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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L |
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管理番号 | 1283829 |
審判番号 | 不服2012-17808 |
総通号数 | 171 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-09-12 |
確定日 | 2014-01-17 |
事件の表示 | 特願2000-297886「ポリアセタール樹脂組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月10日出願公開、特開2002-105279〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年9月29日を出願日とする特許出願であって、平成22年10月15日付けで拒絶理由が通知され、同年12月24日に意見書と手続補正書が提出され、平成23年7月11日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年10月11日に意見書と手続補正書が提出されたが、平成24年5月18日付けで拒絶査定がなされた。 これに対し、平成24年9月12日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年10月16日付けで前置報告がなされ、平成25年4月4日付けで当審において審尋がなされ、同年7月9に回答書が提出されたものである。 2.平成24年9月12日付けの手続補正について (1)補正の内容 平成24年9月12日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成23年10月11日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲について 「【請求項1】 高密度ポリエチレン樹脂20?45重量%及びポリアセタール樹脂55?80重量%で構成される非相溶である二成分からなる樹脂組成物であり、前記樹脂組成物中で前記ポリアセタール樹脂が連続層、及び前記高密度ポリエチレン樹脂は分散相を形成する海島構造であり、これらの樹脂組成物が存在する摩擦面では、前記高密度ポリエチレン樹脂が分散粒子になって荷重を支持して低摩耗性を発現すると共に、前記ポリアセタール樹脂は低摩擦性を発現することを特徴とする低摩耗性を向上させる高密度ポリエチレン樹脂及び低摩擦性を向上させるポリアセタール樹脂組成物。 【請求項2】 請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物に、さらに青銅粉が添加されていることを特徴とする低摩耗性を向上させる高密度ポリエチレン樹脂及び低摩擦性を向上させるポリアセタール樹脂組成物。 【請求項3】 前記青銅粉がアミノシランカップリング剤により表面処理を施したものであることを特徴とする請求項2に記載の低摩耗性を向上させる高密度ポリエチレン樹脂及び低摩擦性を向上させるポリアセタール樹脂組成物 【請求項4】 請求項1又は2記載の低摩耗性を向上させる高密度ポリエチレン樹脂及び低摩擦性を向上させるポリアセタール樹脂組成物により形成されることを特徴とする摺動用部材。 【請求項5】 請求項4記載の摺動用部材により形成されることを特徴とする軸受け又は歯車。」を、 「【請求項1】 高密度ポリエチレン樹脂20?45重量%及びポリアセタール樹脂55?80重量%で構成される非相溶である二成分からなる樹脂組成物であり、前記樹脂組成物中で前記ポリアセタール樹脂が連続相、及び前記高密度ポリエチレン樹脂は分散相を形成する海島構造であり、これらの樹脂組成物が存在する摩擦面では、前記高密度ポリエチレン樹脂が分散粒子になって荷重を支持して低摩耗性を発現すると共に、前記ポリアセタール樹脂は低摩擦性を発現することを特徴とする低摩耗性と低摩擦性を向上させるポリアセタール樹脂組成物。 【請求項2】 請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物に、さらに青銅粉が添加されていることを特徴とする低摩耗性と低摩擦性を向上させるポリアセタール樹脂組成物。 【請求項3】 前記青銅粉がアミノシランカップリング剤により表面処理を施したものであることを特徴とする請求項2に記載の低摩耗性と低摩擦性を向上させるポリアセタール樹脂組成物。 【請求項4】 請求項1又は2記載の低摩耗性と低摩擦性を向上させるポリアセタール樹脂組成物により形成されることを特徴とする摺動用部材。 【請求項5】 請求項4記載の摺動用部材により形成されることを特徴とする軸受又は歯車。」とする補正事項を含むものである。 (2)補正の目的 上記補正事項は、請求項1について本件補正前に「ポリアセタール樹脂組成物」とあったものを明細書の段落【0001】の記載等に基いて「低摩耗性と低摩擦性を向上させるポリアセタール樹脂組成物」とする補正事項1を含むものである。 