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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01M 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01M |
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管理番号 | 1282830 |
審判番号 | 不服2012-24877 |
総通号数 | 170 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-12-14 |
確定日 | 2013-12-12 |
事件の表示 | 特願2006-324797「双極型電池」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月19日出願公開、特開2008-140638〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年11月30日を出願日とする出願であって、平成24年 6月25日付けで拒絶理由が通知され、同年 8月31日付けで意見書の提出とともに特許請求の範囲についての手続補正がされたが、同年 9月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月14日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、特許請求の範囲についての手続補正がされたものである。 その後、当審において、平成25年 2月 4日付けで前置報告書を引用した審尋を行い、期間を指定して回答書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もなかった。 第2 平成24年12月14日付けの手続補正についての補正の却下の決定 【補正の却下の決定の結論】 平成24年12月14日付けの手続補正を却下する。 【理由】 I.補正の内容 平成24年12月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の記載を、以下の(A)から(B)とする補正である(下線部は補正部分である。)。 (A)「【請求項1】 集電体の一方の面に電気的に結合した正極と、前記集電体の反対側の面に電気的に結合した負極と、それらの間に配置された電解質層とを備え、それらが交互に積層された双極型二次電池において、 前記集電体として、ステンレス鋼、純アルミニウム、およびチタンからなる群より選択される少なくとも1種の集電体材料で構成された集電体を用い、 前記正極の正極活物質の酸化還元電位が前記集電体の溶出電位よりも低く、かつ前記負極の負極活物質の酸化還元電位が前記集電体のリチウム合金化電位よりも高く構成されていることを特徴とする双極型二次電池。 【請求項2】 前記集電体としてステンレス鋼を用い、前記正極活物質としてLiFePO_(4)を用い、前記負極活物質としてカーボンを用いることを特徴とする、請求項1に記載の双極型二次電池。 【請求項3】 前記集電体として純アルミニウムを用い、前記正極活物質としてLiMn_(2)O_(4)、LiNiO_(2)、およびLiFePO_(4)からなる群より選択される少なくとも1種を用い、前記負極活物質としてチタン酸リチウムを用いることを特徴とする、請求項1に記載の双極型二次電池。 【請求項4】 前記集電体としてチタンを用い、前記正極活物質としてLiMn_(2)O_(4)およびLiFePO_(4)の少なくとも一方を用い、前記負極活物質としてカーボンを用いることを特徴とする、請求項1に記載の双極型二次電池。」 (B)「【請求項1】 集電体の一方の面に電気的に結合した正極と、前記集電体の反対側の面に電気的に結合した負極と、それらの間に配置された電解質層とを備え、それらが交互に積層された双極型二次電池において、 前記正極の正極活物質の酸化還元電位が前記集電体の溶出電位よりも低く、かつ前記負極の負極活物質の酸化還元電位が前記集電体のリチウム合金化電位よりも高く構成されていることを特徴とする双極型二次電池であって、 前記集電体として純アルミニウムで構成された集電体を用い、前記正極活物質としてLiNiO_(2)およびLiFePO_(4)の少なくとも一方を用い、前記負極活物質としてチタン酸リチウムを用いることを特徴とする、双極型二次電池。 」 II.当審の判断 上記の補正は、本件補正前の請求項1?2、4を削除するという補正事項aと、 本件補正前の請求項1の記載を引用する請求項3に記載された発明における、「前記集電体として純アルミニウムを用い、前記正極活物質としてLiMn_(2)O_(4)、LiNiO_(2)、およびLiFePO_(4)からなる群より選択される少なくとも1種を用い、前記負極活物質としてチタン酸リチウムを用いる」を、「前記集電体として純アルミニウムで構成された集電体を用い、前記正極活物質としてLiNiO_(2)およびLiFePO_(4)の少なくとも一方を用い、前記負極活物質としてチタン酸リチウムを用いる」とする補正事項bとからなる。 