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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1283827
審判番号 不服2010-23249  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-14 
確定日 2014-01-17 
事件の表示 特願2006-503207「医療装置接続方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月19日国際公開、WO2004/070557、平成18年 9月14日国内公表、特表2006-520949〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成16年1月30日(パリ条約による優先権主張 平成15年2月1日 米国)を国際出願日とする特許出願であって,平成21年7月13日付けの拒絶理由通知に対して,平成21年10月15日に意見書の提出とともに手続補正がなされ,平成22年6月16日付けの拒絶査定に対して平成22年10月14日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成24年4月23日付けの当審の審尋に対して平成24年7月4日に回答書が提出され,平成24年11月26日付けで当審より拒絶理由を通知したところ,平成25年2月26日に意見書の提出とともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明について
本件出願の発明は,平成25年2月26日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるとおりのものであり,特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりである。
「第1のネットワークに接続され,ディスプレイを有する端末装置と,
該第1のネットワークに接続される複数の医療装置であって,通信が該複数の医療装置のうちの1つによって開始され,該第1のネットワーク上に転送され,該通信が該複数の医療装置のうちの該1つのために少なくとも1つの状況情報およびプログラミング情報を有する,複数の医療装置と,
該第1のネットワークに接続される第1のサーバと,
該複数の医療装置と該第1のサーバとに接続されるハブであって,該複数の医療装置は,該第1のサーバと通信し,かつ,該ハブを介して第2のサーバから分離されているハブと,
第2のネットワークを介して該第1のサーバと通信する該第2のサーバであって,該複数の医療装置と該端末装置とは,該第1のサーバと通信し,ここで,該第2のサーバが,該ハブと,該第2のネットワークと,該第1のサーバと,該第1のネットワークとを介して,該複数の医療装置と該端末装置とから分離されている第2のサーバと
を備え,
該端末装置による要求と,イベントの発生とのうちの少なくとも一つに応じて,第1のメッセージが該第1のサーバにより作成され,該第1のネットワーク上に転送され,該第1のメッセージが,該複数の医療装置のうちの該1つにより開始される通信中に含まれる該状況情報または該プログラミング情報の少なくとも一部を備え,ここで,該第1のメッセージの少なくとも一部が,人間が読み取り可能な形式で該ディスプレイ上に提供され,
第2のメッセージが該第2のサーバによって作成され,該第2のメッセージが,少なくとも部分的に,該第1のサーバからの要求に応じて作成され,該メッセージが,該第2のネットワーク上で該第1のサーバに送信され,該第1のネットワーク上で少なくとも該端末装置に送信される,システム。」

第3 当審における拒絶の理由について
当審における平成24年11月26日付けで通知した拒絶理由の概要は,以下のとおりである。
<<サポート要件について>>
『【第1】【発明の明確性・サポート要件・実施可能要件について】
【A】この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号及び第2項に規定する要件を満たしていない。

1.請求項1発明について。
(途中略)
<(a)の情報処理と(b)の情報処理との関係について。>
(36条6項2号,36条6項1号)
(途中略)
<(b)の情報処理について。>
(36条6項1号:サポート要件)
(9)さらに,(b)の情報処理が,発明の詳細な説明のいずれの実施例に対応するものであるのか,明確ではない。
(途中略)
以上1.(1)?1.(9)のことから,請求項1発明は,特許法36条6項1号及び2号に規定される要件を満たしていない。』
ここで,(a)の情報処理とは,「該端末装置による要求と,イベントの発生とのうちの少なくとも一つに応じて,第1のメッセージが該第1のサーバにより作成され,該第1のネットワーク上に転送され,該第1のメッセージが,該複数の医療装置のうちの該1つにより開始される通信中に含まれる該状況情報または該プログラミング情報の少なくとも一部を備え,ここで,該第1のメッセージの少なくとも一部が,人間が読み取り可能な形式で該ディスプレイ上に提供される」との発明特定事項であり,(b)の情報処理とは,「第2のメッセージが該第2のサーバによって作成され,該第2のメッセージが,少なくとも部分的に,該第1のサーバからの要求に応じて作成され,該メッセージが,該第2のネットワーク上で該第1のサーバに送信され,該第1のネットワーク上で少なくとも該端末装置に送信される」との発明特定事項である。
<<進歩性について>>
『【第2】【進歩性について】
この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

仮に,前記「【第1】【A】1.」で指摘したように,「(a)の情報処理」と「(b)の情報処理」とが,それぞれ独立して処理するものであって,両者が何ら連携するものではないとすると,請求項1発明は,以下の理由で進歩性を有しない。
<引用文献等一覧>
・引用例:WO2001/088828
(特表2004-519020号参照)
・請求項1
・引用例1
(以下略)』

第4 サポート要件についての当審の判断
審判請求人は,当審の拒絶理由の「【第1】【A】1.」の「<(a)の情報処理と(b)の情報処理との関係について。> 」の指摘に対し,(a)の情報処理と(b)の情報処理とが,それぞれ独立して処理するものであって,両者が何ら連携するものではないこと,さらに本願明細書の【0017】【0018】段落の記載を根拠として,本願発明は,発明の詳細な説明の記載でサポートされており,また明確でもある旨を主張する。(平成25年2月26日の意見書の6ページ6行?38行)
そこで,当審の拒絶理由の【第1】【A】の「<(b)の情報処理について。>」で指摘した,「(b)の情報処理が,発明の詳細な説明のいずれの実施例に対応するものであるのか,明確ではない。」との指摘事項について,審判請求人が主張する根拠を含めて,以下に検討する。