また、請求項1を直接または間接的に引用する請求項2乃至5についても同様に、それぞれ、本件補正前に「ポリアセタール樹脂組成物」とあったものを「低摩耗性と低摩擦性を向上させるポリアセタール樹脂組成物」とする補正事項(以下、それぞれ、「補正事項2」乃至「補正事項5」という。)を含むものである。 補正事項1は、形式的には、本件補正前の請求項1の「ポリアセタール樹脂組成物」を「低摩耗性と低摩擦性を向上させる」ものに減縮する補正であるが、補正事項1は、樹脂組成物自体、例えば、樹脂組成物を構成する各成分の種類や配合割合を変更するような補正事項を一切含んでいないので、本件補正の前後において樹脂組成物自体の構成に変化はないから、樹脂組成物が有する物性にも変化はないといえる。 そうすると、補正事項1は、実質的には、本件補正前には明記されていなかった物性を単に明記したに過ぎないと認められる。 したがって、補正事項1は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第4号の明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 補正事項2乃至5についても同様である。 3.本願発明 本願の請求項1?5に係る発明は、平成24年9月12日に提出された手続補正書により補正された明細書並びに図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものと認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「高密度ポリエチレン樹脂20?45重量%及びポリアセタール樹脂55?80重量%で構成される非相溶である二成分からなる樹脂組成物であり、前記樹脂組成物中で前記ポリアセタール樹脂が連続相、及び前記高密度ポリエチレン樹脂は分散相を形成する海島構造であり、これらの樹脂組成物が存在する摩擦面では、前記高密度ポリエチレン樹脂が分散粒子になって荷重を支持して低摩耗性を発現すると共に、前記ポリアセタール樹脂は低摩擦性を発現することを特徴とする低摩耗性と低摩擦性を向上させるポリアセタール樹脂組成物。」 4.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、平成23年7月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由1であって、この出願の請求項1、4-5に係る発明は、その出願日前に日本国内において、頒布された刊行物である特公昭46-041456号公報に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、という理由を含むものである。 4.当審の判断 (1)引用例の記載事項 平成23年7月11日付け拒絶理由通知で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特公昭46-041456号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。 (ア)「ポリアセタール、ポリイミド及びポリエチレンテレフタレートから選ばれる結晶性熱可塑性樹脂(A)と粉末状の高密度ポリエチレン(B)とを次の(1)および(2)式を同時に満足せしめて溶融混合し、結晶性熱可塑性樹脂(A)中に粉末状の結晶性ポリエチレンを独立の相として含有せしめることを特徴とする耐摩耗性の改良された結晶性熱可塑性樹脂組成物。 μB/μA≧5・・・・(1) WB/WA=(3?30)/(97?70)・・・・(2) ただしμAおよびWA:結晶性熱可塑性樹脂の溶融粘度及び混合量(重量) μBおよびWB:結晶性ポリエチレンの溶融粘度および混合量(重量) を意味する。」(特許請求の範囲) (イ)「本発明は耐磨耗性の優れた熱可塑性樹脂組成物に関するものである。詳しくは極めて高い溶融粘度を有する高密度ポリエチレン粉末を結晶性熱可塑性樹脂に混合して成形するものであって、その目的とするところは結晶性熱可塑性樹脂本来の性質あるいは外観を失うことなく優れた耐磨耗性の付与されたすなわちPV値の高い結晶性熱可塑性樹脂成形品を製造することにある。 熱可塑性樹脂、特にポリアセタール、ナイロン、ポリエチレンテレフタレートなどの結晶性か高く、しかも優れた機械的性質を有する樹脂は回転および往復動接触をする機械部品に使用され、無潤滑でも優れた磨耗特性を示すことはよく知られている。」(1欄12行?25行) (ウ)「このPV値というのは一般に軸受材料がある一定の荷重(P)と周速度(V)以上になると材料が融けたり、焼けついたりする負荷の限界値である。プラスチックスは金属に比較して摩擦係数は小さく磨耗は少ないが、一方このPV値すなわち摩擦限界負荷特性が低い欠点かある。」(1欄33行?末行) (エ)「そこで本発明者は潤滑特性のよい異種のポリマーを混合添加することを試験した。ナイロン6にポリスチレン、ポリ塩化ビニール、ポリメチルメタクリレートなどを添加してみたがいずれも効果がみられなかった。そこで更にポリエチレンについて低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンについて同様検討した結果、高密度ポリエチレンについて、特にPV値において明確な差が現れ、極めて好ましい耐磨耗特性を有することが判明した。 