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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1283790
審判番号 不服2013-7555  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-24 
確定日 2014-02-07 
事件の表示 特願2009-121725「光ファイバ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月 2日出願公開、特開2010-271448、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由
1 手続の経緯
本願は、平成21年(2009年)5月20日の出願であって、平成24年2月16日付けで拒絶理由が通知され、同年4月20日付けで手続補正がなされたが、平成25年1月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月24日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成25年4月24日になされた手続補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「中心部に第1コア、該第1コアに隣接してその外周を覆う第2コア、該第2コアに隣接してその外周を覆う第3コア、及び該第3コアに隣接してその外周をクラッドが覆う光ファイバであって、クラッドの屈折率を基準にしたときの、該第1コアの比屈折率差を△_(1)とし、該第2コアの比屈折率差を△_(2)とし、該第3コアの比屈折率差を△_(3)とし、かつ第1コアの中心を基準として、第1コアと第2コアとの境界の半径をaとし、第2コアと第3コアとの境界の半径をbとし、第3コアとクラッドとの境界の半径をcとするとき、0.28%≦△_(1)≦0.4%、-0.05%≦△_(2)≦0.05%、-1.0%≦△_(3)≦-0.5%、さらに3.8μm≦a≦4.5μm、12μm≦b≦21μm、1.5μm≦c-b≦10μmを満たし、直径20mmのマンドレルに光ファイバを巻きつけたときの波長1625nmにおける損失増加が0.1dB/turn以下であり、前記第1コアがα型形状を有することを特徴とする光ファイバ。」(以下「本願発明」という。)

3 刊行物の記載及び引用発明
(1)本願の出願前に頒布された刊行物である国際公開第2004/092794号(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。
ア 「中心に配置されたコアと、前記コアの周上に配置された第1クラッド層と、前記第1クラッド層の周上に配置された第2クラッド層と、前記第2クラッド層の周上に配置された第3クラッド層と、を備えた光ファイバであって、
前記コアの最大屈折率は、前記第1クラッド層、第2クラッド層、および第3クラッド層の各最大屈折率のいずれよりも大きく、前記第2クラッド層の最大屈折率は、前記第1クラッド層および第3クラッド層の各最大屈折率のいずれよりも小さく、かつ
前記コアの半径をa_(1)、前記第1クラッド層の外縁の半径をa_(2)とするとき、a_(2)/a_(1)の値が2.5以上4.5以下であり、
前記第3クラッドの屈折率を基準としたときの前記コアの比屈折率差が0.20%以上0.70%以下である。」(請求の範囲)

イ 「 発明の開示
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、曲げによる損失が少なくて、一般的な伝送用光ファイバとの接続性が良好であり、低コストで製造できる光ファイバを提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明は、中心に配置されたコアと、前記コアの周上に配置された第1クラッド層と、前記第1クラッド層の周上に配置された第2クラッド層と、前記第2クラッド層の周上に配置された第3クラッド層と、を備えた光ファイバであって、前記コアの最大屈折率は、前記第1?第3クラッド層の各最大屈折率のいずれよりも大きく、前記第2クラッド層の最大屈折率は、前記第1および第3クラッド層の各最大屈折率のいずれよりも小さく、かつ前記コアの半径をa_(1)、前記第1クラッド層の外縁の半径をa_(2)とするとき、a_(2)/a_(1)の値が2.5以上4.5以下であり、第3クラッドの屈折率を基準としたときのコアの比屈折率差が0.20以上0.70%以下である光ファイバを提供する。
本発明の光ファイバは、カットオフ波長が1260nm以下であることが好ましい。
また、下記数式(1)で表される第2クラッド層の屈折率体積Vが25%・μm^(2)以上であることが好ましい。
該第2クラッド層の屈折率体積Vが50%・μm^(2)以上であることがより好ましい。


上記数式(1)において
r:半径、
Δn(r):半径rにおける比屈折率差(基準は第3クラッド層の最大屈折率)、
a_(2):第1クラッド層の外縁の半径、
a_(3):第2クラッド層の外縁の半径である。
本発明の光ファイバは、第3クラッド層の最大屈折率を基準としたときの第1クラッド層の比屈折率差が-0.10%以上0.05%以下であることが好ましい。」(3頁5行?4頁6行)

