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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1282943
審判番号 不服2013-5209  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-19 
確定日 2014-01-07 
事件の表示 特願2009-129721「電子部品装着装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月 9日出願公開、特開2010-278268、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成21年5月28日の出願であって、平成24年12月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年3月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
そして、当審において、平成25年4月18日付けで審査官により作成された前置報告書について、平成25年9月6日付けで審尋を行ったところ、審判請求人は平成25年11月12日付けで回答書を提出した。

第2.平成25年3月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
部品供給装置より供給された電子部品を装着ヘッドに設けられた吸着ノズルにより取出して、プリント基板上に装着する電子部品装着装置において、
前記吸着ノズルの吸着孔の形状を中央部の大径の円形孔とこの大径の円形孔の両隣りに小径の円形孔の一部を重ねて連通させた形状とすると共に、前記小径の円形孔を180度以上の円弧形状とし、前記大径の円形孔とその両隣りの前記小径の円形孔との連通部には、孔の対向する面の夫々に前記孔の幅を狭めくびれが形成されるように前記大径の円形孔の円弧と前記小径の円形孔の円弧とから成る形状の突部を形成したことを特徴とする電子部品装着装置。」と補正された。

2.本件補正の適否
上記の補正について、請求人は、審判請求の理由において、
「(2)補正の根拠の明示
出願人は、本書と同日付けにて手続補正書を提出し、本願明細書の特許請求の範囲の欄と、明細書の発明の詳細な説明の欄との記載を補正致しました。
特に、本書と同日付けの手続補正書における特許請求の範囲の欄の補正事項は、特許請求の範囲の欄の現請求項1を補正するものであり、出願当初の明細書の段落番号0025?0027の記載及び図4の吸着孔11の形状の記載に基づく補正であります。」と説明している。
その説明のとおり、上記の補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「突部」を、「前記大径の円形孔の円弧と前記小径の円形孔の円弧とから成る形状の突部」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)引用例
(1-1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-66773号公報(以下、「引用例1」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(あ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の吸着ノズルおよびこの吸着ノズルが装着された電子部品実装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品の移載などのハンドリングの方法として、真空吸着による方法が広く用いられている。この方法は吸着孔が設けられた吸着ノズルを電子部品に当接させ、吸着孔を真空吸引することにより発生する負圧を利用して電子部品を吸着するものである。ここで用いられる吸着ノズルは電子部品に直接当接して用いられるものであるため、対象となる電子部品の形状・サイズとともに、当該電子部品の供給形態に応じて種々の形式のものが用いられる。
【0003】
例えば、テープフィーダが装備された電子部品実装装置においては、キャリアテープのキャビティ内に収容された状態の電子部品を取り出す必要があることから、小型部品を対象とする場合の吸着ノズルとして、キャビティを全面的に覆う形状の吸着面が設けられたタイプの吸着ノズルが用いられる場合がある(例えば特許文献1参照)。そしてこの特許文献例においては、吸着ノズルによってキャビティが覆われた状態において、キャビティを外部と連通させる通気溝を吸着面に設け、吸着ノズルによってキャリアテープそのものが吸着される不具合の発生を避けるようにしている。
