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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1283589
審判番号 不服2012-20937  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-24 
確定日 2014-01-06 
事件の表示 特願2007-190833「ポリマー組成物、熱伝導性シート、金属箔付高熱伝導接着シート、金属板付高熱伝導接着シート、金属ベース回路基板ならびにパワーモジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 2月 5日出願公開、特開2009- 24126〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成19年7月23日を出願日とする出願であって、平成23年11月9日付けで拒絶理由が通知され、平成24年1月10日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月24日に拒絶査定不服審判が請求され、当審において平成25年8月22日付けで拒絶理由が通知され、同年10月10日に意見書とともに手続補正書が提出されたものである。

第2.本願発明

本願の請求項1?6に係る発明は、平成25年10月10日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、「本願明細書等」という。)の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「窒化ホウ素によって形成されてなる凝集粒子とポリマー成分とが含有されているポリマー組成物であって、
前記凝集粒子は、鱗片状構造を有する一次粒子が凝集されてなる凝集粒子で且つナノインデンテーション法による硬度が500MPa以上であることを特徴とするポリマー組成物。」

第3.当審において通知した拒絶の理由の概要

当審において通知した平成25年8月22日付け拒絶理由通知書に記載した拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。
「本願発明は、その出願前に頒布された刊行物である下記引用文献1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。」(以下、「本件拒絶理由」という。)



引用文献1:国際公開第2006/023860号(平成23年11月9日付拒絶理由通知書における引用文献1と同じ)

第4.本件拒絶理由の妥当性について
1.引用発明
(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、以下の記載が認められる。

(摘示1)
「WHAT IS CLAIMED IS:
1. A thermally conductive composition comprising a blend of a polymer matrix and spherical boron nitride agglomerates as a filler, wherein the spherical boron nitride agglomerates are formed of irregular non-spherical BN particles bound together by a binder and subsequently spray-dried, and having an average aspect ratio of less than 2.
・・・
9. The thermally conductive composition of any of any of the preceding claims, which is formed into a film, a pad, a sheet, a gel or a paste or a grease.」(特許請求の範囲)
「【請求項1】
重合体マトリックスに球状窒化ホウ素凝集体を充填材として配合した配合物を含む熱伝導性組成物において、前記球状窒化ホウ素凝集体が、不規則・非球状のBN粒子をバインダーで結合しその後噴霧乾燥され、2未満の平均アスペクト比を有することを特徴とする熱伝導性組成物。
・・・
【請求項9】
前記熱伝導性組成物がフィルム、パッド、シート、ペーストまたはグリースに形成されることを特徴とする請求項1から8に記載の熱伝導性組成物。」(訳文は、パテントファミリーである特表2008-510878号公報の該当記載を援用する。以下、同じ。)

