブ(Inactive)、バックグラウンド(Background)、一時停止(Suspended)の5つの状態のうちどれか1つを持ちます。」(第45頁第4?9行。)

セ)「アプリケーションが Background の状態になっているのは、具体的には次のようなタイミングです。

- アプリケーションから抜けてホーム画面/他アプリケーションに移ったときの、非アクティブに遷移するまでの5秒の猶予期間
- 上と同じ状況の、ただし Task Completion (「2-3-3 Task Completion」(64ページ)を参照)の要求によって得られた600秒の猶予期間
- UIBackgroundModes によってバックグラウンド実行を宣言した時の、バックグラウンドでの実行中」(第46頁第16?21行。)


本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2000-305692号公報(以下、「周知例6」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

ソ)「【0014】本発明の目的は、マウス等に代表されるポインティングデバイスのボタン操作のみによって作業を中断させることなく、目的とするウィンドウの選択および制御を画面表示イメージで行うことにより、より簡易で感覚的な操作環境を提供することにある。」(第【0014】段落。)

タ)「【0020】まず、操作者は通常のOS操作を行っており、その段階で画面上には複数のウィンドウが重なり合って表示されているものとする(ステップ201)。この段階で例えば画面上には図3の301に示すウィンドウが表示されているものとする。図3の301は以降の説明を簡略化するために3つのウィンドウと1つの最小化されたアイコンが表示されている場合を示している。本発明ではこれ以上のウィンドウおよび最小化アイコンがより複雑な重なり合いをもって表示されている場合でも影響は受けない。
【0021】操作者が複数のウィンドウから現在アクティブではないウィンドウでの作業あるいは制御を要求し、目的とするウィンドウを選択する必要が生じた場合、ウィンドウの選択を行うために、マウスの操作によってウィンドウ選択モードへ移行する(ステップ202およびステップ203)。この作業はポインティングデバイスのみの操作であればよく、本説明ではマウスを例に説明する。この操作を示したのが図3の302である。
【0022】もしウィンドウ選択モードへの移行操作行われない場合は、通常のOS操作がそのまま続行される。
【0023】図3の302の状態、すなわちウィンドウ選択および制御用アイコン304上にポインタが重なった状態で、マウスの右ボタンが再度押下されると(ステップ204およびステップ205)、図3の303に示すように、現在アクティブなウィンドウの次に生成されたウィンドウが代わりにアクティブになる(ステップ211およびステップ212)。
【0024】ここで、現在アクティブなウィンドウが一番最後に生成されたものであった場合は、一番最初に生成されたウィンドウをアクティブにする(ステップ211およびステップ213)。
【0025】以降、図4の401,402,403に示すように右ボタンでの押下を繰り返していくと、現在アクティブなウィンドウの次に生成されたウィンドウが順次アクティブになる。
【0026】また、図4の402に示すように、ウィンドウが最小化されアイコン化されているものがあった場合は、元のサイズに戻して表示する。
【0027】上記ステップ(ステップ205、ステップ211、ステップ212、ステップ213)を繰り返していくと、図4の403に示すように、ウィンドウ選択モードに移行する前にアクティブであったウィンドウに戻ることができる。
【0028】本実施形態では、ウィンドウの切替え順序として“ウィンドウの生成順”としているが、“現在表示されているウィンドウの重なりの順”をウィンドウ切り替え順序として適用してもよい。またその場合、最小化しているウィンドウについては、ウィンドウの切替えの順序の任意な順序に入れても構わない。さらに、表示順は順方向逆方向のどちらにしても構わない。」(第【0020】?【0028】段落。)


本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平10-222337号公報(以下、「周知例7」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

チ)「【0011】本発明の目的は、GUI環境を持ち、音声によるデータ入力・操作指示を行うマン・マシン・インタフェースを備えたコンピュータシステムにおいて、音声によるウインドウ及びアプリケーションの確実・容易な選択・操作になり、操作効率も高めるコンピュータシステムを提供することにある。」(第【0011】段落。)

