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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1283028
審判番号 不服2012-21310  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-29 
確定日 2013-12-24 
事件の表示 特願2009-123006「IT機器の運用管理・保守支援システム及びその方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月 2日出願公開、特開2010-271905〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成21年5月21日の出願であって,平成24年1月25日付けで拒絶理由通知がなされ,同年4月2日に手続補正がなされたが,同年7月25日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年10月29日に拒絶査定不服審判が請求され,当審において,平成25年7月22日付けで最後の拒絶理由通知がなされ,同年9月20日に手続補正がなされたものである。

第2 平成25年9月20日の手続補正の却下について

[補正却下の決定の結論]

平成25年9月20日の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容

平成25年9月20日の手続補正(以下,「本件補正」という。)により,特許請求の範囲の請求項1は,次のように補正された。

「【請求項1】
コンピュータ、コンピュータ周辺機器及び付帯設備の稼働状況を通信回線を介して監視する運用管理・保守支援システムであって、
監視の対象となる前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備が稼働する複数の被監視サイトと、
前記複数の被監視サイトの稼働状況を監視し、該稼働状況に係る情報を収集する監視装置と、
前記稼働状況に係る情報を前記監視装置から取得し、該取得した情報を解析及び蓄積する解析装置と、
前記被監視サイト、前記監視装置及び前記解析装置の操作を行う操作装置と、
を備え、
前記通信回線は、前記被監視サイトと、監視装置と、解析装置と、操作装置とを結び、
前記解析装置は、
前記監視装置で収集された前記複数の被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備の稼働状況に係る稼働時間と故障回数に基づく稼働実績である故障率、及び前記複数の被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備が稼働している環境の温度情報を含む稼働環境情報を蓄積する監視データベースと、
前記被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺装置及び前記付帯設備の設計段階での所定の温度における想定される故障率を含む装置諸元情報を蓄積する装置データベースと、
前記複数の被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備の稼働時間と故障回数に基づく稼働実績である故障率と、前記複数の被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備が稼働している環境の温度情報とから温度に応じて補正された故障率を求め、前記被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備が稼働している環境の温度において、前記補正された故障率が、前記想定される故障率よりも高ければ、異常ありと判断し、補正された故障率が下がるように、所定の遠隔操作をするコンピュータと、
を含むことを特徴とする運用管理・保守支援システム。」

2.新規事項

本件補正後の請求項1には,解析装置が,「前記複数の被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備の稼働時間と故障回数に基づく稼働実績である故障率と、前記複数の被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備が稼働している環境の温度情報とから温度に応じて補正された故障率を求め、前記被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備が稼働している環境の温度において、前記補正された故障率が、前記想定される故障率よりも高ければ、異常ありと判断し、補正された故障率が下がるように、所定の遠隔操作をするコンピュータ」を含むことが記載されている。
平成24年4月2日及び平成25年9月20日の意見書によれば,上記「稼働実績である故障率」は,図6に記載された稼働実績の「故障率」に対応し,上記「補正された故障率」は,稼働実績の「故障率」を図7の「故障率補正値」により補正したものに対応する。また,上記「環境の温度情報」は,図4に記載された稼働環境情報内の温度の取得値に対応し,上記「想定される故障率」は,図9に記載された装置諸元情報の「想定故障率」に対応する。
したがって,解析装置は,図6の稼働実績の「故障率」と図4の稼働環境情報の温度「取得値」とから,その温度「取得値」に応じた図7の「故障率補正値」により「故障率」を補正し,補正された故障率が図9の「想定故障率」よりも高ければ,異常ありと判断し,補正された故障率が下がるように、所定の遠隔操作を行うものである。
そこで,このような解析装置が,願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載したものであるか否かについて検討する。