補正事項aは、請求項を削除するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に、「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第1号に規定されたことを目的とする補正事項である。 また、補正事項bは、本件補正前の請求項3に記載の「正極活物質としてLiMn_(2)O_(4)、LiNiO_(2)、およびLiFePO_(4)からなる群より選択される少なくとも1種を用い」るとの特定事項から、「LiMn_(2)O_(4)」を削除して、正極活物質として用いる物質を、「LiNiO_(2)およびLiFePO_(4)の少なくとも一方」に限定するものであって、この限定の付加によっても、産業の利用分野及び解決しようとする課題は本件補正前と同一のままであるから、改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定されたことを目的とする補正事項である。そして、このことを目的とする場合、補正事項bを含む、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない(改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定)。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。 III.独立特許要件 1 本件補正発明 本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)は、上記Bに記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 刊行物及びその記載事項 原査定、及び、前置報告書を引用した審尋にて示した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-127559号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている(「…」は記載の省略を表す。)。 (ア)「【請求項1】 集電体の一面に正極活物質層を他面に負極活物質層を有するバイポーラー電極に高分子固体電解質層を設けた単位積層電極を積層してなるバイポーラー電池において、 所定の幅と長さを有する前記単位積層電極を少なくとも2層以上積層してなる積層部材が曲率を持つ断面形状としたことを特徴とするバイポーラー電池。」 (イ)「【0047】 図1は本発明の実施形態の一部破断概略斜視図、図2は単位積層電極等の平面図、図3は図2の3-3線に沿う断面図である。 【0048】 図1において、本実施形態のバイポーラー電池について概説すれば、基本的には、単位積層電極1を2層以上積層した積層部材Sを円筒状の芯材2の周りに巻きつけ、断面形状が曲率を持つようにしている。 【0049】 なお、本明細書においては、単位積層電極1とは、図2,3に示すように、集電体3の一面に正極活物質層4を他面に負極活物質層5を保持したバイポーラー電極Pに高分子固体電解質層6を積層したものをいい、積層部材Sは、この単位積層電極を少なくとも2層以上積層したものをいう。 【0050】 このように積層部材Sを、曲面を有する芯材2の周りに巻回すると、芯材2の周囲に形成された積層部材Sの各層は、軸直角断面形状が曲率を持つ形状となる。この結果、積層部材Sは、圧力を加えなくても、各単位積層電極1相互間での密着性を保持でき、イオン伝導性の低下や内部抵抗の増大が防止される。 【0051】 図4は図1の4-4線に沿う断面相当図であるが、本図では複数枚の単位積層電極1が積層された積層部材Sを1本の線として示しており、図5は図4の5-5線に沿う概略断面図で、主として1つの積層部材Sのみを詳示している。」 (ウ)「【0098】 <実施例1> 集電体として、厚さ20μmのアルミニウム箔を用いて、図2、3に示すバイポーラー電極Pを作製する。… 【0099】 1.負極活物質層5の作製 まず、集電体3上に負極活物質層5を形成する。負極活物質としてLi_(4)Ti_(5)O_(12)を準備した。… 【0100】 前記負極活物質[28質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[3質量%]、前記高分子原料[17質量%]、リチウム塩としてBETI[8質量%]、熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル[高分子原料に対して0.1質量%]、および、溶媒としてNMP[44質量%]を含む溶液を充分に撹拌して、スラリーを得た。 【0101】 該スラリーを、集電体3の一方の面上にコーターで塗布した。真空乾燥機中にて、90℃で2時間以上、スラリーが塗布されたアルミニウム箔を加熱乾燥し、一方の面上に負極活物質層5が形成された集電体3を得た。 