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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C07D
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C07D
管理番号 1283018
審判番号 不服2012-10469  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-06 
確定日 2013-12-25 
事件の表示 特願2001-575578「二部分からなる分子を含有する過酸化物誘導体の合成及び治療薬への応用」拒絶査定不服審判事件〔2001年10月18日国際公開、WO01/77105、平成16年7月22日国内公表、特表2004-521855〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2001年4月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2000年4月6日(FR)フランス)を国際出願日とする出願であって、平成23年6月3日付けの拒絶理由に対し、同年12月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年2月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月6日に審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、同年12月19日付けの審尋に対し、その応答期間内に回答書が提出されなかったものである。

第2 平成24年6月6日付けの手続補正についての却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年6月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成24年6月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)では、特許請求の範囲の請求項1及び13について以下の「(1)補正前」を「(2)補正後」とする補正がなされている。

(1)補正前
「【請求項1】
下記一般式Iにより示されるカップリング物質からなることを特徴とする二部分からなる分子。

ここで、Aは、下記式IIで表されるアミノキノリンまたは下記式IIIで表される1,5-ナフチリジンから選択される窒素含有複素環式化合物の抗マラリア活性を有する分子残基を表し、R_(3)は同一または互いに異なる、環中の異なる位置を占め、少なくとも、ハロゲン原子、?OH基、?CF_(3)基、アリール基、C_(1)?C_(5)のアルキル基またはアルコキシ基、および?NO_(2)基の一つを有する置換基か、または水素原子であり、R_(4)は炭素原子数1?5の直鎖状、分岐状または環状アルキル基または水素原子を表し、

または、
下記式IVで表される基であり、R_(5)はアリール基または窒素含有複素環式残基を表し、
R_(5)-CHOH- (IV)
または、
下記式Vで表されるフェノール-2(アミノメチル)残基であり、R_(3)は、上記限定と同じであり、R_(a)及びR_(b)はR_(a)、R_(b)は同一または互いに異なる、水素原子または炭素原子数1?5のアルキル基を表し、

または、
下記式VIで示されるプログアニル誘導体から選択されるビグアナイド残基または下記式VIIで示されるシクログアニルを表す残基であり、R_(3)は、上記限定と同じであり、