1.bの発明特定事項が,発明の詳細な説明に記載されているかについて。
(1)「技術分野」,「発明の背景」,「発明の概要」,「図面の簡単な説明」,及び「詳細な説明」に関する記載について。
【0002】?【0010】段落には,図1を参照して患者医療システム100に関する記載がなされるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(2)「システム全体」に関する記載について。
【0011】段落には,図3を参照して注入ポンプである医療機器120,ハブ107及び中央コンピュータシステム108に関して記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(3)「システム全体の通信ハブ」に関する記載について。
【0012】?【0014】段落には,ハブ107が臨床家のデジタルアシスタント118上でポンプ状態を閲覧可能とすること,薬局入力オーダのポンプ設定値との比較を可能とすること,そしてアラートを中央コンピュータシステム108とサーバ109に伝達し最終的に臨床家116に伝送することが記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(4)「システム全体のアクセスポイント」に関する記載について。
【0015】段落には,ポンプ,ハブ,アクセスポイント,及びネットワークに関する記載があるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(5)「中央システムサーバ/システム全体のコンピュータ」に関する記載について。
審判請求人が根拠として主張する箇所である【0017】【0018】段落を含む,【0016】?【0081】段落の記載について,以下,順次検討する。
(ア)【0016】段落には,中央システム108が,第1の中央サーバ又は中央コンピュータ109及び第2の中央サーバ若しくは中央コンピュータ108aを含み,第1の中央サーバ109と第2の中央サーバ108a間の通信用に,別個の通信システム103を備え,通信システム103が孤立したポイントツーポイントシステム接続であるために,2台のサーバ109,108a間で通信されるデータは通常,暗号化されないこと,2台のサーバ109及び108a間の通信システムは,双方向通信を可能にすることが記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(イ)審判請求人が根拠とする【0017】,【0018】段落には,以下のことが記載される。
(a)第1の中央サーバ又はコンピュータ109は,第1のデータベース,及び医療機器並びにユーザインターフェースに関連するデータ及び機能に関連付けられた第1の機能的特徴のセットを有すること。
(b)医療機器120及びユーザインターフェース118は通常,第1の中央コンピュータ109と直接通信すること。
(c)第2の中央サーバ又は中央コンピュータ108aは,第2のデータベース及び第2の機能的特徴のセットを有すること。
(d)第1の中央コンピュータ109は,第2のコンピュータ108aに暗号化接続されており,医療機器120及びユーザインターフェース118は,第2の中央コンピュータ108aとは直接的に通信しないこと。
(e)ユーザインターフェース118は,第1の中央コンピュータ109を介して,第2の中央コンピュータ108aの第2の機能的特徴のセットに関連する第2のデータベースからデータを受信することができること。
(f) 第2の中央サーバ108a及びそのソフトウェアサブシステムは通常,薬局のシステムとインターフェースをとり,薬物,患者に関する情報を提供し且つ看護師及び他の臨床家に標準的なワークフローを提供すること。
(g)第2の中央サーバ108aも,第1の中央サーバ109とインターフェースをとり,患者,看護師,臨床家,オーダ,及びデジタルアシスタント118と臨床家との間の関連性に関する情報を提供すること。
(h)第2の中央サーバ108aの他の機能の幾つかには,患者管理,項目管理,施設管理,メッセージング,報告/グラフ作成,及び他のシステムへの種々のインターフェースを含めることができること。
(ウ)上記(イ)の(a)?(g)の記載から,【0017】,【0018】段落には,
(i)ユーザインターフェース118は第1の中央コンピュータ109と直接通信し,第1の中央コンピュータ109は,第2のコンピュータ108aに暗号化接続され,
(ii)ユーザインターフェース118は,第1の中央コンピュータ109を介して,第2の中央コンピュータ108aの第2の機能的特徴のセットに関連する第2のデータベースからデータを受信し,
(iii)第2の中央サーバ108aは薬局のシステムとインターフェースをとり,薬物,患者に関する情報を提供し且つ看護師及び他の臨床家に標準的なワークフローを提供するものであり,第2の中央サーバ108aも,第1の中央サーバ109とインターフェースをとり,患者,看護師,臨床家,オーダ,及びデジタルアシスタント118と臨床家との間の関連性に関する情報を提供することが記載されている。
(エ)【0017】,【0018】段落の記載を,以上(イ)(ウ)のとおり整理したうえで,ここで審判請求人の主張を参酌する。
審判請求人の主張は以下のとおりである。
「すなわち,第1の中央コンピュータ109が,第2のコンピュータ108aに暗号化接続されており,医療機器120およびユーザーインターフェース118は,直接的には第2の中央コンピュータ108aとは通信しないものです。さらに,第1の中央サーバーまたはコンピューター109は,医療機器およびユーザーインターフェースに関連するデータおよび機能に関連する,第1のデータベースおよび第1の機能的特徴のセットを有するものです。他方,第2の中央サーバーまたはコンピュータ108aは,たとえば,医薬品および患者に関する情報を薬局システムに提供し,そして,代表的なワークフローを看護師および他の臨床家に提供するインターフェースを有する第2のデータベースおよび第2の機能的特徴のセットを有するものです。したがって,情報処理(a)および情報処理(b)との間にはなんら共同的な処理はありません。むしろ,本願発明では,第2のサーバーは,第1のサーバーによるリクエストに応じて第1のサーバーに時々メッセージを送信するものです。」
(オ)審判請求人の上記(エ)の主張を参酌しても,【0017】【0018】段落には,「ユーザインターフェース118」と,「第1の中央コンピュータ109」と,「第2の中央コンピュータ108a」とに関して,
・「ユーザインターフェース118」は,「第1の中央コンピュータ109」を介して,「第2の中央コンピュータ108a」の第2の機能的特徴のセットに関連する第2のデータベースからデータを受信すること,
・「第2の中央サーバ108a」は,「看護師及び他の臨床家」に標準的なワークフローを提供すること,
・「第2の中央サーバ108a」は,「第1の中央サーバ109」とインターフェースをとり,患者,看護師,臨床家,オーダ,及びデジタルアシスタント118と臨床家との間の関連性に関する情報を提供すること,
が記載されているものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(カ)【0019】?【0022】段落には,第2の中央サーバ108aの他の機能である,患者管理,項目管理,施設管理,メッセージングについて記載されており,メッセージングは薬剤師と臨床家との通信リンクの機能を第2の中央サーバ108aが提供すること,第2の中央サーバが投与量不足の通知を自動的に送信すること,報告はシステム210の権限を有するユーザの要求に応じるものであることなどが記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(キ)【0023】段落には,「第2の中央サーバ108a」の,ADTインターフェース,請求書発行インターフェース,個別結果インターフェース,文書結果インターフェース,処方集インターフェース,薬局オーダインターフェース,ポイントオブケア投薬管理インターフェース及び在庫インターフェースに関する記載があり,検査結果が第2の中央サーバ108a内に保存されれば,ユーザは,ハンドヘルド装置118から観察することができることなどが記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(ク)【0024】段落には,「第1の中央サーバ109」が,「複数のハブ107,複数のデジタルアシスタント又はユーザインターフェース118を往復し,且つ第2の中央サーバ108aと共にデータを送受信するためにロード及び設定されたソフトウェアを有する」ことが記載されており,具体的には,
・サーバ108aから受信した処方パラメータをハブ107システムから受信した該当するプログラムされたポンプ設定と比較する機能,
・通知及びメッセージをデジタルアシスタント118へ中継する機能,
・ハブ107システムから受信したアラーム情報及びアラート情報を適切なデジタルアシスタント118へ中継する機能,
・サーバ108aから通信された薬局情報及び患者情報を適切なデジタルアシスタント118へ中継する機能,
・ポンプ状態データ及びアラーム監視データを集約し且つこのデータを定期的にサーバ108aへ中継する機能,
が記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(ケ)【0025】?【0028】段落には,「医療機器120又は他の装置及び機能性と第1と第2の中央コンピュータ109,108aにおける病院情報システムとの費用効率の高い統合が,患者の安全特定情報などの上述した総データのサブセットを分離すること,並びにそのような情報及び機能性をシステムの妥当性確認済み/検証済み部分に置くこと(に)よってもたらされる」ことが記載されており,「妥当性確認済み部分は,第1の中央コンピュータ109内に置かれ,一実施形態では,サブセットは、注入ポンプによって生成されたアラーム及び/又はアラート並びに/若しくは医療機器120/注入ポンプ120/制御装置120のプログラミング情報又は運転パラメータ情報を含むことができ,このサブセットは,分離されて第1の中央コンピュータ109内の本システムの妥当性確認済み部分に置かれ」ること,「全データの残りの部分は,第2の中央コンピュータ108a内の妥当性が確認されていない部分のデータベース内に保持」されること,「第1の中央コンピュータ109に置かれた妥当性確認済みデータベース及び第2の中央コンピュータ108aに置かれた妥当性が確認されていないデータベースは,ウェブサービスレプリケーションを用いて同期して保持」されること,「代替的実施形態は,1台のコンピュータ上に常駐する本システムの妥当性確認済み部分及び妥当性未確認部分の両方並びにソフトウェアファイアウォールによって分離された機能性を含むことができる」ことなど,妥当性確認済みの「第1の中央コンピュータ109」のデータベースと,妥当性が確認されていない「第2の中央コンピュータ108a」のデータベースとに関することなどが記載され,さらに,第1の中央コンピュータが,データ記憶パッケージを含むデータベースすなわち第1のデータベースを含み,第1のデータベースは,第1の中央コンピュータ109の外部又は内部に置いてよく,第1のデータベース内のデータテーブルは,「ユースケース」内で使用されることなどが記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
なお,「ユースケース」については,後記の「(22)」で検討する。
(コ)【0029】?【0035】段落には,各サブシステムに分割できる患者医療システム100とハブサブシステムについて記載され,ここで【0030】段落に,あらためて,「第2の中央コンピュータサブシステム」が,「薬局のシステムとインターフェースをとり,薬物,患者及び標準的な看護師ワークフローに関する情報を提供」するものであり,「第2の中央コンピュータは,第1の中央コンピュータサブシステムとインターフェースをとり,第1の中央コンピュータに,患者,看護師,オーダ,及びパーソナルデジタルアシスタントと看護師又は臨床家との間の関連に関する情報を提供する」ことが記載されるものの,これは前記【0017】【0018】段落の記載を超えるものではなく,また,【0031】段落には「妥当性確認済み環境と妥当性確認済みでない環境」とに関する記載があるものの,これは【0025】?【0028】段落の記載を超えるものではないことから,bの発明特定事項は記載されていない。
(サ)【0036】?【0082】段落には,サーバ等のOSや通信等インタフェースのプロトコル等に関する記載があり,【0041】段落には,「第1の中央コンピュータ」が,「DatabaseRefreshListener受信インターフェース及びDatabaseRefreshListener送信インターフェース」,「RoutePDA受信インターフェース並びにRoutePDA送信インターフェース」,及び「PumpDataListener受信インターフェース」を有することが記載されている。
(シ)ここで,【0063】段落に,「RoutePDAチャネル」が,「第1の中央コンピュータ109によって用いられ,PDAサブシステムから発信されたHTTP要求メッセージを第2の中央コンピュータ108aへルーティングし,次いで第2の中央コンピュータから対応するHTTP応答メッセージを受信し,該当する場合には処理し,次いで,発信元のパーソナルデジタルアシスタント118へルートバックする」ことが記載されているものの,この「RoutePDAチャネル」は,「第1の中央コンピュータ109」が,「PDAサブシステムから発信されたHTTP要求メッセージを第2の中央コンピュータ108aへルーティング」し,「HTTP応答メッセージを発信元のパーソナルデジタルアシスタント118へルートバック」するものであるから,bの発明特定事項を記載したものではない。
これは,【0065】段落に,「HTTP要求メッセージは,第1の中央コンピュータ109を通じて処理されることなく,第2の中央コンピュータ108aへ転送されるのが好ましい。次いで,第2の中央コンピュータ108aが,XML形式の情報又はHTML形式の情報を含むHTTP応答メッセージを発行する。HTML形式の応答メッセージは,更に処理されることなく,第1の中央コンピュータ109を通じてパーソナルデジタルアシスタント118へルーティングされる。」と記載されていること,その他,【0069】?【0071】段落の記載からも確認される。
(ス)なおここで,【0038】段落には,「第1の中央コンピュータサブシステムは,複数のハブ107,複数のデジタルアシスタント118,及びサーバ108aを備える第2の中央コンピュータサブシステムを往来してデータを送受信するためにロードされ且つそのように設定されたソフトウェアアプリケーションを有するサーバ109で構成されるのが好ましい。」と記載され,bの発明特定事項の処理をなし得る環境とすることが記載されているとも考えられるものの,bの発明特定事項は記載されない。
(セ)また,【0040】段落には,「第1の中央コンピュータ109」が,
1)第2の中央コンピュータサブシステムから受信した処方パラメータの,ハブサブシステムから受信した該当するプログラムされたポンプ設定値との比較,及び/又はポンプのプログラミング,
2)適切なパーソナルデジタルアシスタント118への,ハブサブシステムから受信したアラーム情報並びにアラート情報の中継,
3)適切なパーソナルデジタルアシスタント118への,ポンプ状態及び流速の履歴情報の提供,
4)適切なパーソナルデジタルアシスタント118への,第2の中央コンピュータ108aから通信された薬局情報並びに患者情報の中継,
5)ポンプ監視データ並びにアラーム監視データのコンパイル及び第2の中央コンピュータ108aへのこのデータの定期的中継
を含む幾つかの機能を実行することが記載されているものの,上記「4)」の記載事項は,前記,【0017】【0018】段落の記載などを超えるものではなく,bの発明特定事項を記載したものではない。
(ソ)また,【0077】段落以降には「PumpDataListener」に関する記載があるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(タ)その他,「DatabaseRefreshListener」に関する記載の全体をみても,bの発明特定事項は記載されていない。
(6)「臨床家のハンドヘルド装置との通信」に関する記載について。
【0082】?【0091】段落には,「デジタルアシスタント118」が「中央システム108」と通信すること,「サーバ109及び108aの両方からメッセージを受信」し,「モジュール又はアプリケーション」は「自動的にダウンロード」されること,「デジタルアシスタント118に向けられたポンプアラーム及びポンプアラートのような新たなイベントに関して第1の中央コンピュータ119に問い合わせを行う」こと,「何らかの新たなイベントが発生していた場合,第1の中央コンピュータがこの情報をデジタルアシスタント118に提供し,表示用専用フレーム内に表示」されることが記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(7)「患者医療システム」に関する記載について。
【0092】?【0094】段落には,図1を参照して患者医療システム100に関する記載があるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(8)「注入システムの概要」に関する記載について。
【0095】?【0126】段落には,患者医療システム100内の注入システム210に関するものであって,患者医療システム100が第2の中央サーバ108aと連動することが記載されているものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(9)「本システムのシステムハードウェア/ソフトウェアアーキテクチャ」に関する記載について。
【0127】?【0138】段落には,図2を参照して,各サブシステム内のコンピュータ200について記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(10)「患者医療システムの構成要素」に関する記載について。
(ア)【0139】?【0157】段落には,患者医療システム100の機能要素を示す第1のブロック図である図4を参照して,投薬管理モジュール302,処方箋作成モジュール304,処方箋起動モジュール306,及び処方箋認証モジュール308に関するものであって,投薬管理モジュール302に関し,患者のデータをサブモジュールであるADTインターフェース310を介して第2の中央コンピュータ108a内に転送すること,臨床家116はパーソナルデジタルアシスタントなどでデータを入力すること,注入オーダに対して調整及び変更ができること,処方許可モジュール308で臨床家116が単独で注入オーダを修正する権限を有するか否かを判定すること,臨床家116は,臨床家116のバッジ116a,患者のリストバンド112a,及び薬剤ラベル124aをデジタルアシスタント118で読み取り,デジタルアシスタント118は,中央システム108によってなされた判定に基づいて,薬剤ラベル124a及びリストバンド112aが同一の患者112に対応しているか否かを報告し,システム100は,薬局のコンピュータ104へ,薬剤識別子を送り,薬局のコンピュータ104は,薬剤ラベル124aを確認し,オーダと同一の患者を特定し,注入ポンプへ運転パラメータを送り,運転パラメータ用いて注入ポンプをプログラムし,患者112に薬剤124が投与されることが記載されており,処方入力から患者へ薬剤が投与されるまでの情報の流れが開示されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(イ)【0158】?【0164】段落には, 注入システム210を実行するためのコンピュータ画面400の例示的なブロック図である図5を参照して,処理領域402,探索領域404,薬剤情報領域406,滴定/漸減基準領域408,指示・注記領域410,及び予測解領域412に関して記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(11)「注入システムの構成要素」に関する記載について。
