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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B |
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管理番号 | 1283522 |
審判番号 | 不服2012-21429 |
総通号数 | 171 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-10-30 |
確定日 | 2014-01-28 |
事件の表示 | 特願2006-306821「医療装置位置検出システムおよび医療装置誘導システム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月29日出願公開、特開2008-119253、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年11月13日を出願日とする特願2006-306821号であって、平成23年9月29日付けで拒絶理由が通知され、同年12月2日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされ、平成24年7月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 その後、当審において、平成25年11月20日付けで拒絶理由が通知され、同年12月6日付けで手続補正がなされたものである。 第2 本願の請求項1に係る発明 1 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年12月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1において、次のように特定されるものである。 なお、当該平成25年12月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1は、平成24年10月30日付けの手続補正及び平成23年12月2日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1並びに願書に最初に添付された特許請求範囲の請求項1と同じものである。(請求項1については、出願当初以来、何らの補正もなされていない。) 「被検体内に導入される医療装置と、 該医療装置内に配置され、磁化方向を有することにより磁界に応答し、前記医療装置を誘導する磁界応答部と、 前記被検体内に磁界を形成する磁界発生部と、 前記医療装置の方向を検出するための方向検出磁界を前記磁界発生部から発生させる方向検出磁界制御部と、 前記方向検出磁界による前記磁界応答部の応答を検出する応答検出部と、 前記方向検出磁界の方向と前記応答検出部の検出結果とに基づいて、前記医療装置の方向を算出する方向算出部と、 が設けられた医療装置位置検出システム。」 2 本願発明と本願の発明の詳細な説明に記載された実施例1との対応関係について (1)本願の発明の詳細な説明及び図面には実施例1(第1の実施態様)に関して次の事項が記載されている。(下線は当審で付したものである。) 「【0028】 〔第1の実施形態〕 以下、本発明の第1の実施形態に係る医療装置誘導システムについて図1から図12を参照して説明する。 図1には、本実施形態に係る医療装置誘導システムの概略を説明する模式図が示されている。 医療装置誘導システム1には、図1に示すように、被検体の体腔内に導入されるカプセル医療装置(医療装置)3と、カプセル医療装置3の位置および方向を検出するとともにカプセル医療装置3を誘導する外部装置5と、が設けられている。 【0029】 図2には、図1のカプセル医療装置における座標軸と、外部装置における座標軸とを説明する図が示されている。 カプセル医療装置3には、図2に示すように、up軸(以後、u軸と表記する。)、right軸(以後、r軸と表記する)、front軸(以後、f軸と表記する。)からなる右手座標軸が設定されている。具体的には、永久磁石21の磁化方向に延びるのがu軸、カプセル医療装置3の半径方向に延びるのがr軸、カプセル医療装置3の長手軸線方向に延びるのがf軸である。一方、外部装置5には、x軸、y軸、z軸からなる右手座標系が設定されている。 【0030】 図3には、図1のカプセ医療装置の内部構成を説明する模式図が示されている。 カプセル医療装置3は、図3に示すように、内部に各種の機器を収納する外装7と、被検体の体腔内画像を取得する撮像部(画像取得部、応答検出部)9と、外装7内部の各種機器に動力を供給する電源部11と、発振磁界を発生する発振コイル15と、画像データ等を体外に向けて送信する無線送信機17と、電源部11、撮像部9、発振コイル15および無線送信機17を制御する制御部19と、磁界に対して応答する永久磁石(磁界応答部)21とを備えている。 【0031】 外装7は、カプセル医療装置3のf軸を中心軸とする赤外線を透過する円筒形状のカプセル本体7aと、カプセル本体7aの前端を覆う透明で半球形状の先端部7bと、カプセル本体7aの後端を覆う半球形状の後端部7cとから形成され、水密構造で密閉されたカプセル容器を形成している。 また、外装7のカプセル本体7aの外周面には、f軸を中心として断面円形の線材を螺旋状に巻いた螺旋部23が備えられている。そのため、カプセル医療装置は、f軸を中心として回転されることにより、前進または後進することができる。 【0032】 撮像部9は、被検者の体腔内を撮影して画像を取得するものである。