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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1283602 |
審判番号 | 不服2013-1713 |
総通号数 | 171 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-01-30 |
確定日 | 2014-01-06 |
事件の表示 | 特願2006-238830「直進駆動装置、レンズ駆動装置及びレンズユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 3月13日出願公開、特開2008- 58894〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年9月4日の出願であって、平成23年9月22日及び平成24年5月2日付けで手続補正がなされ、平成24年5月2日付け手続補正が同年10月22日付けで却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成25年1月30日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。 なお、請求人は、当審における平成25年5月8日付けの審尋に対して同年7月10日付けで回答書を提出している。 第2 平成25年1月30日付け手続補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成25年1月30日付け手続補正を却下する。 〔理由〕 1 本件補正の内容 (1)平成25年1月30日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲、発明の名称及び発明の詳細な説明についてするもので、特許請求の範囲については、本件補正前(平成23年9月22日付け補正後のもの)の請求項2及び3に、 「 【請求項2】 レンズを保持するレンズ保持枠を直進させるための駆動軸と、 前記レンズ保持枠を光軸に沿って移動可能にする位置決め手段と、 前記レンズ保持枠を光軸に沿って移動させる駆動源と、 前記駆動軸に直交する平面で前記レンズ保持枠の回転を規制する回転規制手段とを備えたレンズ駆動装置において、 前記回転規制手段が、前記レンズ保持枠に固定されて設けられた球状部と、 該球状部に係合し、前記駆動軸と平行な溝を有する案内部とから構成されていることを特徴とするレンズ駆動装置。 【請求項3】 前記レンズ保持枠は前記駆動軸と接する接触部を有し、 前記位置決め手段は、 前記接触部と前記駆動軸を挟んで対向する位置に配置した押圧板と、 前記接触部と前記押圧板とを互いに引っ張り合う方向に付勢する付勢手段と、 から構成されていることを特徴とする請求項2に記載のレンズ駆動装置。」とあった請求項3を独立形式にしたものを、 「レンズを保持するレンズ保持枠を直進させるための駆動軸と、 前記レンズ保持枠を光軸に沿って移動可能にする位置決め手段と、 前記レンズ保持枠を光軸に沿って移動させる駆動源と、 前記駆動軸に直交する平面で前記レンズ保持枠の回転を規制する回転規制手段とを備えたレンズ駆動装置において、 前記回転規制手段が、前記レンズ保持枠に固定されて設けられた一つのみの球状部と、 該球状部に係合し、前記駆動軸と平行な溝を有する案内部とから構成され、 前記レンズ保持枠は前記駆動軸と接する接触部を有し、 前記位置決め手段は、 前記接触部と前記駆動軸を挟んで対向する位置に配置した押圧板と、 前記接触部と前記押圧板とを互いに引っ張り合う方向に付勢する付勢手段とから構成されていることを特徴とするレンズ駆動装置。」として新たな請求項1とする補正を含むものである(下線は審決で付した。以下同じ。)。 (2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、本件補正前の請求項3に係る発明を特定するために必要な事項である「レンズ保持枠に固定されて設けられた球状部」を「一つのみの」ものであると限定するものである。 