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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G06Q
管理番号 1283436
審判番号 無効2013-800028  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-02-20 
確定日 2014-01-08 
事件の表示 上記当事者間の特許第4443244号発明「著作物利用実績報告書作成システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4443244号の請求項1ないし12に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4443244号(発明の名称「著作物利用実績報告書作成システム」)は,平成16年1月26日に出願され(特願2004-17035号),平成22年1月22日に特許権の設定登録がなされたものである。
平成25年2月20日付けで特許無効審判の請求がなされ,これに対して平成25年4月16日付けで被請求人から答弁書が提出され,平成25年7月2日に口頭審理を行ったものである。

第2 本件特許発明
本件特許発明は,特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された,次のとおりのものと認める。
なお,請求項1に記載された「著作権情報データベース」は,「著作物情報データベース」の誤記と認め,「著作物情報データベース」とした。
(分説は,審判請求人が請求の理由において示したものである。)
「【請求項1】
(A)著作物を記録した情報記憶媒体を,放送または有線放送を含む公衆送信により放送番組内において再生する再生装置と接続されて備えられ,前記再生装置を用いて再生される著作物の再生ログを記録する再生ログ記録端末と,
(B)一または複数の再生ログ記録端末において記録された著作物の再生ログを蓄積するとともに当該著作物の著作物情報をデータベース検索により照会し,再生された著作物の利用実績情報を集計する著作物利用実績集計端末と,
(C)前記著作物利用実績集計端末からネットワークを介してアクセス可能な著作物情報データベースと,
(D)ネットワークとを含み構成されるシステムであって,
(A1)前記の再生ログ記録端末は,
著作物を記録した情報記憶媒体を再生する再生装置による再生利用情報を監視して,情報記憶媒体に記録されている著作物に関連付けられて記憶されている著作物識別情報と,当該著作物識別情報により識別される著作物の再生利用情報とを検知する再生利用情報検知手段と,
(A2)検知された著作物識別情報および再生利用情報を,所定の再生作業単位ごとの著作物再生利用情報データとして記憶する再生利用情報記憶手段と,
(A3)記憶された著作物再生利用情報データを前記著作物利用実績集計端末に送信する再生利用情報送信手段とを備え,
(B1)前記の著作物利用実績集計端末は,
前記一または複数の再生ログ記録端末から受信した著作物再生利用情報データを受信する,著作物再生利用情報受信手段と,
(B2)一または複数の再生装置で再生利用された著作物に関する著作物再生利用情報データを,著作物識別情報ごとかつ再生作業単位ごとに著作物利用実績データベースとして蓄積する著作物利用実績データ記憶手段と,
(B3)前記著作物利用実績データ記憶手段に記憶された著作物識別情報に基づき,著作物を識別する著作物識別情報とこれに対応付けられた当該著作物に関する著作物情報とを格納した著作物情報データベースに対し,検索要求を行い,検索結果である著作物情報を取得して前記著作物利用実績データ記憶手段に記憶する著作物情報検索手段と,
(B4)前記著作物情報データベースがネットワークに接続されて備えられている場合において,著作物情報データベースにアクセスするために,ネットワークに接続し,ネットワークを介してデータ送受信を行うネットワーク接続手段と,
(B5)前記著作物利用実績データ記憶手段に記憶された著作物利用実績データを,著作物識別情報ごとかつ再生作業単位ごとに,所定の期間における著作物利用実績データとして集計する著作物利用実績データ集計手段と,
(B6)集計された所定の期間における著作物利用実績データを,あらかじめ定める所定フォーマットの著作物利用実績報告書データとして出力する著作物利用実績報告書出力手段とを備えることを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。
【請求項2】
(E)請求項1に記載の発明において,
前記の情報記憶媒体は,CD,CD-ROM,DVD,MD,MO,メモリ,ハードディスク,各種磁気記憶媒体,各種光記憶媒体のいずれかであることを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。
【請求項3】
(F)請求項1または2のいずれかに記載の発明において,
前記著作物は音楽または映像であって,デジタルデータとして前記の情報記憶媒体に記録されていることを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。
【請求項4】
(G)請求項1?3のいずれかに記載の発明において,
前記再生装置は,放送,または有線放送を含む公衆送信により放送番組内において再生するために,一または複数の再生装置がスタジオに備えられたものであって,
(H)前記の再生ログ記録端末は,前記スタジオごとに少なくとも1台の再生ログ記録端末が備えられたことを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。
【請求項5】
(I)請求項1?4のいずれかに記載の発明において,
前記の著作物識別情報は,著作物を記録した情報記憶媒体のディスク,トラック,POSコード,ISRCコードのいずれかを少なくとも含むことを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。
【請求項6】
(J)請求項1?5のいずれかに記載の発明において,
著作物識別情報により識別される著作物の再生利用情報には,著作物の再生回数,再生時間,再生方法,再生日または再生日時,再生作業単位の内の少なくともいずれかの再生利用情報が含まれることを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。
【請求項7】
(K)請求項6に記載の発明において,
前記の再生作業単位には,放送または有線放送を行う放送局別,再生利用を行うスタジオ別,再生利用を行う放送番組別,放送または有線放送を含む公衆送信を行う送信者別,の内の少なくともいずれかの再生作業単位が含まれることを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。
【請求項8】
(L)請求項1?7のいずれかに記載の発明において,
前記再生ログ記録端末にはさらに,情報記憶媒体に記録されている著作物に関連付けられて記憶されている著作物識別情報と,当該著作物識別情報により識別される著作物の再生利用情報を入力する再生利用情報入力手段が備えられたことを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。
【請求項9】
(M)請求項1?8のいずれかに記載の発明において,
前記の再生ログ記録端末または著作物利用実績集計端末には,端末またはこれに接続して備えられた外部記憶装置において,著作物を識別する著作物識別情報とこれに対応付けられた当該著作物に関する著作物情報とを格納した内部著作物情報データベースがさらに備えられたことを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。
【請求項10】
(N)請求項9に記載の発明において,
前記の著作物情報検索手段は,前記の内部著作物情報データベースに対し検索要求を行い,検索結果として所定の著作物情報が取得できなかった場合には,前記ネットワーク接続手段によりネットワークを介して前記著作物情報データベースにアクセスし,検索要求を行うものであることを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。
【請求項11】
(O)請求項1?10のいずれかに記載の発明において,
著作物情報データベースから取得する検索結果である著作物情報には,曲名・その他のタイトル名,作詞者・作曲者・その他の著作者名,レコード会社・原盤制作会社・音楽出版社・その他の著作権者名または著作隣接権者名または出版権者名,演奏者・歌手などの実演家名の内の少なくともいずれかの所定のデータ項目が含まれることを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。
【請求項12】
(P)請求項1?11のいずれかに記載の発明において,
前記著作物利用実績集計端末には,著作物利用実績データを集計するために再生作業単位または所定の期間を入力して集計を行う機能と,著作物利用実績報告書データとして出力するためにあらかじめ定める所定フォーマットを指定する機能とを少なくとも有する著作物利用実績集計プログラムが備えられたことを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。」

第3 当事者の主張
1 審判請求人の主張
審判請求人が平成25年2月20日付けの審判請求書において主張する無効理由の要旨は,次のとおりである。
ア 本件特許の請求項1ないし12に係る発明は,下記甲第1号証ないし甲第5号証(以下,「甲1公報」などという。)に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものであり,請求項1ないし12に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,同法123条1項2号に該当し,無効とされるべきものである。
甲第1号証:特開平11-238088号公報
甲第2号証:特開平10-228290号公報
甲第3号証:特開平7-319572号公報
甲第4号証:特開2002-334171号公報
甲第5号証:特開平10-233081号公報

イ 本件特許の請求項1ないし12に係る発明は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしておらず,同法123条1項4号に該当し,無効とされるべきものである。
なお,無効理由2は,後記のとおり,平成25年7月2日の第1回口頭審理期日において,審判請求人の陳述により取り下げられた。

2 被請求人の主張
(1)被請求人の答弁書における主張の要旨は,次のとおりである。
ア 本件特許の請求項1ないし12に係る発明は,甲1ないし甲5公報に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものではない。
イ 本件特許の請求項1ないし12に係る発明は明確であり,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしている。

(2)上記(1)アの主張の概要は,次のとおりである。
ア 本件特許発明は,既存のシステムをすべて変えることなく,既存のシステムを生かしながら報告書作成を半自動化することにより,仲介事業者及び放送事業者等が効率化でき,報告書作成の過程で作業者によるミスを防止することを目的とし,従来想定されていなかった各種の著作物の再生・利用形態に対応できる報告書作成システムであって,ラジオ放送,テレビ放送,地上波デジタル放送,衛星放送,ケーブルテレビによる放送,有線放送等における複数の再生ログ記録端末(利用情報記録側)と,著作物利用実績集計端末(著作権料集計側)との間で,データ送信を行うシステムである。
本件特許の各請求項に係る発明と甲1ないし甲5公報とは,次の点で,目的及び効果が大きく相違する。
a 本件特許発明のシステムは,ネットワーク(通信回線)及び著作物利用実績集計端末を変えることなく,再生ログ記録端末(利用情報記録側)を対応させるだけで,実施できる点。
b 本件特許発明のシステムは,再生ログ記録端末を起動すれば,それ以降は,著作物利用実績集計端末において著作物再生利用データをデータベース化するまでの間,完全に手作業を廃した自動処理とすることが可能である点。これにより,著作物再生利用データをリアルタイムで一箇所の著作物利用実績集計端末に自動蓄積することができ,また,利用情報記録側で,著作物の再生利用情報をごまかしたりすることを防止できる効果がある。
したがって,甲1ないし甲5公報に記載された技術を組み合わせたとしても,本件発明にはならない。
イ 請求項1に係る発明について
(ア)本件特許の請求項1の発明は,入力作業が自動化されており,自動的に監視,検知して自動入力されるものであり,番組スタッフ等が著作物の再生利用情報をごまかしたりすることを防止できる効果があるのに対し,甲1公報に記載された技術は,手作業で入力を行い,入力されたデータをキーとしてデータベースを参照し他のデータを自動入力するものである。
なお,本件明細書には,手作業についても記載しているが(段落【0051】),付加的に採用してもよいとの趣旨である。
(イ)本件特許の請求項1の発明は,ラジオ放送,テレビ放送,地上波デジタル放送,衛星放送,ケーブルテレビによる放送,有線放送等における複数の再生ログ記録端末,すなわち多数の異なる事業者から,著作物利用実績集計端末に自動的にデータが蓄積されるものであるのに対し,甲2公報に記載された技術は,単一の事業者において,複数の情報提供端末(利用情報記録側)とホスト装置との間でデータの送信を行う通信カラオケのシステムであり,また,甲3公報に記載された技術は,有料データが記録された光ディスクの再生を行う単一の端末におけるシステムである。
(ウ)本件特許の請求項1の発明は,番組制作においては,多数の主体がかかわり,さらに同一会社内においても,各部局や番組単位等で費用負担や予算管理がなされるという業界特有の事情に配慮して,「再生作業単位」の概念を導入し,著作物識別情報,再生利用情報,再生作業単位の3つのデータを扱うものであり,甲1ないし甲3公報に記載された技術とは異なる。
ウ 以上のとおり,本件特許の請求項1の発明は,当業者が甲1ないし甲4公報の記載事項から当業者が容易に想到し得たものではない。
また,本件特許の請求項1を引用する請求項2以下の各請求項の発明についても,同様である。

