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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q
管理番号 1283027
審判番号 不服2012-17592  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-10 
確定日 2013-12-25 
事件の表示 特願2009-540175「移動通信システムにおける可変的な測定周期を有する端末機の測定方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月19日国際公開、WO2008/072912、平成22年 4月15日国内公表、特表2010-512098〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
1 手続の経緯
本願は、2007年12月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年12月13日、韓国)を国際出願日とする出願であって、平成23年12月27日付けで拒絶理由が通知され、平成24年4月3日付けで意見書が提出されると同時に手続補正がなされたが、平成24年5月1日付け(発送日同年5月8日)で拒絶査定がなされたものである。
本件は、本願についてなされた上記拒絶査定を不服として平成24年9月10日付けで請求された拒絶査定不服審判請求であって、同時に手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1?11に係る発明は、平成24年4月3日付け手続補正及び平成24年9月10日付け手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項5及び6の記載は次のとおりのものである。

「 【請求項5】
不連続的にデータを受信する不連続受信(DRX)モード及び連続的にデータを受信する連続受信モードを有する端末機(UE)と、前記端末機が位置したサービングセルと、前記サービングセルと隣接して位置した隣接セルとを含む移動通信システムにおける前記端末機が測定を実行する方法であって、
前記不連続受信モードの周期に従って前記サービングセル及び前記隣接セルの信号強度を測定するステップと、
前記測定されたサービングセル及び前記隣接セルの信号強度間の差が特定の閾値より小さいか又は同一である場合、前記サービングセル及び前記隣接セルに対する信号強度測定を連続的に実行するステップと、
前記連続的に測定されるサービングセル及び前記隣接セルの信号強度間の差が前記特定の閾値より大きい場合、前記連続的な信号強度測定を中止し、前記不連続受信モードの周期に従って前記サービングセル及び前記隣接セルの信号強度を測定するステップと、
を含むことを特徴とする測定実行方法。
【請求項6】
前記信号強度測定を連続的に実行するステップは、前記不連続受信モードの周期より短い周期で前記信号強度を測定するステップを含むことを特徴とする請求項5に記載の測定実行方法。」

上記のとおり、請求項6に係る発明は、請求項5を引用するものであるから、請求項6に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものと認められる。

「不連続的にデータを受信する不連続受信(DRX)モード及び連続的にデータを受信する連続受信モードを有する端末機(UE)と、前記端末機が位置したサービングセルと、前記サービングセルと隣接して位置した隣接セルとを含む移動通信システムにおける前記端末機が測定を実行する方法であって、
前記不連続受信モードの周期に従って前記サービングセル及び前記隣接セルの信号強度を測定するステップと、
前記測定されたサービングセル及び前記隣接セルの信号強度間の差が特定の閾値より小さいか又は同一である場合、前記サービングセル及び前記隣接セルに対する信号強度測定を連続的に実行するステップと、
前記連続的に測定されるサービングセル及び前記隣接セルの信号強度間の差が前記特定の閾値より大きい場合、前記連続的な信号強度測定を中止し、前記不連続受信モードの周期に従って前記サービングセル及び前記隣接セルの信号強度を測定するステップと、
を含むことを特徴とし、
前記信号強度測定を連続的に実行するステップは、前記不連続受信モードの周期より短い周期で前記信号強度を測定するステップを含むことを特徴とする測定実行方法。」

第2 引用文献の記載事項
原査定における拒絶の理由に引用された特開2003-333638号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ディジタル無線通信システムにおける通信端末装置及び無線通信方法に関する。
【0002】
【従来の技術】次世代移動通信方式に用いる多元接続方式としてCDMA(Code Division Multiple Access)が開発されている。このCDMAセルラシステムにおいては、通信端末は、移動に伴うセル切替え(ハンドオーバ)などにセル検出やセル監視を行う。
【0003】このCDMAセルラシステムにおけるセル検出法に関しては、樋口、佐和橋、安達らの”DS-CDMA基地局間非同期セルラにおけるロングコードマスクを用いる高速セルサーチ法”信学技報 RCS96-122,1997-01に記載されているように、下り制御チャネルのスクランブリングコードをマスクし、このマスクされた部分について各セル共通のスプレッディングコードで相関検出を行うことにより、スクランブリングコードのタイミング及びその種類を検出する方法が提案されている。
【0004】この方式では、送信側(基地局)は各セル共通のスプレッディングコードで拡散されたシンボル及び各セルのスクランブリングコードに応じたスクランブリングコードグループ識別ショートコードで拡散されたシンボルをサーチコードとしてスクランブリングコードマスク部にコード多重して送信し、受信側(通信端末)は各セル共通のスプレッディングコードによるスロットタイミングを検出した後に、スクランブリングコードグループ識別ショートコードを用いてスクランブリングコード同定部でサーチすべきスクランブリングコード候補を限定し、フレームタイミングを検出し、さらにこのスクランブリングコード候補からセル固有のスクランブリングコードを特定する。これにより、高速に新しいセルを検出することができる。
【0005】また、セル監視は、上述したセル検出を改めて行うのではなく、スクランブリングコードと、そのおおよそのフレームタイミングが判明している基地局に関して、現在のレベル(Ec/I0(逆拡散後の信号電力/送受信電力)、SIR(Signal to Interference Ratio))を調べる処理をいう。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来、通信端末は、セル検出やセル監視を一定周期で常時行っている。しかしながら、通信端末がセル検出やセル監視を常時行うと、端末における消費電力が増加し、通話時間や待ち受け時間が短くなってしまう。一方、セル検出やセル監視の頻度を極端に少なくすると、リアルタイムに正確なセル管理を行うことができず、ハンドオーバを失敗して通話が切れる可能性がある。
【0007】本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、できるだけ消費電力を節約することができ、しかもセル検出やセル監視におけるセル管理をリアルタイムに正確に行うことができる通信端末装置及び無線通信方法を提供することを目的とする。」