2 本件補正の目的 本件補正後の請求項1に係る本件補正は、上記1(2)のとおり、本件補正前の請求項3に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。 3 引用例 (1)原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-72364号公報(以下「引用例1」という。)」には、次の事項が図とともに記載されている。 ア 「【請求項1】 固定筒の内側にレンズを保持した移動環を有し、該移動環を該レンズの光軸方向に移動自在に支持するレンズ鏡筒において、該移動環は該固定筒に設けた光軸方向に長手の溝部と摺動自在に係合する突部を有していることを特徴とするレンズ鏡筒。 【請求項2】 前記溝部と摺動する前記突部の摺動部分は球面形状をしていることを特徴とする請求項1のレンズ鏡筒。」 イ 「【0017】 【実施例】図1は本発明の実施例1の要部断面図であり、図2(a)は図1のA-A断面図、図2(b)は図2(a)の一部分の拡大説明図である。 【0018】図中、1は固定の前玉レンズ、2は光軸方向に移動して変倍を行う変倍レンズ、3は固定のアフォーカルレンズ、4は変倍に伴う焦点面の移動を補正すると共に焦点合わせを行う合焦用レンズである。 【0019】5は該前玉レンズ1を保持し、また変倍レンズ2を光軸方向に移動可能に設けた主鏡筒、6はこれに連接した鏡筒で、アフォーカルレンズ3を保持している。 【0020】7は該鏡筒6にネジで固定された後部鏡筒であり、案内棒8やステッピングモータ9,送りネジ10等を有し、該案内棒8と光軸を挟んで対向する位置に案内穴(溝部)7aを設けている。 【0021】送りネジ10は光軸と平行に且つ回転自在に支持され、ステッピングモータ9により回転駆動されている。 【0022】12は該合焦用レンズ4を保持する移動環であり、穴部12e及び突部12aと後部鏡筒7の案内棒8及び案内穴7aとが係合し、光軸方向に移動可能となっている。 【0023】11はイコライズ用のラックであり、ラック片11aとラック片11bとが送りネジ10を挟み、ガタつきの無いようバネ13で付勢して、移動端に達した際の食い付きを防止した構成としている。 【0024】ラック11は移動環12の係合部12dと係合し、送りネジ10の回転方向に応じて、移動環12と共に光軸方向に前進又は後進している。 【0025】14は該後部鏡筒7の案内穴7aからゴミ等が侵入するのを防止する保護テープである。 【0026】これらの構成より合焦レンズ4を保持する移動環12はステッピングモータ9による送りネジ10の回転駆動を、ラック11を介し光軸方向の駆動力として伝達され光軸方向に移動し、これによりレンズ系全体の焦点調節を行っている。 【0027】本実施例では移動環12の突部12aと後部鏡筒7に設けた案内穴7aとを係合し、突部12aの回転規制方向(図中、矢印aで示す後部鏡筒7の円周方向)に球面形状の摺動部12b,12cを設け、これを夫々案内穴7aの内面7b,7cと摺動させることにより、合焦レンズ4を移動する際の移動環12(審決注:「移動環7」は「移動環12」の明らかな誤記なので訂正して摘記した。)のガタつきによる像ユレを防止している。 【0028】本実施例において、像ユレの防止効果は光軸から摺動部7b,7cまでの距離L1′を大きくした方が良い。即ち図10のレンズ鏡筒と比べ、寸法ガタが同じで、該距離L1′と図10に示した従来のレンズ鏡筒の光軸から回転規制棒52までの距離L1とを同じとした場合、像ユレの防止効果は略同じと成る。 【0029】このとき、図10の距離L3は回転規制棒52からその外側に設けた後部鏡筒53の外径までの距離であり、距離L2は後部鏡筒7の案内穴7a内に位置する摺動部12a,12bから後部鏡筒7の外径までの距離である。従って距離L2と距離L3との関係はL2<L3となる。本実施例ではこのように構成してレンズ鏡筒の小型化を図っている。…略…。」 ウ 上記ア及びイから、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。 