【0102】 2.正極活物質層4の作製 次に、同集電体3の反対側の面上に正極活物質層4を形成した。 【0103】 平均粒子径2μmのスピネルLiMn_(2)O_(4)を正極活物質として準備した。 【0104】 前記正極活物質[29質量%]、導電助剤としてアセチレンブラック[8.7質量%]、前記高分子原料[17質量%]、リチウム塩としてBETI[7.3質量%]、熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル[高分子原料に対して0.1質量%]、および、溶媒としてNMP[41質量%]を含む溶液を充分に撹拌して、スラリーを得た。該スラリーを、前記一方の面上に負極活物質層等が形成された集電体3の、他方の面上にダイコーターを用いて集電体3の周辺部がのこるような図2に示すパターン様式で塗布した。真空乾燥機中にて、90℃で2時間以上、加熱乾燥し、一方の面上に負極活物質層5が、他方の面上に正極活物質層4が形成されたバイポーラー電極Pを得た。 【0105】 3.高分子固体電解質層6の作製 前記負極活物質層5上に高分子電解質層6を形成した。 … 【0108】 4.成形 次に、先に製造した単位積層電極1を成形し、電池とする。各単位積層電極1a?1eの正極活物質層4の長さLは100cmとした。表面を絶縁塗装したアルミニウム製の円筒状芯材2を回転軸に固定し、図4示すように、芯材2の周りに単位積層電極1a?1eをセットした。… 【0109】 同様にして集電体3,3(通常の薄肉のもの)間に絶縁層8が位置するようにセットした。この絶縁層8は巻回したとき各積層部材Sが重なるときの短絡を防止する。 【0110】 そして、円筒状芯材2を回転すると、セットされた単位積層電極1a?1eの巻き始めから絶縁層8も貼り付けた。 【0111】 この単位積層電極1a?1eの巻き付けが完了した時の終端上に保持手段7であるカプトン粘着テープを巻いて、単位積層電極1a?1e等が動かないように固定した。 【0112】 端部の集電体3からリード線12が外部に突出するように、アルミニウム製の円筒状芯材2を含めて、アルミニウム製の絶縁性フィルム10により密封した。」 (エ)「【0117】 実施例と比較例の各電池を、単セル当り1Vと2.7Vの間で充放電し…た。」 (オ)「【0061】 正極活物質としては、溶液系のリチウムイオン電池でも使用される、遷移金属とリチウムとの複合酸化物を使用できる。具体的には、LiCoO_(2)などのLi・Co系複合酸化物、LiNiO_(2)などのLi・Ni系複合酸化物、スピネルLiMn_(2)O_(4)などのLi・Mn系複合酸化物、LiFeO_(2)などのLi・Fe系複合酸化物などが挙げられる。…」 (カ)「 」 3 引用文献1に記載された発明 ア 上記2(ア)?(ウ)、(カ)によれば、実施例1のバイポーラ電池は、集電体の一面に正極活物質層を他面に負極活物質層を有するバイポーラー電極に高分子固体電解質層を設けた単位積層電極を積層してなるバイポーラー電池であって、所定の幅と長さを有する前記単位積層電極を少なくとも2層以上積層してなる積層部材が曲率を持つ断面形状としたバイポーラー電池であるところ、前記集電体として、アルミニウム箔を用い、前記正極活物質層の正極活物質としてスピネルLiMn_(2)O_(4)を用い、前記負極活物質層の負極活物質としてLi_(4)Ti_(5)O_(12)を用い、前記単位積層電極を2層以上積層してなる積層部材が曲率を持つ断面形状としたバイポーラー電池である。 イ また、上記2(エ)には、実施例1のバイポーラ電池を、充放電したことが記載されている。 ウ したがって、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「集電体の一面に正極活物質層を他面に負極活物質層を有するバイポーラー電極に高分子固体電解質層を設けた単位積層電極を積層してなるバイポーラー電池であって、前記集電体として、アルミニウム箔を用い、前記正極活物質層の正極活物質としてスピネルLiMn_(2)O_(4)を用い、前記負極活物質層の負極活物質としてLi_(4)Ti_(5)O_(12)を用い、前記集電体に所定の幅と長さを有する前記単位積層電極を2層以上積層してなる積層部材が曲率を持つ断面形状とした、充放電できるバイポーラー電池。」 (以下、「引用発明1」という。) 