撮像部9には、f軸方向に対して略垂直に配置された基板25aの後端部7c側の面に配置された撮像素子であるイメージセンサ27と、被検者の体腔内面の像をイメージセンサ27に結像させるレンズ群29と、体腔内面を照明するLED(Light Emitting Diode)31とが備えられている。 【0033】 イメージセンサ27は、先端部7bおよびレンズ群29を介して結像された光を電気信号(画像信号)に変換して制御部19へ出力している。このイメージセンサ27としては、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子を用いることができる。 また、LED31は基板25aに、f軸を中心として周方向に間隔をあけて複数配置されている。 【0034】 発振コイル15は発振磁界を発生するものであり、外装7のカプセル本体7aの半径方向内方に円筒状に巻かれて配置されている。 つまり、発振コイル15は中心軸線がf軸方向と略平行に配置され、発振コイル15の開口方向は、永久磁石21の磁化方向に対して直交する方向に配置されている。 【0035】 制御部19は、電源部11と発振コイル15とイメージセンサ27とLED31とに電気的に接続されている。また、制御部19は、イメージセンサ27が取得した画像信号を無線送信機17から送信するとともに、発振コイル15とイメージセンサ27とLED31とのオン・オフを制御している。 【0036】 永久磁石21は、外部装置5から受ける方向検出磁界M1および誘導磁界M2に応じて駆動力を発生するものである。永久磁石21は、無線送信機17の後端部7c側に配置されている。永久磁石21は、f軸方向に対して直交方向(例えば、図における上下方向)に磁化方向(磁極)を有するように配置または着磁されている。 【0037】 外部装置5には、図1に示すように、位置姿勢検出部33と、方向算出部35と、磁界制御部37と、電源39と、インターフェイス41と、画像データ受信部43と、磁界発生部45とが設けられている。 【0038】 図4は、図1の位置姿勢検出部の構成を説明する模式図である。 位置姿勢検出部33は、外部装置5の座標系におけるカプセル医療装置3の座標値(位置)と、カプセル医療装置3のf軸の方向、つまりカプセル医療装置3のu軸、r軸周りの回転位相と、の5自由度を検出するものである。これらの座標値および回転位相の算出方法については、公知の算出方法を用いることができ、特に限定するものではない。位置姿勢検出部33には、図4に示すように、複数の検出コイル47が設けられ、検出コイル47の検出信号が入力されている。 検出コイル47は、カプセル医療装置3の発振コイル15から発振された発振磁界を検出するものであり、カプセル医療装置3の作動範囲の周囲に配置されている。 【0039】 方向算出部35は、図1に示すように、カプセル医療装置3のu軸およびr軸の方向、つまりカプセル医療装置3のf軸周りの回転位相(医療装置の方向)の1自由度を算出するものである。回転位相の算出方法の詳細については後述する。方向算出部35には、図1に示すように、方向算出部35からインターフェイス41のデータ処理部53にカプセル医療装置3のf軸周りの回転位相が入力されている。 【0040】 磁界制御部37は、図1に示すように、カプセル医療装置3の作動範囲内に方向検出磁界M_(1)とおよび誘導磁界M_(2)を形成する磁界形成信号を出力するものである。方向検出磁界M_(1)は、カプセル医療装置3のf軸周りの位相、つまり永久磁石21の磁化方向を検出する際に用いられる磁界である。また、誘導磁界M2はカプセル医療装置3を誘導する磁界であり、カプセル医療装置3におけるf軸の向きを制御するとともに、f軸周りに回転駆動させる回転磁界である。 【0041】 磁界制御部37には、方向検出磁界M_(1)の磁界方向および磁界強度を制御する磁界形成信号を生成する方向検出磁界制御部49と、誘導磁界M_(2)の磁界方向および磁界強度を制御する磁界形成信号を出力する誘導磁界制御部51とが設けられている。 方向検出磁界制御部49は、カプセル医療装置3の方向検出時に、磁界発生部45が発生する磁界を制御する磁界形成信号を出力する。一方、誘導磁界制御部51は、カプセル医療装置3の誘導時に、磁界発生部45が発生する磁界を制御する磁界制御信号を出力する。 磁界制御部37には、方向算出部35からカプセル医療装置3のf軸周りの回転位相が入力され、インターフェイス41のデータ処理部53から操作者が入力した操作情報が入力されている。」 「【0052】 磁界発生部45は、電源39から供給される交流電力に基づいて、方向検出磁界M_(1)や誘導磁界M_(2)を形成するものである。磁界発生部45としては、ヘルムホルツコイルなどの公知のコイルを用いることができ、特に限定するものではない。 また、本実施形態では、同一のコイルにより方向検出磁界M_(1)と誘導磁界M_(2)を形成する場合に適用して説明するが、方向検出磁界M_(1)を形成するコイルと、誘導磁界M_(2)を形成するコイルとを別々に設けてもよく、特に限定するものではない。 【0053】 次に、上記の構成からなる医療装置誘導システム1におけるカプセル医療装置の作用について説明する。 まず、カプセル医療装置3の誘導法の概略および画像の取得方法について説明し、その後に本実施形態の特徴であるカプセル医療装置3におけるf軸周りの回転位相の検出方法および検出された回転位相に基づいたカプセル医療装置3の誘導方法について説明する。 【0054】 まず、図1に示されるように磁界発生部45により誘導磁界M2が形成される空間Sに被験者を配置する。 次いで、カプセル医療装置3の電源を入れ、カプセル医療装置3を被検者の口部または肛門から体腔内に投入する。また、外部装置5においても位置姿勢検出部33等への電力を供給開始する。 