または、
ピリミジン残基、特に下記式VIIIまたは下記式IXで示されるピリメタミンであり、R_(3)は、上記限定と同じであり、

または、
下記式Xで示されるアクリジン残基であり、R_(3)及びR_(4)は上記限定と同じであり、

Y_(1)及びY_(2)は同一または互いに異なる、直鎖または分岐状の、炭素原子数1?5のアルキレン鎖を表し、1種または2種以上のアミド、スルホンアミド、カルボキシル、ヒドロキシル、エーテルまたはチオエーテルの各基を含むことができ、
前記、炭素原子数1?5のアルキレン鎖は、炭素原子数1?5のアルキル基と置換することもでき、この場合、Y_(1)またはY_(2)のいずれかは存在しないこともあり、
Uはアミン、アミド、スルホンアミド、カルボキシル、エーテルまたはチオエーテルの各官能基であり、各官能基はY_(1)及びY_(2)を連結し、
Z_(1)及びZ_(2)は同一または互いに異なる、飽和または不飽和の直鎖、分岐状または環状の、アルキレンまたはアルキレン基を表し、Z_(1)またはZ_(2)の何れか一方は存在しない場合もあり、またはZ_(1)+Z_(2)は共にC_(i)及びC_(j)炭素を含有する多環状構造を表し、
R_(1)及びR_(2)は同一または互いに異なり、水素原子または二部分からなる分子の水に対する溶解度を高めることのできる官能基群である-COOH、-OH、-N(R_(a)、R_(b))を表し、
R_(x)及びR_(y)は鎖長4?8の環状パーオキサイドであり、C_(j)は前記パーオキサイドのピークの一つであり、または、R_(x)及びR_(y)は鎖長4?8の環状パーオキサイドであり、1個または2個の酸素原子を環状構造中に含有し、及び一個または二個以上の置換基R_(3)を含むものであり、ここで、R_(3)は同一または互いに異なる、環中の異なる位置を占め、少なくとも、ハロゲン原子、?OH基、?CF_(3)基、アリール基、C_(1)?C_(5)のアルキル基またはアルコキシ基、および?NO_(2)基の一つを有する置換基か、または水素原子であり、環状パーオキサイドの炭素ピークを一個または二個以上のR_(3)として上記で限定した置換基で置換されるもので、且つ、二つの隣接した置換基が鎖長5?6の環状構造を形成可能で、飽和または不飽和で、一つまたは二つ以上の置換基R_(3)で、ある位置を置換でき、他の置換基R_(x)またはR_(y)がR_(3)であり得、
及びそれらの、医薬品に使用可能な酸の付加塩である。」
「【請求項13】
以下の工程からなることを特徴とする、Aがアミノキノリンで、R_(x)及びR_(y)が一緒になってトリオキサンを構成する請求項1の、二つの部分からなる分子の合成方法。
a)式XIで表される化合物(ここで、R_(3)は前記されたとおりであり、halはハロゲン原子を表す。)が、式XIIで示されるジアミン誘導体(ここでR_(4)及びY_(1)は、前記のとおりであり、U_(1)は下記式XIIIで示される化合物を生成するところの-NH_(2)基を表す。)の存在で反応する。

(ここで、R_(3)、R_(4)及びY_(1)は前記のとおりである。)
b)分子状酸素及び感光促進剤の存在下、下記式XIVからXVIIまでで示される誘導体に光を照射し、次いで、下記式XVIIIで示される1,4-シクロヘキサジオンまたは下記式XIXで示されるジケトンと反応させ、

ケトンで官能性を付与された下記一般式XXで示されるトリオキサンを生成する。

(ここで、Z_(1)、Z_(2)及びR_(3)は前記のとおりである。)
c)式XIIIで示される誘導体と式XXで示されるトリオキサンとを還元的アミン化によりカップリングさせ、次いで、カップリング生成物を医薬に使用可能な酸と反応させて、塩の形にする。」
(以下、補正前の各請求項を「旧請求項1」、「旧請求項2」などという。)

(2)補正後
「【請求項1】
下記一般式Iにより示されるカップリング物質からなることを特徴とする二部分からなる分子。

ここで、Aは、下記式IIaまたはIIbで表されるアミノキノリンまたは下記式IIIで表される1,5-ナフチリジンから選択される窒素含有複素環式化合物の抗マラリア活性を有する分子残基を表し、R_(3)は同一または互いに異なる、環中の異なる位置を占め、少なくとも、ハロゲン原子、?OH基、?CF_(3)基、アリール基、C_(1)?C_(5)のアルキル基またはアルコキシ基、および?NO_(2)基の一つを有する置換基か、または水素原子であり、R_(4)は炭素原子数1?5の直鎖状、分岐状または環状アルキル基または水素原子を表し、

Y_(1)?U?Y_(2)はY_(1)?NHであり、
Z_(1)及びZ_(2)を含む環は、R_(x)及びR_(y)が一緒になってトリオキサンを構成した式XXで表されるトリオキサン環であり、