【特許文献1】特開2002-118397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年電子機器の小型化に伴い、電子部品のサイズの微細化が進展しており、矩形のチップ型部品では辺寸法が0.4mm×0.2mmの微小部品(0402部品と称される)が使用されるようになっている。このような微小部品を対象とする場合には、上述のような対策を施してもなお電子部品をキャビティ内において安定して吸着保持することが困難であった。
【0005】
そこで本発明は、微小部品を安定してキャリアテープから取り出すことができる電子部品の吸着ノズルおよびこの吸着ノズルが装着された電子部品実装装置を提供することを目的とする。」
(い)「【0017】
次に図5を参照してノズル部15aの下端部形状について説明する。図5はノズル部15aの下端部を示しており、ノズル部15aが電子部品と当接する吸着面15bが設けられた下端部の断面形状は矩形断面となっている。吸着面15bに開口した吸着孔15eは、吸着面15bの中央部に設けられた略矩形開口部(矢印a部)に、吸着面15bの長辺方向の両側に略円形開口部(矢印b部)を付加した構成となっている。このような吸着孔形状を採用することにより、吸着対象を極力広いスパンで吸着することができ、ノズル部15aと吸着対象の第2の電子部品P2とが相対的に多少位置ずれしている場合においても、安定した吸着保持が行えるという利点がある。
【0018】
ノズル部15aの下端部には吸着面15bの長辺をテーパカットした長辺テーパカット面17a、短辺をテーパカットした短辺テーパカット面17bが設けられており、さらに長辺テーパカット面17aと短辺テーパカット面17bが交わる稜線は同様にテーパカットされ、略3角形状のコーナテーパカット面17cが各コーナ部に形成されている。ここで吸着面15bは対象とするキャリアテープ14の矩形キャビティ14aの全体を覆うように寸法設定がなされており、図5(b)に示すように、吸着面15bをキャリアテープ14に対して下降させた状態では、吸着面15bの4辺は矩形キャビティ14aの4辺側においてキャリアテープ14の上面に当接する。
【0019】
そして矩形キャビティ14aのコーナ部においては、吸着面15bはコーナテーパカット面17cによってカットされていることから、矩形キャビティ14aが部分的に上面を覆われずに外部に露呈した部分、すなわち矩形キャビティ14aの内部と外部とを連通させる通気部(図5(b)に示すハッチング部参照)が形成される。なお通気部を形成する場合において、平面状のコーナテーパカット面17cを設ける替わりに、内側に削り込んだ凹状のコーナテーパカット面を設けるようにすれば、通気部の開口断面積を大きくすることができる。」
以上の事項及び図面からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「部品供給部より供給された電子部品を搭載ヘッドに設けられた吸着ノズル15により取出して、プリント基板上に装着する電子部品実装装置において、
吸着ノズル15のノズル部15aが電子部品と当接する吸着面15bが設けられた下端部の断面形状は矩形断面となっており、
前記吸着ノズル15の吸着孔15eの形状を中央部の略矩形開口部とこの略矩形開口部の長辺方向の両側に略円形開口部を付加して連通させた構成となっている電子部品実装装置。」
(1-2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-5336号公報(以下、「引用例2」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(か)「【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に電子部品を装着する技術に関連する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリント基板等の回路基板に電子部品を装着する装置では、電子部品の電極と回路基板の電極とを接合する様々な方法が利用されており、電子部品を短時間で、かつ、比較的低温にて接合することができる方法の1つとして超音波を利用する接合方法(以下、「超音波接合」という。)が知られている。超音波接合では、超音波振動により回路基板に押圧された電子部品を振動させ、電子部品の電極(例えば、バンプが形成されている。)と回路基板の電極とを電気的に接合する。
