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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1282991
審判番号 不服2013-3006  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-15 
確定日 2013-12-27 
事件の表示 特願2006- 74213「非水電解液二次電池」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月27日出願公開、特開2007-250413〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年3月17日の出願であって、平成24年6月8日付けで拒絶理由が通知され、同年8月24日付けで手続補正がなされ、同年9月6日付けで拒絶理由が通知され、同年10月31日付けで手続補正がなされ、同年11月13日付けで同年10月31日付けの補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、平成25年2月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

第2 平成24年11月13日付け補正却下の当否に対する判断

1 請求人は、審判請求書において、平成24年10月31日付けで手続補正で補正された請求項1に記載された発明に基いて、引用文献に記載された発明との差異を主張しているので、念のために、平成24年11月13日付け補正却下の当否について検討する。
2 特許法第17条の2第4項第2号に規定する事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものといえるためには、少なくとも、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)を限定するものであることが必要である。
同条項号の趣旨は、補正を先行文献調査の結果等を有効活用できる範囲に制限することにより、迅速な権利付与や出願人間の公平を図るところにある。
そして、かかる趣旨を没却させないためには、新たな先行文献調査等が必要とされない範囲で補正をする必要がある。
そうすると、発明特定事項を限定するとは、補正前のある発明特定事項を概念的により下位のものに限定するとか、補正前の発明特定事項が選択肢として表現されている請求項において、その選択肢の一部を削除する等、補正後の発明特定事項に対応する補正前の発明特定事項が存在することを前提として、当該補正前の発明特定事項を技術的に特定するものと解される。さもなくば、新たな発明特定事項が導入されることになり、新たな先行文献調査等が必要となるからである。
3 これを本件についてみるに、平成24年10月31日付けでした補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前には、正極端子と負極端子の位置関係についての発明特定事項は存在しなかったにもかかわらず、補正後には、新たに正極端子と負極端子の位置関係を特定するものであって、補正後の発明特定事項に対応する補正前の発明特定事項の存在が何ら認められないばかりでなく、本件発明の技術分野において、正極端子と負極端子の位置関係につき、新たな先行文献調査等が必要となるものである。
そうとすれば、補正後の発明特定事項に対応する補正前の発明特定事項が存在するという前提を欠くものであって、そもそも同条項号の趣旨を没却するものであるから、補正事項aは、発明特定事項を限定するものとはいえない。
よって、補正事項aは、発明特定事項を限定するものでなく、当該要件を満たさないから、特許法第17条の2第4項第2号に規定する事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものといえない。
また、補正事項aが、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的としたものに該当しないことも明らかである。
4 以上のとおり、補正事項aを含む本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるから、原審における補正却下の決定は妥当なものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記第2に記載したとおり原審において却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年8月24日付けの手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ケースおよび蓋を備え、前記ケースおよび前記蓋は少なくとも外面が絶縁性樹脂フィルムで被覆された金属板からなり、前記ケースと前記蓋とが巻き締め方式で気密封口された非水電解液二次電池において、前記蓋に絶縁部材を介して電解液注液孔を設けた端子を形成し、前記ケースと前記蓋との巻き締め部の上面より前記端子の上面が突出していることを特徴とする非水電解液二次電池。」

2.拒絶理由の概要
原審における平成24年9月6日付けの拒絶理由通知書に記載した理由は、概略、以下のものである。
本願発明は、この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1 特開平9-73885号公報
刊行物2 特開平06-236750号公報
刊行物3 特開2002-343310号公報
刊行物4 特開平10-312783号公報
刊行物5 特開2005-158267号公報
刊行物6 特開平2-15558号公報
刊行物7 特開平11-40115号公報

3.刊行物の記載事項(以下、審決中、「・・・」は、記載事項の省略を意味する。)
(1)刊行物1の記載事項
1-1
「【請求項1】 ・・・
電池容器および電池蓋がアルミニウム製であり、電池容器と電池蓋の電池封口部が二重巻締め方式により封口されることを特徴とする非水電解液二次電池。」