【0055】 体腔内に投入されたカプセル医療装置3においては、所定時間後に撮像部9の作動が開始され、LED31からの照明光により照明された体腔内面の画像が、イメージセンサ27により取得される。取得された画像データは、制御部19を介して無線送信機17に引き渡され、無線送信機17を介して画像データ受信部43に送信される。 【0056】 画像データは、画像データ受信部43からインターフェイス41のデータ処理部53に入力される。データ処理部53において、カプセル医療装置3の回転とともに回転する画像データは、方向算出部35により算出されたカプセル医療装置3のf軸周りの回転位相に基づいて、静止した画像データに変換される。変換された画像データは表示部57に出力され、表示部57に体腔内面の画像が表示される。 【0057】 表示部57に表示された体腔内面の画像を確認した操作者は、インターフェイス41の操作部55を操作することにより、カプセル医療装置3の進行方向および進行速度などの操作情報をデータ処理部53に入力する。操作部から入力される操作情報はカプセル医療装置の座標系に基づく操作情報であるので、データ処理部は、方向算出部35により算出されたカプセル医療装置3のf軸周りの回転位相に基づいて、外部装置5の座標系に基づく操作情報に変換する。 【0058】 変換された操作情報は磁界制御部37に入力される。磁界制御部37は、誘導磁界制御部51において、回転磁界である誘導磁界M_(2)の回転軸方向、回転方向および回転速度等を決定し、誘導磁界M_(2)を形成する磁界形成信号を電源39に出力する。電源39は入力された磁界形成信号に基づいて発生した交流電力を磁界発生部45に供給する。これにより、磁界発生部は励磁され、所望の誘導磁界M_(2)が形成される。 なお、誘導磁界M_(2)の回転軸方向は、カプセル医療装置3の方向(f軸の方向)や進行方向を制御するものであり、回転方向は、カプセル医療装置3の前進および後進を制御するものであり、回転速度はカプセル医療装置3の進行速度を制御するものである。 【0059】 次に、本実施形態の特徴であるカプセル医療装置3におけるf軸周りの回転位相、つまり、方向検出磁界の磁界方向と永久磁石の磁化方向との角度ズレの検出方法について説明する。 まず、磁界制御部37の方向検出磁界制御部49は、位置姿勢検出部33により算出されたカプセル医療装置3のf軸の方向に対して、垂直な面(u-r平面)内で磁界方向が任意方向で、磁界強度がH_(1)の方向検出磁界M_(1)を発生する磁界形成信号を磁界発生部45に出力する。これにより、磁界発生部45は方向検出磁界M_(1)を発生する。 【0060】 図10は、磁界強度H_(1)の方向検出磁界M_(1)が働いている際にカプセル医療装置が撮像した画像を説明する図である。 カプセル医療装置3の永久磁石21に対して方向検出磁界M_(1)が働いている状態で、イメージセンサ27により、図10に示すような、体腔内壁の画像が取得される。ここで、方向検出磁界M_(1)の磁界方向と永久磁石21の磁化方向との角度ズレを検出するのに用いられる検出パターンPが設定される。 【0061】 そして方向検出磁界制御部49は、方向検出磁界M_(1)の磁界方向はそのままで、磁界強度をH_(2)に強くする磁界形成信号を磁界発生部45に出力する。これにより、磁界発生部45は磁界強度がH_(2)の方向検出磁界M_(1)を発生する(検出磁界発生ステップ)。 方向検出磁界M_(1)の磁界強度が強くなると、永久磁石21に働くトルクTが強くなり、カプセル医療装置3はf軸周りに回転する。 【0062】 図11は、磁界強度H2の方向検出磁界M_(1)が働いている際にカプセル医療装置が撮像した画像を説明する図である。 このようにカプセル医療装置3に磁界強度がH_(2)の方向検出磁界M_(1)を作用させた後、イメージセンサ27により、図11に示すような、体腔内壁の画像が取得される。このとき画像に写されている検出パターンPは、図10に示す画像と比較して、角度αだけ回転している。 方向算出部35は、図10および図11に示す画像を比較して、検出パターンPの回転角αを検出することにより、カプセル医療装置3のf軸周りの回転角αを求める(応答検出ステップ)。検出パターンPを複数個設定することで、より正確にαを求めることができる。 【0063】 図12は、永久磁石の磁界と、方向検出磁界と、永久磁石に働くトルクとの関係を示す図である。 方向算出部35は、方向検出磁界M_(1)の磁界強度変化の前後における永久磁石21に働くトルクの関係式と、方向検出磁界M_(1)の磁界方向と永久磁石21の磁化方向とのなす角θの変化と回転角αとの関係式に基づいて、なす角θ(角度ズレ)を算出する(方向検出ステップ)。 ここで、磁界強度Hの方向検出磁界M_(1)により、磁界強度Mの永久磁石21に働くトルクTは、図12に示す図から下記の式(1)により求められることが判る。 T=MHsinθ ・・・(1) 【0064】 方向検出磁界M_(1)の磁界強度変化の前後において、永久磁石21に働くトルクTは変化しないため、下記の式(2)が導かれる。 MH_(1)sinθ_(1)=MH_(2)sinθ_(2) ・・・(2) ここで、θ_(1)は、磁界強度H_(1)の方向検出磁界M_(1)が形成されている時の方向検出磁界M1の磁界方向と永久磁石21の磁化方向とのなす角であり、θ_(2)は、磁界強度H_(2)の方向検出磁界M_(1)が形成されている時の方向検出磁界M_(1)の磁界方向と永久磁石21の磁化方向とのなす角である。 また、回転角αはなす角θ_(1)とθ_(2)を用いて下記の式(3)のように表される。 θ_(1)-θ_(2)=α ・・・(3) 【0065】 方向算出部35は、上記の式(2)および式(3)に基づいて、方向検出磁界M_(1)の磁界方向と永久磁石21の磁化方向とのなす角θ_(1),θ_(2)を算出する。 