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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B32B
管理番号 1282967
審判番号 不服2013-7565  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-24 
確定日 2013-12-12 
事件の表示 特願2006-201532「バリア性フィルムおよびそれを使用した積層材」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 2月 7日出願公開、特開2008- 23931〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成18年7月25日の出願であって、平成23年11月17日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対して平成24年1月17日付けで意見書及び手続補正書の提出がなされ、同年5月25日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、これに対して同年7月25日付けで意見書及び手続補正書の提出がなされ、この平成24年7月25日付け手続補正書による補正について平成25年2月1日付けで補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされ、同年4月24日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成24年1月17日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1の記載は次のとおりである。

「二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの一方の面に、少なくとも2室以上の製膜室を使用し、かつ、各室毎に、少なくとも、有機珪素化合物の1種以上からなる製膜用モノマ-ガス、酸素ガス、および、不活性ガスを含有する製膜用混合ガス組成物の各ガス成分の混合比を変えて調製した2以上の製膜用混合ガス組成物を使用し、その各製膜用混合ガス組成物を使用して製膜した2層以上のプラズマ化学気相成長法による炭素含有酸化珪素層からなり、更に、該各炭素含有酸化珪素層は、その膜中に炭素原子を含有し、かつ、各炭素含有酸化珪素層毎に炭素含有量が異なることからなる有機含有酸化珪素層を設け、
更に、該有機含有酸化珪素層の上に、一般式R^(1) n M(OR^(2) )m (ただし、式中、R^(1) 、R^(2) は、炭素数1?8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ-ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設け、
更にまた、該ガスバリア性塗布膜の上に、ポリウレタン系樹脂またはポリエステル系樹脂をビヒクルの主成分とし、これにシランカップリング剤および充填剤を添加し、溶媒、希釈剤を加えて充分に混合してなる樹脂組成物によるプライマ-剤層を設け、
そして、上記のプライマ-剤層の上に、印刷模様を形成した後、ラミネ-ト用接着剤層を介して、2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムを積層し、
他方、上記の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの他方の面の上に、ラミネ-ト用接着剤層を介して、無延伸ポリプロピレンフィルムを積層すること
を特徴とするボイル・レトルト処理包装用積層材。」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

3.刊行物の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2002-308286号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のア?クの事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レトルト用パウチに関し、更に詳しくは、耐熱性、耐圧性、耐水性、ヒ-トシ-ル性、耐ピンホ-ル性、耐突き刺し性、その他等の諸物性に優れ、特に、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性、透明性等に優れ、かつ、レトルト処理等の加工に伴う熱処理に耐え、更に、容器・包装ごみの軽量化、減量化等を図ると共にその製造工程の短縮化によりその製造コストの低減化を図り、例えば、調理食品、水産練り製品、冷凍食品、煮物、餅、液体ス-プ、調味料、飲料品、その他等の各種の飲食品を充填包装するに有用であり、かつ、その内容物の充填包装適性、品質保全性等に優れているレトルト用パウチに関するものである。

イ 「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記のような問題点を解決すべく種々研究した結果、樹脂フィルムの一方の面に無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜とを設けたバリア性基材およびそれを中使いすることに着目し、まず、少なくとも、基材フィルムと、樹脂フィルムの一方の面に無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜とを設けたバリア性基材と、ヒ-トシ-ル性樹脂層とを順次に積層して積層材を製造し、次いで、該積層材を使用し、これを製袋して袋状容器本体を製造し、しかる後、該袋状容器本体に所望の飲食品等を充填包装して包装半製品を製造し、次いで、該包装半製品を、温度、110℃?130℃位、圧力、1?3Kgf/cm^(2) ・G位、時間、20?60分間位の条件で加熱加圧殺菌処理等のレトルト処理を施してレトルト食品を製造したところ、耐熱性、耐圧性、耐水性、ヒ-トシ-ル性、耐ピンホ-ル性、耐突き刺し性、その他等の諸物性に優れ、特に、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性、透明性等に優れ、かつ、レトルト処理等の加工に伴う熱処理に耐え、更に、容器・包装ごみの軽量化、減量化等を図ると共にその製造工程の短縮化等によりその製造コストの低減化を図り、例えば、調理食品、水産練り製品、冷凍食品、煮物、餅、液体ス-プ、調味料、飲料品、飲料品、その他等の各種の飲食品を充填包装するに有用であり、かつ、その内容物の充填包装適性、品質保全性等に優れているレトルト用パウチを製造し得ることを見出して本発明を完成したものである。
【0005】すなわち、本発明は、少なくとも、基材フィルムと、樹脂フィルムの一方の面に無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜とを設けたバリア性基材と、ヒ-トシ-ル性樹脂層とを順次に積層した積層材を製袋してなることを特徴とするレトルト用パウチに関するものである。」

