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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1284103
審判番号 不服2012-19132  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-01 
確定日 2014-01-28 
事件の表示 特願2010-194864「反射屈折投影対物系」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月24日出願公開、特開2011- 39526〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年8月13日(パリ条約による優先権主張2009年8月13日、ドイツ国)の出願であって、平成23年10月11日付けで拒絶理由が通知され、平成24年4月13日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、同年5月22日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、同年10月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成25年1月17日付けで、審判請求人に前置報告の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年4月23日付けで回答書が提出された。


第2 平成24年10月1日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成24年10月1日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項に記載された発明
平成24年10月1日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的として補正された。
よって、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。

「物体視野を第1の実中間像上に結像するための第1の部分対物系と、
前記第1の中間像を第2の実中間像上に結像するための第2の部分対物系と、
前記第2の中間像を像視野上に結像するための第3の部分対物系と、
を含み、
前記第2の部分対物系が、厳密に1つの凹ミラーを有し、かつ少なくとも1つの投影光が2度通過するレンズを有する反射屈折対物系であり、前記レンズの少なくとも1つの面は、周縁光線同心からの20゜よりも小さいずれを有し、ここで、前記物体平面において光軸から出射し、かつ前記像平面において最大開口数に対応する入射角を有する周縁光線が、前記レンズ面で0゜の入射角を有する場合に、周縁光線同心が存在するものであり、かつ
物体平面から到着する放射線を前記凹ミラーの方向に偏向するための第1の折り返しミラー、及び該凹ミラーから到着する該放射線を像平面の方向に偏向するための第2の折り返しミラーが設けられた、
物体平面内の物体視野を像平面内の像視野上に結像するためのマイクロリソグラフィのための反射屈折投影対物系であって、
前記第2の部分対物系の前記レンズの前記少なくとも1つの面が、150nmと250nmの間の作動波長に対して、かつ0°と30°の間の入射角度範囲に対して0.2%よりも低い反射率を有する反射防止コーティングを有する、
ことを特徴とする反射屈折投影対物系。」

そこで、上記本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するか否か)について、以下に検討する。

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、米国特許出願公開第2008/0297884号明細書(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(仮訳における下線は、当審が付した。)

(a)「[0002] The present disclosure relates to a projection objective and a projection exposure apparatus configured to be used in a microlithography process. The apparatus can be used to expose a radiation-sensitive substrate, arranged in the region of an image surface of the projection objective, with at least one image of pattern of a mask arranged in the region of an object surface of the projection objective. The present disclosure also relates to related components and methods.」

(仮訳)
「[0002] 本発明は、投影対物レンズとマイクロリソグラフィプロセスで使用されるように構成された投影露光装置に関する。投影露光装置は、投影対物レンズの物体面に配置されたマスクのパターンの少なくとも一つの画像を用いて、投影対物レンズの像面に配置された放射感応性基板を露光するために使用することができる。本発明はまた、関連する構成要素および方法に関する。」