このように算出されたなす角θ_(1),θ_(2)および方向検出磁界M_(1)の磁界方向により、永久磁石21の磁化方向、つまりカプセル医療装置3のf軸周りの回転位相(方向、姿勢)が求められる。 【0066】 方向算出部35により求められたカプセル医療装置3のf軸周りの回転位相は、磁界制御部37の誘導磁界制御部に入力される。誘導磁界制御部は、カプセル医療装置3のf軸周りの回転位相に基づいて誘導磁界M_(2)の磁界方向を決定し、磁界発生部から誘導磁界M_(2)を発生させる(誘導磁界発生ステップ)。 【0067】 なお、カプセル医療装置3の誘導と方向検出は交互に繰り返して行われ、カプセル医療装置3の方向検出の結果は誘導磁界M2の制御にフィードバックされる。上述のなす角θが適切な値になるように誘導磁界M2の磁界方向を制御することで、カプセル医療装置3をより効率的かつ安定して制御することができる。 【0068】 上記の構成によれば、方向算出部35において永久磁石21の磁化方向と方向検出磁界M1の磁界方向とのなす角θ(角度差)が算出されるため、カプセル医療装置における位置姿勢(6自由度)の内、5自由度を検出する位置姿勢検出部を用いて6自由度の位置姿勢検出ができる。 なす角θは、方向検出磁界M_(1)の磁界強度を強くした時のカプセル医療装置3(永久磁石21)の回転角αに基づいて、方向算出部35において算出される。このように、算出されたなす角θを用いることで、方向算出部35はカプセル医療装置3のf軸周りの向き(永久磁石21の磁化方向の向き)を算出できる。 【0069】 上述のように、カプセル医療装置3のf軸周りの向きが算出されることにより、データ処理部53において、カプセル医療装置の回転と共に回転する画像データを静止した画像データに補正する際に、より正確な回転補正を行うことができる。 【0070】 また、誘導磁界M_(2)として回転磁界を発生した後に、続けて誘導磁界M_(2)として勾配磁界を発生させて、カプセル医療装置に磁気引力を作用させる場合、効率的に磁気引力を発生させることができる。つまり、カプセル医療装置3のf軸周りの向きに合わせて(永久磁石21の磁化方向と平行となるように)、勾配磁界の磁界方向を決定することで、永久磁石に効率的に磁気引力を働かせることができ、効率的に磁気引力を発生することができる。 【0071】 被検体内のカプセル医療装置3は、磁界発生部45により形成された方向検出磁界M1内に位置することから、カプセル医療装置3内の永久磁石21は方向検出磁界M1によりf軸周りに回転される。この永久磁石21(カプセル医療装置3)の回転角αは撮像部9により撮像された画像から検出される。カプセル医療装置3のf軸周りの回転位相は、カプセル医療装置3の回転量を累積によって求める方法と比較して、方向検出磁界M1の磁界方向と検出された永久磁石21のカプセル医療装置3の回転角αとに基づいて算出されることから、より高い精度で求められる。 【0072】 言い換えると、方向検出磁界M_(1)を永久磁石21に作用させることにより、カプセル医療装置3はf軸周りに回転され、カプセル医療装置3の回転角αは撮像部9により撮像された画像から検出される。u軸およびr軸の方向は、検出された回転角αに基づいて算出される。 【0073】 カプセル医療装置3におけるu軸、r軸およびf軸の軸方向のうち、r軸およびf軸の軸方向が方向検出磁界M_(1)による永久磁石21の回転角αから算出されるため、カプセル医療装置3内に別途検出部を設ける必要がなく、その構成を簡略化できる。」 「【図1】 」 「【図3】 」 (2)本願発明と本願の発明の詳細な説明に記載された実施例1との対応関係 上記の(1)の本願の発明の詳細な説明及び図面における実施例1(第1の実施態様)に関する記載から、本願発明の「医療装置位置検出システム」の各構成要素は、実施例1(第1の実施態様)の各構成要素と次のように対応している。 ア 本願発明の「被検体内に導入される医療装置」は、実施例1においては「カプセル医療装置3」である。 イ 本願発明の「該医療装置内に配置され、磁化方向を有することにより磁界に応答し、前記医療装置を誘導する磁界応答部」は、実施例1においては「永久磁石21」である。 ウ 本願発明の「前記被検体内に磁界を形成する磁界発生部」は、実施例1においては「磁界発生部45」である。 エ 本願発明の「医療装置の方向を検出するための方向検出磁界」は実施例1においては「方向検出磁界M_(1)」であるから、本願発明の「医療装置の方向」は、実施例1では「方向検出磁界M_(1)の磁界方向と永久磁石21の磁化方向とのなす角θ」であるということができ、よって、本願発明の「前記医療装置の方向を検出するための方向検出磁界を前記磁界発生部から発生させる方向検出磁界制御部」は、実施例1においては「磁界発生部45」によって発生された「方向検出磁界M_(1)の磁界方向および磁界強度を制御する磁界形成信号を生成する方向検出磁界制御部49」が設けられている「磁界制御部37」である。 オ 本願発明の「方向検出磁界による磁界応答部の応答を検出する」ことは、実施例1においては、「カプセル医療装置3に磁界強度がH_(2)の方向検出磁界M_(1)を作用させた後、イメージセンサ27により、画像に写されている検出パターンP」が「回転している」「角度α」を検出することであるから、本願発明の「前記方向検出磁界による前記磁界応答部の応答を検出する応答検出部」は、実施例1においては「イメージセンサ27」であるといえる。 