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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C09K
管理番号 1283879
審判番号 不服2013-10782  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-10 
確定日 2014-02-12 
事件の表示 特願2006-172301「発光色変換材料及び発光色変換部材」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月22日出願公開、特開2007-302858、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年6月22日(優先権主張 平成18年4月11日)の出願であって、平成25年3月12日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月10日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正がされ、同年9月13日付けの審尋に対して、同年11月12日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成25年6月10日付け手続補正の適否
当審は、平成25年6月10日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、以下の理由で適法なものと判断する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求である、
「【請求項1】
酸化物ガラス粉末と、可視域に発光ピークを有する蛍光体粉末とからなる発光色変換材料であって、
前記酸化物ガラス粉末が、650℃以下の軟化点を有し、PbOを実質的に含まないSiO_(2)-TiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-R_(2)O(RはLi、Na、K)系ガラスからなり、
前記酸化物ガラス粉末が、質量百分率で、SiO_(2):20?50%、Li_(2)O:0?10%、Na_(2)O:0?15%、K_(2)O:0?20%、Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)O:1?30%、B_(2)O_(3):1?20%、MgO:0?10%、BaO:0?15%、CaO:0?20%、SrO:0?20%、Al_(2)O_(3):0?20%、ZnO:0?15%、TiO_(2):0.01?20%、Nb_(2)O_(5):0.01?20%、La_(2)O_(3):0?15%、TiO_(2)+Nb_(2)O_(5)+La_(2)O_(3):1?30%を含有することを特徴とする発光色変換材料。
【請求項2】
前記酸化物ガラス粉末と前記蛍光体粉末の混合割合(酸化物ガラス粉末:蛍光体粉末)が、質量比で99.99:0.01?70:30の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の発光色変換材料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発光色変換材料を焼成して得られることを特徴とする発光色変換部材。
【請求項4】
360?500nmの波長の光を可視光に変換することを特徴とする請求項3に記載の発光色変換部材。」
を、
「【請求項1】
酸化物ガラス粉末と、可視域に発光ピークを有する蛍光体粉末とからなる発光色変換材料を焼成して得られる発光色変換部材であって、
前記酸化物ガラス粉末が、650℃以下の軟化点を有し、PbOを実質的に含まないSiO_(2)-TiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-R_(2)O(RはLi、Na、K)系ガラスからなり、
前記酸化物ガラス粉末が、質量百分率で、SiO_(2):20?50%、Li_(2)O:0?10%、Na_(2)O:0?15%、K_(2)O:0?20%、Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)O:1?30%、B_(2)O_(3):1?20%、MgO:0?10%、BaO:0?15%、CaO:0?20%、SrO:0?20%、Al_(2)O_(3):0?20%、ZnO:0?15%、TiO_(2):0.01?20%、Nb_(2)O_(5):0.01?20%、La_(2)O_(3):0?15%、TiO_(2)+Nb_(2)O_(5)+La_(2)O_(3):1?30%を含有することを特徴とする発光色変換部材。
【請求項2】
前記酸化物ガラス粉末と前記蛍光体粉末の混合割合(酸化物ガラス粉末:蛍光体粉末)が、質量比で99.99:0.01?70:30の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の発光色変換部材。
【請求項3】
360?500nmの波長の光を可視光に変換することを特徴とする請求項1または2に記載の発光色変換部材。」
と補正するものである。

2.補正の適否
本件補正は、「発光色変換材料」に係る補正前の請求項1、2を削除して、「発光色変換部材」に係る補正前の請求項3、4のうち、請求項1を引用する請求項3、請求項2を引用する請求項3、請求項4を、順に補正後の請求項1、2、3としたうえで、それに伴って、補正前の他の請求項を引用してされた記載等を修正する補正であって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものに該当する。
そして、当該補正には、同法同条第3項に違反するところはない。

3.むすび
よって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第3項ないし第4項の規定に適合するから、平成25年6月10日付けの手続補正は適法なものと認められる。