『【0017】
【発明の実施の形態】本発明の骨子は、種々の要因(イベント)により動的にセル検出やセル監視の頻度を制御して少なくし、できるだけ消費電力を節約して、しかもセル検出やセル監視におけるセル管理をリアルタイムに正確に行うことである。
【0018】以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)図1は、本発明の実施の形態1に係る通信端末装置の構成を示すブロック図である。ここでは、通常の状態において、セル検出・セル監視の周期は長く設定しておき、必要に応じて、セル監視の周期を短くするセル監視モード、セル検出の周期を短くするセル検出モード、並びにセル監視及びセル検出の周期を短くするセル監視・検出モードにモード切り替えがなされる場合について説明する。なお、周期を長くするとは、例えば5s程度にすることをいうがこの周期については特に限定しない。このように、通常状態でセル監視やセル検出を長い周期で行うことにより装置の消費電力を効率よく使用することが可能となる。
【0019】この通信端末装置においては、無線基地局装置から送信された信号はアンテナ101を介して無線受信回路102で受信される。無線受信回路102では、受信信号に対して所定の無線受信処理(例えばダウンコンバート、A/D変換など)を行う。
【0020】このように無線受信処理された受信信号は、相関回路103に出力される。相関回路103では、受信信号に対して送信側での拡散変調で使用された拡散コードを用いて逆拡散処理が行われ、相関値が得られる。この相関値は、セル検出回路104に送られる。
【0021】セル検出回路104では、相関回路103で得られた相関値を用いてセルの検出を行う。また、相関回路103で求められた相関値は、セル監視回路105にも送られる。また、相関回路103からの出力は、復調回路109に送られ、そこで相関処理後の信号に対して復調処理が行われて受信データが得られる。
【0022】セル検出回路104、セル監視回路105におけるセル検出の結果やセル監視の結果は、セル管理テーブル106に送られ、セル管理テーブル106が必要に応じて更新される。セル管理テーブル106では、基地局を現在通信中(Active)、ハンドオーバ先候補(Candidate)、又は隣接するレベルの低いもの(Neighbor)などに分類して管理される。
【0023】このセル管理テーブル106の情報は、接続処理制御回路108に送られると共に管理回路107に送られる。接続処理制御回路108では、セル管理テーブルの情報(分類結果)に基づいてハンドオーバの際の接続処理などを制御する。
【0024】また、管理回路107では、セル管理テーブルの情報に基づいてセル検出やセル監視の指示を行う。すなわち、セル検出が必要であれば、セル検出を行う旨の制御信号をセル検出回路104に送り、セル監視が必要であれば、セル監視を行う旨の制御信号をセル監視回路105に送る。
【0025】一方、送信データは、ディジタル変調回路110に送られて、ディジタル変調され、拡散変調回路111に送られる。拡散変調回路111では、所定の拡散コードを用いてディジタル変調後の信号に対して拡散変調処理が行われ、その拡散変調された送信データが無線送信回路112に送られる。無線送信回路112では、拡散変調後の送信データに対して所定の無線送信処理(D/A変換、アップコンバートなど)が行われる。無線送信処理された送信信号は、アンテナ101を介して基地局に対して送信される。
【0026】次に、上記構成を有する通信端末装置のセル検出・セル監視の周期制御について説明する。相関回路103においては、受信信号に対して逆拡散処理がなされて相関値が得られる。この相関値はセル検出回路104,セル監視回路105に送られる。セル検出回路104では、各セル共通のスプレッディングコードによるスロットタイミングを検出した後に、スクランブリングコードグループ識別ショートコードを用いてスクランブリングコード同定部でサーチすべきスクランブリングコード候補を限定し、フレームタイミングを検出し、さらにこのスクランブリングコード候補からセル固有のスクランブリングコードを特定するセル検出処理を行う。
【0027】セル監視回路105では、スクランブリングコードと、そのおおよそフレームのタイミングが判明している基地局に関して、現在のレベル(Ec/I0、SIR)を調べる処理を行う。
【0028】これらのセル検出やセル監視の結果は、セル管理テーブル106に送られて、セルは分類されて管理される。例えば、セル管理テーブル106では、図2に示すように、現在通信中の基地局「現在通信中(Active)」、ハンドオーバ先の候補である基地局「ハンドオーバ先候補(Candidate)」、又はハンドオーバ先の候補ではないレベルの低い基地局「隣接するレベルの低いもの(Neighbor)」などに分類して管理される。
【0029】すなわち、図2から分かるように、基地局#2は現在通信中であり、基地局#1,#6はハンドオーバ先の候補であり、基地局#3,#4,#5はハンドオーバ先の候補ではないレベルの低いものである。
【0030】管理回路107は、セル管理テーブル106の情報やセル検出回路104及びセル監視回路105の結果に基づいて、セル検出やセル監視の周期(頻度)を変更する。このしきい値判定は、例えば以下のようなに分類された基地局のレベルや数により行う。具体的には、以下の方法が挙げられる。
【0031】まず、第1の方法としては、「現在通信中(Active)」のレベルがしきい値未満である場合、又はハンドオーバ時のように複数の基地局と通信を行っている時などにおいては「現在通信中(Active)」の各レベルの和がしきい値未満である場合に、「ハンドオーバ先候補(Candidate)」又は「隣接するレベルの低いもの(Neighbor)」のセル監視の周期を短くする(頻度を高くする)。図2を用いて説明すると、「現在通信中(Active)」である基地局#2のレベルがしきい値未満である場合には、「ハンドオーバ先候補(Candidate)」である基地局#1,#6に対するセル監視周期を短くする。
【0032】このように「現在通信中(Active)」のレベルがしきい値未満である場合は、基地局からの信号の主波がビルなどの影に隠れていたり、セルエッジにいるために基地局からの信号の主波のレベルが低いと考えられる。この場合に、「ハンドオーバ先候補(Candidate)」のセル監視の周期を短くして早めに「ハンドオーバ先候補(Candidate)」からハンドオーバ先を見つけるようにする。これにより、迅速にハンドオーバに対応することができ、通信品質を維持することができる。』

