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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1282641
審判番号 不服2013-11825  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-21 
確定日 2013-12-19 
事件の表示 特願2009- 21651「ヒートシンク、冷却構造及び発熱源の冷却方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月12日出願公開、特開2010-177623〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年2月2日の出願であって、平成24年12月17日付けで拒絶の理由が通知され、これに対し、平成25年2月21日付けで意見書及び手続補正書が提出され、その後、平成25年3月18日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し、平成25年6月21日付けで拒絶査定不服審判の請求がされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年2月21日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。

「発熱源から伝わってきた熱を、ベース部から立ち上がる少なくとも一つのフィンに沿って通過する空気流に、該フィンを介して放出するヒートシンクであって、
前記ベース部及び前記フィンを備えた本体部から前記空気流の流動方向に延伸されたエアダクト部を備え、
前記本体部及び前記エアダクト部が略クランク状を呈しており、
前記フィンは、前記エアダクト部まで延伸されていることを特徴とするヒートシンク。」


3.引用刊行物
(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特表2003-502749号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「【請求項11】 マイクロプロセッサの放熱装置において、マイクロプロセッサのヒートシンクの長さがコンピュータケース付近まで適当に延長され、並びに漏斗状の風箱がそのなに立設され、直接コンピュータケース外の空気を引き込むか或いはケース内の高温を排出し高低温度差によりマイクロプロセッサ自身の使用により発生する高温を下げ、それは、
マイクロプロセッサの上方に置かれ、そのうち二つの対応側面が開放面を呈しその他の面が封閉面とされ、並びに接触座の垂直方向に沿って複数の鰭片が設けられ、二つの鰭片の間にあって適当な間隙が保留されて対流溝とされた、ヒートシンクと、
吸い込み或いは吐き出し式の放熱装置とされる、ファンと、
気流を伝送可能な管体とされ、そのうち一つの開放口が外風口とされ、並びにこの風口内にファン放置に供されるファン放置溝が設けられ、もう一端が内風口とされ、この風口とヒートシンクの一端が套設され、外風口の上方と下方より位置決めストッパ板が延伸され、並びにこの板の適当な位置に若干の位置決めネジ孔が設けらた、風箱と、
を具え、その接合は、ヒートシンクがマイクロプロセッサの上方に固定され、さらにファンが風箱の外風口よりファン放置溝内に圧入され、さらに風箱の風口がヒートシンクの一端に套設され、最後に風箱の外風口及び上下の位置決めストッパ板の位置決め孔がコンピュータケースのファン口と固定ネジ孔に整合された後に、固定ネジにより取り付けられることを特徴とする、マイクロプロセッサの放熱装置。」

・「【0007】
【発明が解決しようとする課題】
公知の技術に存在する上述の問題を解決するため、本発明の主要な目的は、より高い放熱効率の携帯式コンピュータのCPUの放熱装置を提供することにある。」

・「【0009】
本発明のもう一つの目的は、上述の放熱装置に用いられるヒートシンクの改良構造を提供することにあり、それは本発明の上述の主要な目的を解決するためのもう一つの解決方法とされ、それは、ヒートシンク中の放熱面積を増加して、その放熱効果を増加し、並びに抽送ファンの位置を改変して高温を迅速に排出できるようにする。その放熱方式は、コンピュータケース外の空気を引き込むか或いはマイクロプロセッサの温度を直接ケース外に引き出し、この高低の温度差により迅速にマイクロプロセッサの温度を下げ、マイクロプロセッサの降温効果を高め、並びに関係部品の使用寿命を確保する。
【0010】
本発明のさらに一つの目的は、上述の放熱装置の改良構造を提供することにあり、それは、ヒートシンクの総長が延伸され並びにコンピュータケースに連接されて気流伝送可能な風箱を套設し、直接ケース外の空気を引き込むか或いはマイクロプロセッサの高温をコンピュータケース外に吸い出し、マイクロプロセッサの高温を迅速に排出して下げるようにする。このような構造の放熱装置はコンピュータケース上に設置された抽送ファンの位置を改変できる。」

・「【0015】
さらに、上述の本発明に述べられた放熱装置中、上述のコンピュータ底ケースが平直板面とされる。本発明の上述の携帯式コンピュータのCPUの放熱装置に用いられうるヒートシンクの構造は、ヒートシンクの二つの対応側面が開放面とされ、任意の一側の開放面がファン設置部分とされ得て、その他の四面が封閉面とされ、そのうち発熱体と接触する接触座にその垂直方向に沿って複数組の鰭片が設けられ、二つの鰭片間が凹凸が対応状とされ、そのうち二つの鰭片の凹凸の間に適当な間隙が保留されて高温流動の対流溝に供される。」