(b)「[0065] FIG. 1 shows a catadioptric projection objective 100 . The projection objective is designed for a nominal UV-operating wavelength λ=193 nm. The layout of the projection objective with regard to number, shape, position of lenses and other optical elements is taken from the prior art projection objective shown in FIG. 19 and discussed as embodiment 5 (Tables 9 and 10) in international patent application WO 2004/019128 A2. The respective disclosure of that reference is incorporated herein by reference. An image-side numerical aperture NA=1.25 is obtained at a reducing magnification 4:1 in a rectangular off-axis image field with size 26 mm×4 mm.
[0066] Projection objective 100 is designed to project an image of a pattern on a reticle arranged in the planar object surface OS (object plane) into the planar image surface IS (image plane) on a reduced scale, for example, 4:1, while creating exactly two real intermediate images IMI 1 , IMI 2 . The rectangular effective object field OF and image field IF are off-axis, i.e. entirely outside the optical axis AX. A first refractive objective part OP 1 is designed for imaging the pattern in the object surface into the first intermediate image IMI 1 . A second, catadioptric (refractive/reflective) objective part OP 2 images the first intermediate image IMI 1 into the second intermediate image IMI 2 at a magnification close to 1:(-1). A third, refractive objective part OP 3 images the second intermediate image IMI 2 onto the image surface IS with a strong reduction ratio.
[0067] The path of the chief ray CR of an outer field point of the off-axis object field OF is drawn bold in FIG. 1 in order to facilitate following the beam path of the projection beam. For the purpose of this application, the term "chief ray" (also known as principal ray) denotes a ray running from an outermost field point (farthest away from the optical axis) of the effectively used object field OF to the center of the entrance pupil. Due to the rotational symmetry of the system the chief ray may be chosen from an equivalent field point in the meridional plane as shown in the figures for demonstration purposes. In projection objectives being essentially telecentric on the object side, the chief ray emanates from the object surface parallel or at a very small angle with respect to the optical axis. The imaging process is further characterized by the trajectory of marginal rays. A "marginal ray" as used herein is a ray running from an axial object field point (field point on the optical axis) to the edge of an aperture stop. That marginal ray may not contribute to image formation due to vignetting when an off-axis effective object field is used. The chief ray and marginal ray are chosen to characterize optical properties of the projection objectives. The radial distance between such selected rays and the optical axis at a given axial position are denoted as "chief ray height" (CRH) and "marginal ray height" (MRH), respectively.
[0068] Three mutually conjugated pupil surfaces P 1, P 2 and P 3 are formed at positions where the chief ray CR intersects the optical axis. A first pupil surface P 1 is formed in the first objective part between object surface and first intermediate image, a second pupil surface P 2 is formed in the second objective part between first and second intermediate image, and a third pupil surface P 3 is formed in the third objective part between second intermediate image and the image surface IS.
[0069] The second objective part OP 2 includes a single concave mirror CM at the second pupil surface P 2 . A first planar folding mirror FM 1 is arranged optically close to the first intermediate image IMI 1 at an angle of 45°to the optical axis AX such that it reflects the radiation coming from the object surface in the direction of the concave mirror CM. A second folding mirror FM 2 , having a planar mirror surface aligned at right angles to the planar mirror surface of the first folding mirror, reflects the radiation coming from the concave mirror CM in the direction of the image surface, which is parallel to the object surface. The folding mirrors FM 1 , FM 2 are each located in the optical vicinity of an intermediate image.
[0070] The projection objective has 27 lenses including two negative meniscus lenses immediately in front of the concave mirror CM and passed twice by radiation on its way from first folding mirror FM 1 towards the concave mirror, and from the concave mirror towards the second folding mirror FM 2 . Each of the lens surfaces is coated with an antireflection coating (also denoted AR-coating) to reduce reflection losses at the lens surfaces and thereby to increase transmittance T of the coated lens surface. Dielectric multilayer antireflection coatings having a number of stacked layers of dielectric materials with different refractive index are used, where typically layers of relatively high refractive index materiaand layers of relatively low refractive index material are stacked alternately on top of each other.」

