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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1283968
審判番号 不服2013-2257  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-06 
確定日 2014-01-23 
事件の表示 特願2008-280444「電子部品装着装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 5月13日出願公開、特開2010-109193〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成20年10月30日の出願であって、平成24年10月26日付け(平成24年11月6日:発送日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年2月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成25年2月6日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年2月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本件発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、
「【請求項1】
プリント基板を搬送する搬送装置と、電子部品を供給するもので前記搬送装置の両外方においてフィーダベース上に設けられる部品供給装置と、駆動源により一方向に移動可能な一対のビームと、それぞれ吸着ノズルが着脱可能に設けられ前記各ビームに沿った方向に各駆動源により移動可能な装着ヘッドとを備えた電子部品装着装置において、前記各駆動源を駆動して前記各ビームに設けられた装着ヘッドの吸着ノズルによりいずれの前記部品供給装置からも電子部品を取出せるように構成すると共に、種々の前記吸着ノズルを収納するノズルストッカを前記搬送装置の両外方のいずれの前記フィーダベース上であっても着脱自在となるように設けたことを特徴とする電子部品装着装置。」
とあったものを
「【請求項1】
プリント基板を搬送する搬送装置と、電子部品を供給するもので前記搬送装置の両外方においてフィーダベース上に設けられる部品供給装置と、駆動源により一方向に移動可能な一対のビームと、それぞれ吸着ノズルが着脱可能に設けられ前記各ビームに沿った方向に各駆動源により移動可能な装着ヘッドとを備えた電子部品装着装置において、前記各駆動源を駆動して前記各ビームに設けられた装着ヘッドの吸着ノズルによりいずれの前記部品供給装置からも電子部品を取出せるように構成すると共に、種々の前記吸着ノズルを収納するノズルストッカを前記搬送装置の両外方の前記部品供給装置との間であり両装着ヘッドが互いに移動して入り込むことができるいずれかの前記共通エリアに前記搬送装置に沿って設けると共に、前記搬送装置の両外方のいずれの前記フィーダベース上であっても着脱自在となるように設けたことを特徴とする電子部品装着装置。」
とする補正を含むものである。(下線は補正箇所を示すために審判請求人が付したものである。)

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項としての「ノズルストッカ」に関して、「搬送装置の両外方の前記部品供給装置との間であり両装着ヘッドが互いに移動して入り込むことができるいずれかの共通エリアに前記搬送装置に沿って設けると共に」との限定を付加すものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用文献の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-46295号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面(特に図19を参照。)と共に、以下の事項が記載されている。
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気部品(電子部品を含む)を回路基板に装着する電気部品装着システム、および、電気部品を回路基板に装着する工程を含む電気回路の製造方法に関する。」

イ.「【0006】電気回路の需要が益々高まる中、装着効率、スペース効率等を始めとする電気回路組立作業における作業効率を改善することが切望されているという実情に鑑み、本発明は、作業効率の良好な電気回路組立作業が実現できる電気部品装着システム、および、電気回路組立作業における作業効率の良好な電気回路製造方法を得ることを課題としてなされたものである。・・・」