3 口頭審理について
平成25年7月2日の第1回口頭審理期日において,請求人及び被請求人は次のとおり陳述又は釈明した。
(1)審判請求人
ア 審判請求人は,平成25年6月17日付け口頭審理陳述要領書に記載のとおり陳述する。
口頭審理陳述要領書における主張の概要は,以下のとおりである。
(ア)無効理由1(特許法29条2項)について
a 被請求人は,本件特許発明は,再生ログ記録端末において,電源操作やプログラムを起動させ所定の入力をしてから後は,完全に手作業を配した自動処理とすることが可能であると主張する。
しかしながら,本件特許発明の目的及び効果は,報告書作成を自動化することではなく,報告書作成を「半自動化」することであり,かえって本件請求項8には,著作物識別情報と著作物の再生利用情報を入力する再生利用情報入力手段が備えられたことが特定されていることから,本件特許発明は,報告書作成を半自動化するために手作業で入力する態様も含まれると解釈するのが妥当である。
容易になし得るものである。
b 被請求人は,本件特許発明は,入力作業が自動化されていることから,番組スタッフ等が著作物の再生利用情報をごまかしたりすることを防止できる効果があると主張する。
しかしながら,上記のとおり,本件特許発明の技術的範囲には手作業で入力する態様も含まれてるのであるから,被請求人の主張は失当である。仮に,本件特許発明が自動入力される態様のみを含むものであるとしても,人間の手作業を単に自動化することは,当業者の常套手段であって困難性がなく,また,被請求人が主張する効果も必然的なものであり,格別顕著な効果ではない。
c 被請求人は,本件特許発明は,多数の異なる事業者から,著作物利用実績集計端末にデータが蓄積されるものであるから,人間の作業の単なる自動化ではない,と主張する。
しかしながら,本件請求項1には,「一または複数の再生ログ記録端末」と記載されており,再生ログ記録端末が1台のみの場合を含むものであり,他の請求項も同様である。
被請求人の主張は,本件特許請求の範囲や本件明細書の記載に基づくものではなく失当である。
d 被請求人は,本件特許発明は,再生作業単位で著作権利用料の集計ができるという顕著な効果を有する旨主張する。
しかしながら,本件特許発明は,上記のとおり,再生ログ記録端末が1台備えられる態様も含まれるから,被請求人の主張は,本件特許請求の範囲や本件明細書の記載に基づくものではなく失当である。仮に,再生作業単位が重要な位置づけであるとしても,甲1公報には放送番組毎に放送データを入力し記憶することや,「各放送事業者」,すなわち複数の事業者からデータを受領することが記載されている。
(イ)無効理由2(特許法36条6項2号違反)について
無効理由2(特許法36条6項2号違反)についての主張を取り下げる。

イ なお,口頭審理陳述要領書の2頁6行ないし5頁5行の「第2.無効理由について(1)」の主張は,後記のとおり,被請求人から誤記である旨の釈明があったため,撤回された。

(2)被請求人
ア 誤記等
(ア)本件特許請求の範囲等の誤記について
a 本件特許請求の範囲の請求項1の「著作権情報データベース」は,「著作物情報データベース」の誤記である。
b 本件明細書の段落【0051】「著作権識別情報を検知できた場合には」は,「著作権識別情報を検知できなかった場合には」の誤記である。
(イ)答弁書記載事項の訂正
a 11頁21行?22行:「・・・請求項2以下の各請求項についても,甲第1号証?甲第4号証からは・・・」を,「・・・請求項2以下の各請求項についても,甲第1号証?甲第5号証からは・・・」と訂正する。
b 4頁15行「著作権管理団体等」を,「仲介事業者及び放送事業者等」と訂正する。

イ 被請求人は,以下のとおり陳述する。
(ア)答弁書の趣旨は,審理事項通知書のとおりである。
(イ)「半自動化」の技術的意義は,答弁書で主張したとおりである。本件特許発明は,本来的には自動化を目的としたものである。

第4 当審の判断
1 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし12に係る発明(以下,請求項1に係る発明を「本件特許発明1」などという。)は,前記第2で認定したとおりである。

2 引用発明
(1)甲1公報
ア 甲1公報(特開平11-238088号公報)には,図面とともに,以下の記載がある。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,商業用レコードの音楽著作権料を管理するための著作権料管理装置に関するものである。」
・「【0008】まず,放送局においては,管理団体から指定された期間における放送データを番組のディレクターなどのスタッフが記録してそれを編成部等に通知し,編成部においては各番組から集まった放送データをとりまとめて,管理団体に通知するという手間が必要であった。
【0009】また,管理団体においては,放送局から通知された放送データに基づいて,分配金額を計算するわけであるが,放送データに通知されている著作者が必ず正確であるとは限らず,例えば,1つの曲に歌手,作詞者,作曲者は通知されていても編曲者が通知されていない場合がある。そのために,その編曲者に音楽著作権料が分配されないこととなるので,管理団体においては改めてその曲に関して著作者を正確に確認する必要があり,この作業も非常に面倒であった。
【0010】そこで,本発明は上記問題点に鑑み,商業用レコードの音楽著作権料に関して,簡単にかつ合理的に管理することができる著作権料管理装置を提供する。」
・「【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1の著作権料管理装置は,市販のレコード,CD,DVD,アナログカセットテープ,デジタルカセットテープ,MDなどの音楽を記録した商業用レコードを用いて,ラジオ放送,テレビ放送,有線放送等の番組において,その商業用レコードに記録した音楽を放送事業者または有線放送事業者が放送する場合に,その放送した音楽の音楽著作権料を支払うための放送データを管理する著作権料管理装置であって,前記放送した番組名と,その番組の放送時間と,放送した音楽の曲名と,その曲の歌手,作詞者,作曲者,編曲者などの実演者,または,レコード製作者よりなる著作者とを含む放送データを入力する放送データ入力手段と,前記入力手段によって入力された放送データを記憶する放送データ記憶手段と,所定の団体が指定した期間における前記放送データを前記放送データ記憶手段から抽出する放送データ抽出手段と,前記放送データ抽出手段した前記指定期間における前記放送データを出力する放送データ出力手段とよりなるものである。
【0012】この著作権料管理装置であると,放送事業者は,各番組毎に,番組名,放送時間,使用した曲名,作詞者,作曲者,編曲者等の著作者を放送データ入力手段に入力する。そして,所定の団体から指定された期間を指定すると,放送データ抽出手段がその指定期間における放送データを抽出して,放送データ出力手段が必要な放送データを出力する。
【0013】本発明の請求項2の著作権料管理装置は,・・・各商業用レコード毎の音楽の曲名と,その曲の歌手,作詞者,作曲者,編曲者などの実演者,または,レコード製作者よりなる著作者とを含む著作者データを記憶した著作者データ記憶手段と,前記各放送事業者から通知された放送した番組名,その番組の放送時間,放送した音楽の曲名,その曲の著作者とを含む放送データと,前記著作者データ記憶手段に記憶されたその曲の著作者データとに基づいて,その曲に関する正確な著作者を検索する著作者検索手段と,・・・よりなるものである。
【0014】この著作権料管理装置であると,著作者検索手段が,放送事業者から通知された放送データと著作権データ記憶手段に記憶している著作権データとを比較して,放送データに記憶されている曲における正確な著作者を検索する。・・」
・「【0015】・・・本実施例は,放送事業者管理装置10と団体管理装置12とよりなる。」
・「【0016】放送事業者管理装置10
まず,放送事業者管理装置10について説明する。
【0017】図1は,ラジオ放送,テレビ放送,有線放送等を行っている放送事業者における放送事業者管理装置10のブロック図であり,図2は,その装置10における放送データの内容である。
【0018】放送事業者は,前記したようにラジオ放送,テレビ放送,有線放送などにおいて番組を提供し,その番組において音楽を放送する。この音楽は,市販のレコード,CD,DVD,アナログカセットテープ,デジタルカセットテープ,MD等の音楽を記録した商業用レコードを用いて行っている。この商業用レコードには前記したように音楽が記憶されており,各音楽には,例えば歌手,作詞者,作曲者,編曲者,演奏者等の実演者,または,レコード製作者よりなる著作者が存在する。そして,これら音楽を放送した場合には,著作者に音楽著作権料を支払う必要がある。そのために,この放送事業者管理装置10が存在する。
【0019】放送データ入力部14においては,放送した番組名,放送日,放送時間,その番組で使用した曲名,その曲が記憶されているCDのタイトル,歌手,作詞者,作曲者,編曲者及びその他の情報を入力するものである。
【0020】この入力方法としては,番組名,放送日,放送時間は予め記憶しておき,番組のスタッフが番組名とCDのタイトル,曲名,歌手,作詞者,作曲者,編曲者,その他の情報を入力すると,予め記憶された放送日,放送時間も同時に記憶するようにしておくものである。この放送データが,図2に示すものである。図2においては,放送日が,1998年1月12日であり,放送時間が,20:00?22:00であり,番組名が「夜の電話リクエスト」であり,この番組でかかった曲が,CDの「ABCD」の「あいうえ」,「かきくけ」,「さしすせ」であり,歌手が「特許太郎」というものである。」
・「【0025】放送事業者制御部16は,放送データ入力部14から入力された放送データを,図2に示すように,放送日,放送時間の順番に並べ替えて,放送データ記憶部18に記憶させる。
【0026】次に,管理団体から指定された指定期間を指定期間入力部20より入力する。この指定期間は,日本音楽著作権協会から指定される期間であり,いわゆる民間放送局の場合には,3ヶ月のうちの1週間が指定される。・・・
【0027】放送事業者制御部16は,指定期間入力部20から指定された指定期間に基づいて,放送データ記憶部18を検索し,指定期間に該当する放送データを検索し抽出する。・・・
【0028】この放送データ出力部22は,指定期間における放送データを,書面でプリントアウトしてもよい。また,フロッピディスク(FD)等のデータ記憶媒体に出力してもよい。そして,これら出力した書面,または,データ記憶媒体を管理団体に郵送する。
【0029】さらに,この放送データ出力部22は,上記のように放送データを出力するだけでなく,管理団体に放送データを通知させてもよい。すなわち,インターネット等のコンピュータ通信システムを利用して電子データによって通信によって通知することができる。この通信の場合には,放送データと共に,放送事業者を識別するための放送事業者識別子を送信する。」
・「【0032】図3は,日本音楽著作権協会等の管理団体において使用される団体管理装置12のブロック図であり,団体管理装置12は,合計金額計算部24,放送データ受領部26,管理団体制御部28,著作権データ記憶部30,分配金額出力部32,分配比率データ記憶部34,著作者得点データ記憶部36,総得点データ記憶部38及び分配金額データ記憶部40とより構成される。」
・「【0034】放送データ受領部26
放送データ受領部26は,各放送事業者から通知された指定期間における放送データを受領するものである。この場合に,放送データ受領部26は,各放送事業者からFDやインターネット等のコンピュータ通信システムを通じて電子データとして受領するものである。この放送データの内容は,前記したように図2に示すようなものとなっている。
【0035】なお,コンピュータ通信システムをを通じて電子データとして受領する場合には放送事業者を識別するための放送事業者識別子を受信して,どこから送信されたかを判別する。」
・「【0037】著作権データ記憶部30
この著作権データ記憶部30は,図4に示すように,商業用レコード毎に,例えばCD毎に,曲名,その曲の正確な歌手,作詞者,作曲者,編曲者,その他の著作者を記憶している。
【0038】分配金額出力部32
分配金額出力部32は,計算した分配金額を出力する。出力は,紙によってプリントアウトしてもよく,ディスプレイ等の表示装置に出力してもよい。」
・「【0043】管理団体制御部28
管理団体制御部28は,上記の合計金額計算部24,放送データ受領部26,著作権データ記憶部30,分配金額出力部32,分配比率データ記憶部34,著作者得点データ記憶部36,総得点データ記憶部38及び分配金額データ記憶部40を制御するものである。
【0044】この管理団体制御部28の動作について,まず,簡単に説明する。
【0045】放送データ受領部26が受領した放送データの中からCDのタイトルと曲名を抽出し,このCDのタイトルと曲名に対応する正確な著作者を著作権データ記憶部30から検索してくる。これは,放送データ受領部26で受領した放送データには一応歌手や作詞者等の著作者が記憶されているが,この著作者が必ず正確であるとは限らないからである。
【0046】次に,各放送事業者から受領した放送データから同じ曲が何回放送されたかを検索する。・・・
【0047】このようにして決定した曲毎の放送回数,正確な著作者に基づいて音楽著作権料の分配金額を決定する。
【0048】そして,このように計算した分配金額を分配金額出力部32に出力する。」

・【図2】は,「放送データの内容を示す図」であり,図面を参照すれば,放送日,放送時間,番組名,CDのタイトル,曲名,歌手,作詞者,作曲者,編曲者等の各項目について,それぞれの具体的内容が対応付けられた表が図示されており,「放送データ」には,放送日が1998年1月12日,放送時間が20:00?22:00,番組名が「夜の電話リクエスト」,この番組でかかった曲がCDタイトル「ABCD」の「あいうえ」,「かきくけ」,「さしすせ」,歌手が「特許太郎」であること等の情報が含まれることがわかる。