(ア)【0166】?【0179】段落には,図6を参照して,注入システム210の機能要素を示すブロック図に関して記載され,ブロック502でシステムパラメータを設定し,ブロック504で注入オーダが作成され,ブロック506で注入オーダが準備され,ブロック508で薬局が許可し,ブロック510で医師が許可し,ブロック512で薬剤が投与され,ブロック514で注入オーダが修正され,ブロック516でオーダが停止され,ブロック518で在庫・請求書が発行されるまでの処理の流れが開示されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(イ)特に,【0176】段落には,医師が新たなオーダを入力すると,薬局にメッセージが現れ,注入オーダに許可が必要であることを薬剤師に知らせること,注入オーダが適切に許可されると,臨床家116は,デジタルアシスタント118上に,注入オーダを注入スケジュール704に従って処理すべきであると臨床家116に知らせるメッセージを受け取ること,【0177】段落には,パーソナルコンピュータディスプレイは,臨床家の患者に関する未解決の臨床上の問題点を要約したビューを提供すること,臨床家116は,患者に関する詳細な情報を迅速に取り出すことができこと,特定の重篤な患者状態がある場合に,デジタルアシスタント118又は他の通信装置に対して電子メール若しくはページを生成することが記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(ウ)【0180】?【0199】段落には,図6のシステムパラメータ設定502用機能要素を示すブロック図である図7を参照して,許容範囲設定542,デフォルト値設定544,データベース構築546,関数定義548,及びシステム設定値決定550を含むことが記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(12)「オーダ作成」に関する記載について。
【0200】? 【0210】段落には,注入オーダ作成504用の機能要素を示すブロック図である図8を参照して,560で情報入力し,562で計算し,564でチェックし,568でオーバーライドすること,注入オーダ作成504中の薬剤124の探索の際に,臨床家116の注入オーダ作成を支援すること,薬局が,パラメータに対するデフォルト値を提供すること,臨床家が許容範囲をオーバーライドする権限を有するか否かの表示を含むことなどが記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(13)「オーダ準備」に関する記載について。
【0211】【0212】段落には,注入オーダ準備506用の機能要素を示すブロック図である図9を参照して,オーダの準備であって,注入オーダが注入システム210に入力された後,準備指示が準備場所にルーティングされること,注入オーダは,薬局,又はフロア若しくは治療場所106のような遠隔位置で準備することができること,臨床家116は,デジタルアシスタント118又はディスプレイを有する他の装置上に表示することのできるイベント管理情報を用いて,成分のバーコード確認を含む準備工程を通じて誘導されることが記載されており,【0213】段落には,薬剤ラベル124aに関して記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(14)「薬剤投与」に関する記載について。
(ア)【0214】?【0224】段落には,薬剤投与512用の機能要素を示すブロック図である図10を参照して,薬剤投与512が,薬剤バーコードの読み取り512a,患者バーコードの読み取り512b,有効期限チェック512cの実行,滴定通知512d,流速対点滴速度の表示512e,「随時」注入開始512f,運転パラメータのダウンロード512g,及び時間監視512hを含むこと,特に【0216】段落には,臨床家116は,デジタルアシスタント118を用いて,流速及び他の運転パラメータをチェックすることができること,【0218】段落に,運転パラメータのダウンロード512gは,医療と関連付けられた患者識別子及び/又はリストバンド112aから取り出した患者識別子が中心位置における医療と関連付けられた患者識別子と同一であるか否かを判定する工程を含むことができ,判定は,第1のコンピュータ,例えば第1の中央サーバ109によって行われることが記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(イ)ここで,【0219】段落には,「システムプログラム210の1つの利点は,医療機器332をプログラムするのに運転パラメータを利用できるようになる前に,医療機器332に対する運転パラメータが,デジタルアシスタント118又は遠隔位置のどのような他のコンピュータも通過する必要がない点である。遠隔位置のコンピュータをバイパスすることは,患者112へ薬剤124を投与するにあたっての潜在的な過誤の源を排除する。医療機器332に対する運転パラメータは,様々な検証が達成されると仮定すれば,医療機器332へ「直接」送ることができる。この脈絡において,「直接」とは,デジタルアシスタント118又は遠隔位置のどのような他のコンピュータも通過することなく運転パラメータを医療機器へ送ることができることを意味する。」と記載されている。
(ウ)審判請求人は,進歩性に係る意見ではあるが,上記(イ)の【0219】段落の記載をもって,「本願発明では,第1のネットワークを第2のネットワークから分離したことによって予想外に顕著な効果が奏されているものです。この構成での第1のサーバーは,ゲートウェイの働きを果たすものであり,第1のネットワークに接続された種々の医療機器またはPDAから生じる潜在的な過誤の源を回避するものです。」との主張をしている。
(エ)審判請求人の主張をみても,薬剤投与の場面には,bの発明特定事項は記載されていない。
(15)「オーダの文書化及び修正」に関する記載について。
(ア)【0225】?【0238】段落には,図6の注入オーダの修正であるブロック514に関する記載であって,【0229】段落には,「臨床家116が治療場所106において注入システム210に流速の修正1002bを入力する際に,臨床家116は,注入スケジュール704を再計算して薬局に送信することを選択することもできる。」ことが記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(イ)【0239】?【0244】段落には,文書化に関する事項が記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(ウ)【0245】?【0250】段落には,パラメータの設定に関する事項が記載され,【0249】段落には,設定パラメータが正しく受信されなかった場合,注入システム210は,矛盾又は通信障害を識別するメッセージ520を提供すること,【0250】段落に,「注入システム210は,中央コンピュータを経由せずに機器においてなされた設定パラメータに対する変更を検出し,メッセージ及び/又はアラート520を送信することができる。注入システム210はまた,機器に,それらの設定パラメータを確認するようにポーリングすることもできる。システム及び/又は特定の設定パラメータが変化すると,該変化を,注入システム210において識別されたグループ分けに従ったグループに属すると本システムにおいて識別された全ての機器332に伝播することができる。」とのことが記載されているものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(エ)【0251】段落には,「本書類及び関連の特許請求の範囲全体を通じて,「中心位置」及び「遠隔位置」は,互いに相対的な用語である。「遠隔位置」は,患者112が注入ポンプ120を通じて治療を受けている患者治療場所106のような,制御された医療機器を通じて患者が治療を受けている任意の場所である。「中心位置」は,限定するものではないが,薬局のコンピュータ104の位置及び中央システム108のような,医療機器を運転するためのパラメータにアクセス可能な,遠隔位置以外の任意の場所である。典型的な配置では,治療場所106などの幾つかの遠隔位置は,中心位置と連通している。」と記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(オ)【0252】?【0254】段落には,MEMSの事例が記載されているものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(16)「ポップアップウィンドウ」に関する記載について。
【0255】?【0259】段落には,ポップアップウィンドウを介して,1種類又はそれ以上の薬剤に関連する情報を臨床家に自動的に提供することができること,薬剤テーブルは,中央データベース108bに入力されること,遠隔位置の計算装置上での薬剤の選択又は入力が完了すると,中央システム108内のデータベースがアクセスを受け,該薬剤に関連付けられたポップアップウィンドウメッセージのうちの少なくとも1つが遠隔計算装置に提供されること,などが記載されるものの,ポップアップウィンドウを介して臨床家に自動的に提供される薬剤に関連する情報は,第1のサーバからの要求に対して提供されるものではないことから,bの発明特定事項は記載されていない。
(17)「薬剤の投与」に関する記載について。
(ア)【0260】?【0272】段落には,例えば流束の注入オーダを修正し,流速比較をし,流速変更すること,臨床家を識別すること,そのためのバイオメトリクスのことなどが記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(イ)ここで【0267】段落には,医療機器が制御装置を有さず,第1のサーバが直接医療機器を制御することが記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(18)「臨床家の注入システムとの対話」に関する記載について。
(ア)【273】?【0282】段落には,図19などを参照して【0273】?【0275】段落にログインのことが,図22を参照して【0276】にシフトのことが,図23を参照して,【0277】段落で患者を見ることが,図24を参照して【0278】段落で患者を選択することが,図25や図25A?Cを参照して【0279】【0280】段落で患者のミニカルテ,薬歴,検査結果などを見ることが,図26を参照して【0281】段落で注入スケジュールを見ることが,【0282】段落に,図28を参照して投薬失敗を認識することが,図29を参照して理由を見ることが,図30を参照して失敗の理由を入力することが,図31を参照して必要なしの場合のことが,それぞれ記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(イ)【0283】?【0291】段落には,図32?図38を参照して,臨床家が患者に投薬等をする際のデジタルアシスタント118とのインタフェースについて記載されているものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(19)「機器設定値とオーダの比較」に関する記載について。
(ア)【0292】?【0303】段落には,図52を参照して比較工程5200について記載されており,ブロック5202で,患者・薬剤バッグ及びポンプチャネルをスキャンして関連するベースラインデータの関連付けを行うことから,ブロック5232で,不一致が受け入れられる場合にシステムデータベース109に記録されることまでの,一連の処理の流れが記載されているものの,これらの処理は,臨床家と第1のサーバとの通信リンクでなされる。
(イ)ここで,第2のサーバとの関係は,【0294】段落に,「比較工程5200中のある時点で,第2の中央サーバ108aが,患者ID及びオーダIDに関連するデータを含むXMLメッセージを生成する。比較工程5200に関するフローチャートに示すように,XMLデータは,ブロック5212に先立つ任意の地点で,ブロック5210に示すように,生成して第1の中央サーバ109に転送することができる。しかしながら,第1の中央サーバ109によって第2の中央サーバ108aから受け取られたXMLデータが無効若しくは不完全である場合,比較工程は除外され,ブロック5214に示すように,本システムは,比較工程が進行することを許可しない。逆に,患者ID及びオーダIDに関連するXMLデータが完全で有効である場合,第1の中央サーバ109が第2の中央サーバ108aからXMLデータを受け取った後,比較工程5200は,ブロック5212へ進む。」と記載されるのみであって,bの発明特定事項は記載されていない。
(ウ)さらに【0295】?【0313】段落には,図39?図44,図48,図50,図51などを参照して臨床家とのインタフェースについて記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(20)「緊急事態通知工程」に関する記載について。
【0314】?【0321】段落には,図12?図14を参照して緊急事態通知システム1200と通知用インターフェース1300と受信用インターフェース1400とが記載されるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(21)「アラーム/アラート通知を含むメッセージング&通知」に関する記載について。
(ア)【0322】?【0343】段落には,図15?図18を参照して,サーバ109からデジタルアシスタント118へのアラーム又はアラートに関することが記載されている。
(イ)ここで【0326】段落に「通常,サーバ108aは,その内部に,患者対臨床家の多対多の関連付け,及び患者対部門の関連付けを格納している。サーバ108aは,これらの関連付けをサーバ109に伝送し,サーバ109は,これらの関連付けを格納する。同様に,サーバ108aは,主任臨床家対部門の関連付けを,格納のためにサーバ109へ送信する。」と記載され,【0325】段落で,サーバ109が,「患者を第1の臨床家とも呼ばれる主臨床家に関連付ける工程(この関連付けは,中央システムサービス装置108aで行うことができる)」と記載されているものの,この開示は,前記【0017】【0018】段落の記載を超えるものではなく,bの発明特定事項は記載されていない。
(22)「例示的ユースケース」に関する記載について。
【0344】段落以降の「例示的ユースケース」について,以下検討する。
(ア)【0345】?【0365】段落には,図55A?Cを参照して「注入実施工程」が記載されている。
(イ)この一連の処理の流れは,ブロック5502で第2の中央サーバ108aがデジタルアシスタント118に患者のリストを表示させたときに開始し,デジタルアシスタント118から情報を受信し,この情報を第1の中央サーバ109に送信し,第1の中央サーバ109が,チャネル識別情報が注入オーダ情報と一致することを確認し,正しい注入が開始されたことを確認する。
(ウ)ここで,図55A?Cで「サーバ1」と記載される「第2の中央サーバ108a」がブロック5502?5536の処理をなし,「サーバ2」と記載される「第1の中央サーバ109」がブロック5548?5590の処理をなすものであり,「第2の中央サーバ108a」は,ブロック5531で,「第1の中央サーバ109」に「処方箋比較」XML文書を送信し,「第1の中央サーバ109」は,ブロック5548で,「処方箋比較」XML文書が有効であるかどうかを判定し,以後の処理を行う。
(エ)「第1の中央サーバ109」が「第2の中央サーバ108a」に送信するのは,ブロック5552の取り消しURLや,ブロック5588の完了用URLなどであり,これをうけて「第2の中央サーバ108a」が何らかの処理をし,その結果を「第1の中央サーバ109」に戻すことなどは記載されていない。
(オ)つまり,【0345】?【0365】段落の「注入実施工程」には,bの発明特定事項は記載されていない。
(カ)【0366】?【0374】段落には,図56を参照して「チャネルスキャン工程(注入実施工程用)」が記載されている。
(キ)【0366】?【0374】段落の記載をみても,チャネルスキャン工程5554は,ブロック5602で,「第1の中央サーバ109」の「デジタルアシスタント118」へ表示することから始まり,「第1の中央サーバ109」と「デジタルアシスタント118」とで処理がなされ,「第2の中央サーバ108a」に取り消し用URLに係るコードを送信するにとどまる。
(ク)つまり,【0366】?【0374】段落の「チャネルスキャン工程(注入実施工程用))」には,bの発明特定事項は記載されていない。
(ケ)その他,【0375】?【0387】段落の図57A,Bを参照した「ポンプチャネル変更工程」,【0388】?【0393】段落の図58などを参照した「チャネルスキャン工程」,【0394】?【0402】段落の図59などを参照した「チャネルスキャン工程(新たなチャネル)」,【0403】?【0417】段落の図60を参照した「注入停止/中止工程」,【0418】?【0429】段落の図61を参照した「注入再開工程」,【0430】?【0443】段落の図62を参照した「ポンプ除去工程」も同様にbの発明特定事項は記載されていない。
(なお,図60のサーバ2とサーバ1は他の図面の数字とは逆になっている。)
(23)「暗号化通信工程」に関する記載について。
(ア)【0444】段落以降には,「暗号化通信工程」に関する記載があるものの,図63?図69の記載を参照して【0472】段落までの記載をみても,もっぱら「デジタルアシスタント118」と「第1の中央サーバ109」と「医療機器」との通信工程に関する記載がなされるのみであり,bの発明特定事項は記載されていない。
(イ)なお,【0455】には,「サーバ(例えば第1の中央サーバ109)上でひとたびユーザが認証されると,認証信任状を用いて別のサーバ(例えば第2の中央サーバ108a)上のデジタルアシスタント118を自動的に認証することができる。一例では,ユーザは,該ユーザが第1の中央サーバ109及び第2の中央サーバ108aの両方で認証された場合にのみ認証することができる。従って,ユーザ名又はパスワードが生成若しくは修正される場合には必ず,ユーザ名及びパスワードは,第1の中央サーバ109と第2の中央サーバ108aとの間で同期されるのが好ましい。」と記載され,【0468】段落にも同様の記載があるものの,bの発明特定事項は記載されていない。
(24)関連する特許出願の参酌。
本件出願と関連する特許出願である特願2009-238780号は特許となっているところ,この特許は,つまり,臨床家の携帯用リモートデバイスが生成する要求に応答して第2の中央コンピュータが生成した応答メッセージが第1の中央コンピュータに送信され,臨床家の携帯用リモートデバイスに送信されるものであり,本願発明のbの発明特定事項と異なる。
したがって,この関連する特許出願を参酌しても,bの発明特定事項は記載されていない。
(25)総合判断
以上(1)?(24)を総合しても,bの発明特定事項は記載されていない。

