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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08B |
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管理番号 | 1283960 |
審判番号 | 不服2013-12433 |
総通号数 | 171 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-07-01 |
確定日 | 2014-02-12 |
事件の表示 | 特願2010-503742「警報器」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月24日国際公開、WO2009/116203、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2008年11月19日(優先権主張2008年3月17日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成23年10月31日付けで拒絶理由が通知され、平成24年1月4日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月31日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年10月5日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年3月25日付けで平成24年10月5日に提出された手続補正書でした補正が却下されるとともに平成25年3月25日付けで拒絶査定がされ、同年7月1日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において同年10月24日付けで書面による審尋がされ、平成26年1月6日に回答書が提出されたものである。 第2 平成25年7月1日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否 1 本件補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲について、本件補正により補正される前の(すなわち、平成24年1月4日に提出された手続補正書により補正された)下記(1)に示す特許請求の範囲の記載を下記(2)に示す特許請求の範囲の記載へ補正するものである。 (1)本件補正前の特許請求の範囲 「【請求項1】 イベント信号を他の警報器との間で送受信する送受信回路部と、 警報音を出力する警報音出力部と、 警報表示を行う警報表示部と、 警報停止手段を有する操作部と、 異常を検出するセンサ部からの異常検出信号を受けて、連動元を示す警報音出力および警報表示を行わせると共に、異常を示すイベント信号を連動先の警報器に送信させる連動元警報出力処理部と、 前記他の警報器から異常を示すイベント信号を受信した時に、連動先を示す警報音出力および警報表示を行わせる連動先警報出力処理部と、 前記連動元を示す警報音出力および警報表示中に、前記警報停止手段の操作を検出した場合に、前記連動元を示す警報音の出力を停止させ且つ前記連動元を示す警報表示を維持すると共に、警報停止のイベント信号を前記他の警報器に送信して警報音出力および警報表示を停止させる連動元警報停止処理部と、 前記連動先を示す警報音出力および警報表示中に、前記警報停止手段の操作を検出した場合に、前記連動先を示す警報音出力および警報表示を停止させると共に、警報停止のイベント信号を前記他の警報器に送信し、一方、前記連動先を示す警報音出力および警報表示中に、前記他の警報器から警報停止のイベント信号を受信した場合に、前記連動先を示す警報音出力および警報表示を停止させる連動先警報停止処理部と、 を備えたことを特徴とする警報器。 【請求項2】 請求項1に記載の警報器であって、 前記連動元警報停止処理部は、前記連動元を示す警報音出力および警報表示中に、前記他の警報器から警報停止のイベント信号を受信した場合に、前記連動元を示す警報音の出力を停止させ且つ前記連動元を示す警報表示を維持する ことを特徴とする警報器。 【請求項3】 請求項1または2に記載の警報器であって、 警報停止モードを第1モード及び第2モードのいずれか一方に切替えるモード切替部を備え、 前記連動元警報停止処理部は、前記第1モードの状態での前記連動元を示す警報音の出力中に、前記他の警報器からの警報停止のイベント信号を受信した場合に、警報音の出力を維持し、一方、前記第2モードの状態での前記連動元を示す警報音の出力中に、前記他の警報器からの警報停止のイベント信号を受信した場合に、前記連動元を示す警報音の出力を停止させる ことを特徴とする警報器。 【請求項4】 請求項1?3のいずれか1項に記載の警報器であって、 前記連動先を示す警報の出力中に、前記センサ部からの異常検出信号を受けた場合に、 前記連動先警報停止処理部は、警報の出力を停止し、 前記連動元警報出力処理部は、連動元を示す警報を出力すると共に、異常を示すイベント信号を連動先の警報器に送信する ことを特徴とする警報器。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲 「【請求項1】 イベント信号を他の警報器との間で送受信する送受信回路部と、 警報音を出力する警報音出力部と、 警報表示を行う警報表示部と、 警報停止手段を有する操作部と、 異常を検出するセンサ部からの異常検出信号を受けて、連動元を示す警報音出力および警報表示を行わせると共に、異常を示すイベント信号を連動先の警報器に送信させる連動元警報出力処理部と、 前記他の警報器から異常を示すイベント信号を受信した時に、連動先を示す警報音出力および警報表示を行わせる連動先警報出力処理部と、 前記連動元を示す警報音出力および警報表示中に、前記警報停止手段の操作を検出した場合に、前記連動元を示す警報音の出力を停止させ且つ前記連動元を示す警報表示を維持すると共に、警報停止のイベント信号を前記他の警報器に送信して警報音出力および警報表示を停止させる連動元警報停止処理部と、 前記連動先を示す警報音出力および警報表示中に、前記警報停止手段の操作を検出した場合に、前記連動先を示す警報音出力および警報表示を停止させると共に、警報停止のイベント信号を前記他の警報器に送信し、一方、前記連動先を示す警報音出力および警報表示中に、前記他の警報器から警報停止のイベント信号を受信した場合に、前記連動先を示す警報音出力および警報表示を停止させる連動先警報停止処理部と、 を備え、 警報停止モードを第1モード及び第2モードのいずれか一方に切替えるモード切替部を備え、 前記連動元警報停止処理部は、前記第1モードの状態での前記連動元を示す警報音の出力中に、前記他の警報器からの警報停止のイベント信号を受信した場合に、警報音の出力を維持し、一方、前記第2モードの状態での前記連動元を示す警報音の出力中に、前記他の警報器からの警報停止のイベント信号を受信した場合に、前記連動元を示す警報音の出力を停止させる ことを特徴とする警報器。」 (なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。) 