(仮訳)
「[0065] 図1は、反射屈折投影対物レンズ100を示す。投影対物レンズは、通常のUV動作波長λ=193nm用に設計されている。レンズと他の光学要素の数、形状、配置といった投影対物レンズのレイアウトは、図19に示した従来の投影対物レンズから得られる。 国際特許出願WO 2004/019128 A2の実施例5(表9および10)として挙げられている。この参考文献での開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。縮小倍率4:1で、26mm×4mmサイズの長方形の軸外画像フィールドにおいて、像側開口数NA=1.25が得られる。
[0066] 投影対物レンズ100は、正確に二つの実中間像IMI1,IMI2を介して、例えば4:1の縮小率で、平面状の物体面OSに配置されたレチクル上のパターンの像を、平面状の像面ISに結像するように設計されている。矩形有効物体フィールドOFと画像フィールドIFは、光軸外、すなわち、完全に光軸AXの外側にある。第1屈折対物レンズ部OP1は、物体表面のパターンを、最初の中間像IMI1に結像するように設計されている。第2カタディオプトリック(反射/屈折)対物レンズ部OP2は、第1中間像IMI1を、ほぼ1:-1の倍率で、第2中間像IMI2に結像する。第3屈折対物レンズ部OP3は、第2中間像IMI2を、大きな縮小率で、像面ISに結像する。
[0067] 軸外物体フィールドOFの最も外側の点からの主光線CRの光路が、投影ビームの光路を辿るのを容易にするために、図1に太線で示されている。本願では、「主光線」という用語は、有効物体フィールドの最も外側の(光軸から最も離れた)点から入射瞳の中央を通過する光線を意味する。回転対称なシステムにより、主光線は、例示のための図に示されるように、メリディオナル面内の等価な点から選択することができる。投影対物レンズは実質的に物体側テレセントリックであり、主光線は、光軸に対して平行にあるいは非常に小さい角度で、物体面から射出する。結像プロセスは、さらに、周縁光線の軌跡によって特徴付けられる。本明細書で使用される「周縁光線」は、物体フィールドの軸上の点(光軸上の物体フィールドの点)から開口絞りの縁部を通過する光線を意味する。この周縁光線は、軸外の有効フィールドが使用されるとき、ケラレにより画像形成に寄与しないことがある。主光線と周縁光線は、投影対物レンズの光学特性を特徴付けるために選択される。選択された光線と光軸との間の半径方向の距離は、それぞれ、「主光線高」(CRH)、「周縁光線高」(MRH)と表記される。
[0068] 3つの相互に共役な瞳面P1,P2,P3は、主光線CRが光軸と交差する位置に形成されている。第1瞳面P1は、物体面と第1中間像の間の第1対物レンズ部に形成され、第2瞳面P2は、第1、第2中間画像の間の第2対物レンズ部に形成され、第3瞳面P3は、第2中間像と像面ISの間の第3対物レンズ部に形成されている。
[0069] 第2対物レンズ部OP2は、第2瞳面P2に配置された1つの凹面鏡CMを有している。第1折返し平面鏡FM1は、光軸AXに45°の角度で、第1中間像IMI1に光学的に近接して配置されており、それにより、物体面からの光を凹面鏡CMに向けて反射する。第2折返し平面鏡FM2は、第1平面鏡の反射面に対して直角の反射面を有し、凹面鏡CMからの光を、物体面に平行な像面に向けて反射する。平面鏡FM1,FM2は、それぞれ、中間像の光学的な近傍に配置されている。
[0070] 投影対物レンズは、凹面鏡CMの直前に配置され、第1折返し平面鏡FM1から凹面鏡への光路と凹面鏡から第2折返し平面鏡FM2への光路において、光が2回通過する、2つの負のメニスカスレンズを含む、27個のレンズを有する。レンズ面のそれぞれは、レンズ面での反射損失を減少させるために、反射防止膜(ARコーティングともいう)で被覆されており、それにより、被覆されたレンズ面の透過率Tが増加する。異なる屈折率を有する多数の誘電体材料の積層からなる誘電体多層反射防止膜が使用される。誘電体多層反射防止膜は、典型的には、高屈折率材料および低屈折率材料の層が交互に積層されている。」

(c)「



(d)上記記載事項(c)(Fig.1)に記載された光路線のうちの「周縁光線」を見ると、「凹面鏡CMの直前に配置され、第1折返し平面鏡FM1から凹面鏡への光路と凹面鏡から第2折返し平面鏡FM2への光路において、光が2回通過する、2つの負のメニスカスレンズ」のレンズ面であるS22、S25における「周縁光線」の入射角は、図面上で測ってみると10°程度であり、かつ、一般に入射角が0°?90°の範囲であることを考慮すると、S22、S25における「周縁光線」の入射角は小さいことが読み取れる。(「凹面鏡CMの直前に配置され、第1折返し平面鏡FM1から凹面鏡への光路と凹面鏡から第2折返し平面鏡FM2への光路において、光が2回通過する、2つの負のメニスカスレンズ」の4つのレンズ面において、「凹面鏡CM」から遠い方のレンズの「凹面鏡CM」から遠い方のレンズ面から、「凹面鏡CM」から近い方のレンズの「凹面鏡CM」から近い方のレンズ面に向かって、順に、S22、S23、S24、S25である。)
すると、上記引用文献1の記載事項から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「通常のUV動作波長λ=193nm用に、正確に二つの実中間像IMI1,IMI2を介して、例えば4:1の縮小率で、平面状の物体面OSに配置されたレチクル上のパターンの像を、平面状の像面ISに結像するように設計されたマイクロリソグラフィプロセスで使用される反射屈折投影対物レンズにおいて、
第1屈折対物レンズ部OP1は、物体面のパターンを、最初の中間像IMI1に結像するように、
第2カタディオプトリック(反射/屈折)対物レンズ部OP2は、第1中間像IMI1を、ほぼ1:-1の倍率で、第2中間像IMI2に結像するように、
第3屈折対物レンズ部OP3は、第2中間像IMI2を、大きな縮小率で、像面ISに結像するように設計されており、
第2対物レンズ部OP2は、第2瞳面P2に配置された1つの凹面鏡CMを有しており、
第1折返し平面鏡FM1は、光軸AXに45°の角度で、第1中間像IMI1に光学的に近接して配置されており、それにより、物体面からの光を凹面鏡CMに向けて反射し、第2折返し平面鏡FM2は、第1平面鏡の反射面に対して直角の反射面を有し、凹面鏡CMからの光を、物体面に平行な像面に向けて反射し、
投影対物レンズは、凹面鏡CMの直前に配置され、第1折返し平面鏡FM1から凹面鏡への光路と凹面鏡から第2折返し平面鏡FM2への光路において、光が2回通過する、2つの負のメニスカスレンズを含む、27個のレンズを有し、レンズ面のそれぞれは、レンズ面での反射損失を減少させるために、反射防止膜(ARコーティングともいう)で被覆され、
上記2つの負のメニスカスレンズのレンズ面であるレンズ面S22、S25における周縁光線の入射角が小さい、
マイクロリソグラフィプロセスで使用される反射屈折投影対物レンズ。」