イ 甲1公報に記載された技術的事項
(ア)甲1公報に記載された技術は,商業用レコードの音楽著作権料を管理するための著作権料管理装置に関するものであり(【0001】),放送データに基づいて音楽著作権料を簡単かつ合理的に管理することができる著作権料管理装置を提供することを課題としたものである(【0008】?【0010】)。
(イ)著作権料管理装置は,放送事業者における放送事業者管理装置10と日本音楽著作権協会等の管理団体において使用される団体管理装置12とからなる(【0015】,【0017】,【0032】)。
放送事業者が,レコード,CD,DVD,アナログカセットテープ,デジタルカセットテープ,MD等の音楽を記録した商業用レコードを用いて,番組において音楽を放送する場合(【0018】),放送事業者管理装置10の放送データ入力部14から,放送した番組名,放送日,放送時間,その番組で使用した曲名,その曲が記憶されているCDのタイトル,歌手,作詞者,作曲者,編曲者等の情報,すなわち放送データを入力すると(【0019】),放送事業者制御部16は,放送データ入力部14から入力された放送データを放送データ記憶部18に記憶する(【0025】)。
ここで,放送データは,放送日,放送時間,番組名,CDのタイトル,曲名,歌手,作詞者,作曲者,編曲者等が対応付けられたものである(【0020】,図2)
指定期間入力部20から指定期間を指定すると,放送事業者制御部16は,放送データ記憶部18を検索し,指定期間における放送データを抽出する(【0026】,【0027】)。放送データ出力部22は,指定期間における放送データ及び放送事業者を識別するための放送事業者識別子を,インターネット等のコンピュータ通信システムを利用して,電子データとして管理団体に送信する(【0029】)。
団体管理装置12は,商業用レコード,例えばCD毎に,曲名,その曲の正確な歌手,作詞者,作曲者,編曲者,その他の著作者を記憶した著作権データ記憶部30を備え(【0032】,【0037】),団体管理装置12の管理団体制御部28は,放送データ受領部26が,各放送事業者から指定期間における放送データ及び放送事業者識別子を受領すると(【0034】,【0035】),放送データの中からCDのタイトルと曲名を抽出し,このCDのタイトルと曲名に対応する正確な著作者を著作権データ記憶部30から検索する(【0045】)。
そして,各放送事業者から受領した放送データから同じ曲が何回放送されたかを検索し,曲毎の放送回数と正確な著作者に基づいて音楽著作権料の分配金額を決定し(【0046】?【0048】),紙にプリントアウトする又はディスプレイ等の表示装置に出力する(【0038】)。

ウ 甲1発明
以上のことから,甲1公報には,音楽を記録した商業用レコードがCDである場合について整理すれば,次の発明(以下,「甲1発明」という。)が記載されている。
「放送事業者管理装置と団体管理装置とからなり,
放送事業者が,音楽を記録した商業用レコードであるCDを用いて,番組において音楽を放送する場合,放送事業者管理装置の放送データ入力部から,放送した番組名,放送日,放送時間,その番組で使用した曲名,その曲が記憶されているCDのタイトル,歌手,作詞者,作曲者,編曲者等の放送データを入力すると,放送事業者制御部は,放送日,放送時間,番組名,CDのタイトル,曲名,歌手,作詞者,作曲者,編曲者等が対応付けられた放送データを放送データ記憶部に記憶し,
指定期間入力部から指定期間を指定すると,放送事業者制御部は,放送データ記憶部を検索し,指定期間における放送データを抽出し,
放送データ出力部は,指定期間における放送データ及び放送事業者を識別するための放送事業者識別子を,インターネット等のコンピュータ通信システムを利用して,電子データとして管理団体に送信し,
団体管理装置は,商業用レコードであるCD毎に,曲名,その曲の正確な歌手,作詞者,作曲者,編曲者,その他の著作者を記憶した著作権データ記憶部を備え,
団体管理装置の管理団体制御部は,放送データ受領部が,各放送事業者から指定期間における放送データ及び放送事業者識別子を受領すると,放送データの中からCDのタイトル及び曲名を抽出し,CDのタイトル及び曲名に対応する正確な著作者を著作権データ記憶部から検索し,放送データから得られた曲毎の放送回数と,正確な著作者に基づいて音楽著作権料の分配金額を決定し,紙にプリントアウトする,又はディスプレイ等の表示装置に出力する,
著作権料管理装置。」

(2)甲2公報
ア 甲2公報(特開平10-228290号公報)には,図面とともに,以下の記載がある。なお,「稼動」と「稼働」の表記が混在するが,「稼動」に統一した。
・「【0006】本発明は,・・・ホスト装置から著作物をコンテンツとする提供用情報を配信し,それを端末側で情報提供サービスに用いるような通信式情報提供システムにおいて,著作物使用料の合理的な算定が可能であり,ひいては健全なシステム運営を実現することを目的とする。」
・「【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】この目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は,提供用情報を蓄積しているホスト装置と,該ホスト装置から配信された提供用情報を用いて利用者に情報提供サービスを実行し得ると共にホスト装置へ稼動実績情報をアップロードできるようにされている情報提供端末とを備える通信式情報提供システムであって,ホスト装置は,提供用情報と著作物使用料との対応関係を記憶しており,情報提供端末から取得した稼動実績情報に基づき,対応関係を参照して,情報提供端末での著作物使用料の総額を算出可能に構成されていることを特徴とする。」
・「【0033】前記多目的入力キー32は各種キーを備えており,カラオケ曲の選択作業や,ホスト装置1との接続などの操作に使用される。カラオケ端末10は,カラオケ演奏を行うために必要なカラオケ曲情報をホスト装置1から有料で供給を受け,内蔵するハードディスク33に記憶・蓄積しておく。・・・
・「【0034】なお,前記ハードディスク33には記憶される1曲分のカラオケ曲情報は,曲同士を識別するための識別情報である曲番号情報及び実体情報から構成されている。」
・「【0036】さらに説明すると,中央制御装置31は,所定のカラオケ演奏プログラムに従って,カラオケ演奏処理を実行するのであるが,中央制御装置31は,リクエストされた曲に対応するカラオケ曲情報をハードディスク33から読み出し,演奏情報は音声再生回路35に,歌詞情報は画面表示制御装置26にそれぞれ転送する。音声再生回路35に出力された演奏情報は,アナログの演奏信号に変換された後,ミキサアンプ38へ送られて電気的に増幅されるとともに,マイクロフォン43を介して入力する利用者の歌声と適度な割合でミキシングされる。ミキシングされた音声信号は,スピーカ41により演奏音として外部へ出力される。」
・「【0038】また,このようにしてカラオケ端末10が稼動している状況は,稼動実績情報(稼動ログ)としてハードディスク33に記憶されていき,定期的にホスト装置1側へアップロードされる。図2にはその稼動ログのフォーマットを示す。稼動ログは,年月日D1及び時分秒D2からなる日時と,稼動内容D3との項目からなる。例えば,電源投入された日時と電源投入されたという稼動内容であったり,演奏された日時とどういう曲番号の曲を演奏したかという稼動内容であったりする。」

イ 以上の記載から,甲2公報には,次の技術が記載されている。
「ハードディスクに,曲同士を識別するための識別情報である曲番号情報及び実体情報から構成される曲情報を蓄積し,カラオケ演奏処理が実行されると,演奏された日時,演奏した曲番号などの稼動内容を,稼動実績情報(稼動ログ)としてハードディスクに記憶する技術。」

(3)甲3公報
ア 甲3公報(特開平7-319572号公報)には,図面とともに,以下の記載がある。
・「【0010】そこでこの発明は・・・情報使用料の後払いを行う上で,実際に利用した情報の種類や量に応じたきわめて合理的な課金管理を可能にする再生データ管理システムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために,この発明では,画像や音声等からなる有料データがあからじめ記録されている情報記録媒体を取り扱うシステムであって,前記情報記録媒体上のデータを再生する再生手段と,前記再生手段で再生したデータのうち前記有料データを再生した場合,その履歴情報を更新処理する更新手段と,前記履歴情報の更新結果を記憶手段に記憶させるための手段とを備える。
【0012】
【作用】上記の手段により,情報記録媒体上の有料データや広告データ等の再生履歴や課金情報が記憶されるようになり,情報使用料の後払いを行う上で,実際に利用した情報の種類や量に応じたきわめて合理的な課金管理を行うことが可能となる。」
・「【0049】図22は,ディスク9上の最内周のリードインエリアにおけるTOC領域のデータフォーマット例を示している。TOC領域には,ディスク9上から再生するデータに対応したTOCデータと,その再生するデータの著作権者を識別するための著作権コードが記録されている。
【0050】図23は,再生履歴記録部41に記録される再生の履歴管理テーブルのフォーマット例を示している。ここでは再生されたデータについて,その再生日付と著作権コードおよびその日付に再生された回数が記録され,これを履歴情報としている。」
・「【0052】・・・履歴情報の生成は,まずデータの再生指示が使用者からあると,CPU部15はTOC領域の中のTOC情報を参照し,指示されたデータのアクセスに必要な情報と著作権コードを読み出す(i1?i2)。ここで履歴管理テーブルを参照し(i3),今日すでにそのデータを再生しているかをチェックする(i4)。ここで再生されていれば,履歴管理テーブル内の該当する著作権コードの再生回数を1回プラスして更新する(i5)。再生されていなかったら履歴管理テーブルに日付と共に著作権コードを回数1回として記録する(i6)。・・・これにより,履歴管理テーブルには1日ごとの再生されたデータの著作権コードと再生回数が記録されることになる。」

イ 以上の記載から,甲3公報には,次の技術が記載されている。
「ディスクのTOC領域には,再生するデータに対応したTOCデータと,その再生するデータの著作権者を識別するための著作権コードが記録されており,
データの再生指示があると,TOC領域の中のTOC情報を参照し,指示されたデータのアクセスに必要な情報と著作権コードを読み出し,履歴管理テーブルに,日付とともに再生されたデータの著作権コードと再生回数を記録する,
ディスク上に記録された著作物の利用状況を管理する技術。」

(4)甲4公報
ア 甲4公報(特開2002-334171号公報)には,図面とともに,以下の記載がある。
・「【0013】・・・本発明が解決しようとする課題は,放送された全ての楽曲の著作権者に対して,その使用の実態に応じた著作権使用料を配分することができることである。」
・「【0018】本発明は,放送された著作物の著作権使用料を算出する方法において,著作物と著作物を識別する著作物識別コードの対応関係を格納したデータベースを構築する段階1と,放送局が著作物を対応する著作物識別コードと共に放送する段階2と,受信機が著作物及び著作物識別コードを受信する段階3と,データベースを参照し,受信した著作物識別コードに該当する著作物を特定すると共に,著作物識別コードを受信した時間に基づいて,特定した著作物が放送された時間を計測する段階4と,著作物毎に放送された時間を集計する段階5と,段階5の集計結果に応じて著作権者に支払うべき著作権使用料を算出する段階6とを含むことを特徴とする著作権使用料算出方法を提供する。
【0019】このような方法によれば,著作物を放送する際に,その著作物識別コードと共に放送するので,受信機側で著作物識別コードを調べることによって,放送された全ての著作物についてその放送の実態を把握することができる。・・・」
・「【0027】図1を参照すると,著作物使用料算出システム100は,データベース10,放送局21?24,受信システム30からなる。受信システム30は,受信機31,識別コード照合部32,識別結果蓄積部33,識別結果処理部34及び使用料計算部35からなる。・・・
【0028】データベース10は,著作物,著作物識別コード(以下,識別コードと略記)及び著作権者の対応関係を格納したデータベースである。」
・「【0030】受信機31は,放送局20の放送を受信する。
【0031】識別コード照合部32は,受信機31が識別コードを受信すると,データベース10にアクセスし,その識別コードに該当する著作物を検索して,結果を出力する。」
・「【0036】著作権使用料の算出に先立って,データベース10が構築される。データベース10は放送局20及び受信システム30の両方からアクセス可能になっている。
【0037】最初に,放送局20が放送しようとする著作物を選択する(ステップS1)。ここで放送局20は著作物Aを選択したものとする。次に,放送局は,データベース10にアクセスして,著作物Aの識別コードCAを取得(ステップS2)し,著作物Aを含む放送素材の中に取り込む(ステップS3)。そして,放送局は,識別コードCAを取り込んだ放送素材を送出する(ステップS4)。このとき,放送局は,自局を表す放送局識別コード信号と共に,識別コード信号CAを例えば1秒毎に送出する。
【0038】このようにして放送された著作物A及び識別コードCAを受信機31が受信する(ステップS5)と,識別コード照合部32は識別コードCAの受信時間を記録する(ステップS6)と共に,データベース10にアクセスして該当する著作物名Aを取得する(ステップS7)。また,放送局識別コードから放送局名を識別する。そして,著作物名A,受信時間,放送局名を識別結果蓄積部33に記憶する(ステップS8)。
【0039】識別結果処理部34は,識別結果蓄積部33に記憶された照合結果を放送局及び著作物別にソートする(ステップS9)。この場合,放送局20が今までに放送した著作物Aに関する照合結果がソートされる。放送局別・著作物別のソート結果は識別結果蓄積部33に記憶される(ステップS10)。」