・「【0021】
本発明の上述の携帯式コンピュータのCPUに使用可能な放熱装置は、マイクロプロセッサのヒートシンクの長さをコンピュータケース付近まで適当に延長し、並びに漏斗状の風箱を利用しファンをそのなかに立設し、直接コンピュータケース外の空気を引き込むか或いはケース内の高温を排出し高低温度差によりマイクロプロセッサ自身の使用により発生する高温を下げ、それは、以下を具え、即ち、
本発明の上述のヒートシンクはマイクロプロセッサの上方に置かれ、そのうち二つの対応側面が開放面を呈しその他の面が封閉面とされ、並びに接触座の垂直方向に沿って複数の鰭片が設けられ、二つの鰭片の間にあって適当な間隙が保留されて対流溝とされ、
ファンは吸い込み或いは吐き出し式の放熱装置とされ、
風箱は気流を伝送可能な管体とされ、そのうち一つの開放口が外風口とされ、並びにこの風口内にファン放置に供されるファン放置溝が設けられ、もう一端が内風口とされ、この風口とヒートシンクの一端が套設され、外風口の上方と下方より位置決めストッパ板が延伸され、並びにこの板の適当な位置に若干の位置決めネジ孔が設けられ、
その接合は、ヒートシンクがマイクロプロセッサの上方に固定され、さらにファンが風箱の外風口よりファン放置溝内に圧入され、さらに風箱の風口がヒートシンクの一端に套設され、最後に風箱の外風口及び上下の位置決めストッパ板の位置決め孔がコンピュータケースのファン口に、固定ネジにより取り付けられる。」

・「【0025】
実施例2
図5は本発明のヒートシンクの斜視図であり、そのヒートシンク2は接触座21を具え、並びに接触座21に複数のフィッシュボーン状の鰭片22が設けられ、二つの鰭片22間に対流空間である対流溝23が形成されている。
該ヒートシンク2の二つの対応側面は開放面とされ、その他の四面は封閉状とされ、並びに接触座21の垂直方向に沿って、複数のフィッシュボーン状の鰭片22が形成され、二つの鰭片22間が凹凸対応状とされ、凹凸間に適当な間隙が保留されて対流溝23とされる。
このような構造の放熱面積は大きく、これにより放熱効率が大幅に高まり、単に放熱面積について言うと、はるかに公知の放熱面積より大きく、更に迅速に高温を伝導できる。【0026】
実施例3
図6、7は、本発明のヒートシンクとファンの組合せの実施例3の斜視図及び本発明のヒートシンクの放熱効果表示図である。図から分かることは、本発明の特殊構造に合わせるために、特にファン3は複数の固定ネジ5でヒートシンク2の一つの開放側面に取り付けられ、これによりヒートシンク2下方の発熱体(マイクロプロセッサ11)が高温を発生開始する時、その高温が迅速にヒートシンク2の接触座21に伝導され、放熱面積が大きく増加されていることから、発熱体11の発生する高温の伝導が更に順調で、これにより発熱体11の発生する高温がヒートシンク2の接触座21よりフィッシュボーン状の鰭片22に伝導され、並びに即刻対流溝23間に放出され、さらにファン3により対流溝23内の高温が迅速且つ順調にヒートシンク2外に排出される。
そのうち、ヒートシンク2の二つの開放面にファン3を同時に設置可能であり、それは一方が入風、もう一方が排風状とされ、ヒートシンク2内の高温気流の流動が更に順調となり、最良の放熱効果を得られる。
これにより本発明は比較的大きな放熱面積により発熱体11の高温を迅速に伝導し、持続する不断の高温伝導を行う。」