「固定の前玉レンズ1と、 光軸方向に移動して変倍を行う変倍レンズ2と、 固定のアフォーカルレンズ3と、 変倍に伴う焦点面の移動を補正すると共に焦点合わせを行う合焦用レンズ4と、 前玉レンズ1を保持し、また変倍レンズ2を光軸方向に移動可能に設けた主鏡筒5、これに連接しており、アフォーカルレンズ3を保持している鏡筒6と、 該鏡筒6にネジで固定されており、案内棒8、ステッピングモータ9、送りネジ10等を有し、該案内棒8と光軸を挟んで対向する位置に案内穴である溝部7aが設けてある後部鏡筒7と、 合焦用レンズ4を保持し、穴部12e及び突部12aと後部鏡筒7の案内棒8及び案内穴7aとが係合し、光軸方向に移動可能となっている移動環12と、 移動環12の係合部12dと係合し、ラック片11aとラック片11bとが送りネジ10を挟み、ガタつきの無いようバネ13で付勢して、移動端に達した際の食い付きを防止した構成としているイコライズ用のラック11と、を備え、 前記送りネジ10は、光軸と平行に且つ回転自在に支持され、ステッピングモータ9により回転駆動されるようになっており、ステッピングモータ9による送りネジ10の回転駆動がラック11を介し光軸方向の駆動力として伝達されて、合焦レンズ4を保持する移動環12が光軸方向に移動することにより、レンズ系全体の焦点調節が行われるレンズ鏡筒において、 移動環12の突部12aと後部鏡筒7に設けた案内穴7aとを係合し、突部12aの回転規制方向に球面形状の摺動部12b,12cを設け、これを夫々案内穴7aの内面7b,7cと摺動させることにより、合焦レンズ4を移動する際の移動環12のガタつきによる像ユレを防止したレンズ鏡筒。」(以下「引用発明1」という。) (2)本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-34560号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。 ア 「【請求項1】 鏡筒内に光軸と平行に回転可能に支持したねじ棒3と、スライド部の移動方向が光軸と平行になるように前記鏡筒内に該光軸を挟んで前記ねじ棒の反対側に配設したポテンションメータと、変倍レンズを保持し片側に設けたねじ穴を前記ねじ棒に螺合させ他側に設けた係合部を前記スライダ部に係合させた移動環と、前記ねじ棒に回転力を付与する駆動源とを備えたレンズ鏡筒。」 イ 「【0008】 【実施例】以下、本発明の実施例を図面について説明する。図1は正面図、図2は側面図、図3は斜視図であり、図1乃至図3は本発明の特徴を最もよく表わす図面である。同図において、1はスライダ部1aの移動方向が光軸方向となるように、鏡筒5に地板1bをビス等により固定したポテンションメータ、2は変倍レンズLを保持し光軸を挟んで片側に光軸と平行にねじスリーブ2aを備え、他側に上記スライダ部1aの凹部1a-1に係合する係合部2bを有した移動環、3はねじスリーブ2aに螺合するねじ3aを有し光軸と平行に鏡筒5内に回転自在に支持されたねじ棒、4はモータ、7,8はねじ棒3、モータ4の出力軸4aにそれぞれ固定され互いに噛合している平歯車である。そして、上記鏡筒5にはスライダ部1aの移動経路の両側に移動環2の係合部2bの両端で当接ガイドするリブ5aが設けられている。 【0009】上記構成において、モータ4が作動すると、その動力は出力軸4a、平歯車7,8を介してねじ棒3を回転させる。このため、移動環2はねじ棒3のねじ3a、ねじスリーブ2aを介して移動力を受けて光軸方向に移動してズーミングを行なう。このズーミング移動時、移動環2の係合部2bとポテンションメータ1のスライダ部1a及び鏡筒5のリブ5aで移動環2の傾動を防止し、またラジアル方向のガタの発生による像の倒れは前記移動環係合部2bと鏡筒のリブ5aとの当接ガイドで防止する。また、ズーミング中における像の振れは、移動環2と1体構造のねじスリーブ部2aとポテンションンメータ1のスライダ部1aと移動環2の係合部2bとの係合により規制が行なわれる。…略…。」 ウ 「【0010】図6は移動環2の係合部2bを球形状とした第3実施例で、前記実施例のように鏡筒5に形成されたリブ5aに移動環2の係合部2bを面接触させる場合のようなこじれがなくなり、移動環2の動きがスムーズになる。」 