ウ 「【0008】・・・(中略)・・・本発明において、本発明にかかるレトルト用パウチを構成する積層材としては、少なくとも、樹脂フィルムの一方の面に無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜とを設けたバリア性基材を積層する際には、該バリア性基材を構成するガスバリア性塗布膜の面に、密接着性を高め、その積層強度等を向上させるために、予め、プライマ-剤等によるプライマ-剤層等を設け、次いで、基材フィルム、あるいは、ヒ-トシ-ル性樹脂層等を積層して積層材を製造することもできるものである。・・・(中略)・・・本発明においては、無機酸化物の蒸着膜としては、無機酸化物の蒸着膜の一層からなる単層膜のみならず無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる多層膜等から構成することもできるものである。」

エ 「【0021】具体的に、上記の低温プラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜の形成法についてその一例を例示して説明すると、図6は、上記のプラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜の形成法についてその概要を示す低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である。・・・(中略)・・・本発明においては、無機酸化物の蒸着膜としては、無機酸化物の蒸着膜の1層だけではなく、2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよく、また、使用する材料も1種または2種以上の混合物で使用し、また、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。」

オ 「【0025】また、上記の酸化珪素の蒸着膜は、酸化珪素を主体とし、これに、更に、炭素、水素、珪素または酸素の1種類、または、その2種類以上の元素からなる化合物を少なくとも1種類を化学結合等により含有する蒸着膜からなることを特徴とするものである。例えば、C-H結合を有する化合物、Si-H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラ-レン状等になっている場合、更に、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合があるものである。具体例を挙げると、CH_(3 )部位を持つハイドロカ-ボン、SiH_(3) シリル、SiH_(2 )シリレン等のハイドロシリカ、SiH_(2 )OHシラノ-ル等の水酸基誘導体等を挙げることができる。上記以外でも、蒸着過程の条件等を変化させることにより、酸化珪素の蒸着膜中に含有される化合物の種類、量等を変化させることができる。・・・(中略)・・・
本発明においては、酸化珪素の蒸着膜において、上記の化合物の含有量が、酸化珪素の蒸着膜の表面から深さ方向に向かって減少させることが好ましく、これにより、酸化珪素の蒸着膜の表面においては、上記の化合物等により耐衝撃性等を高められ、他方、樹脂フィルムとの界面においては、上記の化合物の含有量が少ないために、樹脂フィルムと酸化珪素の蒸着膜との密接着性が強固なものとなるという利点を有するものである。」

カ 「【0062】なお、本発明においては、前述のように、樹脂フィルムの一方の面に無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜とを設けたバリア性基材のガスバリア性塗布膜の面に、密接着性を高め、その積層強度等を向上させるために、予め、プライマ-剤等によるプライマ-剤層等を設け、次いで、他のヒ-トシ-ル性樹脂層等を積層することもできるものである。而して、本発明において、上記のプライマ-剤層としては、まず、ポリウレタン系樹脂またはポリエステル系樹脂をビヒクルの主成分とし、該ポリウレタン系樹脂またはポリエステル系樹脂1?30重量%に対し、シランカップリング剤0.05?10重量%位、好ましくは、0.1重量%?5重量%位、充填剤0.1?20重量%位、好ましくは、1?10重量%位の割合で添加し、更に、必要ならば、安定剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、紫外線吸収剤、その他等の添加剤を任意に添加し、溶媒、希釈剤等を加えて充分に混合して樹脂組成物を調製する。而して、上記で調製した樹脂組成物を使用し、これを、例えば、ロ-ルコ-ト、グラビアコ-ト、ナイフコ-ト、デップコ-ト、スプレイコ-ト、その他のコ-ティング法等により、前述のバリア性基材を構成するガスバリア性塗布膜の上にコ-ティングし、しかる後、コ-ティング膜を乾燥させて溶媒、希釈剤等を除去し、更に、要すれば、エ-ジング処理等を行って、本発明にかかるプライマ-剤層を形成することができる。なお、本発明において、プライマ-剤層の膜厚としては、例えば、0.1g/m^(2) ?5.0g/m^(2) (乾燥状態)位が望ましい。而して、本発明においては、上記のようなプライマ-剤層により、その密接着性等を向上させると共にプライマ-剤層の伸長度を向上させ、例えば、ラミネ-ト加工、あるいは、製袋加工等の後加工適性を向上させ、後加工時における無機酸化物の蒸着膜のクラック等の発生を防止するものである。」

キ 「【0073】・・・(中略)・・・本発明においては、無機酸化物の蒸着膜は、透明性を有し、かつ、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性を有するものであり、また、ガスバリア性塗布膜も、上記の無機酸化物の蒸着膜と同様に、透明性を有し、かつ、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性を有するものであり、而して、本発明においては、その無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜との2層により、その相乗効果を発揮して酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性等の作用効果を有し、また、官能性等にも優れ、アルミニウム箔等の金属箔とほぼ同等、あるいは、それ以上のバリア性等の作用効果を発揮すると共にアルミニウム箔等の金属箔と異なり、透明性に優れ、内容物等の視認性等に優れているものであり、また、金属探知機等による金属探知テストを可能とするものである。」