ウ.「【0009】つまり、本項記載の態様の電気部品装着システムは、電気部品を取得保持,装着する装着ヘッドを備えた複数の装着ユニットを装備した電気部品装着システムであり、区別された第1装着ユニットと第2装着ユニットとの2種の装着ユニットが、相互に干渉し合うことなく、部品供給領域と部品装着領域との間を行き来できるようにしたものである。複数の装着ユニットを有する電気部品装着システムであるが、それらの装着ユニットの移動に際しての制約が少ないことから、本態様の電気部品装着システムは、装着効率の高い装置となる。
【0010】本発明の電気部品装着システムが作業対象とする電気回路は、特に限定されるものではなく、例えばプリント基板等の回路基板に多種、多数の電気部品が実装されてなる電気回路であれば、種々のものが対象となり得る。また、実装の対象となる電気部品も特に限定されるものではなく、本発明の電気部品装着システムでは、抵抗,コンデンサ等のチップ型電気部品,フラットパッケージ型電気部品,コネクタ,ターミナル(端子)等、リード線を有するあるいは有さない種々の電気部品が対象となり得る。
【0011】電気部品装着システムにおいては、上記電気部品は、例えば、部品供給装置から供給される。その場合、部品供給装置は、本発明の電気部品装着システムに併設されるものでもよく、本発明の電気部品装着システムの一部を構成するものであってもよい。それらの場合の部品供給装置は、その供給方式等が限定されるものではなく、供給する電気部品に応じて、様々なタイプのものを用いることができる。例えば、比較的小型の電気部品を供給するものとして、テーピングフィーダ,バルクフィーダ等のフィーダ型部品供給装置を採用することができる。また、例えば、比較的大型の電気部品を供給するものとして、トレイ型部品供給装置をも採用することができる。いずれのタイプの部品供給装置を用いる場合であっても、それらの部品供給位置が電気部品が装着される回路基板の傍らに位置するように、それらの部品供給装置を配設すればよい。」

エ.「【0060】・・・本装着システムに回路基板10を搬入する基板搬入装置としての搬入コンベア44、および、本装着システムから回路基板10を搬出する基板搬出装置である搬出コンベア46に繋がるように配設されている。・・・」

オ.「【0064】第1装着ユニット14の正面一部断面図を、図5に示す。第1装着ユニットに備えられる装着ヘッド13は、電気部品を保持する部品保持部である吸着ノズル100と、吸着ノズル100を保持する軸部であるヘッド軸102とを含んで構成される。・・・」

カ.「【0109】〈その他の実施形態〉以下に、その他の実施形態の電気部品装着システムについて説明する。図19に、その一例となる電気部品装着システムの各装置の構成を概念的に示す。本実施形態の電気部品装着システムは、主に、回路基板700を保持する2つの保持部を有する基板保持装置702と、電気部品の取得保持,装着を行う装着ヘッドを備えた2種の装着ユニット704,706(1つの第1装着ユニット704および1つの第2装着ユニット706)と、2つのXYスライド装置を含む装着ユニット移動装置710とを含んで構成される。本装着システムでは、部品供給装置712,714は、基板保持装置702の両側、詳しくは、X軸方向の両側にそれぞれ併設される。したがって、部品供給領域は部品装着領域の両側に存在する。部品供給装置712はフィーダ型部品供給装置であり、部品供給装置714はトレイ型部品供給装置である。
【0110】装着ユニット移動装置710は、第1装着ユニット704を、2つの部品供給領域および部品装着領域にわたって移動させる第1装着ユニット移動装置720と、第2装着ユニット706を、2つの部品供給領域および部品装着領域にわたって移動させる第2装着ユニット移動装置722とを含んで構成される。第1装着ユニット移動装置720,第2装着ユニット移動装置722ともに、XYスライド装置であり、第1装着ユニット移動装置720は、第1Xスライド730と、第1Xスライド550を移動させる第1Xスライド移動装置と、第1装着ユニット704が設けらる第1Yスライド734と、第1Yスライド734を第1Xスライド730に沿って移動させる第1Yスライド移動装置とを含み、さらに第1Xスライド730をZ軸方向に昇降移動させる第1Xスライド昇降装置738を含んでで構成される。第2装着ユニット移動装置722は、第2Xスライド740と、第2Xスライド740を移動させる第2Xスライド移動装置と、第2装着ユニット706が設けられる第2Yスライド744と、第2Yスライド744を第2Xスライド740に沿って移動させる第2Yスライド移動装置とを含み、さらに第2Xスライド740をZ軸方向に昇降移動させる第2Xスライド昇降装置748を含んでで構成される。
【0111】また、本装着システムでは、第1装着ユニット移動装置720と第2装着ヘッド移動装置と722は、Xスライド730,740の移動方向が同じ、つまり、第1Xスライド730の移動方向である第1Xスライド移動方向と、第2Xスライド740の移動方向である第2Xスライド移動方向とが、ともにX軸方向である。そして、その方向は、部品供給装置712,714と基板保持装置702とが並ぶ方向、つまり、2つの部品供給領域と部品装着領域とが並ぶ方向と一致し、また、基板保持装置702において回路基板700が並ぶ方向とも一致している。・・・」