(摘示2)
「FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a thermally conductive composition for use in electronic applications.
BACKGROUND OF THE INVENTION
The removal of heat from electronic devices has become increasingly important, particularly in personal computers. With increasing processing speed and the trend of miniaturization, the heat flux of the microprocessor increases significantly. As the temperature of the microprocessor increases, the probability of personal computers malfunctioning also increases. It is imperative to remove the excess heat and keep the processor under certain temperatures. The increased heat removal requires sophisticated thermal management techniques to facilitate heat removal. One technique involves the use of some form of heat dissipating unit, e.g., heat spreader, heat sink, lid, heat pipe, etc., to conduct heat away from high temperature areas in an electrical system. A heat dissipating unit is a structure formed from a high thermal conductivity material, e.g., copper, aluminum, silicon carbide, metal alloys, polymer composites and ceramic composites, etc., that is mechanically coupled to a heat generating unit to aid in heat removal. The surface of the heat dissipating unit and the surface of the heat-generating component will rarely be perfectly planar or smooth, so air gaps exist between the surfaces. The air gaps reduce the effectiveness and value of the heat-dissipating unit as a thermal management device.
Polymeric compositions have been developed as an interface material for and between electronic components, i.e., a placement material in the air gaps. In one example, a thermally conductive composition is placed between the heat transfer surfaces as a thermal adhesive material. In another example, the composition is used as an underfill in flip chip assemblies (""FCs") and the like. In yet another example, the polymeric material serves to encapsulate devices in electronic module assembly. Another example of a thermally conductive composition is an admixture of cured polymer gel component and a filler component. In another example, the composition is in the form of a grease containing a thermoconductive filler because of its low thermal resistance. The grease itself exerts thermal conductivity. In another embodiment, the composition is in the form of a thermoconductive sheet comprising an organic resin and a filler such as boron nitride. The thermally conductive sheet may be in the form of a thermal pad, a phase change film, a thermal tape, etc.」(第1頁第8行?第2頁第13行)
「【技術分野】
本発明は電子用途に用いられる熱伝導性を有する組成物に関するものである。
【背景技術】
電子装置からの熱除去は、特にパーソナルコンピュータにおいてますます重要となってきている。演算速度の上昇と小型化により、プロセッサーからの熱流はますます顕著になっている。マイクロプロセッサーの温度が上昇すると、パーソナルコンピュータが誤動作する確率も高まる。したがって、過剰な熱を取り除きプロセッサーをある温度以下に保持することは緊急の課題である。熱除去量が増えるに従い、熱除去を促進するための高度な温度管理技術が必要となってくる。技術の一つとして、例えばヒート・スプレッダ、ヒート・シンク、蓋、ヒート・パイプなど、ある種の熱放散ユニットを使用し、電気システムの高温部分から伝導により熱を除去する方法がある。熱放散ユニットは、例えば、銅、アルミニウム、炭化珪素、金属合金、重合体複合材、セラミックス複合材などの熱伝導係数の高い材料から作られた構造物で、これを熱発生装置に機械的に取り付け熱除去を手助けするものである。熱放散ユニットの表面と熱発生装置部品の表面は、完全に平坦で平滑であることは希で、両者の表面の間にはエアーギャップが存在する。このエアーギャップは熱放散ユニットの温度管理装置としての効果、価値を低減するものである。
電子部品間の界面材料、すなわちエアーギャップへの配置材としていくつかの重合体化合物が開発されて来ている。一つの例では、熱伝達面間に熱伝導性組成物を熱接着剤として配置している。もう一つの例では、前記組成物をフリップ・チップ(FC)などの下地材として使用している。さらにもう一つの例では、前記重合体材料は電子モジュール・アッセンブリ内のデバイス封入に用いられている。熱伝導性組成物のもう一つの例は、硬化(キュア)した重合体ゲル組成と充填材組成の混合物である。別の例では、前記組成物は耐熱性が低いため、伝熱性充填材を含んだグリースの形態をとっている。そしてこのグリース自体が熱伝導性を発揮する。もう一つの例では、前記組成物は有機樹脂と窒化ホウ素などの充填材を含む熱伝導性シートの形態を取っている。前記熱伝導性シートは熱パッド、相変化フィルム、熱テープなどに使用される。」

(摘示3)
「Spherical Boron Nitride Filler Component A: As used herein, "spherical boron nitride" refers to generally solid agglomerated particles of a spherical geometry, formed of irregular non-spherical BN particles bound together by a binder and subsequently spray-dried. In one embodiment, the spherical boron nitride is optionally heat treated to 1800 to 2100℃.」(第4頁第17?21行)
「球状窒化ホウ素充填材成分 A: ここで言う『球状窒化ホウ素』とは一般に、不規則形状の非球状BN粒子を結合剤で纏めて噴霧乾燥された、球形状の固体凝集体を意味する。一つの実施形態において、球状窒化ホウ素は1800から2100度の温度域で任意に熱処理される。」

(摘示4)
「In yet another embodiment, the spray-dried spherical boron-nitride agglomerates as prepared in US Patent No. 6,713,088 may be sintered prior to being used in the thermally conductive composition of the invention. The sintering operation facilitates crystal growth and crystallization of the amorphous phases, so as to cause a reduction in density of the final BN product, i.e., as suggested in "Sintering of the Mechanochemically Activated Powders of Hexagonal Boron Nitride," Communications of the American Ceramic Society, Vol. 72, No. 8, pps. 1482-1484 (1989) by Hagio et al.」(第5頁第26行?第6頁第3行)
「さらにもう一つの実施形態では、米国特許第6,713,088号に記載される噴霧乾燥された窒化ホウ素凝集体を、本発明の熱伝導性組成物に使用する前に焼結することができる。この焼結工程は結晶成長あるいは非晶質相の結晶化を促進し、BN最終製品の密度を低減する。このことは「機械化学的に活性化した六方晶窒化ホウ素粉末の焼結」、Communications of the American Ceramic Society, Vol.72, No.8, 1482-1484頁(1989)にHagioらによって提唱されている。」