さらに詳細に検討した結果、まず、ポリエチレンは従来ポリアミド、ポリアセタールまたはポリエチレンテレフタレート等の結晶性熱可塑性樹脂とは相溶性が悪く、両者を混合すると層状に剥離する製品しか得られず、したがって機械的性質や外観の悪いものしか得られないという欠点を有していることもわかった。 しかしながら、該樹脂からなる基体ポリマーに粉末状の高密度ポリエチレンを特定量、しかも両者の溶融粘度比を特定の範囲になるように維持せしめて溶融混合せしめれば、結晶性熱可塑性樹脂中に高密度ポリエチレンが、固体粉末状に含有分散され、その結果、耐磨耗性を要求される軸受部品や歯車部品のような潤滑部材という用途にかぎって注油する必要のない、しかも騒音の小さい、いわゆる高いPV値を有する部材となる組成物が得られるということを見い出した。」(2欄31行?3欄18行) (オ)「本発明において基体ポリマに、溶融粘度が5倍以上で、粉末状の高密度ポリエチレンを添加する理由は、極性基がなく基体ポリマとの相溶性が悪く、成形品でのハク離などを生じ商品価値を低下させることを防ぐため、基材ポリマと粉末状高密度ポリエチレンに大きな溶融粘度差を持たせることにより、混合の過程においてポリエチレンが剪断応力により変形され薄層化、フイルム状化することを防ぐにある。すなわち低粘度の基体ポリマ中で、非常に粘度の高いポリマが混合される形になり、丁度低粘度液体中で固体粒子を混合するに似た状態を示し、粉末状高密度ポリメチレン(当審注:ポリエチレンの誤記と認める。)はよく分散はするが変形はせず、成形品中に粉末粒子状のまま保持されるようにするためである。したがって成形品中に高密度ポリエチレンは粒子状に分散添加されており、従来製品の最も欠点であった極性基のないポリエチレンを添加し相溶性の悪いことから生ずる成形品表面でポリエチレンが剥離し、商品価値を低下する問題を解決することができる。 添加する高密度ポリエチレン粉末はあまり粒子が粗大であると製品価値を低下させるので、30メッシュ以下の細粉末が好ましい。添加する高密度ポリエチレンの量はPV値の向上にも最も有効であり、しかも基体ポリマの機械的性質を著しくそこなわない範囲が好ましく、5?30%が最適である。」(3欄36行?4欄17行) (カ)「基体ポリマとポリエチレン粉末の混合方法には特に制限はなくドライプレンドあるいは押出ペレタイズのいずれの方法をとっでもよい。すなわち粉末もしくは粒状の基体ポリマは徽粉末のポリエチレンと混合された後、通常の押出機で溶融混合された後射出成形機に供されるか、あるいは直接射出成形機で混合と同時に成形することも可能である。」(4欄18行?25行) (キ)「以上説明した如く本発明方法によって成形加工された軸受、歯車などは耐摩耗性が更に改良され、しかも潤滑の必要も非常に少ない。」(4欄37行?39行) (ク)「実施例3 Hi-Zexミリオン粉末(30?200メッシュ)をナイロン66、ポリアセタール(デルリン500)ポリエチレンテレフタレートおよびポリスチレンに各々10%(重通(当審注:重量の誤記と認める。))添加混合し、実施例1と同様に摩耗試験片を射出成形した。この耐摩耗性の結果は第5表に示す。」(7欄3行?8欄2行) (2)引用例に記載された発明 引用例には、上記摘示アの記載において、結晶性熱可塑性樹脂(A)としてポリアセタールを選んだ場合として、以下の結晶性熱可塑性樹脂組成物の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「ポリアセタールである結晶性熱可塑性樹脂(A)と粉末状の高密度ポリエチレン(B)とを次の(1)および(2)式を同時に満足せしめて溶融混合し、結晶性熱可塑性樹脂(A)中に粉末状の結晶性ポリエチレンを独立の相として含有せしめることを特徴とする耐摩耗性の改良された結晶性熱可塑性樹脂組成物。 μB/μA≧5・・・・(1) WB/WA=(3?30)/(97?70)・・・・(2) ただしμAおよびWA:結晶性熱可塑性樹脂の溶融粘度及び混合量(重量) μBおよびWB:結晶性ポリエチレンの溶融粘度および混合量(重量) を意味する。」 (3)対比、判断 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の高密度ポリエチレンとポリアセタールとは非相溶性のものであるから(上記エ)、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「高密度ポリエチレン樹脂20?30重量%及びポリアセタール樹脂70?80重量%で構成される非相溶である二成分からなる樹脂組成物であるポリアセタール樹脂組成物」 <相違点> 樹脂組成物について、本願発明が、「前記樹脂組成物中で前記ポリアセタール樹脂が連続相、及び前記高密度ポリエチレン樹脂は分散相を形成する海島構造であり、これらの樹脂組成物が存在する摩擦面では、前記高密度ポリエチレン樹脂が分散粒子になって荷重を支持して低摩耗性を発現すると共に、前記ポリアセタール樹脂は低摩擦性を発現する」と特定しているのに対し、引用発明においては、このような特定がない点 この相違点について検討する。 