『【0033】第2の方法としては、「現在通信中(Active)」の数がしきい値未満である場合に、「ハンドオーバ先候補(Candidate)」又は「隣接するレベルの低いもの(Neighbor)」のセル監視の周期を短くする(頻度を高くする)。また、「現在通信中(Active)」の数がしきい値以上である場合に、「ハンドオーバ先候補(Candidate)」又は「隣接するレベルの低いもの(Neighbor)」のセル監視の周期を長くする(頻度を低くする)。
【0034】さらに、「現在通信中(Active)」の数が少ない状態において、「ハンドオーバ先候補(Candidate)」の数が所定の数よりも少なくなった場合や、「隣接するレベルの低いもの(Neighbor)」の数が所定の数よりも少なくなった場合には、ハンドオーバ先が少ないためにソフトハンドオーバに失敗する恐れが生じるので、セル監視やセル検出の周期を短くする。
【0035】図3を用いて説明すると、「ハンドオーバ先候補(Candidate)」が基地局#1しかない場合に、「隣接するレベルの低いもの(Neighbor)」に対してセル監視の周期を短くして、図4に示すように「ハンドオーバ先候補(Candidate)」(基地局#3,#6)を早めに見つける。これにより、ソフトハンドオーバを良好に行うことができる。』

『【0036】第3の方法としては、「現在通信中(Active)」のレベル及び「ハンドオーバ先候補(Candidate)」のレベルが共にあるしきい値範囲内にある場合に、セル検出の周期を短くする。
【0037】このように「現在通信中(Active)」のレベル及び「ハンドオーバ先候補(Candidate)」のレベルが共にあるしきい値範囲内にある場合は、「現在通信中(Active)」や「ハンドオーバ先候補(Candidate)」の基地局からの信号の主波がいずれもビルなどの影に隠れていたり、セルエッジにいるために「現在通信中(Active)」や「ハンドオーバ先候補(Candidate)」の基地局からの信号の主波のレベルがいずれも低いと考えられる。この場合に、セル検出の周期を短くして早めに「現在通信中(Active)」や「ハンドオーバ先候補(Candidate)」を見つけるようにする。これにより、迅速にハンドオーバに対応することができ、通信品質を維持することができる。』

『【0038】第4の方法としては、レベルが大きくなってきている基地局のセル監視の周期を短くする。このような場合は、レベルが大きくなってきている基地局に近づいていると考えられるからである。
【0039】例えば、図5に示すように、基地局#7が「隣接するレベルの低いもの(Neighbor)」になり、さらに「ハンドオーバ先候補(Candidate)」になった場合には、基地局#7に近づいていると考えられるので、基地局#7のセル監視周期を短くする。これにより、最も可能性の高い基地局をハンドオーバ先として迅速に判定することができる。』