・「【0029】
実施例6
図10は本発明のもう一種のマイクロプロセッサの放熱装置の分解斜視図である。その放熱装置はヒートシンク2、ファン3及び風箱4を具えている。
ヒートシンク2は放熱材質とされ、それはマイクロプロセッサ11の上方に置かれ、そのうち二つの対応側面が開放面とされている。その他の四面は封閉状とされ、並びに接触座21の垂直方向に沿って複数組の鰭片22が設けられ、二つの鰭片22の間に適当な間隙が保留されて対流溝23とされている。
ファン3は吸い込み或いは吐き出し式の放熱装置とされる。
風箱4は気流を伝送可能な管体とされ、そのうち一つの開放口が外風口41とされ、並びにこの風口内にファン3放置に供されるファン放置溝43が設けられ、もう一端が内風口42とされ、この風口とヒートシンク2の一端が套設され、外風口41の上方と下方より位置決めストッパ板44が延伸され、並びにこの板の適当な位置に若干の位置決めネジ孔45が設けられている。
その接合は、ヒートシンク2がマイクロプロセッサの上方に固定され、さらにファン3が風箱4の外風口41よりファン放置溝43内に圧入され、さらに風箱4の内風口42がヒートシンク2の一端に套設され、最後に風箱4の外風口41及び上下の位置決めストッパ板44の位置決めネジ孔45がコンピュータケース6のファン口62と固定ネジ孔61と整合された後に、固定ネジ5を利用して取り付けられる。
図11は本発明のマイクロプロセッサ放熱装置の斜視図とされ、図中より本発明の特殊構造が分かり、即ち、ヒートシンク2の長さが適度に延長されて、それが十分に風箱4と套設できるものとされ、ヒートシンク2が放熱機能だけでなく、放熱風管とされ、これによりマイクロプロセッサ11の発生する高温が本装置により迅速且つ直接的にコンピュータケース6外に排出される。
このほか、ヒートシンク2長さの適度な延長により、全体のヒートシンクの放熱面積が更に増加し、ヒートシンク2の放熱効果が更に良好となる。
図12、13は本発明のマイクロプロセッサ放熱装置の側面図と平面図であり、図に示されるヒートシンク2の全体放熱面積は大幅に高められるが、全体構造は却って増さず減っており、設計上の一大突破とされ、且つファン3の寸法設計もまたマイクロプロセッサ1の妨害の極限範囲を越え、ファン3の寸法とパワー設計の領域が更に広範とされる。」

・「【0033】
上述の本発明に記載の技術内容と手段は完全に公知の放熱装置の遭遇するネックを解決し、放熱面積を増加するだけでなく、マイクロプロセッサ周囲に存在する高温をケース外に排出するか或いはケース外の比較的低い室温を引き込んで有効に温度を下げる。
【0034】
これにより、本発明は鰭片の長さをコンピュータケースまで延長し、並びに気流伝送可能な風箱を利用してファンをそのなかに立設し、直接コンピュータケース外の空気を吸い取るか或いはケース内の高温を排出し高低温度差によりマイクロプロセッサ自身の発生する高温を下げ、放熱効果を更に良好としている。」

そして、図10?13の記載も合わせると、マイクロプロセッサ11から発生し、伝導された高温の熱を、対流溝23内のファン3によって吸い込まれた空気の気流に放出することが理解できるとともに、接触座21及び鰭片22を備えたマイクロプロセッサ11の上方に固定される部分からヒートシンク2長さの延長された、放熱風管とされた延長部分を備え、前記鰭片22は、前記放熱風管とされた延長部分まで延長されていることが理解できる。

よって、これらの記載事項及び図示内容を本願発明の表現にならって整理すると、刊行物1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「マイクロプロセッサ11から発生し、伝導された高温の熱を、接触座21の垂直方向に沿って複数の鰭片22が設けられ、二つの前記鰭片22間に形成された対流溝23内のファン3によって吸い込まれた空気の気流に放出するヒートシンク2であって、
前記接触座21及び前記鰭片22を備えた前記マイクロプロセッサ11の上方に固定される部分からヒートシンク2長さの延長された、放熱風管とされた延長部分を備え、
前記鰭片22は、前記放熱風管とされた延長部分まで延長されているヒートシンク2。」