キ.「【0112】2つの装着ユニット704,706ともに、部品供給領域と部品装着領域との間の移動は、同じ平面に沿って行われる。両者が入れ替わるときには、第1Xスライド昇降装置738と第2Xスライド昇降装置748との一方が作動し、第1Xスライド730または第2Xスライド740が上昇させられることで第1装着ユニット704または第2装着ユニット706が上昇させられ、両者の干渉は生じないように制御される。・・・装着ユニット704,706,それらが備える装着ヘッドの構成、装着ユニット移動装置710が備える各装置の構成は、前述の第1実施形態,その変形態様,第2実施形態のものに従えばよく、ここでの説明は省略する。また、制御装置を始めとする他の装置の構成についても同様であり、ここでの説明は省略する。」

上記記載事項及び図示内容から、以下の事項が認められる。
ク.記載事項オ(段落【0110】)の「装着ユニット移動装置710は、第1装着ユニット704を、2つの部品供給領域および部品装着領域にわたって移動させる第1装着ユニット移動装置720と、第2装着ユニット706を、2つの部品供給領域および部品装着領域にわたって移動させる第2装着ユニット移動装置722とを含んで構成される。」との記載、及び記載事項キの「両者が入れ替わるときには、第1Xスライド昇降装置738と第2Xスライド昇降装置748との一方が作動し、第1Xスライド730または第2Xスライド740が上昇させられることで第1装着ユニット704または第2装着ユニット706が上昇させられ、両者の干渉は生じないように制御される。」との記載から、電気部品装着システムは、各移動装置を駆動して第1Xスライド730及び第2Xスライド740に設けられた第1装着ユニット704及び第2装着ユニット706の吸着ノズルにより2つの部品供給装置から電子部品を取出せる構成になっていることが理解できる。

これら記載事項、図示内容及び認定事項を総合し、本願補正発明の記載ぶりに倣って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「回路基板700を搬入する基板搬入装置と、電子部品を供給するもので部品装着領域の両側に設けられるフィーダ型部品供給装置及びトレイ型部品供給装置と、第1Xスライド移動装置によりX軸方向に移動可能な第1Xスライド730と、第2Xスライド移動装置によりX軸方向に移動可能な第2Xスライド740と、吸着ノズルが設けられ前記第1Xスライド730に沿った方向に第1Yスライド移動装置により移動可能な第1装着ユニット704と、吸着ノズルが設けられ前記第2Xスライド740に沿った方向に第2Yスライド移動装置により移動可能な第2装着ユニット706とを備えた電気部品装着システムにおいて、前記各移動装置を駆動して前記第1Xスライド730及び第2Xスライド740に設けられた第1装着ユニット704及び第2装着ユニット706の吸着ノズルにより2つの前記部品供給装置から電子部品を取出せるように構成する電気部品装着システム。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-340692号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
サ.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、基板への電子部品の装着に際して、事前の装着準備の高効率化と、電子部品の装着時間の短縮化を図ることができる電子部品装着装置およびその方法に関する。」

シ.「【0015】図1,図2および図7?図9においてAは、チップ部品やIC部品等の電子部品bを、その供給部mより受け取って装着部nへ移送し、プリント基板c上の所定位置へ装着する電子部品装着装置であって、本体1と、電子部品供給機集合体2と、吸着ノズル保持体3とにより基本的に構成される。
【0016】なお、前記した電子部品装着装置Aは、本体1における機体4において、その一側または両側にテープ式やトレイ式等の電子部品供給機dにおいて待機する電子部品bの供給部mが、また、機体4内において移送部材eによりプリント基板cが搬入出される装着部nが設けられている。
【0017】そして、前記した電子部品装着装置Aの構成は、図1,図2に示すように、本体1における機体4へ取り付けて、進退手段5により前後方向(Y軸方向)へ任意に移動する進退体6と、この進退体6に取り付けて移動手段7により左右方向(X軸方向)へ任意に移動する可動体8と、この可動体8へ昇降手段9により装着ヘッド10を縦軸方向(Z軸方向)へ昇降自在に係合させてあると共に、この装着ヘッド10は、回転手段11によりZ軸方向を中心として回転自在としてあるもので、それぞれの手段5および7,9,11は数値制御可能なサーボモータ等により高精度で作動される。
【0018】なお、この装着ヘッド10は、電子部品bの上面を吸着する吸着パット式等が用いられるもので、4ヘッドあるいは6ヘッド等の複数個からなるヘッドに構成されているものであって、該装着ヘッド10の下端部には吸着ノズル10aが取り付けられる。」