ク 「【0074】
【実施例】次に、上記の本発明について実施例を挙げて更に具体的に本発明を説明する。
実施例1
(1).厚さ15μmの二軸延伸ナイロン6フィルムを使用し、これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロ-ルに装着し、下記に示す条件で、上記の二軸延伸ナイロン6フィルムのコロナ処理面に、厚さ200Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)反応ガス混合比;ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1.2:5.0:2.5(単位:slm)
到達圧力;5.0×10^(-5)mbar
製膜圧力;7.0×10^(-2)mbar
ライン速度;240m/min
パワ-;35kW
次に、上記で厚さ200Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した直後に、その酸化珪素の蒸着膜面に、グロ-放電プラズマ発生装置を使用し、パワ-9kw、酸素ガス(O_(2) ):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10^(-2)mbar、処理速度240m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化珪素の蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させてたプラズマ処理面を形成した。
(2).他方、還流冷却器、攪拌機を備えた反応器に、テトラ-i-プロポキシチタン100部、アセチルアセトン70部を加え、60℃で30分間攪拌し、チタンキレート化合物を得た。この反応生成物の純度は75%であった。次に、(A)成分として、エチレン・ビニルアルコール共重合体〔日本合成化学株式会社製、商品名、ソアノールD2935、ケン化度;98%以上、エチレン含量;29モル%、メルトフローインデックス;35g/10分〕、および、ポリビニルピロリドン〔和光純薬株式会社製、Mw=25,000〕を、それぞれ、5%含む水/n-プロピルアルコール溶液(水/n-プロピルアルコール重量比=40/60)100部と、ならびに、上記で調製したチタンキレート化合物2部とn-プロピルアルコール16.8部、および水11.2部を混合して、55℃で4時間加水分解した(B)成分と、更に、N,N-ジメチルホルムアミド12.1部とを、40℃で混合して2時間攪拌し、本発明のガスバリア性組成物を得た。次に、上記の(1)で形成したプラズマ処理面に、上記で製造したガスバリア性組成物を使用し、これをグラビアロールコート法によりコーティングして、次いで、120℃で1分間、加熱処理して、厚さ1.0g/m^(2) (乾燥状態)のガスバリア性塗布膜を形成して、バリア性基材を製造した。
(3).他方、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレ-トフィルムの片面に、通常のグラビアインキ組成物を使用し、グラビア印刷方式により、文字、図形、記号、絵柄、その他等からなる所定の印刷模様を印刷して印刷模様層を形成した。次に、上記で形成した印刷模様層を含む全面に、2液硬化型のポリウレタン系ラミネ-ト用接着剤を使用し、これを、グラビアロ-ルコ-ト法により、膜厚5.0g/m^(2) (乾燥状態)になるようにコ-ティングしてラミネ-ト用接着剤層を形成した。次いで、上記で形成したラミネ-ト用接着剤層の面に、上記の(2)で製造したバリア性基材を、そのガスバリア性塗布膜の面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その両者をドライラミネ-トした。次に、上記でドライラミネ-ト積層したバリア性基材を構成する他方の厚さ15μmの2軸延伸ナイロン6フィルムのコロナ処理面に、2液硬化型のポリウレタン系ラミネ-ト用接着剤を使用し、これを、上記と同様に、グラビアロ-ルコ-ト法により、膜厚5.0g/m^(2) (乾燥状態)になるようにコ-ティングしてラミネ-ト用接着剤層を形成し、しかる後、上記のラミネ-ト用接着剤層の面に、厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネ-トして積層して、本発明にかかる積層材を製造した。
(4).次いで、上記で製造した積層材の2枚を用意し、その無延伸ポリプロピレンフィルムの面を対向して重ね合わせ、しかる後、その外周周辺の端部を三方ヒ-トシ-ルしてシ-ル部を形成すると共に上方に開口部を有する三方シ-ル型の軟包装用袋を製造した。上記で製造した三方シ-ル型の軟包装用袋内に、その開口部から水を充填包装し、しかる後、その開口部をヒ-トシ-ルして上方シ-ル部を形成して包装半製品を製造し、次いで、その包装半製品をレトルト釜に入れて、温度、120℃、圧力、2.1Kgf/cm^(2) ・G、時間、30分間からなるレトルト処理条件でレトルト処理を行い、本発明にかかるレトルト食品を製造した。上記で製造したレトルト食品は、その包装用袋が、耐熱性、耐圧性、耐水性、バリア性、ヒ-トシ-ル性、耐ピンホ-ル性、突き刺し性、透明性等に優れ、更に、酸素ガス、水蒸気等に対するバリア性に優れ、破袋ないし内容物の漏れ等も認められず、食品容器としての機能、例えば、内容物の充填包装適性、流通適正、保存適性等に優れていた。」

