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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1282970
審判番号 不服2013-10210  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-04 
確定日 2013-12-12 
事件の表示 特願2010- 48523「光反射体およびそれを用いた面光源装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月 2日出願公開、特開2010-191436〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年6月18日(優先権主張平成15年6月19日)に出願した特願2004-180901号の一部を平成22年3月5日に新たな特許出願としたものであって、平成22年3月5日付けで手続補正がなされ、平成25年2月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月4日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。
なお、審判請求人は、当審における平成25年7月29日付け審尋に対して、同年9月17日付けで回答書を提出している。

第2 平成25年6月4日付け手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成25年6月4日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成25年6月4日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、本件補正前の請求項1に、

「ポリオレフィン系樹脂と粒径が1.5μm以下であるフィラーを含有し、少なくとも1軸方向に延伸され、かつ面積延伸倍率が1.3?80倍である基材層(A)とポリオレフィン系樹脂を含む層(B)よりなる積層フィルムを有し、全光線反射率が95%以上であり、表面強度が250g以上であり、ポリオレフィン系樹脂を含む層(B)の肉厚が2μm以上であることを特徴とする光反射体。」とあったものを、

「ポリオレフィン系樹脂と粒径が1.5μm以下であるフィラーを含有し、少なくとも1軸方向に延伸され、かつ面積延伸倍率が1.3?80倍である基材層(A)とポリオレフィン系樹脂を含む層(B)よりなる積層フィルムを有し、全光線反射率が96.2%以上であり、表面強度が250g以上であり、ポリオレフィン系樹脂を含む層(B)の肉厚が2μm以上であることを特徴とする光反射体。」とする補正を含むものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「全光線反射率」の範囲「95%以上」を、「96.2%以上」に限定するものである。

2 本件補正の目的
上記1(1)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された「本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2002-31704号公報(以下「引用例」という。)」には次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光反射体に関するものである。詳しくは光源光を反射して高輝度を実現させる光反射体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】内蔵式光源を配置したバックライト型の液晶ディスプレイが広く普及している。バックライト型のうちサイドライト方式の典型的な構成は、図1に示すとおりであり、透明なアクリル板3に網点印刷2を行った導光板、その片面に設置した光反射体1、拡散板4そして、導光板サイドに接近した冷陰極ランプ5からなる。導光板サイドより導入された光は網点印刷部分で発光され、光反射体1で光の反射、洩れを防ぎ、拡散板4で均一面状な光を形成する。
【0003】このようなバックライトユニットにおいて、光反射体は、内蔵式光源の光を表示のために効率的に利用できるようにするとともに、それぞれの目的にあった表示を実現するために機能する。一般に、ギラギラとした鏡面反射は嫌われるため、散乱反射による面方向に比較的均一な輝度を実現し、見る人に自然な感じを与えることが必要とされる。とくに液晶ディスプレイのサイドライト方式に用いられる反射板は、導光板から裏抜けする光を面方向に輝度ムラなく、均一に反射させることが要求される。
【0004】従来から、光反射体の輝度を向上させるために、酸化チタンなどの白色顔料や蛍光増白剤を光反射体を構成するフィルムに添加することが知られている。また、光透過防止と鏡面反射の防止を兼ねて、アルミ等の金属板上に酸化チタン等の白色顔料を塗布することも知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来から知られている光反射体は、光学的特徴を有する成分を使用することにより輝度を始めとする光学的機能の調節を行っていた。本発明は、このような光学的特徴を有する成分を用いることに視点を置かず、光反射体の構造に特徴を持たせることにより、輝度の向上を安価に実現することを課題とした。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、導光板サイドから導入された光が屈折、反射する際、真円に近い微細なレンズを多数敷きつめた構造を有する光反射体を実現すれば、効率良い反射が実現し、輝度の向上が図れるものと考えた。そして、微細なレンズの機能を延伸により形成する微細な空隙に持たせれば、安価に課題を解決することができることを見い出し、さらに輝度が1200cd/m^(2)以上であるものは導光板から裏抜けする光を面方向に輝度ムラなく、均一に反射させるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0007】即ち、本発明は、ポリオレフィン系樹脂とフィラーを含有する2軸延伸フィルムを有する光反射体であって、前記フィラーが平均粒径が0.1?8μmである無機フィラー及び/または平均分散粒径が0.1?8μmである有機フィラーであり、前記2軸延伸フィルムの面積延伸倍率が16?80倍であり、かつ輝度が1200cd/m^(2)以上である光反射体を提供するものである。
【0008】2軸延伸フィルムにおけるフィラーの体積比率は3.0?35体積%であることが好ましく、無機フィラーを使用する場合は、比表面積が20,000cm^(2)/g以上であり、かつ粒径10μm以上の粒子を含まない炭酸カルシウムを選択することが好ましい。また、2軸延伸フィルムの縦方向延伸倍率L_(MD)と横方向延伸倍率L_(CD)の比であるL_(MD)/L_(CD)は0.25?2.7であることが好ましい。空孔率は15?60%であり、JIS P-8138の不透明度は90%以上であることが好ましい。また、2軸延伸フィルムが多層構造を有することが好ましく、2軸延伸フィルムの表裏面には保護層が形成されていてもよい。なお、本明細書において「?」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。」