2 本件補正の目的 本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1、2及び4を削除し、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項3を新たな請求項1とするものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものに該当する。 3 むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものであり、また、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。 したがって、本件補正は適法なものである。 第3 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲並びに国際出願時の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、本願発明は、上記「第2 1(2)」の【請求項1】のとおりである。 第4 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。 「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項 1?4 ・引用文献 1、2 ・備考 引用文献2には、警報音出力中に警報停止の操作を検出した場合、警報音出力を停止させ、警報停止のイベント信号を他の警報器に送信し、他の警報器からの警報停止のイベント信号を受信した場合、連動先を示す警報音出力は停止し連動元を示す警報音出力は維持するか、または連動先を示す警報音出力及び連動元を示す警報音出力を停止するようにすること等が記載されている。 引用文献1、2に記載の発明は、警報という同一の技術分野に係るものであるから、引用文献1、2に記載の発明を適宜組み合わせることには、格別の困難性を見いだせない。 ・・・(略)・・・ 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開2005-222319号公報 2.特開2008-9481号公報」 第5 当審の判断 1 引用文献1の記載、記載事項及び引用発明 (1)引用文献1の記載 特開2005-222319号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「警報器、当該警報器の制御方法および制御プログラム」に関して、図面とともに概ね次の記載がある(以下、順に、「記載1a」ないし「記載1h」という。また、これらを、「引用文献1の記載」という。)。 1a 「【0028】 [1:警報システムの概要および特徴] まず最初に、図1を用いて、本実施例に係る警報システムの概要および特徴を説明する。図1は、本実施例に係る警報システムの全体構成を示すシステム構成図である。 【0029】 本実施例に係る警報システムは、図1に例示するように、一般住宅の台所や寝室、居間のほか、オフィスの一室などの比較的に小さな監視領域にそれぞれ設置された警報器10を、連動用リード線9によって相互に通信可能に接続して構成される。そして、かかる警報システムにおいて、各警報器10は、概略的には、監視領域で発生した火災やガスを検出して自ら警報を行うだけでなく、他の警報器10に対して警報信号を送信するとともに、他の警報器10から警報信号を受信して連動警報を行うものである。 【0030】 つまり、図1に例示するような、一般住宅の1F台所(アドレスA)、1F居間(アドレスB)および2F寝室(アドレスC、アドレスD)にそれぞれ警報器10を設置して配線接続した警報システムを例にすれば、例えば、1F台所の警報器10が火災を検出すると、自ら警報灯および警報音を発するだけでなく、1F居間および2F寝室の警報器10に警報信号を送信し、かかる警報信号を受信した居間および寝室の各警報器10(アドレスB、CおよびDの各警報器10)でも、同様に警報音を発する。 ・・・(略)・・・ 【0033】 具体的に例を挙げれば、1階台所に設置された警報器10が連動元である場合には「1階台所で警報が作動しました」といった音声メッセージを連動先で出力し、また、1階居間に設置された警報器10が連動元である場合には「1階居間で警報が作動しました」といった音声メッセージを連動先で出力する。これによって、連動先に居る利用者はどこの警報器10が連動元として発報したのかを容易に把握することができ、連動元の異常に対して早急な対応を採ることが可能になる。」(段落【0028】ないし【0033】) 1b 「【0040】 [2:警報器の構成] 次に、図2、図3および図4を用いて、図1に示した警報器10の構成を説明する。図2は、かかる警報器10の正面の外観構成を示す外観図であり、図3は、かかる警報器10の側面の外観構成を示す外観図であり、図4は、かかる警報器10の内部構成を示すブロック図である。 ・・・(略)・・・ 【0042】 また、表カバー1の上部には、皿状に突出した火災検出部(チャンバー収容部)11が形成され、火災検出部11の周囲には、複数の煙流入口が設けられている。さらに、表カバーの上部角には、ガス(CO)を検出するためのガス検出部12が設けられている。また、表カバー1の下部には、火災警報またはガス警報を出力するための火災警報ランプ6、ガス警報ランプ7およびスピーカ8が形成されている。 【0043】 そして、警報器10本体の下部には、警報点検や警報停止に使用する点検スイッチ13が形成され、さらに、警報器10の内部からは、他の警報器10との間で警報信号などを送受信するための連動用リード線9が引き出されている。・・・(略)・・・ 【0044】 このような外観を備える警報器10の内部は、図4に例示するように、火災検出部11と、ガス検出部12と、点検スイッチ13と、表示出力部14と、音声出力部15と、連動送受信部16と、記憶部17と、制御部(CPU)20とを備えて構成される。・・・(略)・・・ 【0045】 このうち、火災検出部11は、監視領域における火災の発生を検出する処理部である。・・・(略)・・・ 【0046】 ガス検出部12は、監視領域におけるCOガスの発生を検出する処理部である。・・・(略)・・・ 【0047】 点検スイッチ13は、警報点検や警報停止を受け付ける手段である。具体的には、監視時に点検スイッチ13が引かれると、制御部20は火災警報ランプ6、ガス警報ランプ7およびスピーカ8から点検用の警報を出力し、また、警報出力時に点検スイッチ13が引かれると、制御部20はスピーカ8からの音声警報の出力を停止するように制御するとともに、他の警報器10に対して警報停止命令(信号)を送信する。 【0048】 火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7は、表示出力部14の制御に基づいて点灯または点滅することによって、警報器10による異常検出状態を周囲に報知する赤色LEDなどの表示灯手段である。そして、表示出力部14は、制御部20からの指示に応じて、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7を点灯または点滅させる処理部である。なお、表示出力部14の具体的な処理内容については、制御部20の処理内容として後述する。 【0049】 スピーカ8は、音声出力部15の制御に基づいて音声メッセージやブザー音を監視領域に出力することによって、警報器10による異常検出状態や連動状態を周囲に報知する手段である。