ス.「【0022】また、固定手段fにより着脱自在に設けられる場合は、電子部品供給機dが、図3および図4に示すように、複数個が並列した状態で、移動体20の取付部23へ着脱手段hにより着脱自在に載置されている。」

セ.「【0035】前記した吸着ノズル保持体3は、電子部品供給機集合体2の適所へ、取付手段39により着脱自在に取り付けるもので、この電子部品供給機集合体2に対して一個または複数個が設けられるものである。
【0036】なお、吸着ノズル10aは、装着される電子部品の種類に合わせて、吸着孔の内径や吸着先端形状が異なる種々のものが用意されている。
【0037】更に、この吸着ノズル保持体3にあって、図11に示すように、複数個の吸着ノズル10aを保持収納し得る受部40を設けた保持収納部材41と、・・・この吸着ノズル保持体3を移動体20に設けられた取付部23に対して着脱自在とする取付手段39とから構成される。」

ソ.「【0045】そのため、吸着ノズル10aの交換にあっては、装着ヘッド10は吸着ノズル保持体3へ移動し、所定の吸着ノズル10aを受け取った後、装着部nのプリント基板c上へ移動して・・・装着が行われる。」

タ.「【0059】また、この吸着ノズル保持体は、電子部品装着装置における本体から離隔されるため、吸着ノズル保持体の保守や調整作業はもちろんのこと、他の装着ヘッドや基板搬送部および部品供給部等の保守・点検等の頻繁に行われる作業時であっても、該吸着ノズル保持体が邪魔となることがなく、その作業が円滑に行われ、主たる電子部品装着処理に支障を来すことがない。」

チ.段落【0016】及び【図4】には、吸着ノズル保持体3を移送部材eの両外方に設けることが示されている。

これら記載事項、図示内容及び認定事項を総合すると、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2に記載されている事項」という。)が記載されている。

「電子部品装着装置において、装着ヘッド10に吸着ノズル10aが交換可能に設けられるとともに、種々の吸着ノズル10aを収納する吸着ノズル保持体3を移送部材eの両外方に固定される移動体20の取付部23上に着脱自在となるように設けて、前記吸着ノズル保持体3の保守や調整作業の円滑化すること。」

3.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、
後者の「回路基板700を搬入する基板搬入装置」は、前者の「プリント基板を搬送する搬送装置」に相当する。
後者の「電子部品を供給するもので部品装着領域の両側に設けられるフィーダ型部品供給装置及びトレイ型部品供給装置」と、前者の「電子部品を供給するもので前記搬送装置の両外方においてフィーダベース上に設けられる部品供給装置」とは、「電子部品を供給するもので前記搬送装置の両外方において設けられる部品供給装置」である限りにおいて共通する。
後者の「第1Xスライド移動装置によりX軸方向に移動可能な第1Xスライド730と、第2Xスライド移動装置によりX軸方向に移動可能な第2Xスライド740」は、前者の「駆動源により一方向に移動可能な一対のビーム」に相当する。
後者の「吸着ノズルが設けられ前記第1Xスライド730に沿った方向に第1Yスライド移動装置により移動可能な第1装着ユニット704と、吸着ノズルが設けられ前記第2Xスライド740に沿った方向に第2Yスライド移動装置により移動可能な第2装着ユニット706」と、前者の「それぞれ吸着ノズルが着脱可能に設けられ各ビームに沿った方向に各駆動源により移動可能な装着ヘッド」とは、「それぞれ吸着ノズルが設けられ各ビームに沿った方向に各駆動源により移動可能な装着ヘッド」である限りにおいて共通する。
後者の「電気部品装着システム」は、前者の「電子部品装着装置」に相当する。
後者の「各移動装置を駆動して前記第1Xスライド730及び第2Xスライド740に設けられた第1装着ユニット704及び第2装着ユニット706の吸着ノズルにより2つの部品供給装置から電子部品を取出せるように構成する」は、後者の「各駆動源を駆動して前記各ビームに設けられた装着ヘッドの吸着ノズルによりいずれの部品供給装置からも電子部品を取出せるように構成する」に相当する。