『【0040】第5の方法としては、所定時間内である基地局が「現在通信中(Active)」と「ハンドオーバ先候補(Candidate)」の間の入れ替わりが頻繁に起こる場合には、セルエッジにいる可能性が高いので、この基地局に対するセル監視の周期を短くする。これにより、ハンドオーバに迅速に対応することができる。
【0041】管理回路107は、上記のようなイベントによりセル監視・セル検出の周期を変更した後に、その変更した周期でセル検出回路104やセル監視回路105に対してセル検出やセル監視を行う旨の指示を行う。
【0042】具体的には、セル検出の周期を短くする場合には、管理回路107でモードが通常モード(セル検出やセル監視の周期が長いモード)からセル検出モードに切り替えられ、セル検出モードにおける短い周期でセル検出を行う旨の制御信号がセル検出回路104に送られる。また、セル監視の周期を短くする場合には、管理回路107でモードが通常モードからセル監視モードに切り替えられ、セル監視モードにおける短い周期でセル監視を行う旨の制御信号がセル監視回路105に送られる。また、セル検出及びセル監視の周期を短くする場合には、管理回路107でモードが通常モードからセル検出・セル監視モードに切り替えられ、セル検出・セル監視モードにおける短い周期でセル検出を行う旨の制御信号がセル検出回路104に送られ、セル監視を行う旨の制御信号がセル監視回路105に送られる。
【0043】このように本実施の形態に係る通信端末装置は、「現在通信中(Active)」や「ハンドオーバ先候補(Candidate)」のレベルや数により動的にセル検出やセル監視の頻度を制御して少なくするので、できるだけ消費電力を節約して通話時間や待ち受け時間を長くすることができる。また、セル検出やセル監視におけるセル管理をリアルタイムに正確に行うことができるので、ハンドオーバを確実に行って、ハンドオーバ時の通信品質を維持することができる。
【0044】本実施の形態においては、基地局の分類を「現在通信中(Active)」、「ハンドオーバ先候補(Candidate)」、「隣接するレベルの低いもの(Neighbor)」と3種類で行う場合について説明しているが、本発明においては、しきい値の設定を変更することにより、基地局の分類を2つに設定しても良く、4つ以上に設定しても良い。』

「【0097】
【発明の効果】以上説明したように本発明の通信端末装置は、種々の要因(イベント)により動的にセル検出やセル監視の頻度を制御して少なくするので、できるだけ消費電力を節約して通話時間や待ち受け時間を長くすることができる。また、セル検出やセル監視におけるセル管理をリアルタイムに正確に行うことができるので、ハンドオーバを確実に行って、ハンドオーバ時の通信品質を維持することができる。」

第3 対比
1 引用文献に記載された発明
引用文献1に記載された通信端末装置は、「通常の状態において、セル検出・セル監視の周期は長く設定しておき、必要に応じて、セル監視の周期を短くするセル監視モード・・・にモード切り替えがなされ」、「通常状態でセル監視やセル検出を長い周期で行うことにより装置の消費電力を効率よく使用することが可能となる」(段落【0018】)ものであり、
「この通信端末装置においては、無線基地局装置から送信された信号はアンテナ101を介して無線受信回路102で受信され」、「無線受信回路102では、受信信号に対して所定の無線受信処理(例えばダウンコンバート、A/D変換など)を行」(段落【0019】)い、
「このように無線受信処理された受信信号は、相関回路103に出力され」、「相関回路103では、受信信号に対して送信側での拡散変調で使用された拡散コードを用いて逆拡散処理が行われ、相関値が得られ」、「この相関値は、セル検出回路104に送られ」(段落【0020】)、
「セル検出回路104では、相関回路103で得られた相関値を用いてセルの検出を行」い、「相関回路103で求められた相関値は、セル監視回路105にも送られ」、「相関回路103からの出力は、復調回路109に送られ、そこで相関処理後の信号に対して復調処理が行われて受信データが得られ」(段落【0021】)、
「セル検出回路104、セル監視回路105におけるセル検出の結果やセル監視の結果は、セル管理テーブル106に送られ、セル管理テーブル106が必要に応じて更新され」、「セル管理テーブル106では、基地局を現在通信中(Active)、ハンドオーバ先候補(Candidate)、又は隣接するレベルの低いもの(Neighbor)などに分類して管理され」(段落【0022】)、
「このセル管理テーブル106の情報は、接続処理制御回路108に送られると共に管理回路107に送られ」、「接続処理制御回路108では、セル管理テーブルの情報(分類結果)に基づいてハンドオーバの際の接続処理などを制御」(段落【0023】)し、
「管理回路107では、セル管理テーブルの情報に基づいてセル検出やセル監視の指示を行う。」(段落【0024】)