そして、音声出力部15は、制御部20からの指示に応じて、火災検出時やガス検出時、さらには、他の警報器10から警報信号を受信した時などにスピーカ8を介して音声メッセー(当審注:「メッセー」は「メッセージ」の誤記である。以下、「メッセージ」と記載する。)やブザー音を出力する処理部である。なお、音声出力部15の具体的な処理内容についても、制御部20の処理内容として後述する。 【0050】 連動用リード線9は、当該警報器10と他の警報器10とを通信可能に接続するための接続手段である。そして、連動送受信部16は、制御部20からの指示に応じて、連動用リード線9を介して他の警報器10に警報信号や警報停止信号を送信する一方、他の警報器10から警報信号や警報停止信号を受信する処理部である。・・・(略)・・・」(段落【0040】ないし【0050】) 1c 「【0056】 図4に戻って、制御部20は、OS(Operating System)などの制御プログラム、各種の処理手順などを規定したプログラムおよび所要データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する処理部であり、特に本発明に密接に関連するものとしては、検出処理部20aと、警報処理部20bと、連動処理部20cとを備える。なお、連動処理部20cは特許請求の範囲に記載の「連動警報処理手段」に対応する。 【0057】 このうち、検出処理部20aは、火災検出部11およびガス検出部12から入力された検出信号(煙濃度やガス濃度)に基づいて火災発生およびガス発生の有無を判断する処理部である。・・・(略)・・・」(段落【0056】及び【0057】) 1d 「【0060】 警報処理部20bは、検出処理部20aからの警報信号に基づいて火災発生やガス発生の警報を行う処理部である。具体的には、検出処理部20aから警報信号(火災プリ警報信号、COプリ警報信号、火災本警報信号またはCO本警報信号)が入力された場合に、警報処理用テーブル17bに記憶された警報処理内容を実行するように、表示出力部14および音声出力部15を制御することで、所定の音声メッセージやブザー音をスピーカ8から出力するとともに、火災警報ランプ6やガス警報ランプ7を点灯または点滅させる。 ・・・(略)・・・ 【0066】 なお、警報処理部20bは、警報処理による警報出力が開始された後に、警報停止命令(点検スイッチ13の押下、または、他の警報器10からの警報停止信号の受信)を受け付けた場合には、警報処理のうち音声警報のみを停止させる。つまり、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅は維持しつつ、スピーカ24から出力されていた音声メッセージ付きの警報音は停止させる。」(段落【0060】ないし【0066】) 1e 「【0067】 連動処理部20cは、検出処理部20aからの警報信号に基づいて他の警報器10に対して警報信号を送信する処理部である。・・・(略)・・・ 【0068】 また、連動処理部20cは、連動送受信部16を介して他の警報器10から受信した警報信号に基づいて連動警報を行う処理部でもある。・・・(略)・・・」(段落【0067】及び【0068】) 1f 「【0074】 [3:検出警報処理] 次に、本実施例の警報システムによる検出警報処理を説明する。図9は、本実施例による検出警報処理の流れを示すフローチャートである。 【0075】 なお、図9では、アドレスAの警報器10が異常を検出し、アドレスB、CおよびDの警報器10に対して警報信号を送信する場合を例に挙げているが、アドレスB、CまたはDの警報器10が異常を検出する場合も同様の処理が実行される。また、同図では、警報信号を受信したアドレスB、CおよびDの警報器10のうち、特にアドレスCの警報器10の処理を例に挙げているが、アドレスBおよびDの警報器10においても同様の処理が実行される。 【0076】 図9に例示するように、警報器A(アドレスAの警報器10)は、火災検出部11またはガス検出部12から検出値(煙濃度やガス濃度)が入力されると(ステップS901肯定)、検出値が検出処理用テーブル17aに記憶されている閾値濃度を超えたか否かを判定する(ステップS902)。 ・・・(略)・・・ 【0078】 そして、検出値がいずれの警報レベルの閾値も超えていなかった場合には(ステップS902否定)、警報器Aは、上記のステップS901の処理に戻って次の検出値の入力を待つ(ステップS901)。これとは反対に、検出値がいずれかの警報レベルの閾値を超えていた場合には(ステップS902肯定)、警報器Aは警報処理を実行する(ステップS903)。 ・・・(略)・・・ 【0082】 警報器Aは、このような警報処理を実行するとともに、他の警報器10(アドレスB、CおよびDの警報器10)に対して警報信号を送信する(ステップS904)。・・・(略)・・・ 【0083】 そして、かかる警報信号を受信した他の警報器10では、受信した警報信号に基づいて連動警報を行う(ステップS905)。・・・(略)・・・」(段落【0074】ないし【0083】) 1g 「【0086】 [4:警報停止処理] 続いて、本実施例の警報システムによる警報停止処理を説明する。図10は、本実施例による警報停止処理の流れを示すフローチャートである。 【0087】 なお、図10では、アドレスA、B、CおよびDの各警報器10が警報若しくは連動警報を行っている状況で、アドレスCの警報器10が警報停止命令を受け付け、アドレスA、BおよびDの警報器10に対して警報停止信号を送信する場合を例に挙げているが、アドレスA、BまたはDの警報器10が警報停止命令を受け付ける場合も同様の処理が実行される。また、同図では、警報停止信号を受信したアドレスA、BおよびDの警報器10のうち、特にアドレスAの警報器10の処理を例に挙げているが、アドレスBおよびDの警報器10においても同様の処理が実行される。 【0088】 図10に例示するように、警報器C(アドレスCの警報器10)は、警報出力時に点検スイッチ13が引かれると(ステップS1001肯定)、警報停止命令を受け付けたものとして、警報処理のうち音声警報のみを停止させる(ステップS1002)。つまり、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅は維持しつつ、スピーカ8から出力されていた音声メッセージ付きの警報音は停止する。 【0089】 また、警報器Cは、自らの音声警報を停止させるだけでなく、連動用リード線9を介して他の警報器10(アドレスA、BまたはDの警報器10)に警報停止命令(信号)を送信する(ステップS1003)。そして、かかる警報停止命令を受信した他の警報器10でも、警報処理のうち音声警報のみを停止させる(ステップS1005)。 ・・・(略)・・・ 【0091】 上記したように、連動警報によって複数の警報器10がそれぞれ音声警報を出力している場合でも、いずれかの警報器10で利用者が警報停止操作を行えば、全ての警報器10の音声警報が停止するので、利用者は警報器10それぞれに対して警報停止操作を行う必要がなくなり、全ての警報器10の音声警報を簡易に停止することが可能になる。 【0092】 なお、ここでは、全ての警報器10の音声警報を簡易に停止する例を説明したが、自己の監視領域で異常を検出している場合には、音声警報を停止することなく警報出力を継続してもよい。