上記ア?ク、特にクの記載から、刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「二軸延伸ナイロン6フィルムのコロナ処理面に、ヘキサメチルジシロキサン、酸素ガス、および、ヘリウムを含有する反応ガスを使用し、プラズマ化学気相成長装置を用いて形成した酸化珪素の蒸着膜を設け、
上記の酸化珪素の蒸着膜の上にプラズマ処理面を形成し、
(A)成分として、エチレン・ビニルアルコール共重合体及びポリビニルピロリドンを含む水/n-プロピルアルコール溶液と、
(B)成分として、テトラ-i-プロポキシチタンとアセチルアセトンを60℃で30分間攪拌して得たチタンキレート化合物と、n-プロピルアルコール、および水を混合して、55℃で4時間加水分解したものと、
更に、N,N-ジメチルホルムアミドとを、40℃で混合して2時間攪拌して得たガスバリア性組成物を、上記のプラズマ処理面にコーティングし、加熱処理して、ガスバリア性塗布膜を形成して、バリア性基材を製造し、
他方、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、印刷模様を印刷して印刷模様層を形成し、この印刷模様層を含む全面にラミネ-ト用接着剤層を形成し、このラミネ-ト用接着剤層の面に、上記のバリア性基材を、そのガスバリア性塗布膜の面を対向させて重ね合わせ、その両者をドライラミネ-トし、
次に、上記の2軸延伸ナイロン6フィルムの他方のコロナ処理面に、ラミネ-ト用接着剤層を形成し、このラミネ-ト用接着剤層の面に無延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネ-トして積層して製造した、レトルト用パウチを構成する積層材。」

(2)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2005-103870号公報(以下「刊行物2」という。)には、次のア?カの事項が記載されている。

ア 「【請求項1】
ポリアミド系樹脂フィルムと、該ポリアミド系樹脂フィルムの一方の面に設けたバリア性層とからなり、更に、該バリア性層は、少なくとも2室以上の製膜室を使用し、かつ、各室毎に、少なくとも、有機珪素化合物の1種以上からなる製膜用モノマ-ガス、酸素ガス、および、不活性ガスを含有する製膜用混合ガス組成物の各ガス成分の混合比を変えて調製した2以上の製膜用混合ガス組成物を使用し、その各製膜用混合ガス組成物を使用して製膜した2層以上のプラズマ化学気相成長法による珪素酸化物層からなり、更に、該各珪素酸化物層は、その膜中に炭素原子を含有し、かつ、各珪素酸化物層毎に上記の炭素原子の含有量が異なることからなるバリア性フィルムのバリア性層の上に、少なくとも、シランカップリング剤と充填剤とを含むポリウレタン系樹脂組成物またはポリエステル系樹脂組成物によるコ-ティング膜を設け、更に、該コ-ティング膜の上に、接着剤層を介して、ヒ-トシ-ル性樹脂層を設けたことを特徴とする積層材。」

イ 「【請求項3】
コ-ティング膜が、その膜面上に、印刷模様層を設けることを特徴とする上記の請求項1?2のいずれか1項に記載する積層材。」

ウ 「【0098】
而して、本発明にかかるバリア性フィルムは、プラズマ化学気相成長法により珪素酸化物層を積層することにより、ポリアミド系樹脂フィルムからなる基材フィルムと珪素酸化物層との密着性に優れていると共にその珪素酸化物層は、延展性、屈曲性、可撓性等に優れ、第1層目から極めて優れた高いバリア性に優れた膜を製膜化することができ、また、少なくとも2室以上の製膜室からなるプラズマ化学気相成長装置を使用して珪素酸化物層を連続的に2層以上を積層させ、かつ、それぞれの各層が、高いバリア性を有する膜を製膜化することができることから、単層のそれよりも更に高いガスバリア性を得ることができ、更に、大気に開放ぜす連続的に製膜化することによりクラックの発生原因となる異物、塵埃等が製膜層間に混入することを防止することができ、かつ、そのバリア性の低下も認められず、更にまた、各珪素酸化物層は、その膜中に炭素原紙を含有し、かつ、各珪素酸化物層毎に上記の炭素原子の含有量が異なる不連続層であることから、酸素ガス、水蒸気等の透過を完全に阻止することができるという種々の利点を有するものである。」