Y_(1)は、直鎖または分岐状の、炭素原子数1?5のアルキレン鎖を表し、1種または2種以上のアミド、スルホンアミド、カルボキシル、ヒドロキシル、エーテルまたはチオエーテルの各基を含むことができ、
前記、炭素原子数1?5のアルキレン鎖は、炭素原子数1?5のアルキル基と置換することもでき、
Z_(1)及びZ_(2)は同一または互いに異なる、飽和または不飽和の直鎖、分岐状または環状の、アルキレンまたはアルキレン基を表し、Z_(1)またはZ_(2)の何れか一方は存在しない場合もあり、またはZ_(1)+Z_(2)は共にC_(i)及びC_(j)炭素を含有する多環状構造を表し、
及びそれらの、医薬品に使用可能な酸の付加塩である。」
「【請求項13】
以下の工程からなることを特徴とする、Aがアミノキノリンで、R_(x)及びR_(y)が一緒になってトリオキサンを構成する請求項1の、二つの部分からなる分子の合成方法。
a)式XIで表される化合物(ここで、R_(3)は請求項1の限定と同じであり、halはハロゲン原子を表す。)が、式XIIで示されるジアミン誘導体(ここでR_(4)及びY_(1)は、請求項1の限定と同じであり、U_(1)は下記式XIIIで示される化合物を生成するところの-NH_(2)基を表す。)の存在で反応する。

(ここで、R_(3)、R_(4)及びY_(1)は請求項1の限定と同じである。)
b)分子状酸素及び感光促進剤の存在下、下記式XIVからXVIIまでで示される誘導体に光を照射し、次いで、下記式XVIIIで示される1,4-シクロヘキサジオンまたは下記式XIXで示されるジケトンと反応させ、

ケトンで官能性を付与された下記一般式XXで示されるトリオキサンを生成する。

(ここで、Z_(1)、Z_(2)及びR_(3)は請求項1の限定と同じである。)
c)式XIIIで示される誘導体と式XXで示されるトリオキサンとを還元的アミン化によりカップリングさせ、次いで、カップリング生成物を医薬に使用可能な酸と反応させて、塩の形にする。」
(以下、補正後の各請求項を「新請求項1」、「新請求項2」などという。)

2 補正の適否について
(1)補正の内容、新規事項の有無及び目的要件について
本件補正は、特許請求の範囲について、
ア 旧請求項1の「下記式IIで表されるアミノキノリン」を、新請求項1で「下記式IIaまたはIIbで表されるアミノキノリン」に改め(以下「補正事項1」という。)、
イ 旧請求項1の「A」が「下記式IIで表されるアミノキノリンまたは下記式IIIで表される1,5-ナフチリジンから選択される窒素含有複素環式化合物の抗マラリア活性を有する分子残基…または、下記式IVで表される基…または、下記式Vで表されるフェノール-2(アミノメチル)残基…または、下記式VIで示されるプログアニル誘導体から選択されるビグアナイド残基または下記式VIIで示されるシクログアニルを表す残基…または、ピリミジン残基…または、下記式Xで示されるアクリジン残基」であるのを、新請求項1において「A」が「下記式IIaまたはIIbで表されるアミノキノリンまたは下記式IIIで表される1,5-ナフチリジンから選択される窒素含有複素環式化合物の抗マラリア活性を有する分子残基」に限定し(以下「補正事項2」という。)、
ウ 旧請求項1の「Y_(2)」が「同一または互いに異なる、直鎖または分岐状の、炭素原子数1?5のアルキレン鎖を表し、1種または2種以上のアミド、スルホンアミド、カルボキシル、ヒドロキシル、エーテルまたはチオエーテルの各基を含むことができ、前記、炭素原子数1?5のアルキレン鎖は、炭素原子数1?5のアルキル基と置換することもでき、この場合、Y_(1)またはY_(2)のいずれかは存在しないこともあり」、「U」が「アミン、アミド、スルホンアミド、カルボキシル、エーテルまたはチオエーテルの各官能基であり、各官能基はY_(1)及びY_(2)を連結」するのを、新請求項1において「Y_(1)-U-Y_(2)」が「Y_(1)-NH」、すなわち、「Y_(2)」が「存在しない」、「U」が「NH(当審注:アミン)」に限定し(以下「補正事項3」という。)、
エ 旧請求項1の「R_(1)及びR_(2)」が「同一または互いに異なり、水素原子または二部分からなる分子の水に対する溶解度を高めることのできる官能基群である-COOH、-OH、-N(R_(a)、R_(b))を表し」、「R_(x)及びR_(y)」が「鎖長4?8の環状パーオキサイドであり、C_(j)は前記パーオキサイドのピークの一つであり、または…鎖長4?8の環状パーオキサイドであり、1個または2個の酸素原子を環状構造中に含有し、及び一個または二個以上の置換基R_(3)を含むもの」であるのを、新請求項1において「Z_(1)及びZ_(2)を含む環は、R_(x)及びR_(y)が一緒になってトリオキサンを構成した式XXで表されるトリオキサン環」、すなわち、「R_(1)及びR_(2)」が「水素」、「R_(x)及びR_(y)」が「鎖長6の環状パーオキサイドであり、1個の酸素原子を環状構造中に含有し、及び一個の置換基R_(3)を含むもの」に限定し(以下「補正事項4」という。)、
オ 旧請求項13の「R_(3)は前記されたとおり」、「R_(4)及びY_(1)は、前記のとおり」、「R_(3)、R_(4)及びY_(1)は前記のとおり」及び「Z_(1)、Z_(2)及びR_(3)は前記のとおり」における「前記のとおり」を、新請求項13において「請求項1の限定と同じ」に改める(以下「補正事項5」という。)、
ものである。
そして、補正事項1?5が、この出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内においてしたもので、また、補正事項1及び5が、平成24年2月2日付けの拒絶査定で示した事項(拒絶理由)についてする明りょうでない記載の釈明であることは明らかであり、さらに、補正事項2?4は、上記のとおり、旧請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるし、旧請求項1に記載された発明と新請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるといえる。
してみると、補正事項1及び5は、平成18年法律第55号に係る改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第4号に掲げる「明りようでない記載の釈明」を目的とするものであり、補正事項2?4は、同項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