そうすると、両者は、本願補正発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
[一致点]
「プリント基板を搬送する搬送装置と、電子部品を供給するもので前記搬送装置の両外方において設けられる部品供給装置と、駆動源により一方向に移動可能な一対のビームと、それぞれ吸着ノズルが設けられ前記各ビームに沿った方向に各駆動源により移動可能な装着ヘッドとを備えた電子部品装着装置において、前記各駆動源を駆動して前記各ビームに設けられた装着ヘッドの吸着ノズルによりいずれの前記部品供給装置からも電子部品を取出せるように構成する電子部品装着装置。」

そして、両者は次の点で相違する。
[相違点1]
「電子部品を供給するもので前記搬送装置の両外方において設けられる部品供給装置」に関し、
本願補正発明は、「フィーダベース上」に設けられるのに対し、
引用発明は、フィーダ型部品供給装置及びトレイ型部品供給装置である点。

[相違点2]
本願補正発明は、装着ヘッドに「吸着ノズルが着脱可能に設けられ」るとともに、「種々の吸着ノズルを収納するノズルストッカを搬送装置の両外方の部品供給装置との間であり両装着ヘッドが互いに移動して入り込むことができるいずれかの共通エリアに搬送装置に沿って設けると共に、前記搬送装置の両外方のいずれのフィーダベース上であっても着脱自在となるように設け」るのに対して、
引用発明は、かかる構造を備えていない点。