第3 本願発明
本願発明は、平成25年6月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項によって特定される、次のとおりのものである(以下、「本願発明1」?「本願発明3」という。)。
「【請求項1】
酸化物ガラス粉末と、可視域に発光ピークを有する蛍光体粉末とからなる発光色変換材料を焼成して得られる発光色変換部材であって、
前記酸化物ガラス粉末が、650℃以下の軟化点を有し、PbOを実質的に含まないSiO_(2)-TiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-R_(2)O(RはLi、Na、K)系ガラスからなり、
前記酸化物ガラス粉末が、質量百分率で、SiO_(2):20?50%、Li_(2)O:0?10%、Na_(2)O:0?15%、K_(2)O:0?20%、Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)O:1?30%、B_(2)O_(3):1?20%、MgO:0?10%、BaO:0?15%、CaO:0?20%、SrO:0?20%、Al_(2)O_(3):0?20%、ZnO:0?15%、TiO_(2):0.01?20%、Nb_(2)O_(5):0.01?20%、La_(2)O_(3):0?15%、TiO_(2)+Nb_(2)O_(5)+La_(2)O_(3):1?30%を含有することを特徴とする発光色変換部材。
【請求項2】
前記酸化物ガラス粉末と前記蛍光体粉末の混合割合(酸化物ガラス粉末:蛍光体粉末)が、質量比で99.99:0.01?70:30の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の発光色変換部材。
【請求項3】
360?500nmの波長の光を可視光に変換することを特徴とする請求項1または2に記載の発光色変換部材。」

第4 拒絶査定の理由の概要
平成25年3月12日付け拒絶査定は、「この出願については、平成24年12月7日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。」との理由によるものであり、当該拒絶理由通知書に記載した理由とは次の理由である。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2006-086138号公報
2.国際公開第2005/097938号
3.特開2003-258308号公報
4.特開2002-353516号公報
5.特開平11-040353号公報
6.特開平06-107425号公報
7.特開2002-029773号公報
8.特開2002-348142号公報」

第5 当審の判断
1.引用文献の記載事項
(1)引用文献1
1a「【特許請求の範囲】
【請求項1】光学素子と、無機材料基板と、前記光学素子を被覆し該光学
素子の受発光波長に対して透明な無機系の封止部材とを有し、
前記無機材料基板には電力を送受する第1の金属パターンと、前記基板と前記封止部材とを実質的に接着するための第2の金属パターンとが形成されている、ことを特徴とする光デバイス。」

1b「【0011】

(光学素子)
光学素子には発光ダイオード、レーザダイオードその他の発光素子及び受光素子が含まれる。光学素子の受発光波長も特に限定されるものではなく、紫外光?緑色系光に有効なIII族窒化物系化合物半導体素子や赤色系光に有効なGaAs系半導体素子などを用いることができる。その他、SiC、AlInGaPなどから形成される光学素子を用いることができる。」

1c「【0022】
(封止部材)
無機系の封止部材は光学素子の受発光波長に対して透明であり、光学素子を保護できるものであれば特に限定されないが、光学素子の耐熱温度が600℃程度であることを考えれば、それより低い融点(軟化点)を有する低融点ガラスを採用することが好ましい。
かかる低融点ガラスとして、鉛ガラスやカルコゲン化物ガラスの他、SiO_(2)-Nb_(2)O_(5)系、B_(2)O_(3)-F系、P_(2)O_(5)-F系、P_(2)O_(5)-ZnO系、SiO_(2)-B_(2)O_(3)-La_(2)O_(3)系若しくはSiO_(2)-B_(2)O_(3)系のガラスを採用することができる。これらの低融点ガラスはいずれも350?600℃においてプレス成形が可能である。
封止部材には蛍光材料を分散することもできる。かかる蛍光材料として無機系の蛍光材料の粉体を用い、これを低融点ガラス中に混合することができる。また、低融点ガラス中に希土類イオンをドープすることによりこれを蛍光させることも可能である。発光素子と蛍光材料とを適宜組合せることにより、白色光をはじめとして任意の発光色を得ることができる。
【0023】
…かかる光学特性を有する低融点ガラスとしてSiO_(2)-Nb_(2)O_(5)系ガラスを挙げることができ、なかでもSiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-Na_(2)Oガラスが好ましい。」

(2)引用文献2
2a「請求の範囲

[13]Ce^(3+)を含有し、ガーネット結晶を析出してなることを特徴とする結晶化ガラス。

[16]モル%で、SiO_(2)+B_(2)O_(3)10?60%、Al_(2)O_(3)+GeO_(2)+Ga_(2)O_(3)15?50%、Y_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)5?30%、Li_(2)O0?25%、TiO_(2)+ZrO_(2)0?15%、Ce_(2)O_(3)0.01?5%含有してなることを特徴とする請求項13?15のいずれかに記載の結晶化ガラス。」

