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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1283622 |
審判番号 | 不服2013-6151 |
総通号数 | 171 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-04-04 |
確定日 | 2014-01-06 |
事件の表示 | 特願2008-301430「超高スループット・ウェハ真空処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月30日出願公開、特開2009- 94530〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本件出願は、平成9年11月18日(パリ条約による優先権主張1996年11月18日、米国)に出願した特願平9-317141号の一部を平成20年11月26日に新たな特許出願としたものであって、平成23年6月28日付けで拒絶理由が通知され、平成24年1月18日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに平成24年4月20日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年10月23日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月27日付けで同年10月23日付けの手続補正書を却下するとともに同日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し、平成25年4月4日に本件審判の請求がされ、同時に平成24年1月18日付け手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項2ないし14を削除する手続補正書が提出されたものである。 本件出願の請求項1に係る発明は、平成25年4月4日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲、及び出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。) 「 【請求項1】 (a)ロードロック・カセットを内部に備えるロードロック室と、 (b)搬送室と、 (c)前記搬送室に接続された空間的に互いに分離される複数の処理領域を各々に形成し、隣接する処理領域から分離された閉込めプラズマ・ゾーンを有する1つ以上の処理室と、 (d)前記搬送室内に配置された第1ウェハ・ハンドリング部材と、 を含み、前記ロードロック・カセットはウェハ座面上に横並びに2つ以上のウェハを支持する、ウェハ処理装置。」 2 引用刊行物記載の発明 原審における拒絶理由に引用された、本願の優先権主張の日前である平成7年12月8日に公開された特開平7-321178号公報(以下「刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。 ア 段落【0001】 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は半導体ウエハに対してスパッタリング処理等の処理を行う処理室を複数有するマルチチャンバ装置の技術に関する。」 イ 段落【0016】?【0021】 「【0016】図1は本発明の一実施例であるマルチチャンバ装置を示す平面図であり、搬送室10の回りには、第1処理室11、第2処理室12および第3処理室13の3つの処理室とロードロック室14とが配置されている。さらに、それぞれの処理室11?13およびロードロック室14と搬送室10との間には、ゲートバルブ15?18が設けられ、相互間が開閉自在となっている。 【0017】ロードロック室14にはゲートバルブ19を介してローダ20が配置されており、このローダ20には2つのキャリア治具21a,21bが設けられている。キャリア治具21a,21bにそれぞれ収納されているウエハを、ロードロック室14内に設けられた予備加熱ステージ22a,22bに搬送するために、ローダ20には搬送アーム23a,23bが設けられている。 【0018】搬送室10内には、ロードロック室14内の予備加熱ステージ22a,22bからのウエハを搬送室10内に搬入した後に、順次、3つの処理室11?13に搬送するために、搬送装置30が配置されている。 【0019】この搬送装置30はほぼ鉛直方向に伸びた公転軸31を中心に回転する旋回台32を有し、この旋回台32に設けられた2つの搬送軸33にはそれぞれ駆動アーム34が取り付けられている。それぞれの駆動アーム34には搬送アーム35がピン結合され、さらにそれぞれの搬送アーム35は支持台36にピン結合されている。この支持台36には、それぞれウエハを支持するための搬送用ハンド37a,37bが支持部として取り付けられている。 