4 本件補正発明と引用発明1との対比 本件補正発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「正極活物質層」、「負極活物質層」、「高分子固体電解質層」、「充放電できるバイポーラー電池」、「Li_(4)Ti_(5)O_(12)」は、それぞれ、本件補正発明の「集電体の一方の面に電気的に結合した正極」、「集電体の反対側の面に電気的に結合した負極」、「電解質層」、「双極型二次電池」、「チタン酸リチウム」に相当し、引用発明1の「集電体の一面に正極活物質層を他面に負極活物質層を有するバイポーラー電極に高分子固体電解質層を設けた単位積層電極を積層してなるバイポーラー電池であって、」「前記集電体に所定の幅と長さを有する前記単位積層電極を2層以上積層してなる積層部材が曲率を持つ断面形状とした、充放電できるバイポーラー電池」は、本件補正発明の「集電体の一方の面に電気的に結合した正極と、前記集電体の反対側の面に電気的に結合した負極と、それらの間に配置された電解質層とを備え、それらが交互に積層された双極型二次電池」に該当することは明らかであるから、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 集電体の一方の面に電気的に結合した正極と、前記集電体の反対側の面に電気的に結合した負極と、それらの間に配置された電解質層とを備え、それらが交互に積層された双極型二次電池であって、前記負極の負極活物質としてチタン酸リチウムを用いる点。 <相違点> 相違点1 本件補正発明では、「正極の正極活物質の酸化還元電位が集電体の溶出電位よりも低く、かつ負極の負極活物質の酸化還元電位が前記集電体のリチウム合金化電位よりも高く構成されている」のに対して、引用発明1では、そのように構成されているのか否か不明である点。 相違点2 本件補正発明では、「集電体として純アルミニウムで構成された集電体を用い」るのに対して、引用発明1では、集電体としてアルミニウム箔を用いるものの、そのアルミニウム箔が純アルミニウムで構成されているのかが明らかでない点。 相違点3 本件補正発明では、「正極活物質としてLiNiO_(2)およびLiFePO_(4)の少なくとも一方を用い」るのに対して、引用発明1では、正極活物質にそれらを用いてはいない点。 5 相違点についての判断 (1)相違点1について 引用発明1では、集電体として、アルミニウム箔を用い、正極活物質としてスピネルLiMn_(2)O_(4)を用い、負極活物質としてチタン酸リチウムを用いているところ、本願明細書の【0313】?【0315】の記載によれば、アルミニウムを集電体とした場合、その集電体の溶出電位は、6V以上であり、スピネルLiMn_(2)O_(4)等の正極活物質の酸化還元電位よりも高く、かつ、その集電体のリチウム合金化電位は、0.26Vであり、負極活物質としてのチタン酸リチウムの酸化還元電位よりも低い。 そうすると、引用発明1においても、正極の正極活物質の酸化還元電位は集電体の溶出電位よりも低く、かつ負極の負極活物質の酸化還元電位は集電体のリチウム合金化電位よりも高く構成されていることとなる。 したがって、相違点1は、実質的な相違点でない。 (2)相違点2について 引用発明1では、集電体として、アルミニウム箔を用いるところ、本願明細書の【0038】の記載によれば、本件補正発明における、純アルミニウムとはアルミニウムの純度が98%以上のものとされている。 そして、アルミニウム箔におけるアルミニウムの純度は98%以上であるから(必要であれば、特開2005-294168号公報(原査定における、引用文献6)の【0087】、【0092】参照。)、引用発明1での、集電体としてアルミニウム箔を用いることは、本件補正発明における、純アルミニウムで構成された集電体を用いることに該当する。 したがって、相違点2は、実質的な相違点でない。 (3)相違点3について 上記2(オ)によれば、引用文献1には、正極活物質に関し、遷移金属とリチウムとの複合酸化物を使用でき、具体的には、LiCoO_(2)、LiNiO_(2)、スピネルLiMn_(2)O_(4)、LiFeO_(2)が挙げられるとの記載があり、引用発明1では正極活物質として、これらの具体的な複合酸化物のうちの、スピネルLiMn_(2)O_(4)が用いられている。 そうすると、引用文献1には、引用発明1での正極活物質としての、スピネルLiMn_(2)O_(4)を、LiNiO_(2)で代替することも記載されているといえる。 したがって、相違点3は、実質的な相違点でない。 仮にそうでないとしても、引用発明1において、引用文献1の上記のような記載に基づき、正極活物質としてLiNiO_(2)を用いて、集電体の材料と負極活物質の材料と正極活物質の材料の組合せ(以下、「材料の組合せ」という。)を本件補正発明と同じにしてみることは、当業者が容易になし得る技術事項であるし、それによって奏されるサイクル特性向上等の効果は、引用発明1それ自体において材料の組合せがもたらす効果として、内在する効果にすぎない。 6 小括 以上のとおり、本件補正発明と引用発明1との間に差異はなく、本件補正発明は引用発明1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、本件補正発明は、引用発明1とは相違点3の点で差異はあるものの、引用発明1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 IV.まとめ したがって、上記補正事項bを含む本件補正は、改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 原査定の理由についての検討 I.本願発明 本願の平成24年12月14日付けの手続補正は、上記のとおり、却下された。 