エ 「【0111】
次に、本発明において、上記の積層材を構成するコ-ティング膜について説明すると、かかるコ-ティング膜としては、まず、ポリウレタン系樹脂あるいはポリエステル系樹脂等をビヒクルの主成分とし、該ポリウレタン系樹脂あるいはポリエステル系樹脂等1?30重量%に対し、シランカップリング剤0.05?10重量%位、好ましくは、0.1重量%?5重量%位、充填剤0.1?20重量%位、好ましくは、1?10重量%位の割合で添加し、更に、必要ならば、安定剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、紫外線吸収剤、その他等の添加剤を任意に添加し、溶媒、希釈剤等を加えて充分に混合してポリウレタン系あるいはポリエステル系樹脂組成物を調整し、而して、該ポリウレタン系あるいはポリエステル系樹脂組成物を使用し、これを、例えば、ロ-ルコ-ト、グラビアコ-ト、ナイフコ-ト、デップコ-ト、スプレイコ-ト、その他のコ-ティング法等により、前述の本発明にかかるバリア性フィルムを構成するバリア性層を形成する珪素酸化物層の面にコ-ティングし、しかる後、その塗布膜を乾燥させて溶媒、希釈剤等を除去し、更に、要すれば、エ-ジング処理等を行って、本発明にかかるコ-ティング膜を形成することができる。」

オ 「【0155】
本発明において、上記のようにして製造した本発明にかかる液体充填包装用小袋は、種々の飲食品、接着剤、粘着剤等の化学品、化粧品、医薬品、ケミカルカイロ等の雑貨品、その他等の物品の充填包装に使用されるものである。
而して、本発明においては、特に、例えば、ドレッシング、醤油、ソ-ス、マヨネ-ズ、味噌、酢、その他等の液体調味料からなる液体状内容物を充填包装する液体用小袋、切り餅、丸餅等を充填包装する小袋、生菓子等を充填包装する軟包装用袋、あるいは、ボイルあるいはレトルト食品等を充填包装する軟包装用袋等の飲食物等を充填包装する包装用容器として有用なものである。」

カ 「【0165】
次に、上記で製造したバリア性フィルムの珪素酸化物層の面に、グロ-放電プラズマ発生装置を使用し、パワ-9kw、酸素ガス(O_(2) ):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10^(-5)Torr、処理速度420m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、珪素酸化物層の膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させてたプラズマ処理面を形成した。
次に、上記で形成したプラズマ処理面の面に、シランカップリング剤1.0重量%、シリカ粉末1.0重量%、ポリエステル系樹脂13?15重量%、ニトロセルロ-ス3?4重量量%、トルエン31?38重量%、メチルエチルケトン(MEK)29?30重量%、イソプロピ-ルアルコ-ル(IPA)15?16重量%からなるポリエステル系樹脂組成物を調製し、これを、ロ-ルコ-ト法を利用してコ-ティングし、次いで、熱乾燥させ、上記のポリエステル系樹脂組成物によるコ-ティング薄膜(乾燥膜厚、4.0g/m^(2) )を形成し、本発明にかかるバリア性ナイロンフィルムを製造した。
更に、上記で製造したバリア性ナイロンフィルムのコ-ティング薄膜の面に、グラビア印刷用インキ組成物を使用し、グラビア印刷方式で文字、図形、記号、絵柄からなる所望の印刷模様層を印刷した後、その印刷模様層を含む全面に、2液硬化型のポリウレタン系接着剤を、上記と同様に、ロ-ルコ-ト法を利用してコ-ティングし、次いで、熱乾燥させて、接着剤層(乾燥膜厚、1.0g/m^(2) )を形成した。
しかる後、上記で形成した接着剤層の面に、低密度ポリエチレンを使用し、これを厚さ60μmに溶融押出コ-トして、本発明にかかる積層材を製造した。
次に、上記の積層材を使用し、これを製袋機に装着して製袋し、三方シ-ル型のプラスチック製小袋を製造し、次いで、該そのプラスチック製小袋内に、ドレッシングを充填し、しかる後、その開口部をヒ-トシ-ルして内容物を充填包装した包装製品を製造した。
上記の包装製品は、バリア性に優れ、また、匂い等の漏れも認められず、保香性に優れ、長期間の保存、貯蔵性に優れ、かつ、流通適性にも優れている結果を得た。」