引用例には、ポリアセタールと高密度ポリエチレンとを溶融混合を行いポリアセタール中に粉末状の結晶性ポリエチレンを独立の相として含有せしめるものであり(上記ア)、この独立相とは、上記エの「基体ポリマーに粉末状の高密度ポリエチレンを特定量、しかも両者の溶融粘度比を特定の範囲になるように維持せしめて溶融混合せしめれば、結晶性熱可塑性樹脂中に高密度ポリエチレンが、固体粉末状に含有分散され、」の記載、上記オの「すなわち低粘度の基体ポリマ中で、非常に粘度の高いポリマが混合される形になり、丁度低粘度液体中で固体粒子を混合するに似た状態を示し、粉末状高密度ポリメチレン(当審注:ポリエチレンの誤記と認める。)はよく分散はするが変形はせず、成形品中に粉末粒子状のまま保持されるようにするためである。したがって成形品中に高密度ポリエチレンは粒子状に分散添加されており、」の記載から、ポリアセタール成分(マトリックス)中に高密度ポリエチレンが孤立状に分散した二相構造、つまりマトリックスと分散相とからなる構造をとっているものといえる。 そして、このようなマトリックスと分散相とからなる構造は「海島構造」というものであることは周知である(例えば、図解プラスチック用語辞典、第2版、1994年11月27日、日刊工業新聞社発行、海島構造の項参照)。 そうであれば、引用発明の高密度ポリエチレン樹脂及びポリアセタール樹脂で構成される非相溶である二成分からなる樹脂組成物は、海島構造を有しているものといえる。 しかも、本願発明の「海島構造」については、明細書段落【0004】に「ポリアセタール樹脂と高密度ポリエチレン樹脂とは非相溶性であって、ポリアセタール樹脂に高密度ポリエチレン樹脂を配合すると、ポリアセタール樹脂が連続相で高密度ポリエチレン樹脂が分散相に相当する海島構造を示す。」と記載されているものの、具体例である実施例では、明細書段落【0007】に「使用した樹脂は下記のとおりである。ポリアセタール樹脂: ポリプラスチックス社製 Duracon M90高密度ポリエチレン樹脂: 日本ポリオレフィン社製 J-Rex-HD,SS5003B」と原料について記載し、明細書段落【0008】に実施例1として、「ポリアセタール樹脂(POM)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)及び高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)31.3重量%とポリアセタール樹脂(POM)68.7重量%とを含有する樹脂組成物の試料をそれぞれ、押出成形機(ユニオンプラスチックス社製、USV25-20)で円筒状に成形した後、」と記載されているのみであり、海島構造がどの様な構造からなるのか具体的な記載は何等されていない。 そうすると、本願の海島構造は、高密度ポリエチレン樹脂20?30重量%及びポリアセタール樹脂70?80重量%を配合することにより、ポリアセタール樹脂が連続相で高密度ポリエチレン樹脂が分散相となる海島構造がもたらされるものといえるところ(明細書段落【0004】の記載)、引用発明においても、高密度ポリエチレン樹脂20?30重量%及びポリアセタール樹脂70?80重量%を配合(本願発明と一致する範囲の配合量である。)しているものであるから、引用発明も本願発明と同様にポリアセタール樹脂と高密度ポリエチレン樹脂からなる樹脂組成物は海島構造をとっているものといえる。 そして、引用例の「結晶性熱可塑性樹脂中に高密度ポリエチレンが、固体粉末状に含有分散され、その結果、耐磨耗性を要求される軸受部品や歯車部品のような潤滑部材という用途にかぎって注油する必要のない、しかも騒音の小さい」(上記エ)、及び、「したがって成形品中に高密度ポリエチレンは粒子状に分散添加されており、従来製品の最も欠点であった極性基のないポリエチレンを添加し相溶性の悪いことから生ずる成形品表面でポリエチレンが剥離し、商品価値を低下する問題を解決することができる。」(上記オ)との記載からみて、引用発明は、摩擦面において、前記高密度ポリエチレン樹脂が分散粒子になって荷重を支持しているものといえるので、引用発明のアセタール樹脂組成物も、前記相違点に係る「摩擦面では、前記高密度ポリエチレン樹脂が分散粒子になって荷重を支持して低摩耗性を発現すると共に、前記ポリアセタール樹脂は低摩擦性を発現する」事項を備えているものといえる。 したがって、上記相違点に実質的な差異があるとはいえないから、本願発明は、引用例に記載された発明である。 (4)まとめ よって、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明についての原査定の拒絶の理由は妥当なものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-09-19 |
結審通知日 | 2013-10-15 |
審決日 | 2013-11-13 |
出願番号 | 特願2000-297886(P2000-297886) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(C08L)
P 1 8・ 121- Z (C08L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井津 健太郎 |
特許庁審判長 |
蔵野 雅昭 |
特許庁審判官 |
須藤 康洋 加賀 直人 |
発明の名称 | ポリアセタール樹脂組成物 |
代理人 | 古宮 一石 |