したがって、本願の請求項1に係る発明は、平成24年 8月31日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その発明は上記「第2 I.(A)」に【請求項1】として示すとおりのものである(以下、本願の請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。 II.原査定の理由の概要 原審における拒絶査定の理由の一つは、概略、以下のものである。 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 記 刊行物1:特開2004-127559号公報 III.当審の判断 1 刊行物1に記載された発明 刊行物1は、上記「第2 III.2 」に記載した、引用文献1と同一であるから、上記「第2 III.3 」に記載されたとおりである、以下の発明が記載されていると認められる。 「集電体の一面に正極活物質層を他面に負極活物質層を有するバイポーラー電極に高分子固体電解質層を設けた単位積層電極を積層してなるバイポーラー電池であって、前記集電体として、アルミニウム箔を用い、前記正極活物質層の正極活物質としてスピネルLiMn_(2)O_(4)を用い、前記負極活物質層の負極活物質としてLi_(4)Ti_(5)O_(12)を用い、前記集電体に所定の幅と長さを有する前記単位積層電極を2層以上積層してなる積層部材が曲率を持つ断面形状とした、充放電できるバイポーラー電池。」 (以下、「引用発明1」という。) 2 本願発明と引用発明1との対比 本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「正極活物質層」、「負極活物質層」、「高分子固体電解質層」、「充放電できるバイポーラー電池」は、それぞれ、本願発明の「集電体の一方の面に電気的に結合した正極」、「集電体の反対側の面に電気的に結合した負極」、「電解質層」、「双極型二次電池」に相当し、引用発明1の「集電体の一面に正極活物質層を他面に負極活物質層を有するバイポーラー電極に高分子固体電解質層を設けた単位積層電極を積層してなるバイポーラー電池であって、」「前記集電体に所定の幅と長さを有する前記単位積層電極を2層以上積層してなる積層部材が曲率を持つ断面形状とした、充放電できるバイポーラー電池」は、本願発明の「集電体の一方の面に電気的に結合した正極と、前記集電体の反対側の面に電気的に結合した負極と、それらの間に配置された電解質層とを備え、それらが交互に積層された双極型二次電池」に該当することは明らかであるから、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 集電体の一方の面に電気的に結合した正極と、前記集電体の反対側の面に電気的に結合した負極と、それらの間に配置された電解質層とを備え、それらが交互に積層された双極型二次電池。 <相違点> 相違点A 本願発明では、「集電体として、ステンレス鋼、純アルミニウム、およびチタンからなる群より選択される少なくとも1種の集電体材料で構成された集電体を用い」るのに対して、引用発明1では、集電体としてアルミニウム箔を用いるものの、そのアルミニウム箔が純アルミニウムで構成されているのかが明らかでない点。 相違点B 本願発明では、「正極の正極活物質の酸化還元電位が集電体の溶出電位よりも低く、かつ負極の負極活物質の酸化還元電位が前記集電体のリチウム合金化電位よりも高く構成されている」のに対して、引用発明1では、そのように構成されているのか否か不明である点。 3 相違点についての判断 (A)相違点Aについて 相違点Aは、上記「第2 III.4」の相違点2と同じであり、上記「第2 III.5(2)」と同様の理由で、実質的な相違点ではない。 (B)相違点Bについて 相違点Bは、上記「第2 III.4」の相違点1と同じであり、上記「第2 III.5(1)」と同様の理由で、実質的な相違点ではない。 4 小括 以上のとおり、本願発明と引用発明1との間に差異はなく、本願発明は、刊行物1に記載された発明である。 5 まとめ したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、原査定は妥当である。 したがって、本願発明は特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-09-30 |
結審通知日 | 2013-10-08 |
審決日 | 2013-10-24 |
出願番号 | 特願2006-324797(P2006-324797) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H01M)
P 1 8・ 575- Z (H01M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松嶋 秀忠 |
特許庁審判長 |
山田 靖 |
特許庁審判官 |
小川 進 木村 孔一 |
発明の名称 | 双極型電池 |
代理人 | 八田国際特許業務法人 |