【0003】
…(略)…
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電子部品の装着装置では、電子部品を保持するツールの1つとして、流路に垂直な断面が円形の(すなわち、円柱状の)吸引路を内部に有するとともに先端面の中央部に円形の吸引口が1つだけ設けられ、当該先端面において電子部品を吸引吸着して保持するものが利用されている。このようなツールにより電子部品を超音波接合した場合、ツールの先端面における吸引口の周囲の領域のうち、吸引口のエッジ近傍においてエッジに沿う円環状の領域が他の領域に比べて強く電子部品に押圧される。すなわち、吸引口のエッジに沿う当該円環状の領域が、電子部品に実質的に接触する接触領域となる。
【0007】
一方、電子部品の基板に対する接合の質の更なる向上が求められており、電子部品の位置ずれ等を防止してより確実に回路基板に装着するために、ツールの先端面(以下、「保持面」という。)と電子部品との接触領域の面積を大きくする必要がある。ここで、吸引路の径を単に大きくすることにより、吸引口の周囲の接触領域の長さを長くすることができるが、吸引路の径を過剰に大きくするとツールの肉厚が薄くなってしまい、電子部品に対して超音波振動を適切に伝達することが困難になる可能性がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、保持面と電子部品との実質的な接触面積を増加させることにより電子部品をより確実に回路基板に装着することを目的としている。」
(き)「【0043】
図5に示すように、電子部品装着装置1では、電子部品を吸着保持する保持ツール331の保持面3351において、凹部3352の開口3353のエッジ近傍であり、かつ、当該エッジに沿う円環状の4つの領域(図5中に二点鎖線にて描く同心円にて挟まれる領域)3354が、電子部品の接合時(すなわち、電子部品に対する超音波振動の付与時)に他の領域に比べて強く電子部品に押圧される。すなわち、領域3354は、保持面3351のうち電子部品に実質的に接触する領域ということができ、以下、「接触領域3354」という(以下の実施の形態においても同様)。
【0044】
電子部品装着装置1では、保持ツール331のツール突出部335において、保持面3351の外周縁よりも内側に複数の凹部3352の開口3353が形成されており、(実用的な範囲内で通常形成される大きさの)円形の吸引口(すなわち、開口)が保持面に1つだけ形成されている通常の保持ツールに比べて、保持面3351における開口3353のエッジの合計長さを長くして保持面3351と電子部品との接触領域3354の合計面積を増加することができる。これにより、電子部品をより確実に安定した接合強度にて回路基板に装着することができ、その結果、電子部品の回路基板への接合の質を向上することができる。
【0045】
また、保持ツール331では、同じ形状を有する複数の凹部3352が中心軸3350を中心として周方向に等間隔にて配置されているため、中心軸3350を中心とするツール突出部335の向きに関わらず、すなわち、超音波振動の電子部品に対する相対的な振動方向に関わらず、電子部品に対して超音波振動の力をほぼ同様に付与することができる。その結果、所望の接合の質を安定して得ることができる。また、各凹部3352が吸引路333に連絡されているため、中心軸3350を中心とする周方向において電子部品を軸対称な力で吸着保持することができる。
【0046】
なお、保持ツール331の保持面3351に形成される複数の凹部3352の個数は4つには限定されず、3つ以上の凹部3352が中心軸3350を中心として等間隔に形成されることにより、超音波振動の振動方向に関わらず、電子部品に対して超音波振動の力をほぼ同様に付与することができる。また、電子部品を吸着保持するという観点のみからは、複数の凹部3352のうち少なくとも1つが吸引路333に連絡されていればよい。
【0047】
保持ツール331では、複数の凹部3352のそれぞれのZ方向に垂直な断面が円形(すなわち、凹部3352が円柱状)であり、各凹部3352の開口3353が円形とされる。このため、ドリル等の工具により複数の凹部3352を保持面3351側から容易に形成することができ、開口3353のエッジの合計長さが通常の保持ツールよりも長い保持ツール331を容易に製造することができる。
【0048】