ウ 「以下、本発明を詳しく説明する。図1は、本発明の光ファイバの一実施形態における屈折率分布を示したものである。
本実施形態の光ファイバの中心には、半径a_(1)、最大屈折率n_(1)のコア1が設けられている。コア1の周上には、外縁の半径a_(2)、最大屈折率n_(2)の第1クラッド層2が設けられており、該第1クラッド層2の周上には、外縁の半径a_(3)、最大屈折率n_(3)の第2クラッド層3が設けられている。そして、該第2クラッド層3の周上には、光ファイバの最外層をなす、外縁の半径a_(4)、最大屈折率n_(4)の第3クラッド層4が設けられている。・・・
図1に示す光ファイバにおいては、第1クラッド層2における屈折率が径方向にほぼ一定であり、屈折率分布はほぼ完全なステップ形状になっている。本発明の光ファイバの屈折率分布は、必ずしも完全なステップ状になっている必要はなく、屈折率がステップ状になっていない場合は、以下の式で定義される各層の径を用いることにより、ステップ状の場合と同様に本発明の効果を得ることができる。まず、コア1の半径a_(1)は、比屈折率差が、コア1内における比屈折率差の最大値Δ_(1)の1/10まで減少する位置から中心までの距離と定義する。また、第1クラッド層2、第2クラッド層3の各外縁の半径a_(2)、a_(3)は、比屈折率差の径分布Δ(r)の微分値、dΔ(r)/dr(rは半径を表す。)が極値を取る位置から中心までの距離として定義する。」(6頁18行?7頁24行)

エ 「本明細書において、各層の比屈折率差Δ_(i)(単位:%)は第3クラッド層4の最大屈折率n_(4)を基準としており、下記数式(2)で表される。

(式中、iは1?3の整数であり、niは前記各層の最大屈折率である。)
図1に示したようにコアが1層からなる場合、コア1の比屈折率差Δ_(1)を大きくすると、曲げ損失をより小さくできる反面、MFDが小さくなる傾向がある。また、Δ_(1)が小さくなると、より大きなMFDが得られる反面、曲げ損失は悪化する。本発明の特徴は、第2クラッド層3を設けることにより単峰型と同程度のMFDにおいても曲げ特性の優れた光ファイバを得ることにある。本発明においてΔ_(1)の値は特に限定されるものではないが、Δ_(1)を0.20?0.70%の範囲、より好ましくは、0.25?0.65%の範囲にすることにより、通常のSMFとの接続特性および曲げ特性に優れた光ファイバを得ることができる。
また、第1クラッド層2の比屈折率差Δ_(2)は、0.05%以下、より好ましくは0.00%以下であることが好ましい。また、-0.10%以上であることが好ましい。
Δ_(2)が大きくなると、カットオフ波長が長くなり、1260nm以下のカットオフ波長を実現することが不可能になる。一方、第1クラッド層2の比屈折率差Δ_(2)が小さくなりすぎると、第1クラッド層2によるフィールドの閉じ込めが強くなり、曲げ損失低減の点では好ましいが、MFDを拡大して接続性を良くするという点では障害となる。このため所望のカットオフ波長、良好な曲げ損失、および所望のMFDを同時に達成できる範囲でΔ_(2)を設計するのが好ましい。一般的には、Δ_(2)を-0.10%以上にすると所望の効果を得ることができる。
また、第2クラッド層3の比屈折率差Δ_(3)は、後述のように屈折率体積Vによりその設計範囲が規定される。」(8頁3行?下から2行)