(2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-13776号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、電子部品の冷却装置に関し、詳しくは、集積回路などの電子部品を筐体内に組み込んだ電子装置に利用され、発熱の大きな電子部品、あるいは、熱に弱い電子部品など、冷却を必要とする電子部品を効率的に冷却するための冷却装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、集積回路などの半導体素子その他の電子部品を組み込んだ電子装置は、金属や合成樹脂からなる筐体の内部に、上記のような電子部品を装着した配線基板を取り付けておいたり、電子部品を独立した状態で筐体内の構造部分に取り付けておいたりしている。
【0003】電子部品のなかには、通電によって発熱するものや、熱に弱く、過熱すると誤動作を起こしたり故障を起こしたりし易いものがある。そこで、このような電子装置には、電子部品を冷却するために、冷却ファンなどの冷却手段が取り付けられる。冷却ファンは、電子装置の筐体壁面などに取り付けられ、外部の空気を取り入れて、筐体内の空間に送風し、筐体内に装着された電子部品を冷却することになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来における電子部品の冷却方法では、筐体内に装着された複数の電子部品に、他の部品よりも発熱が多い部品や特別に熱に弱い部品など、発熱量や耐熱性に関する特性の異なる様々な電子部品が混在していると、これらの電子部品全てに対して適切な冷却を行うことが難しいという問題があった。また、筐体の内部構造や電子部品の配置によって、場所による冷却効果に予期せぬ違いが生じ、冷却の必要な個所の電子部品に十分な冷却が行えないという問題もあった。
【0005】これは、従来の冷却方法では、筐体の一端に取り付けられた冷却ファンからの送風は、筐体の内部空間全体に均等に拡がるようになっていたので、例えば、発熱の大きな電子部品あるいは熱に弱い電子部品でも、あまり発熱しない電子部品あるいは熱に強い電子部品でも、全く同じように冷却されることになり、発熱の大きな電子部品あるいは熱に弱い電子部品については、冷却が不十分になり易いのである。発熱の大きな電子部品や熱に弱い電子部品が十分に冷却されるように、冷却ファンの容量を大きくすると、冷却を必要としない電子部品まで強く冷却するので、エネルギーの無駄が多い。当然、消費電力が増大し、装置も大型化してしまう。また、筐体の内部構造によって、特定の場所に設置された電子部品には、冷却ファンからの送風が他の部品や構造部材で遮られてしまい、十分な冷却が行われないことがある。このような送風が届き難い場所は、冷却ファンの容量を増やしても、送風量はあまり増えず、冷却効果はほとんど向上しない。
【0006】そこで、この発明の課題は、筐体内に収容された様々な電子部品に対して、それぞれの電子部品に適切な強さで効率的に冷却を行うことができる電子部品の冷却装置を提供することにある。」

・「【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する、この発明にかかる電子部品の冷却装置は、筐体内に装着された電子部品を冷却する装置であって、筐体内に空気流を生じさせる空気流発生手段と、この空気流発生手段で得られた空気流を電子部品まで導く送風誘導路とを備えている。
【0008】この発明は、金属や合成樹脂などからなる筐体内に、集積回路素子などの電子部品を組み込んで構成される、任意の電子装置に適用されるものである。電子部品としては、いわゆるパワー素子と呼ばれるような、大電力が流れ、そのために発熱量が大きくなる半導体素子その他の発熱性の電子部品と、過熱によって誤作動を起こしたり作動性能の低下を起こしたりする熱に弱い電子部品、および、このような問題のない通常の電子部品を、同じ筐体内に収容しておく場合に有効であるが、具体的な電子部品の種類やその配置は自由に設定できる。」

・「【0011】送風誘導路は、金属あるいは合成樹脂その他の材料で壁面が構成されたダクトあるいは管路状に形成されており、送風誘導路の配置形状によって、その内部を通る空気の流れを制御できるものである。送風誘導路は、筐体や筐体内の内部構造とは全く別個の構造として設けておいてもよいし、筐体やその内部構造部材の壁面を、送風誘導路を構成する壁材の一部として利用することも可能である。送風誘導路を、着脱自在な壁面材を組み立てて構成すれば、必要に応じて、送風誘導路の構造を変更することができる。送風誘導路を、可撓性のあるチューブやパイプで構成しておけば、送風誘導路の配置を容易に設定したり、設定変更したりすることができる。
【0012】送風誘導路の一端は、送風手段などの空気流発生手段で作り出した空気流の少なくとも一部を取り込むことの出来る位置に配置される。勿論、空気流発生手段で作り出した空気流の全てを送風誘導路に取り込むこともできる。また、空気流の一部は、送風制御路を通さず、筐体の内部空間にそのまま放出して、内部空間全体の冷却あるいは換気を行わせるようにしてもよい。送風誘導路を複数設けることもできる。この場合、複数の送風誘導路のそれぞれの一端を、空気流発生手段の空気流を取り込める位置に並べて配置しておく。さらに、ひとつの送風誘導路に、複数の空気流発生手段からの空気流を取り込むようにすることも可能である。
【0013】送風誘導路は、冷却しようとする電子部品に適切な冷却効果が得られるだけの空気流が当たるように、その形状や構造が設定される。具体的には、例えば、送風誘導路のうち、空気流発生手段に隣接する側とは反対側の端部あるいは途中の開口部分が、冷却しようとする電子部品の近傍に配置されるようにしておけばよい。ひとつの送風誘導路で複数の電子部品を冷却する場合には、それぞれの電子部品毎に開口部分を設けておけばよい。送風誘導路の先端を複数方向に枝分かれさせておくこともできる。また、送風誘導路の内部に電子部品を装着しておくこともできる。
【0014】電子部品に空気流を当てるには、集積回路パッケージなどの電子部品本体の外面に直接空気流を当てるようにしておいてもよいし、電子部品本体に冷却フィンを取り付けておき、この冷却フィンに空気流を当てるようにしてもよい。すなわち、この発明における電子部品とは、集積回路パッケージなどの電子部品本体そのものの場合と、これらの電子部品本体と熱的に連結された冷却フィンなどの付属機構を含めた複合部品の場合の両方を意味している。」