次に、電子部品装着装置に設けられる保持ツールの他の好ましい例について説明する。図7は、他の保持ツール331aのツール突出部335を示す底面図である。図7に示すように、保持ツール331aの保持面3351には、中心軸3350を中心とする1つの円形の開口3353a、および、開口3353aの周囲に中心軸3350を中心として等間隔にて配置されるとともに開口3353aと径が等しい3つの円形の開口3353bが形成される。開口3353aは、ツール突出部335の内部に形成された吸引路333(保持面3351の外周縁よりも内側に形成された凹部といえる。)の保持面3351における開口である。また、3つの開口3353bは、保持面3351の外周縁よりも内側に吸引路333とは独立して形成された3つの凹部3352aの開口であり、これらの凹部3352aは、中心軸3350を中心として所定の凹部を回転させつつ互いに重なり合わないように等間隔にて配置したものである。3つの凹部3352aは互いに独立しており、吸引路333とも連絡していないため、保持ツール331aでは、開口3353aのみが電子部品を吸引吸着する吸引口となる。
【0049】
保持ツール331aが設けられる電子部品装着装置では、図1に示す電子部品装着装置1と同様に、4つの凹部の開口(すなわち、凹部とみなすことができる吸引路333の開口3353a、および、3つの凹部3352aの開口3353b)が保持面3351の外周縁よりも内側に形成されることにより、実用的な範囲内で通常形成される大きさの円形の吸引口(例えば、開口3353aと同じ大きさの吸引口)が保持面に1つだけ形成されている通常の保持ツールに比べて、保持面3351における開口のエッジの合計長さを長くして保持面3351と電子部品との接触領域3354の合計面積を増加することができる。これにより、電子部品をより確実に回路基板に装着することができ、その結果、電子部品の回路基板への接合の質を向上することができる。
【0050】
また、保持ツール331aでは、吸引路333の開口3353aが中心軸3350を中心として形成され、さらに、同じ形状を有する3つの凹部3352aの開口3353bが中心軸3350を中心として周方向に等間隔にて配置されているため、中心軸3350を中心とするツール突出部335の向きに関わらず、電子部品に対して超音波振動の力をほぼ同様に付与することができる。その結果、所望の接合の質を安定して得ることができる。
【0051】
なお、図7の例では、開口3353aと開口3353bとが同じ形状とされるが、開口3353aの径は、開口3353bよりも大きくてもよく、あるいは、小さくてもよい。
また、保持面3351では、吸引路333の開口3353aの周囲に、中心軸3350を中心として等間隔にて配置された4つ以上の凹部3352aの開口3353bが形成されてもよい。逆に、1つの開口3353aのみが設けられる場合に比べて電子部品をより確実に回路基板に装着するという観点のみからは、開口3353bが吸引路333の開口3353aを中心として対称な位置(すなわち、開口3353aを挟んで互いに反対側)に配置される2つの凹部3352aが、保持面3351に形成されてもよい。
【0052】
図8は、さらに他の好ましい保持ツール331bのツール突出部335を示す底面図である。図8に示すように、保持ツール331bの保持面3351では、吸引路333の開口3353a、および、開口3353aの周囲に中心軸3350を中心として等間隔にて配置される3つの凹部3352aの開口3353bが形成されている。これにより、図7に示す保持ツール331aと同様に、電子部品をより確実に回路基板に装着することができ、その結果、電子部品の回路基板への接合の質を向上することができる。また、中心軸3350を中心とするツール突出部335の向きに関わらず、電子部品に対して超音波振動の力をほぼ同様に付与することができる。
【0053】
保持ツール331bでは、さらに、3つの凹部3352aのそれぞれと吸引路333とを連絡する細長い溝状の3つの連絡路3356が保持面3351に形成される。これにより、開口3353aのみならず、3つの開口3353bも電子部品を吸引吸着する吸引口となるため、電子部品をより強い力で吸着してより確実に保持することができ、その結果、電子部品の回路基板への接合の質をさらに向上することができる。
【0054】
なお、3つの凹部3352aのうち1つまたは2つの凹部3352aのみが吸引路333に連絡されてもよい。また、2つの凹部3352aが、吸引路333を中心として対称な位置(すなわち、吸引路333を挟んで互いに反対側)に配置され、凹部3352aのいずれか一方または両方が吸引路333に連絡されてもよい。」
(2)対比
本願補正発明と引用例1発明とを対比すると、