2b「[0020]本発明の蛍光体は、例えば、モル%で、SiO_(2)+B_(2)O_(3)10?60%、Al_(2)O_(3)+GeO_(2)+Ga_(2)O_(3)15?50%、Y_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)5?30%、Li_(2)O0?25%、TiO_(2)+ZrO_(2)0?15%、Ce_(2)O_(3)0.01?5%含有してなる結晶化ガラスからなることが好ましい。」

2c「[0023]SiO_(2)とB_(2)O_(3)は、ガラスの網目形成酸化物であり、母ガラス作成時にともに失透を抑制する成分であり、SiO_(2)とB_(2)O_(3)の含有量は合量で10?60モル%であることが好ましい。」

(3)引用文献3
3a「【特許請求の範囲】
【請求項1】青色光源から発せられる青色光の一部を黄色光に変換し、残部の青色光と合成して白色光を得るための発光色変換部材であって、軟化点が500℃より高いガラス中に無機蛍光体が分散してなることを特徴とする発光色変換部材。」

3b「【0013】…本発明における好適なガラスとしてはB_(2)O_(3)-SiO_(2)系ガラス、BaO-B_(2)O_(3)-SiO_(2)系ガラス、ZnO-B_(2)O_(3)-SiO_(2)系ガラス等が挙げられる。」

3c「【0021】次に、無機蛍光体粉末とガラス粉末を混合し、発光色変換部材用材料を得る。…」

(4)引用文献4
4a「【特許請求の範囲】
【請求項1】発光素子と、該発光素子が収納される凹部を有し且つ前記凹部底面に厚さ方向に貫通した貫通孔を少なくとも1つ有し前記貫通孔に絶縁体を介してリード電極が挿入されてなる金属パッケージとを有する発光装置であって、
前記凹部の最上面は外側方向に鍔部を有することを特徴とする発光装置。

【請求項4】 前記凹部内に前記発光素子を被覆する透光性封止部材を有し、且つ前記封止部材中に前記発光素子からの光の一部を吸収して異なる波長を発光することが可能な蛍光物質を有することを特徴とする請求項1乃至3に記載の発光装置。」

4b「【0059】リッドの窓部に直接蛍光物質を含有させるには、例えば、リッド本体の開口部にガラスのパウダー状若しくはペレット状のものと粉末の蛍光物質との混合物を配置させ、プレス加工により一括成型させると、前記ガラス中に蛍光物質が含有させた形で窓部が形成される。」

(5)引用文献5
5a「【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板上にホーロー層を焼き付ける工程と、蛍光体用原材料を高温で焼成し、次いで歪みを形成した中間蛍光体粉末とガラス粉末との混合物を前記ホーロー層上に塗布し、前記蛍光体用原材料の焼成温度より低い温度で焼成して発光層を形成する工程とを具備する電界発光灯の製造方法。」

5b「【0014】次に、上記の歪みを形成した中間蛍光体15の粉末とガラス粉末16とを重量比1:3で混合してメチルアルコールに分散させ(17)、これを鉄板のー面にあらかじめ形成した白色ホーロー層の上にスプレー法で塗布する(18)。次いで、メチルアルコールの蒸発後電気炉で約600℃の温度で1?3時間焼成する(19)。この加熱により発光層をホーロー層上に焼き付けると共に、発光層中の中間蛍光体に第2回目の焼成を行ない蛍光体を完成させる。次いで、透明導電層を形成し(20)、保護層を形成して(21)ホーロー型電界発光灯22を得る。」

(6)引用文献6
6a「【特許請求の範囲】
【請求項1】重量%で、SiO_(2)25?60%、B_(2)O_(3)5?20%、ただし、SiO_(2)+B_(2)O_(3)35?70%、Al_(2)O_(3)0?15%、TiO_(2)0.5?30%、Nb_(2)O_(5)0.5?25%、ZrO_(2)0?10%、BaO1?45%、他の2価金属酸化物としてSrO0?30%、MgO0?25%、CaO0?20%およびZnO0?25%、Li_(2)O0?15%、Na_(2)O0?25% およびK_(2)O0?20%、ただしLi_(2)O+Na_(2)O+K_(2)O0.5?30%の範囲の各成分を含有することを特徴とする光学ガラス。
…」