オ 「(試験例2)
下記表1に示すように各パラメータを設定して光ファイバを作製し、カットオフ波長、有効コア断面積(A_(eff))、MFD、波長分散、分散スロープ、および零分散波長をそれぞれ周知の手法で測定した。
なお、カットオフ波長の測定については、ITU‐T G.650.1 Definitions and test methods for linear, deterministic attributes of single‐mode fiber and cable, 5.3.1記載のTransmitted Power Techniqueを用いて行った。通常は、Transmitted Power Techniqueの中でも、ファイバに小径の曲げを与えたときのパワー損失からカットオフ波長を測定する方法(曲げ法)が用いられる事が多い。しかしながら、今回試作した光ファイバについては、高次モードの曲げ損失も強く、上記曲げ法では正確なカットオフの測定が困難であった。このため、マルチモードファイバを透過したときのパワーを基準として評価する方法(マルチモードリファレンス法)を用いて測定した。
また、曲げ損失特性として、上記試験例1と同様の方法で曲げ損失を測定した。測定波長は、1550nmおよび1650nmとした。マンドレルの直径は20mm、15mm、10mmの3通りとした。測定される曲げ損失が小さい場合は、適時曲げ回数(巻回数)を増やし、測定精度が確保できる曲げ損失を得た上で、巻回数10回あたりの曲げ損失に換算した。なお、表には単位長さあたりのロス増(曲げ損失増加量、単位:dB/m)も併せて記載している。例えば、20mmφマンドレルに10回巻回した時の曲げ損失(前記P1-P2(dB))をPxとすると、単位長さあたりのロス増Pyは以下の式で与えられる。
Px(単位:dB/m)=Py/(π×0.02×10)
また、屈折率体積(V)は、前記数式(1)により算出した。
サンプルNo.1,5,9,12,21,28,35,38は、第2クラッド層3を有しない単峰型光ファイバである。
サンプルNo.2?4の曲げ損比はサンプルNo.1の10回巻回時の曲げ損失を1としたときの、サンプルNo.2?4の10回巻回時の曲げ損失の値の比である。同様に、サンプルNo.6?8の曲げ損比は、サンプルNo.5を基準とした値であり、サンプルNo.10,11の曲げ損比は、サンプルNo.9を基準とした値であり、サンプルNo.13?20の曲げ損比はサンプルNo.12を基準にした値であり、サンプルNo.22?27の曲げ損比は、サンプルNo.21を基準にした値であり、サンプルNo.29?34の曲げ損比は、サンプルNo.28を基準とした値であり、サンプルNo.36,37の曲げ損比は、サンプルNo.35を基準とした値であり、サンプルNo.39,40の曲げ損比は、サンプルNo.38を基準とした値である。
なお、サンプルNo.16,18,24?27,32は、Vの値が大きく、カットオフ波長を基準のサンプルと同程度に小さくすることができなかった。従って、これらのサンプルについては、曲げ損比を記載していない場合がある。また、サンプルNo.35,38の一部の測定条件では、曲げ損があまりにも大きく評価が不能であった。このため、サンプルNo.36,37,39,40の一部には、曲げ損比が記載されていない事がある。測定結果を表2?4に示す。」(14頁6行?15頁最下行)

カ 表1ないし4は、次のものである。


キ 「(実施例1)
図4に本実施例における光ファイバの屈折率分布を示す。
本実施例の光ファイバは、図中(a)で示す領域をVAD法により生成した。その後、VAD法により得られたコア材を延伸した後、外付けを行い領域(b)を生成した。さらにこの母材を延伸後、再度外付けを行い領域(c)を生成した。領域(b)の生成の際には、ガラス化の過程でSiF_(4)ガスを導入し、F添加を行うことによりシリカレベルより低い屈折率を得た。図4は、上記の工程により得られた母材の屈折率分布をプリフォームアナライザ(商品名:MODEL 2600, Photon Kinetics / York Technology社製)で測定した結果である。この図から分かるように本実施例の光ファイバの屈折率分布は完全なステップ型にはなっていないが、本発明の効果を得ることができる。
本実施例の光ファイバの各パラメータは次の通りであった。
コア1の半径a_(1):3.09μm
第1クラッド層2の半径a_(2):11.83μm
第2クラッド層3の半径a_(3):16.95μm
第1クラッド層2の半径とコア1の半径との比a_(2)/a_(1):3.83
光ファイバ外径:125μm
第2クラッド層3の屈折率体積(V):36.8%・μm^(2) なお、コア1の比屈折率差Δ_(1)を上記コア径a_(1)をもってステップ換算すると、0.50%、第1クラッドの比屈折率差Δ_(2)は,-0.03%、第2クラッドの比屈折率差Δ_(3)は、-0.25%となった。
本実施例の光ファイバについて、波長1550nmにおける伝送損失、カットオフ波長、MFD、波長分散、分散スロープ、零分散波長、および曲げ損失を測定した。その結果を表5に示す。また、ITU‐TにおいてG.652として規定されている通常の1.3μm帯用のシングルモード光ファイバと融着接続した時の接続損失を測定したところ1550nmにおいて、0.18dBであり問題のないレベルであった。
なおカットオフ波長の測定は、2mの光ファイバについて、ITU‐T G.650.1Definitions and test methods for linear, deterministic attributes of single‐mode fiber and cableに準拠する測定方法で行った。」(21頁17行?22頁17行)