(2)「【0009】
【発明の実施の形態】本発明の光反射体は、ポリオレフィン系樹脂とフィラーを含有する2軸延伸フィルムを有する。その特徴は、前記フィラーが平均粒径が0.1?8μmである無機フィラー及び/または平均分散粒径が0.1?8μmである有機フィラーであること、前記2軸延伸フィルムの面積延伸倍率が16?80倍であること、および輝度が1200cd/m^(2)以上であることにある。これらの条件を満たす光反射体を用いれば、安価に輝度の向上を図り、明るいバックライトを実現することができる。以下において、本発明の光反射体の構成および効果を詳細に説明する。
【0010】ポリオレフィン系樹脂
本発明の光反射体に用いられるポリオレフィン系樹脂の種類は特に制限されない。例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、あるいはプロピレン系樹脂等が挙げられる。これらは2種以上混合して用いることもできる。ポリオレフィン系樹脂の中では、プロピレン系樹脂が、耐薬品性、コストの面などから好ましい。
【0011】プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体や、主成分であるプロピレンと、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン,4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィンとの共重合体が使用される。立体規則性は特に制限されず、アイソタクティックないしはシンジオタクティック及び種々の程度の立体規則性を示すものを用いることができる。また、共重合体は2元系でも3元系でも4元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。
【0012】このようなポリオレフィン系樹脂は、2軸延伸フィルム中に38?91.5重量%で使用することが好ましく、44?89重量%で使用することがより好ましく、50?86重量%で使用することがさらに好ましい。
【0013】フィラー
本発明に熱可塑性樹脂とともに用いられるフィラーとしては、各種無機フィラーまたは有機フィラーを使用することができる。無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ等が挙げられる。有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン-6、ナイロン-6,6、環状オレフィン重合体、環状オレフィンとエチレンとの共重合体等のポリオレフィン樹脂の融点よりは高い融点(例えば、170?300℃)ないしはガラス転移温度(例えば、170?280℃)を有するものが使用される。
【0014】2軸延伸フィルムには、上記の無機フィラーまたは有機フィラーの中から1種を選択してこれを単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合には、有機フィラーと無機フィラーを混合して使用してもよい。
【0015】後述する延伸成形により発生させる空隙サイズの調整のため、上記無機フィラーの平均粒径、または有機フィラーの平均分散粒径は好ましくはそれぞれが0.1?8μmの範囲、より好ましくはそれぞれが0.3?5μmの範囲のものを使用する。平均粒径、または平均分散粒径がこれより大きい場合、空隙が不均一となる傾向がある。また、平均粒径、または平均分散粒径がこれより小さい場合、所定の空隙が得られなくなる傾向がある。本明細書でいう「無機フィラーの平均粒径」は、測定装置((株)島津製作所製:SS-100形)で測定した比表面積を用いて下記計算式により算出したものである。なお、下記計算式において真比重は空気を含まない状態の無機フィラーの比重である。
【数2】
平均粒径(μm)= 6 / 真比重×比表面積
また、本明細書でいう「有機フィラーの平均分散粒径」は、断面の電子顕微鏡写真観察により求めたものである。具体的には、多層樹脂延伸フィルムをエポキシ樹脂で包埋して固化させた後、ミクロトームを用いて、例えばフィルムの厚さ方向に対して平行かつ面方向に垂直な切断面を作製し、この切断面をメタライジングした後、走査型電子顕微鏡で観察しやすい任意の倍率(例えば500?2000倍)に拡大して観察して求めたものである。
【0016】また、好ましい空隙を形成するためには、例えば比表面積が20,000cm^(2)/g以上で、かつ粒径10μm以上(レーザー回折式粒子計測装置「マイクロトラック」により測定した値)の粒子を含まない無機フィラーを使用するのが効果的である。特に、このような条件を満たす粒度分布がシャープな炭酸カルシウムを使用するのが好ましい。
【0017】後述する延伸成形により発生させる空隙量の調整のため、2軸延伸フィルム中への上記フィラーの配合量は体積換算で好ましくは3.0?35体積%、より好ましくは4.0?30体積%の範囲で使用できる。フィラーの配合量がこれより少ない場合、充分な空隙数が得られなくなる傾向がある。また、フィラーの配合量がこれより多い場合、剛度不足による折れシワが生じやすくなる傾向がある。本発明で用いる2軸延伸フィルムは、単層構造であっても、多層構造であってもよい。フィルム成形時の配合組成などの自由度から多層構造であることが好ましい。多層構造が、例えば、表面層/基材層/裏面層の3層構造からなり、基材層を構成する主要な樹脂がプロピレン系樹脂の場合、延伸性を改良するために、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル等のプロピレン系樹脂より低融点の樹脂を3?25重量%配合するのが好ましい。また、基材層には無機フィラーとして二酸化チタンを0.5?10重量%、好ましくは0.5?8.5重量%含有させてもよい。表裏面層には無機フィラーとして二酸化チタンを1重量%未満、好ましくは0.1?0.9重量%含有させてもよい。二酸化チタンの配合量の上限を超えると、光反射体の白色度に影響をきたし輝度低下を招くと共に、液晶表示の色調及びコントラストが不明瞭となる傾向がある。表裏面層の肉厚は0.1μm以上、好ましくは0.1μm以上1.5μm未満であり、かつ光反射体の全厚の15%未満、好ましくは1?10%、更に好ましくは1?5%である。
・・・(中略)・・・
【0019】成形
ポリオレフィン系樹脂およびフィラーを含む配合物の成形方法としては、一般的な2軸延伸方法が使用できる。具体例としてはスクリュー型押出機に接続された単層または多層のTダイやIダイを使用して溶融樹脂をシート状に押し出した後、ロール群の周速差を利用した縦延伸とテンターオーブンを使用した横延伸を組み合わせた2軸延伸方法や、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時2軸延伸などが挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0021】2軸延伸フィルム中に発生させる空隙の大きさを調整するために、面積延伸倍率=(縦方向延伸倍率L_(MD))×(横方向延伸倍率L_(CD))は好ましくは16?80倍の範囲とし、より好ましくは25?70倍の範囲とする。
【0022】2軸延伸フィルム中に発生させる空隙のアスペクト比を調整するために、縦方向延伸倍率L_(MD)及び横方向延伸倍率L_(CD)の比L_(MD)/L_(CD)は好ましくは0.25?2.7の範囲とし、より好ましくは0.35?2.3の範囲とする。面積延伸倍率そして、L_(MD)/L_(CD)がこの範囲を逸脱する場合、真円に近い微細な空隙が得られにくくなる傾向がある。
【0023】本発明の反射板中に発生させる空隙の単位体積あたりの量を調整するために、空孔率は好ましくは15?60%、より好ましくは20?55%の範囲とする。本明細書において「空孔率」とは、下記式(1)にしたがって計算される値を意味する。式(1)のρ_(0)は真密度を表し、ρは密度(JIS P-8118)を表す。延伸前の材料が多量の空気を含有するものでない限り、真密度は延伸前の密度にほぼ等しい。本発明で用いる2軸延伸フィルムの密度は一般に0.55?1.20g/cm^(3)の範囲であり、空隙が多いほど密度は小さくなり空孔率は大きくなる。空孔率が大きい方が表面の反射特性も向上させることができる。
【0024】
【数3】
ρ_(0)-ρ
空孔率(%) = ???????? × 100
ρ_(0)
【0025】延伸後の2軸延伸フィルムの肉厚は、好ましくは50?400μm、より好ましくは80?300μmである。肉厚がこれより薄いと光の裏抜けが生じる傾向がある。また、肉厚がこれより厚いとバックライトユニットが厚くなり過ぎるきらいがある。本発明の不透明度(JIS P-8138)は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。90%未満では、光の裏抜けが生じる傾向がある。
【0026】保護層
得られた2軸延伸フィルムはそのままでも本発明の光反射体として用いることができるが、成形、加工使用時での発生が懸念されるキズや汚れ付着の防止のために、2軸延伸フィルムの表裏面にはその光学特性を損ねない範囲でさらに保護層を設けたうえで光反射体として用いることもできる。保護層は、2軸延伸フィルムの片面に形成しても両面に形成してもよい。
【0027】保護層の形成方法としては、上記2軸延伸フィルムの延伸成型前に多層TダイやIダイを使用して保護層の溶融原料を共押し出しし、得られた積層体を2軸延伸成形して設ける方法、上記2軸延伸フィルムの1軸方向の延伸が終了したのち、保護層の溶融原料を押し出し貼合し、この積層体を1軸延伸成形して設ける方法、上記2軸延伸フィルムを延伸成形して得た後に保護層の原料塗料を直接または間接的に塗布、乾燥や硬化して設ける方法等が挙げられる。
【0028】上記2軸延伸フィルムと同時に2軸もしくは1軸方向に延伸成形して設ける保護層には、光反射体に使用されるものと同じポリオレフィン系樹脂およびフィラーが使用できる。・・・(中略)・・・
【0030】本発明の光反射体の保護層は2軸延伸フィルムの光学特性を損ねないように、厚さとしては片面あたり好ましくは0.2?80μm、より好ましくは2?60μmの範囲で設けることが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0032】光反射体
本発明の光反射体の形状は特に制限されず、使用目的や使用態様に応じて適宜決定することができる。通常は、板状やフィルム状にして使用するが、その他の形状で使用した場合であっても光反射体として使用するものである限り、本発明の範囲内に包含される。
【0033】本発明の光反射体は、バックライト型、中でもサイドライト方式の表示装置を構成する光反射体として極めて有用である。本発明の光反射体を用いたサイドライト方式の液晶表示装置は、導光板から裏抜けする光を光反射体が面方向に輝度ムラなく均一に反射させるため、見る人に自然な感じを与えることができる。本発明の光反射体は、このようなバックライト型液晶表示装置のみならず、内蔵式光源を使用せずに室内光を反射させることを意図した低消費電力型の表示装置にも利用することが可能である。また、室内外照明用、電飾看板用光源の背面にも幅広く利用することができる。」