(摘示5)
「In one embodiment, the thermally conductive material is configured as a film or a sheet of two sides, one side to be applied onto a support sheet such as an aluminum foil, and the other side to be applied onto a cover / release / protective liner or film with a weakened interface to allow the film to be peeled off easily in applications. The weakened interface may be created or weakened after the thermally conductive material is applied onto the sheet / film by a heat generating or a heat transfer device. The weakening can be done by methods including the use of chemicals, UV light, heat, freezing, etc. In one embodiment, the material is configured as a tape that can be applied directly to interface surfaces or electronic components.
In one embodiment, the support or reinforcement sheet or film has a thickness of about 0.5 to 5 mil, with a thickness of about 1 to 3 mils if metal foil is used.」(第35頁第22行?第36頁第5行)
「一つの実施形態では、熱伝導性材料を、片面がアルミニウム箔などの支持体シートに貼着し、他方の面が、界面を弱く使用に当たって用意に剥離できるカバー/剥離/保護ライナーまたはフィルムに覆われたフィルムまたはシートに成形している。弱い界面は前記熱伝導性材料をシート/フィルムを熱発生、または熱移送装置に貼り付けた後に形成または弱めることが可能である。界面を弱める方法としては、薬品、紫外線、熱、冷凍などを含む方法が採用できる。一つの実施形態における前記材料は、界面または電子部品の表面に直接貼り付けられるテープ状に成形されている。
一つの実施形態において、支持体または補強材のシートまたはフィルムはおよそ0.5から5milの厚さを有しており、金属箔を使用する場合はおよそ1から3milの厚さとなっている。」

(摘示7)
「US Patent No. 6,713,088 discloses spherical boron nitride powder comprising spherical agglomerates of boron nitride platelets, wherein the spherical boron nitride agglomerates are bound together by an organic binder and then spray dried for the agglomerates or particles to have an average diameter greater than about 1 micron.」(第3頁第7?10行)
「米国特許第6,713,088号は板状窒化ホウ素の球状凝集体からなる球状窒化ホウ素粉末について開示しており、同開示によれば、窒化ホウ素の球状凝集体は有機バインダーで結合され、その凝集体または粒子がおよそ1ミクロンを超える平均直径を有するように噴霧乾燥される。」

(2)引用発明
引用文献1には、摘示1の記載からみて、「重合体マトリックスに球状窒化ホウ素凝集体を充填材として配合した配合物を含む熱伝導性組成物において、前記球状窒化ホウ素凝集体が、不規則・非球状のBN粒子をバインダーで結合しその後噴霧乾燥され、2未満の平均アスペクト比を有することを特徴とする熱伝導性組成物。」が記載されている。そして、摘示3、4には、「ここで言う『球状窒化ホウ素』とは一般に、不規則形状の非球状BN粒子を結合剤で纏めて噴霧乾燥された、球形状の固体凝集体を意味する。一つの実施形態において、球状窒化ホウ素は1800から2100度の温度域で任意に熱処理される。」、「さらにもう一つの実施形態では、米国特許第6,713,088号に記載される噴霧乾燥された窒化ホウ素凝集体を、本発明の熱伝導性組成物に使用する前に焼結することができる。」旨記載されている。してみれば、米国特許第6,713,088号に記載される噴霧乾燥された球状窒化ホウ素凝集体をさらに焼結した窒化ホウ素凝集体(以下、「窒化ホウ素凝集焼結体」という。)を充填材として重合体マトリックスに配合した配合物を含む熱伝導性組成物が記載されているといえる。
さらに、上記「米国特許第6,713,088号に記載される噴霧乾燥された・・・球状窒化ホウ素凝集体」について、摘示7から、「米国特許第6,713,088号は板状窒化ホウ素の球状凝集体からなる球状窒化ホウ素粉末について開示しており、同開示によれば、窒化ホウ素の球状凝集体は有機バインダーで結合され、その凝集体または粒子がおよそ1ミクロンを超える平均直径を有するように噴霧乾燥される」ことから、球状窒化ホウ素凝集体は、一次粒子である板状窒化ホウ素(以下、「板状窒化ホウ素一次粒子」という。)をバインダーで結合しその後噴霧乾燥して得られるものと認められる。

したがって、引用文献1には、
「板状窒化ホウ素一次粒子をバインダーで結合しその後噴霧乾燥して得られる2未満の平均アスペクト比を有する窒化ホウ素凝集体について、さらに焼結することによって得られる窒化ホウ素凝集焼結体を充填材として重合体マトリックスに配合した配合物を含む熱伝導性組成物」
なる発明(引用発明)が記載されているものと認められる。