そして、引用文献1に記載された通信端末装置のセル検出・セル監視の周期制御は、次のとおりである。
「相関回路103においては、受信信号に対して逆拡散処理がなされて相関値が得られ」、「この相関値はセル検出回路104,セル監視回路105に送られ」、「セル検出回路104では、各セル共通のスプレッディングコードによるスロットタイミングを検出した後に、スクランブリングコードグループ識別ショートコードを用いてスクランブリングコード同定部でサーチすべきスクランブリングコード候補を限定し、フレームタイミングを検出し、さらにこのスクランブリングコード候補からセル固有のスクランブリングコードを特定するセル検出処理を行」(段落【0026】)い、
「セル監視回路105では、スクランブリングコードと、そのおおよそフレームのタイミングが判明している基地局に関して、現在のレベル(Ec/I0、SIR)を調べる処理を行」(段落【0027】)い、
「これらのセル検出やセル監視の結果は、セル管理テーブル106に送られて、セルは分類されて管理され」、『セル管理テーブル106では、・・・現在通信中の基地局「現在通信中(Active)」、ハンドオーバ先の候補である基地局「ハンドオーバ先候補(Candidate)」、又はハンドオーバ先の候補ではないレベルの低い基地局「隣接するレベルの低いもの(Neighbor)」・・・に分類して管理され』(段落【0028】)、
「管理回路107は、セル管理テーブル106の情報やセル検出回路104及びセル監視回路105の結果に基づいて、セル検出やセル監視の周期(頻度)を変更」(段落【0030】)し、
『「現在通信中(Active)」のレベルがしきい値未満である場合・・・に、「ハンドオーバ先候補(Candidate)」・・・のセル監視の周期を短くする(頻度を高くする)。』(段落【0031】)

引用文献1には、通常の状態において、セル検出・セル監視の周期は長く設定しておき、必要に応じて、セル監視の周期を短くするセル監視モードにモード切り替えがなされる通信端末装置が記載され、この通信端末装置のセル検出・セル監視の周期制御は、周期を変えてセル検出・セル監視をするものであり、この周期を変えてセル検出・セル監視することを方法の発明として認定することができ、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

『通常の状態において、セル検出・セル監視の周期は長く設定しておき、必要に応じて、セル監視の周期を短くするセル監視モードにモード切り替えがなされる通信端末装置におけるセル検出・セル監視する方法であって、
相関回路103においては、受信信号に対して逆拡散処理がなされて相関値が得られ、この相関値はセル検出回路104,セル監視回路105に送られ、
セル検出回路104では、各セル共通のスプレッディングコードによるスロットタイミングを検出した後に、スクランブリングコードグループ識別ショートコードを用いてスクランブリングコード同定部でサーチすべきスクランブリングコード候補を限定し、フレームタイミングを検出し、さらにこのスクランブリングコード候補からセル固有のスクランブリングコードを特定するセル検出処理を行い、
セル監視回路105では、スクランブリングコードと、そのおおよそフレームのタイミングが判明している基地局に関して、現在のレベル(Ec/I0、SIR)を調べる処理を行い、
これらのセル検出やセル監視の結果は、セル管理テーブル106に送られて、セルは分類されて管理され、セル管理テーブル106では、現在通信中の基地局「現在通信中(Active)」、ハンドオーバ先の候補である基地局「ハンドオーバ先候補(Candidate)」、又はハンドオーバ先の候補ではないレベルの低い基地局「隣接するレベルの低いもの(Neighbor)」に分類して管理され、
管理回路107は、セル管理テーブル106の情報やセル検出回路104及びセル監視回路105の結果に基づいて、セル検出やセル監視の周期(頻度)を変更し、
「現在通信中(Active)」のレベルがしきい値未満である場合に、「ハンドオーバ先候補(Candidate)」のセル監視の周期を短くする(頻度を高くする)
方法。』

2 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(ア)「不連続的にデータを受信する不連続受信(DRX)モード及び連続的にデータを受信する連続受信モードを有する端末機(UE)と、前記端末機が位置したサービングセルと、前記サービングセルと隣接して位置した隣接セルとを含む移動通信システムにおける前記端末機が測定を実行する方法」
引用発明は、「通常の状態において、セル検出・セル監視の周期は長く設定しておき、必要に応じて、セル監視の周期を短くするセル監視モードにモード切り替えがなされる通信端末装置におけるセル検出・セル監視する方法」であって、下記(イ)のとおり、「前記不連続受信モードの周期に従って前記サービングセル及び前記隣接セルの信号強度を測定するステップ」を含んでいるといえ、下記(ウ)のとおり、「測定された信号強度が特定の閾値より小さいか又は同一である場合、セルに対する信号強度測定を連続的に実行するステップ」を含むといえるから、通信端末装置は、「不連続的にデータを受信する不連続受信(DRX)モード及び連続的にデータを受信する連続受信モードを有する」といえる。
そして、現在通信中の基地局はサービングセルといえ、ハンドオーバ先の候補である基地局は隣接セルといえるから、引用発明は、「不連続的にデータを受信する不連続受信(DRX)モード及び連続的にデータを受信する連続受信モードを有する端末機(UE)と、前記端末機が位置したサービングセルと、前記サービングセルと隣接して位置した隣接セルとを含む移動通信システムにおける前記端末機が測定を実行する方法」といえる。