ツ)「【0039】ここで、本実施形態では、システムソフトウエア8による表示制御手段には、表示画面9Aに表示されるすべてのウインドウに仮想的なウインドウ優先順位を付けており、現在アクティブになっているウインドウを最も優先順位の高いものとしておく。
【0040】また、アクティブウインドウの裏に位置するウインドウを2番目の優先順位とし、その裏のウインドウを3番目のウインドウとするウインドウ位置に応じた優先順位を設定しておく。
【0041】そして、システムソフトウエア8は、ある特定のキーワード(例えば「ウインドウ」)を設定しておき、その特定のキーワードをキーワード制御コマンド5から受け付けたとき、現在アクティブになっているアプリケーション(ウインドウ)の裏に位置するウインドウ、つまりウインドウ優先順位が2番目のものをアクティブウインドウにするウインドウ切換機能を持つ。
【0042】このウインドウ切換機能によるウインドウ切換時には、それまでアクティブであったウインドウはウインドウ優先順位を最下位にする。
【0043】したがって、本実施形態によれば、目的とするアプリケーションが非アクティブな状態のとき、利用者は音声によってウインドウ切換のキーワードを発声することにより、音声認識部3による音声認識とキーワード制御コマンド変換部5による制御コマンドへの変換がなされ、これによりシステムソフトウエア8による画面9A上のウインドウ切換がなされ、この切換えはウインドウ切換のキーワードが発声される毎に優先順位の高いウインドウに切換えられ、希望するウインドウをアクティブな状態にすることができる。」(第【0039】?【0043】段落。)


第4 対比・判断
本願発明と引用発明とを比較する。

(1)例えば、周知例2の記載事項カに「iPad2 WiFiモデル」「CPU Apple A5(1GHz)」「メモリー 16GB(32GB、64GBモデルもあり)」などと記載されることを参酌すると、引用発明の「iPad2」は、入力を受け付け、動作を制御するための「コントローラ」を当然備えているものといえる。

(2)引用発明の「アプリ」もしくは「App」は、本願発明の「アプリケーション」に相当する。

(3)引用発明は、「Mac のトラックパッドの操作を iPad2 の画面上で出来るもの」であって、「4本または、5本指で左右にスワイプして App を切り替える操作」があるものであるから、当然「タッチスクリーンディスプレイ」を有しているものといえる。

(4)また、引用発明は、「ホーム画面に移動する操作は、iPad2 の画面上で5本の指をすぼめるピンチを行う」ものであるから、ホーム画面に移動する前には画面上にアプリの画面が表示されているものと言える。そうすると、ホーム画面に移動する前に画面が表示されていたアプリは「フォアグランドのアプリケーション」と言うことが出来るから、引用発明と本願発明は、「フォアグランドのアプリケーションの画面を表示するタッチスクリーンディスプレイ」を有する点で一致している。

(5)引用発明の「iPad2」では、アプリの画面でジェスチャ等の操作を行うことで、アプリに当該操作に応じた動作を行わせるものであることは周知の事項である(例えば、周知例1の記載事項キには、「ウェブページ上で強くフリックすると高速にスクロールして、ページの端で跳ね返る。」と記載され、周知例2の記載事項クには「「メール」では、……「To」「Cc」「Bcc」欄に入力済みの宛先をドラッグ&ドロップで移動できる機能も加わる。」「iPad版「カレンダー」には、……ドラッグ&ドロップでスケジュールの日付や時間を変更可能だ。」と記載されている。)。
したがって、引用発明においても、当然、アプリの画面でジェスチャ等の操作を行うことで、アプリに当該操作に応じた動作を行わせる機能を有すると言えるから、上記周知の「ジェスチャ等の操作」、および、画面に表示されている「アプリ」は、それぞれ、本願発明の「第1ジェスチャ」、および、「フォアグランドのアプリケーション」に相当すると言える。そうすると、引用発明と本願発明は、「タッチスクリーンディスプレイに対して第1ジェスチャが行われると、フォアグランドのアプリケーションに当該第1ジェスチャに応じた動作を行わせ」る点で一致しているといえる。