(2)独立特許要件について
補正事項2?4は、上記(1)で示したとおり、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものであるから、新請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明1」という。)及び新請求項1を直接間接に引用する新請求項2?12、14?21(以下「本件補正発明2」、「本件補正発明3」などという。)に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否かについて検討する。
なお、平成23年12月9日及び平成24年6月6日付けの手続補正により補正された明細書を「本件補正明細書」という。

まず、本件補正発明1を引用する本件補正発明3、5?8は、本件補正発明1においてそれぞれ、「Aが下記式IVで表される基である」、「Aが下記式Vで表されるフェノール-2(アミノメチル)残基である」、「Aが下記式VIで示されるプログアニル誘導体から選択されるビグアナイド残基または下記式VIIで示されるシクログアニルを表す残基である」、「Aがピリミジン残基、特に下記式VIIIまたは下記式IXで示されるピリメタミンである」及び「Aが下記式Xで示されるアクリジン残基である」と特定するものである。
しかしながら、上記本件補正発明3、5?8における特定事項は、本件補正発明1における「Aは、下記式IIaまたはIIbで表されるアミノキノリンまたは下記式IIIで表される1,5-ナフチリジンから選択される窒素含有複素環式化合物の抗マラリア活性を有する分子残基」という特定事項と矛盾するものであり、その結果、本件補正発明3、5?8を明確に把握することができない。
そうすると、本件補正発明3、5?8及びそれらを引用する本件補正発明4、9?12、14?21は明確であるとはいえないから、本件補正明細書の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものでない。
してみると、本件補正発明3?12、14?21は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(3)補正の適否についてのまとめ
以上のとおり、本件補正発明3?12、14?21は特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないから、上記特許請求の範囲の減縮を目的とする補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、その余の事項を検討するまでもなく、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明の認定
上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、この出願の発明は、平成23年12月9日付けの手続補正により補正された明細書(以下「本願明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1?21に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものであると認める。