イ 以上の記載から,甲4公報には,次の技術が記載されている。
「著作物,著作物識別コード及び著作権者の対応関係を格納したデータベースを構築し,
データベースは放送局及び受信システムの両方からアクセス可能であり,
放送局は,放送しようとする著作物を選択すると,データベースにアクセスして著作物識別コードを取得し,著作物識別コードを取り込んだ放送素材を,自局の放送局識別コード信号とともに送出し,
受信システムは,放送された著作物及び著作物識別コードを受信すると,著作物識別コードの受信時間を記録するとともに,データベースにアクセスして著作物名を取得し,また,放送局識別コードから放送局名を識別し,著作物名,受信時間,放送局名を識別結果蓄積部に記憶し,
識別結果蓄積部に記憶された照合結果を放送局及び著作物別にソートし,放送局別・著作物別のソート結果を識別結果蓄積部に記憶する技術。」

(5)甲5公報
ア 甲5公報(特開平10-233081号公報)には,図面とともに,以下の記載がある。
・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,コンピュータに関し,特に,再生媒体に関する関連情報を再生媒体の再生にあわせて表示などで告知する機能を有するコンピュータに関する。」
・「【0010】・・・さらに,各種情報の入力並びに表示を行うための入力部9,表示部10,検索のためのデータベース18を有している。なお,各部はバスライン11を介して相互に通信可能となっており,外部のサーバ13,14,15,18には通信路12を介して相互に通信可能となっている。以上が,コンピュータ1の概略構成である。」
・「【0034】まず,ステップ51にてディスクのセットがなされたか否かが検知される。・・・
【0035】・・・ディスクのセットが検出された場合はステップ52にてセットされたディスクの識別情報を取得する。」
・「【0037】次に,ステップ53で識別情報に対応するキーワードの検索が行われる。具体的にはデータベース18に保持している検索テーブルのデータを検索することで対応するキーワード(例えば音楽CDのキーワードであればアーティスト名,タイトル名)の検索がなされる。・・・
【0038】・・・識別情報からキーワードを検索する検索部16を有する他のサーバ13にアクセスし,得られたキーワードを識別情報と対応させて順次保持していくことで図6のようなデータベースを構築してもよい。」
・「【0044】他方,ステップ53のキーワードの検索にて対応するキーワードが取得できなかった時(ステップ54:NO)は,コンピュータ1のデータベースより更に大きなデータベースを有し,且つ,識別情報からキーワードを検索する検索部16を有する外部サーバ13にアクセスし識別情報を伝送する(ステップ59)。外部サーバ13は検索を行い対応するキーワードをコンピュータ1に伝送する。」

イ 以上の記載から,甲5公報には,次の技術が記載されている。
「ディスク(音楽CD)の識別情報に基づいて,データベースから対応するキーワード(例えば,アーティスト名,タイトル名)を検索する際,コンピュータのデータベースの検索では対応するキーワードが取得できなかったとき,コンピュータに通信路を介して接続された,コンピュータのデータベースより大きな外部データベースから検索する技術。」

3 本件特許発明1について
(1)本件特許発明
本件特許発明1は,前記第2で認定したとおりである。

(2)対比
ア 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)本件特許発明1は,本件明細書の記載を参照すれば,「放送番組その他の制作現場において,著作物使用の報告の元となるリスト作成をする際に,時間や手間のかかる手作業を軽減し,しかも使用料の配分を正確にすることにより,仲介事業者および放送事業者等の事務負担を軽減することの可能なシステムを提供すること」(本件明細書,【0026】)を課題とした発明であって,著作物を記録した情報記憶媒体の再生利用情報を,再生装置に接続された再生ログ記録端末によって記録し,このデータを著作物利用実績集計端末に送信して著作物利用実績データとして蓄積し,当該データを著作物識別情報ごとかつ再生作業単位ごとに集計する,本件特許発明1に特定された構成の「著作物利用実績報告書作成システム」としたものである。
他方,甲1発明は,前記のとおり,放送データに基づいて音楽著作権料を簡単かつ合理的に管理することを課題とした発明であって,放送データを放送事業者管理装置に入力して記録し,このデータを団体管理装置に送信し,放送データから得られた曲毎の放送回数と著作者に基づいて音楽著作権料の分配金額を決定する構成としたものである。
両者は,いずれも放送などで使用される著作物の利用状況を管理するための装置に係る技術であり,仲介事業者及び放送事業者の事務負担を軽減することを課題とし,著作物の利用に係るデータを記録して蓄積し,集計する構成としたものであり,技術分野,課題,及び解決手段が共通する。
(イ)著作物識別情報,再生利用情報,著作物再生利用情報データ,再生作業単位について
a 本件特許発明1は,「著作物を記録した情報記憶媒体を,放送または有線放送を含む公衆送信により放送番組内において再生する再生装置と接続されて備えられ,前記再生装置を用いて再生される著作物の再生ログを記録する再生ログ記録端末」(分説A)を含み,再生ログ記録端末は,「著作物を記録した情報記憶媒体を再生する再生装置による再生利用情報を監視して,情報記憶媒体に記録されている著作物に関連付けられて記憶されている著作物識別情報と,当該著作物識別情報により識別される著作物の再生利用情報とを検知する再生利用情報検知手段」(分説A1),及び「検知された著作物識別情報及び再生利用情報を,所定の再生作業単位ごとの著作物再生利用情報データとして記憶する再生利用情報記憶手段」(分説A2)を備える。
ここで,「著作物識別情報」,「再生利用情報」,「著作物再生利用情報データ」について,本件明細書を参照すれば,「再生ログ記録端末においては,CDプレーヤーなどの再生機能を利用し,再生しているディスク,トラック,POSコード,ISRCコード,その他のコードなどの著作物識別情報と再生利用情報とを自動取得する。取得したコード情報を,番組単位などの再生作業単位での再生ログとして収集し,再生ログをデータベースとして構築する。」(本件明細書,【0043】),「著作物識別情報により識別される著作物の再生利用情報には,著作物の再生回数,再生時間,再生方法,再生日又は再生日時,再生作業単位の内の少なくともいずれかの再生利用情報が含まれる。」(同,【0045】)との記載があることからすれば,本件特許発明1における「著作物識別情報」は,情報記憶媒体に,著作物に関連付けられて記録された,ディスクのタイトル,曲名,コードを含む,著作物固有の情報であり,「再生利用情報」は,ディスクに記録された著作物の再生利用に係る情報であり,「著作物再生利用情報データ」は,これらの総称と解される。
また,「再生作業単位」について,本件明細書を参照すれば,前記のほか,「再生作業単位には,放送または有線放送を行う放送局別,再生利用を行うスタジオ別,再生利用を行う放送番組別,放送または有線放送を含む公衆送信を行う送信者別,カラオケまたはBGMとして再生する設置場所別,インターネット放送またはダウンロードを含む自動公衆送信を行う公衆送信者別,の内の少なくともいずれかの再生作業単位が含まれる。」(同,【0045】)と記載されており,「再生作業単位」は,「放送局」を含むものである。
b 他方,甲1発明は,「放送事業者が,音楽を記録した商業用レコードであるCDを用いて,番組において音楽を放送する場合,放送事業者管理装置の放送データ入力部から,放送した番組名,放送日,放送時間,その番組で使用した曲名,その曲が記憶されているCDのタイトル,歌手,作詞者,作曲者,編曲者等の放送データを入力すると,放送事業者制御部は,放送日,放送時間,番組名,CDのタイトル,曲名,歌手,作詞者,作曲者,編曲者等が対応付けられた放送データを放送データ記憶部に記憶」するものである。
ここで,「音楽を記録した商業用レコードであるCD」は,「著作物を記録した情報記憶媒体」にほかならず,「放送データ」に含まれる「CDのタイトル」,「曲名」等の情報は,情報記憶媒体に記録された著作物に関連付けられた著作物固有の情報であるから,本件特許発明1における「著作物識別情報」に,また,「放送日,放送時間,番組名」は,著作物の再生利用に係る情報であるから,本件特許発明1における「再生利用情報」に相当し,これらの情報を含む「放送データ」は,本件特許発明1における「著作物再生利用情報データ」ないし「再生装置で再生利用された著作物に関する著作物再生利用情報データ」に相当する。
また,甲1発明における「放送事業者」は,音楽著作権料を支払うための放送データを管理する単位であり,「放送局」が含まれることは自明である,前記のとおり,本件特許発明1における「再生作業単位」には「放送局」が含まれるのであるから,甲1発明における「放送事業者」は,本件特許発明1の「再生作業単位」に相当する。
甲1発明は,「CDを用いて,番組において音楽を放送する」場合の「著作権料管理装置」であるから,「著作物を記録した情報記憶媒体を,放送または有線放送を含む公衆送信により放送番組内において再生する再生装置」(分説A)を備えたシステムを前提としていることは明らかである。「放送データ」,すなわち「著作物再生利用情報データ」を記憶する「放送データ記憶部」は,本件特許発明1の「再生利用情報記憶手段」に相当する。さらに,「放送データ記憶部」を備える「放送事業者管理装置」は,本件特許発明1の「著作物の再生ログを記録する再生ログ記録端末」に対応するものであり,両者は,後記の点で相違するもののいずれも再生利用情報を記録する端末であるから,「著作物の著作物再生利用情報データを記録する再生利用情報記録端末」である点で共通するものである。
また,「放送データ」は,「放送事業者管理装置の放送データ入力部から」入力されたものであり,放送事業者管理装置は,「指定期間における放送データ及び放送事業者を識別するための放送事業者識別子を,・・・電子データとして管理団体に送信」するものであることからすれば,「放送データ記憶部」に記録される「放送データ」は,「放送事業者ごと」,すなわち「再生作業単位ごと」のデータである。
c これらのことから,本件特許発明1と甲1発明は,システムが,「著作物を記録した情報記憶媒体を,放送または有線放送を含む公衆送信により放送番組内において再生する再生装置を用いて再生される著作物の著作物再生利用情報データを記録する再生利用情報記録端末」(分説A)を含む点,及び「再生利用情報記録端末」が,「情報記憶媒体に記録されている著作物に関連付けられた著作物識別情報,及び当該著作物識別情報により識別される著作物の再生利用情報を,所定の再生作業単位ごとの著作物再生利用情報データとして記憶する再生利用情報記憶手段」(分説A1,A2)を備える点において共通する。

(ウ)ネットワークについて
甲1発明のシステムは,「インターネット等のコンピュータ通信システムを利用」するものであり,「ネットワーク」を含むものである。
したがって,本件特許発明1と甲1発明は,「ネットワークを含み構成されるシステム」(分説D)である点で共通する。

(エ)著作物利用実績集計端末,再生利用情報送信手段,著作物再生利用情報受信手段について
甲1発明は,「放送事業者管理装置と団体管理装置」から構成され,前記のとおり,「放送事業者管理装置」は,「再生利用情報記録端末」ということができ,また,「団体管理装置」は,後記のとおり,「放送データ」から得られた著作物利用実績に基づき,「放送データから得られた曲毎の放送回数と,正確な著作者に基づいて音楽著作権料の分配金額を決定」するものであり,著作物の利用実績情報を集計するものであることから,本件特許発明1の「著作物利用実績集計端末」とは,後記の点で相違するものの,「著作物利用実績集計端末」と呼称することができる。
また,甲1発明は,「放送事業者管理装置」の「放送データ出力部」が,「指定期間における放送データ及び放送事業者を識別するための放送事業者識別子を,インターネット等のコンピュータ通信システムを利用して,電子データとして管理団体に送信」すると,「団体管理装置」の「放送データ受領部」は,「各放送事業者から指定期間における放送データ及び放送事業者識別子を受領する」ものであり,放送事業者が「一または複数」の場合が含まれることは明らかであるから,「放送データ出力部」及び「放送データ受領部」は,それぞれ本件特許発明1における,「記憶された著作物再生利用情報データを著作物利用実績集計端末に送信する再生利用情報送信手段」(分説A3)及び「一または複数の再生利用情報記録端末から受信した著作物再生利用情報データを受信する,著作物再生利用情報受信手段」(分説B1)に相当する。