カ 本願発明の「前記方向検出磁界の方向と前記応答検出部の検出結果とに基づいて、前記医療装置の方向を算出する」ことは、実施例1では「方向算出部35は、方向検出磁界M_(1)の磁界強度変化の前後における永久磁石21に働くトルクの関係式と、方向検出磁界M_(1)の磁界方向と永久磁石21の磁化方向とのなす角θの変化と回転角αとの関係式に基づいて、なす角θ(角度ズレ)を算出する」ことであるから、本願発明の「前記方向検出磁界の方向と前記応答検出部の検出結果とに基づいて、前記医療装置の方向を算出する方向算出部」は、実施例1においては「方向算出部35」である。 第3 原審の拒絶理由等において提示された引用例 1 原審の平成23年9月29日付けの拒絶理由及び拒絶査定の備考において引用された刊行物は特開2003-299612号公報(以下「引用例1」という。)の1件のみである。引用例1には次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。) a「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、管腔内を自走して観察部位を撮像するカプセル内視鏡を駆動制御するカプセル内視鏡システムに関する。」 b「【0008】図1に示すように、本実施の形態のカプセル内視鏡システム1は、体腔内に挿入され外部回転磁場により自走して体腔内の画像を撮像するカプセル内視鏡2と、前記外部回転磁場を発生する回転磁場発生装置3と、回転磁場発生装置3が発生する回転磁場を制御する磁場制御装置4と、磁場制御装置4からの磁場制御信号を受信すると共にカプセル内視鏡2からの画像を無線にて受信し画像処理して表示装置5に表示する画像処理装置6とから構成される。 【0009】図2に示すように、回転磁場発生装置3は、X軸方向の磁場を発生する第1の電磁石11と、Y軸方向の磁場を発生する第2の電磁石12と、Z軸方向の磁場を発生する第3の電磁石13と、上記第1?第3の電磁石11?13を駆動する駆動アンプ14?16とから構成される。また、磁場制御装置4は駆動アンプ14?16を制御して回転磁場発生装置3より回転磁場を発生させる磁場制御信号を回転磁場発生装置3に出力すると共に画像処理装置6に回転磁場発生装置3による磁場データを出力する制御信号発生器17?19より構成される。 【0010】また、カプセル内視鏡2内には、回転磁場の作用を受け回転する固定マグネット21と、体腔内を照明する照明光を発生する照明素子(例えばLED)22と、照明光で照明された体腔内部位を撮像する撮像素子(例えばCCD)23と、撮像素子からの撮像信号をサンプリングしてデジタル映像信号に変換する信号処理回路24と、信号処理回路24からのデジタル映像信号を格納するメモリ25と、メモリ25に格納されたデジタル映像信号を画像処理装置6に無線にて送信する無線回路26と、これら信号処理回路24、メモリ25及び無線回路26を制御するカプセル制御回路27と、カプセル内の各回路に電力を供給する電池28とが配置されている。 」 c「【0019】(作用)このように構成された本実施の形態の作用について図5及び図6のフローチャートと図7ないし図16の説明図を用いて説明する。 【0020】カプセル内視鏡2の向きの変更や進退させた場合、撮像素子23が固定マグネット21と共に回転するため、撮像素子23が撮像した画像も回転することになるが、これをそのまま表示装置5に表示させると、表示した内視鏡画像も回転した画像となってしまい、方向指示装置35による所望の向きへの進退を指示することができなくなるため表示画像の回転を静止させる必要がある。そこで、本実施の形態では、回転画像を回転が静止した画像に補正する以下の処理を行う。 【0021】まず、方向指示装置35が操作されると、カプセル内視鏡2は時系列に順次撮像を行い、メモリ25にデジタル映像信号を格納する。画像処理装置6の制御回路33の制御によりデジタル映像信号は無線回路26、31を介して画像データとしてメモリ34に格納される。このとき、画像処理装置6の制御回路33は、メモリ34に格納される画像データに関連付けてこの画像データが撮像されたときの回転磁場の向き及び回転磁場の法線方向からなる磁場データも格納する。これによりメモリ34には、図7に示すように、複数の画像データ、第1画像データ、第2画像データ、・・・、第n画像データが順次格納されると共に、これら画像データに関連付けられた図8に示すような複数の磁場データ、第1磁場データ、第2磁場データ、・・・、第n磁場データも順次格納されることになる。 【0022】そして、図5に示すように、画像処理装置6の制御回路33は、ステップS1でパラメータであるθ(画像のトータルの回転角度)、n(画像番号)を初期化してθ=0、n=1とする。そしてステップS2で制御回路33はメモリ34に格納されている第n画像データ(この場合は第1画像データ)を読み込み、ステップS3でこのときの回転磁場の磁場の向き(x、y、z)と回転磁場の法線方向(X、Y、Z)とからなる第n磁場データ(この場合は第1磁場データ)をメモリ34から読み込む。 【0023】次に、ステップS4で制御回路33は、図9に示すように、第1の補正画像データである第n画像データ’と第2の補正画像データである第n画像データ”とを第n画像データと等しい画像データとする(第n画像データ=第n画像データ’=第n画像データ”:図9は第1画像データ=第1画像データ’=第1画像データ”の場合のイメージを示している)。そして、ステップS5で制御回路33は、画像処理回路32を制御して図10に示すような第n画像データ”に基づく表示画像を表示装置5に表示する。 【0024】続いて、ステップS6で制御回路33は、nをインクリメントして、ステップS7でメモリ34に格納されている第n画像データ(この場合は第2画像データ)を読み込み、ステップS8でこのときの回転磁場の磁場の向き(x、y、z)と回転磁場の法線方向(X、Y、Z)とからなる第n磁場データ(この場合は第2磁場データ)をメモリ34から読み込む。 