(イ)「前記不連続受信モードの周期に従って前記サービングセル及び前記隣接セルの信号強度を測定するステップ」
引用発明は、セル検出・セル監視の周期が長く設定された通常の状態において、
『相関回路103においては、受信信号に対して逆拡散処理がなされて相関値が得られ、この相関値はセル検出回路104,セル監視回路105に送られ、
セル検出回路104では、各セル共通のスプレッディングコードによるスロットタイミングを検出した後に、スクランブリングコードグループ識別ショートコードを用いてスクランブリングコード同定部でサーチすべきスクランブリングコード候補を限定し、フレームタイミングを検出し、さらにこのスクランブリングコード候補からセル固有のスクランブリングコードを特定するセル検出処理を行い、
セル監視回路105では、スクランブリングコードと、そのおおよそフレームのタイミングが判明している基地局に関して、現在のレベル(Ec/I0、SIR)を調べる処理を行い、
これらのセル検出やセル監視の結果は、セル管理テーブル106に送られて、セルは分類されて管理され、セル管理テーブル106では、現在通信中の基地局「現在通信中(Active)」、ハンドオーバ先の候補である基地局「ハンドオーバ先候補(Candidate)」、又はハンドオーバ先の候補ではないレベルの低い基地局「隣接するレベルの低いもの(Neighbor)」に分類して管理され』るものである。
セル検出・セル監視の周期が長く設定された通常の状態は、不連続受信しているといえ、セル検出、セル監視の結果、現在通信中の基地局「現在通信中(Active)」、ハンドオーバ先の候補である基地局「ハンドオーバ先候補(Candidate)」に分類して管理され、セル監視は、スクランブリングコードと、そのおおよそフレームのタイミングが判明している基地局に関して、現在のレベルを調べる処理であるから、現在通信中の基地局、ハンドオーバ先の候補である基地局の信号強度を測定するステップを含んでいるといえる。
現在通信中の基地局はサービングセルといえ、ハンドオーバ先の候補である基地局は隣接セルといえる。
そして、引用発明は、「通常の状態において、セル検出・セル監視の周期は長く設定しておき、必要に応じて、セル監視の周期を短くするセル監視モードにモード切り替えがなされる通信端末装置におけるセル検出・セル監視する方法」であるから、通常の状態は、セル検出・セル監視の周期を長くしたモードといえる。
したがって、引用発明は、「前記不連続受信モードの周期に従って前記サービングセル及び前記隣接セルの信号強度を測定するステップ」を含んでいるといえる。

(ウ)「前記測定されたサービングセル及び前記隣接セルの信号強度間の差が特定の閾値より小さいか又は同一である場合、前記サービングセル及び前記隣接セルに対する信号強度測定を連続的に実行するステップ」及び「前記信号強度測定を連続的に実行するステップは、前記不連続受信モードの周期より短い周期で前記信号強度を測定するステップを含む」
引用発明は、『「現在通信中(Active)」のレベルがしきい値未満である場合に、「ハンドオーバ先候補(Candidate)」のセル監視の周期を短くする(頻度を高くする)』ものであって、「現在通信中(Active)」のレベルは測定されたサービングセルの信号強度といえ、「ハンドオーバ先候補(Candidate)」のセル監視の周期を短くする(頻度を高くする)ことは、隣接セルに対する信号強度測定を不連続受信モードの周期より短くすることであり、不連続受信モードの周期より短い周期で隣接セルに対する信号強度測定することである。
したがって、引用発明は、「測定されたサービングセルの信号強度が特定の閾値より小さい場合、不連続受信モードの周期より短い周期で隣接セルに対する信号強度を測定するステップ」を含んでいるといえる。
本願発明は、「前記信号強度測定を連続的に実行するステップは、前記不連続受信モードの周期より短い周期で前記信号強度を測定するステップを含む」ものであり、「(前記)不連続受信モードの周期より短い周期で(前記)信号強度を測定するステップ」を含んでいる点においては、引用発明と同じであるから、上記の「測定されたサービングセルの信号強度が特定の閾値より小さい場合、不連続受信モードの周期より短い周期で隣接セルに対する信号強度を測定するステップ」は、「(前記)信号強度測定を連続的に実行するステップ」といい得る。
よって、引用発明は、「測定された信号強度が特定の閾値より小さいか又は同一である場合、セルに対する信号強度測定を連続的に実行するステップ」を含み、「前記信号強度測定を連続的に実行するステップは、前記不連続受信モードの周期より短い周期で前記信号強度を測定するステップを含む」ものといえる。
しかしながら、「測定された値」が、引用発明においては「測定されたサービングセルの信号強度」であって、「前記測定されたサービングセル及び前記隣接セルの信号強度間の差」ではない点で、本願発明と相違し、「セルに対する信号強度を測定する」が、引用発明においては「隣接セルに対する信号強度を測定する」ものであって、「前記サービングセル及び前記隣接セルに対する信号強度測定」するものでない点で、本願発明と相違する。

(エ)「前記連続的に測定されるサービングセル及び前記隣接セルの信号強度間の差が前記特定の閾値より大きい場合、前記連続的な信号強度測定を中止し、前記不連続受信モードの周期に従って前記サービングセル及び前記隣接セルの信号強度を測定するステップ」
引用発明には、「前記連続的に測定されるサービングセル及び前記隣接セルの信号強度間の差が前記特定の閾値より大きい場合、前記連続的な信号強度測定を中止し、前記不連続受信モードの周期に従って前記サービングセル及び前記隣接セルの信号強度を測定するステップ」はない点で、本願発明と相違する。