2.サポート要件についての結論。
以上,1.の(1)?(25)のとおりであるから,bの発明特定事項は発明の詳細な説明に記載したものではなく,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


第5 進歩性についての当審の判断
1.引用例と引用発明とについて
(1)当審の拒絶理由通知で引用した「国際公開第2001/088828号」(以下「引用例」という。)には,以下のことが記載されている。
(以下「引用例1摘記事項」という。)
(ア)「SUMMARY OF THE INVENTION
Briefly, and in general terms, the present invention is directed to a new and improved information management system and method capable of monitoring, controlling and validating the administration of medical care delivery in a health care facility.
Generally, the system of the present invention includes a medical transaction carrier ("MTC") that contains information concerning past and present medical transactions. The medical transaction carrier is used to transfer information relating to past and present medical transactions between a control system that is interfaced with various other care-giving institutional information systems, such as a pharmacy information system, or hospital information system, or physician order entry system, or a patient specific asset located at a patient's bedside. The information transferred by the medical transaction carrier is used to validate that the right medication and the parameters of the medication administration record are properly delivered to the right patient. As is well known by those skilled in the art, the medication administration record ("MAR") is used by nurses to schedule medication administration. It is also used to document the actual administration of the medications. The medication order from the physician is recorded on the MAR, either by the pharmacy or the nurse staff members. As doses are administered, the nurse initials the corresponding time and records any additional required information (e.g. pulse rate, blood sugar). The MAR covers a specific period of time, typically 24 to 72 hours. The MAR is the legal record of drug administration, and it is kept as a permanent part of the patient's medical record. The system of the present invention includes methods for validating the information transferred by the medical transaction system to ensure that no information is lost.
The medical transaction carrier in accordance with one aspect of the present invention may be a personal data assistant ("PDA"), a laptop computer, a smart card, a BLUETOOTH transceiver, or other device capable of storing information and transporting the information from one location in a care-giving facility where medications are prepared for delivery to a patient's bedside. In another aspect, the medical transaction carrier may be primarily stationary and located at the patient's bedside. At the patient's bedside, the medical transaction carrier is interfaced to a patient specific asset ("PSA"), such as an infusion pump or vital signs monitor, and the information stored within the medical transaction carrier is communicated to the patient specific asset to provide the asset with specific treatment parameters to be used in delivering medication to the patient or in otherwise interacting with the patient.」
(5ページ2行?6ページ6行)
(当審仮訳:発明の概要
簡単に,そして一般的な用語で,本発明は医療施設で医療の投与の監視,制御,および確認を行うことができる,新しく,改善された情報管理のシステムと方法に向けられている。
一般に,本発明のシステムは,過去および現在の医療トランザクションに関する情報を含む医療トランザクションキャリア(MTC-medical transaction carrier)を含む。医療トランザクションキャリアは,薬局情報システム,または病院情報システム,または医師指示入力システム,または患者のベッドのそばにある患者特有のアセットのような他の種々の医療組織の情報システムとインタフェースされる制御システムとの間で過去および現在の医療トランザクションに関する情報を伝達するために使用される。医療トランザクションキャリアによって伝達される情報を使用して,正しい薬物と薬物投与レコードのパラメータが正しい患者に適切に投与されることを確認する。当業者には周知のように,看護師は薬物投与レコード(MAR-medication administration record)を使用して,薬物投与の予定をたてる。薬物投与レコードを使用して,薬物の実際の投与の文書化が行われる。医師からの薬物指示は薬局または看護師スタッフメンバによってMARに記録される。投与量が投与されるにつれて,看護師は対応する時間を開始し,任意の付加的な必要な情報(たとえば,脈拍数,血糖)を記録する。MARは特定の時間,代表的には24時間から72時間に及ぶ。MARの薬品の法的な記録であり,患者の医療レコードの永久的な一部として保持される。本発明のシステムは,医療トランザクションシステムによって伝達される情報を確認することにより,情報が失われないようにする方法を含む。
本発明の一側面による医療トランザクションキャリアは,携帯情報端末(PDA-personal data assistant),ラップトップコンピュータ,スマートカード,ブルートゥース(BLUETOOTH)トランシーバ,または患者のベッドのそばで与えるために薬物が用意される医療施設で情報を記憶し,ひとつの位置から情報を移送することができる他の機器としてもよい。もう一つの側面では,医療トランザクションキャリアは主として静止し,患者のベッドのそばにあってもよい。患者のベッドのそばで,医療トランザクションキャリアは点滴ポンプまたは生命徴候モニタのような患者特有のアセット(PSA-patent specific asset)にインタフェースされ,医療トランザクションキャリア内に記憶された情報が患者特有のアセットに伝えられることにより,患者への薬物投与または患者との他の相互作用で使用されるべき特定の治療パラメータがアセットに与えられる。)
(イ)「Referring now to drawings in which like reference numerals are used to refer to like or corresponding elements among the figures, there is generally shown in FIGURE 1 an integrated hospital-wide information and care management system in accordance with aspects of the present invention. Various subsystems of an facility's information management system are connected together by way of a communication system 5. The communication system 5 may be, for example, a local area network (LAN), a wide area network (WAN), Inter- or intranet based, or some other telecommunications network designed to carry signals allowing communications between the various information systems in the facility. For example, as shown in FIG. 1, the communication system 5 connects, through various interfaces 10, a hospital information system 20, a pharmacy information system 30, a physician order entry system 35, and a control system 40.」
(8ページ6行?17行)
(当審仮訳:図面では,図の中の同じまたは対応する要素を表すために同じ参照番号が使用される。図1に,本発明の側面による統合された病院全体にわたる情報と医療管理システムが全体的に示されている。施設の情報管理システムの種々の部分システムは通信システム5を経由して一緒に接続される。通信システム5はたとえば,施設内の種々の情報システムの間の通信を許す信号を伝えるように設計されたローカルエリアネットワーク(LAN),広域エリアネットワーク(WAN),インタネット型またはイントラネット型,または何か他の電気通信ネットワークとすることができる。たとえば,図1に示されるように,通信システム5は種々のインタフェース10を介して,病院情報システム20,薬局情報システム30,医師指示入力システム35,および制御システム40を接続する。)
(ウ)「The medical transaction carrier 110 generally refers to a device that contains medication and/or patient specific information that is portable such that it can be carried by a nurse or other care-giver to and from a patient's bedside. The MTC 110 may also have a storage capability and technology for interfacing with a computer system or network so that information may be communicated between the MTC 110 and other devices, such as computers, clinical devices and the like. The MTC 110 may, but not necessarily, include a processor.」
(11ページ1行?7行)
(当審仮訳:医療トランザクションキャリア110は一般に,薬物や患者特有の情報を含み,携帯可能で,看護師または他の医療者が患者のベッドのそばへ,またそこから持ち運びできる機器を指す。MTC110が記憶機能とコンピュータシステムまたはネットワークとインタフェースするためのテクノロジーとをそなえることにより,MTC110とコンピュータ,臨床機器等のような他の機器との間で情報を伝えてもよい。MTC110はプロセッサを含んでもよいが,必ずしも含む必要はない。)
(エ)「In another embodiment, the MTC may comprise a pager device or a mobile telephone. Such devices would be particularly useful in a wireless environment, wherein the devices could be programmed to respond to signals from suitable transmitter/receivers located throughout the hospital.」
(13ページ5行?8行)
(当審仮訳:もう一つの実施例では,MTCはページャ機器または移動電話を含んでもよい。このような機器は無線環境で特に有用であり,病院じゅうに配置された適切な送信器/受信器からの信号に応答するようにプログラミングすることができる。)
(オ)「A communication session to transfer medical transaction information for a particular patient into a MTC 110 is initiated by inserting the MTC 110 into an appropriate slot or cradle for the MTC 100 which is in operable communication with the control system 40 via the nurse station computer system 60 and communication system 5. Alternatively, the MTC 110 may communicate with the control system 40 using a wireless system. As described above, this wireless system may comprise either infrared or RF frequency signals using appropriate communication protocols such as BLUE TOOTH(TM) or others (such as those described in IEEE 802.11x).」
(19ページ3行?10行)
(当審仮訳:特定の患者に対する医療トランザクション情報をMTC110内に伝達するための通信セションは,看護師ステーションコンピュータシステム60および通信システム5を介して制御システム40と動作可能に通じている適合したスロットまたはMTCクレードル100にMTC110を挿入することにより開始される。代わりに,MTC110は無線システムを使用して制御システム40と通信してもよい。上記のように,この無線システムは,適当な通信プロトコル,たとえば,ブルートゥース(BLUETOOTHTM)(登録商標)または(IEEE802.11xに説明されているプロトコルのような)他のプロトコルを使用する赤外線またはRF周波数の信号を含んでもよい。)
(カ)「The MTC 110 may also query the PSA 120 for historical records stored in the memory of the PSA. In this process, information such as a current key log, error log, vital signs log, infusion delivery log, medication delivery log, transaction identification, maintenance log and other logs and/or other patient data may be transferred from the PSA 120 to the MTC 110.」
(21ページ16行?20行)
(当審仮訳:MTC110はPSAのメモリに記憶された履歴レコードについてPSA120に問い合わせてもよい。このプロセスでは,現在のキーログ,誤りログ,生命徴候ログ,点滴投与ログ,薬物投与ログ,トランザクションID,保守ログ,および他のログや他の患者データのような情報をPSA120からMTC110へ伝達してもよい。)
(キ)「Once the transfer of information and/or data from the MTC 110 to the control system 40 has been initiated in box 345, information stored in the MTC 110 representing such information as, for example, but not limited to, a current key log, an error log, vital signs log, infusion delivery log, medication delivery log, transaction ID, maintenance and other logs, and any other patient data is communicated to the control system 40, where it may be stored in a database 45 associated with the control system 40 in box 340. In this way, the medical transaction information communicated by the MCT 110 to the control system 40 may be permanently associated with a particular PSA.
Once the information contained within the MTC 110 has been transferred to the control system 40 in step 345, the currently cleared and transferred medical transaction information stored in the MTC 100 may be erased, as indicated in box 350. Alternatively, the information may be archived to storage media, such as magnetic tape, hard drives, floppy disks, and the like, as indicated in box 355.
The control system 40 executes software programs in box 350 that analyze the information recently received from the MTC 110 and communicate new information for present medication delivery transactions to the MTC 110. Such software programs may include re-validating the past interactions recorded in the MTC 110 against data already stored in the PSA database. Where the validation fails, an error signal may be generated by the control system 40 causing a display or paper report to be printed notifying nurses or other care-giving personnel that an error exists.
Additionally, the software running on the control system 40 may analyze newly entered medical transaction information, such as the name or type of drug, dosage and delivery parameters, for example, against standard delivery protocols stored in the hospital or pharmacy information systems 20, 30 as well as determining whether there are any drug interactions or other safety information, such as may be stored in database that should be brought to the care-giver's attention and/or stored in the MTC 110. The software provides for generating error signals or alerts if errors or safety problems are detected during this step.
Once the current transaction data is analyzed, the control system 40 communicates the transaction information to the MTC 110. This information, as indicated in box 360, may include current medical transaction information and a unique transaction identification. This information is stored in the memory of the MTC 110 in box 365.
As indicated by box 370, the software running on the control system 40 may, if desired, generate various reports such as outcome reports, medical administration records or any other report requested by care-giving personnel or administrators. Any errors identified during the generation of these reports would result in an error signal that may either be displayed on a screen or printed in a printed report.
Additionally, as illustrated in box 375, the control system 40 may export all of the information transferred from the MTC 110 to the pharmacy information system 30 or hospital information system 20 for further processing or storage. Alternatively, the control system 40 may be programmed to export a selected portion of that data to those systems. Again, software running on the control system 40 may be executed to compare information stored on the various information systems 20, 30 and 35 with information gathered by the control system 40 and validate that the information is correct, with any failures in validation indicated by an error signal generated by the control system 40 to alert care-givers that a condition exists that may need attention and correction.」
(23ページ21行?25ページ9行)
(当審仮訳:ボックス345でMTC110から制御システム40への情報やデータの伝達が開始されると,たとえば,それらに限定されないが,現在のキーログ,誤りログ,生命徴候ログ,点滴投与ログ,薬物投与ログ,トランザクションID,保守等のログ,および他の任意の患者データのような情報を表すMTC110に記憶された情報が制御システム40に伝えられ,そこでボックス340で制御システム40に対応付けられたデータベース45に記憶してもよい。このようにして,MTC110によって制御システム40に伝えられた医療トランザクション情報は特定のPSAと永久的に対応付けられてもよい。
ステップ345でMTC110の中に含まれる情報が制御システム40に伝達されると,ボックス350に示されるように,現在クリアされ,伝達されたMTC110に記憶された医療トランザクション情報は消去してもよい。代わりに,ボックス355に示されるように,磁気テープ,ハードドライブ,フロッピー(R)ディスク等のような記憶媒体に保存してもよい。
制御システム40はボックス350でソフトウェアプログラムを実行し,ソフトウェアプログラムはMTC110から最近受信された情報を分析し,現在の薬物投与トランザクションに対する新しい情報をMTC110に伝える。このようなソフトウェアプログラムは,MTC110に記録された過去の相互作用をPSAデータベースに既に記憶されたデータと対比して再確認することを含んでもよい。確認が失敗した場合,制御システム40は誤り信号を発生することにより,ディスプレイまたは紙リポートを印刷して,看護師または他の医療専門家に誤りが存在することを知らせてもよい。
更に,制御システム40上で動作しているソフトウェアはたとえば,薬品の名前または型,投与量,および投与パラメータのような新しく入力された医療トランザクション情報を病院情報システム20または薬局情報システム30に記憶された標準投与プロトコルと対比して分析するとともに,薬品の相互作用または他の安全情報があるか判定する。薬品の相互作用または他の安全情報は医療者の注意を引くようにしたり,MTC110に記憶したりすべきデータベースに記憶してもよい。このステップの間に誤りまたは安全性の問題がある場合には,ソフトウェアは誤り信号を発生する。
現在のトランザクションデータが分析されると,制御システム40はトランザクション情報をMTC110に伝える。ボックス360に示されるように,この情報は現在の医療トランザクション情報および特有のトランザクションIDを含んでもよい。ボックス365でこの情報はMTC110のメモリに記憶される。
ボックス370で示されるように,制御システム40上で動作しているソフトウェアは希望される場合,結果リポート,医療投与レコード,または医療専門家または管理者によって要求される他の任意のリポートのような種々のリポートを作成してもよい。これらのリポートの作成の間に識別されるどの誤りによっても,誤り信号が生じ,これは画面にディスプレイするか,印刷して印刷リポートとしてもよい。
更に,ボックス375に示されるように制御システム40は,MTC110から伝達された情報の全てを薬局情報システム30または病院情報システム20にエクスポートし,更に処理または記憶されるようにしてもよい。その代わりに,制御システム40はそのデータの選択された部分をそれらのシステムにエクスポートするようにプログラミングしてもよい。再び,制御システム40上で動作するソフトウェアを実行することにより,種々の情報システム20,30および35に記憶された情報を制御システム40によって集められた情報と比較し,情報が正しいことを確認してもよく,確認の失敗は,制御システム40によって作成される誤り信号によって示され,注意と是正を必要とする条件が存在するという警報が医療者に与えられる。)