4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「二軸延伸ナイロン6フィルム」は、本願発明における「二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルム」に相当し、引用発明における「二軸延伸ナイロン6フィルムのコロナ処理面に」及び「2軸延伸ナイロン6フィルムの他方のコロナ処理面に」は、それぞれ本願発明における「二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの一方の面に」及び「二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの他方の面の上に」に相当する。
引用発明における「ヘキサメチルジシロキサン」及び「ヘリウム」は、それぞれ本願発明における「有機珪素化合物の1種以上からなる製膜用モノマ-ガス」及び「不活性ガス」に相当し、引用発明における「ヘキサメチルジシロキサン、酸素ガス、および、ヘリウムを含有する反応ガス」は、本願発明における「有機珪素化合物の1種以上からなる製膜用モノマ-ガス、酸素ガス、および、不活性ガスを含有する製膜用混合ガス組成物」に相当する。
引用発明における「ヘキサメチルジシロキサン、酸素ガス、および、ヘリウムを含有する反応ガスを使用し、プラズマ化学気相成長装置を用いて形成した酸化珪素の蒸着膜」と、本願発明における「少なくとも2室以上の製膜室を使用し、かつ、各室毎に、少なくとも、有機珪素化合物の1種以上からなる製膜用モノマ-ガス、酸素ガス、および、不活性ガスを含有する製膜用混合ガス組成物の各ガス成分の混合比を変えて調製した2以上の製膜用混合ガス組成物を使用し、その各製膜用混合ガス組成物を使用して製膜した2層以上のプラズマ化学気相成長法による炭素含有酸化珪素層からなり、更に、該各炭素含有酸化珪素層は、その膜中に炭素原子を含有し、かつ、各炭素含有酸化珪素層毎に炭素含有量が異なることからなる有機含有酸化珪素層」とは、「有機珪素化合物の1種以上からなる製膜用モノマ-ガス、酸素ガス、および、不活性ガスを含有する製膜用混合ガス組成物を使用して成膜したプラズマ化学気相成長法による酸化珪素層」である点で共通する。
引用発明における「ガスバリア性組成物を、上記のプラズマ処理面にコーティングし、加熱処理して、ガスバリア性塗布膜を形成して」という事項と、本願発明における「該有機含有酸化珪素層の上に」「ガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設け」という事項とは、酸化珪素層の上にガスバリア性塗布膜を設ける点で共通する。
引用発明における「テトラ-i-プロポキシチタン」は、本願発明における「一般式R^(1) n M(OR^(2) )m (ただし、式中、R^(1) 、R^(2) は、炭素数1?8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される」「アルコキシド」に相当し、引用発明における「(A)成分として、エチレン・ビニルアルコール共重合体及びポリビニルピロリドンを含む水/n-プロピルアルコール溶液と、
(B)成分として、テトラ-i-プロポキシチタンとアセチルアセトンを60℃で30分間攪拌して得たチタンキレート化合物と、n-プロピルアルコール、および水を混合して、55℃で4時間加水分解したものと、
更に、N,N-ジメチルホルムアミドとを、40℃で混合して2時間攪拌して得たガスバリア性組成物を、上記のプラズマ処理面にコーティングし、加熱処理して、ガスバリア性塗布膜を形成し」という事項は、本願発明における「一般式R^(1) n M(OR^(2) )m (ただし、式中、R^(1)、R^(2) は、炭素数1?8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ-ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設け」という事項に相当する。
引用発明における「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本願発明における「2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルム」に相当し、引用発明における「他方、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、印刷模様を印刷して印刷模様層を形成し、この印刷模様層を含む全面にラミネ-ト用接着剤層を形成し、このラミネ-ト用接着剤層の面に、上記のバリア性基材を、そのガスバリア性塗布膜の面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その両者をドライラミネ-トし」という事項と、本願発明における「更にまた、該ガスバリア性塗布膜の上に、ポリウレタン系樹脂またはポリエステル系樹脂をビヒクルの主成分とし、これにシランカップリング剤および充填剤を添加し、溶媒、希釈剤を加えて充分に混合してなる樹脂組成物によるプライマ-剤層を設け、そして、上記のプライマ-剤層の上に、印刷模様を形成した後、ラミネ-ト用接着剤層を介して、2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムを積層し」という事項とは、「印刷模様を形成し、ガスバリア性塗布膜と2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムとをラミネ-ト用接着剤層を介して積層」する点で共通する。
引用発明における「次に、上記の2軸延伸ナイロン6フィルムの他方のコロナ処理面に、ラミネ-ト用接着剤層を形成し、このラミネ-ト用接着剤層の面に無延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネ-トして積層して」という事項は、本願発明における「他方、上記の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの他方の面の上に、ラミネ-ト用接着剤層を介して、無延伸ポリプロピレンフィルムを積層する」という事項に相当する。
引用発明における「積層材」は「レトルト用パウチを構成する」ものであるから、レトルト処理包装用という用途に用いられることは明らかであり、引用発明における「レトルト用パウチを構成する積層材」と、本願発明における「ボイル・レトルト処理包装用積層材」とは、「レトルト処理包装用の積層材」である点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
「二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの一方の面に、有機珪素化合物の1種以上からなる製膜用モノマ-ガス、酸素ガス、および、不活性ガスを含有する製膜用混合ガス組成物を使用して成膜したプラズマ化学気相成長法による酸化珪素層を設け、
更に、該酸化珪素層の上に、一般式R^(1) n M(OR^(2) )m (ただし、式中、R^(1)、R^(2) は、炭素数1?8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ-ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設け、
印刷模様を形成し、ガスバリア性塗布膜と2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムとをラミネ-ト用接着剤層を介して積層し、
他方、上記の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの他方の面の上に、ラミネ-ト用接着剤層を介して、無延伸ポリプロピレンフィルムを積層する
レトルト処理包装用の積層材。」