(オ)著作物情報データベース,著作物情報検索手段について
本件特許発明1は,「一または複数の再生ログ記録端末において記録された著作物の再生ログを蓄積するとともに当該著作物の著作物情報をデータベース検索により照会し,再生された著作物の利用実績情報を集計する著作物利用実績集計端末」(分説B),「著作物利用実績集計端末からネットワークを介してアクセス可能な著作物情報データベース」(分説C),及び「著作物利用実績データ記憶手段に記憶された著作物識別情報に基づき,著作物を識別する著作物識別情報とこれに対応付けられた当該著作物に関する著作物情報とを格納した著作物情報データベースに対し,検索要求を行い,検索結果である著作物情報を取得して前記著作物利用実績データ記憶手段に記憶する著作物情報検索手段」(分説B3),を備える。
他方,甲1発明は,団体管理装置が,「商業用レコードであるCD毎に,曲名,その曲の正確な歌手,作詞者,作曲者,編曲者,その他の著作者を記憶した著作権データ記憶部」を備え,「各放送事業者から指定期間における放送データ及び放送事業者識別子を受領すると,放送データの中からCDのタイトル及び曲名を抽出し,CDのタイトル及び曲名に対応する正確な著作者を著作権データ記憶部から検索」するものであり,「著作権データ記憶部」には,著作物識別情報であるCDのタイトル及び曲名と,著作者とが対応付けられて記憶されていることは明らかであるから,「著作権データ記憶部」は,「著作物を識別する著作物識別情報とこれに対応付けられた当該著作物に関する著作物情報とを格納した」ものであり,本件特許発明1の「著作物情報データベース」に相当し,上記「検索」は,「著作物の著作物情報をデータベース検索により照会」ことにほかならない。
したがって,本件特許発明1と甲1発明は,システムが,「一または複数の再生利用情報記録端末において記録された著作物の著作物再生利用情報データを受信するとともに当該著作物の著作物情報をデータベース検索により照会し,再生された著作物の利用実績情報を集計する著作物利用実績集計端末」(分説B)と,「著作物利用実績集計端末からアクセス可能な著作物情報データベース」(分説C)を含む点,及び「著作物利用実績集計端末」が,「著作物を識別する著作物識別情報とこれに対応付けられた当該著作物に関する著作物情報とを格納した著作物情報データベースに対し,検索要求を行い,検索結果である著作物情報を取得する著作物情報検索手段」(分説B3)を備える点で共通する。

(カ)著作物利用実績データ,著作物利用実績データ記憶手段について
本件特許発明1は,「一または複数の再生装置で再生利用された著作物に関する著作物再生利用情報データを,著作物識別情報ごとかつ再生作業単位ごとに著作物利用実績データベースとして蓄積する著作物利用実績データ記憶手段」(分説B2)を備え,本件明細書を参照すれば,「著作物利用実績データ」及び「著作物利用実績データ記憶手段」に関し,「著作物利用実績は,・・・再生作業単位に関連づけられて記憶されるので,これら再生作業単位ごとの著作物利用実績を集計,出力することが可能になる。また著作物利用実績データ記憶手段には,著作物の再生回数,再生時間,再生方法,再生日又は再生日時,再生作業単位の内の少なくともいずれかの再生利用情報が含まれて記憶され,これらに基づく集計や出力も可能になる。」(本件明細書,【0057】)との記載がある。
これらのことから,本件特許発明1の「著作物利用実績データ」は,著作物識別情報と,再生作業単位と,著作物の再生回数,再生時間,再生方法,再生日又は再生日時,すなわち再生利用情報とが関連づけられたデータであり,「著作物再生利用情報データ」は,著作物識別情報と再生利用情報とを含むことからすれば,「著作物利用実績データ記憶手段」は,一または複数の再生利用情報と,著作物識別情報及び再生作業単位とを対応付けて蓄積した「データベース」と解される。
他方,甲1発明は,団体管理装置において,「各放送事業者から指定期間における放送データ及び放送事業者識別子を受領」し,「放送データから得られた曲毎の放送回数と,正確な著作者に基づいて音楽著作権料の分配金額を決定」するものであり,ここで,「放送データ」は,前記のとおり,本件特許発明1における「著作物識別情報」及び「再生利用情報」を含むデータであることから,団体管理装置は,複数の放送事業者から,本件特許発明1の「著作物利用実績データ」に相当するデータ及び放送事業者識別子を受信(受領)するものであり,記憶手段にデータベースとして蓄積することは明示されていないものの,少なくとも,「一または複数の著作物利用実績データ」を有すると認められる。

(キ)著作物利用実績データ集計手段について
本件特許発明1は,「著作物利用実績データ記憶手段に記憶された著作物利用実績データを,著作物識別情報ごとかつ再生作業単位ごとに,所定の期間における著作物利用実績データとして集計する著作物利用実績データ集計手段」(分説B5)を備える。
他方,甲1発明は,上記のとおり,「各放送事業者から指定期間における放送データ及び放送事業者識別子を受領」し,「放送データから得られた曲毎の放送回数と,正確な著作者に基づいて音楽著作権料の分配金額を決定」するものであり,放送データには,「放送日,放送時間,番組名,CDのタイトル,曲名,歌手,作詞者,作曲者,編曲者等」が含まれ,「指定期間」における放送データから「曲毎の放送回数」が得られるのであるから,所定の期間における包装データを集計する「集計手段」に相当する構成を備えると認められる。
したがって,本件特許発明1と甲1発明は,後記の点で相違するものの,「著作物利用実績集計端末」が,「著作物利用実績データを,所定の期間における著作物利用実績データとして集計する著作物利用実績データ集計手段」(分説B5)を備える点で共通する。

(ク)著作物利用実績報告書データについて
甲1発明は,各放送事業者から受領した「指定期間における放送データ」に基づいて,「放送データから得られた曲毎の放送回数と,正確な著作者に基づいて音楽著作権料の分配金額を決定し,紙にプリントアウトする,又はディスプレイ等の表示装置に出力するものであり,プリントアウトや表示として出力するに当たり,「あらかじめ定める所定フォーマット」で出力することは自明であり,当該出力は,本件特許発明1の「著作物利用実績報告書データ」に相当するものである。
したがって,本件特許発明1と甲1発明は,「著作物利用実績集計端末」が,「集計された所定の期間における著作物利用実績データを,あらかじめ定める所定フォーマットの著作物利用実績報告書データとして出力する著作物利用実績報告書出力手段」(分説B6)を備える点で一致する。

(ケ)システムについて
甲1発明の「著作権料管理装置」は,上記のとおり,「著作物利用実績報告書データ」を出力するものであるから,本件特許発明1と同様,「著作物利用実績報告書作成システム」と呼称することができる。
なお,本件特許発明1は,本件特許請求の範囲には記載されていないものの,本件明細書の記載を参酌すれば,「放送事業者等」が「著作権仲介事業者」に提出する著作物利用実績報告書を作成するためのシステムであり,再生ログ記録端末及び著作物利用実績集計端末は,「放送事業者等」が管理しているものと解される。
他方,甲1発明は,放送局等の「放送事業者」が,放送データを,本件特許発明1の「著作権仲介事業者」に相当する「管理団体」に通知し,「管理団体」において,通知された放送データに基づいて音楽著作権料の分配金額を決定し,紙にプリントアウトする,又はディスプレイ等の表示装置に出力するものであり,放送事業者管理装置は「放送事業者」が管理し,団体管理装置は「管理団体」において使用されるものである。

イ 一致点及び相違点
以上を総合すれば,本件特許発明1と甲1発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
[一致点]
「著作物を記録した情報記憶媒体を,放送または有線放送を含む公衆送信により放送番組内において再生する再生装置を用いて再生される著作物の著作物再生利用情報データを記録する再生利用情報記録端末と,
一または複数の再生利用情報記録端末において記録された著作物の著作物再生利用情報データを受信するとともに当該著作物の著作物情報をデータベース検索により照会し,再生された著作物の利用実績情報を集計する著作物利用実績集計端末と,
前記著作物利用実績集計端末からアクセス可能な著作物情報データベースと,
ネットワークとを含み構成されるシステムであって,
前記再生利用情報記録端末は,
情報記憶媒体に記録されている著作物に関連付けられた著作物識別情報,及び当該著作物識別情報により識別される著作物の再生利用情報を,所定の再生作業単位ごとの著作物再生利用情報データとして記憶する再生利用情報記憶手段と,
記憶された著作物再生利用情報データを著作物利用実績集計端末に送信する再生利用情報送信手段とを備え,
前記の著作物利用実績集計端末は,
前記一または複数の再生利用情報記録端末から受信した著作物再生利用情報データを受信する,著作物再生利用情報受信手段と,
著作物を識別する著作物識別情報とこれに対応付けられた当該著作物に関する著作物情報とを格納した著作物情報データベースに対し,検索要求を行い,検索結果である著作物情報を取得する著作物情報検索手段と,
著作物利用実績データを,所定の期間における著作物利用実績データとして集計する著作物利用実績データ集計手段と,
集計された所定の期間における著作物利用実績データを,あらかじめ定める所定フォーマットの著作物利用実績報告書データとして出力する著作物利用実績報告書出力手段とを備える,
著作物利用実績報告書作成システム。」

[相違点1]
本件特許発明1は,再生利用情報記録端末が,「再生装置と接続されて備えられ,前記再生装置を用いて再生される著作物の再生ログを記録する再生ログ記録端末」(分説A)であるとともに,「著作物を記録した情報記憶媒体を再生する再生装置による再生利用情報を監視」して,「著作物識別情報と再生利用情報とを検知する再生利用情報検知手段」(分説A1)を備えるものであるのに対して,甲1発明は,再生利用情報記録端末(放送事業者管理装置)に著作物識別情報及び情報記憶媒体の再生利用情報(放送データ)を入力するものであり,再生装置と接続されて再生ログを記録することや再生利用情報検知手段を備えることは,特定されていない点。
[相違点2]
著作物利用実績集計端末(団体管理装置)が,本件特許発明1は,「著作物再生利用情報データを,著作物識別情報ごとかつ再生作業単位ごとに著作物利用実績データベースとして蓄積する著作物利用実績データ記憶手段」(分説B2)を備え,「著作物の再生ログを蓄積」(分説B)するものであり,著作物情報検索手段は,「著作物利用実績データ記憶手段に記憶された」(分説B3)著作物識別情報に基づき検索し,取得した著作物情報を「著作物利用実績データ記憶手段に記憶」(分説B3)し,著作物利用実績データ集計手段は,「著作物利用実績データ記憶手段に記憶された」(分説B5)著作物利用実績データを集計すること,すなわち,著作物利用実績集計端末が著作物利用実績データを記憶することが特定されているの対して,甲1発明は,著作物利用実績集計端末(団体管理装置)が著作物利用実績データを記憶することは明示されていない点。
[相違点3]
著作物情報データベース(著作権データ記憶部)から著作物情報を取得するにあたり,本件特許発明1は,「著作物識別情報に基づき」(分説B3)検索するのに対して,甲1発明は,「CDのタイトル及び曲名」に基づき検索する点。
[相違点4]
著作物情報データベース(著作権データ記憶部)が,本件特許発明1は,「ネットワークを介してアクセス可能」(分説C)であり,「著作物情報データベースがネットワークに接続されて備えられている場合において,著作物情報データベースにアクセスするために,ネットワークに接続し,ネットワークを介してデータ送受信を行うネットワーク接続手段」(分説B4)を備えるのに対して,甲1発明は,著作物利用実績集計端末(団体管理装置)にあり,ネットワークを介してアクセスすることは特定されていない点。
[相違点5]
集計が,本件特許発明1は,「著作物識別情報ごとかつ再生作業単位ごと」の「著作物利用実績」の集計(分説B5)であるのに対して,甲1発明は,「曲毎の放送回数と,正確な著作者に基づいて音楽著作権料の分配金額を決定」することが特定されているものの,本件特許発明1における前記構成は特定されていない点。
[相違点6]
本件特許発明1は,放送事業者等が著作権仲介事業者に提出するための「著作物利用実績報告書」を作成するシステムであり,放送事業者等が,再生利用情報記録端末(再生ログ記録端末)及び著作物利用実績集計端末を管理しているのに対して,甲1発明は,著作権仲介事業者(管理団体)が著作物利用実績報告書を作成するものであり,再生利用情報記録端末(放送事業者管理装置)は,放送事業者が管理しているものの,,著作物利用実績集計端末(団体管理装置)は,著作権仲介事業者(著作権料管理団体)が管理している点。