後者の「部品供給部」は前者の「部品供給装置」に相当し、同様に、「搭載ヘッド」は「装着ヘッド」に、「基板」は「プリント基板」に、「電子部品実装装置」は「電子部品装着装置」に、それぞれ相当する。
後者の「前記吸着ノズル15の吸着孔15eの形状は中央部の略矩形開口部とこの略矩形開口部の長辺方向の両側に略円形開口部を付加して連通させた構成となっている」と、前者の「前記吸着ノズルの吸着孔の形状を中央部の大径の円形孔とこの大径の円形孔の両隣りに小径の円形孔の一部を重ねて連通させた形状とすると共に、前記小径の円形孔を180度以上の円弧形状とし、前記大径の円形孔とその両隣りの前記小径の円形孔との連通部には、孔の対向する面の夫々に前記孔の幅を狭めくびれが形成されるように前記大径の円形孔の円弧と前記小径の円形孔の円弧とから成る形状の突部を形成した」は、「前記吸着ノズルの吸着孔の形状を中央部の開口とこの開口の両隣りに開口を連通させた形状とした」点で一致する。
したがって、本願補正発明の用語に倣って整理すると、両者は、
「部品供給装置より供給された電子部品を装着ヘッドに設けられた吸着ノズルにより取出して、プリント基板上に装着する電子部品装着装置において、
前記吸着ノズルの吸着孔の形状を中央部の開口とこの開口の両隣りに開口を連通させた形状とした電子部品装着装置。」である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]
本願補正発明は、「前記吸着ノズルの吸着孔の形状を中央部の大径の円形孔とこの大径の円形孔の両隣りに小径の円形孔の一部を重ねて連通させた形状とすると共に、前記小径の円形孔を180度以上の円弧形状とし、前記大径の円形孔とその両隣りの前記小径の円形孔との連通部には、孔の対向する面の夫々に前記孔の幅を狭めくびれが形成されるように前記大径の円形孔の円弧と前記小径の円形孔の円弧とから成る形状の突部を形成した」のに対し、
引用例1発明は、「前記吸着ノズル15の吸着孔15eの形状は中央部の略矩形開口部とこの略矩形開口部の長辺方向の両側に略円形開口部を付加して連通させた構成となっている」点。
(3)判断
(3-1)相違点について
本願補正発明の「前記吸着ノズルの吸着孔の形状」は「中央部の大径の円形孔とこの大径の円形孔の両隣りに小径の円形孔の一部を重ねて連通させた形状」である。そこで、形状が円形か略矩形かはひとまず措いて、まず、引用例1発明の「前記吸着ノズル15の吸着孔15eの形状」が、「中央部の略矩形開口部」と「この略矩形開口部の長辺方向の両側」に付加して連通させた「略円形開口部」とが一部を重ねた構成であるかどうか、あるいは、そのような構成とすることが容易想到かどうかについて検討する。
この点に関して、引用例1の図5をみると、「中央部の略矩形開口部」とこの略矩形開口部の長辺方向の両側に付加して連通させた「略円形開口部」の輪郭を仮想的に延長してみても、これら両者が一部を重ねた構成であるかどうか、判別し難い。そして、引用例1のような特許公報の図面は発明ないしその実施例を説明するための概念図であって、一般に、正確な設計図とはいえないことを考慮すると、引用例1の図5の記載から、「中央部の略矩形開口部」とこの略矩形開口部の長辺方向の両側に付加して連通させた「略円形開口部」とが一部を重ねた構成であると認めることは到底できない。なお、引用例1の図5では、「中央部の略矩形開口部」とこの略矩形開口部の長辺方向の両側に付加して連通させた「略円形開口部」との連通部に、幅が狭められたくびれ形状を捉えることができるが、これは、吸着面積、応力分布等を考慮して吸着孔の周囲を滑らかに接続したにすぎないとも理解され、「中央部の略矩形開口部」と「略円形開口部」とを一部を重ねたことの根拠にはならない。
さらに、(a)引用例1発明は、吸着ノズル15の吸着面15bである下端部の断面形状は矩形断面であって、その矩形形状に相応して、中央部の略矩形開口部の長辺方向の両側に略円形開口部を付加して連通させた構成となっていること、(b)このような構成に関して、引用例1の明細書には、「【0017】…このような吸着孔形状を採用することにより、吸着対象を極力広いスパンで吸着することができ、ノズル部15aと吸着対象の第2の電子部品P2とが相対的に多少位置ずれしている場合においても、安定した吸着保持が行えるという利点がある。」と記載されていること、(c)引用例1発明の「中央部の略矩形開口部」とこの略矩形開口部の長辺方向の両側に付加して連通させた「略円形開口部」との一部を重ねると、これらを重ねない場合と比べて、吸着面15bの矩形形状の長辺方向に延びる吸着孔15eの長さが小さくなり、「吸着対象を極力広いスパンで吸着することができ、」という上記の「利点」に抵触し、むしろ相反すること、以上を合わせ考えると、引用例1発明において、「中央部の略矩形開口部」と「この略矩形開口部の長辺方向の両側」に付加して連通させた「略円形開口部」とを一部を重ねた構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たものということはできない。