6b「【0008】TiO_(2)およびNb_(2)O_(5)成分は、本発明のガラスの光学恒数の調整のため必要であり、また溶融性を悪化させずに化学的耐久性を向上する効果がある。」

(7)引用文献7
7a「【特許請求の範囲】
【請求項1】質量%で、SiO_(2) 18?28、B_(2) O_(3)13?25、(SiO_(2) +B_(2) O_(3) )35?50、Nb_(2) O_(5)5?15、Ta_(2) O_(5)0?2、(Nb_(2) O_(5) +Ta_(2) O_(5) )5?15、TiO_(2)1?6、ZrO_(2)0?3、(TiO_(2) +ZrO_(2 ))3?8、La_(2) O_(3)5?15、Al_(2) O_(3 )0.5?3、ZnO15?25、CaO0?10、SrO0?8、(ZnO+CaO+SrO)20?30、Li_(2) O0?10、Na_(2) O0?8、K_(2) O0?5、(Li_(2) O+Na_(2) O+K_(2) O)8?15%含有してなるガラス組成物。」

7b「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、健康に有害のおそれのある鉛やカドミウム、さらには高屈折率の光学ガラスに多く用いられるバリウムを含まない、モールドプレス成形レンズ用素材に適したガラス組成物に関する。」

7c「【0014】Nb_(2) O_(5) 、Ta_(2) O_(5) 、TiO_(2) 、ZrO_(2) およびLa_(2) O_(3) は、いわゆる、中間酸化物であり、本発明のガラスにおいては、ガラスの失透に対する安定性をそれほど損なわずに、主として、高屈折率を付与する成分として選ばれたものであるが、耐水性、耐候性の付与にも効果を発揮する成分である。」

(8)引用文献8
8a「【特許請求の範囲】
【請求項1】白金を含有するが、粒子径が2μm以上の白金製異物を実質的に含まないか、含んでも粒子径が2μm以上の白金製異物の含有量が10ケ/100ml以下のガラスであることを特徴とする半導体パッケージ用カバーガラス。
【請求項2】前記ガラスがホウケイ酸ガラスである請求項1に記載の半導体パッケージ用カバーガラス。
…」

8b「【0016】
本発明のホウケイ酸塩ガラスは、好ましくは重量パーセントで
SiO_(2) 50?78%
B_(2)O_(3) 5?25%
Al_(2)O_(3) 0? 8%
Li_(2)O 0? 5%
Na_(2)O 0?18%
K_(2)O 0?20%
(但し、Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)O 5?20%)
から成り、上記成分の含有量が少なくとも80%以上であり、かつ熱膨張係数が45?75×10^(-7)K^(-1)であることが適当である。

【0020】本発明のガラスでは、特に高い耐候性を必要とする場合には、ソラリゼーション防止剤としてPbO、TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)等を添加することが有効である。…」

2.検討
(1)引用文献1に記載された発明
引用文献1には、光学素子と無機材料基板と光学素子を被覆し光学素子の受発光波長に対して透明な無機系の封止部材とを有する光デバイス(摘示1a、1b)における封止部材として、350?600℃においてプレス成形が可能なSiO_(2)-Nb_(2)O_(5)系、等の低融点ガラスが使用でき、SiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-Na_(2)Oガラスが好ましいこと、及び、封止部材に蛍光材料を分散することができること(摘示1c)が記載されている。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「光デバイスにおける封止部材であって、
350?600℃においてプレス成形が可能なSiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-Na_(2)Oガラスを使用し、蛍光材料を分散させた封止部材。」

(2)本願発明1との対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

引用発明の「光デバイスにおける封止部材であって、…封止部材」、「蛍光材料を分散させた」は、本願発明1の「発光色変換材料を焼成して得られる発光色変換部材であって…発光色変換部材」、「可視域に発光ピークを有する蛍光体粉末」に相当する。

引用発明の「350?600℃においてプレス成形が可能なSiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-Na_(2)Oガラス」は、その成分としてPbOが明記されていないことからみて、PbOを実質的に含まないものと解されるから、本願発明1の「酸化物ガラス粉末…、前記酸化物ガラス粉末が、650℃以下の軟化点を有し、PbOを実質的に含まないガラスからなり…」に相当する。