[相違点1]
「有機珪素化合物の1種以上からなる製膜用モノマ-ガス、酸素ガス、および、不活性ガスを含有する製膜用混合ガス組成物を使用して成膜したプラズマ化学気相成長法による酸化珪素層」が、本願発明においては「少なくとも2室以上の製膜室を使用し、かつ、各室毎に、少なくとも、有機珪素化合物の1種以上からなる製膜用モノマ-ガス、酸素ガス、および、不活性ガスを含有する製膜用混合ガス組成物の各ガス成分の混合比を変えて調製した2以上の製膜用混合ガス組成物を使用し、その各製膜用混合ガス組成物を使用して製膜した2層以上のプラズマ化学気相成長法による炭素含有酸化珪素層からなり、更に、該各炭素含有酸化珪素層は、その膜中に炭素原子を含有し、かつ、各炭素含有酸化珪素層毎に炭素含有量が異なることからなる有機含有酸化珪素層」であるのに対し、引用発明においては「ヘキサメチルジシロキサン、酸素ガス、および、ヘリウムを含有する反応ガスを使用し、プラズマ化学気相成長装置を用いて形成した酸化珪素の蒸着膜」である点。

[相違点2]
印刷模様を形成し、ガスバリア性塗布膜と2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムとをラミネ-ト用接着剤層を介して積層する態様が、本願発明においては「該ガスバリア性塗布膜の上に、ポリウレタン系樹脂またはポリエステル系樹脂をビヒクルの主成分とし、これにシランカップリング剤および充填剤を添加し、溶媒、希釈剤を加えて充分に混合してなる樹脂組成物によるプライマ-剤層を設け、
そして、上記のプライマ-剤層の上に、印刷模様を形成した後、ラミネ-ト用接着剤層を介して、2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムを積層し」という態様であるのに対し、引用発明においては、「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、印刷模様を印刷して印刷模様層を形成し、この印刷模様層を含む全面にラミネ-ト用接着剤層を形成し、このラミネ-ト用接着剤層の面に、上記のバリア性基材を、そのガスバリア性塗布膜の面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その両者をドライラミネ-トし」という態様である点。