(3)「【0034】
【実施例】以下に実施例、比較例及び試験例を記載して、本発明をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適時変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0035】
(実施例1?4および比較例1?2)プロピレン単独重合体、高密度ポリエチレンおよび重質炭酸カルシウムを表1に記載の量で混合した組成物(A)と、プロピレン単独重合体および重質炭酸カルシウムを表1に記載の量で混合した組成物(B)とを、それぞれ別々の3台の押出機(組成物(B)については2台使用)を用いて250℃で溶融混練した。その後、一台の共押ダイに供給してダイ内で(A)の両面に(B)を積層後、シート状に押し出し、冷却ロールで約60℃まで冷却することによって積層物を得た。
【0036】この積層物を145℃に再加熱した後、多数のロール群の周速差を利用して縦方向に表1に記載の倍率で延伸し、再び約150℃まで再加熱してテンターで横方向に表1に記載の倍率で延伸した。その後、160℃でアニーリング処理した後、60℃まで冷却し、耳部をスリットして表1に記載の厚みを有する三層構造の光反射体を得た。
【0037】なお、比較例1および2については、ダイスのリップ開度を調整することにより、積層物を縦方向にのみ6倍に延伸して、表1に記載の厚みを有する一軸延伸フィルムよりなる光反射体を得た。
【0038】(実施例5)上に記載される方法により製造した積層物を145℃に再加熱した後、多数のロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸した。プロピレン単独重合体および重質炭酸カルシウムを表1に記載の量で混合した組成物(C)を2つの押出機で溶融混練し、得られた5倍延伸シートの両面に(C)が外側になるようにダイ内で共押し出しして積層した。ついでこの積層物を160℃に加熱したのち横方向に7.5倍の延伸を行って、表裏面に保護層を設けた光反射体を得た。
【0039】(実施例6?8)プロピレン単独重合体、高密度ポリエチレン、重質炭酸カルシウムおよび平均粒径0.2μmの二酸化チタンを表1に記載の量で混合した組成物(A)と、プロピレン単独重合体、重質炭酸カルシウムおよび平均粒径0.2μmの二酸化チタンを表1に記載の量で混合した組成物(B)とを、それぞれ別々の3台の押出機(組成物(B)については2台使用)を用いて250℃で溶融混練した。その後、一台の共押ダイに供給してダイ内で(A)の両面に(B)を積層後、シート状に押し出し、冷却ロールで約60℃まで冷却することによって積層物を得た。
【0040】(試験例)製造した実施例1?8および比較例1?2の光反射体について、不透明度、空孔率および輝度を測定した。不透明度は、測定装置(スガ試験機(株)製:SM-5)を用いて、JISP-8142の試験を行うことによって測定した。空孔率は、JIS P-8118にしたがって密度および真密度を測定し、上記の空孔率算出式により計算して求めた。輝度は、図1に示すように白色網点印刷2を施したアクリル板3(導光板)に光反射体1をセットし、片側端面より冷陰極ランプ5(ハリソン社(製)インバーターユニット、12V、6mA管電流下)を照射して、輝度計6(ミノルタカメラ(株)製:LS110型)により測定した。これらの各測定結果を表1にまとめて示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【発明の効果】以上のように、本発明の光反射体によれば、光学的特徴を有する成分に頼らずに、安価に輝度の向上を図ることができる。このため、本発明の光反射体をバックライト装置に使用すれば、従来よりも輝度が高く、明るいバックライトが実現できる。」

(4)【0041】の【表1】から、実施例6が「(B)(A)(B)」という3層構造を有し、基材層(A)の厚みが「134μm」で表裏面層(B)の厚みがそれぞれ「0.5μm」で全厚が「135μm」であり、面積延伸倍率が縦5倍、横9倍の45倍であり、基材層(A)の組成及び表裏面層(B)の組成が次のとおりであり、輝度が1360cd/m^(2)であることが見て取れる。
[基材層(A)の組成]
・PP1:MFR(230℃、2.16kg荷重)が0.8g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製) 62重量%
・HDPE:高密度ポリエチレン(日本ポリケム(株)製、HJ381P) 10重量%
・CaCO_(3)(a):平均粒径0.89μm、比表面積25,000cm^(2)/g、粒径5μm以上の粒子を含まない重質炭酸カルシウム 25重量%
・TiO_(2):平均粒径0.2μmの二酸化チタン 3重量%
[表裏面層(B)の組成]
・PP2:MFR(230℃、2.16kg荷重)が4g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製) 70重量%
・CaCO_(3)(a):平均粒径0.89μm、比表面積25,000cm^(2)/g、粒径5μm以上の粒子を含まない重質炭酸カルシウム 29.5重量%
・TiO_(2):平均粒径0.2μmの二酸化チタン 0.5重量%

(5)【0041】の【表1】から、保護層を設けた実施例が「実施例5」のみであり、当該実施例5が、基材層(A)の厚みが「118μm」で、表裏面層(B)の厚みがそれぞれ「1μm」の2軸延伸フィルムの表裏面に、厚みがそれぞれ「40μm」の保護層(C)を形成した、全厚が「200μm」の「(C)(B)(A)(B)(C)」という5層構造を有するものであり、面積延伸倍率が縦5倍、横7.5倍の37.5倍であり、基材層(A)の組成、表裏面層(B)の組成及び保護層(C)の組成が次のとおりであり、輝度が1220cd/m^(2)であることが見て取れる。
[基材層(A)の組成]
・PP1:MFR(230℃、2.16kg荷重)が0.8g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製) 75重量%
・HDPE:高密度ポリエチレン(日本ポリケム(株)製、HJ381P) 10重量%
・CaCO_(3)(b):平均粒径1.8μm、比表面積12,500cm^(2)/gの重質炭酸カルシウム 15重量%
[表裏面層(B)の組成]
・PP2:MFR(230℃、2.16kg荷重)が4g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製) 97重量%
・CaCO_(3)(b):平均粒径1.8μm、比表面積12,500cm^(2)/gの重質炭酸カルシウム 3重量%
[保護層(C)の組成]
・PP2:MFR(230℃、2.16kg荷重)が4g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製) 55重量%
・CaCO_(3)(b):平均粒径が1.8μm、比表面積が12,500cm^(2)/gの重質炭酸カルシウム 45重量%