【0020】この搬送装置30は、公転軸31を中心に旋回台32を回転させることにより搬送用ハンド37a,37bを3つの処理室11?13およびロードロック室14のそれぞれに対向させることができる。また、2つの搬送軸33の少なくともいずれか一方を駆動することにより、搬送用ハンド37a,37bは、駆動アーム34およひ搬送アーム35を介して前進後退移動することになる。 【0021】それぞれの処理室11?13内には、それぞれ2つの処理ステージ41a?43bが配置されており、それぞれの処理ステージには図示省略した処理電極が設けられている。そして、それぞれの処理室11?13内には、2つの処理ステージ相互間に仕切板44?46が設置され、それぞれの処理室11?13内において同時に2枚のウエハを処理した場合におけるクロスコンタミネーションの防止がなされている。」 ウ 段落【0022】?【0024】 「【0022】上述のような搬送装置30を有するマルチチャンバ装置によってウエハに対してスパッタリング処理を行う手順について説明すると、2つのキャリア治具21a,21bに収納されたウエハは、搬送アーム23a,23bによって大気圧状態のロードロック室14に搬送され、予備加熱ステージ22a,22bに載置される。次いで、ゲートバルブ19を閉じ、ロードロック室14を図示しない真空ポンプで排気した後に、ゲートバルブ18を開放する。 【0023】この状態で、搬送装置30を駆動して、その旋回台32を図1に示す回転位置で駆動軸33を駆動して、2つの搬送用ハンド37a,37bを前進移動する。これにより、ロードロック室14内の予備加熱ステージ22a,22b上のウエハは搬送用ハンド37a,37bに持ち換えられ、ウエハは搬送室10内に搬入される。その後、ゲートバルブ18は閉じられる。 【0024】次に、旋回台32が図1において時計方向に90°回転すると、3つの搬送用ハンド37a,37bが処理室11に対向する位置となる。この状態でゲートバルブ15が開き、搬送用ハンド37a,37bを前進させることにより、処理ステージ41a,41bにそれぞれのウエハが搬送される。搬送終了後、ゲートバルブ15が閉じられ、それぞれの処理ステージ41a,41bにおいてスパッタリング処理が行われる。このときには、2つの処理ステージ41a,41b相互間には仕切板44が設置されているので、クロスコンタミネーションが防止される。」 エ 段落【0026】 「【0026】このように、図示する場合は、それぞれの処理室11?13で2つのウエハを同時に処理するようにしたので、装置の占有面積をあまり拡大させることなく、処理能力つまりスループットを2倍にすることが可能となる。」 オ 段落【0031】 「【0031】それぞれの処理室11?13においてスパッタリング処理を行うのであれば、ターゲット材、カソードおよびアノード電極等が処理室内に組み込まれる。一方、ドライエッチング処理を行うのであれば、反応性ガスプラズマを発生させるための電極等が組み込まれる。」 カ ここで、図面の図1を参照すると、搬送室10の回りに配置されている処理室11、12、13は、ゲートバルブ15、16、17を介して搬送室10に接続されているのが見て取れる。 また、図面の図1は平面図であるところ、ロードロック室10内の予備加熱ステージ22a、22bは、横に並んで設けられていることから、ウエハ座面上には横並びにウエハが支持されているものであることは明らかである。 キ 刊行物記載の発明 以上、アないしオの記載事項、及びカの認定事項から、刊行物には、 「(a)予備加熱ステージ22a、22bを内部に備えるロードロック室14と、 (b)搬送室10と、 (c)前記搬送室10にゲートバルブ15、16、17を介して接続され、クロスコンタミネーションを防止するように仕切板44、45、46で仕切られた処理ステージ41a、41b、42a、42b、43a、43bを有し、反応性プラズマガスを発生させるための電極等が組み込まれた処理室11、12、13と、 (d)前記搬送室10内に配置された搬送装置30と、 を含み、前記予備加熱ステージ22a、22bはウエハ座面上に横並びにウエハを支持する、マルチチャンバ装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が、記載されていると認められる。 3 対比及び当審の判断 (1) 対比 本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「予備加熱ステージ22a、22b」は、「ウェハ保持部材」という限りで、本願発明の「ロードロック・カセット」と共通する。 引用発明の「クロスコンタミネーションを防止するように仕切板44、45、46で仕切られ」ることは、「互いに分離される2つの処理領域を各々に形成」するという限りで、本願発明の「空間的に互いに分離される複数の処理領域を各々に形成し、隣接された処理領域から分離された」ことと共通する。 