(3)判断
ア 相違点1について
(ア)甲2公報には,前記のとおり,「ハードディスクに,曲同士を識別するための識別情報である曲番号情報及び実体情報から構成される曲情報を蓄積し,カラオケ演奏処理が実行されると,演奏された日時,演奏した曲番号などの稼動内容を,稼動実績情報(稼動ログ)としてハードディスクに記憶する技術」が記載されている。
また,甲3公報には,前記のとおり,「ディスクのTOC領域には,再生するデータに対応したTOCデータと,その再生するデータの著作権者を識別するための著作権コードが記録されており,データの再生指示があると,TOC領域の中のTOC情報を参照し,指示されたデータのアクセスに必要な情報と著作権コードを読み出し,履歴管理テーブルに,日付とともに再生されたデータの著作権コードと再生回数を記録する,ディスク上に記録された著作物の利用状況を管理する技術」が記載されている。
上記甲2公報及び甲3公報に記載された技術的事項から,記録媒体に記録された著作物の利用状況を管理するに当たり,「著作物を記録した情報記憶媒体を再生する再生装置による再生利用情報を監視して,情報記憶媒体に記録されている著作物に関連付けられて記憶されている著作物識別情報と,当該著作物識別情報により識別される著作物の再生利用情報とを検知する」技術,すなわち,再生装置に接続された再生ログ記録端末により,再生される著作物の識別情報と再生利用情報とを検知する技術は,本件特許出願前において,周知の技術であったと認められる。
(イ)甲1発明は,情報記録媒体として「音楽を記録した商業用レコードであるCD」を用いるものであり,CDには,TOC情報として当該CDや曲を識別する識別コード等の情報が記録されており,CDの再生に当たり,これらの情報を再生制御に用いことは,技術常識であること,及び上記周知技術に鑑みれば,甲1発明において,放送データを入力するにあたり,上記周知技術を採用し,相違点1に係る構成とすることは,当業者であれば,容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
甲1発明における団体管理装置(著作物利用実績集計端末)は,「各放送事業者から指定期間における放送データ及び放送事業者識別子を受領すると,放送データの中からCDのタイトル及び曲名を抽出し,CDのタイトル及び曲名に対応する正確な著作者を著作権データ記憶部から検索し,放送データから得られた曲毎の放送回数と,正確な著作者に基づいて音楽著作権料の分配金額を決定し,紙にプリントアウトする,又はディスプレイ等の表示装置に出力する」ものであり,これらの処理が,データの検索,抽出,集計などの処理を伴うことは,当業者にとって自明である。
一方,データを収集し,コンピュータにより検索,抽出,集計などの処理を行うにあたり,データをデータベースに蓄積し,データを読み出したり書き込んだりすることは,例えば,甲4公報記載の技術に見られるように,周知の技術手段である。
甲4公報には,前記のとおり,「受信システムは,放送された著作物及び著作物識別コードを受信すると,著作物識別コードの受信時間を記録するとともに,データベースにアクセスして著作物名を取得し,また,放送局識別コードから放送局名を識別し,著作物名,受信時間,放送局名を識別結果蓄積部に記憶し,識別結果蓄積部に記憶された照合結果を放送局及び著作物別にソートし,放送局別・著作物別のソート結果を識別結果蓄積部に記憶する」こと,すなわち,受信した著作物及び著作物識別コード等のデータを識別結果蓄積部に記憶し,記憶したデータを放送局別・著作物別にソートした後,再び識別結果蓄積部に記憶することが記載されている。
これらのことからして,甲1発明において,上記処理を実行するに当たり,団体管理装置(著作物利用実績集計端末)が,受領した放送データ(再生ログ)及び放送事業者識別子を「データベース」として蓄積し,データベースに記録されたデータに基づいて処理を実行する構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得ることであり,その際,受領したデータには,著作物識別情報及び放送事業者識別子が含まれること,及び上記甲4公報に記載された技術からすれば,データベースを「著作物識別情報ごとかつ放送事業者(再生作業単位)ごと」に整理し蓄積することは,当業者が適宜なし得る設計事項である。
したがって,甲1発明において,相違点2に係る構成,すなわち,著作物利用実績集計端末が著作物利用実績データを記憶する構成とすることは,上記周知の技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について
前記(2)ア(イ)で検討したとおり,「CDのタイトル及び曲名」は,「著作物識別情報」にほかならない。
仮に,本件特許発明1における「著作物識別情報」が,「著作物識別コード」を含むものであるとしても,上記イ(ウ)のとおり,「著作物識別情報」として,「著作物識別コード」を使用し得ることは,当業者であれば自明のことであり,例えば,甲4公報には,上記のとおり,著作物,著作物識別コード及び著作権者の対応関係を格納したデータベースを構築し,著作物識別コードに基づいて,データベースにアクセスし,著作物名を取得することが記載されていることからすれば,甲1発明において,著作権データ記憶部から正確な著作者を検索するに当たり,「著作物識別コード」を用いる構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
相違点3は,格別のことではない。

エ 相違点4について
システムをデータベースにアクセス可能に接続するための構成として,データベースがシステムに直接接続された構成,及びデータベースがインターネットなどのネットワークを介してシステムに接続された構成は,例えば,甲4公報,甲5公報に記載されているように,いずれも周知であり,いずれを選択するかは,当業者が適宜選択できる事項である。
甲4公報には,前記のとおり,「著作物,著作物識別コード及び著作権者の対応関係を格納したデータベースを構築し,データベースは放送局及び受信システムの両方からアクセス可能であり,放送局は,放送しようとする著作物を選択すると,データベースにアクセスして著作物識別コードを取得し,著作物識別コードを取り込んだ放送素材を,自局の放送局識別コード信号とともに送出し,受信システムは,放送された著作物及び著作物識別コードを受信すると,著作物識別コードの受信時間を記録するとともに,データベースにアクセスして著作物名を取得」する技術,すなわち,放送局及び受信システムの両方からデータベースにアクセス可能とした技術が記載されている。
甲5公報には,前記のとおり,「ディスク(音楽CD)の識別情報に基づいて,データベースから対応するキーワード(例えば,アーティスト名,タイトル名)を検索する際,コンピュータのデータベースの検索では対応するキーワードが取得できなかったとき,コンピュータに通信路を介して接続された,コンピュータのデータベースより大きな外部データベースから検索する技術」,すなわち,データベースがシステムに直接接続された構成,及びデータベースがネットワークを介してシステムに接続された構成の両方を備え,いずれかを選択的に用いる技術が記載されている。
甲1発明において,著作権データ記憶部(著作物情報データベース)を,ネットワークを介してシステムに接続された構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことであり,その場合,ネットワークに接続するための,「ネットワークを介してデータ送受信を行うネットワーク接続手段」を備えることは,自明である。
相違点4は,格別のことではない。

オ 相違点5について
甲1発明は,「各放送事業者から指定期間における放送データ及び放送事業者識別子を受領すると,・・・放送データから得られた曲毎の放送回数と,正確な著作者に基づいて音楽著作権料の分配金額を決定」するものであるところ,「曲毎の放送回数」は,「著作物識別情報ごとの著作物利用実績」にほかならず,各放送事業者から放送データを受領した場合において,放送回数を決定することが,放送回数の「集計」に相当することは,自明である。
また,受領したデータには,放送データ及び放送事業者識別子が含まれることから,「曲毎の放送回数」を,さらに放送事業者識別子ごと(再生作業単位ごと)に集計することが可能であることは,当業者にとって自明である。
例えば,甲4公報には,前記のとおり,受信システムが,「放送局識別コードから放送局名を識別し,著作物名,受信時間,放送局名を識別結果蓄積部に記憶し,識別結果蓄積部に記憶された照合結果を放送局及び著作物別にソートし,放送局別・著作物別のソート結果を識別結果蓄積部に記憶する」こと,すなわち,受領したデータには著作物名及び放送局名が含まれ,これを放送局別・著作物別にソートすることが記載されている。
これらのことからして,データをどのように整理するかは,当業者が必要に応じて設計できる事項であり,相違点5に係る構成のように,「著作物識別情報ごとかつ再生作業単位ごと」に集計することに困難性はない。

カ 相違点6について
本件特許発明1と甲1発明は,いずれも,放送などで使用される著作物の利用状況を管理するにあたって,仲介事業者及び放送事業者の事務負担を軽減することを課題とした発明であり,また,出力される著作物利用実績報告書データは,著作権仲介事業者(管理団体)が,著作権料の徴収や著作権者への分配に使用するためのデータである。
著作物の利用に係るデータを集計し著作物利用実績報告書データとして出力する著作物利用実績集計端末(団体管理装置)を,仲介事業者側あるいは放送事業者装置側のいずれが管理する構成としても,仲介事業者及び放送事業者の事務負担は全体として軽減されるとともに,出力された著作物利用実績報告書データは,結局,仲介事業者(管理団体)が使用することとなるのであるから,著作物利用実績集計端末(団体管理装置),あるいはその機能を,放送事業者と著作権仲介事業者(管理団体)のいずれの側で管理するかは,当業者が適宜選択できる事項であり,甲1発明において,団体管理装置の機能を,放送事業者側が備える構成に変更することは,当業者が容易に想到し得たことである。

キ そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件特許発明1が奏する作用効果は,甲1発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
(4)小括
以上のとおりであるから,本件特許発明1は,甲1公報に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 本件特許発明2及び本件特許発明3について
(1)本件特許発明
本件特許発明2及び本件特許発明3は,前記第2で認定したとおりである。再掲すれば,次のとおり。
「【請求項2】
(E)請求項1に記載の発明において,
前記の情報記憶媒体は,CD,CD-ROM,DVD,MD,MO,メモリ,ハードディスク,各種磁気記憶媒体,各種光記憶媒体のいずれかであることを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。
【請求項3】
(F)請求項1または2のいずれかに記載の発明において,
前記著作物は音楽または映像であって,デジタルデータとして前記の情報記憶媒体に記録されていることを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。」
(2)対比
本件特許発明2及び本件特許発明3と甲1発明とを対比すると,甲1発明は,情報記憶媒体として,「音楽を記録した商業用レコードであるCD」を用いるものであることから,本件特許発明1について前記3(2)で認定した一致点に加え,両者は,「情報記憶媒体は,CD,CD-ROM,DVD,MD,MO,メモリ,ハードディスク,各種磁気記憶媒体,各種光記憶媒体のいずれかである」点,及び「著作物は音楽または映像であって,デジタルデータとして前記の情報記憶媒体に記録されている」点で一致する。
したがって,本件特許発明2及び本件特許発明3と甲1発明との相違点は,相違点1ないし6である。
(3)判断
相違点1ないし6についての判断は,前記3(3)のとおりであり,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件特許発明2及び本件特許発明3が奏する作用効果は,甲1発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
(4)小括
したがって,本件特許発明2及び本件特許発明3は,甲1公報に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 本件特許発明4について
(1)本件特許発明
本件特許発明4は,前記第2で認定したとおりである。再掲すれば,次のとおり。
「【請求項4】
(G)請求項1?3のいずれかに記載の発明において,
前記再生装置は,放送,または有線放送を含む公衆送信により放送番組内において再生するために,一または複数の再生装置がスタジオに備えられたものであって,
(H)前記の再生ログ記録端末は,前記スタジオごとに少なくとも1台の再生ログ記録端末が備えられたことを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。」
(2)対比
本件特許発明4と甲1発明とを対比する。
甲1発明は,「放送事業者が,音楽を記録した商業用レコードであるCDを用いて,番組において音楽を放送する」ことを前提とした発明であり,前記のとおり,「著作物を記録した情報記憶媒体を,放送または有線放送を含む公衆送信により放送番組内において再生する再生装置」を備えたシステムを前提としていることは明らかであり,また,一または複数の再生装置が,放送番組を制作するスタジオに備えられていることは,一般常識である。
本件特許発明4と甲1発明とを対比すると,本件特許発明1ないし3について認定した一致点に加え,「放送,または有線放送を含む公衆送信により放送番組内において再生するために,一または複数の再生装置がスタジオに備えられた」点においても一致し,前記相違点1ないし6に加え,次の点で相違する。
[相違点7]
本件特許発明4は,「再生ログ記録端末は,スタジオごとに少なくとも1台の再生ログ記録端末が備えられ」(分説H)ているのに対して,甲1発明は,当該構成が特定されていない点。

