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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A47C
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A47C
審判 全部無効 特126 条1 項  A47C
審判 全部無効 2項進歩性  A47C
審判 全部無効 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  A47C
審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更  A47C
管理番号 1284468
審判番号 無効2013-800043  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-03-19 
確定日 2014-01-15 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3479455号発明「寺院用スツール」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3479455号に係る出願(特願平10-252413号)は、平成10年9月7日の出願であって、その特許権の設定登録は平成15年10月3日にされ、その後、請求人株式会社ナルコ岩井から無効審判が請求されたものである。以下、請求以後の経緯を整理して示す。
平成25年 3月19日 審判請求書の提出
平成25年 6月 7日 審判事件答弁書の提出
平成25年 6月 7日 訂正請求書の提出
平成25年 7月29日 審判事件弁駁書の提出
平成25年 9月13日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人より)
平成25年 9月13日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人より)
平成25年 9月27日 口頭審理の実施
平成25年10月11日 上申書の提出(請求人より)
平成25年10月25日 上申書の提出(被請求人より)

第2 本件訂正の内容
平成25年6月7日になされた訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許第3479455号の願書に添付した明細書を、平成25年6月7日付けの訂正請求書に添付した全文訂正明細書のとおり訂正しようとするものであって、その訂正の内容は、以下の訂正事項1?5のとおりである。
(1)訂正事項1
願書に添付した明細書における特許請求の範囲の請求項1の「スツール」との記載を「寺院用スツール」との記載に訂正する。(訂正箇所に下線付加。以下同じ。)

(2)訂正事項2
願書に添付した明細書における特許請求の範囲の請求項1の「前記座の左右両側部より上方へ突出する頂部」との記載を「前記座の左右両側部より上方へ肘が当たらない突出高さで突出し、前記座から安全に立ち上がるために握られる頂部」との記載に訂正する。

(3)訂正事項3
願書に添付した明細書における特許請求の範囲の請求項1の「とからなるスツール」との記載を「とからなる垂直方向に安定して積み重ねが可能な・・・スツール」との記載に訂正する。

(4)訂正事項4
願書に添付した明細書における発明の詳細な説明の段落【0001】の「【発明の属する技術分野】 本発明はスツールに関する。さらに詳しくは、安全に立ち上がれるとともに、安定した収納ができるスツールに関する。」との記載を「【発明の属する技術分野】本発明は寺院用スツールに関する。さらに詳しくは、安全に立ち上がれるとともに、安定した収納ができる寺院用スツールに関する。」との記載に訂正する。

(5)訂正事項5
願書に添付した明細書における発明の詳細な説明の段落【0005】の「【課題を解決するための手段】 本発明のスツールは、座と、該座を支える支持部材とからなるスツールであって、前記支持部材が、前記座の左右両側部において対向してハの字状に配置された一対の第一脚部と、一方の第一脚部の先端部と、前記座をはさんで対向する他方の第一脚部の先端部とを連結する一対の第二脚部とからなる脚部と、前記座の左右両側部から座面より上方へ突出する頂部とからなることを特徴とする。」との記載を「【課題を解決するための手段】 本発明の寺院用スツールは、座と、該座を支える支持部材とからなる寺院用スツールであって、前記支持部材が、前記座の左右両側部において対向してハの字状に配置された一対の第一脚部と、一方の第一脚部の先端部と、前記座をはさんで対向する他方の第一脚部の先端部とを連結する一対の第二脚部とからなる脚部と、前記座の左右両側部から座面より上方へ肘が当たらない突出高さで突出し、前記座から安全に立ち上がるために握られる頂部とからなり、垂直方向に安定して積み重ねが可能であることを特徴とする。」との記載に訂正する。