これによって、少なくとも自ら異常を検出している監視領域では、継続して警報が出力されるので、より安全性を確保することが可能になる。」(段落【0086】ないし【0092】) 1h 「【0109】 (4)他の連動警報手法 上記の実施例では、連動先の警報器10において音声メッセージをスピーカ8から出力することで連動警報を行う場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、所定の警報ランプ(連動用火災警報ランプや連動用ガス警報ランプ)を点灯または点滅させることで、音声メッセージと併せて連動警報を行うようにしてもよい。」(段落【0109】) (2)引用文献1の記載事項 引用文献1の記載1aないし1h及び図面の記載から、引用文献1には、次の事項が記載されていると認める(以下、順に「記載事項1i」ないし「記載事項1p」という。)。 1i 記載1aの「各警報器10は、概略的には、監視領域で発生した火災やガスを検出して自ら警報を行うだけでなく、他の警報器10に対して警報信号を送信するとともに、他の警報器10から警報信号を受信して連動警報を行うものである。」(段落【0029】)、記載1bの「このような外観を備える警報器10の内部は、図4に例示するように、火災検出部11と、ガス検出部12と、点検スイッチ13と、表示出力部14と、音声出力部15と、連動送受信部16と、記憶部17と、制御部(CPU)20とを備えて構成される。」(段落【0044】)及び「連動用リード線9は、当該警報器10と他の警報器10とを通信可能に接続するための接続手段である。そして、連動送受信部16は、制御部20からの指示に応じて、連動用リード線9を介して他の警報器10に警報信号や警報停止信号を送信する一方、他の警報器10から警報信号や警報停止信号を受信する処理部である。」(段落【0050】)並びに図面によると、引用文献1には、警報信号や警報停止信号を他の警報器10との間で送受信する連動送受信部16が記載されている。 1j 記載1bの「このような外観を備える警報器10の内部は、図4に例示するように、火災検出部11と、ガス検出部12と、点検スイッチ13と、表示出力部14と、音声出力部15と、連動送受信部16と、記憶部17と、制御部(CPU)20とを備えて構成される。」(段落【0044】)及び「音声出力部15は、制御部20からの指示に応じて、火災検出時やガス検出時、さらには、他の警報器10から警報信号を受信した時などにスピーカ8を介して音声メッセージやブザー音を出力する処理部である。」(段落【0049】)並びに図面によると、引用文献1には、音声メッセージやブザー音を出力する音声出力部15が記載されている。 1k 記載1bの「このような外観を備える警報器10の内部は、図4に例示するように、火災検出部11と、ガス検出部12と、点検スイッチ13と、表示出力部14と、音声出力部15と、連動送受信部16と、記憶部17と、制御部(CPU)20とを備えて構成される。」(段落【0044】)及び「表示出力部14は、制御部20からの指示に応じて、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7を点灯または点滅させる処理部である。」(段落【0048】)並びに図面によると、引用文献1には、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅を行う表示出力部14が記載されている。 1l 記載1bの「このような外観を備える警報器10の内部は、図4に例示するように、火災検出部11と、ガス検出部12と、点検スイッチ13と、表示出力部14と、音声出力部15と、連動送受信部16と、記憶部17と、制御部(CPU)20とを備えて構成される。」(段落【0044】)、「点検スイッチ13は、警報点検や警報停止を受け付ける手段である。」(段落【0047】)及び図面によると、引用文献1には、警報停止を受け付ける点検スイッチ13が記載されている。 1m 記載1cの「図4に戻って、制御部20は、OS(Operating System)などの制御プログラム、各種の処理手順などを規定したプログラムおよび所要データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する処理部であり、特に本発明に密接に関連するものとしては、検出処理部20aと、警報処理部20bと、連動処理部20cとを備える。」(段落【0056】)及び「検出処理部20aは、火災検出部11およびガス検出部12から入力された検出信号(煙濃度やガス濃度)に基づいて火災発生およびガス発生の有無を判断する処理部である。」(段落【0057】)、記載1dの「警報処理部20bは、検出処理部20aからの警報信号に基づいて火災発生やガス発生の警報を行う処理部である。具体的には、検出処理部20aから警報信号(火災プリ警報信号、COプリ警報信号、火災本警報信号またはCO本警報信号)が入力された場合に、警報処理用テーブル17bに記憶された警報処理内容を実行するように、表示出力部14および音声出力部15を制御することで、所定の音声メッセージやブザー音をスピーカ8から出力するとともに、火災警報ランプ6やガス警報ランプ7を点灯または点滅させる。」(段落【0060】)、記載1eの「連動処理部20cは、検出処理部20aからの警報信号に基づいて他の警報器10に対して警報信号を送信する処理部である。」(段落【0067】)並びに図面によると、引用文献1には、火災検出部11およびガス検出部12からの検出信号を受けて、火災発生やガス発生の音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅を行わせるとともに火災発生やガス発生の警報信号を他の警報器10に送信させる制御部20が記載されている。 1n 記載1cの「図4に戻って、制御部20は、OS(Operating System)などの制御プログラム、各種の処理手順などを規定したプログラムおよび所要データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する処理部であり、特に本発明に密接に関連するものとしては、検出処理部20aと、警報処理部20bと、連動処理部20cとを備える。」(段落【0056】)、記載1eの「連動処理部20cは、連動送受信部16を介して他の警報器10から受信した警報信号に基づいて連動警報を行う処理部でもある。」(段落【0067】)、記載1fの「かかる警報信号を受信した他の警報器10では、受信した警報信号に基づいて連動警報を行う(ステップS905)。」(段落【0083】)、記載1hの「上記の実施例では、連動先の警報器10において音声メッセージをスピーカ8から出力することで連動警報を行う場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、所定の警報ランプ(連動用火災警報ランプや連動用ガス警報ランプ)を点灯または点滅させることで、音声メッセージと併せて連動警報を行うようにしてもよい。」(段落【0109】)及び図面によると、引用文献1には、他の警報器10から火災発生やガス発生の警報信号を受信した時に、連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力並びに火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅を行わせる制御部20が記載されている。 