(3)判断
ア 相違点1ないし6についての判断は,前記3(3)のとおりである。
イ 相違点7について
甲1発明における放送事業者管理装置(再生ログ記録端末)は,放送事業者が番組において音楽を放送する場合,放送データを放送データ記憶部に記憶するものであり,放送事業者管理装置(再生ログ記録端末)が,少なくとも放送事業者ごとに備えられていることは明らかであり,放送事業者において,スタジオごとに設けるか,あるいは他の態様を採用するかは,当業者が適宜設計できる事項である。
ウ そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件特許発明4が奏する作用効果は,甲1発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
(4)小括
したがって,本件特許発明4は,甲1公報に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 本件特許発明5について
(1)本件特許発明
本件特許発明5は,前記第2で認定したとおりである。再掲すれば,次のとおり。
「【請求項5】
(I)請求項1?4のいずれかに記載の発明において,
前記の著作物識別情報は,著作物を記録した情報記憶媒体のディスク,トラック,POSコード,ISRCコードのいずれかを少なくとも含むことを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。」
(2)対比,判断
本件特許発明5と甲1発明とを対比する。
甲1発明において,「放送データ」に含まれる「曲名」,「CDのタイトル」等の情報は,前記3(2)アで検討したとおり,情報記憶媒体に記録された著作物の「著作物識別情報」に相当する。
したがって,本件特許発明5と甲1発明とは,本件特許発明1について認定した一致点に加え,「著作物識別情報は,著作物を記録した情報記憶媒体のディスク,トラック,POSコード,ISRCコードのいずれかを少なくとも含む」点においても一致する。
そうすると,本件特許発明5と甲1発明との相違点は,相違点1ないし6である。
(3)判断
相違点1ないし6についての判断は,前記3(3)のとおりであり,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件特許発明6が奏する作用効果は,甲1発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
なお,仮に「著作物識別情報は,著作物を記録した情報記憶媒体のディスク,トラック,POSコード,ISRCコードのいずれかを少なくとも含む」点が相違点であったとしても,相違点1について検討したとおり,CDには,TOC情報として当該CDや曲を識別する識別コードが記録されていることが技術常識であることからすれば,甲1発明において,相違点1に係る構成とすれば,著作物識別情報として,CDに記録された,ディスク,トラック,POSコード,ISRCコードを含む情報を取得することができることは,当業者であれば自明である。
(4)小括
したがって,本件特許発明5は,甲1公報に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 本件特許発明6について
(1)本件特許発明
本件特許発明6は,前記第2で認定したとおりである。再掲すれば,次のとおり。
「【請求項6】
(J)請求項1?5のいずれかに記載の発明において,
著作物識別情報により識別される著作物の再生利用情報には,著作物の再生回数,再生時間,再生方法,再生日または再生日時,再生作業単位の内の少なくともいずれかの再生利用情報が含まれることを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。」
(2)対比
本件特許発明6と甲1発明とを対比する。
前記3(2)アで検討したとおり,「放送データ」には,本件特許発明1における「再生利用情報」に相当する「放送日,放送時間,番組名」が含まれる。
したがって,本件特許発明6と甲1発明とは,本件特許発明1について認定した一致点に加え,「著作物識別情報により識別される著作物の再生利用情報には,著作物の再生回数,再生時間,再生方法,再生日または再生日時,再生作業単位の内の少なくともいずれかの再生利用情報が含まれる」点においても一致する。
そうすると,本件特許発明6と甲1発明との相違点は,相違点1ないし6である。
(3)判断
相違点1ないし6についての判断は,前記3(3)のとおりであり,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件特許発明6が奏する作用効果は,甲1発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
(4)小括
したがって,本件特許発明6は,甲1公報に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

8 本件特許発明7について
(1)本件特許発明
本件特許発明7は,前記第2で認定したとおりである。再掲すれば,次のとおり。
「【請求項7】
(K)請求項6に記載の発明において,
前記の再生作業単位には,放送または有線放送を行う放送局別,再生利用を行うスタジオ別,再生利用を行う放送番組別,放送または有線放送を含む公衆送信を行う送信者別,の内の少なくともいずれかの再生作業単位が含まれることを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。」
(2)対比
本件特許発明7と甲1発明とを対比する。
前記3(2)アで検討したとおり,甲1発明における「放送事業者」は,音楽著作権料を支払うための放送データを管理する単位であり,本件特許発明1の「再生作業単位」に相当するとともに,「放送事業者」に「放送局」が含まれることは明らかである。
したがって,本件特許発明7と甲1発明とは,本件特許発明1について認定した一致点に加え,「再生作業単位には,放送または有線放送を行う放送局別,再生利用を行うスタジオ別,再生利用を行う放送番組別,放送または有線放送を含む公衆送信を行う送信者別,の内の少なくともいずれかの再生作業単位が含まれる」点においても一致する。
そうすると,本件特許発明7と甲1発明との相違点は,相違点1ないし6である。
(3)対比,判断
相違点1ないし6についての判断は,前記3(3)のとおりであり,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件特許発明6が奏する作用効果は,甲1発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
なお,仮に,「再生作業単位」が,「スタジオ別」,「放送番組別」又は「送信者別」であったとしても,音楽著作権料を支払うための放送データを管理する単位は,当業者が適宜設定できる事項であり,甲1発明において,放送データを「スタジオ別」,「放送番組別」又は「送信者別」に管理する構成とすることに格別の困難性はない。
(4)小括
したがって,本件特許発明7は,甲1公報に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

9 本件特許発明8について
(1)本件特許発明
本件特許発明8は,前記第2で認定したとおりである。再掲すれば,次のとおり。
「【請求項8】
(L)請求項1?7のいずれかに記載の発明において,
前記再生ログ記録端末にはさらに,情報記憶媒体に記録されている著作物に関連付けられて記憶されている著作物識別情報と,当該著作物識別情報により識別される著作物の再生利用情報を入力する再生利用情報入力手段が備えられたことを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。」
(2)対比
本件特許発明8と甲1発明とを対比する。
甲1発明は,「放送事業者管理装置の放送データ入力部から,放送した番組名,放送日,放送時間,その番組で使用した曲名,その曲が記憶されているCDのタイトル,歌手,作詞者,作曲者,編曲者等の放送データを入力すると,放送事業者制御部は,放送日,放送時間,番組名,CDのタイトル,曲名,歌手,作詞者,作曲者,編曲者等が対応付けられた放送データを放送データ記憶部に記憶」するものであり,放送事業者管理装置が,放送データを入力する入力手段を備えることは自明であるから,本件特許発明8における,「情報記憶媒体に記録されている著作物に関連付けられて記憶されている著作物識別情報と,当該著作物識別情報により識別される著作物の再生利用情報を入力する再生利用情報入力手段」に相当する構成を備える。
したがって,本件特許発明7と甲1発明とは,本件特許発明1について認定した一致点に加え,「再生利用情報記録端末にはさらに,情報記憶媒体に記録されている著作物に関連付けられて記憶されている著作物識別情報と,当該著作物識別情報により識別される著作物の再生利用情報を入力する再生利用情報入力手段が備えられた」点においても一致する。
そうすると,本件特許発明8と甲1発明との相違点は,相違点1ないし6である。
(3)判断
相違点1ないし6についての判断は,前記3(3)のとおりであり,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件特許発明6が奏する作用効果は,甲1発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
なお,前記3(3)アの相違点1についての判断は,甲1発明において,放送データを入力するにあたり,再生装置に接続された再生ログ記録端末により,再生される著作物の識別情報と再生利用情報とを検知する周知技術を採用し,相違点1に係る構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである,というものであり,一般に,自動化された装置においても,手動で操作し得る構成を予備的に設けた構成が周知であることに鑑みれば,甲1発明において,放送データを入力する入力手段に加えて,相違点1に係る構成を採用することに,阻害事由はない。
(4)小括
したがって,本件特許発明8は,甲1公報に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

10 本件特許発明9及び本件特許発明10について
(1)本件特許発明
本件特許発明9及び本件特許発明10は,前記第2で認定したとおりである。再掲すれば,次のとおり。
「【請求項9】
(M)請求項1?8のいずれかに記載の発明において,
前記の再生ログ記録端末または著作物利用実績集計端末には,端末またはこれに接続して備えられた外部記憶装置において,著作物を識別する著作物識別情報とこれに対応付けられた当該著作物に関する著作物情報とを格納した内部著作物情報データベースがさらに備えられたことを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。
【請求項10】
(N)請求項9に記載の発明において,
前記の著作物情報検索手段は,前記の内部著作物情報データベースに対し検索要求を行い,検索結果として所定の著作物情報が取得できなかった場合には,前記ネットワーク接続手段によりネットワークを介して前記著作物情報データベースにアクセスし,検索要求を行うものであることを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。」
(2)対比,判断
ア 本件特許発明10は本件特許発明9を引用していることから,本件特許発明10と甲1発明とを対比する。
甲1発明は,団体管理装置が,「商業用レコードであるCD毎に,曲名,その曲の正確な歌手,作詞者,作曲者,編曲者,その他の著作者を記憶した著作権データ記憶部」を備え,「各放送事業者から指定期間における放送データ及び放送事業者識別子を受領すると,放送データの中からCDのタイトル及び曲名を抽出し,CDのタイトル及び曲名に対応する正確な著作者を著作権データ記憶部から検索」するものであり,本件特許発明10と対応させれば,前記3(2)で認定したとおり,「著作物利用実績集計端末」(団体管理装置)が「著作物情報データベース」(著作権データ記憶部)を備え,「著作物を識別する著作物識別情報とこれに対応付けられた当該著作物に関する著作物情報とを格納した著作物情報データベースに対し,検索要求を行」うものということができる。
本件特許発明9を引用する本件特許発明10と甲1発明は,本件特許発明1について認定した一致点で一致し,前記相違点1ないし6に加え,次の点で相違する。
[相違点8]
本件特許発明10は,「再生利用情報記録端末又は著作物利用実績集計端末には,端末又はこれに接続して備えられた外部記憶装置において,著作物を識別する著作物識別情報とこれに対応付けられた当該著作物に関する著作物情報とを格納した内部著作物情報データベースがさらに備えられ」ており,著作物情報検索手段は,「内部著作物情報データベースに対し検索要求を行い,検索結果として所定の著作物情報が取得できなかった場合には,ネットワーク接続手段によりネットワークを介して著作物情報データベースにアクセスし,検索要求を行う」もの,すなわち,著作物情報データベースとして「内部著作物情報データベース」と「ネットワークを介して接続された著作物情報データベース」とを備え,まず「内部著作物情報データベース」を検索し,その結果,所定の著作物情報が取得できなかった場合に,「ネットワークを介して接続された著作物情報データベース」を検索するものであるのに対し,甲1発明は,「著作物情報データベース」(著作権データ記憶部)を備え,著作物情報データベースに対し検索要求を行うことは特定されているものの,本件特許発明10における上記構成を備えることは特定されていない点。
なお,相違点8に係る構成は,実質的に,相違点4に係る構成を減縮したものである。
(3)判断
ア 相違点1ないし6についての判断は,前記3(3)のとおりである。
イ 相違点8について検討する。
甲5公報には,前記のとおり,「ディスク(音楽CD)の識別情報に基づいて,データベースから対応するキーワード(例えば,アーティスト名,タイトル名)を検索する際,コンピュータのデータベースの検索では対応するキーワードが取得できなかったとき,コンピュータに通信路を介して接続された,コンピュータのデータベースより大きな外部データベースから検索する技術」,すなわち,コンピュータのデータベースと,通信路を介して接続されたデータベースを備え,まず,前者を検索し,その結果,所定の情報が取得できなかった場合に,他方を検索する発明が記載されている。
甲1発明と甲5公報に記載された発明は,いずれも識別情報に基づいて,データベースを検索する技術を含むものであり,甲1発明における,著作権データ記憶部(著作物情報データベース)を備え,著作権データ記憶部に対し検索要求を行う構成として,甲5公報に記載された上記発明を適用し,相違点8に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
そして,その結果,甲5公報に記載された発明における「コンピュータのデータベース」に対応するデータベースが,「再生利用情報記録端末又は著作物利用実績集計端末には,端末又はこれに接続して備えられた外部記憶装置」に備えられた「内部著作物情報データベース」となることは,自明である。
したがって,相違点8は,甲1発明,甲5公報に記載された発明,及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件特許発明10が奏する作用効果は,甲1発明,甲5公報に記載された発明,及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
本件特許発明10が引用する本件特許発明9も同様である。
(4)小括
したがって,本件特許発明9及び本件特許発明10は,甲1公報並びに甲5公報に記載された発明,及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