【0025】次に、ステップS9で制御回路33は、第n画像と第n-1画像の回転角度Δθを算出する。詳細には図11に示すように、例として第1画像データの磁場データである第1磁場データの回転磁場の磁場の向きをB^(1)(x1、y1、z1)、回転磁場の法線方向をR^(1)(X1、Y1、Z1)、第2画像データの磁場データである第2磁場データの回転磁場の磁場の向きをB^(2)(x2、y2、z2)、回転磁場の法線方向をR^(2)(X2、Y2、Z2)とする。 【0026】カプセル内視鏡2の進行方向は刻々と変化するため、単純にB^(1)とB^(2)の角度を回転角とすると、実際の回転角度が合わなくなる可能性がある。そこで、カプセル内視鏡2の進行方向の変化も回転角度に考慮されるように、図11に示すように、R^(1)とB^(1)との法線ベクトルN^(1)とR^(2)とB^(2)との法線ベクトルN^(2)のなす角を回転角度Δθとする。 【0027】回転角度Δθは、以下で求められる。 【0028】N^(1)=(y^(1)Z^(1)-Y^(1)z^(1),z^(1)X^(1)-Z^(1)x^(1),x^(1)Y^(1)-X^(1)y^(1)) N^(2)=(y^(2)Z^(2)-Y^(2)z^(2),z^(2)X^(2)-Z^(2)x^(2),x^(2)Y^(2)-X^(2)y^(2)) N^(1)、N^(2)は単位ベクトルであるから、 Δθ^(1・2)=cos^(-1){(y^(1)Z^(1)-Y^(1)z^(1))(y^(2)Z^(2)-Y^(2)z^(2)) となり、算出される。 【0029】時間経過と共にΔθ^(1・2)、Δθ^(2・3)、、‥‥‥Δθ^((n-2)・(n-1))、Δθ^((n-1)・n)を順じ求めていくことで回転角を算出することができる。 【0030】そして、トータルの回転角度θは上記の和をとればよく、θ=ΣΔθ^((k-1)・k)で表されるから、ステップS10で制御回路33は、θ=θ+Δθをトータルの回転角度とする。従って、図12のイメージ図に示すように、例えば第2画像は第1画像を回転角度θ+誤差だけ図の向きに回転させた画像となる。ここで、上記誤差は、カプセル内視鏡2のスクリュー41と体壁との回転の負荷によるカプセル内視鏡2の回転角と回転磁場の回転角との回転角誤差である。 【0031】そこでまず、ステップS11で制御回路33は、第1の補正画像データである第n画像データ’を第n画像データを角度(-θ)回転させた画像データとする。これにより、図13のイメージ図に示すように、誤差分を考慮しない第1の補正画像である例えば第2画像’を得ることができる。 【0032】次に、図6のステップS12に移行し、ステップS12で制御回路33は、第n画像データと第n-1画像データの公知の相関計算を実施し、回転角補正量(φn)と相関係数を求め、ステップS13で相関係数が所定の閾値より高いかどうか判断する。この判断により上記図12における誤差を無視するかどうか判定する。 【0033】相関係数が所定の閾値より高くない場合は、ステップS14で制御回路33は、第2の補正画像データである第n画像データ”を第1の補正画像データである第n画像データ’としてステップS17に進む。相関係数が所定の閾値より高くない場合、すなわち、画像が大きく変化した場合には相関処理結果は採用せず、ステップS11の処理を実施した(第1の補正画像データである第n画像データ’を第n画像データを角度(-θ)回転させた画像データとした)時点で、画像の回転補正は完了する。 【0034】すなわち、誤差が無視できれば、図14のイメージ図に示すように、ステップS11で第2画像データの回転補正は第2画像データ’(第1の補正画像データ)によって終了し、ステップS14で第2画像データ’(第1の補正画像データ)を第2画像データ”(第2の補正画像データ)とする。 【0035】相関係数が所定の閾値より高い場合は、ステップS15で制御回路33は、第2の補正画像データである第n画像データ”=第1の補正画像データである第n画像データ’を角度(-φn)回転させた画像データとする。これにより、図15のイメージ図に示すように、第2の補正画像である例えば第2画像”を得ることができる。そして、ステップS16でトータルの回転角度θをθ+φnとしてステップS17に進む。 【0036】ステップS17では、制御回路33は、画像処理回路32を制御して図16に示すような第n画像データ”に基づく回転補正が完了した表示画像を表示装置5に表示する。そして、ステップS18でメモリ34に第n+1画像データが存在するかどうか判断し存在する場合は図5のステップS6に戻り、存在しない場合は処理を終了する。 【0037】表示装置5に表示させる画像については、円形の輪郭を持つ画像にすることで、画像の回転処理をユーザに意識させずに表示させることができる。 【0038】(効果)このように本実施の形態では、カプセル内視鏡2が撮像した画像の画像データと撮像時の磁場データ(回転磁場の向きと法線方向データ)を関連付けてメモリ34に格納することで、回転磁場によりカプセル内視鏡2を回転させ、向きの変更や進退動作を行わせても、カプセル内視鏡2の回転による画像の回転を第1の補正画像により補正することができる。」 