(2)引用例1摘記事項(ア)?(キ)によれば,引用例1には,以下の発明が記載されている。
(以下「引用発明」という。)
「医療施設で医療の投与の監視,制御,および確認を行う情報管理のシステムであって,医療トランザクションキャリア(MTC)が,患者特有のアセット(PSA)とインタフェースするものであり,
MTCは携帯情報端末(PDA)であってよく,医療者が患者のベッドのそばへ,またそこから持ち運びでき,また,移動電話を含んでよく,病院じゅうに配置された適切な送信器/受信器からの信号に応答するものであり,
MTCはPSAのメモリに記憶された履歴レコードについてPSAに問い合わせ,現在のキーログ,誤りログ,生命徴候ログ,点滴投与ログ,薬物投与ログ,トランザクションID,保守ログ,および他のログや他の患者データのような情報をPSAからMTCへ伝達し,
MTCは無線システムを使用して制御システム40と通信し,MTCから制御システム40への情報やデータの伝達が開始されると,現在のキーログ,誤りログ,生命徴候ログ,点滴投与ログ,薬物投与ログ,トランザクションID,保守等のログ,および他の任意の患者データのような情報を表すMTCに記憶された情報が制御システム40に伝えられ,
ここで,制御システム40は通信システム5で接続された薬局情報システム30の安全情報があるか判定し,安全情報は医療者の注意を引くように,MTCに記憶すべきデータベースに記憶し,
制御システム40上で動作するソフトウェアを実行することにより,情報が正しいことを確認し,確認の失敗は,制御システム40によって作成される誤り信号によって示され,注意と是正を必要とする条件が存在するという警報が医療者に与えられる,
情報管理のシステム。」