・「【0017】これに対して、この発明の冷却装置では、空気流発生手段で得られた空気流を電子部品のところまで導く送風誘導路とを備えているため、筐体内で、それほど冷却を必要としない個所には空気流を送らず、強い冷却を必要とする電子部品のみに集中的に空気流を当てることができる。したがって、冷却ファンなどの送風手段の容量あるいは発生する空気流の総量は同じであっても、目的とする電子部品を必要とする強さで適切に冷却することができる。冷却の必要があまりない電子部品にまで、送風する必要がないので、送風の無駄がなく、送風エネルギーの無駄もなくなる。」

・「【0022】図3は、別の実施例を表している。この実施例では、筐体10の側壁に冷却ファン20を取り付けている。送風誘導路30は、ドーム状の基部31から、2本の細いダクト状の分岐路32が、電子部品40、40の位置まで延ばされている。筐体10のうち、冷却ファン20を取り付けた側壁と対向する側壁には多数のスリット状の貫通孔からなる排気口14が設けられている。分岐路32の先端から吹き出した空気流は、電子部品40、40の表面あるいは内部を通過して排気口14から筐体10外に排出される。筐体10には、多数の集積回路素子などを搭載した配線基板52が収容されているが、この配線基板52は、それほど強く冷却する必要がないので、送風誘導路30からの空気流が当たらないようになっている。
【0023】つぎに、図4?図11には、送風誘導路30の様々な構成を模式的に表している。
【0024】図4は、最も単純な構造の場合を示しており、筐体10の外壁に空気取入口12を設け、その内側に冷却ファン20を備えている。冷却ファン20を囲んでダクト状に延びる送風誘導路30は、先端開口34が、電子部品40の近くに配置されている。」

・「【0027】図7では、電子部品40自体は送風誘導路30の外に設置しておき、電子部品40の外面を送風誘導路30の外壁の一部として構成しているか(図中、左側)、電子部品40に設けた冷却フィン40bを送風誘導路30の内部に露出させている(図中、右側)。このようにすれば、電子部品40のへの配線接続などが、送風誘導路30とは関係なく自由に行えるとともに、送風誘導路30の空気流を効率的に電子部品40に当てることができる。」

・「【0032】
【発明の効果】以上に述べた、この発明にかかる電子部品の冷却装置によれば、送風手段で発生させた空気流を、送風誘導路で電子部品まで導くことにより、電子部品毎に送風量を変えることができる。したがって、筐体内に収容された様々な電子部品のうち、強い冷却が必要な電子部品には大量の空気流を当て、それほど冷却の必要がない電子部品には空気流を当てないでおくなど、電子部品毎に当てる空気流の量あるいは冷却の強さを自由に調整することが可能になり、筐体内の全ての電子部品に対して、適切な強さの冷却を行うことができ、送風手段で発生させた空気流を効率良く利用することができる。
【0033】その結果、各電子部品をて適切な冷却状態で作動させて、それぞれの電子部品の持つ性能特性を良好に発揮させることができる。また、従来の冷却装置に比べて、送風手段の容量もしくは全体の送風量を少なくできるので、装置の小型化あいは消費エネルギーや騒音の削減にも効果がある。」