ここで、引用例2をみると、引用例2(特に図8)には、ツール突出部の底面に、中心軸3350を中心とする1つの円形の開口3353aと、開口3353aの周囲に中心軸3350を中心として等間隔にて配置された3つの円形の開口3353bが形成された保持ツールが示されているとともに、段落【0051】には、開口3353aの径は開口3353bよりも大きくてもよいことが記載されており、この記載に基づいて、引用例1発明の中央部の開口部の略矩形状を、引用例2の同じく中央部にある開口部の円形状とすることは、当業者にとって想起し得る一つの代替設計にすぎないということも考えられる。しかし、安定した吸着保持(引用例1の例えば【0004】)は開口部の形状や吸着面積(開口面積)に依存すると考えられるが、略矩形状と円形とでは、通常、面積が異なる。また、引用例2(特に【0007】)に記載されているように、吸着孔の径を単に大きくすると、ノズルの肉厚が薄くなり強度等において不具合が生じ得る。引用例1発明は、吸着面積(開口面積)を大きくしつつノズルの肉厚(強度)等に配慮して、略矩形状としたのではないかと推察することもできる。そうだとすると、格別の契機もなく、引用例1発明に引用例2の上記事項を適用して、引用例1発明の中央部の開口部の略矩形状を円形状とすることが当業者にとって容易想到であるということは困難である。
仮に、例えば開口部の加工の作業性向上が、略矩形状を円形状とすることの契機となり得るとしても、引用例1に記載されている「吸着対象を極力広いスパンで吸着することができ、」という上記の「利点」に留意すると、中央部の円形状とその両側の円形状との一部が重なるという構成に想到することが容易になし得たとはいい難い。
さらにいえば、仮に、中央部の円形状とその両側の円形状との一部を重ねるという事項を着想したとしても、引用例1の図5にみられるくびれ形状は、滑らかに緩やかに接続する形状である。引用例1発明には、くびれ形状を形成する突部の工夫によって電子部品の角部が吸着孔内に入りにくくするという課題解決や作用効果につながる萌芽は全く存在しないのであって、本願補正発明のように、中央部の円形状とその両側の円形状の円弧から成る形状の突部に想到することが容易であるとは到底いうことができない。
(3-2)効果について
本願明細書には、「【0006】 そこで本発明は、吸着ノズルの吸着孔の形状を極力吸着エラーが起きないような形状とすることを目的とする。」、「【0028】…電子部品の吸着位置が電子部品の中心からずれても(図3参照)、電子部品Dの角部が突部11Cに当り支持されて吸着孔11内に斜めに入り込みにくくすることができる。【0029】従って、正規な姿勢で吸着ノズル5に吸着保持された電子部品の吸着姿勢を検出装置で検出した際に、吸着エラーとなることが減少することとなる。」と記載されており、引用例1発明がこのような効果を奏し得るとも、また、引用例1発明に引用例2の事項を組み合わせた発明がこのような効果を奏し得るとも認めることはできない。
(3-3)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、上記の補正(特許請求の範囲の補正)は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

3.むすび
本件補正について、他に、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2013-12-16 
出願番号 特願2009-129721(P2009-129721)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05K)
P 1 8・ 575- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川内野 真介  
特許庁審判長 山岸 利治
特許庁審判官 島田 信一
森川 元嗣
発明の名称 電子部品装着装置  
代理人 相澤 清隆  

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