(6)上記(1)ないし(4)から、引用例には、実施例6に係る発明として、次の発明が記載されているものと認められる。
「ポリオレフィン系樹脂とフィラーを含有し、延伸により微細な空隙を形成した2軸延伸フィルムを有し、
前記空隙のサイズの調整のため、前記フィラーとして平均粒径が0.1?8μmの範囲の無機フィラーを使用し、
前記空隙の大きさを調整するために、前記2軸延伸フィルムの面積延伸倍率を16?80倍の範囲とし、
輝度を1200cd/m^(2)以上とすることで、
酸化チタンなどの白色顔料や蛍光増白剤を光反射体を構成するフィルムに添加したり、アルミ等の金属板上に酸化チタン等の白色顔料を塗布したりするような従来の光反射体に比べて、輝度の向上を安価に実現した光反射体であって、
耐薬品性、コストの面などから、前記ポリオレフィン系樹脂としてプロピレン系樹脂を用いるとともに、延伸性を改良するために、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル等のプロピレン系樹脂より低融点の樹脂を3?25重量%配合し、
好ましい空隙を形成するために、前記無機フィラーとして比表面積が20,000cm^(2)/g以上で、かつ粒径10μm以上の粒子を含まない炭酸カルシウムを使用し、
フィルム成形時の配合組成などの自由度が高いことから、前記2軸延伸フィルムを表面層/基材層/裏面層の3層構造からなるものとし、
肉厚が薄いと光の裏抜けが生じる傾向があり、肉厚が厚いとバックライトユニットが厚くなり過ぎるきらいがあることから、延伸後の2軸延伸フィルムの肉厚を50?400μmとしたものであり、
具体的には、
下記組成の組成物(A)と組成物(B)とを、それぞれ別々の3台の押出機(組成物(B)については2台使用)を用いて250℃で溶融混練し、その後、一台の共押ダイに供給してダイ内で組成物(A)の両面に組成物(B)を積層後、シート状に押し出し、冷却ロールで約60℃まで冷却することによって積層物を得、この積層物を145℃に再加熱した後、多数のロール群の周速差を利用して縦方向に5倍で延伸し、再び約150℃まで再加熱してテンターで横方向に9倍で延伸し、その後、160℃でアニーリング処理した後、60℃まで冷却し、耳部をスリットして得られる、
基材層(A)の厚みが134μmで表裏面層(B)の厚みがそれぞれ0.5μmで全厚が135μmの、表面層(B)基材層(A)裏面層(B)という3層構造であり、面積延伸倍率が45倍であり、輝度が1360cd/m^(2)の2軸延伸フィルムからなる光反射体。

[組成物(A)の組成]
・MFR(230℃、2.16kg荷重)が0.8g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製) 62重量%
・高密度ポリエチレン(日本ポリケム(株)製、HJ381P) 10重量%
・平均粒径0.89μm、比表面積25,000cm^(2)/g、粒径5μm以上の粒子を含まない重質炭酸カルシウム 25重量%
・平均粒径0.2μmの二酸化チタン 3重量%

[組成物(B)の組成]
・MFR(230℃、2.16kg荷重)が4g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製) 70重量%
・平均粒径0.89μm、比表面積25,000cm^(2)/g、粒径5μm以上の粒子を含まない重質炭酸カルシウム 29.5重量%
・平均粒径0.2μmの二酸化チタン 0.5重量%」(以下「引用発明1」という。)

(7)また、上記(1)ないし(3)及び(5)から、引用例には、実施例5に係る発明として、次の発明が記載されているものと認められる。
「ポリオレフィン系樹脂とフィラーを含有し、延伸により微細な空隙を形成した2軸延伸フィルムを有し、
前記空隙のサイズの調整のため、前記フィラーとして平均粒径が0.1?8μmの範囲の無機フィラーを使用し、
前記空隙の大きさを調整するために、前記2軸延伸フィルムの面積延伸倍率を16?80倍の範囲の範囲とし、
輝度を1200cd/m^(2)以上とすることで、
酸化チタンなどの白色顔料や蛍光増白剤を光反射体を構成するフィルムに添加したり、アルミ等の金属板上に酸化チタン等の白色顔料を塗布したりするような従来の光反射体に比べて、輝度の向上を安価に実現した光反射体であって、
耐薬品性、コストの面などから、前記ポリオレフィン系樹脂としてプロピレン系樹脂を用いるとともに、延伸性を改良するために、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル等のプロピレン系樹脂より低融点の樹脂を3?25重量%配合し、
フィルム成形時の配合組成などの自由度が高いことから、前記2軸延伸フィルムを表面層/基材層/裏面層の3層構造からなるものとし、
肉厚が薄いと光の裏抜けが生じる傾向があり、肉厚が厚いとバックライトユニットが厚くなり過ぎるきらいがあることから、延伸後の2軸延伸フィルムの肉厚を50?400μmとし、
成形、加工使用時での発生が懸念されるキズや汚れ付着の防止のために、前記2軸延伸フィルムの表裏面に、その光学特性を損ねないように、厚さが片面あたり0.2?80μmの範囲で、ポリオレフィン系樹脂およびフィラーを使用した保護層を設けたものであり、
具体的には、
下記組成の組成物(A)と組成物(B)とを、それぞれ別々の3台の押出機(組成物(B)については2台使用)を用いて250℃で溶融混練し、その後、一台の共押ダイに供給してダイ内で(A)の両面に(B)を積層後、シート状に押し出し、冷却ロールで約60℃まで冷却することによって積層物を得、この積層物を145℃に再加熱した後、多数のロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸し、下記組成の組成物(C)を2つの押出機で溶融混練し、得られた5倍延伸シートの両面に(C)が外側になるようにダイ内で共押し出しして積層し、ついでこの積層物を160℃に加熱したのち横方向に7.5倍の延伸を行って得られる、
基材層(A)の厚みが118μmで、表裏面層(B)の厚みがそれぞれ1μmで、面積延伸倍率が37.5倍の2軸延伸フィルムの表裏面に、厚みがそれぞれ40μmの保護層(C)を形成した、全厚が200μmの、保護層(C)表面層(B)基材層(A)裏面層(B)保護層(C)という5層構造を有し、輝度が1220cd/m^(2)である、
光反射体。

[組成物(A)の組成]
・MFR(230℃、2.16kg荷重)が0.8g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製) 75重量%
・高密度ポリエチレン(日本ポリケム(株)製、HJ381P) 10重量%
・平均粒径1.8μm、比表面積12,500cm^(2)/gの重質炭酸カルシウム 15重量%

[組成物(B)の組成]
・MFR(230℃、2.16kg荷重)が4g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製) 97重量%
・平均粒径1.8μm、比表面積12,500cm^(2)/gの重質炭酸カルシウム 3重量%

[組成物(C)の組成]
・MFR(230℃、2.16kg荷重)が4g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製) 55重量%
・平均粒径が1.8μm、比表面積が12,500cm^(2)/gの重質炭酸カルシウム 45重量%」(以下「引用発明2」という。)

