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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1284155
審判番号 不服2013-24309  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-10 
確定日 2014-02-18 
事件の表示 特願2009-130859「接着剤組成物、接着シート及び半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月 9日出願公開、特開2010-278324、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年5月29日の出願であって、平成24年11月2日付けの拒絶理由通知に対して、同年12月28日に手続補正書及び意見書が提出され、平成25年9月5日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年12月10日に審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?9に係る発明(以下それぞれ「本願第1発明」?「本願第9発明」という。)は、平成24年12月28日になされた手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?9に記載されている事項により特定される、以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂と、(B)熱硬化性成分と、を含有し、
前記(A)熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が-20℃?80℃であり、かつポリイミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂又はビスフェノールF型フェノキシ樹脂であり、
前記(B)熱硬化性成分が、(B1)分子内に(メタ)アクリル基及びエポキシ基を有する反応性化合物及び/又は(B2)分子内に(メタ)アクリル基及びフェノール性水酸基を有する反応性化合物を含む、ウェハ裏面貼付用接着剤組成物。
【請求項2】
(B)熱硬化性成分が、さらに(B3)エポキシ樹脂を含む請求項1に記載のウェハ裏面貼付用接着剤組成物。
【請求項3】
(B)熱硬化性成分が、さらに(B4)分子内に2個以上の(メタ)アクリル基を有する化合物を含む請求項1又は2に記載のウェハ裏面貼付用接着剤組成物。
【請求項4】
さらに(C)フィラーを含有する、請求項1?3のいずれか一項に記載のウェハ裏面貼付用接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか一項に記載のウェハ裏面貼付用接着剤組成物からなるウェハ裏面貼付用接着シート。
【請求項6】
主面上に支持基材を備える請求項5記載のウェハ裏面貼付用接着シート。
【請求項7】
前記支持基材がダイシングシートである、請求項6記載のウェハ裏面貼付用接着シート。
【請求項8】
前記ダイシングシートが、基材フィルム及び該基材フィルム上に設けられた粘着剤層を有する、請求項7記載のウェハ裏面貼付用接着シート。
【請求項9】
1又は2以上の半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを備える半導体装置であって、前記半導体素子と前記半導体素子搭載用支持部材が、請求項1?4のいずれか一項に記載のウェハ裏面貼付用接着剤組成物により接合された半導体装置。」