2.対比
引用発明と本願発明とを対比する。
(ア)引用発明のPSAはMTCにより無線システムを使用して制御システム40と通信し,PSAの情報をMTCから制御システム40へ伝達する。伝達する情報は,現在のキーログ,誤りログ,生命徴候ログ,点滴投与ログ,薬物投与ログ,トランザクションID,保守等のログ,および他の任意の患者データのような情報である。
ここで,引用発明の「PSAとインタフェース用のMTC」,「MTCが制御システム40と通信する無線システム」,「制御システム40」,及び伝達するPSAの「情報」は,後記する点で相違するものの,本願発明の,「医療装置」,「ネットワーク」,「第1のサーバ」,及び「状況情報およびプログラミング情報」にそれぞれ相当する。
ここで,PSAは,複数設けられ,MTCと無線システムを介して制御システム40と通信することが明らかである。
してみると,引用発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「ネットワークに接続される複数の医療装置であって,通信が複数の医療装置のうちの1つによって開始され,ネットワーク上に転送され,通信が複数の医療装置のうちの1つのために少なくとも1つの状況情報およびプログラミング情報を有する,複数の医療装置」を有し,「ネットワークに接続される第1のサーバ」を有し,「複数の医療装置は,第1のサーバと通信」する点で共通する。
(イ)引用発明の制御システム40は,通信システム5で接続された薬局情報システム30の安全情報があるか判定する。
引用発明の,「制御システム40」,「通信システム5」,及び「薬局情報システム30」は,後記する点で相違するものの,本願発明の,「第1のサーバ」,「ネットワーク」,及び「第2のサーバ」にそれぞれ相当する。
してみると,引用発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「ネットワークを介して第1のサーバと通信する第2のサーバ」を有する点で共通する。
(ウ)引用発明は,MTCがPSAのメモリに記憶された履歴レコードについてPSAに問い合わせ,現在のキーログ,誤りログ,生命徴候ログ,点滴投与ログ,薬物投与ログ,トランザクションID,保守ログ,および他のログや他の患者データのような情報をPSAからMTCへ伝達し,MTCから制御システム40への情報やデータの伝達が開始されると,現在のキーログ,誤りログ,生命徴候ログ,点滴投与ログ,薬物投与ログ,トランザクションID,保守等のログ,および他の任意の患者データのような情報を表すMTCに記憶された情報が制御システム40に伝えられ,制御システム40上で動作するソフトウェアを実行することにより,情報が正しいことを確認し,確認の失敗は,制御システム40によって作成される誤り信号によって示され,注意と是正を必要とする条件が存在するという警報が医療者に与えられるものである。
ここで,引用発明の,制御システム40が医療者に与える警報は,後記する点で相違するものの,本願発明の,「第1のメッセージ」に相当する。
この,警報は,PSAからMTCを介して送信された情報に応じて制御システム40が作成するものであり,注意と是正の警報を医療者に与えるものであるから,少なくともPSAからMTCを介して送信された情報の一部を含むことが明らかである。
してみると,引用発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「端末装置による要求と,イベントの発生とのうちの少なくとも一つに応じて,第1のメッセージが第1のサーバにより作成され,転送され,該第1のメッセージが,複数の医療装置のうちの1つにより開始される通信中に含まれる状況情報またはプログラミング情報の少なくとも一部を備え,ここで,第1のメッセージの少なくとも一部が,医療者に提供される」という点で共通する。
(エ)引用発明では,制御システム40は通信システム5で接続された薬局情報システム30の安全情報があるか判定し,安全情報は医療者の注意を引くように,MTCに記憶すべきデータベースに記憶するものである。
つまり,薬局情報システム30は,制御システム40の求めに応じて,安全情報を通信システム5で提供する。
この,「安全情報」は,本願発明の「第2のメッセージ」に相当する。
してみると,引用発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「第2のメッセージが第2のサーバによって作成され,第2のメッセージが,少なくとも部分的に,第1のサーバからの要求に応じて作成され,メッセージが,第2のネットワーク上で第1のサーバに送信」され,「医療者に注意喚起する」という点で共通する。

