• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) B29C
管理番号 1283189
判定請求番号 判定2013-600029  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2014-02-28 
種別 判定 
判定請求日 2013-07-26 
確定日 2014-01-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第5300108号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 判定請求書及びイ号説明書に示す「熱成形装置」は、特許第5300108号発明の技術的範囲に属する。 
理由 1.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号説明書に示す熱成形装置(以下、「イ号物件」という。)は、特許第5300108号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

2.本件特許発明
本件特許発明は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、その構成を構成要件毎に符号を付して分説すると、以下のとおりのものと認める。
【請求項1】
A 成形位置を通る所定の搬送方向へシートを搬送するシート搬送手段と、
B 前記シートを挟んで相対する熱板及び型を前記成形位置に有し、該成形位置に搬送されたシートを前記熱板で加熱して前記型により成形する成形部と、
C 該成形部に隣接して前記シートを前記搬送方向へ案内するためのシート案内部と、
D 該シート案内部を前記シートの案内位置から前記シートの幅方向外側へ退避可能にさせる案内部退避機構と、
E 前記型を前記成形位置から前記案内位置の方へ引き出すための型引出機構と、
F を備えた熱成形装置。

3.イ号物件
請求人は、イ号物件の仕様書として甲第3号証、イ号物件の写真として甲第4?9号証を提出している。なお、イ号物件は、被請求人が実施している「熱板圧空成形機(型式「TFC-1000」)」である。

(1)甲第3号証により示される事項
ア 甲第3号証には、
「1.機械名称 機械名:熱板圧空成形機
機 種:TFC-1000」
と記載されており、イ号物件は、熱板圧空成形機である。

イ 甲第3号証の「3.機械仕様」の項には、
「(2)シート送り部
・シート送り駆動モータ ACサーボモータ 3.5kW
・シート送り速度 MAX150m/min(任意設定可)
・シート送り寸法設定 0?1250mm(0.1mm毎の任意設定可)
・シートクランプ エアーシリンダにてシートをクランプした枠を
移動」
と記載され、同じく甲第3号証の仕様図の下部の熱板圧空成形機の側面図には、成形機本体を挟んで、左側に右方向に向いた矢印とともに「FLOW」と記載され、右側に「移動クランプストローク1175」と記載されている。
これらの記載からすると、イ号物件は、シートを枠でクランプした後、枠を移動させてシートを搬送する搬送手段を備えるものであり、クランプされたシートは成形機本体に向かって搬送され、成形機本体の成形位置を通過するものと認められる。

ウ 甲第3号証の「3.機械仕様」の項には、
「(1)成形部
・表面板寸法 1150(幅)×1250(送)×20(厚)mm
・・・・
・金型関係 金型ベース(AL)
1200(幅)×1270(送)×25(厚)mm一定
金型高さ 55?200mm
・・・・
・熱定盤 アルミ鋳込ヒータ
幅方向 5ケ 送り方向 6ケ」
と記載され、同じく甲第3号証のヒーター配置図には、ヒーターが縦5個、横6個配置されているとともに、「表面板寸法」、「ヒータ取付板寸法」と記載され、さらにこのヒーター配置図の左端には、ヒーターが配置されている方向に向かって、右方向に向いた矢印、すなわち、シートがヒーターが取り付けられた位置に向かって搬送されることが記載されている。
これらの記載から、イ号物件は、ヒーターにより加熱される表面板と金型を備えるものであり、イ号物件は熱板圧空成形機であるから、技術常識からみて、シートを挟んで成形位置に相対してヒーターで加熱される表面板と金型を配置し、シートを成形するものであると認められる。

エ 甲第3号証の「3.機械仕様」の項には、
「(1)成形部
・・・・
・ガイド機構 リニアガイド式」
と記載され、同じく甲第3号証の仕様図の下部の熱板圧空成形機の側面図には、成形機本体に隣接した左側の装置の一部を示して「ダンサーロール」と記載され、成形機本体に隣接した右側の装置の一部の長さを示して「移動クランプストローク1175」と記載されている。
「ダンサーロール」とは、一般に、ダンサーロールを通過するシートに一定の張力が加えられるように構成したものであり、「移動クランプストローク1175」は、シートをクランプして1175mmのストロークで移動させることを意味しているから、それらは、シートを案内する手段にあたり、イ号物件は、シート案内部を備えているものと認められる。

オ 甲第3号証の仕様図の上部の熱板圧空成形機の上面図には、上面図中の成形機本体左側に、実線で図示された装置と点線で図示された装置が記載され、点線で図示された装置は、実線で図示された装置の側方で、実線で図示された装置とは重ならない位置に位置するように記載されている。
また、仕様図の上面図には、実線で図示された装置と点線で図示された装置の間に「+」の印が記載され、それらの装置の間には二点鎖線で円弧が記載されている。
さらに、甲第4号証の写真には、「成形部」と表示された装置に隣接して「シート案内部」と表示された装置が配置されていること、甲第5,6号証の写真には、「シート案内部」と表示された装置の下部にキャスターが設けられていること、甲第7?9号証の写真には、「シート案内部」と表示された装置と「成形部」と表示された装置は、「連結部」と表示されたヒンジにより連結されていること、がそれぞれ示されている。
甲第3号証の仕様図の上面図で、実線で図示された装置と点線で図示された装置の間を二点鎖線の円弧で結んだ記載、及び「+」の印の記載は、技術常識からみて、実線で図示された装置を、「+」の印の位置を中心に、点線で図示された装置の位置まで二点鎖線の円弧の軌跡で回転移動可能であることを意味するものである。このことは、甲第4?9号証の写真に示された「成形部」と「シート案内部」の間に設けられたヒンジからなる「連結部」と、「シート案内部」の下部に設けられた「キャスター」の存在からも推認できるものである。
甲第3号証の回転可能に配置された成形部本体に隣接する装置は、上記「3.(1)エ」で検討したシートを案内するシート案内部であり、イ号物件は、シート案内部を、シートの案内位置から、このシートの案内位置と重ならない側方まで回転移動可能とする機構を備えているものと認められる。