ク 図1、4及び表5は、次のものである。


(2)引用発明
ア 上記(1)アによれば、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。
「中心に配置されたコアと、前記コアの周上に配置された第1クラッド層と、前記第1クラッド層の周上に配置された第2クラッド層と、前記第2クラッド層の周上に配置された第3クラッド層と、を備えた光ファイバであって、
前記コアの最大屈折率は、前記第1クラッド層、第2クラッド層、および第3クラッド層の各最大屈折率のいずれよりも大きく、前記第2クラッド層の最大屈折率は、前記第1クラッド層および第3クラッド層の各最大屈折率のいずれよりも小さく、かつ
前記コアの半径をa_(1)、前記第1クラッド層の外縁の半径をa_(2)とするとき、a_(2)/a_(1)の値が2.5以上4.5以下であり、
前記第3クラッドの屈折率を基準としたときの前記コアの比屈折率差が0.20%以上0.70%以下である光ファイバ。」

イ 上記(1)エによれば、上記アの発明において、各層の比屈折率差Δ_(i)(単位:%)を、第3クラッド層の最大屈折率n_(4)を基準として、コアの比屈折率差をΔ_(1)、第1クラッド層の比屈折率差をΔ_(2)、第2クラッド層の比屈折率差をΔ_(3)としてもよい。

ウ 上記(1)ウによれば、上記アの発明において、コアの半径a_(1)を、比屈折率差が、コア内における比屈折率差の最大値Δ_(1)の1/10まで減少する位置から中心までの距離と定義し、第1クラッド層、第2クラッド層の各外縁の半径a_(2)、a_(3)を、比屈折率差の径分布Δ(r)の微分値、dΔ(r)/dr(rは半径を表す。)が極値を取る位置から中心までの距離として定義して、コアの半径をa_(1)、第1クラッド層の外縁の半径をa_(2)、第2クラッド層の外縁の半径をa_(3)、第3クラッド層の外縁の半径をa_(4)としてもよい。

エ 上記(1)エによれば、上記アの発明において、コアの比屈折率差Δ_(1)は、0.25?0.65%の範囲であり、第1クラッド層の比屈折率差Δ_(2)は、0.05%以下-0.10%以上であり、第2クラッド層3の比屈折率差Δ_(3)は、屈折率体積Vによりその設計範囲が規定されるものであってよい。

オ 上記アないしエによれば、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「中心に配置されたコアと、前記コアの周上に配置された第1クラッド層と、前記第1クラッド層の周上に配置された第2クラッド層と、前記第2クラッド層の周上に配置された第3クラッド層と、を備えた光ファイバであって、
前記各層の比屈折率差Δ_(i)(単位:%)を、前記第3クラッド層の最大屈折率n_(4)を基準として、前記コアの比屈折率差をΔ_(1)、前記第1クラッド層の比屈折率差をΔ_(2)、前記第2クラッド層の比屈折率差をΔ_(3)とし、
前記コアの半径a_(1)を、比屈折率差が、コア内における比屈折率差の最大値Δ_(1)の1/10まで減少する位置から中心までの距離と定義し、第1クラッド層、第2クラッド層の各外縁の半径a_(2)、a_(3)を、比屈折率差の径分布Δ(r)の微分値、dΔ(r)/dr(rは半径を表す。)が極値を取る位置から中心までの距離として定義して、コアの半径をa_(1)、第1クラッド層の外縁の半径をa_(2)、第2クラッド層の外縁の半径をa_(3)、第3クラッド層の外縁の半径をa_(4)、とするとき、
前記コアの最大屈折率は、前記第1クラッド層、第2クラッド層、および第3クラッド層の各最大屈折率のいずれよりも大きく、前記第2クラッド層の最大屈折率は、前記第1クラッド層および第3クラッド層の各最大屈折率のいずれよりも小さく、かつ
前記コアの半径をa_(1)、前記第1クラッド層の外縁の半径をa_(2)とするとき、a_(2)/a_(1)の値が2.5以上4.5以下であり、
前記コアの比屈折率差Δ_(1)は、0.25?0.65%の範囲であり、第1クラッド層の比屈折率差Δ_(2)は、0.05%以下-0.10%以上であり、第2クラッド層3の比屈折率差Δ_(3)は、屈折率体積Vによりその設計範囲が規定される光ファイバ。」