2.対比
本願発明と引用発明とを対比するに、引用発明における「重合体マトリックス」、及び「窒化ホウ素凝集焼結体」はそれぞれ、本願発明における「ポリマー成分」、及び「窒化ホウ素によって形成されてなる凝集粒子」に相当する。
また、窒化ホウ素粒子の形状について、本願出願時の技術常識を参酌すれば、「板状」が「鱗片状」であることは明らかであることから、引用発明における「板状窒化ホウ素一次粒子」は、本願発明における「鱗片状構造を有する一次粒子」に相当する。
したがって、両発明は、
「窒化ホウ素によって形成されてなる凝集粒子とポリマー成分とが含有されているポリマー組成物であって、前記凝集粒子は、鱗片状構造を有する一次粒子が凝集されてなる凝集粒子であることを特徴とするポリマー組成物」
の点で一致し、以下の相違点で一応相違するものと認められる。

相違点
凝集粒子の硬度について、本願発明においては、ナノインデンテーション法による硬度が500MPa以上であるのに対し、引用発明においては、格別特定していない点

3.相違点についての検討
上記相違点について検討する。

本願発明のナノインデンテーション法による硬度が500MPa以上である凝集粒子について、本願明細書等においてその製造方法又は製品名が記載されていないところ、請求人は、平成24年10月24日提出の審判請求書において、「凝集粒子自体は、文献等でも古くから公知のもので・・・例えば・・・窒化ホウ素粉末(一次粒子)に結合剤を加えたものをスプレードライして凝集粒子を形成させる」(第4頁第8?12行)、及び「高温焼成がなされているものは、スプレードライされただけのものに比べて格段に高い強度を示すことは当業者であれば容易に予測することが可能であると思料します。」(第4頁末行から第5頁第2行)と主張しているとおり、本願発明のナノインデンテーション法による硬度が500MPa以上である凝集粒子は、鱗片状構造を有する窒化ホウ素一次粒子に結合剤を加えたものを噴霧乾燥して得られる窒化ホウ素凝集粒子をさらに焼結することによって製造した凝集粒子を発明の実施態様として包含すると解することができる。そうすると、引用発明の「窒化ホウ素凝集焼結体」は、板状窒化ホウ素一次粒子をバインダーで結合しその後噴霧乾燥されたものを焼結して得られたものであることから、噴霧乾燥されただけの凝集粒子に比べて格段に高い強度を示すことは明らかであり、引用発明の窒化ホウ素凝集焼結体の製造方法は、上記した本願発明の実施態様として包含される製造方法と同じ方法であることから、引用発明の窒化ホウ素凝集焼結体と本願発明の凝集粒子の硬度も同程度のものであるといえる。してみれば、引用発明における窒化ホウ素凝集焼結体が、「ナノインデンテーション法による硬度が500MPa以上」である蓋然性が高いといえる。よって、この点は相違点ではない。
したがって、本願発明と引用発明とは同一である。

4.請求人の主張についての検討
請求人は、平成25年10月10日提出の意見書において、「この「不規則・非球状のBN粒子(irregular non-spherical BN)」に関し、拒絶理由通知では、“鱗片状”が“不規則・非球状”に含まれるとの認定がなされてますが、“irregular”とは、一般に“不定形”と解するのが妥当で、“鱗片状”を“irregular”な形状に包含させることはいささか難しいと思料します。
しかも、引用文献1の第2頁26行目以降(特表2008-510878の段落0005)には「特許文献2においては、実質的に球状の窒化ホウ素粒子を熱伝導性充填材として組み入れることにより、相変化膜の厚さ方向の熱伝導性が、板状窒化ホウ素粒子を用いた場合に比べ高くなること、同時に、相変化前の熱抵抗が小さくなることを開示している。ここで用いられる『球状の』窒化ホウ素粒子、例えばPT620およびPT670、は1から5のアスペクト比を有することが明らかにされている。このアスペクト比から明らかなように、これらの粒子は実際のところ不規則な形状を有しており、決して球状ではない。当技術分野において『アスペクト比』は、粒子長径の短径に対する比として定義されており、すなわち粒子の形状が球に近似されるものか否かを示す指標となっている。アスペクト比が2を超えると、その粒子は球とは異なる形状を有することになり流動性が低下する。アスペクト比の下限は重要ではないが、1に近いことが望ましい。」と記載されております。
即ち、引用文献1記載の発明においては、「板状(plate-like)」と「不規則な形状(irregularly shaped)」とが異なる意味に用いられていると認められることからも、“鱗片状”を“irregular non-spherical BN”に含まれると認定することは難しいものと思料します。」(第3頁第19?38行)との主張がなされている。
しかしながら、請求人が摘示した引用文献1の記載について、「板状(plate-like)」は窒化ホウ素一次粒子の形状を示したものであり、「不規則な形状(irregularly shaped)」は窒化ホウ素一次粒子を凝集させた『球状』の窒化ホウ素粒子、すなわち窒化ホウ素凝集体の形状を示したものであることから、「板状(plate-like)」と「不規則な形状(irregularly shaped)」とが直接対比する用語として用いられているものではなく、上記記載から両者が異なる意味に用いられていると認定することはできない。
そして、上記1.(2)での検討のとおり、摘示4、7からみて、引用発明の窒化ホウ素凝集体は板状窒化ホウ素一次粒子を凝集させたものであると解することが妥当であり、「板状窒化ホウ素一次粒子」が「鱗片状構造を有する一次粒子」に相当し、この点について本願発明と引用発明とは実質的な相違点は認められない。
したがって、請求人の主張は認められない。