カ 甲第3号証の「3.機械仕様」の項には、
「(1)成形部
・・・・
・成形型交換装置 上テーブルにローラ取付」
と記載され、同じく、甲第3号証の「6.その他」の項には、
「・・・・
・型替方向 成形機入口方向より行う」
と記載されている。
これらの記載から、イ号物件は成形型交換装置を備え、この成形型交換装置により、金型を型替えのため成形機から引き出す際には、金型を成形機入口方向、すなわち、金型を成形位置からシートが案内される案内位置の方に引き出すものであるから、イ号物件は、金型を成形位置から案内位置の方に引き出すための成形型交換装置を備えているものと認められる。

(2)イ号物件の構成
上記の検討から、イ号物件の構成は、あらためて記載すると、下記のとおりである。
構成a':成形位置を通る所定の搬送方向へシートを搬送するシート搬送手段と、
構成b':前記シートを挟んで相対する表面板及び金型を前記成形位置に有し、該成形位置に搬送されたシートを前記表面板で加熱して前記金型により成形する成形部と、
構成c':該成形部に隣接して前記シートを前記搬送方向へ案内するためのシート案内部と、
構成d':該シート案内部を、シートの案内位置から、このシートの案内位置と重ならない側方の位置まで回転移動可能とする機構と、
構成e':前記金型を前記成形位置から前記案内位置の方に引き出すための成形型交換装置と、
構成f':を備えた熱板圧空成形機。

4.対比・判断
本件特許発明とイ号物件を対比すると、イ号物件の「表面板」、「金型」、「成形型交換装置」、「熱板圧空成形機」は、それぞれ本件特許発明の「熱板」、「型」、「型引出機構」、「熱成形装置」に相当するものと認められ、イ号物件の構成a'、b'、c'、e'、f'は、本件特許発明の構成要件A、B、C、E、Fを充足しているといえる。

次に、構成要件Dの充足性について検討する。
本件特許発明の「案内部退避機構」は、本件特許明細書の記載(段落【0040】?【0041】)によると、シートガイドU3を回転動作させてシート案内位置L2からシートの幅方向外側へ退避させ、成形部U2の上流側の開口部OP1を開放するようにして、型の交換を容易にするものである。
一方、イ号物件の「機構」は、シート案内部を、シートの案内位置から、このシートの案内位置と重ならない側方の位置まで回転移動可能とするものである。
ここで、シート案内部が「シートの案内位置と重ならない側方の位置」にあるとは、回転移動した後のシート案内部が、シートを案内している状態の位置とは重ならない位置まで回転移動可能であることであり、すなわちシート案内部を通過するシートの位置からみると、回転移動した後のシート案内部は、シートの幅方向外側の位置にあるといえる。
そうすると、イ号物件が、金型を成形位置から成形機入口方向に移動させて交換する成形型交換装置を備えることを考慮すると、イ号物件の「機構」は、成形機入口方向に配置されているシート案内部を金型交換作業がしやすいように、元のシートの案内位置から、シートの幅方向外側に退避可能にさせる「案内部退避機構」に相当するものといえる。
よって、イ号物件の構成d'は、本件特許発明の構成要件Dを充足しているといえる。

被請求人は、判定請求答弁書において、本件特許発明の構成要件Dの「シートの幅方向外側へ」は、本件特許明細書の図2で「D2」の矢印で示された上下の直線方向を意味するものであり、イ号物件のシート案内部が回転軸を中心として旋回する円弧状の軌跡とは明らかに異なり、構成要件Dを充足しないイ号物件は本件特許発明の技術的範囲に属しない旨主張している。
しかし、「シートの幅方向外側」は、方向を指す用語ではなく場所を指す用語であって、「シートの幅方向外側へ」は、「シートの幅方向の外側の場所に向かって」の意味であると理解するのが相当であり、「直線方向」の限定が付されていない「シートの幅方向外側へ」を、移動方向をシートの幅方向外側への直線方向と限定して解釈することは妥当ではない。
このことは、本件特許明細書(段落【0040】?【0041】)に、案内部退避機構U4が連結部81とロック機構83からなり、連結部81の回転軸AX1を中心にシートガイドU3を回転動作可能とした実施例が記載されている一方、シートガイドU3をシートの幅方向の外側に向かって直線方向に移動動作可能とすることを示唆する実施例が、本件特許明細書に記載されていないことからも理解できる。

したがって、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Aないし構成要件Fの全てを充足しているといえる。

5.むすび
以上のとおりであるから、判定請求書及びイ号説明書に記載された熱成形装置は、本件特許発明の技術的範囲に属するものである。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2013-12-27 
出願番号 特願2012-245926(P2012-245926)
審決分類 P 1 2・ 1- YA (B29C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 増田 亮子  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 井上 茂夫
豊永 茂弘
登録日 2013-06-28 
登録番号 特許第5300108号(P5300108)
発明の名称 熱成形装置、及び、その型交換方法  
代理人 豊栖 康司  
代理人 堀内 正優  
代理人 高橋 詔男  
代理人 豊栖 康弘  
代理人 三縄 隆  
代理人 木谷 弘行  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