1o 記載1cの「図4に戻って、制御部20は、OS(Operating System)などの制御プログラム、各種の処理手順などを規定したプログラムおよび所要データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する処理部であり、特に本発明に密接に関連するものとしては、検出処理部20aと、警報処理部20bと、連動処理部20cとを備える。」(段落【0056】)、記載1dの「警報処理部20bは、警報処理による警報出力が開始された後に、警報停止命令(点検スイッチ13の押下、または、他の警報器10からの警報停止信号の受信)を受け付けた場合には、警報処理のうち音声警報のみを停止させる。つまり、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅は維持しつつ、スピーカ24から出力されていた音声メッセージ付きの警報音は停止させる。」(段落【0066】)、記載1gの「図10に例示するように、警報器C(アドレスCの警報器10)は、警報出力時に点検スイッチ13が引かれると(ステップS1001肯定)、警報停止命令を受け付けたものとして、警報処理のうち音声警報のみを停止させる(ステップS1002)。つまり、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅は維持しつつ、スピーカ8から出力されていた音声メッセージ付きの警報音は停止する。」(段落【0088】)及び「警報器Cは、自らの音声警報を停止させるだけでなく、連動用リード線9を介して他の警報器10(アドレスA、BまたはDの警報器10)に警報停止命令(信号)を送信する(ステップS1003)。そして、かかる警報停止命令を受信した他の警報器10でも、警報処理のうち音声警報のみを停止させる(ステップS1005)。」(段落【0089】)並びに図面によると、引用文献1には、火炎発生やガス発生の音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力、火災警報ランプ6やガス警報ランプ7の点灯または点滅中に、点検スイッチ13の操作を検出した場合に、火災発生やガス発生の音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力を停止させ且つ火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅を維持すると共に、警報停止信号を他の警報器10に送信して音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力を停止させる制御手段20が記載されている。 1p 記載1cの「図4に戻って、制御部20は、OS(Operating System)などの制御プログラム、各種の処理手順などを規定したプログラムおよび所要データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する処理部であり、特に本発明に密接に関連するものとしては、検出処理部20aと、警報処理部20bと、連動処理部20cとを備える。」、記載1fの「かかる警報信号を受信した他の警報器10では、受信した警報信号に基づいて連動警報を行う(ステップS905)。」(段落【0083】)、記載1gの「図10に例示するように、警報器C(アドレスCの警報器10)は、警報出力時に点検スイッチ13が引かれると(ステップS1001肯定)、警報停止命令を受け付けたものとして、警報処理のうち音声警報のみを停止させる(ステップS1002)。つまり、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅は維持しつつ、スピーカ8から出力されていた音声メッセージ付きの警報音は停止する。」(段落【0088】)、「警報器Cは、自らの音声警報を停止させるだけでなく、連動用リード線9を介して他の警報器10(アドレスA、BまたはDの警報器10)に警報停止命令(信号)を送信する(ステップS1003)。そして、かかる警報停止命令を受信した他の警報器10でも、警報処理のうち音声警報のみを停止させる(ステップS1005)。」(段落【0089】)及び「なお、ここでは、全ての警報器10の音声警報を簡易に停止する例を説明したが、自己の監視領域で異常を検出している場合には、音声警報を停止することなく警報出力を継続してもよい。これによって、少なくとも自ら異常を検出している監視領域では、継続して警報が出力されるので、より安全性を確保することが可能になる。」(段落【0092】)、記載1hの「上記の実施例では、連動先の警報器10において音声メッセージをスピーカ8から出力することで連動警報を行う場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、所定の警報ランプ(連動用火災警報ランプや連動用ガス警報ランプ)を点灯または点滅させることで、音声メッセージと併せて連動警報を行うようにしてもよい。」(段落【0109】)並びに図面によると、引用文献1には、連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力並びに火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅中に、点検スイッチ13の操作を検出した場合に連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力を停止させると共に、警報停止信号を他の警報器10に送信し、一方、連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力並びに火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅中に、他の警報器から警報停止信号を受信した場合に、連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力を停止させる制御装置20が記載されている。 (3)引用発明 引用文献1の記載1aないし1h、記載事項1iないし1p及び図面を整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「警報信号や警報停止信号を他の警報器10との間で送受信する連動送受信部16と、 音声メッセージやブザー音を出力する音声出力部15と、 火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅を行う表示出力部14と、 警報停止を受け付ける点検スイッチ13と、 火災検出部11およびガス検出部12からの検出信号を受けて、火災発生やガス発生の音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅を行わせるとともに火災発生やガス発生の警報信号を他の警報器10に送信させる制御部20と、 前記他の警報器10から火災発生やガス発生の警報信号を受信した時に、連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力並びに火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅を行わせる制御部20と、 