4 引用発明1との対比・判断
(1)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「『ポリオレフィン系樹脂』、『MFR(230℃、2.16kg荷重)が0.8g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製)』、『高密度ポリエチレン(日本ポリケム(株)製、HJ381P)』、『MFR(230℃、2.16kg荷重)が4g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製)』」、「平均粒径」、「『フィラー』、『平均粒径0.89μm、比表面積25,000cm^(2)/g、粒径5μm以上の粒子を含まない重質炭酸カルシウム』、『平均粒径0.2μmの二酸化チタン』」、「2軸延伸」、「面積延伸倍率」、「『基材層』、『基材層(A)』」、「『ポリオレフィン系樹脂とフィラーを含有』し『表面層/基材層/裏面層の3層構造からなるものとし』た『2軸延伸フィルム』の『表面層』及び『裏面層』、『MFR(230℃、2.16kg荷重)が4g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製)』を含む『表裏面層(B)』」、「『表面層/基材層/裏面層の3層構造からなるもの』とした『2軸延伸フィルム』」及び「光反射体」は、それぞれ、本願補正発明の「ポリオレフィン系樹脂」、「粒径」、「フィラー」、「少なくとも1軸方向に延伸」、「面積延伸倍率」、「基材層(A)」、「ポリオレフィン系樹脂を含む層(B)」、「積層フィルム」及び「光反射体」に相当する。

イ 引用発明1の「光反射体」において、「基材層(A)」は、「ポリオレフィン系樹脂」と「フィラー」を含有し、具体的には、第1の「ポリオレフィン系樹脂(MFR(230℃、2.16kg荷重)が0.8g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製))」を62重量%と、第2の「ポリオレフィン系樹脂(高密度ポリエチレン(日本ポリケム(株)製、HJ381P))」を10重量%と、「粒径(平均粒径)」が0.89μmの「フィラー(平均粒径0.89μm、比表面積25,000cm^(2)/g、粒径5μm以上の粒子を含まない重質炭酸カルシウム)」を25重量%と、「粒径」が0.2μmの「フィラー(平均粒径0.2μmの二酸化チタン)」を3重量%含有するものであって、「ポリオレフィン系樹脂を含む層(B)(表面層及び裏面層)」とともに、「面積延伸倍率」を16?80倍の範囲とした「積層フィルム(3層構造からなる2軸延伸フィルム)」を構成するものであり、「少なくとも1軸方向に延伸(2軸延伸)」されており、その「面積延伸倍率」の具体的な値「45倍」と本願補正発明の「基材層(A)」の「面積延伸倍率」の範囲「1.3?80倍」とは「45倍」の点で一致するから、引用発明1の「基材層(A)」と本願補正発明の「基材層(A)」とは「ポリオレフィン系樹脂と粒径が1.5μm以下であるフィラーを含有し、少なくとも1軸方向に延伸され、かつ面積延伸倍率が45倍である」点で一致し、引用発明1の「積層フィルム」と本願補正発明の「積層フィルム」とは「ポリオレフィン系樹脂と粒径が1.5μm以下であるフィラーを含有し、少なくとも1軸方向に延伸され、かつ面積延伸倍率が45倍である基材層(A)とポリオレフィン系樹脂を含む層(B)よりなる」点で一致し、引用発明1の「光反射体」と本願補正発明の「光反射体」とは「ポリオレフィン系樹脂と粒径が1.5μm以下であるフィラーを含有し、少なくとも1軸方向に延伸され、かつ面積延伸倍率が45倍である基材層(A)とポリオレフィン系樹脂を含む層(B)よりなる積層フィルムを有」する点で一致する。

ウ 上記ア及びイから、本願補正発明と引用発明1とは、
「ポリオレフィン系樹脂と粒径が1.5μm以下であるフィラーを含有し、少なくとも1軸方向に延伸され、かつ面積延伸倍率が45倍である基材層(A)とポリオレフィン系樹脂を含む層(B)よりなる積層フィルムを有する光反射体。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
前記「ポリオレフィン系樹脂を含む層(B)」の肉厚が、
本願補正発明では、2μm以上であるのに対して、
引用発明1では、具体的には0.5μmである点。

相違点2:
全光線反射率が、
本願補正発明では96.2%以上であるのに対して、
引用発明1では96.2%以上であるかどうか明らかでない点。

相違点3:
表面強度が、
本願補正発明では250g以上であるのに対して、
引用発明1では250g以上であるかどうか明らかでない点。

(2)判断
上記相違点1ないし3について検討する。
ア 相違点1及び相違点3について
(ア)引用例には上記3(7)のとおりの引用発明2も記載されている。
引用発明2は、
成形、加工使用時での発生が懸念されるキズや汚れ付着の防止のために、表面層/基材層/裏面層の3層構造からなる2軸延伸フィルムの表裏面に、その光学特性を損ねないように、厚さが片面あたり好ましくは0.2?80μmの範囲で、ポリオレフィン系樹脂およびフィラーを使用した保護層を設けた光反射体であって、
具体的には、組成物(A)と組成物(B)とを、それぞれ別々の3台の押出機(組成物(B)については2台使用)を用いて250℃で溶融混練し、その後、一台の共押ダイに供給してダイ内で(A)の両面に(B)を積層後、シート状に押し出し、冷却ロールで約60℃まで冷却することによって積層物を得、この積層物を145℃に再加熱した後、多数のロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸し、組成物(C)を2つの押出機で溶融混練し、得られた5倍延伸シートの両面に(C)が外側になるようにダイ内で共押し出しして積層し、ついでこの積層物を160℃に加熱したのち横方向に7.5倍の延伸を行って得られる、基材層(A)の厚みが118μmで、表裏面層(B)の厚みがそれぞれ1μmで、面積延伸倍率が37.5倍の2軸延伸フィルムの表裏面に、厚みがそれぞれ40μmの保護層(C)を形成した、全厚が200μmの、保護層(C)表面層(B)基材層(A)裏面層(B)保護層(C)という5層構造を有し、輝度が1220cd/m^(2)である光反射体である。

(イ)上記(ア)からみて、引用発明1において、成形、加工使用時での発生が懸念されるキズや汚れ付着の防止のために、引用発明1の表面層/基材層/裏面層の3層構造からなる2軸延伸フィルムの表裏面に、引用発明2と同様のポリオレフィン系樹脂およびフィラーを使用した保護層を設けること、具体的には、引用発明1において、縦方向に5倍で延伸して得られたシートの両面に、2つの押出機で溶融混練した、引用発明2と同様の、MFR(230℃、2.16kg荷重)が4g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製)を55重量%と平均粒径が1.8μmで比表面積が12,500cm^(2)/gの重質炭酸カルシウムを45重量%含有する組成物(C)を、当該組成物(C)が外側になるようにダイ内で共押し出しして積層することにより、表面層/基材層/裏面層の3層構造からなる面積倍率が45倍の2軸延伸フィルムの表裏面に、厚みがそれぞれ40μmの保護層(C)を形成した5層構造を有する光反射体とすることは、当業者が引用発明2に基づいて容易になし得た程度のことである。