よって、両者は、
「酸化物ガラス粉末と、可視域に発光ピークを有する蛍光体粉末とからなる発光色変換材料を焼成して得られる発光色変換部材であって、
前記酸化物ガラス粉末が、650℃以下の軟化点を有し、PbOを実質的に含まない…ガラスからな…る発光色変換部材。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:酸化物ガラス粉末が、本願発明1は「SiO_(2)-TiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-R_(2)O(RはLi、Na、K)系ガラスからなり、
前記酸化物ガラス粉末が、質量百分率で、SiO_(2):20?50%、Li_(2)O:0?10%、Na_(2)O:0?15%、K_(2)O:0?20%、Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)O:1?30%、B_(2)O_(3):1?20%、MgO:0?10%、BaO:0?15%、CaO:0?20%、SrO:0?20%、Al_(2)O_(3):0?20%、ZnO:0?15%、TiO_(2):0.01?20%、Nb_(2)O_(5):0.01?20%、La_(2)O_(3):0?15%、TiO_(2)+Nb_(2)O_(5)+La_(2)O_(3):1?30%を含有する」ものであるのに対して、引用発明は「SiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-Na_(2)O」ガラスである点。

(3)検討
上記相違点1をみると、本願発明1は、酸化物ガラス粉末が必須の構成成分(すなわち、0%でない。)としてSiO_(2):20?50%、Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)O:1?30%、B_(2)O_(3):1?20%、TiO_(2):0.01?20%、Nb_(2)O_(5):0.01?20%、TiO_(2)+Nb_(2)O_(5)+La_(2)O_(3):1?30%を含有するSiO_(2)-TiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-R_(2)O系ガラスであり、
・TiO_(2)を含有する点
・B_(2)O_(3)を含有する点
・SiO_(2)、Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)O、B_(2)O_(3)、TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)、TiO_(2)+Nb_(2)O_(5)+La_(2)O_(3)の割合を特定したものである点
、で引用発明と相違する。

そこで、まず、TiO_(2)を含有する点について検討する。
引用文献6?8には、TiO_(2)を含有する酸化物系ガラスが記載されているが(摘示6a、7a、8b)、これらの引用文献に記載された酸化物系ガラスは、引用発明とは別異の用途で使用することを前提としたものであって(引用文献6は光学ガラス、引用文献7はモールドプレス成形レンズ用素材等、引用文献8は半導体パッケージ用カバーガラスに係るものと認められる(摘示6a、7b、8a)。)、TiO_(2)を含有させる目的もそれぞれの用途に応じたものと認められる(引用文献6?8には、TiO_(2)を含有させる目的に関して、「ガラスの光学恒数の調整のため必要であり、また溶融性を悪化させずに化学的耐久性を向上する効果がある」こと(引用文献6の摘示6b)、「ガラスの失透に対する安定性をそれほど損なわずに、主として、高屈折率を付与する成分として選ばれたものであるが、耐水性、耐候性の付与にも効果を発揮する」こと(引用文献7の摘示7c)、「高い耐候性を必要とする場合には、ソラリゼーション防止剤」として添加すること(引用文献8の摘示8c)が記載されるている。)ことを考慮すると、当業者が引用文献6?8に記載された発明に基づいて、引用発明の光デバイスにおける封止部材であるSiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-Na_(2)Oガラスについて、TiO_(2)を含有させることを容易に想到し得たものとはいえない。
また、引用文献2は、それ自体蛍光体を析出させる結晶化ガラス(摘示2a?c)に係るものであって、引用発明の光デバイスにおける封止部材であるSiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-Na_(2)Oガラスとは別異のものであり、引用文献3?5(摘示3a?c、4a?b、5a?b)は、酸化物ガラスにTiO_(2)を含有させることを記載したものではないから、当業者が引用文献2?5に記載された発明に基づいて、引用発明の光デバイスにおける封止部材であるSiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-Na_(2)Oガラスについて、TiO_(2)を含有させることを容易に想到し得たものとはいえない。
そして、引用文献1?8に記載された技術的事項から、光デバイスにおける封止部材としてのSiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-Na_(2)Oガラスについて、TiO_(2)を含有させることが周知技術であったものともいえない。
そうすると、引用発明の光デバイスにおける封止部材であるSiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-Na_(2)Oガラスにおいて、TiO_(2)を含有させることは、引用文献2?8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たこととは認められない。