3.引用刊行物に記載された事項及び発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布された特開2006-22231号公報(以下「引用刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当審において付与したものである(以下、同じ。)。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性接着剤および異方導電性接着剤フィルムに関する。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の異方導電性接着剤およびこれをフィルム状に成形してなる異方導電性接着剤フィルムについて説明する。また、本発明の異方導電性接着剤フィルムを用いた表示装置および電子機器について説明する。
【0030】
本発明の異方導電性接着剤は、 (a)ラジカル重合性樹脂、 (b)密着性付与剤、
(c)有機過酸化物、および
(d)導電性粒子、
を必須成分として含む樹脂組成物で構成される。」
「【0033】
(a)ラジカル重合性樹脂としては、たとえばエチレン結合を有する樹脂を用いることができる。このような樹脂として、たとえば、フェノール性水酸基を有する(メタ)アクリロイル化フェノールノボラック樹脂;
ビニルエステル樹脂;
エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂等のアクリレート類;
ジアクリルフタレート樹脂やジアリルフタレート樹脂等のフタレート樹脂;
不飽和ポリエステル樹脂;
マレイミド樹脂;
等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。」
「【0039】
(b)密着性付与剤は、
(i)ビニル基とニトリル基とを有する化合物
(ii)ビニル基とアルコキシ基とを有する化合物、
を含む。上記(i)および上記(ii)の密着性付与剤は、いずれかを単独で用いてもよいし、これらを組み合わせて用いてもよい。また、上記(i)および上記(ii)の密着性付与剤として、一つの化合物を含んでいてもよいし、複数の化合物を含んでいてもよい。」
「【0051】
次に、(c)有機過酸化物としては、たとえば、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。」
「【0055】
次に、(d)導電性粒子としては、たとえば金、銀、亜鉛、錫、半田、インジウム、およびパラジウムからなる群から選択される一または二以上の金属からなる粒子を用いることができる。たとえば、(d)導電性粒子の材料として、これらの金属を単体で用いてもよいし、二以上の金属からなる合金を用いてもよい。
【0056】
また、(d)導電性粒子は、高分子材料のコアに金属を被覆した粒子としてもよい。コアを被覆する金属は、たとえば金、ニッケル、銀、銅、亜鉛、錫、インジウム、パラジウム、およびアルミニウムからなる群から選択される一または二以上の金属とすることができる。これらの金属を単体で用いてもよいし、二以上の金属からなる合金を用いてもよい。」
「【0060】
本発明の異方導電性接着剤では、さらに熱可塑性エラストマーを含むことができる。こうすることにより、安定的なフィルム化が可能となる。また、硬化後の樹脂の弾性率を下げ接着力を向上させることができる。このため、接続時の残留応力を小さくし、接続信頼性を向上させることができる。
【0061】
(e)熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、たとえば、ポリエステル樹脂等のポリエステル系熱可塑性エラストマー類;
ポリウレタン樹脂等のポリウレタン系熱可塑性エラストマー;
ポリイミド樹脂;
ポリブタジエン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系熱可塑性エラストマー;
スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマー;
ポリアセタール樹脂;
ポリビニルブチラール樹脂;
ブチルゴム、クロロプレンゴム等の合成ゴム;
ナイロン等のポリアミド樹脂;
アクリロニトリル-ブタジエン-メタクリル酸共重合体;
ポリ酢酸ビニル樹脂;
ポリメチルメタクリレート樹脂;
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、フルオレン骨格含有フェノキシ樹脂等のフェノキシ樹脂;
等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。」
「【0064】
また、本発明の異方導電性接着剤は、反応性モノマーを含んでもよい。反応性モノマーは、(a)ラジカル重合性樹脂に対する反応性を有する(f)反応性モノマーとすることができる。(f)反応性モノマーは、ラジカル重合性モノマーとすることができる。こうすることにより、異方導電性接着剤の耐熱性を向上させることができる。
【0065】
ラジカル重合性モノマーとして、たとえば、(メタ)アクリロイル基を有する各種モノマーを用いることができる。具体的には、たとえば、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノール性水酸基を有する(メタ)アクリロイル化フェノールノボラック樹脂等を用いることができる。
【0066】
また、ラジカル重合性モノマーとして、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレングリコール変性トリ(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチ
ル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、またはグリシジル(メタ)アクリレート等を用いてもよい。」

そうすると、引用刊行物には、以下の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されているものと認められる。

「(a)ラジカル重合性樹脂、(b)密着性付与剤、(c)有機過酸化物、(d)導電性粒子、(e)熱可塑性エラストマ及び前記(a)ラジカル重合性樹脂に対する反応性を有する(f)反応性モノマーを含み、
前記(a)ラジカル重合性樹脂は、フェノール性水酸基を有する(メタ)アクリロイル化フェノールノボラック樹脂及びエポキシアクリレート樹脂であり、
前記(e)熱可塑性エラストマーは、ポリイミド樹脂であり、
前記(f)反応性モノマーは、ラジカル重合性モノマーであるトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートである
異方性導電性接着剤。」

4.本願第1発明と刊行物発明との対比・判断
(4-1)刊行物発明の「(e)熱可塑性エラストマー」である「ポリイミド樹脂」は、本願第1発明の「(A)熱可塑性樹脂」である「ポリイミド樹脂」に相当する。

(4-2)刊行物発明の「(a)ラジカル重合性樹脂」である「エポキシアクリレート樹脂」は、本願第1発明の「(B)熱硬化性成分」のうち、「(B1)分子内に(メタ)アクリル基及びエポキシ基を有する反応性化合物」に相当する。

(4-3)刊行物発明の「(a)ラジカル重合性樹脂」である「フェノール性水酸基を有する(メタ)アクリロイル化フェノールノボラック樹脂」は、本願第1発明の「(B)熱硬化性成分」のうち、「(B2)分子内に(メタ)アクリル基及びフェノール性水酸基を有する反応性化合物」に相当する。