願書に最初に添付した明細書には,解析装置の動作に関して次の記載がある。
「【0034】
解析要求を受けた解析装置30(ステップS6)は、監視データベース302に受信した情報を蓄積(ステップS7)するとともに、事例データベース303と装置データベース304とを参照しながら受信した情報を解析(ステップS8)し、事例データベース303の持つ実績値を更新(ステップS9)した後、異常の有無を判断(ステップS10)する。
【0035】
異常が認められない場合には監視装置20へ結果を返却し、監視装置20が状態データベースを更新(ステップS11)した後に通常の監視体制へ遷移(ステップS12)して一連の動作は終了する。
【0036】
異常が発生していると判断した場合は、操作装置40へ異常を通報(ステップS13)するとともに、事例データベース303が持つ遠隔操作指示定義に従い、監視装置20に対して遠隔指示する操作の内容を送出(ステップS14)する。
遠隔操作指示を受けた監視装置20(ステップS15)は、自らの持つインタフェースを通じて被監視サイト10の機器・設備に対して操作を行い(ステップS16)、その後に通常の監視体制へ遷移(ステップS17)して一連の動作を終了する。」
上記記載からは,解析装置の動作として,事例データベース303と装置データベース304とを参照しながら監視データベース302に受信した情報を解析し,異常が発生していると判断した場合は,事例データベース303が持つ遠隔操作指示定義に従い、監視装置20に対して遠隔指示する操作の内容を送出することが把握できる。
しかしながら,「故障率」については何ら言及されておらず,図6の稼働実績の「故障率」と図4の稼働環境情報の温度「取得値」とから,その温度「取得値」に応じた図7の「故障率補正値」により「故障率」を補正することも,補正された故障率が図9の「想定故障率」よりも高ければ,異常ありと判断し,補正された故障率が下がるように、所定の遠隔操作を行うことも記載されていない。
また,図2に記載されたフローチャートも,「状態解析(S8)」,「異常あり?(S10)」のようなブロックが記載されているのみで,請求項1に記載された解析装置の動作は記載されていない。

また,願書に最初に添付した図3?10等には,各データベースに記憶された情報が記載され,その中に,稼働実績の故障率,稼働環境情報の温度取得値,温度に応じた故障率補正値,装置諸元情報の想定故障率,装置の内部温度に応じた遠隔操作指定定義などを含むことも記載されている。
しかしながら,図3?図7,図9,図10に関する記載からは,各データベースにどのよう情報を記憶しているかが把握できるだけで,解析装置の動作を何ら示唆するものではない。また,図8には,解析装置の遠隔操作指示に関する定義が記載されているものの,この定義には,装置の内部温度が所定温度(25度,30度,50度)であるかという異常条件により遠隔操作指示を行う例と,装置の無応答期間が所定期間(1分間,10分間)であるかという異常条件により遠隔操作指示を行う例とが記載されているだけで,補正された故障率が想定故障率よりも高いという異常条件の定義は記載されていない。

また,願書に最初に添付した明細書の段落【0004】には,背景技術として,「IT機器を含む電子機器は、設置場所の温度及び湿度等の環境条件によって障害が発生する確率が変化することが知られており、稼働品質の向上策として環境の改善は有効な手段であるが、その効果を前もって予測することが困難であった。」の記載があるものの,この記載からは,設置場所の温度を改善すれば故障率を下げられることと,改善の効果を予測することは困難であることが把握できるだけで,本件補正後の請求項1に記載された解析装置の動作を何ら示唆するものではない。

また,願書に最初に添付した特許請求の範囲には,事例データベースが,「故障率を含む稼働実績」と,「稼働環境である温度と稼働実績である経年とから求められた故障率の補正値」とを蓄積することと,異常ありと判断した場合に,遠隔操作指示定義に従った遠隔指示を行うことが記載されているだけで,補正された故障率が想定故障率よりも高ければ異常ありと判断することは記載されていない。

したがって,本件補正後の請求項1に記載された「前記複数の被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備の稼働時間と故障回数に基づく稼働実績である故障率と、前記複数の被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備が稼働している環境の温度情報とから温度に応じて補正された故障率を求め、前記被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備が稼働している環境の温度において、前記補正された故障率が、前記想定される故障率よりも高ければ、異常ありと判断し、補正された故障率が下がるように、所定の遠隔操作をするコンピュータ」を含む解析装置は,願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載も示唆もされていない。
よって,本件補正は,明細書等に記載された技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであり,願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではない。

3.補正却下の決定のまとめ

したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項に規定される要件を満たしていないので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明

平成25年9月20日の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成24年4月2日の手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