前記火炎発生やガス発生の音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅中に、点検スイッチ13の操作を検出した場合に、火災発生やガス発生の音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力を停止させ且つ火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅を維持すると共に、警報停止信号を他の警報器10に送信して音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力を停止させる制御手段20と、 前記連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力並びに火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅中に、点検スイッチ13の操作を検出した場合に連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力を停止させると共に、警報停止信号を他の警報器10に送信し、一方、連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力並びに火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅中に、他の警報器から警報停止信号を受信した場合に、連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力を停止させる制御装置20と、 を備えた警報器10。」 2 引用文献2の記載 特開2008-9481号公報(平成20年1月17日公開。以下、「引用文献2」という。)には、「無線により連動警報するワイヤレス型火災警報器、及びワイヤレス型火災警報システム」に関して、図面とともに概ね次の記載がある(以下、これらを、「引用文献2の記載」という。)。 2a 「【0001】 本発明は、火災を検知したときに自らは警報を出力し、他の火災警報器に連動警報を出力させるようにした住戸用火災警報器に関する。」(段落【0001】) 2b 「【0025】 なお、連動制御信号の思想は、警報中止信号に応用することも可能である。すなわち、警報停止操作がなされたときには、警報、又は連動警報の出力を中止し、更に、無線通信制御手段16により警報中止信号を発信する一方、警報中止信号を受信した場合には、警報、又は連動警報の出力を中止するようにしてもよい。あるいは、警報停止操作がなされたとき、または、連動中止信号を受信したときに、連動警報は中止するが、自らの火災検知による警報の出力は中止しないようにして、火災検知している火災警報器1が識別できるようにしてもよい。」(段落【0025】) 3 対比・判断 (1)対比 本願発明と引用発明を対比する。 ア 引用発明における「警報信号や警報停止信号」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「イベント信号」に相当し、以下、同様に、「他の」は「他の」及び「連動先の」に、「警報器10」は「警報器」に、「連動送受信部16」は「送受信回路部」に、それぞれ相当する。 イ 引用発明における「音声メッセージやブザー音」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「警報音」に相当し、以下、同様に、「音声出力部15」は「警報音出力部」に相当する。 ウ 引用発明における「火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「警報表示」に相当し、以下、同様に、「表示出力部14」は「警報表示部」に相当する。 エ 引用発明における「警報停止を受け付ける点検スイッチ13」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「警報停止手段を有する操作部」及び「警報停止手段」に相当する。 オ 引用発明における「火災検出部11およびガス検出部12」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「異常を検出するセンサ部」に相当し、以下、同様に、「検出信号」は「異常検出信号」に、「火災発生やガス発生の」は「連動元を示す」に、「音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力」は「警報音出力」に、「火災発生やガス発生の警報信号」は「異常を示すイベント信号」に、それぞれ相当する。 したがって、上記相当関係及び上記アないしエの相当関係を踏まえると、引用発明における「火災検出部11およびガス検出部12からの検出信号を受けて、火災発生やガス発生の音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅を行わせるとともに火災発生やガス発生の警報信号を他の警報器10に送信させる制御部20」は、本願発明における「異常を検出するセンサ部からの異常検出信号を受けて、連動元を示す警報音出力および警報表示を行わせると共に、異常を示すイベント信号を連動先の警報器に送信させる連動元警報出力処理部」に相当する。 カ 上記アないしオの相当関係を踏まえると、引用発明における「前記他の警報器10から火災発生やガス発生の警報信号を受信した時に、連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力並びに火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅を行わせる制御部20」は、本願発明における「前記他の警報器から異常を示すイベント信号を受信した時に、連動先を示す警報音出力および警報表示を行わせる連動先警報出力処理部」に相当する。 キ 引用発明における「警報停止信号」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「警報停止のイベント信号」に相当する。 したがって、上記相当関係及び上記アないしカの相当関係を踏まえると、引用発明における「前記火炎発生やガス発生の音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅中に、点検スイッチ13の操作を検出した場合に、火災発生やガス発生の音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力を停止させ且つ火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅を維持すると共に、警報停止信号を他の警報器10に送信して音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力を停止させる制御手段20」と本願発明における「前記連動元を示す警報音出力および警報表示中に、前記警報停止手段の操作を検出した場合に、前記連動元を示す警報音の出力を停止させ且つ前記連動元を示す警報表示を維持すると共に、警報停止のイベント信号を前記他の警報器に送信して警報音出力および警報表示を停止させる連動元警報停止処理部」は、「前記連動元を示す警報音出力および警報表示中に、前記警報停止手段の操作を検出した場合に、前記連動元を示す警報音の出力を停止させ且つ前記連動元を示す警報表示を維持すると共に、警報停止のイベント信号を前記他の警報器に送信して警報音出力を停止させる連動元警報停止処理部」という限りにおいて一致する。 