1-2
「【0034】・・・図3に示すように、・・・絶縁層13を介して配置されている負極端子10・・・」

1-3
「【0045】・・・図7に示すように、・・・絶縁層を介して配置してなる正極端子11・・・」

(2)刊行物2の記載事項
2-1
「【請求項1】二重巻締め方式もしくはプレス方式によって気密封口された角形電池であって、
電池ケースおよび電池ケース蓋は片面もしくは両面が樹脂皮膜でコーティングされた金属板を成形して成るものであることを特徴とする角形電池。」

2-2
「【0007】
【作用】本発明の角形電池では、電池ケースおよび蓋の材料(金属板)にコーティングされている樹脂材料が二重巻締め封口もしくはプレス封口時にガスケットとして機能するので電池の気密性能が著しく向上する。また、電池容器の外装面に最初から樹脂がコーティングされているので封口後の外装加工が不要である。・・・」

2-3
「【0010】・・・電池ケース1および電池ケース蓋板2は、・・・ポリプロピレンフィルム3で両面をコーティングした鋼板・・・を絞り加工して製作した。」

(3)刊行物3の記載事項
3-1
「【請求項2】 電解液を含む構成要素を収納するための電気機器用のケースであって、内外面を樹脂コーティングしたケース本体および蓋材の間に絶縁体をはさみ、両者を電気的に絶縁した状態で二重巻き締めにより密封した電気機器用ケース。」

(4)刊行物4の記載事項
4-1
「【請求項1】 電池缶と対極となる端子部を有し、端子部に電解液注液孔が穿設されるとともに、電解液注液孔が内圧上昇時に開裂する箔により封止されてなることを特徴とする二次電池。」

4-2
「【0012】・・・端子部に設けられた電解液注液孔が内圧開放用の孔となることから、電池蓋に電解液注液用の孔と内圧開放用の孔を新たに設ける必要がなくなる。その結果、孔を設ける作業等の前工程や溶接不良等の製品不良の発生率が低減され、生産性を大幅に向上させることができる。」

(5)刊行物5の記載事項
5-1
「【請求項1】
密閉型二次電池において、電池ヘッダーの金属板に絶縁性部材を介して形成した電池端子は、電解液注液口を有し、電解液注液口は、電池端子の上面よりも上部へは突出していない封口片によって融着して封口されたものであることを特徴とする密閉型二次電池。」

5-2
「【0008】
本発明は、密閉型二次電池において、・・・電解液注液口の封口を確実に・・・することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題は、密閉型二次電池において、電池ヘッダーの金属板に絶縁性部材を介して形成した電池ヘッダーの電池端子には、電解液注液口を有し・・・た密閉型二次電池によって解決することができる。」

(6)刊行物6の記載事項
6-1
「本発明は、・・・金属製蓋体に絶縁シール材を介して液密に固定された他極性端子を兼ねる注液用の金属製パイプを液密に封口した構造の非水溶媒電池・・・を提供しようとするものである。・・・本発明によれば、・・・金属製パイプの封口不良を回避して使用時の電解液の漏れ出しのない良好な密封構造を有する非水溶媒電池を製造できる。」(第2頁右上欄下から第6行?同頁右下欄第9行)

(7)刊行物7の記載事項
7-1
「【0019】・・・図3に示すように、これらの電池1を組電池として、交互に反対向きに配列すれば、各電池1の凹部4に隣接する別の電池1の凸部9が嵌合して、密接して配置することができるようになる。この際、各電池1は、例えば図示のように、正極端子6と負極端子5を接続板10で接続することにより直列に接続することができる。・・・」

7-2
「【0023】また、上記実施形態では、電池1の上端面と下端面にそれぞれ正極端子6と負極端子5を設けた場合について説明したが、いずれか一方の端面にのみ正極端子6と負極端子5を併設するようにしてもよい。・・・」