以上(ア)?(エ)のことから,引用発明と本願発明とは,以下の点で一致し,また相違する。

[一致点]
「ネットワークに接続される複数の医療装置であって,通信が複数の医療装置のうちの1つによって開始され,ネットワーク上に転送され,通信が複数の医療装置のうちの1つのために少なくとも1つの状況情報およびプログラミング情報を有する,複数の医療装置と,
ネットワークに接続される第1のサーバと,
ネットワークを介して第1のサーバと通信する第2のサーバであって,複数の医療装置は,第1のサーバと通信する第2のサーバと,
を備え,
端末装置による要求と,イベントの発生とのうちの少なくとも一つに応じて,第1のメッセージが第1のサーバにより作成され,転送され,第1のメッセージが,複数の医療装置のうちの1つにより開始される通信中に含まれる状況情報またはプログラミング情報の少なくとも一部を備え,ここで,第1のメッセージの少なくとも一部が,医療者に提供され,
第2のメッセージが第2のサーバによって作成され,第2のメッセージが,少なくとも部分的に,第1のサーバからの要求に応じて作成され,メッセージが,第2のネットワーク上で第1のサーバに送信され,医療者に注意喚起する,
システム。」

[相違点1]
本願発明では,「ネットワークに接続され,ディスプレイを有する端末装置」を有し,「ネットワーク上で転送」された「第1のメッセージの少なくとも一部」を,「人間が読み取り可能な形式でディスプレイ上に提供」するものであり,さらに,「第2のメッセージ」が,「ネットワーク上で少なくとも端末装置に送信」されるものであるのに対し,引用発明では,ネットワークに無線通信接続されるMTCを有するものの,このMTCは,注意と是正の警報に関して,「ネットワーク上で転送された第1のメッセージの少なくとも一部を,人間が読み取り可能な形式でディスプレイ上に提供」したり,医療者への注意喚起に関して,「第2のメッセージが,ネットワーク上で少なくとも端末装置に送信」されたりするものではなく,後者の点については,第2のメッセージはMTCに記憶したりするべきデータベースに記憶されるにとどまる点。
なお,「ネットワーク」に係る相違点は[相違点2]として整理する。
[相違点2]
本願発明では,「複数の医療装置と第1のサーバとに接続されるハブ」を有し,「複数の医療装置」は,「ハブを介して第2のサーバから分離」され,「第2のサーバが,ハブと,第2のネットワークと,第1のサーバと,第1のネットワークとを介して,複数の医療装置と端末装置とから分離」されているのに対して,引用発明では「ハブ」を有さず,「複数の医療装置」が,「ハブを介して第2のサーバから分離」されたり,「第2のサーバが,ハブと,第2のネットワークと,第1のサーバと,第1のネットワークとを介して,複数の医療装置と端末装置とから分離」されたりしているものではない点。

3.判断
[相違点1]について。
(ア)引用発明のMTCは医療者が携帯可能なものであって,PDAのような手持ち式の携帯情報端末であってよく,ページャ機器を含み病院じゅうに配置された送信器/受信器に応答するものであってよい。
(イ)病院内で医療者へ警報し,又は注意喚起する際,医療者の携帯情報端末へ警報や注意を送信することは,周知の技術的事項である。
(以下「周知の技術的事項A」という。)
例えば,特開2002-186590号公報(以下「周知例1」という。)の【0047】段落には,透析装置の警告を,「警報装置を無線の呼出信号を出力可能に構成すると共に,この呼出信号を受信することにより警報動作を行う携帯型呼出端末を設けた場合には,看護婦等に携帯型呼出端末を所持させることで,居場所に拘わらず異常があった旨を看護婦等に報知できるので,より確実な対応が可能である。」と記載されている。
例えば,特開平04-161139号公報(以下「周知例2」という。)の「特許請求の範囲」には,「治療指示書に示される治療指示に必要なデータが入力される中央監視装置と,患者の生体機能の情報および治療機器の動作状態を監視し,異常発生時に患者の病態アラーム信号および機器アラーム信号を上記中央監視装置に送出するベッドサイドモニタと,このベッドサイドモニタからの病態アラーム信号または機器アラーム信号の受信時に,上記中央監視装置においてアラームを発するアラーム発生手段と,中央監視装置に設けられ,上記治療指示に必要な入力データに基づき治療処置事項に対応する呼出し信号を処置該当時刻に無線信号により発信するとともに,病態アラームまたは機器アラームの発生時にこれらアラームに対応した呼出し信号を無線信号により発信する送信手段と,
看護婦が携帯し,上記送信手段からの呼出し信号の受信時に該呼出し信号の種別に対応したアラームを発するとともに,呼出し信号の要求に対応した処置の終了後に処置済み信号を上記中央監視装置の受信手段に発信する子機と,上記中央監視装置に蓄えられた治療指示書に示される治療指示を入力でき,上記指示に基づき治療したことを入力できるハンディターミナルと,上記中央監視装置に設けられ,上記子機から発信された処置済み信号と上記ハンディターミナルが送出された処置澄み記号とに基づいて看護記録に相当する経過表を作成する経過表作成手段とを備えることを特徴とする患者監視システム。」と記載されている。
(ウ)してみると,引用発明において,制御システム40が医療者に注意と是正の警報を与える際,医療者への通知の手段に周知の技術的事項Aを適用することにより,医療者が持ち運ぶPDAに注意と是正の警報を送信し,これを表示するよう構成することは,当業者が容易に想到することができたものである。
(エ)また,制御システム40のデータベースに記憶される情報で医療者へ注意喚起する際,医療者への通知の手段に周知の技術的事項Aを適用することにより,医療者が持ち運ぶPDAに注意喚起を送信するよう構成することもまた,当業者が容易に相当することができたものである。
(オ)以上(ア)?(エ)のことから,注意と是正の警報に関する第1のメッセージをネットワーク上で端末装置に送信してディスプレイに表示するよう構成し,医療者への注意喚起に関する第2のメッセージをネットワーク上で端末装置に送信するよう構成すること,つまり,「ネットワークに接続され,ディスプレイを有する端末装置」を有し,「ネットワーク上で転送」された「第1のメッセージの少なくとも一部」を,「人間が読み取り可能な形式でディスプレイ上に提供」するよう構成し,さらに,「第2のメッセージ」が,「ネットワーク上で少なくとも端末装置に送信」されるよう構成し,もって[相違点1]に係る発明特定事項の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。