また、図3、4および7には、送風誘導路30を略クランク状とすることが示されている。


4.対比
そこで、本願発明(以下「前者」ということがある。)と引用発明(以下「後者」ということがある。)とをその機能・作用からみて対比する。
・後者の「マイクロプロセッサ11」は、前者の「発熱源」に相当し、また、後者の「高温の熱」は、前者の「熱」に相当し、後者の「マイクロプロセッサ11から発生し、伝導された高温の熱」は、「発熱源から伝わってきた熱」に相当する。
また、後者の「接触座21」は、前者の「ベース部」に相当し、後者の「鰭片22」は、前者の「フィン」に相当し、後者の「ファン3によって吸い込まれた空気の気流」は、前者の「空気流」に相当し、さらに、後者の「ヒートシンク2」は、前者の「ヒートシンク」に相当する。
そして、後者の「マイクロプロセッサ11から発生し、伝導された高温の熱を、接触座21の垂直方向に沿って複数の鰭片22が設けられ、二つの前記鰭片22間に形成された対流溝23内のファン3によって吸い込まれた空気の気流に放出する」態様は、これにより、マイクロプロセッサ11から発生し、伝導された高温の熱(前者における「発熱源から伝わってきた熱」に相当。以下、括弧内は同様。)を、接触座21(ベース部)から立ち上がる少なくとも一つの鰭片22(フィン)に沿って通過するファン3によって吸い込まれた空気の気流(空気流)に、該鰭片22(フィン)を介して放出することは明らかであるから、前者の「発熱源から伝わってきた熱を、ベース部から立ち上がる少なくとも一つのフィンに沿って通過する空気流に、該フィンを介して放出する」態様に相当する。

・後者の「マイクロプロセッサ11の上方に固定される部分」は、前者の「本体部」に相当し、後者の「ヒートシンク2長さの延長された」態様は、前者の「空気流の流動方向に延伸された」態様に相当し、さらに、後者の「放熱風管とされた延長部分」は、前者の「エアダクト部」に相当する。

・後者の「鰭片22は、放熱風管とされた延長部分まで延長されている」態様は、前者の「フィンは、エアダクト部まで延伸されている」態様に相当する。

したがって、両者は、
「発熱源から伝わってきた熱を、ベース部から立ち上がる少なくとも一つのフィンに沿って通過する空気流に、該フィンを介して放出するヒートシンクであって、
前記ベース部及び前記フィンを備えた本体部から前記空気流の流動方向に延伸されたエアダクト部を備え、
前記フィンは、前記エアダクト部まで延伸されているヒートシンク。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願発明では、「本体部及びエアダクト部が略クランク状を呈して」いるのに対して、引用発明では、そのような構成を有していない点。


5.判断
上記相違点について検討する。
刊行物2(特に、段落【0005】、【0013】?【0014】、【0022】?【0024】及び【0027】、並びに、図3、4及び7)には、筐体の内部構造によって、特定の場所に設置された電子部品には、冷却ファンからの送風が他の部品や構造部材で遮られてしまい、十分な冷却が行われないことを課題とし、送風誘導路を、冷却しようとする電子部品に適切な冷却効果が得られるだけの空気流が当たるように、その形状や構造を設定することが記載されるとともに、その具体例として、それほど強く冷却する必要がない配線基板52には送風誘導路30からの空気流が当たらないように、送風誘導路30を略クランク状にして強い冷却を必要とする電子部品40の位置まで延ばすことが記載されており、これらの記載によると、刊行物2には、強い冷却を必要とする電子部品の風上に、冷却ファンからの送風を遮る物、すなわち障害物が存在しても、その障害物を迂回して強い冷却を必要とする電子部品に空気流を導くために、エアダクトを略クランク状にすること(以下「刊行物2に記載の事項」という。)が記載されていると認めることができる。
一方、引用発明は、マイクロプロセッサ11を冷却するためのヒートシンク2に関するものであるところ、マイクロプロセッサ11のような半導体集積回路の周囲には、他の電子部品が数多く設置され、これら他の電子部品によってヒートシンク2に沿って通流される空気流が阻害されることは、技術常識として理解できる(必要であれば、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-233590号公報(特に、段落【0002】)を参照。)から、引用発明において、エアダクト部(「放熱風管とされた延長部分」が相当。)に上記刊行物2に記載の事項を適用し、本体部(「マイクロプロセッサ11の上方に固定される部分」が相当。)とエアダクト部が略クランク状を呈するようにすること、すなわち上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものである。

そして、本願発明の全体構成により奏される作用効果は、引用発明及び刊行物2に記載の事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について判断するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-17 
結審通知日 2013-10-22 
審決日 2013-11-05 
出願番号 特願2009-21651(P2009-21651)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川内野 真介  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 槙原 進
平城 俊雅
発明の名称 ヒートシンク、冷却構造及び発熱源の冷却方法  
代理人 机 昌彦  
代理人 下坂 直樹  

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