3 一致点、相違点
以上より、本願発明と引用発明との一致点、相違点は、次のとおりである。

(一致点)
不連続的にデータを受信する不連続受信(DRX)モード及び連続的にデータを受信する連続受信モードを有する端末機(UE)と、前記端末機が位置したサービングセルと、前記サービングセルと隣接して位置した隣接セルとを含む移動通信システムにおける前記端末機が測定を実行する方法であって、
前記不連続受信モードの周期に従って前記サービングセル及び前記隣接セルの信号強度を測定するステップと、
測定された値が特定の閾値より小さいか又は同一である場合、セルに対する信号強度測定を連続的に実行するステップと、
前記信号強度測定を連続的に実行するステップは、前記不連続受信モードの周期より短い周期で前記信号強度を測定するステップと、
を含むことを特徴とする測定実行方法。」

(相違点1)
「測定された値が特定の閾値より小さいか又は同一である場合、セルに対する信号強度測定を連続的に実行するステップ」における「測定された値」が、本願発明においては、「前記測定されたサービングセル及び前記隣接セルの信号強度間の差」であるのに対し、引用発明においては、『「現在通信中(Active)」のレベル』(測定されたサービングセルの信号強度)であり、
当該ステップにおける「セルに対する信号強度を測定する」が、本願発明においては、「前記サービングセル及び前記隣接セルに対する信号強度測定」するのに対し、引用発明においては「隣接セルに対する信号強度を測定する」点

(相違点2)
本願発明は、「前記連続的に測定されるサービングセル及び前記隣接セルの信号強度間の差が前記特定の閾値より大きい場合、前記連続的な信号強度測定を中止し、前記不連続受信モードの周期に従って前記サービングセル及び前記隣接セルの信号強度を測定するステップ」を含むのに対し、
引用発明は、そのようなステップを含まない点

第4 判断
1 相違点1について
原査定における拒絶の理由に引用された特開平11-122654号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数の基地局との同時接続を実施する符号分割多重セルラー移動無線通信システム、該システムの移動局において、効率的な基地局選択を実現するための基地局選択方法、及び移動局装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】以下、従来の符号分割多重セルラー移動無線通信システムの移動局における基地局選択方法について図面を参照して説明する。方式複数の無線基地局が偏在し、これらの基地局が同一周波数を同時に使用する符号分割多重セルラー移動無線通信システムの移動局は、最小伝搬損失となる基地局と常に接続し、かつ送信電力制御を実施することによって他の無線回線へ与える干渉を最小に抑えなくてはならない。新しい基地局との接続処理にはある程度の時間を要するため、その期間の伝搬損の変動によっては最小伝搬損となる基地局が交代し、切り替え先の基地局へ干渉を与えてしまう場合がある。
【0003】上記した新しい基地局との接続処理の際に生ずる切り替え先の基地局への干渉について図9及び図10を参照して詳細に説明する。ここで、Tcは接続しきいレベルであり、Ppは基地局切り替え処理に要する時間であり、Crは干渉を及ぼす期間を表す時間であり、T0はソフトハンドオフ実施の際の従来方法での基地局接続しきいレベルであり、T1はソフトハンドオフ実施の際の従来方法での基地局接続解除しきいレベルである。
【0004】基地局BS#Aに接続中の移動局が、基地局BS#Bのゾーンへ移行する場合を考える。基地局BS#Aと基地局BS#Bとの伝搬損の差がしきいレベルTよりも小さくなった時点で基地局切り替え処理を開始し、切り替え処理が終了cするまでに要する時間をPpとする。Pp時間の間、移動局は基地局BS#Aに対して送信電力制御を実行する。
【0005】図9に示すように接続処理時間Ppの間に基地局BS#Bの伝搬損が基地局BS#Aのそれより小さくなると、基地局BS#Aに対して送信電力制御を行っている移動局は、基地局BS#Aよりも伝搬損の小さい基地局BS#Bへ干渉を与えてしまう。すなわち、図9に示したCr 時間の間は基地局BS#Bへ干渉が及ぶ。
【0006】この接続処理に起因する干渉問題を克服する手法として、1991年5月、プロシーディング・イン・アイ・イー・イー・イー・ビーキュラー・テクノロジー・カンファレンス、57-62項、米国(Proceeding in IEEE Vehicular Technology Conference,pp.57-62,May,1991)に記載の手法が知られている。ソフトハンドオフと呼ばれる上記文献に記載の手法では最小伝搬損となる基地局を含む複数の基地局候補と同時接続して伝搬損の変動に備える手法を用いている。図10にその様子を示した。
【0007】図9と同様、基地局BS#Aに接続中の移動局が、基地局BS#Bのゾーンへ移行する場合を考えている。基地局BS#AとBS#Bとの伝搬損の差がしきいレベルT0よりも小さくなった時点で基地局BS#Aとの接続を保持しつつ、基地局BS#Bとの接続を開始する。接続処理時間Ppを経て基地局BS#Bとの接続処理が完了すると、両方の基地局との接続が開始される。同時接続の期間は常に伝搬損の最も低い他の基地局に対する送信電力制御が実施されるために、図9で問題となった基地局BS#Bへの干渉は問題とならない。その後、基地局BS#AとBS#Bとの伝搬損の差がしきいレベルT1を超えた時点で基地局BS#Aとの接続を解除する。このように、伝播損レベルがひっ迫する複数の基地局と同時接続を行うことによって、最小伝搬損基地局の交代に対処でき、干渉を抑えることができる。
【0008】新たな基地局との接続を開始する際のしきいレベルT0と接続を解除する際のしきいレベルT1は、後者を大きく設定する。ヒステリシスマージンと呼ばれるT0 とT1の差は、基地局間の伝搬損の差がしきいレベル付近で激しく変化するような場合に、基地局接続解除切り替えが頻発するのを防止するために設けられている。基地局との接続を開始する際のしきいレベルT0ならびに接続を解除する際のしきいレベルT1は、大きくすればするほど同時接続される基地局の数は増加する。」