[相違点2]について。
(ア)病床などの医療現場で用いられる医療装置と,これと接続するサーバとをハブを介して接続することは周知の技術的事項である。
(以下「周知の技術的事項B」という。)
例えば,特開平11-272780号公報(以下「周知例3」という。)の【0018】段落には,「本実施の形態に係る病床情報端末システムは,図1に示すように,ナースステーションに設置される医療データサーバ1と,各患者の病床に設置される病床用情報端末装置2とから構成される。そして,医療データサーバ1と各病床用情報端末装置21?2nとはハブ3を介して接続され,体温計や血圧計等により計測されるバイタルデータ等が医療データサーバ1と各病床用情報端末装置21?2nとの間で通信される。」と記載されている。
例えば,特開平11-296592号公報(以下「周知例4」という。)の【0016】段落には,「この医療・介護支援システム10は,システム全体を統括するシステム制御装置としてのサーバ11と,ハブ12を介して該サーバ11と接続された複数の専用端末装置13と,同じくサーバ11と接続された設計端末14とを備えている。」と記載されている。
(イ)してみると,引用発明の「インタフェース用のMTC」が「制御システム40」と通信する際,周知の技術的事項Bを適用することにより,「インタフェース用のMTC」と「制御システム」とが「ハブ」を介して通信するよう構成し,もって本願発明の「複数の医療装置と第1のサーバとに接続されるハブ」を有する構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。
(ウ)端末装置とサーバとをつなぐローカルなネットワークと,このサーバと通信する他のサーバとをつなぐサーバ間のネットワークとを,サーバを介して分離することは周知の技術的事項である。
(以下「周知の技術的事項C」という。)
例えば,特開平11-296592号公報(以下「周知例5」という。)には,専用端末装置13を有する医療・介護支援システム10のサーバ11(【0016】)が,外部医療事務システム20とのデータ通信の交通整理をするためのデータを一時格納するトランザクションファイルを有するシステム制御部50を有する(【0038】【0039】)ことにより,「オンラインで外部医療事務管理システム20のデータが引き出され,本システムに適合したデータ形式に変換された上で専用端末装置13の画面に表示される。あるいは,外部医療事務管理システム20の通信フォーム(プロトコルも含む)に従ってデータを送受信し,以て外部医療事務管理システム20側のデータを取り出すようプログラムしておいてもよい。」(【0049】)と記載されている。
(エ)してみると,引用発明の,「制御システム40が薬品の安全情報を判定してデータベースに記憶するための,制御システム40と薬局情報システム30とをつなぐ通信システム5」,つまり「サーバ間のネットワーク」と,「制御システム40に記憶されたメッセージをMTCに記憶するための,制御システム40とMTCとをつなぐ通信のネットワーク」,つまり「ローカルなネットワーク」とを接続する「制御システム40」に,周知の技術的事項Cのサーバの構成を適用することにより,「制御システム40」を介して,「ローカルなネットワーク」と「サーバ間のネットワーク」とを分離するよう構成すること,つまり,薬局情報システム30を,通信システム5,制御システム40を介して,MTCなどと通信するネットワークと分離するよう構成することは,当業者が容易に相当することができたものである。
つまり,引用発明に周知の技術的事項Cを適用することにより,本願発明の,第2のサーバ108aを第2のネットワークと第1のサーバ109とを介して第1のネットワークや医療機器と分離するよう構成することは,当業者が容易に想到することができたものである。
以上,(ア)?(エ)のことから,「複数の医療装置と第1のサーバとに接続されるハブ」を有するよう構成し,「複数の医療装置」は,「ハブを介して第2のサーバから分離」され,「第2のサーバが,ハブと,第2のネットワークと,第1のサーバと,第1のネットワークとを介して,複数の医療装置と端末装置とから分離」するよう構成し,もって[相違点2]に係る発明特定事項の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。

ここで,審判請求人の意見書の主張について検討する。
平成25年2月26日の意見書によれば,請求人は,つまり,顕著な効果として第1のサーバがゲートウェイの働きを果たすこと,【0219】段落のように潜在的な過誤の源を回避することを主張する。(意見書20ページ下から12行?下から8行)
(a)「第1のサーバがゲートウェイの働きを果たす」との主張に関して,以下に検討する。
発明の詳細な説明の【0031】には,「別の実施形態では,中央コンピュータは,第1のサーバ及び第2の別個のサーバを備える。第1と第2のサーバは,ファイアウォールによって分離されており,中央コンピュータの中央妥当性確認部分は,第1のサーバ内に常駐し,中央コンピュータの第2の非妥当性確認部分は,第2のサーバ上に常駐する。」と記載されている。
仮に,「第2のネットワークと第1のネットワークとが分離されている」との事項が,「ファイアウォールによって分離」するものであって,「セキュリティの確保」のためであるとしても,セキュリティを確保するために所定のネットワークを他のネットワークから切り離すべく,ファイアウォールを設けることは普通に行われており,仮に,そのような構成であるとしても,当業者想到容易である。
(b)仮に,審判請求人の,「第1のサーバがゲートウェイの働きを果たす」との主張が,「第1のネットワークのプロトコルと第2のネットワークのプロトコルとが異なる」ことであるとする。
仮に,請求項1発明がそのようなことを特定するとしても,薬局のシステム等と連係するネットワークのプロトコルと,端末装置や医療機器と連係するネットワークとのプロトコルとは,前者がサーバ間のネットワークであって後者がローカルなネットワークであり,このようなネットワークのプロトコルを異なるものとすることは,設計上の必要性に応じて当業者が適宜選択しうる設計的事項であり,やはり当業者想到容易である。
ちなみに,周知例5のサーバもプロトコルを変換することが記載されている。(周知例5の【0049】段落の記載を参照。)
(c)審判請求人は【0219】段落を引用するので,さらに検討する。
審判請求人が,潜在的な過誤について引用する【0219】段落には,以下の記載がある。
「システムプログラム210の1つの利点は,医療機器332をプログラムするのに運転パラメータを利用できるようになる前に,医療機器332に対する運転パラメータが,デジタルアシスタント118又は遠隔位置のどのような他のコンピュータも通過する必要がない点である。遠隔位置のコンピュータをバイパスすることは,患者112へ薬剤124を投与するにあたっての潜在的な過誤の源を排除する。医療機器332に対する運転パラメータは,様々な検証が達成されると仮定すれば,医療機器332へ「直接」送ることができる。この脈絡において,「直接」とは,デジタルアシスタント118又は遠隔位置のどのような他のコンピュータも通過することなく運転パラメータを医療機器へ送ることができることを意味する」
当該【0219】段落を含む【0214】段落以降の(薬剤投与)の場面で,システムプログラム210が用いられることにより,医療機器へデジタルアシスタント118や遠隔地のどのような他のコンピュータをも通過することなく運転パラメータを医療機器に送ることができることが,確かに記載されている。
仮に,「第2のネットワークと第1のネットワークとが分離されている」との事項が,「医療機器へデジタルアシスタント118や遠隔地のどのような他のコンピュータを通過することなく運転パラメータを医療機器に送る」との事項であるとする。
発明の詳細な説明には,さらに,以下の記載がある。
「【0128】当業界における重大な関心事は,正しい薬剤が正しい患者に投与されることである。従って,注入システム210は,正しい薬剤が正しい患者に対して効率的な方法で投与されることを保証するのを支援するための特徴を含む。注入システム210は,ソフトウェア,ファームウェア,ハードウェア,又はそれらの組み合わせ内に実装することができる。1つの様式では,注入システム210は,実行可能プログラムとしてソフトウェア内に実装され,パーソナルコンピュータ(PC;IBM-互換PC,Apple互換PC,その他),パーソナルデジタルアシスタント,ワークステーション,ミニコンピュータ,又はメインフレームコンピュータのような1台又はそれ以上の特殊用途デジタルコンピュータ又は汎用デジタルコンピュータによって実行される。注入システム210を実装することのできる汎用コンピュータの一例を,図2に示す。注入システム210は,限定するものではないが,薬局のコンピュータ104,中央システム108,投薬治療用カート132,及びデジタルアシスタント118などの任意のコンピュータ内に常駐することができるか,又は,その内部に常駐する様々な部分を有することができる。従って,図2のコンピュータ200は,注入システム210が内部に常駐又は部分的に常駐するいずれかのコンピュータを代表するものである。」
つまり,注入システム210(システムプログラム210)は,薬局のコンピュータ104,中央システム108,投薬治療用カート132,及びデジタルアシスタント118などの任意のコンピュータ内に常駐することができるものであり,医療機器へデジタルアシスタント118や遠隔地のどのような他のコンピュータを通過することなく運転パラメータを医療機器に送ることができるのは,注入システム210(システムプログラム210)が,薬局のコンピュータ104にも中央システム108にもデジタルアシスタント118にも常駐しないような,例えば投薬治療用カート132内に常駐する場合などである。
しかし,本願発明の発明特定事項には,そのような状況は特定されていないことが明らかであり,審判請求人の主張は,特許請求の範囲の記載に基づかないものであるから,これを採用することはできない。

以上のとおりであるから,本願発明における上記[相違点1],[相違点2]に係る発明特定事項は当業者が容易に想到することができたものであり,相違点を総合しても,想到することが困難な格別の事項は見いだせない。
そして,本願発明の作用効果も,引用発明及び周知の技術的事項から当業者が予測できる範囲のものである。

4.進歩性についての結論。
以上,1.?3.のことから,本願発明は,引用発明及び周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり,本件出願は,特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものである。
また,本願発明は,引用発明及び周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,その余の請求項について判断するまでもなく拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-23 
結審通知日 2013-08-26 
審決日 2013-09-06 
出願番号 特願2006-503207(P2006-503207)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 唐橋 拓史  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 金子 幸一
須田 勝巳
発明の名称 医療装置接続方法およびシステム  
代理人 森下 夏樹  
代理人 山本 秀策  
代理人 安村 高明  

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