「下記一般式Iにより示されるカップリング物質からなることを特徴とする二部分からなる分子。

ここで、Aは、下記式IIで表されるアミノキノリンまたは下記式IIIで表される1,5-ナフチリジンから選択される窒素含有複素環式化合物の抗マラリア活性を有する分子残基を表し、R_(3)は同一または互いに異なる、環中の異なる位置を占め、少なくとも、ハロゲン原子、?OH基、?CF_(3)基、アリール基、C_(1)?C_(5)のアルキル基またはアルコキシ基、および?NO_(2)基の一つを有する置換基か、または水素原子であり、R_(4)は炭素原子数1?5の直鎖状、分岐状または環状アルキル基または水素原子を表し、

または、
下記式IVで表される基であり、R_(5)はアリール基または窒素含有複素環式残基を表し、
R_(5)-CHOH- (IV)
または、
下記式Vで表されるフェノール-2(アミノメチル)残基であり、R_(3)は、上記限定と同じであり、R_(a)及びR_(b)はR_(a)、R_(b)は同一または互いに異なる、水素原子または炭素原子数1?5のアルキル基を表し、

または、
下記式VIで示されるプログアニル誘導体から選択されるビグアナイド残基または下記式VIIで示されるシクログアニルを表す残基であり、R_(3)は、上記限定と同じであり、

または、
ピリミジン残基、特に下記式VIIIまたは下記式IXで示されるピリメタミンであり、R_(3)は、上記限定と同じであり、

または、
下記式Xで示されるアクリジン残基であり、R_(3)及びR_(4)は上記限定と同じであり、

Y_(1)及びY_(2)は同一または互いに異なる、直鎖または分岐状の、炭素原子数1?5のアルキレン鎖を表し、1種または2種以上のアミド、スルホンアミド、カルボキシル、ヒドロキシル、エーテルまたはチオエーテルの各基を含むことができ、
前記、炭素原子数1?5のアルキレン鎖は、炭素原子数1?5のアルキル基と置換することもでき、この場合、Y_(1)またはY_(2)のいずれかは存在しないこともあり、
Uはアミン、アミド、スルホンアミド、カルボキシル、エーテルまたはチオエーテルの各官能基であり、各官能基はY_(1)及びY_(2)を連結し、
Z_(1)及びZ_(2)は同一または互いに異なる、飽和または不飽和の直鎖、分岐状または環状の、アルキレンまたはアルキレン基を表し、Z_(1)またはZ_(2)の何れか一方は存在しない場合もあり、またはZ_(1)+Z_(2)は共にC_(i)及びC_(j)炭素を含有する多環状構造を表し、
R_(1)及びR_(2)は同一または互いに異なり、水素原子または二部分からなる分子の水に対する溶解度を高めることのできる官能基群である-COOH、-OH、-N(R_(a)、R_(b))を表し、
R_(x)及びR_(y)は鎖長4?8の環状パーオキサイドであり、C_(j)は前記パーオキサイドのピークの一つであり、または、R_(x)及びR_(y)は鎖長4?8の環状パーオキサイドであり、1個または2個の酸素原子を環状構造中に含有し、及び一個または二個以上の置換基R_(3)を含むものであり、ここで、R_(3)は同一または互いに異なる、環中の異なる位置を占め、少なくとも、ハロゲン原子、?OH基、?CF_(3)基、アリール基、C_(1)?C_(5)のアルキル基またはアルコキシ基、および?NO_(2)基の一つを有する置換基か、または水素原子であり、環状パーオキサイドの炭素ピークを一個または二個以上のR_(3)として上記で限定した置換基で置換されるもので、且つ、二つの隣接した置換基が鎖長5?6の環状構造を形成可能で、飽和または不飽和で、一つまたは二つ以上の置換基R_(3)で、ある位置を置換でき、他の置換基R_(x)またはR_(y)がR_(3)であり得、
及びそれらの、医薬品に使用可能な酸の付加塩である。」