(ウ)上記(イ)の、表面層/基材層/裏面層の3層構造からなる面積倍率が45倍の2軸延伸フィルムは、「ポリオレフィン系樹脂(MFR(230℃、2.16kg荷重)が0.8g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製))」を62重量%と、「ポリオレフィン系樹脂(高密度ポリエチレン(日本ポリケム(株)製、HJ381P))」を10重量%と、「粒径(平均粒径)」が0.89μmの「フィラー(平均粒径0.89μm、比表面積25,000cm^(2)/g、粒径5μm以上の粒子を含まない重質炭酸カルシウム)」を25重量%と、「粒径」が0.2μmの「フィラー(平均粒径0.2μmの二酸化チタン)」を3重量%含有する組成物(A)と、「ポリオレフィン系樹脂(MFR(230℃、2.16kg荷重)が4g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製))」を70重量%と、「粒径」が0.89μmの「フィラー(平均粒径0.89μm、比表面積25,000cm^(2)/g、粒径5μm以上の粒子を含まない重質炭酸カルシウム)」を29.5重量%と、「粒径」が0.2μmの「フィラー(平均粒径0.2μmの二酸化チタン)」を0.5重量%含有する組成物(B)とにより形成されているから、本願補正発明の「ポリオレフィン系樹脂と粒径が1.5μm以下であるフィラーを含有し、少なくとも1軸方向に延伸され、かつ面積延伸倍率が1.3?80倍である基材層(A)」に相当する。

(エ)上記(イ)の保護層(C)は、「ポリオレフィン系樹脂(MFR(230℃、2.16kg荷重)が4g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製))」を55重量%含有する組成物(C)により形成されており、その厚みは40μmであるから、本願補正発明の「肉厚が2μm以上である、ポリオレフィン系樹脂を含む層(B)」に相当する。

(オ)積層フィルムの表裏面に層を設けたものも積層フィルムであるから、上記(イ)の「積層フィルム(3層構造からなる2軸延伸フィルム)」の表裏面に「ポリオレフィン系樹脂を含む層(B)(保護層(C))」を設けた「積層フィルム」は、本願補正発明の「基材層(A)とポリオレフィン系樹脂を含む層(B)よりなる積層フィルム」に相当し、上記(イ)の5層構造の「光反射体」は、本願補正発明の「光反射体」と、「基材層(A)とポリオレフィン系樹脂を含む層(B)よりなる積層フィルムを有」する点で一致する。

(カ)上記(イ)の5層構造の「光反射体」の表面強度について以下検討する。
a 本願明細書の発明の詳細な説明には、引用例に記載された実施例5について、次の記載がある。
「【0041】
(比較例2)
特開2002-31704号公報の実施例5で得られた積層フィルムを光反射体とした。
【0042】
(試験例)
実施例1、2および比較例1、2の各光反射体について、全光線反射率、表面強度、拡散反射率、空孔率、明度及び加工性について評価した。
・・・(中略)・・・
【0044】
表面強度は以下の手順で測定した。幅18mmのニチバン製粘着テープ(ニチバン製、商品名:セロテープ(登録商標))を光反射体の測定面に空気が入らないように100mm以上の長さを貼り付け、最後の10mm以上は貼り付けずに残した。その試料を20mm幅に切り取った。引っ張り試験機((株)オリエンテク製、商品名:RTM-250)で荷重5kg用のロードセルを用い、チャック間隔を1cmにし、貼り付けずに残した粘着テープの部分と粘着テープを貼り付けなかった光反射体の部分をそれぞれ上下のチャックに挟んだ。300mm/minのスピードで引っ張り、チャートの安定している部分の荷重を読みとった。3回測定し、その平均値を算出することによって表面強度を求めた。
・・・(中略)・・・
これらの各測定結果を表2に示す。
【0049】
【表2】



b 上記aの【表2】には、比較例2(引用例に記載された実施例5)の全光線反射率が92.1%であり、表面強度が表裏面(反射体面及び非反射体面)ともに400gであることが示されている。

c 引用発明2は、引用例に記載された実施例5に係る発明であるから、上記bからみて、引用発明1の「ポリオレフィン系樹脂とフィラーを含有し、延伸により微細な空隙を形成した2軸延伸フィルム」の表裏面に、引用発明2の保護層(C)を厚みがそれぞれ40μmとなるように形成した上記(イ)の5層構造の「光反射体」の表面強度は、表裏面ともに400g程度であることになる。
したがって、上記(イ)の5層構造の「光反射体」と本願補正発明の「光反射体」とは、「表面強度が250g以上であ」る点で一致する。

(キ)上記(ウ)ないし(カ)のとおりであるから、引用発明1の「光反射体」において、「表面強度が250g以上であ」るものとするとともに、前記「積層フィルム」を、「ポリオレフィン系樹脂と粒径が1.5μm以下であるフィラーを含有し、少なくとも1軸方向に延伸され、かつ面積延伸倍率が1.3?80倍である基材層(A)」と「肉厚が2μm以上である、ポリオレフィン系樹脂を含む層(B)」よりなるものとなすこと、すなわち、引用発明1において、上記相違点1及び3に係る本願補正発明の構成となすことは、上記(イ)からみて、当業者が引用発明2に基づいて容易になし得た程度のことである。

イ 相違点2について
(ア)原審の手続中で請求人が提出した平成24年5月1日付け意見書には、引用例の表1に記載された実施例の光反射体の全光線反射率と表面強度について、次の記載がある。
「<5> 実験成績証明書
実験報告者: 茨城県神栖市東和田23番地
株式会社ユポ・コーポレーション 鹿島工場 開発研究所
上田 隆彦
実験時期: 平成19年12月
実験場所: 茨城県神栖市東和田23番地
株式会社ユポ・コーポレーション 鹿島工場 開発研究所内
1.実験の目的
平成24年2月22日起案の拒絶理由通知書にて引用された引用文献1(特開2002-31704号公報)の表1に記載される実施例の光反射体について、全光線反射率と表面強度を測定し、加工性を評価して、本願発明と比較すること。
2.実験の方法
引用文献1(特開2002-31704号公報)の表1に記載される実施例1?8の光反射体を作製し、本願明細書に記載されているのと同じ方法により全光線反射率と表面強度を測定し、本願明細書に記載されているのと同じ方法により加工性を評価した。
3.実験の結果
結果は、以下の表に示すとおりであった。
【表1】



(イ)上記(ア)の【表1】には、引用例に記載された実施例6は、その全光線反射率が96.0%であり、表面強度が表裏面ともに200gであることが示されている。

(ウ)引用発明1は、具体的には、組成物(A)と組成物(B)とを、それぞれ別々の3台の押出機(組成物(B)については2台使用)を用いて250℃で溶融混練し、その後、一台の共押ダイに供給してダイ内で(A)の両面に(B)を積層後、シート状に押し出し、冷却ロールで約60℃まで冷却することによって積層物を得、この積層物を145℃に再加熱した後、多数のロール群の周速差を利用して縦方向に5倍で延伸し、再び約150℃まで再加熱してテンターで横方向に9倍で延伸し、その後、160℃でアニーリング処理した後、60℃まで冷却し、耳部をスリットして得られる、基材層(A)の厚みが134μmで表裏面層(B)の厚みがそれぞれ0.5μmで全厚が135μmの、(B)(A)(B)という3層構造であり、面積延伸倍率が45倍であり、輝度が1360cd/m^(2)の2軸延伸フィルムからなる光反射体(上記(イ)の実施例6に対応する。)であるところ、上記(イ)からみて、引用発明1の「光反射体」の全光線反射率は96.0%であると解される。