また、請求人は、同意見書において、「なお、引用文献1には、この不規則・非球状のBN粒子をスプレードライした球状窒化ホウ素凝集体の平均アスペクト比を「2未満」とすることについての技術的な意義が特別明記されてはおりませんが、凝集粒子のアスペクト比が高くなれば(扁平状や針状になれば)当該凝集粒子を構成している個々の窒化ホウ素粒子に配向性が生じることを理由にしていると認められます。
即ち、窒化ホウ素粒子に配向性が生じると凝集粒子自体の熱伝導性に異方性が生じるおそれがあることから、引用文献1記載の発明においては、球状窒化ホウ素凝集体の平均アスペクト比に「2未満」との必須要件が設定されているものと認められます。
そして、拒絶理由通知書においては、上記のように、引用文献1記載の発明において焼結がされた球状窒化ホウ素凝集体は、そのナノインデンテーション法による硬度が500MPa以上となる蓋然性が高いとの認定がなされています。
しかし、バインダーとともに噴霧乾燥された球状窒化ホウ素凝集体を焼結する場合、球状窒化ホウ素凝集体を1粒子ずつ焼結するのは実質的に不可能で、通常、耐熱容器などにある程度の量の球状窒化ホウ素凝集体を収容させて加熱する方法が採用されるものと認められます。
そうすると、球状窒化ホウ素凝集体を焼結する場合、球状窒化ホウ素凝集体どうしが融着したブリケット状ものを形成させざるを得ないと考えるのが当業者にとっての自然な考え方であると思料します。
そして、このブリケット状ものを粉砕して再び粒状物を得ようとすると引用文献1の第2頁(特表2008-510878の段落0005)において“不規則な形状”として認定されているようなものになってしまい、平均アスペクト比を2未満とすることができないと思料します。
そのため、引用文献1記載の発明における球状窒化ホウ素凝集体は、焼結後、再び粒状物とすると引用文献1記載の発明が利用する機能が損なわれることになると思料します。
従いまして、仮に“鱗片状構造を有する一次粒子”が引用文献1記載の発明における“不規則・非球状のBN粒子”に包含されるものであるとしても、前記の凝集体のナノインデンテーション法による硬度が500MPa以上となる蓋然性は高いものではなく、むしろ、凝集体のナノインデンテーション法による硬度を500MPa以上とすることは当業者にとって想到することが困難であると思料します。」(第3頁第39行?第4頁第24行)との主張がなされている。
しかしながら、引用文献1の請求項1における「2未満のアスペクト比を有すること」なる事項は、「不規則・非球状のBN粒子をバインダーで結合しその後噴霧乾燥」することにより得られる「球状窒化ホウ素凝集体」を特定する事項であって、その後にかかる球状窒化ホウ素凝集体を焼結することによって得られる窒化ホウ素凝集焼結体の形状を限定する事項ではない。そして、引用文献1には、発明の実施形態の一つとして、「米国特許第6,713,088号に記載される噴霧乾燥された窒化ホウ素凝集体を、本発明の熱伝導性組成物に使用する前に焼結することができる」(摘示4)旨記載されていることから、仮に当該窒化ホウ素凝集焼結体にアスペクト比が2未満を満たさないものが含まれているとしても、当該窒化ホウ素凝集焼結体を熱伝導性充填材として重合体マトリックスに配合した熱伝導性組成物についても、引用文献1に記載された発明の他の実施形態と同様の熱伝導性の機能を有していると解するのが妥当である。
したがって、請求人の主張は認められない。

5.小活
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について更に検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

第5.むすび
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-14 
結審通知日 2013-11-15 
審決日 2013-11-26 
出願番号 特願2007-190833(P2007-190833)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08L)
P 1 8・ 113- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 一宮 里枝  
特許庁審判長 田口 昌浩
特許庁審判官 塩見 篤史
須藤 康洋
発明の名称 ポリマー組成物、熱伝導性シート、金属箔付高熱伝導接着シート、金属板付高熱伝導接着シート、金属ベース回路基板ならびにパワーモジュール  
代理人 中谷 寛昭  
代理人 藤本 昇  

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