d「【図1】 」 「【図3】 」 2 引用例1に記載された発明の認定 引用例1の記載事項から、引用例1には、 「体腔内に挿入され外部回転磁場により自走して体腔内の画像を撮像するカプセル内視鏡2と、前記外部回転磁場を発生する回転磁場発生装置3と、回転磁場発生装置3が発生する回転磁場を制御する磁場制御装置4と、磁場制御装置4からの磁場制御信号を受信すると共にカプセル内視鏡2からの画像を無線にて受信し画像処理して表示装置5に表示する画像処理装置6とから構成されるカプセル内視鏡システム1において、 カプセル内視鏡2内には、回転磁場の作用を受け回転する固定マグネット21と、体腔内を照明する照明光を発生する照明素子(例えばLED)22と、照明光で照明された体腔内部位を撮像する撮像素子(例えばCCD)23と、撮像素子からの撮像信号をサンプリングしてデジタル映像信号に変換する信号処理回路24と、信号処理回路24からのデジタル映像信号を格納するメモリ25とが配置され、 方向指示装置35が操作されると、カプセル内視鏡2は撮像素子23により時系列に順次撮像を行い、メモリ25にデジタル映像信号を格納し、画像処理装置6の制御回路33の制御によりデジタル映像信号は無線回路26、31を介して画像データとしてメモリ34に格納され、このとき、画像処理装置6の制御回路33は、メモリ34に格納される画像データに関連付けてこの画像データが撮像されたときの回転磁場の向き及び回転磁場の法線方向からなる磁場データも格納し、これによりメモリ34には、複数の画像データ、第1画像データ、第2画像データ、・・・、第n画像データが順次格納され、 制御回路33は、nをインクリメントして、メモリ34に格納されている第n画像データ(この場合は第2画像データ)を読み込み、 制御回路33は、第n画像と第n-1画像の回転角度Δθを算出し、 トータルの回転角度θは上記Δθの和をとればよく、θ=ΣΔθ^((k-1)・k)で表されるカプセル内視鏡システム1。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 第4 当審の判断 1 対比 (1)上記の「第2 本願の請求項1に係る発明」の「2 本願発明と本願の発明の詳細な説明に記載された実施例1との対応関係について」の「(2)本願発明と本願の発明の詳細な説明に記載された実施例1との対応関係」の記載を参酌して本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「体腔内に挿入され外部回転磁場により自走して体腔内の画像を撮像するカプセル内視鏡2」が、本願発明の「被検体内に導入される医療装置」に相当する。 イ 引用発明の「カプセル内視鏡2内」に配置され「回転磁場の作用を受け回転する固定マグネット21」が、本願発明の「該医療装置内に配置され、磁化方向を有することにより磁界に応答し、前記医療装置を誘導する磁界応答部」(実施例1においては「永久磁石21」)に相当する。 ウ 引用発明の「外部回転磁場を発生する回転磁場発生装置3」が、本願発明の「前記被検体内に磁界を形成する磁界発生部」に相当する。 エ 引用発明の「回転磁場発生装置3が発生する回転磁場を制御する磁場制御装置4」が、本願発明の「前記医療装置の方向を検出するための方向検出磁界を前記磁界発生部から発生させる方向検出磁界制御部」(実施例1においては「磁界発生部45」によって発生された「方向検出磁界M_(1)の磁界方向および磁界強度を制御する磁界形成信号を生成する方向検出磁界制御部49」が設けられている「磁界制御部37」)に相当する。 オ 引用発明の「撮像素子23」により撮像された「第n画像と第n-1画像の回転角度Δθを算出」することが、本願発明の「前記方向検出磁界による前記磁界応答部の応答を検出する」こと(実施例1においては、「カプセル医療装置3に磁界強度がH_(2)の方向検出磁界M_(1)を作用させた後、イメージセンサ27により、画像に写されている検出パターンP」が「回転している」「角度α」を検出すること)に相当するから、引用発明の「撮像素子23」が、本願発明の「記方向検出磁界による前記磁界応答部の応答を検出する応答検出部」(実施例1においては「イメージセンサ27」)に相当する。 カ 引用発明の「Δθの和」すなわち「θ=ΣΔθ^((k-1)・k)」を算出し「トータルの回転角度θ」を求める手段と、本願発明の「前記方向検出磁界の方向と前記応答検出部の検出結果とに基づいて、前記医療装置の方向を算出する方向算出部」とは、「前記応答検出部の検出結果」を用いて「医療装置の方向を算出する方向算出部」である点で一致する。 キ 引用発明の「カプセル内視鏡システム1」が、本願発明の「医療装置位置検出システム」に相当する。 (2)一致点 よって、本願発明と引用発明とは、 「被検体内に導入される医療装置と、 該医療装置内に配置され、磁化方向を有することにより磁界に応答し、前記医療装置を誘導する磁界応答部と、 前記被検体内に磁界を形成する磁界発生部と、 前記医療装置の方向を検出するための方向検出磁界を前記磁界発生部から発生させる方向検出磁界制御部と、 前記方向検出磁界による前記磁界応答部の応答を検出する応答検出部と、 前記応答検出部の検出結果を用いて医療装置の方向を算出する方向算出部、 が設けられた医療装置位置検出システム。」 の発明である点で一致し、次の点で相違する。 (3)相違点 応答検出部の検出結果を用いて医療装置の方向を算出する方法が、本願発明においては「前記方向検出磁界の方向と前記応答検出部の検出結果とに基づいて、前記医療装置の方向を算出する」ものであるのに対して、引用発明においては「Δθの和」をとる、すなわち「θ=ΣΔθ^((k-1)・k)」を算出するものである点。 2 判断 (1)上記の相違点についての検討 ア 上記相違点に関連して、本願明細書の発明の詳細な説明には次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。) 「【0001】 本発明は、体腔内に挿入される医療装置を誘導する医療装置位置検出システム、医療装置誘導システム、医療装置誘導システムの位置検出方法および医療装置誘導システムの誘導方法に関する。 