[相違点3]
本願発明においては、積層材が「ボイル・レトルト処理包装用積層材」であるのに対し、引用発明においては「レトルト用パウチを構成する積層材」である点。

上記相違点について検討する。

[相違点1について]
刊行物2には、バリア性フィルムにおけるバリア性層の構成として、上記相違点1に係る「少なくとも2室以上の製膜室を使用し、かつ、各室毎に、少なくとも、有機珪素化合物の1種以上からなる製膜用モノマ-ガス、酸素ガス、および、不活性ガスを含有する製膜用混合ガス組成物の各ガス成分の混合比を変えて調製した2以上の製膜用混合ガス組成物を使用し、その各製膜用混合ガス組成物を使用して製膜した2層以上のプラズマ化学気相成長法による炭素含有酸化珪素層からなり、更に、該各炭素含有酸化珪素層は、その膜中に炭素原子を含有し、かつ、各炭素含有酸化珪素層毎に炭素含有量が異なることからなる有機含有酸化珪素層」が記載されている(上記3(2)ア)。
そして、上記刊行物2の「バリア性層」は、ポリアミド系樹脂フィルムの一方の面にプラズマ化学気相成長法によって形成した珪素酸化物層である点で引用発明の「酸化珪素の蒸着膜」と共通するものであり、ボイルあるいはレトルト食品等の包装に用いられる(上記3(2)オ)から、技術分野も引用発明と共通する。
また、刊行物1には、「酸化珪素の蒸着膜」の形成法に関し、2層以上の多層膜とすること(上記3(1)ウ、エ)、酸化珪素の蒸着膜中に含有される化合物の種類、量等を変化させることができること、前記化合物の含有量が、酸化珪素の蒸着膜の表面から深さ方向に向かって変化させること(上記3(1)オ)が記載されており、刊行物2の「バリア性層」と共通する構成が開示されている。
上記のような共通点に加え、刊行物2には、上記構成の「バリア性層」が、2層以上を積層させて更に高いガスバリア性を得ることができ、クラックの発生原因となる異物、塵埃等が製膜層間に混入することを防止することができ、かつ、そのバリア性の低下も認められず、酸素ガス、水蒸気等の透過を完全に阻止することができるという種々の利点を有する旨が示されている(上記3(2)ウ)。
そして、引用発明の「酸化珪素の蒸着膜」は、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性を有するものであり(上記3(1)キ)、そのバリア性を高めることは、当業者が普通に考慮する事項である。
以上のことから、引用発明において、「酸化珪素の蒸着膜」について、そのバリア性を高めるべく、刊行物2の「バリア性層」の構成を採用し、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2について]
包装用積層材において、印刷模様層や樹脂フイルムを積層するに際して、予めプライマー剤層を設けることは当業者が必要に応じて適宜になし得ることであり、また、プライマー剤層を形成するための材料は当業者が適宜に設計し得る事項である。現に、刊行物1には、バリア性基材を構成するガスバリア性塗布膜の上に、プライマ-剤層等を設けることが記載され(上記3(1)ウ)、さらに、プライマ-剤層の材料として、ポリウレタン系樹脂またはポリエステル系樹脂をビヒクルの主成分とし、これにシランカップリング剤および充填剤を添加し、溶媒、希釈剤を加えて充分に混合してなる樹脂組成物を用いることも記載されている(上記3(1)カ)。
また、包装用積層材において、印刷模様をどの層の上に設けるかは当業者が適宜に設定し得る事項であり、刊行物2には、ポリアミド樹脂フィルムにバリア性層を積層した包装用積層材において、前記バリア性層の上に、刊行物1に記載されたプライマー剤層の材料と同様の組成物を用いたコーティング膜を設け、このコーティング膜の上に印刷模様を形成し、さらにその上に接着剤層を介して樹脂フィルムを積層することが記載されている(上記3(2)イ、エ、カ)。
以上のことから、引用発明において、印刷模様を形成し、ガスバリア性塗布膜と2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムとをラミネ-ト用接着剤層を介して積層する態様として、「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、印刷模様を印刷して印刷模様層を形成し、この印刷模様層を含む全面にラミネ-ト用接着剤層を形成し、このラミネ-ト用接着剤層の面に、上記のバリア性基材を、そのガスバリア性塗布膜の面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その両者をドライラミネ-トし」という態様を、「ガスバリア性塗布膜の上に、ポリウレタン系樹脂またはポリエステル系樹脂をビヒクルの主成分とし、これにシランカップリング剤および充填剤を添加し、溶媒、希釈剤を加えて充分に混合してなる樹脂組成物によるプライマ-剤層を設け、そして、上記のプライマ-剤層の上に、印刷模様を形成した後、ラミネ-ト用接着剤層を介して、2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムを積層し」という態様に変更して、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点3について]
刊行物1には、引用発明の積層材を用いて製造した包装用袋について、「温度、120℃、圧力、2.1Kgf/cm^(2) ・G、時間、30分間からなるレトルト処理条件」でレトルト処理を行いレトルト食品を製造することが記載され、その包装用袋が、耐熱性、耐圧性、耐水性、バリア性、ヒ-トシ-ル性、耐ピンホ-ル性、突き刺し性、透明性等に優れ、更に、酸素ガス、水蒸気等に対するバリア性に優れ、破袋ないし内容物の漏れ等も認められないものであることが記載されている(上記3(1)ク)。上記のようなレトルト処理条件で処理されることが想定され、かつ、耐水性等に優れている引用発明の積層材は、90?100℃で5?20分程度で行われる(本願明細書の【0102】)ボイル処理にも適用できるであろうことは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、引用発明の積層材について、ボイル処理用の包装材の用途を追加して、上記相違点3に係る本願発明の構成のように「ボイル・レトルト処理包装用積層材」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明によって、当業者が予期し得ない格別顕著な効果が奏されるとは認められない。

以上のことから、上記相違点1ないし3に係る本願発明の構成は、いずれも当業者が容易に想到し得たものであり、これら相違点について総合判断しても、本願発明は、引用発明並びに刊行物1及び刊行物2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといわざるをえない。

請求人は、「刊行物1にも刊行物2にも、本願発明のように、『ボイル・レトルト処理包装用積層材』であって、基材フィルムとして、『ポリアミド系樹脂フィルム』を使用した場合の特有の課題については、何ら記載/示唆されていない。刊行物2を刊行物1などと組み合わせるという動機付け、論理付けはできないものである。」旨主張する。
しかしながら、上記したとおり、引用発明に刊行物2に記載された事項を組み合わせることを動機づけるものは存在するのであり、請求人の主張は採用できない。

5.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明並びに刊行物1及び刊行物2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-11 
結審通知日 2013-10-15 
審決日 2013-10-30 
出願番号 特願2006-201532(P2006-201532)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河原 肇  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 紀本 孝
熊倉 強
発明の名称 バリア性フィルムおよびそれを使用した積層材  
代理人 立石 英之  
代理人 藤枡 裕実  
代理人 深町 圭子  
代理人 伊藤 裕介  
代理人 伊藤 英生  
代理人 後藤 直樹  

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