引用発明の「反応性プラズマガスを発生させるための電極等が組み込まれた」ことは、本願発明の「閉込めプラズマ・ゾーンを有する」ことに相当する。 引用発明の「処理室11、12、13」は、本願発明の「1つ以上の処理室」に相当する。 引用発明の「搬送装置30」は、本願発明の「第1ウェハ・ハンドリング部材」に相当する。 引用発明の「ウエハ」、及び「マルチチャンバ装置」は、それぞれ、本願発明の「ウェハ」、及び「ウェハ処理装置」に相当する。 したがって、両者は、 「(a)ウェハ保持部材を内部に備えるロードロック室と、 (b)搬送室と、 (c)前記搬送室に接続された互いに分離される2つの処理領域を各々に形成し、閉込めプラズマ・ゾーンを有する1つ以上の処理室と、 (d)前記搬送室内に配置された第1ウェハ・ハンドリング部材と、 を含み、前記ウェハ保持部材はウェハ座面上に横並びにウェハを支持する、ウェハ処理装置。」で一致し、次の点で相違する。 <相違点1> ロードロック室内に設けられるウェハ保持部材に関して、本願発明では、「ロードロック・カセット」であって、「2つ以上のウェハを支持する」のに対して、引用発明では、予備加熱ステージ22a、22bである点。 <相違点2> 処理室を分離する構造に関して、本願発明では、「空間的に互いに分離される複数の処理領域を各々に形成し、隣接する処理領域から分離された」ものであるのに対して、引用発明では、クロスコンタミネーションを防止するように仕切板44、45、46で仕切られた処理ステージ41a、41b、42a、42b、43a、43bを有するものである点。 (2) 当審の判断 上記相違点について検討する。 ア <相違点1>について ロードロック室内でウェハを支持するウェハ保持部材としてロードロック・カセットを設けることは、例えば、拒絶理由において引用した特開平7-29963号公報(従来例における第1ロードロック室2内におけるウェーハカセット12を参照。)、特開平6-244124号公報(ロードロック/冷却チャンバ14A、14B内におけるカセット17を参照。)に記載されているように周知の事項である。そして、引用発明において、ウェハ保持部材として、引用発明において用いられている予備加熱ステージ22a、22bに代えてロードロック・カセットを適用できないとする阻害要因も格別見当たらないことからすれば、引用発明において、ウェハ保持部材として、予備加熱ステージ22a、22bに代えてロードロック・カセットを用いるようにすることは、当業者にとって困難なことであるとすることはできない。そして、ロードロック室内にロードロック・カセットを配置した場合には、ウェハは当然に2つ以上を支持することになる。 イ <相違点2>について 引用発明においては、処理室11、12、13を仕切るのは仕切板44、45、46であって、空間的に互いに分離される複数の処理領域を各々に形成し、隣接する処理領域から分離されたもの、すなわち、完全に分離されたものであるのかどうか定かではない。 しかしながら、引用発明においても、仕切板44、45、46は、処理室のそれぞれがクロス・コンタミネーションを防止するものであるところ、2つのウェハを処理する処理室が並列して設けられている場合、両処理室を空間的に互いに分離される複数の処理領域とし、隣接する処理領域を分離すること、すなわち、完全に分離されたものとすることは、例えば、特開平2-115359号公報(第4ページ左下欄第12行?第5ページ左上欄第4行、及び図面の第3図における成膜室7と反応室8の間の仕切壁6参照。)や特開昭61-55926号公報(第2ページ左下欄第6行?右下欄第5行、及び図面の第1図における処理真空槽14、15、16、17、18とその間の仕切参照。)に記載されているように周知の事項であることからすれば、引用発明においても、仕切板44、45、46を処理室11、12、13内を完全に仕切るものとすることにより、空間的に互いに分離される複数の処理領域を各々に形成し、隣接する処理領域から分離されたものとすることは、当業者が容易になし得たものであると考えざるをえない。 ウ <作用、効果>について 本願発明の奏する作用ないし効果についても、引用発明及び上記周知の事項から予測し得る範囲のものでしかない。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件出願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-07-25 |
結審通知日 | 2013-07-30 |
審決日 | 2013-08-19 |
出願番号 | 特願2008-301430(P2008-301430) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 浅野 麻木、金丸 治之 |
特許庁審判長 |
野村 亨 |
特許庁審判官 |
栗田 雅弘 長屋 陽二郎 |
発明の名称 | 超高スループット・ウェハ真空処理システム |
代理人 | 園田 吉隆 |
代理人 | 小林 義教 |