2 原査定の理由
原査定は、
「この出願については、平成23年6月3日付けの拒絶理由通知書に記載した理由1…によって、拒絶すべきものです。」
という理由によるものであって、平成23年6月3日付けの拒絶理由通知書からみて次の理由を含むものである。

「1.この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
[1]理由1…/請求項1-12,14-21

一般式(I)で示される化合物は種々の置換基や置換位置の組み合わせからなる多種多様な化合物を包含するものである。
一方、発明の詳細な説明で、実際に製造できることが確認されている化合物は請求項13記載の方法で製造された特定骨格を有する化合物のみである。
そして、化合物の技術分野においては、目的の化合物をどのように製造するかを理解することが困難であるから、ごく限られた化合物についてのみ、その製造方法が具体的に開示されているだけでは、これらと構造の大きく異なる化合物を含む、上記一般式(I)の化合物全てについて、当業者が過度の実験を要することなく製造することができるとは認められない。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が上記請求項に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されて…ない。
…」

3 原査定の理由の適否についての検討
本願明細書の段落0016には、「Aの反応性誘導体及び残基R_(x)及びR_(y)を含有するパーオキサイド誘導体を反応させて、式Iで限定される化合物を形成する」こと、段落0021には、「ケトンと1級アミンがナトリウムトリアセトボロハイドライドのような還元剤の存在下常温で行われ」ることにより「カップリング生成物」が得られることが記載されており、さらに、本願明細書の段落0028?0061には、実施例1?12として、還元的アミン化によるケトンと1級アミンとのカップリングについて具体的に記載されている。
そうすると、本願明細書には、本願発明の合成方法として、Aの反応性誘導体である1級アミンと、残基R_(x)及びR_(y)を含有するパーオキサイド誘導体であるケトンをカップリング反応させることは記載されているといえるが、その場合に合成される式Iで限定される化合物は、当該カップリングにより形成される結合部、すなわち、Y_(1)-U-Y_(2)が、還元的アミノ化により形成されるアミンを含むもののみである。
一方、本願発明は、「Y_(1)及びY_(2)は同一または互いに異なる、直鎖または分岐状の、炭素原子数1?5のアルキレン鎖を表し、1種または2種以上のアミド、スルホンアミド、カルボキシル、ヒドロキシル、エーテルまたはチオエーテルの各基を含むことができ、前記、炭素原子数1?5のアルキレン鎖は、炭素原子数1?5のアルキル基と置換することもでき、この場合、Y_(1)またはY_(2)のいずれかは存在しないこともあり、Uはアミン、アミド、スルホンアミド、カルボキシル、エーテルまたはチオエーテルの各官能基であり、各官能基はY_(1)及びY_(2)を連結」という特定事項を含むものであって、Y_(1)-U-Y_(2)は必ずしもアミンを含むものに限定されてはいない。
そして、本願明細書のその余の記載を参酌しても、本願発明のY_(1)-U-Y_(2)がアミンを含まない場合について、その合成方法は明らかでないし、出願時の技術常識から当業者が合成できたとする根拠も見当たらない。
また、本願発明のAが式VII?IXのようにアミノ基を含む場合には、所望の位置でのみカップリング反応させることを必要であると解されるが、本願明細書の記載全体を参酌してもその方法は明らかでないし、出願時の技術常識から当業者がなし得たとする根拠も見当たらない。
してみると、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

4 原査定の理由の適否についてのまとめ
以上のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえず、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

第4 むすび
したがって、この出願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないから、その余の事項について検討するまでもなく、この出願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-31 
結審通知日 2013-08-01 
審決日 2013-08-15 
出願番号 特願2001-575578(P2001-575578)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (C07D)
P 1 8・ 575- Z (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 明子  
特許庁審判長 中田 とし子
特許庁審判官 齋藤 恵
村守 宏文
発明の名称 二部分からなる分子を含有する過酸化物誘導体の合成及び治療薬への応用  
代理人 嶋崎 英一郎  

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