(6)引用発明の「アプリを切り替える」操作は、それまで画面に表示されていたアプリが表示されなくなり、それまで画面に表示されていなかったアプリが画面に表示される操作といえる。
そうすると、画面に表示されているアプリを「フォアグランド」のアプリケーションということができ、画面に表示されていない他のアプリを少なくとも「フォアグランドでない状態」のアプリケーションということができるから、引用発明は、「一のアプリケーションをフォアグランドにし、他のアプリケーションをフォアグランドでない状態にしている」状態を有している。
さらに、引用発明は、「4本または、5本指で左右にスワイプして App を切り替える」ものであるから、引用発明における、切り替え前に画面に表示されていたアプリを「フォアグランド」から「フォアグランドでない状態」にされたアプリケーションということができ、切り替え後に画面に表示されるアプリを「フォアグランドでない状態」から「フォアグランド」にされたアプリケーションということができる。
ここで、引用発明の「4本指で左右にスワイプ」する事を「第2ジェスチャ」ということとすると、引用発明の「4本指で左右にスワイプして App を切り替える」点は「第2ジェスチャが行われると」、「フォアグランドのアプリケーションをフォアグランドでない状態にする」と共に「フォアグランドでない状態のアプリケーションをフォアグランドにする」ものといえる。
したがって、引用発明と本願発明は「前記タッチスクリーンディスプレイに対して第2ジェスチャが行われると、フォアグランドのアプリケーションをフォアグランドでない状態にすると共にフォアグランドでない状態のアプリケーションをフォアグランドにする」点において一致しているといえる。

したがって、引用発明と本願発明は以下の点で一致している。
<一致点>
「フォアグランドのアプリケーションの画面を表示するタッチスクリーンディスプレイと、
前記タッチスクリーンディスプレイに対して第1ジェスチャが行われると、フォアグランドのアプリケーションに当該第1ジェスチャに応じた動作を行わせ、前記タッチスクリーンディスプレイに対して第2ジェスチャが行われると、フォアグランドのアプリケーションをフォアグランドでない状態にすると共にフォアグランドでない状態のアプリケーションをフォアグランドにするコントローラと、
を備えた装置。」

一方で、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本願発明は、「一のアプリケーション」に対して、「他のアプリケーション」または「複数のアプリケーション」を「バックグランドにしている」のに対し、引用発明では、「フォアグランドでない状態」が「バックグランドにしている」状態であるかどうかについて記載がない点。

<相違点2>
本願発明は、「一のアプリケーションをフォアグランドにしており他のアプリケーションをバックグランドにしている第1の場合」と、「一のアプリケーションをフォアグランドにしており複数のアプリケーションをバックグランドにしている第2の場合」とを有し、「第1の場合」に前記タッチスクリーンディスプレイに対して第2ジェスチャが行われると、フォアグランドのアプリケーションをバックグランドにすると共にバックグランドのアプリケーションをフォアグランドにし、「第2の場合」には、「前記タッチスクリーンディスプレイに対して前記第2ジェスチャが行われる度に」、バックグランドの複数のアプリケーションを、「当該複数のアプリケーションが実行された順序と逆順に」フォアグランドにするものであるのに対し、引用発明は上記「第1の場合」と「第2の場合」について記載がなく、単に「前記タッチスクリーンディスプレイに対して第2ジェスチャが行われると、フォアグランドのアプリケーションをフォアグランドでない状態にすると共にフォアグランドでない状態のアプリケーションをフォアグランドにする」ものである点で両者は相違している。

そこで、上記相違点について検討すると、
<相違点1>について:
情報処理装置において、使用中のアプリケーションが使用されなくなった場合に、バックグランドとすることは周知技術である(例えば、周知例3の記載事項ケには、Windows Mobile のタスク管理について記載されており、[×]ボタンを「終了」ではなく「最小化」として、1度起動したアプリを裏に回しておく点が記載されており、周知例4の記載事項コ、サには、BlackBerry のアプリ開発について記載されており、ユーザーが赤い電話キーを押すか、タスクを明示的に切り替えるときに、アプリケーションをバックグラウンドに送ることができる点が記載されており、周知例5の記載事項ス、セには、iOS 4のアプリケーションのライフサイクルについて記載されており、iOSのアプリケーションが、非実行(Not Running)、アクティブ(Active)、非アクティブ(Inactive)、バックグラウンド(Background)、一時停止(Suspended)の5つの状態のうちどれか1つの状態を伴う点、及び、アプリケーションが幾つかの状況において Background の状態となる点が記載されている。)。
したがって、引用発明もマルチタスク機能を有する装置であるから、引用発明において、上記周知技術を採用して、アプリを切り替えるときに、使用中のアプリをバックグランドとすることは、当業者が容易になし得たことである。