3.対比
(1)本願発明と引用発明との対比
(a)引用発明の「平面状の物体面OSに配置されたレチクル上のパターンの像を、平面状の像面ISに結像するように設計されたマイクロリソグラフィプロセスで使用される反射屈折投影対物レンズ」は、本願補正発明の「物体平面内の物体視野を像平面内の像視野上に結像するためのマイクロリソグラフィのための反射屈折投影対物系」に相当する。

(b)引用発明の「第1屈折対物レンズ部OP1は、物体面のパターンを、最初の中間像IMI1に結像するように、第2カタディオプトリック(反射/屈折)対物レンズ部OP2は、第1中間像IMI1を、ほぼ1:-1の倍率で、第2中間像IMI2に結像するように、第3屈折対物レンズ部OP3は、第2中間像IMI2を、大きな縮小率で、像面ISに結像するように設計されて」いる構成において、「最初の中間像IMI1」及び「第2中間像IMI2」は、「正確に二つの実中間像IMI1,IMI2を介して」とあるとおり、実中間像であるから、引用発明の
「第1屈折対物レンズ部OP1は、物体面のパターンを、最初の中間像IMI1に結像するように、第2カタディオプトリック(反射/屈折)対物レンズ部OP2は、第1中間像IMI1を、ほぼ1:-1の倍率で、第2中間像IMI2に結像するように、第3屈折対物レンズ部OP3は、第2中間像IMI2を、大きな縮小率で、像面ISに結像するように設計されており、
第2対物レンズ部OP2は、第2瞳面P2に配置された1つの凹面鏡CMを有しており、」
「投影対物レンズは、凹面鏡CMの直前に配置され、第1折返し平面鏡FM1から凹面鏡への光路と凹面鏡から第2折返し平面鏡FM2への光路において、光が2回通過する、2つの負のメニスカスレンズを含む、27個のレンズを有し」ている構成は、本願補正発明の
「物体視野を第1の実中間像上に結像するための第1の部分対物系と、前記第1の中間像を第2の実中間像上に結像するための第2の部分対物系と、前記第2の中間像を像視野上に結像するための第3の部分対物系と、を含み、
前記第2の部分対物系が、厳密に1つの凹ミラーを有し、かつ少なくとも1つの投影光が2度通過するレンズを有する反射屈折対物系であ」る構成に相当する。

(c)引用発明の「第1折返し平面鏡FM1は、光軸AXに45°の角度で、第1中間像IMI1に光学的に近接して配置されており、それにより、物体面からの光を凹面鏡CMに向けて反射し、第2折返し平面鏡FM2は、第1平面鏡の反射面に対して直角の反射面を有し、凹面鏡CMからの光を、物体面に平行な像面に向けて反射」する構成は、本願補正発明の「物体平面から到着する放射線を前記凹ミラーの方向に偏向するための第1の折り返しミラー、及び該凹ミラーから到着する該放射線を像平面の方向に偏向するための第2の折り返しミラーが設けられた」構成に相当する。