ク 上記アないしキの相当関係を踏まえると、引用発明における「前記連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力並びに火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅中に、点検スイッチ13の操作を検出した場合に連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力を停止させると共に、警報停止信号を他の警報器10に送信し、一方、連動先を示す音声メッセージのスピーカ8からの出力並びに火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅中に、他の警報器から警報停止信号を受信した場合に、連動先を示す音声メッセージのスピーカ8からの出力を停止させる制御装置20」と本願発明における「前記連動先を示す警報音出力および警報表示中に、前記警報停止手段の操作を検出した場合に、前記連動先を示す警報音出力および警報表示を停止させると共に、警報停止のイベント信号を前記他の警報器に送信し、一方、前記連動先を示す警報音出力および警報表示中に、前記他の警報器から警報停止のイベント信号を受信した場合に、前記連動先を示す警報音出力および警報表示を停止させる連動先警報停止処理部」は、「前記連動先を示す警報音出力および警報表示中に、前記警報停止手段の操作を検出した場合に、前記連動先を示す警報音出力を停止させると共に、警報停止のイベント信号を前記他の警報器に送信し、一方、前記連動先を示す警報音出力および警報表示中に、前記他の警報器から警報停止のイベント信号を受信した場合に、前記連動先を示す警報音出力を停止させる連動先警報停止処理部」という限りにおいて、一致する。 ケ したがって、本願発明と引用発明は、 「イベント信号を他の警報器との間で送受信する送受信回路部と、 警報音を出力する警報音出力部と、 警報表示を行う警報表示部と、 警報停止手段を有する操作部と、 異常を検出するセンサ部からの異常検出信号を受けて、連動元を示す警報音出力および警報表示を行わせると共に、異常を示すイベント信号を連動先の警報器に送信させる連動元警報出力処理部と、 前記他の警報器から異常を示すイベント信号を受信した時に、連動先を示す警報音出力および警報表示を行わせる連動先警報出力処理部と、 前記連動元を示す警報音出力および警報表示中に、前記警報停止手段の操作を検出した場合に、前記連動元を示す警報音の出力を停止させ且つ前記連動元を示す警報表示を維持すると共に、警報停止のイベント信号を前記他の警報器に送信して警報音出力を停止させる連動元警報停止処理部と、 前記連動先を示す警報音出力および警報表示中に、前記警報停止手段の操作を検出した場合に、前記連動先を示す警報音出力を停止させると共に、警報停止のイベント信号を前記他の警報器に送信し、一方、前記連動先を示す警報音出力および警報表示中に、前記他の警報器から警報停止のイベント信号を受信した場合に、前記連動先を示す警報音出力を停止させる連動先警報停止処理部、 とを備えた警報器。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (ア)相違点1 「前記連動元を示す警報音出力および警報表示中に、前記警報停止手段の操作を検出した場合に、前記連動元を示す警報音の出力を停止させ且つ前記連動元を示す警報表示を維持すると共に、警報停止のイベント信号を前記他の警報器に送信して警報音出力を停止させる連動元警報停止処理部と、 前記連動先を示す警報音出力および警報表示中に、前記警報停止手段の操作を検出した場合に、前記連動先を示す警報音出力を停止させると共に、警報停止のイベント信号を前記他の警報器に送信し、一方、前記連動先を示す警報音出力および警報表示中に、前記他の警報器から警報停止のイベント信号を受信した場合に、前記連動先を示す警報音出力を停止させる連動先警報停止処理部」に関して、本願発明においては、「前記連動元を示す警報音出力および警報表示中に、前記警報停止手段の操作を検出した場合に、前記連動元を示す警報音の出力を停止させ且つ前記連動元を示す警報表示を維持すると共に、警報停止のイベント信号を前記他の警報器に送信して警報音出力および警報表示を停止させる連動元警報停止処理部と、 前記連動先を示す警報音出力および警報表示中に、前記警報停止手段の操作を検出した場合に、前記連動先を示す警報音出力および警報表示を停止させると共に、警報停止のイベント信号を前記他の警報器に送信し、一方、前記連動先を示す警報音出力および警報表示中に、前記他の警報器から警報停止のイベント信号を受信した場合に、前記連動先を示す警報音出力および警報表示を停止させる連動先警報停止処理部」(なお、下線は当審で付したものである。)であるのに対し、引用発明においては、「前記火炎発生やガス発生の音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅中に、点検スイッチ13の操作を検出した場合に、火災発生やガス発生の音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力を停止させ且つ火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅を維持すると共に、警報停止信号を他の警報器10に送信して音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力を停止させる制御手段20と、 前記連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力および警報ランプの点灯または点滅中に、点検スイッチ13の操作を検出した場合に連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力を停止させると共に、警報停止信号を他の警報器10に送信し、一方、連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力並びに火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅中に、他の警報器から警報停止信号を受信した場合に、連動先を示す音声メッセージのスピーカ8からの出力を停止させる制御装置20」である点、即ち引用発明においては、警報音出力のみを停止し、警報表示は停止させていない点(以下、「相違点1」という。)。 (イ)相違点2 本願発明においては、「警報停止モードを第1モード及び第2モードのいずれか一方に切替えるモード切替部を備え、 前記連動元警報停止処理部は、前記第1モードの状態での前記連動元を示す警報音の出力中に、前記他の警報器からの警報停止のイベント信号を受信した場合に、警報音の出力を維持し、一方、前記第2モードの状態での前記連動元を示す警報音の出力中に、前記他の警報器からの警報停止のイベント信号を受信した場合に、前記連動元を示す警報音の出力を停止させる」のに対し、引用発明においては、そのようなものではない点(以下、「相違点2」という。)。 (2)相違点1及び2についての判断 ア 相違点1について 引用文献1の記載1gの「図10に例示するように、警報器C(アドレスCの警報器10)は、警報出力時に点検スイッチ13が引かれると(ステップS1001肯定)、警報停止命令を受け付けたものとして、警報処理のうち音声警報のみを停止させる(ステップS1002)。