(4-4)刊行物発明の「異方性導電性接着剤」と、本願第1発明の「ウェハ裏面貼付用接着剤組成物」は、「接着剤組成物」という点で共通する。

(4-5)そうすると、本願第1発明と刊行物発明とは、
「(A)熱可塑性樹脂と、(B)熱硬化性成分と、を含有し、
前記(A)熱可塑性樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂又はビスフェノールF型フェノキシ樹脂であり、
前記(B)熱硬化性成分が、(B1)分子内に(メタ)アクリル基及びエポキシ基を有する反応性化合物及び/又は(B2)分子内に(メタ)アクリル基及びフェノール性水酸基を有する反応性化合物を含む、接着剤組成物。」
である点で一致し、次の2点で相違する。

(相違点1)本願第1発明では、「(A)熱可塑性樹脂」の「ガラス転移温度が-20℃?80℃であ」るのに対して、刊行物発明では、「ポリイミド樹脂」について、そのような特定がなされていない点。

(相違点2)本願第1発明は、「ウェハ裏面貼付用接着剤組成物」であるのに対し、刊行物発明は、「異方性導電性接着剤」である点。

(4-6)判断
上記相違点のうち、相違点1について検討する。
本願明細書において先行技術として示された特許文献5には、「低温での加工性と耐熱性を両立すべく、比較的ガラス転移温度(Tg)が低い熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂とを組み合わせたフィルム接着剤」(本願明細書段落【0009】)に関して、「【請求項1】 (A)有機溶剤に可溶なガラス転移温度が350℃以下のポリイミド樹脂100重量部と、(B)1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物5?100重量部と、(C)該エポキシ化合物と反応可能な活性水素基を有する化合物0.1?20重量部とを主たる成分として含有していることを特徴とする耐熱性樹脂組成物。」と記載されており、ポリイミド樹脂のガラス転移温度が、一般的に100℃以下であるとは言えない。
そして、本願明細書の段落【0037】には、本願第1発明において、「(A)熱可塑性樹脂」の「ガラス転移温度が-20℃?80℃であ」ることの根拠について、「接着剤層1は、本発明の接着剤組成物をフィルム状に成形してなる。接着剤層1は、半導体ウェハの保護テープ及びダイシングテープの軟化温度以下の低温で被着体に貼り付け可能であることが好ましい。貼り付け可能な温度が低いことは、半導体ウェハ反り抑制の点でも有利である。具体的には、接着剤層1を被着体に貼り付ける温度は、好ましくは10?150℃、より好ましくは20?100℃、更に好ましくは20?80℃である。このような低温での貼り付けを可能にするために、接着剤層1のTgは100℃以下であることが好ましい。そのために、接着剤層1を構成する(A)熱可塑性樹脂のTgは、好ましくは100℃以下、より好ましくは-20?80℃である。(A)熱可塑性樹脂のTgが100℃を超えると、半導体ウェハ裏面への貼り付け温度が150℃を超える可能性が高くなり、Tgが-20℃未満であると、Bステージ状態での接着剤層1表面のタック性が強くなり、取り扱い性が徐々に低下する傾向にある。」と記載されている。
そうすると、刊行物発明において、「ポリイミド樹脂」のガラス転移温度を適宜設定することにより、本願第1発明のように、「(A)熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が-20℃?80℃であ」る構成とすることは、当業者といえども想到し得ず、容易になし得たこととは言えない。

(4-7)まとめ
以上の通りであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本願第1発明は、刊行物発明に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

5.むすび
以上のとおり、本願第1発明及びそれを引用する本願第2?9発明は、刊行物発明に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、本願を原査定の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-02-05 
出願番号 特願2009-130859(P2009-130859)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 水野 浩之  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 小野田 誠
池渕 立
発明の名称 接着剤組成物、接着シート及び半導体装置  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 坂西 俊明  
代理人 清水 義憲  
代理人 古下 智也  
代理人 城戸 博兒  
代理人 池田 正人  

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