<本願発明>
「コンピュータ、コンピュータ周辺機器及び付帯設備の稼働状況を通信回線を介して監視する運用管理・保守支援システムであって、
監視の対象となる前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備が稼働する複数の被監視サイトと、
前記複数の被監視サイトの稼働状況を監視し、該稼働状況に係る情報を収集する監視装置と、
前記稼働状況に係る情報を前記監視装置から取得し、該取得した情報を解析及び蓄積する解析装置と、
前記被監視サイト、前記監視装置及び前記解析装置の操作を行う操作装置と、
を備え、
前記通信回線は、前記被監視サイトと、監視装置と、解析装置と、操作装置とを結び、
前記解析装置は、
前記監視装置で収集された前記複数の被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備の稼働状況に係る稼働時間と故障回数に基づく稼働実績である故障率、及び前記複数の被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備が稼働している環境の温度情報を含む稼働環境情報を蓄積する監視データベースと、
前記被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺装置及び前記付帯設備の設計段階での所定の温度における想定される故障率を含む装置諸元情報を蓄積する装置データベースと、
前記複数の被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備の稼働時間と故障回数に基づく稼働実績である故障率と、前記複数の被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備が稼働している環境の温度情報とから温度に応じて補正された故障率を求め、前記被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備が稼働している環境の温度において、前記補正された故障率が、前記想定される故障率を上回るか下回るかの判断結果に応じて前記被監視サイトの前記コンピュータ、コンピュータ周辺機器及び付帯設備の異常の有無を判断するコンピュータと、
を含むことを特徴とする運用管理・保守支援システム。」

第4 拒絶理由通知の概要

平成25年7月22日付け拒絶理由通知のうち,理由2と理由4は概略以下のとおりである。

「[理由2]
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

・請求項1
請求項1に記載された「前記複数の被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備の稼働時間と故障回数に基づく稼働実績である故障率と、前記複数の被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備が稼働している環境の温度情報とから温度に応じて補正された故障率を求め、前記被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備が稼働している環境の温度において、前記補正された故障率が、前記想定される故障率を上回るか下回るかの判断結果に応じて前記被監視サイトの前記コンピュータ、コンピュータ周辺機器及び付帯設備の異常の有無を判断するコンピュータ」は、発明の詳細な説明に記載も示唆もされていない。

[理由4]
平成24年4月2日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

補正後の特許請求の範囲には、解析装置が、稼働実績の故障率と稼働環境情報の温度情報とから温度の応じて補正された故障率を求め、補正された故障率が装置諸元情報の想定される故障率を上回るか下回るかの判断結果に応じて、異常の有無を判断することが記載されている。
しかしながら、出願当初の明細書には、「解析要求を受けた解析装置30(ステップS6)は、監視データベース302に受信した情報を蓄積(ステップS7)するとともに、事例データベース303と装置データベース304とを参照しながら受信した情報を解析(ステップS8)し、事例データベース303の持つ実績値を更新(ステップS9)した後、異常の有無を判断(ステップS10)する。」(段落【0034】)のような記載があるのみで、受信した情報の解析や異常の有無の判断について、これ以上の具体的な記載はない。 」

第5 判断

1.特許法第36条第6項第1号違反について

本願発明の「前記複数の被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備の稼働時間と故障回数に基づく稼働実績である故障率と、前記複数の被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備が稼働している環境の温度情報とから温度に応じて補正された故障率を求め、前記被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備が稼働している環境の温度において、前記補正された故障率が、前記想定される故障率を上回るか下回るかの判断結果に応じて前記被監視サイトの前記コンピュータ、コンピュータ周辺機器及び付帯設備の異常の有無を判断するコンピュータ」が,発明に詳細な説明に記載したものであるか否かについて検討する。
前記のとおり,本願発明の解析装置は,図6の稼働実績の「故障率」と図4の稼働環境情報の温度「取得値」とから,その温度「取得値」に応じた図7の「故障率補正値」により「故障率」を補正し,補正された故障率が図9の「想定故障率」を上回るか下回るかの判断結果に応じて被監視サイトのコンピュータ等の異常の有無を判断するものである。

一方,発明に詳細な説明には,解析装置の動作に関して次の記載がある。
「【0034】
解析要求を受けた解析装置30(ステップS6)は、監視データベース302に受信した情報を蓄積(ステップS7)するとともに、事例データベース303と装置データベース304とを参照しながら受信した情報を解析(ステップS8)し、事例データベース303の持つ実績値を更新(ステップS9)した後、異常の有無を判断(ステップS10)する。
【0035】
異常が認められない場合には監視装置20へ結果を返却し、監視装置20が状態データベースを更新(ステップS11)した後に通常の監視体制へ遷移(ステップS12)して一連の動作は終了する。
【0036】
異常が発生していると判断した場合は、操作装置40へ異常を通報(ステップS13)するとともに、事例データベース303が持つ遠隔操作指示定義に従い、監視装置20に対して遠隔指示する操作の内容を送出(ステップS14)する。
遠隔操作指示を受けた監視装置20(ステップS15)は、自らの持つインタフェースを通じて被監視サイト10の機器・設備に対して操作を行い(ステップS16)、その後に通常の監視体制へ遷移(ステップS17)して一連の動作を終了する。」
しかしながら,「故障率」については何ら言及されておらず,この記載から本願発明の解析装置の動作まで把握することはできない。
また,図2に記載されたフローチャートも,「状態解析(S8)」,「異常あり?(S10)」のようなブロックが記載されているのみで,本願発明の解析装置の動作は記載されていない。