つまり、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅は維持しつつ、スピーカ8から出力されていた音声メッセージ付きの警報音は停止する。」(段落【0088】)及び「警報器Cは、自らの音声警報を停止させるだけでなく、連動用リード線9を介して他の警報器10(アドレスA、BまたはDの警報器10)に警報停止命令(信号)を送信する(ステップS1003)。そして、かかる警報停止命令を受信した他の警報器10でも、警報処理のうち音声警報のみを停止させる(ステップS1005)。」(段落【0089】)(なお、下線は当審で付したものである。)という記載は、引用発明において、「前記火炎発生やガス発生の音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅中に、点検スイッチ13の操作を検出した場合」に、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅を停止する警報停止信号を他の警報器10に送信することを除外するものであり、また、「前記連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力および警報ランプの点灯または点滅中に、点検スイッチ13の操作を検出した場合に連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力を停止させる」際に火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅を停止させることを除外するものである。 また、引用文献1の他の箇所に、引用発明において、「前記火炎発生やガス発生の音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅中に、点検スイッチ13の操作を検出した場合」に、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅を停止する警報停止信号を他の警報器10に送信すること及び「前記連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力および警報ランプの点灯または点滅中に、点検スイッチ13の操作を検出した場合に連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力を停止させる」際に火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅を停止させることは記載されておらず、それを示唆する記載もない。 さらに、引用文献2にも、「前記火炎発生やガス発生の音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅中に、点検スイッチ13の操作を検出した場合」に、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅を停止する警報停止信号を他の警報器10に送信すること及び「前記連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力および警報ランプの点灯または点滅中に、点検スイッチ13の操作を検出した場合に連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力を停止させる」際に火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅を停止させることは記載されておらず、それを示唆する記載もない。 したがって、引用発明において、「前記火炎発生やガス発生の音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅中に、点検スイッチ13の操作を検出した場合」に、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅を停止する警報停止信号を他の警報器10に送信する動機付けはなく、また、引用発明において、「前記連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力および警報ランプの点灯または点滅中に、点検スイッチ13の操作を検出した場合に連動先を示す音声メッセージやブザー音のスピーカ8からの出力を停止させる」際に、火災警報ランプ6およびガス警報ランプ7の点灯または点滅を停止させる動機付けもないから、引用発明において、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 イ 相違点2について 引用文献1の記載1gの「なお、ここでは、全ての警報器10の音声警報を簡易に停止する例を説明したが、自己の監視領域で異常を検出している場合には、音声警報を停止することなく警報出力を継続してもよい。これによって、少なくとも自ら異常を検出している監視領域では、継続して警報が出力されるので、より安全性を確保することが可能になる。」(段落【0092】)によると、引用文献1には、「自己の監視領域で異常を検出している場合は、音声警報を停止しなくてもよい、即ち自己の監視領域で異常を検出している場合に、音声警報を停止するようにしても、停止しないようにしてもよいこと」が記載されている(以下、「引用文献1の記載事項(あ)」という。)。 また、引用文献2の記載によると、引用文献2には、「火災を検知したときに自らは警報を出力し、他の火災警報器に連動警報を出力させるようにした住戸用火災警報器において、警報中止信号を受信した場合に、自らの火災検知による警報の出力を中止するようにしても、自らの火災検知による警報の出力を中止しないようにしてもよいこと」が記載されている(以下、「引用文献2の記載事項」という。)。 さらに、装置の使用の形態が複数とおりある場合に、使用者が、どの使用形態を採用するかを選択可能とすることは、一般的に行われていることである。 したがって、引用発明において、引用文献1の記載事項(あ)及び引用文献2の記載事項を適用し、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 ウ むすび 以上のとおり、相違点2は容易に想到し得たことであるが、相違点1は容易に想到し得たことであるとはいえないので、本願発明は、引用文献1及び2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1及び2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2014-01-29 |
出願番号 | 特願2010-503742(P2010-503742) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G08B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 八木 誠 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
中川 隆司 加藤 友也 |
発明の名称 | 警報器 |
代理人 | 高橋 詔男 |
代理人 | 鈴木 三義 |
代理人 | 志賀 正武 |