引用文献2(特に、段落【0004】?【0008】参照)には、基地局BS#Aと基地局BS#Bの伝搬損の差がしきいレベルより小さくなった時点で基地局切り替え処理を開始することが記載されている。

引用文献1には、周期を変える条件として、引用発明として認定した『「現在通信中(Active)」のレベルがしきい値未満である場合』のほかに、『「現在通信中(Active)」の数がしきい値未満である場合』(段落【0033】)、『「現在通信中(Active)」のレベル及び「ハンドオーバ先候補(Candidate)」のレベルが共にあるしきい値範囲内にある場合』(段落【0036】)等の条件により周期を変えることが示されているから、引用発明に周期を変える条件として、引用文献2に記載された技術を適用することは、容易に着想することである。
そして、伝搬損は小さいほど受信電力が大きくなり、伝搬損は大きいほど受信電力が小さくなるものであって、伝搬損の差がしきい値レベルより小さくなることは、基地局での伝搬損と他の基地局での伝搬損とが近づいたことであり、このことは、基地局での受信電力と他の基地局での受信電力が近づいたことであるから、引用発明に引用文献2の技術を適用して、「前記測定されたサービングセル及び前記隣接セルの信号強度間の差」が特定の閾値より小さくなった場合に周期を短くすること、すなわち、連続的に実行すること(上記2(ウ)参照)は、容易に想到できたことであり、その際、引用発明においては、「セル監視回路105では、スクランブリングコードと、そのおおよそフレームのタイミングが判明している基地局に関して、現在のレベル(Ec/I0、SIR)を調べる処理を行」うのであるから、「前記サービングセル及び前記隣接セルに対する信号強度測定」するようにすることは、当業者が容易に想到できたことである。

2 相違点2について
引用発明は、『「現在通信中(Active)」のレベルがしきい値未満である場合は、基地局からの信号の主波がビルなどの影に隠れていたり、セルエッジにいるために基地局からの信号の主波のレベルが低いと考えられる。』(段落【0032】)ものであり、セルエッジにおらず、基地局からの信号の主波がビルなどの影に隠れていて、基地局からの主波のレベルが低い場合は、通信端末装置の移動により、「現在通信中(Active)」のレベルがしきい値以上になることは普通に想定でき、このような状況においては、「現在通信中(Active)」のレベルは、「ハンドオーバ先候補(Candidate)」のレベルより大きいことは明らかであり、ハンドオーバする必要がないことも明らかである。このような状況においては、周期を短くする必要はないから、セル検出・セル監視の周期の長い通常の状態にすることは、普通に想定できる。
そして、上記1において判断したように、引用発明に引用文献2に記載された技術を適用して、「前記連続的に測定されるサービングセル及び前記隣接セルの信号強度間の差」が特定の閾値より小さい場合、「前記サービングセル及び前記隣接セルに対する信号強度測定」を連続的に実行するようにすることが容易であって、上記のような状況が想定されるのであるから、引用発明に引用文献2に記載された技術を適用して、引用発明において、「前記連続的に測定されるサービングセル及び前記隣接セルの信号強度間の差が前記特定の閾値より大きい場合」は通常の状態にすること、すなわち、「前記連続的に測定されるサービングセル及び前記隣接セルの信号強度間の差が前記特定の閾値より大きい場合、前記連続的な信号強度測定を中止し、前記不連続受信モードの周期に従って前記サービングセル及び前記隣接セルの信号強度を測定するステップ」を含むようにすることは、当業者が容易に想到できたことである。

2 効果等
以上のように、相違点1、2に係る構成は、当業者が容易に想到できたものである。そして、本願発明の構成は、上記のとおり当業者が容易に想到できたものであるところ、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものでもない。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項6に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-24 
結審通知日 2013-07-30 
審決日 2013-08-12 
出願番号 特願2009-540175(P2009-540175)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 國分 直樹佐藤 聡史  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 小池 正彦
江口 能弘
発明の名称 移動通信システムにおける可変的な測定周期を有する端末機の測定方法及び装置  
代理人 実広 信哉  
代理人 渡邊 隆  

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