【背景技術】 【0002】 カプセル内視鏡等の医療装置を体腔内で誘導する方法として、医療装置に磁石を内蔵させ、外部から磁石に磁界を加えることにより、医療装置の位置および向きを制御する医療装置の磁気誘導技術が開発されている。 【0003】 上述の磁気誘導技術の1つとして、回転磁界で医療装置を誘導する誘導システムにおいて、医療装置の画像の回転を補正する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。 この方法では、2枚の取得画像を対比して、座標変換の履歴から医療装置の理論的な回転量が算出されている。また、連続する画像を用いた画像マッチングによって、体壁と回転の負荷による医療装置の回転角と、回転磁界の回転角との回転角誤差が算出されている。このように算出された理論的な回転量と回転角誤差とを足し合わせることで、2枚の取得画像の間における、医療装置の実際の回転量が算出されている。 【0004】 また、磁気勾配で医療装置を誘導するシステムも開発されている(例えば、特許文献2参照。)。 【特許文献1】特開2003-299612号公報 【特許文献2】特開2005-103091号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 上述の特許文献1においては、医療装置の回転量を累積によって求めるため、時間が経過するとともに回転量の誤差が累積し大きくなる恐れがあった。このように回転量の誤差が累積した場合、医療装置の回転角と回転磁界の回転角との不一致により、医療装置を安定して制御できなくなる恐れがあった。 【0006】 また、上述の特許文献2においては、医療装置内の磁石の方向と、発生する磁界の方向の角度差が考慮されていないため、効率的に磁気引力を発生させることができないという問題があった。 【0007】 本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、医療装置の方向を精度良く検出することができる医療装置位置検出システムおよび医療装置誘導システムの位置検出方法、並びに、医療装置を安定して、かつ、効率よく誘導制御することができる医療装置誘導システムおよび医療装置誘導システムの誘導方法を提供することを目的とする。」 「【0027】 本発明の医療装置位置検出システムおよび医療装置誘導システムの位置検出方法によれば、方向検出磁界の方向と検出された磁界応答部の応答とに基づいて、医療装置の方向を算出するため、医療装置の方向を精度良く検出することができるという効果を奏する。 本発明の医療装置誘導システムおよび医療装置誘導システムの誘導方法によれば、医療装置方向算出部の算出結果に基づいて、磁界発生部から発生された誘導磁界の磁界方向を調整するため、医療装置を安定して、かつ、効率よく誘導制御することができるという効果を奏する。」 イ 上記の明細書の発明の詳細な説明の記載から、本願発明は、「【特許文献1】特開2003-299612号公報」(すなわち「引用例1」)に記載の発明の「医療装置の回転量を累積によって求めるため、時間が経過するとともに回転量の誤差が累積し大きくなる恐れがあった。」という技術課題を解決するために、医療装置の方向を「医療装置の回転量」の「累積」によって求めることなく、他の算出方法によって求めるものである。 そうすると、医療装置の方向を「医療装置の回転量」の「累積」によって求めることなく、「方向検出磁界の方向と応答検出部の検出結果とに基づいて」算出することが、本件出願前公知である証拠もなく、引用例の記載から自明な事項であるともいえないから、本願発明が、引用例1に記載された発明に基づいて容易になし得たということはできない。 (2)本願発明が奏する作用効果について そして、上記相違点に係る本願発明の構成によって、本願発明は、明細書の【0027】に記載された顕著な作用効果を奏する。 (3)小活 よって、本願発明が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものであるということはできない。 第5 本願の請求項2ないし7に係る発明について 本願の請求項2ないし7に係る発明は、いずれも、本願発明にさらに特定事項を付加して限定するものである。 よって、本願の請求項2ないし7に係る発明も、本願発明についての判断と同様の判断により、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。 第6 まとめ 以上のとおりであり、本願の請求項1ないし7に係る発明は、原審の審査過程において示された引用文献に記載された発明であるということもできず、また、上記の引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるすることもできない。 よって、本願の請求項1ないし7に係る発明が、平成23年9月29日付けの拒絶理由により拒絶すべきものであるとする原査定は妥当なものではなく、取消を免れない。 また、他に、平成25年12月6日付けの手続補正により補正された本願の請求項1ないし7に係る発明を拒絶する理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2014-01-15 |
出願番号 | 特願2006-306821(P2006-306821) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A61B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 増渕 俊仁、安田 明央 |
特許庁審判長 |
岡田 孝博 |
特許庁審判官 |
森林 克郎 信田 昌男 |
発明の名称 | 医療装置位置検出システムおよび医療装置誘導システム |
代理人 | 藤田 考晴 |
代理人 | 上田 邦生 |