(3)本願の出願前に頒布された刊行物である特表2007-535003号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。
ア 「【請求項1】
光導波路ファイバであって、
中心線から半径R_(1)まで半径方向外方に延びて、正の相対屈折率%(Δ_(1)(r)%)を有し、最大相対屈折率%(Δ_(1MAX)%)が0.3%より大きい中央セグメントと、
中心コア領域を囲み、半径R_(3)まで延びて、負の相対屈折率%(Δ_(3)(r)%)を有し、最小相対屈折率%(Δ_(3MIN)%)を有する環状セグメントと、
環状領域を囲み、相対屈折率%(Δ_(C)(r)%)を有する外側環状クラッドとからなり、
Δ_(1MAX)>0>Δ_(3MIN)であり、
波長約1550nmにおいて有効断面積が約75μm^(2)より大きくなり、波長約1550nmにおいて分散スロープが0.07ps/nm^(2)/km未満となり、ゼロ分散波長が1350nm未満となり、波長約1550nmにおいて損失が0.20d^(B)/km未満となるように、光ファイバの相対屈折率が選択されることを特徴とする光導波路ファイバ。」(特許請求の範囲)

イ 表2、4、6は、次のものである。


(4)本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-78543号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の記載がある。
「【請求項1】クラッド部より高屈折率のコア部と、その周囲のクラッド部と、コア部を囲むように設けられクラッド部より低屈折率のトレンチ層とを有し、コア部は、クラッド部より高屈折率の材料からなる中央の第1コアと、該第1コアの周りに、屈折率が第1コアと異なり、かつクラッド部より高屈折率の材料からなる第2コアとからなり、次の特性、
(a)波長1.2?1.6μmの間で2つ以上の伝搬モード(ただし、この伝搬モード数は縮退モードを重複カウントしない数である。)を有し、LP_(01)モードとLP_(11)モードの群屈折率差Δn_(g)の絶対値が1×10^(-3)より小さく、かつ
(b)φ=10mmの曲げ直径に対して、曲げ損失が波長1.55μmで0.1dB/m以下である、
を有することを特徴とする低曲げ損失トレンチ型マルチモードファイバ。
【請求項2】第1コアのクラッド部に対する比屈折率差Δ_(1)、第1コアの半径r_(1)、第2コアのクラッド部に対する比屈折率差Δ_(2)、第2コアの半径r_(2)が、それぞれ、0.3%≦Δ_(1)≦1%、0.1%≦Δ_(2)≦0.6%、2μm≦r_(1)≦5μm、3μm≦r_(2)≦8μmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の低曲げ損失トレンチ型マルチモードファイバ。
【請求項3】コア部中心からトレンチ層の内側エッジまでの距離r_(3)、コア部中心からトレンチ層の外側エッジまでの距離r_(4)、トレンチ層のクラッド部に対する比屈折率差Δ_(3)が、5μm≦r_(3)≦10μm、7μm≦r_(4)≦20μm、-1.2%≦Δ_(3)≦-0.2%の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の低曲げ損失トレンチ型マルチモードファイバ。
【請求項4】コア部とトレンチ層との間の領域の、トレンチ層よりも外側のクラッド部に対する比屈折率差Δ´が-0.2%≦Δ´≦0.2%の範囲内であることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の低曲げ損失トレンチ型マルチモードファイバ。
【請求項5】シングルモードファイバと接続した時、モード分散が波長1.2?1.6μmの間で0.5ns/km以下であることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の低曲げ損失トレンチ型マルチモードファイバ。
【請求項6】シングルモードファイバと接続し、光源のRMSスペクトル幅5nm以下の時、波長分散とモード分散からなる全分散によるパルス幅の劣化が波長1.2?1.6μmの間で1ns/km以下であることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の低曲げ損失トレンチ型マルチモードファイバ。」(特許請求の範囲)

4 対比・判断
(1)引用発明と本願発明を対比する。
ア 引用発明の「(中心に配置された)コア」、「(コアの周上に配置された)第1クラッド層」、「(第1クラッド層の周上に配置された)第2クラッド層」、「(第2クラッド層の周上に配置された)第3クラッド層」、「(第3クラッド層の最大屈折率n_(4)を基準としたコアの比屈折率差を)Δ_(1)」、「(第3クラッド層の最大屈折率n_(4)を基準とした第1クラッド層の比屈折率差を)Δ_(2)」、「(第3クラッド層の最大屈折率n_(4)を基準とした第2クラッド層の比屈折率差を)Δ_(3)」、「(比屈折率差が、コア内における比屈折率差の最大値Δ_(1)の1/10まで減少する位置から中心までの距離と定義したコアの半径を)a_(1)」、「(第1クラッド層の外縁の半径を)a_(2)」、「(第2クラッド層の外縁の半径を)a_(3)」、「(第3クラッド層の外縁の半径を)a_(4)」及び「光ファイバ」は、本願発明の「(中心部に)第1コア」、「(該第1コアに隣接してその外周を覆う)第2コア」、「(該第2コアに隣接してその外周を覆う)第3コア」、「(該第3コアに隣接してその外周を覆う)クラッド」、「(クラッドの屈折率を基準にしたときの第1コアの比屈折率差を)△_(1)」、「(クラッドの屈折率を基準にしたときの第2コアの比屈折率差を)△_(2)」、「(クラッドの屈折率を基準にしたときの第3コアの比屈折率差を)△_(3)」、「(第1コアの中心を基準として、第1コアと第2コアとの境界の半径を)a」、「(第2コアと第3コアとの境界の半径を)b」、「(第3コアとクラッドとの境界の半径を)c」及び「光ファイバ」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明は、コアの比屈折率差Δ_(1)を、0.25?0.65%の範囲とし、第1クラッド層の比屈折率差Δ_(2)を、0.05%以下-0.10%以上とするものであるから、本願発明と「0.28%≦△_(1)≦0.4%、-0.05%≦△_(2)≦0.05%」である点で一致する。