4.判断
(1)[相違点1]について検討する。
引用文献1の記載事項ウ(段落【0011】)に、「部品供給装置は、その供給方式等が限定されるものではなく、供給する電気部品に応じて、様々なタイプのものを用いることができる。例えば、比較的小型の電気部品を供給するものとして、テーピングフィーダ,バルクフィーダ等のフィーダ型部品供給装置を採用することができる。また、例えば、比較的大型の電気部品を供給するものとして、トレイ型部品供給装置をも採用することができる。」と記載されているように、装着される電気部品によって部品供給装置の形態をフィーダ型又はトレイ型を選択し得るものであるから、引用発明において比較的小型の電気部品を供給するだけの場合には、引用発明のトレイ型部品供給装置に代えてフィーダ型部品供給装置に変更し、部品装着領域の両側に設ける部品供給装置をフィーダ型部品供給装置にすることは、必要に応じてなし得ることである。そして、「フィーダ型部品供給装置」において、部品供給装置をフィーダベース上に設けることは技術常識であるから、引用発明に引用文献1に記載されている事項を適用し、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)[相違点2]について検討する。
引用文献2には、上記のとおり、「電子部品装着装置において、装着ヘッド10に吸着ノズル10aが交換可能に設けられるとともに、種々の吸着ノズル10aを収納する吸着ノズル保持体3を移送部材eの両外方に固定される移動体20の取付部23上に着脱自在となるように設けることで前記吸着ノズル保持体3の保守や調整作業の円滑化すること」が記載されている。
引用文献2に記載されている事項の「装着ヘッド10」、「吸着ノズル10aが交換可能」、「吸着ノズル保持体3」、及び「移送部材e」は、本願補正発明の「装着ヘッド」、「吸着ノズルが着脱可能」、「ノズルストッカ」、及び「搬送装置」にそれぞれ相当する。
また、引用文献2の段落【0022】の「固定手段fにより着脱自在に設けられる場合は、電子部品供給機dが、図3および図4に示すように、複数個が並列した状態で、移動体20の取付部23へ着脱手段hにより着脱自在に載置されている。」との記載から、引用文献2に記載されている事項の「移動体20の取付部23」は、本願補正発明の「フィーダベース」に相当するので、引用文献2に記載されている事項には、上記相違点に係る本願補正発明の特定事項のうち、「吸着ノズルが着脱可能に設けられ」るとともに、「種々の吸着ノズルを収納するノズルストッカをフィーダベース上に着脱自在となるように設け」る構成を含むものである。
ところで、引用文献1の段落【0010】には「本発明の電気部品装着システムが作業対象とする電気回路は、特に限定されるものではなく、例えばプリント基板等の回路基板に多種、多数の電気部品が実装されてなる電気回路であれば、種々のものが対象となり得る。」と記載されており、多種、多数の電気部品を吸着するためには、電気部品の大きさ、形状等に合わせて複数の吸着ノズルを用意しなくてはならないので、引用発明は、吸着ノズルを交換可能にする必要性を有するものである。
してみると、引用発明に、引用発明と同じ電子部品装着装置に関するものであり、かつ、吸着ノズルが交換可能に設けられている構成を有する引用文献2に記載されている事項を適用する動機付けは十分あるといえるから、上記相違点1で検討したとおり、フィーダベース上に部品供給装置を設けるように変更された引用発明に、引用文献2に記載されている事項を適用し、吸着ノズルが着脱可能に設けられるとともに、種々の吸着ノズルを収納する吸着ノズル保持体をフィーダベース上に着脱自在となるように設けることは、当業者であれば適宜になし得ることである。
また、装着効率を上げるためには第1装着ユニット704及び第2装着ユニット706に吸着ノズルが交換可能に設けられることが合理的である点、その場合に、吸着ノズル保持体を両装着ユニットが行き来きし易い場所に設置することが優位である点、引用文献1の段落【0009】に「第1装着ユニットと第2装着ユニットとの2種の装着ユニットが、相互に干渉し合うことなく、部品供給領域と部品装着領域との間を行き来できるようにしたものである。」との記載から、第1装着ユニット704及び第2装着ユニット706双方が互いに移動して入り込むことができる共通エリアが存在している点を総合して考えると、吸着ノズル保持体をフィーダベース上に限らず、基板搬入装置の両外方の部品供給装置との間であり両装着ヘッドが互いに移動して入り込むことができるいずれかの共通エリアに設けることは、当業者であれば創意、工夫を要することなくなし得ることであり、そしてまた、吸着ノズル保持体を搬送装置に沿って設けることは、従来周知の技術(引用文献2の【図12】のノズル交換機80、特開2001-244693号公報の【図1】のノズルストッカ17を参照。)であるから、吸着ノズル保持体の具体的な設置位置として、基板搬入装置に沿って設けることも、当業者であれば適宜になし得ることである。

よって、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(2)効果について
本願補正発明による効果も、引用発明、引用文献1及び2に記載されている事項及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献1及び2に記載されている事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成24年4月2日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記「第2.[理由]1.」に記載したとおりである。

2.引用文献の記載事項
引用文献の記載事項は、前記「第2.2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、前記「第2.[理由]1.」に記載した「搬送装置の両外方の前記部品供給装置との間であり両装着ヘッドが互いに移動して入り込むことができるいずれかの共通エリアに前記搬送装置に沿って設けると共に」との付加事項を省くものである。そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、前記「第2.[理由]1.」の限定事項により減縮したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.3.及び4.」に記載したとおり、引用発明、引用文献1及び2に記載されている事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由(周知技術の適用を除く)により、引用発明、引用文献1及び2に記載されている事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明、引用文献1及び2に記載されている事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-26 
結審通知日 2013-11-27 
審決日 2013-12-11 
出願番号 特願2008-280444(P2008-280444)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 奥村 一正中尾 麗  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 森川 元嗣
冨岡 和人
発明の名称 電子部品装着装置  
代理人 相澤 清隆  

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