<相違点2>について:
情報処理装置において、複数のアプリケーションの画面を、使用された順序と逆順に切り替えて表示させること、及び、アプリケーションの画面を循環して切り替えることは周知技術である(例えば、周知例6の記載事項ソ、タには、特定の操作に応じてウィンドウを順にアクティブにしてゆく技術、その際に、“現在表示されているウィンドウの重なりの順”を順方向逆方向にウィンドウ切り替え順序として適用する技術、及び、繰り返していくと最初にアクティブであったウィンドウに戻る技術が記載されており、周知例7の記載事項チ、ツには、現在アクティブになっているウインドウを最も優先順位の高いものとし、その裏のウインドウに順にウインドウ位置に応じた優先順位を設定し、ウインドウの優先順位の順にウインドウをアクティブとしてゆく技術、及び、ウインドウ切換時に、それまでアクティブであったウインドウは優先順位を最下位にする技術が記載されている。通常、ウィンドウの重なりは、より過去に使用したウィンドウは重なりの下の方に位置し、より最近に使用したウィンドウは重なりの上の方に位置するものであることを考慮すると、上記周知例6、7には、複数のウィンドウが使用された順序と逆順に切り替える制御、および、ウィンドウを循環して切り替える制御を行っているものといえる。)。
そして、引用発明もアプリケーションの画面を切り替えて用いるものであるから、引用発明において、上記周知技術を採用して、アプリケーションを切り替える際に、アプリケーションを使用された順序と逆順に切り替えること、すなわち、アプリケーションが実行された順序と逆順にフォアグランドにすること、及び、アプリケーションを循環して切り替えるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
また、例えば周知例5の記載事項シには「iOSのマルチタスキングは、一般的なマルチタスキングとは異なり、次の特徴を全面に出しています。」「オーディオ/GPS/VoIPを利用したアプリケーションをバックグラウンドで実行し続けられる」と記載されており、このような、オーディオの利用や、GPSの利用、VoIPの利用は通常ユーザの必要に応じて任意に実行されるものであることを考慮すると、iOSにおいてはユーザの必要に応じて任意の個数のアプリケーションがユーザによって実行されるものと言える。したがって、引用発明の iPad2 においても同様に、任意の個数のアプリケーションが実行されるものといえるから、フォアグランドでない状態のアプリケーションが少なくとも1つあるような場合、すなわち、一のアプリケーションをフォアグランドにしており他のアプリケーションをフォアグランドでない状態にしている第1の場合、および、フォアグランドでない状態のアプリケーションが複数ある場合、すなわち、一のアプリケーションをフォアグランドにしており複数のアプリケーションをフォアグランドでない状態にしている第2の場合において使用することは、当然想定されていることといえる。
そうすると、引用発明に上記周知技術を採用して、上記第1の場合に、アプリを循環して切り替えた結果、「フォアグランドのアプリケーションをバックグランドにすると共にバックグランドのアプリケーションをフォアグランドにする」ように制御すること、及び、上記第2の場合に、第2ジェスチャが行われる度に、「バックグランドの複数のアプリケーションを、当該複数のアプリケーションが実行された順序と逆順にフォアグランドにする」ように制御することは、当業者が容易になし得たことである。

さらに、本願の請求項3に係る発明の作用効果も、引用発明1及び周知技術から当業者が予測し得たものである。

第5 むすび

以上のとおり、本願の請求項3に係る発明は、特許法第29条第2効の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-27 
結審通知日 2013-10-01 
審決日 2013-11-05 
出願番号 特願2012-97169(P2012-97169)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 星野 昌幸  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 稲葉 和生
衣川 裕史
発明の名称 装置、方法、及びプログラム  
代理人 酒井 宏明  

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