(d)引用発明の「レンズ面のそれぞれは、レンズ面での反射損失を減少させるために、反射防止膜(ARコーティングともいう)で被覆され」る構成における「レンズ面」のレンズは、「投影対物レンズ」が有する「凹面鏡CMの直前に配置され、第1折返し平面鏡FM1から凹面鏡への光路と凹面鏡から第2折返し平面鏡FM2への光路において、光が2回通過する、2つの負のメニスカスレンズを含む、27個のレンズ」であるから、「凹面鏡CMの直前に配置され、第1折返し平面鏡FM1から凹面鏡への光路と凹面鏡から第2折返し平面鏡FM2への光路において、光が2回通過する、2つの負のメニスカスレンズ」のレンズ面にも「レンズ面での反射損失を減少させるために、反射防止膜(ARコーティングともいう)で被覆され」ていることは明らかであり、また、引用発明の「反射屈折投影対物レンズ」は「通常のUV動作波長λ=193nm用」であることを考慮すれば、引用発明の「レンズ面のそれぞれは、レンズ面での反射損失を減少させるために、反射防止膜(ARコーティングともいう)で被覆され」る構成と、本願補正発明の「前記第2の部分対物系の前記レンズの前記少なくとも1つの面が、150nmと250nmの間の作動波長に対して、かつ0°と30°の間の入射角度範囲に対して0.2%よりも低い反射率を有する反射防止コーティングを有する」構成とは、「前記第2の部分対物系の前記レンズの前記少なくとも1つの面が、150nmと250nmの間の作動波長に対する反射防止コーティングを有する」構成で一致する。

(e)本願補正発明の「前記レンズの少なくとも1つの面は、周縁光線同心からの20゜よりも小さいずれを有し、ここで、前記物体平面において光軸から出射し、かつ前記像平面において最大開口数に対応する入射角を有する周縁光線が、前記レンズ面で0゜の入射角を有する場合に、周縁光線同心が存在するものであり」について、該記載が日本語の文章として、その意味が明確なものとはいえず、該記載が示す本願補正発明の発明特定事項が不明確であるところ、本願の明細書及び図面の記載も参酌すれば、「前記レンズの少なくとも1つの面」において、「周縁光線」が「20°よりも小さい」入射角を有する構成を意味すると解するのが相当である。
すると、引用発明の「上記2つの負のメニスカスレンズのレンズ面であるレンズ面S22、S25における周縁光線の入射角が小さい」構成と、本願補正発明の「前記レンズの少なくとも1つの面は、周縁光線同心からの20゜よりも小さいずれを有し、ここで、前記物体平面において光軸から出射し、かつ前記像平面において最大開口数に対応する入射角を有する周縁光線が、前記レンズ面で0゜の入射角を有する場合に、周縁光線同心が存在するものであ」る構成とは、「前記レンズの少なくとも1つの面は、周縁光線同心からの小さいずれを有し、ここで、前記物体平面において光軸から出射し、かつ前記像平面において最大開口数に対応する入射角を有する周縁光線が、前記レンズ面で0゜の入射角を有する場合に、周縁光線同心が存在するものであ」る構成で一致する。

(2)一致点
してみると、両者は、
「物体視野を第1の実中間像上に結像するための第1の部分対物系と、
前記第1の中間像を第2の実中間像上に結像するための第2の部分対物系と、
前記第2の中間像を像視野上に結像するための第3の部分対物系と、
を含み、
前記第2の部分対物系が、厳密に1つの凹ミラーを有し、かつ少なくとも1つの投影光が2度通過するレンズを有する反射屈折対物系であり、前記レンズの少なくとも1つの面は、周縁光線同心からの小さいずれを有し、ここで、前記物体平面において光軸から出射し、かつ前記像平面において最大開口数に対応する入射角を有する周縁光線が、前記レンズ面で0゜の入射角を有する場合に、周縁光線同心が存在するものであり、かつ
物体平面から到着する放射線を前記凹ミラーの方向に偏向するための第1の折り返しミラー、及び該凹ミラーから到着する該放射線を像平面の方向に偏向するための第2の折り返しミラーが設けられた、
物体平面内の物体視野を像平面内の像視野上に結像するためのマイクロリソグラフィのための反射屈折投影対物系であって、
前記第2の部分対物系の前記レンズの前記少なくとも1つの面が、150nmと250nmの間の作動波長に対する反射防止コーティングを有する、
反射屈折投影対物系。」
で一致し、次の各点で相違する。

(3)相違点
(イ)反射防止コーティングについて、本願補正発明では、「0°と30°の間の入射角度範囲に対して0.2%よりも低い反射率を有する」のに対して、引用発明では、反射率が明らかでない点。

(ロ)「レンズの少なくとも1つの面は、周縁光線同心からの小さいずれを有」する構成において、本願発明では、20°よりも小さいずれであるのに対して、引用発明では、どの程度の小さいずれであるのかが不明である点。