ウ 上記ア及びイによれば、本願発明と引用発明とは、
「中心部に第1コア、該第1コアに隣接してその外周を覆う第2コア、該第2コアに隣接してその外周を覆う第3コア、及び該第3コアに隣接してその外周をクラッドが覆う光ファイバであって、クラッドの屈折率を基準にしたときの、該第1コアの比屈折率差を△_(1)とし、該第2コアの比屈折率差を△_(2)とし、該第3コアの比屈折率差を△_(3)とし、かつ第1コアの中心を基準として、第1コアと第2コアとの境界の半径をaとし、第2コアと第3コアとの境界の半径をbとし、第3コアとクラッドとの境界の半径をcとするとき、0.28%≦△_(1)≦0.4%、-0.05%≦△_(2)≦0.05%を満たす光ファイバ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(ア)本願発明の光ファイバは、「0.28%≦△_(1)≦0.4%、-0.05%≦△_(2)≦0.05%」であるものにおいて、「-1.0%≦△_(3)≦-0.5%」を満たし、さらに「3.8μm≦a≦4.5μm、12μm≦b≦21μm、1.5μm≦c-b≦10μm」を満たし、「直径20mmのマンドレルに光ファイバを巻きつけたときの波長1625nmにおける損失増加が0.1dB/turn以下」であるのに対して、引用発明の光ファイバはこのようなものであるか明らかではない点(以下「相違点1」という。)、及び

(イ)本願発明の光ファイバは、第1コアがα型形状を有するのに対して、引用発明の光ファイバのコアがこのようなものであるか明らかではない点(以下「相違点2」という。)

(2)判断
上記相違点1について検討する。
ア 引用発明において、Δ_(3)、a_(1)、a_(2)、及びa_(3)-a_(2)を具体的にどのような値とするかについて、具体的試験例として、上記3(1)カの表1ないし4に示されるような、サンプルNo.1ないし40が開示されているところ、本願発明の構成である、「0.28%≦△_(1)≦0.4%、-0.05%≦△_(2)≦0.05%、-1.0%≦△_(3)≦-0.5%、さらに3.8μm≦a≦4.5μm、12μm≦b≦21μm、1.5μm≦c-b≦10μm」を全て満たすものはなく、特に第2クラッドの比屈折率差Δ_(3)の値を「-1.0%≦△_(3)≦-0.5%」の範囲内の値とすることは記載も示唆もされていないから、引用発明において、第2クラッドの比屈折率差Δ_(3)の値を、「-1.0%≦△_(3)≦-0.5%」の範囲内の値となし、上記本願発明における相違点1の構成とすることは想定できない。
また、このように構成することが、当業者にとって容易に想到し得ると認めるに足る証拠は、引用文献1?3を通じてみても見いだすことができない。

イ そして、引用発明は、曲げ損失特性が本願発明のものと比較すると大きく劣るものであって、本願発明は、上記相違点1の構成とすることにより、「曲げ損失が改善され、カットオフ波長が大きいにも関わらず、1310nmでのシングルモード動作を可能とし、かつ伝送帯域が広い」(本願明細書 段落【0014】の【発明の効果】)との顕著な効果を奏するものであると認められる。

してみると、相違点2について検討するまでもなく、本願発明が、引用文献1?3の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1ないし3の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-01-23 
出願番号 特願2009-121725(P2009-121725)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大石 敏弘岡田 吉美  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 星野 浩一
松川 直樹
発明の名称 光ファイバ  
代理人 嶋崎 英一郎  

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