また,前記のとおり,図3?図7,図9,図10に関する記載からは,各データベースにどのよう情報を記憶しているかが把握できるだけで,解析装置の動作を何ら示唆するものではない。また,図8には,解析装置の遠隔操作指示に関する定義が記載されているものの,この中に,補正された故障率が想定される故障率を上回るか下回るかというような異常条件の定義は記載されていない。

また,前記のとおり,明細書の段落【0004】には,背景技術として,「IT機器を含む電子機器は、設置場所の温度及び湿度等の環境条件によって障害が発生する確率が変化することが知られており、稼働品質の向上策として環境の改善は有効な手段であるが、その効果を前もって予測することが困難であった。」の記載があるものの,この記載からは,設置場所の温度を改善すれば故障率を下げられることと,改善の効果を予測することは困難であることが把握できるだけで,本願発明の解析装置の動作を何ら示唆するものではない。

したがって,本願発明の「前記複数の被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備の稼働時間と故障回数に基づく稼働実績である故障率と、前記複数の被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備が稼働している環境の温度情報とから温度に応じて補正された故障率を求め、前記被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備が稼働している環境の温度において、前記補正された故障率が、前記想定される故障率を上回るか下回るかの判断結果に応じて前記被監視サイトの前記コンピュータ、コンピュータ周辺機器及び付帯設備の異常の有無を判断するコンピュータ」は,発明に詳細な説明に記載も示唆もされていない。

2.特許法第17条の2第3項違反について

平成24年4月2日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1には,「前記複数の被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備の稼働時間と故障回数に基づく稼働実績である故障率と、前記複数の被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備が稼働している環境の温度情報とから温度に応じて補正された故障率を求め、前記被監視サイトの前記コンピュータ、前記コンピュータ周辺機器及び前記付帯設備が稼働している環境の温度において、前記補正された故障率が、前記想定される故障率を上回るか下回るかの判断結果に応じて前記被監視サイトの前記コンピュータ、コンピュータ周辺機器及び付帯設備の異常の有無を判断するコンピュータ」が記載されている。
しかしながら,コンピュータ(解析装置)の上記動作は,前記第2,2.に記載したとおり,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲,図面に記載されていない。
すなわち,願書に最初に添付した明細書の段落【0034】?【0036】には,解析装置の動作が記載されているものの,「故障率」については何ら言及されていない。
図3?図7,図9,図10に関する記載からは,各データベースに記憶されている情報が把握できるだけで,解析装置の動作を示唆する記載はなく,図8にも,補正された故障率に基づいて異常を判断するような異常条件の定義は記載されていない。
また,明細書の段落【0004】の背景技術に関する記載も,解析装置の上記動作を何ら示唆するものではない。
また,願書に最初に添付した特許請求の範囲には,事例データベースが,「故障率を含む稼働実績」と,「稼働環境である温度と稼働実績である経年とから求められた故障率の補正値」とを蓄積することと,異常ありと判断した場合に,遠隔操作指示定義に従った遠隔指示を行うことが記載されているだけで,補正された故障率が想定される故障率を上回るか下回るかの判断結果に応じて異常の有無を判断するような動作は記載されていない。
よって,平成24年4月2日付けの手続補正は,明細書等に記載された技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであって,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲,図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではない。

第6 まとめ

以上のとおり,本件出願は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず,平成24年4月2日の手続補正は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-29 
結審通知日 2013-10-30 
審決日 2013-11-12 
出願番号 特願2009-123006(P2009-123006)
審決分類 P 1 8・ 56- WZ (G06Q)
P 1 8・ 561- WZ (G06Q)
P 1 8・ 537- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田付 徳雄  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 石川 正二
須田 勝巳
発明の名称 IT機器の運用管理・保守支援システム及びその方法  
代理人 永井 道雄  
代理人 関口 正夫  
代理人 仲野 孝雅  

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