次に、SiO_(2)、Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)O、B_(2)O_(3)、TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)、TiO_(2)+Nb_(2)O_(5)+La_(2)O_(3)の割合を特定したものである点について検討すると、前記のとおり、引用発明の酸化物ガラスにおいて、TiO_(2)を含有させることは、当業者が引用文献1?8に記載された発明に基づいて、容易に想到し得たことといえない以上、斯かる成分を含めた引用発明の酸化物ガラスの各成分の割合を特定することは、引用文献1?8に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たこととは認められない

さらに、B_(2)O_(3)を含有する点について検討する。
引用文献1には、酸化物ガラスとしてB_(2)O_(3)を含有するものが例示されている(摘示1c)が、それらは「SiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-Na_(2)O」ガラスと別異のガラスとして例示されたものであることを考慮すると、当業者が斯かる引用文献1の記載事項に基づいて、引用発明の酸化物ガラスにB_(2)O_(3)を含有させることを容易に想到し得たものとはいえない。
また、引用文献6?8に記載された、引用発明と別異の用途で使用することを前提とした酸化物系ガラスの発明(摘示6a、7b、8a)に基づいて、当業者が引用発明の光デバイスにおける封止部材であるSiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-Na_(2)OガラスにB_(2)O_(3)を含有させることを容易に想到し得たものとはいえないし、引用文献2?5の記載事項(摘示2a?c、3a?c、4a?b、5a?b)に基づいて、当業者が引用発明の光デバイスにおける封止部材であるSiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-Na_(2)OガラスにB_(2)O_(3)を含有させることを容易に想到し得たものともいえない。
そして、引用文献1?8に記載された技術的事項から、光デバイスにおける封止部材としてのSiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-Na_(2)Oガラスについて、B_(2)O_(3)を含有させることが周知技術であったものともいえない。
そうすると、引用発明の光デバイスにおける封止部材であるSiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-Na_(2)Oガラスにおいて、B_(2)O_(3)を含有させることは、引用文献1?8に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たこととは認められない。

以上のとおりであって、引用発明について、TiO_(2)、B_(2)O_(3)を含有するものとしたうえで、SiO_(2)、Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)O、B_(2)O_(3)、TiO_(2)、Nb_(2)O_(5)、TiO_(2)+Nb_(2)O_(5)+La_(2)O_(3)の割合を特定したものとすることは、引用文献1?8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たこととは認められないから、上記相違点1に係る本願発明1の構成の点は、引用文献1?8に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

また、本願発明1は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例等(「発光効率」、耐湿性試験後の「発光効率低下率」のデータ等参照。)によって裏付けられるとおり、発光色変換部材における蛍光体の化学的安定性及び劣化度の改善という、蛍光体粉末の特性に係る効果を奏するものであるところ、斯かる蛍光体粉末と本願発明1に係るSiO_(2)-TiO_(2)-Nb_(2)O_(5)-R_(2)O系ガラスとを併用することによって奏される効果は、蛍光体の化学的安定性及び劣化度の改善等について記載されていない引用文献1?8に記載された技術的事項から、当業者が予測し得たものとはいえない。
(上記の本願発明1の効果は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例において、軟化点の値が本願発明1の条件を満たしても酸化物ガラス粉末の組成が本願発明1の条件を満たさない例(試料18、22、23、30、32)において、耐湿性試験後の「発光効率低下率」が劣るものとなっていること等からみて、軟化点の値及び酸化物ガラス粉末の組成に係る発明発明1の条件をすべて満たすことによって奏されるものと認められるところ、本願発明1の軟化点の値及び酸化物ガラス粉末の組成に係る条件を満たすことによって、発光色変換部材における蛍光体の化学的安定性及び劣化度の改善に係る本願発明1の効果が奏されることは、引用文献1?8に記載された技術的事項から、当業者が予測し得たものとはいえない。)

(4)小括
よって、本願発明1は、引用文献1?8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願の特許請求の範囲の請求項2、3は、本願発明1に係る請求項1を直接的ないし間接的に引用して記載したものであって、本願発明1の構成を有するものであるから、本願発明2、3も本願発明1と同様に、引用文献1?8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおりであって、本願の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された発明は、原査定の拒絶理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-01-29 
出願番号 特願2006-172301(P2006-172301)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C09K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中澤 真吾佐藤 秀樹  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 松浦 新司
菅野 芳男
発明の名称 発光色変換材料及び発光色変換部材  
代理人 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所  

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