(エ)引用発明1は、2軸延伸フィルムの肉厚が薄いと光の裏抜けが生じる傾向があり、肉厚が厚いとバックライトユニットが厚くなり過ぎるきらいがあることから、延伸後の2軸延伸フィルムの肉厚を、50?400μmとしたものであるところ、「光の裏抜けが生じる」とは、光が反射せずに透過してしまうことを意味することが明らかであるから、引用発明1において、2軸延伸フィルムの肉厚を薄くすると全光線反射率が低下し、肉厚を厚くすると全光線反射率が向上することが当業者に自明である。
そうすると、2軸延伸フィルムの全厚が具体的には135μmである引用発明1において、延伸後の2軸延伸フィルムの肉厚を、50?400μmの範囲内で、135μmよりも厚いものとすることによって、96.0%である全光線反射率の値をより高い値にすることは、当業者が適宜なし得た程度の事項である。

(オ)本願の発明の詳細な説明には、全光線反射率が96.2%以上であることについて次の記載がある。
a 「【0032】
本発明の光反射体の全光線反射率は95%以上であり、好ましくは96?100%である。本明細書でいう全光線反射率は、JIS-Z8722条件d記載の方法にしたがって波長400nm?700nmの範囲で測定した各波長の反射率の平均値を意味する。全光線反射率が95%以上であれば、本発明の光反射体を用いたディスプレイは十分な輝度を有する。」
b 「【0042】
(試験例)
実施例1、2および比較例1、2の各光反射体について、全光線反射率、表面強度、拡散反射率、空孔率、明度及び加工性について評価した。
【0043】
全光線反射率は、JIS-Z8722条件d記載の方法にしたがって波長400nm?700nmの範囲で測定した各波長の反射率の平均値を算出することによって求めた。
・・・(中略)・・・
【0047】
明度は、図2に示すように白色網点印刷12を施したアクリル板13(導光板)に光反射体11をセットし、両側端面より冷陰極ランプ15(ハリソン社(製)インバーターユニット、12V、6mA管電流下)を照射して、面方向での明度を以下の基準で目視評価した。
○ 画面全体が均一に明るい
△ 画面全体が不均一に明るい
× 画面全体が薄暗い」
c 【0049】の【表2】(上記ア(ウ)参照。)には、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の全光線反射率がそれぞれ96.3%、96.2%、96.3%及び92.1%であること、及び、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の明度の評価がそれぞれ○、○、○及び△であることが示されている。

(カ)上記(オ)aからは、本願補正発明の「全光線反射率が96.2%以上」である点は、光反射体を用いたディスプレイが十分な輝度を有する「95%以上」という全光線反射率の範囲内の96.2%以上の範囲にしたものであると解されるが、「95%以上」の範囲内においてさらにその下限を96.2%にしたことに設計事項を超える技術上の意義を見出せない。

(キ)上記(オ)b及びcから、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された各実施例における「全光線反射率」が96.3又は96.2であり、これに対する各比較例では96.2又は92.1であることが把握できるが、「全光線反射率」が95%以上の範囲内のものにおいて、96.2%以上の範囲内のものと96.2%未満のものとの比較はされていない。
したがって、上記(オ)b及びcからは、本願補正発明で、全光線反射率を、95%以上の範囲内においてさらにその下限を96.2%にしたことに設計事項を超える技術上の意義を見出せない。

(ク)上記(オ)ないし(キ)のとおりであるから、本願の発明の詳細な説明の記載からみて、本願補正発明の全光線反射率を95%以上の範囲内においてさらにその下限を96.2%にした点は設計上の事項にすぎない。

(ケ)上記(ア)ないし(ク)からみて、引用発明1において、本願補正発明の上記相違点2に係る構成となすことは当業者が適宜なし得た設計上の事項である。

ウ 効果について
本願補正発明の奏する効果は、引用発明1の奏する効果及び引用発明2の奏する効果から当業者が予測することができた程度のものである。

エ まとめ
したがって、本願補正発明は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。
本願補正発明は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 引用発明2との対比・判断
(1)対比
本願補正発明と引用発明2とを対比する。
ア 引用発明2の「『ポリオレフィン系樹脂』、『MFR(230℃、2.16kg荷重)が0.8g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製)』、『高密度ポリエチレン(日本ポリケム(株)製、HJ381P)』、『MFR(230℃、2.16kg荷重)が4g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製)』」、「平均粒径」、「『フィラー』、『平均粒径1.8μm、比表面積12,500cm^(2)/gの重質炭酸カルシウム』」、「2軸延伸」、「面積延伸倍率」、「『2軸延伸フィルム』、『基材層(A)の厚みが118μmで、表裏面層(B)の厚みがそれぞれ1μmで、面積延伸倍率が37.5倍の2軸延伸フィルム』」、「『ポリオレフィン系樹脂およびフィラーを使用した保護層』、『MFR(230℃、2.16kg荷重)が4g/10分のプロピレン単独重合体』を含有する『組成物(C)』を用いて形成した『保護層(C)』」、「『保護層』の『厚み』」及び「光反射体」は、それぞれ、本願補正発明の「ポリオレフィン系樹脂」、「粒径」、「フィラー」、「少なくとも1軸方向に延伸」、「面積延伸倍率」、「基材層(A)」、「ポリオレフィン系樹脂を含む層(B)」、「層(B)の肉厚」及び「光反射体」に相当する。

イ 引用発明2の「基材層(A)(2軸延伸フィルム)」は、具体的には、組成物(A)と組成物(B)とにより形成されるものであり、上記組成物(A)は、「ポリオレフィン系樹脂(MFR(230℃、2.16kg荷重)が0.8g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製))」を75重量%と、「ポリオレフィン系樹脂(高密度ポリエチレン(日本ポリケム(株)製、HJ381P))」を10重量%と、「粒径(平均粒径)」が1.8μmの「フィラー(平均粒径1.8μm、比表面積12,500cm^(2)/gの重質炭酸カルシウム)」を15重量%含有し、上記組成物(B)は、「ポリオレフィン系樹脂(MFR(230℃、2.16kg荷重)が4g/10分のプロピレン単独重合体(日本ポリケム(株)製))」を97重量%と、「粒径」が1.8μmの「フィラー(平均粒径1.8μm、比表面積12,500cm^(2)/gの重質炭酸カルシウム)」を3重量%含有するから、引用発明2の「基材層(A)」は、「ポリオレフィン系樹脂」と粒径が1.8μmの「フィラー」を含有している。
したがって、引用発明2の「基材層(A)」と、本願補正発明の「ポリオレフィン系樹脂と粒径が1.5μm以下であるフィラーを含有」する「基材層(A)」とは、「ポリオレフィン系樹脂とフィラーを含有」する点で一致する。