エ 上記アないしウから、引用例2には、 「鏡筒5内に光軸と平行に回転可能に支持したねじ棒3と、 スライダ部1aの移動方向が光軸と平行になるように前記鏡筒5内に該光軸を挟んで前記ねじ棒3の反対側に配設したポテンションメータ1と、 変倍レンズLを保持し光軸を挟んで片側に光軸と平行にねじスリーブ2aを備えこれを前記ねじ棒に螺合させ、他側に係合部2bを有する移動環2と、 前記ねじ棒3に回転力を付与するモータ4とを備え、 ズーミング移動時、移動環2の係合部2b及び鏡筒5のリブ5aで移動環2の傾動を防止し、またラジアル方向のガタの発生による像の倒れは前記移動環2の係合部2bと鏡筒5のリブ5aとの当接ガイドで防止するようにしたレンズ鏡筒において、 移動環2の係合部2bを球形状とすることにより、移動環2の動きをスムーズにしたレンズ鏡筒。」(以下「引用発明2」という。) 4 対比 本願補正発明と引用発明1とを対比する。 (1)引用発明1の「合焦用レンズ4」、「移動環12」、「送りネジ10」、「光軸」、「イコライズ用のラック11」、「ステッピングモータ9」、「移動環12の突部12aと後部鏡筒7に設けた案内穴7a」、「レンズ鏡筒」、「『球面形状の摺動部12b,12cを設け』た『突部12a』」、「案内穴7a」、「後部鏡筒7」、「ラック片11b」、「ラック片11a」及び「バネ13」は、それぞれ、本願補正発明の「レンズ」、「レンズ保持枠」、「駆動軸」、「光軸」、「位置決め手段」、「駆動源」、「回転規制手段」、「レンズ駆動装置」、「球状部」、「溝」、「案内部」、「接触部」、「押圧板」及び「付勢手段」に相当する。 (2)引用発明1の「レンズ駆動装置(レンズ鏡筒)」では、「駆動軸(送りネジ10)」は、光軸と平行に且つ回転自在に支持され、「駆動源(ステッピングモータ9)」により回転駆動されるようになっており、「駆動源」による「駆動軸」の回転駆動が「位置決め手段(ラック11)」を介し光軸方向の駆動力として伝達されて、「レンズ(合焦レンズ4)」を保持する「レンズ保持枠(移動環12)」が光軸方向に移動することにより、レンズ系全体の焦点調節が行われるから、引用発明1の「駆動軸」と本願補正発明の「駆動軸」とは「レンズを保持するレンズ保持枠を直進させるための」ものである点で一致し、引用発明1の「位置決め手段」と本願補正発明の「位置決め手段」とは「前記レンズ保持枠を光軸に沿って移動可能にする」点で一致し、引用発明1の「駆動源」と本願補正発明の「駆動源」とは「前記レンズ保持枠を光軸に沿って移動させる」点で一致する。また、引用発明1において、「位置決め手段」は、「駆動軸(送りネジ10)」を挟む「接触部(ラック片11b)」を有しており、かつ、「レンズ保持枠」の係合部12dと係合しているから、引用発明1の「レンズ保持枠」と本願補正発明の「レンズ保持枠」とは「前記駆動軸と接する接触部を有」する点で一致するといえる。 (3)引用発明1の「レンズ駆動装置(レンズ鏡筒)」は、「レンズ保持枠(移動環12)」の回転規制方向に球面形状の摺動部12b,12cを設けた「球状部(突部12a)」と「案内部(後部鏡筒7)」に設けた「溝(案内穴7a)」とを係合し、摺動部12b,12cを夫々「溝」の内面7b,7cと摺動させることにより、「レンズ(合焦レンズ4)」を移動する際の「レンズ保持枠(移動環12)」のガタつきによる像ユレを防止したものであるから、引用発明1の「回転規制手段(移動環12の突部12aと後部鏡筒7に設けた案内穴7a)」と本願補正発明の「回転規制手段」とは「前記駆動軸に直交する平面で前記レンズ保持枠の回転を規制する」点、及び、「前記レンズ保持枠に固定されて設けられた一つのみの球状部と、該球状部に係合し、前記駆動軸と平行な溝を有する案内部とから構成され」る点で一致する。 (4)引用発明1の「位置決め手段(イコライズ用のラック11)」は、「押圧板(ラック片11a)」と「接触部(ラック片11b)」とが「駆動軸(送りネジ10)」を挟み、ガタつきの無いよう「付勢手段(バネ13)」で付勢して、移動端に達した際の食い付きを防止した構成であり、引用発明1の「付勢手段」が「駆動軸」を挟む「押圧板」と「接触部」とをガタつきの無いよう付勢する方向は「押圧板」と「接触部」とが互いに接近する方向であることが当業者に自明であるから、引用発明1の「位置決め手段」と本願補正発明の「前記接触部と前記駆動軸を挟んで対向する位置に配置した押圧板と、前記接触部と前記押圧板とを互いに引っ張り合う方向に付勢する付勢手段とから構成されている位置決め手段」とは、「前記接触部と前記駆動軸を挟んで対向する位置に配置した押圧板と、前記接触部と前記押圧板とを互いに接近する方向に付勢する付勢手段とから構成されている」点で一致する。 (5)上記(1)ないし(4)からして、本願補正発明と引用発明1とは、 「レンズを保持するレンズ保持枠を直進させるための駆動軸と、 前記レンズ保持枠を光軸に沿って移動可能にする位置決め手段と、 前記レンズ保持枠を光軸に沿って移動させる駆動源と、 前記駆動軸に直交する平面で前記レンズ保持枠の回転を規制する回転規制手段とを備えたレンズ駆動装置において、 前記回転規制手段が、前記レンズ保持枠に固定されて設けられた一つのみの球状部と、 該球状部に係合し、前記駆動軸と平行な溝を有する案内部とから構成され、 前記レンズ保持枠は前記駆動軸と接する接触部を有し、 前記位置決め手段は、 前記接触部と前記駆動軸を挟んで対向する位置に配置した押圧板と、 前記接触部と前記押圧板とを互いに接近する方向に付勢する付勢手段とから構成されている、レンズ駆動装置。」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点: 前記付勢手段が前記接触部と前記押圧板とを互いに接近する方向に付勢する際、 本願補正発明では、引っ張り合うのに対して、 引用発明1では、引っ張り合うのか押しつけ合うのかが明らかでない点。 5 判断 上記相違点について検討する。 (1)引用発明1において、イコライズ用のラック11のラック片11aとラック片11bとを、送りネジ10を挟み、ガタつきの無いように付勢するための付勢手段としてのバネを、どのようなバネにするかは、当業者が適宜決定する事項であるというべきところ、本願補正発明において、前記接触部と前記押圧板とを互いに接近する方向に付勢するバネをつる巻きばねとするなどして引っ張り合うものとした点に設計事項を超える技術上の意義はないから、上記相違点は、当業者が適宜なし得た設計上の事項にすぎない。 (2)本願補正発明の奏する効果は、引用発明1の奏する効果から当業者が予測することができた程度のものである。 (3)上記(1)及び(2)のとおりであるから、本願補正発明は、当業者が引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)請求人の主張について ア 請求人は審判請求書の請求の理由において、引用発明1の「2つの摺動部12b、12cが設けられている突部12a」は、本願補正発明の「一つのみの球状部」には相当しない旨主張している。 イ しかしながら、引用発明1の「『球面形状の摺動部12b,12cを設け』た『突部12a』」が本願補正発明の「球状部」に仮に相当しないとしても、引用発明1において、「球面形状の摺動部12b,12cを設けた突部12a」を一つのみの球状部となすことは、以下のとおり、当業者が引用発明2に基づいて容易になし得た程度のことである。 (ア)引用例2には、上記3(2)のとおりの引用発明2(上記3(2)エ参照。)が記載されている。 引用発明2は、「変倍レンズLを保持し光軸を挟んで片側に光軸と平行にねじスリーブ2aを備えこれを前記ねじ棒に螺合させ、他側に係合部2bを有する移動環2を備えたレンズ鏡筒において、移動環2の係合部2bを球形状とすることにより、移動環2の動きをスムーズにしたもの。」である。 (イ)引用発明1は「合焦用レンズ4を保持し、穴部12e及び突部12aと後部鏡筒7の案内棒8及び案内穴7aとが係合し、光軸方向に移動可能となっている移動環12を備えたレンズ鏡筒。」であるところ、上記(ア)からみて、引用発明1において、移動環12の動きをスムーズにするために、移動環12の突部12a(引用発明1の「突部12a」は引用発明2の「係合部2b」に相当する。)を球形状とすること、すなわち、引用発明1において、「球面形状の摺動部12b,12cを設けた突部12a」を一つのみの球状部となすことは、当業者が引用発明2に基づいて容易になし得た程度のことである。 