4.判断
(1)相違点(イ)について
150nmと250nmの間の作動波長を有する投影露光装置に用いられる反射防止コーティングとして、0°と30°の間の入射角度範囲に対して0.2%よりも低い反射率を有するものは、国際公開第01/23914号(明細書第7頁第25?29行、第13頁第15行?第15頁第19行、第23頁第29行?第25頁第8行、第35頁第9行?第36頁第19行、図2、14、30等参照)、特開2004-302113号公報(段落【0002】、【0003】、【0069】?【0075】、図4等参照)、特開2006-58779号公報(段落【0007】、【0008】、図7、8参照)に示されるように周知であるから、引用発明の「反射防止膜(ARコーティングともいう)」として、周知の、0°と30°の間の入射角度範囲に対して0.2%よりも低い反射率を有する反射防止コーティングを採用することは、当業者が容易になし得ることである。

(2)相違点(ロ)について
本願発明の「20°よりも小さい」という構成の技術的意味は、本願の明細書段落【0013】の記載を参酌すると、小さい入射角を有する、光軸に近い光線のレンズ面での反射により生じる迷光は、バックグラウンド照明に寄与する確率が特に高いということであるから、この点において、20°という数値に臨界的意味がないことは明らかであって、「20°」という数値は、「小さい」の指標としての一例を示したものにすぎない。
また、引用発明では、「投影対物レンズ」が有する「27個のレンズ」の「レンズ面のそれぞれ」が「反射防止膜(ARコーティング)」で被覆される、すなわち、各レンズ面が、その周縁光線の入射角の大小に拘わらず、「反射防止膜(ARコーティング)」で被覆されることも参酌すれば、引用発明の「周縁光線の入射角が小さい」という構成において、20°という指標を設定することは、当業者が適宜なし得ることである。

(3)効果について
投影露光装置の投影対物系において、反射防止コーティングが迷光(フレア、ゴースト等)を防止する効果を有することは、上記特開2004-302113号公報、特開2006-58779号公報に示されるように周知であるから、本願補正発明が奏し得る効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

(4)結論
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.小括
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願発明
平成24年10月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年4月13日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「物体視野を第1の実中間像上に結像するための第1の部分対物系と、
前記第1の中間像を第2の実中間像上に結像するための第2の部分対物系と、
前記第2の中間像を像視野上に結像するための第3の部分対物系と、
を含み、
前記第2の部分対物系が、厳密に1つの凹ミラーを有し、かつ少なくとも1つの投影光が2度通過するレンズを有する反射屈折対物系であり、前記少なくとも1つの面は、周縁光線同心からの20゜よりも小さいずれを有し、ここで、前記物体平面において光軸から出射し、かつ前記像平面において最大開口数に対応する入射角を有する周縁光線が、前記レンズ面で0゜の入射角を有する場合に、周縁光線同心が存在するものであり、かつ
物体平面から到着する放射線を前記凹ミラーの方向に偏向するための第1の折り返しミラー、及び該凹ミラーから到着する該放射線を像平面の方向に偏向するための第2の折り返しミラーが設けられた、
物体平面内の物体視野を像平面内の像視野上に結像するためのマイクロリソグラフィのための反射屈折投影対物系であって、
前記第2の部分対物系の前記レンズの少なくとも1つの面が、150nmと250nmの間の作動波長に対して、かつ0°と30°の間の入射角度範囲に対して0.2%よりも低い反射率を有する反射防止コーティングを有する、
ことを特徴とする反射屈折投影対物系。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物、その記載内容および引用発明は、前記「第2」「[理由]」「2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明の「前記第2の部分対物系が、厳密に1つの凹ミラーを有し、かつ少なくとも1つの投影光が2度通過するレンズを有する反射屈折対物系であり、前記少なくとも1つの面は、周縁光線同心からの20゜よりも小さいずれを有し」において、「前記少なくとも1つの面」が示す構成が不明確であるが、「面」が何らかのレンズの面を示すことは明らかであるから、「前記少なくとも1つの面」は、「第2の部分対物系」が有するレンズの少なくとも1つの面を意味すると解するのが相当である。
すると、本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から、「前記レンズの」(「前記レンズ」は「少なくとも1つの投影光が2度通過するレンズ」である。)という事項を削除することにより拡張したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、更に限定したものに相当する本願補正発明は、前記「第2」「3.」および「4.」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
してみると、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-03 
結審通知日 2013-09-04 
審決日 2013-09-18 
出願番号 特願2010-194864(P2010-194864)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 信  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 土屋 知久
北川 清伸
発明の名称 反射屈折投影対物系  
代理人 西島 孝喜  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 須田 洋之  
代理人 辻居 幸一  
代理人 大塚 文昭  
代理人 岸 慶憲  
代理人 上杉 浩  
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