ウ 引用発明2の「基材層(A)(2軸延伸フィルム)」の「面積延伸倍率」の具体的な値は37.5倍であるから、本願補正発明の「基材層(A)」の「面積延伸倍率」の範囲「1.3?80倍」と、「37.5倍」の点で一致する。

エ 引用発明2の「光反射体」は、具体的には、「基材層(A)(基材層(A)の厚みが118μmで、表裏面層(B)の厚みがそれぞれ1μmで、面積延伸倍率が37.5倍の2軸延伸フィルム)」の表裏面に「ポリオレフィン系樹脂を含む層(B)(保護層(C))」を設けたものであるから、引用発明2の「光反射体」は「基材層(A)とポリオレフィン系樹脂を含む層(B)よりなる積層フィルム」を有しているといえる。
したがって、引用発明2の「光反射体」と本願補正発明の「光反射体」とは、「基材層(A)とポリオレフィン系樹脂を含む層(B)よりなる積層フィルムを有」する点で一致する。

オ 引用発明2の「層(B)の肉厚(保護層の厚み)」の具体的な値は40μmであるから、本願補正発明の「層(B)の肉厚」の範囲「2μm以上」と、「40μm」の点で一致する。

カ 引用発明2は、具体的には、組成物(A)と組成物(B)とを、それぞれ別々の3台の押出機(組成物(B)については2台使用)を用いて250℃で溶融混練し、その後、一台の共押ダイに供給してダイ内で(A)の両面に(B)を積層後、シート状に押し出し、冷却ロールで約60℃まで冷却することによって積層物を得、この積層物を145℃に再加熱した後、多数のロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸し、下記組成の組成物(C)を2つの押出機で溶融混練し、得られた5倍延伸シートの両面に(C)が外側になるようにダイ内で共押し出しして積層し、ついでこの積層物を160℃に加熱したのち横方向に7.5倍の延伸を行って得られる、基材層(A)の厚みが118μmで、表裏面層(B)の厚みがそれぞれ1μmで、面積延伸倍率が37.5倍の2軸延伸フィルムの表裏面に、厚みがそれぞれ40μmの保護層(C)を形成した、全厚が200μmの、保護層(C)表面層(B)基材層(A)裏面層(B)保護層(C)という5層構造を有し、輝度が1220cd/m^(2)である光反射体(引用例に記載された実施例5に対応する。)であるところ、引用例に記載された実施例5の全光線反射率が92.1%であり、表面強度が表裏面(反射体面及び非反射体面)ともに400gであることは、上記4(2)ア(カ)a及びbのとおりであるから、引用発明2の「光反射体」の全光線反射率は92.1%であり、表面強度は400gであると認められる。
したがって、引用発明2の表面強度の具体的な値は、本願補正発明の表面強度の範囲「250g以上」と、「400g」の点で一致する。

キ 上記アないしカから、本願補正発明と引用発明2とは、
「ポリオレフィン系樹脂とフィラーを含有し、少なくとも1軸方向に延伸され、かつ面積延伸倍率が37.5倍である基材層(A)とポリオレフィン系樹脂を含む層(B)よりなる積層フィルムを有し、表面強度が400gであり、ポリオレフィン系樹脂を含む層(B)の肉厚が40μmである光反射体。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点4:
本願補正発明では、「基材層(A)」中の「フィラー」の「粒径」が1.5μm以下であり、「光反射体」の全光線反射率が96.2%以上であるのに対して、
引用発明2では、「基材層(A)」中の「フィラー」の「粒径」が1.8μmであり、「光反射体」の全光線反射率が92.1%である点。

(2)判断
上記相違点4について検討する。
ア ポリオレフィン系樹脂と平均粒径が0.2μmないし0.97μmのフィラーを含有し、延伸により微細な空隙を形成し、全厚が170μmないし200μmの延伸フィルムを用いた、全光線反射率が96.2%以上である光反射体は、本願優先日前に周知である(以下「周知技術」という。例.特開2003-176367号公報(【0010】、【0015】、【0042】、【0044】の【表1】の「CaCO_(3)(c)」及び「TiO_(2)」の平均粒径、【0045】の【表2】の「実施例5」における各層の組成及び「厚み(μm)」の「全厚」の値、【0046】の【表3】の「実施例5」における「反射率R_(0)(%)」の値参照。)、特開2004-109990号公報(【0010】、【0013】、【0022】、【0028】の【表1】の「硫酸バリウム」、「炭カル1」及び「二酸化チタン」の平均粒径、【0033】の【表2】の「製造例1」及び「製造例4」における各層の組成及び「厚さ(μm)」の「全体」の値、【0034】の【表3】の「製造例1」及び「製造例4」における「全光線反射率(%)」の値参照。)、特開2004-151707号公報(【0010】、【0013】、【0019】、【0037】の【表1】の「炭酸カルシウム」及び「二酸化チタン」の平均粒径、【0038】の【表2】の「組成物(b)」及び「組成物(e)」の組成、【0042】の【表3】の「製造例3」の「全光線反射率(%)」の値及び「各層の厚さ(μm)」の「全体」の値参照。))。

イ 引用発明2は、ポリオレフィン系樹脂とフィラーを含有し、延伸により微細な空隙を形成した2軸延伸フィルムを有する光反射体であって、前記空隙のサイズの調整のため、前記フィラーとして平均粒径が0.1μmないし8μmの範囲の無機フィラーを使用し、フィルム成形時の配合組成などの自由度が高いことから、前記2軸延伸フィルムを表面層/基材層/裏面層の3層構造からなるものとし、肉厚が薄いと光の裏抜けが生じる傾向があり、肉厚が厚いとバックライトユニットが厚くなり過ぎるきらいがあることから、延伸後の2軸延伸フィルムの肉厚を、50μmないし400μmとしたものであるところ、上記アからみて、引用発明2において、全光線反射率を周知技術の全光線反射率のように96.2%以上にするために、2軸延伸フィルム中の無機フィラーの平均粒径を0.1μmないし8μmの範囲内の0.2μmないし0.97μmとし、延伸後の2軸延伸フィルムの肉厚を、50μmないし400μmの範囲内の170μmないし200μmとなすこと、すなわち、引用発明2において、上記相違点4に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が周知技術に基づいて容易になし得た程度のことである。

ウ 効果について
本願補正発明の奏する効果は、引用発明2の奏する効果及び周知技術の奏する効果から当業者が予測することができた程度のものである。

エ まとめ
したがって、本願補正発明は、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。
本願補正発明は、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 小括
上記4及び5のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成22年3月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年3月5日付け手続補正書によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用例
引用例及びその記載事項は、上記第2〔理由〕3に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、上記第2〔理由〕1(2)のとおり、本願発明の発明特定事項を限定したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2〔理由〕4及び5に記載したとおり、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-07 
結審通知日 2013-10-08 
審決日 2013-10-29 
出願番号 特願2010-48523(P2010-48523)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 最首 祐樹後藤 亮治  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 清水 康司
鉄 豊郎
発明の名称 光反射体およびそれを用いた面光源装置  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  

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