7-3




7-4




3.刊行物1に記載された発明について
刊行物1には、「電池容器および電池蓋がアルミニウム製であり、電池容器と電池蓋の電池封口部が二重巻締め方式により封口されることを特徴とする非水電解液二次電池」(1-1)が記載され、「絶縁層13を介して配置されている負極端子10」(1-2)及び「絶縁層を介して配置してなる正極端子11」(1-3)が記載されている。
そして、同刊行物に記載された「電池容器」、「電池蓋」、「電池容器および電池蓋がアルミニウム製」であること、「二重巻締め方式により封口され」たこと、「絶縁層13を介して配置されている負極端子10」、「絶縁層を介して配置してなる正極端子11」は、本願発明の「ケース」、「蓋」、「金属板」、「巻き締め方式で気密封口された」、「絶縁部材を介して設けた端子」、「絶縁部材を介して設けた端子」にそれぞれ相当する。
よって、刊行物1には、本願発明の記載ぶりに沿って整理すると、「電池容器および電池蓋を備え、前記電池容器および前記電池蓋はアルミニウム板からなり、前記電池容器と前記電池蓋とが巻き締め方式で気密封口された非水電解液二次電池において、前記電池蓋に絶縁層を介して設けた端子を形成した非水電解液二次電池。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

4.対比・判断
(1)対比
そこで、本願発明と引用発明を比較すると、両者は、「ケースおよび蓋を備え、前記ケースおよび前記蓋は金属板からなり、前記ケースと前記蓋とが巻き締め方式で気密封口された非水電解液二次電池において、前記蓋に絶縁部材を介して設けた端子を形成した非水電解液二次電池。」で一致している。
しかしながら、本願発明では、ケースおよび蓋は、少なくとも外面が絶縁性樹脂フィルムで被覆されているのに対し、引用発明では、これが明らかでない点(相違点1)、本願発明では、蓋に絶縁部材を介して電解液注液孔を設けた端子を形成しているのに対し、引用発明では、これが明らかでない点(相違点2)、本願発明では、ケースと蓋との巻き締め部の上面より前記端子の上面が突出しているのに対し、引用発明では、これが明らかでない点(相違点3)で相違する。

(2)判断
相違点1について
封口後に電池容器の外装面に外装加工することを不要とするため(2-2)、ケースおよび蓋の少なくとも外面を絶縁性樹脂フィルム又は樹脂コーティングで被覆することは、公知であるから(2-1、2-3、3-1)、ケースおよび蓋の少なくとも外面を絶縁性樹脂フィルムで被覆することは、当業者が容易に推考できる範囲にとどまる。

相違点2について
端子部に電解液注液孔を設けて、封止のための溶接を確実にすること(4-2)、電池端子に電解液注液口を設けて、電解液注液口の封口を確実にすること(5-2)、端子を兼ねる注液用の金属製パイプを液密に封口した構造にすることにより、良好な密封構造にすること(6-1)が公知であるから、端子に電解液注液孔を設けること(4-1、5-1、6-1)は、当業者が適宜成し得る設計事項にすぎない。

相違点3について
ケースと蓋との巻き締め部の上面より前記端子の上面が突出していることは、公知であるから(7-1?7-4)、ケースと蓋との巻き締め部の上面より前記端子の上面が突出させることは、当業者が容易に推考できる範囲にとどまる。

そして、本願発明に係る製造コストの削減、品質の安定性、電池の生産性向という効果(【0019】【0020】)も格別顕著とはいえない。

第4 結論
以上のとおり、本願発明は、刊行物1?7に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-25 
結審通知日 2013-10-29 
審決日 2013-11-11 
出願番号 特願2006-74213(P2006-74213)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷川 真一  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 山田 靖
小川 進
発明の名称 非水電解液二次電池  

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