ウ したがって、引用発明1の「『球面形状の摺動部12b,12cを設け』た『突部12a』」が本願補正発明の「球状部」に仮に相当しないとしても、本願補正発明は、当業者が引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 6 小括 以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものである。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成23年9月22日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年9月22日付けで補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記「第2〔理由〕1(1)」に本件補正前の請求項3として記載したとおりのものと認める。 2 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及びその記載事項は、上記「第2〔理由〕3(1)」に記載したとおりである。 3 対比・判断 (1)本件補正は、上記「第2〔理由〕1(2)」のとおり、本願発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、本願補正発明は、本願発明を特定するために必要な事項を限定したものに相当する。 (2)そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2〔理由〕5(1)ないし(3)」に記載したとおり、当業者が引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものである。 (3)球状部について ア 引用発明1の「『球面形状の摺動部12b,12cを設け』た『突部12a』」が本願発明の「球状部」に仮に相当しないとしても、引用発明1の「球面形状の摺動部12b,12c」のそれぞれを球状部とみなすこともできるので、引用発明1の「球面形状の摺動部12b,12c」が本願発明の「レンズ保持枠に固定されて設けられた球状部」に相当する。 イ そうすると、本願発明と引用発明1とは、 「レンズを保持するレンズ保持枠を直進させるための駆動軸と、 前記レンズ保持枠を光軸に沿って移動可能にする位置決め手段と、 前記レンズ保持枠を光軸に沿って移動させる駆動源と、 前記駆動軸に直交する平面で前記レンズ保持枠の回転を規制する回転規制手段とを備えたレンズ駆動装置において、 前記回転規制手段が、前記レンズ保持枠に固定されて設けられた球状部と、 該球状部に係合し、前記駆動軸と平行な溝を有する案内部とから構成され、 前記レンズ保持枠は前記駆動軸と接する接触部を有し、 前記位置決め手段は、 前記接触部と前記駆動軸を挟んで対向する位置に配置した押圧板と、 前記接触部と前記押圧板とを互いに接近する方向に付勢する付勢手段とから構成されている、レンズ駆動装置。」である点で一致し、上記相違点(上記「第2 4(5)参照。」)で相違する。 ウ 上記相違点については上記「第2 5(1)ないし(3)」のとおりであるから、引用発明1の「『球面形状の摺動部12b,12cを設け』た『突部12a』」が本願発明の「球状部」に仮に相当しないとしても、本願発明は、当業者が引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものである。 (4)まとめ 本願発明は、上記(2)及び(3)のとおり、当業者が引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-11-01 |
結審通知日 | 2013-11-05 |
審決日 | 2013-11-18 |
出願番号 | 特願2006-238830(P2006-238830) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小倉 宏之 |
特許庁審判長 |
小牧 修 |
特許庁審判官 |
鉄 豊郎 清水 康司 |
発明の名称 | 直進駆動装置、レンズ駆動装置及びレンズユニット |
代理人 | 西谷 浩治 |
代理人 | 小谷 昌崇 |
代理人 | 小谷 悦司 |