11 本件特許発明11について
(1)本件特許発明
本件特許発明11は,前記第2で認定したとおりである。再掲すれば,次のとおり。
「【請求項11】
(O)請求項1?10のいずれかに記載の発明において,
著作物情報データベースから取得する検索結果である著作物情報には,曲名・その他のタイトル名,作詞者・作曲者・その他の著作者名,レコード会社・原盤制作会社・音楽出版社・その他の著作権者名または著作隣接権者名または出版権者名,演奏者・歌手などの実演家名の内の少なくともいずれかの所定のデータ項目が含まれることを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。」
(2)対比
本件特許発明11と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「著作権データ記憶部」(著作物情報データベース)は,「商業用レコードであるCD毎に,曲名,その曲の正確な歌手,作詞者,作曲者,編曲者,その他の著作者を記憶した」するものであり,「著作権データ記憶部」から取得し得る情報に,本件特許発明11における「曲名・その他のタイトル名,作詞者・作曲者・その他の著作者名,レコード会社・原盤制作会社・音楽出版社・その他の著作権者名または著作隣接権者名または出版権者名,演奏者・歌手などの実演家名の内の少なくともいずれかの所定のデータ項目」が含まれることは,自明である。
本件特許発明11と甲1発明は,本件特許発明1について認定した一致点に加え,「著作物情報データベースから取得する検索結果である著作物情報には,曲名・その他のタイトル名,作詞者・作曲者・その他の著作者名,レコード会社・原盤制作会社・音楽出版社・その他の著作権者名または著作隣接権者名または出版権者名,演奏者・歌手などの実演家名の内の少なくともいずれかの所定のデータ項目が含まれる」点においても一致する。
そうすると,本件特許発明11と甲1発明との相違点は,相違点1ないし6である。
(3)判断
相違点1ないし6についての判断は,前記3(3)のとおりであり,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件特許発明11が奏する作用効果は,甲1発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
(4)小括
したがって,本件特許発明11は,甲1発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

12 本件特許発明12について
(1)本件特許発明
本件特許発明12は,前記第2で認定したとおりである。再掲すれば,次のとおり。
「【請求項12】
(P)請求項1?11のいずれかに記載の発明において,
前記著作物利用実績集計端末には,著作物利用実績データを集計するために再生作業単位または所定の期間を入力して集計を行う機能と,著作物利用実績報告書データとして出力するためにあらかじめ定める所定フォーマットを指定する機能とを少なくとも有する著作物利用実績集計プログラムが備えられたことを特徴とする,著作物利用実績報告書作成システム。」
(2)対比
本件特許発明12と甲1発明とを対比する。
甲1発明は,団体管理装置(著作物利用実績集計端末)が,「放送データから得られた曲毎の放送回数と,正確な著作者に基づいて音楽著作権料の分配金額を決定し,紙にプリントアウトする,又はディスプレイ等の表示装置に出力する」ものであり,本件特許発明12と甲1発明は,本件特許発明1について認定した一致点に加え,「著作物利用実績集計端末」が,「著作物利用実績データを集計する機能と,あらかじめ定める所定フォーマットで出力する機能」を備える点で共通し,前記相違点1ないし6に加え,次の点で相違する。
[相違点9]
「著作物利用実績データを集計する機能と,あらかじめ定める所定フォーマットで出力する機能」として,本件特許発明12は,「著作物利用実績データを集計するために再生作業単位または所定の期間を入力して集計を行う機能と,著作物利用実績報告書データとして出力するためにあらかじめ定める所定フォーマットを指定する機能とを少なくとも有する著作物利用実績集計プログラムが備えられ」ているのに対し,甲1発明は,上記機能を有するプログラムについて特定されていない点。
(3)判断
ア 相違点1ないし6についての判断は,前記3(3)のとおりである。
イ 上記相違点9について検討する。
甲1発明は,放送事業者管理装置(再生ログ記録端末)の放送データ記憶部には,「放送日,放送時間,番組名,CDのタイトル,曲名,歌手,作詞者,作曲者,編曲者等が対応付けられた放送データ」が記録され,放送事業者管理装置から,指定期間における放送データ及び放送事業者を識別するための放送事業者識別子を管理団体に送信すると,管理団体(著作物利用実績集計端末)は,各放送事業者から受領した「指定期間における放送データ及び放送事業者識別子」に基づいて,「放送データから得られた曲毎の放送回数と,正確な著作者に基づいて音楽著作権料の分配金額を決定し,紙にプリントアウトする,又はディスプレイ等の表示装置に出力する」,すなわち,「集計された所定の期間における著作物利用実績データを,あらかじめ定める所定フォーマットの著作物利用実績報告書データとして出力する」ものである。
そうすると,放送事業者管理装置(再生ログ記録端末)から管理団体(著作物利用実績集計端末)に送信されるデータには,「放送日,放送時間」及び「再生作業単位」に係る情報である放送事業者識別子が含まれる,あるいは含めることができるのであるから,放送事業者管理装置(再生ログ記録端末)において指定期間における放送データを抽出することに換え,管理団体(著作物利用実績集計端末)において,指定期間における放送データを抽出し,指定された再生作業単位又は指定された期間に基づいて集計を行い,指定されたフォーマットにより出力する構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことであり,これらの機能をプログラムとして構成することは,当業者が適宜なし得る設計事項である。
ウ そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件特許発明12が奏する作用効果は,甲1発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
(4)小括
したがって,本件特許発明12は,甲1発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

13 当審の判断のむすび
以上のとおりであるから,本件特許発明1ないし本件特許発明12は,甲1公報に記載された発明,及び甲2公報ないし甲5公報に記載された発明又は周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお,本件特許発明3ないし本件特許発明12は,それぞれ上位の請求項2ないし11を引用するものであるが,いずれの請求項の組み合せをとっても,同様である。

第5 被請求人の主張について
1 被請求人は,本件特許発明1は,入力作業が自動化されており,番組スタッフ等が著作物の再生利用情報をごまかしたりすることを防止できる効果があるのに対し,甲1発明は,手作業で入力を行い,入力されたデータをキーとしてデータベースを参照し他のデータを自動入力するものであると主張する。
確かに,本件特許発明1は,その実施形態において,「再生利用情報入力手段」(本件明細書,段落【0051】,請求項8等参照)を備えることや,一部手作業で入力する態様が記載されているとしても,本件明細書における「既存のシステムを生かしながら報告書作成を半自動化することにより,仲介事業者および放送事業者等の双方にとって効率化ができ,さらに著作権者にとっても好ましく,作業者にとっても報告書作成の過程でミスを防止することができるシステムを提供することを目的とする」(同,書段落【0010】)等の記載からすれば,本来的には,可能な限り「自動化」することを目的とした技術であり,手作業で入力するための手段は,予備的に付加された構成と解される。
しかしながら,システムを構成するに当たり,作業を「自動化」することは,ありふれた技術的課題であり,一方,前記第4の3(3)アの相違点1について判断したとおり,再生装置に接続された再生ログ記録端末により,再生される著作物の識別情報と再生利用情報とを検知する技術,すなわち,前記情報を手作業で入力することなく自動的に入力する技術が周知であったことに鑑みれば,甲1発明において,再生装置に接続された再生ログ記録端末により,再生される著作物の識別情報と再生利用情報とを検知する前記周知の技術を採用し,相違点1に係る構成とし,入力作業を「自動化」することは,当業者であれば容易に想到し得たことである。そして,入力作業を自動化すれば,恣意的な操作が排除でき,著作物の再生利用情報をごまかしたりすることを防止できる効果があることは,明示の有無にかかわらず自明のことである。
被請求人の主張は採用できない。

2 被請求人は,本件特許発明1は,複数の再生ログ記録端末から,著作物利用実績集計端末に自動的にデータが蓄積されるものであるのに対し,甲2公報に記載された技術は,単一の事業者における通信カラオケのシステムであり,甲3公報に記載された技術は,光ディスクの再生を行う単一の端末におけるシステムであると主張する。
しかしながら,甲2公報及び甲3公報に記載された技術的事項は,前記第4の3(3)アの相違点1についての判断において,再生装置に接続された再生ログ記録端末により,再生される著作物の識別情報と再生利用情報とを検知する技術が周知の技術であったことを裏付けるものであり,甲2公報に記載された技術が,単一の事業者における通信カラオケのシステムであり,甲3公報に記載された技術が,光ディスクの再生を行う単一の端末におけるシステムであったとしても,本件特許発明1ないし本件特許発明12についての想到容易性の判断に影響するものではない。
被請求人の主張は,失当である。

3 被請求人は,本件特許発明1は,「再生作業単位」の概念を導入し,著作物識別情報,再生利用情報,再生作業単位の3つのデータを扱うものである点で,甲1公報ないし甲3公報に記載された技術とは異なると主張する。
しかしながら,前記第4の3(2)アのとおり,甲1発明における団体管理装置(著作物利用実績集計端末)は,各放送事業者から指定期間における放送データ及び放送事業者識別子を受領するものであり,「放送事業者」は,本件特許発明1の「再生作業単位」に相当し,また,各放送事業者から放送事業者識別子とともに送信される「放送データ」は,「著作物識別情報」及び「再生利用情報」を含む「再生作業単位ごと」のデータであるから,甲1発明は,「著作物識別情報」,「再生利用情報」及び「再生作業単位」の3つのデータを扱うものである点で,本件特許発明1と共通する。
なお,甲2公報及び甲3公報は,上記のとおり,相違点1についての判断において,再生装置に接続された再生ログ記録端末により,再生される著作物の識別情報と再生利用情報とを検知する技術が周知の技術であったことを裏付けるものであり,「再生作業単位」に係る構成が記載されていないとしても,本件特許発明1ないし本件特許発明12についての想到容易性の判断に影響するものではない。
被請求人の主張は,失当である。

4 なお,被請求人は,本件特許発明のシステムは,ネットワーク及び著作物利用実績集計端末を変えることなく,再生ログ記録端末を対応させるだけで実施できる,とも主張する。
しかしながら,本件特許発明1ないし12は,特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであるところ,本件明細書に従来技術及びその課題は示されているものの,本件特許発明1ないし12には,既存のシステムをすべて変えることなく,再生ログ記録端末を対応させるだけで実施できる根拠となる構成が特定されているとは認められない。
本件特許発明1ないし本件特許発明12は,前記のとおり,前提とする「既存のシステム」がどのようなものであるかにかかわらず,甲1公報ないし甲5公報に記載された発明又は周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
被請求人の主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおりであるから,本件特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,同法123条1項2号の規定に該当し,その特許を無効とすべきものである。

審判に関する費用については,特許法169条2項で準用する民事訴訟法61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-06 
結審通知日 2013-11-08 
審決日 2013-11-28 
出願番号 特願2004-17035(P2004-17035)
審決分類 P 1 113・ 121- Z (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中内 大介  
特許庁審判長 西山 昇
特許庁審判官 石川 正二
手島 聖治
登録日 2010-01-22 
登録番号 特許第4443244号(P4443244)
発明の名称 著作物利用実績報告書作成システム  
代理人 志賀 明夫  
代理人 金原 正道  
代理人 金原 正道  
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