第3 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、本件訂正により訂正された特許第3479455号の請求項1,2に係る発明(以下「訂正された請求項1,2に係る特許発明」という。)についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、無効とすべき理由を次のように主張するとともに、証拠方法として甲第1号証?甲第20号証を提出している。
無効理由1:訂正された請求項1に係る特許発明は、甲第5号証の1乃至甲第5号証の8、甲第12号証の1、甲第12号証の2から特定される、本件特許発明の出願前に日本国内において販売されたニチエス株式会社製造の「型番NC-206」のチェアに基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
無効理由2:訂正された請求項1に係る特許発明は、本件特許発明の出願前に日本国内において頒布された甲第6号証と、甲第5号証の1乃至甲第5号証の8、甲第12号証の1、甲第12号証の2から特定される、本件特許発明の出願前に日本国内において販売されたニチエス株式会社製造の「型番NC-206」のチェア、又は本件特許発明の出願前に日本国内において頒布された甲第7号証乃至甲第11号証のいずれかとの組み合わせに基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
無効理由3:訂正された請求項2に係る特許発明は、甲第5号証の1乃至甲第5号証の8、甲第12号証の1、甲第12号証の2から特定される、本件特許発明の出願前に日本国内において販売されたニチエス株式会社製造の「型番NC-206」のチェアに基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
無効理由4:訂正された請求項2に係る特許発明は、無効理由2の理由に加えて、甲第5号証の1乃至甲第5号証の8、甲第12号証の1、甲第12号証の2から特定される、本件特許発明の出願前に日本国内において販売されたニチエス株式会社製造の「型番NC-206」のチェアのパイプ支持部材の構成を採用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
無効理由5:訂正された請求項1において「頂部」を限定する「座面より上方へ肘が当たらない突出高さで突出」との記載は不明確であり、訂正された請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。
[証拠方法]
甲第1号証:特許第3479455号の原簿
甲第2号証:特許第3479455号公報
甲第3号証の1:株式会社八木研の会社案内の写し
甲第3号証の2:有限会社倉仏のカタログ「倉仏商報 昭和60年度版」の写し
甲第3号証の3:太田定蔵法衣仏具店のカタログの写し
甲第4号証:株式会社八木研のウェブページ(http://www.yagiken.co.jp/contents/product/temple/alumi.html)
甲第5号証の1:ニチエス株式会社の「NICHIESU BEST SELECTION’89」カタログ表紙と18頁部分と19頁部分の写し
甲第5号証の2:株式会社美濃利の「MINORI’94?’95CATALOGUE」カタログ表紙と裏表紙とS9頁とS10頁部分、及び正誤表の写し
甲第5号証の3:株式会社エバニューの「SWIMMING EQUIPMENT CATALOGUE’97?’98」カタログ表紙と裏表紙と27頁部分の写し
甲第5号証の4:「型番NC-206」のチェアが販売されているサイトのウェブページ(http://www.outdf.com/product/hp21/sh10.html)
甲第5号証の5:本件審判請求人が購入した「型番NC-206」とされるチェアの写真
甲第5号証の6:本件審判請求人が購入した「型番NC-206」とされるチェアをもとに線図に表したもの
甲第5号証の7:甲第5号証の5の本件審判請求人が購入した「型番NC-206」のチェアが梱包されていたとされる箱、及び該箱に付されたシールの拡大写真
甲第5号証の8:本件審判請求人が購入した「型番NC-206」のチェア2脚分の納品書とされるもの
甲第6号証:意匠登録第1010452号公報
甲第7号証:意匠登録第477094号公報
甲第8号証:意匠登録第762446号公報
甲第9号証:意匠登録第579760号公報
甲第10号証:実公昭4-6555号公報
甲第11号証:実公昭43-12262号公報
甲第12号証の1:「型番NC-206」とされるチェアの頂部の高さをメジャーで測った写真、および実際に人が座った状態で肘が当たらないことを示す写真
甲第12号証の2:甲第5号証の6の線図から各部名称の記載を取り除いて頂部高さを記入した線図
甲第13号証:ニチエス株式会社の「NICHIESU FUTURE CATALOGUES 2012」カタログの表紙、CONTENTS頁、396頁、403頁、408頁、裏表紙の写し
甲第14号証:有限会社倉仏のカタログ「倉仏商報 昭和60年度版」の156頁の写し
甲第15号証:平成5(1993)年12月25日発行、株式会社同朋舎出版「ワーズワード」(222頁、223頁)写し
甲第16号証:特願平10-252413(本件発明)の拒絶理由通知書
甲第17号証:実願昭58-101510号(実開昭60-34295号)のマイクロフィルム
甲第18号証:実願昭62-45207号(実開昭63-152455号)のマイクロフィルム
甲第19号証:実願昭60-165482号(実開昭62-73750号)のマイクロフィルム
甲第20号証:実願昭57-168407号(実開昭59-71628号)のマイクロフィルム

2.被請求人の主張
被請求人は、本件訂正を認める、本件無効審判の請求は認められない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の主張する無効理由にはいずれも理由が無い旨主張する。
[証拠方法]
乙第1号証:株式会社八木研のカタログ(2000年版)の写し
乙第2号証の1:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 昭和53年度」の写し
乙第2号証の2:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 昭和54年度」の写し
乙第2号証の3:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 昭和55年度」の写し
乙第2号証の4:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 昭和56年度」の写し
乙第2号証の5:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 昭和57年度」の写し
乙第2号証の6:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 昭和58年度」の写し
乙第2号証の7:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 昭和59年度」の写し
乙第2号証の8:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 昭和60年度」の写し
乙第2号証の9:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 昭和61年度」の写し
乙第2号証の10:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 昭和62年度」の写し
乙第2号証の11:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 昭和63年度」の写し
乙第2号証の12:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 1989年度」の写し
乙第2号証の13:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 平成2年度」の写し
乙第2号証の14:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 平成3年度」の写し
乙第2号証の15:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 平成4年度」の写し
乙第2号証の16:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 平成5年度」の写し
乙第2号証の17:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 平成7年度」の写し
乙第2号証の18:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 平成8年度」の写し
乙第2号証の19:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 平成9年度」の写し
乙第2号証の20:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 平成10年度」の写し
乙第2号証の21:株式会社翠雲堂のカタログ「仏具年報 平成11年度」の写し
乙第3号証:株式会社岩波書店発行 広辞苑 第6版 「曲録」の項目の写し
乙第4号証の1:知財高裁平成21年3月25日判決(平成20年(行ケ)第10261号)
乙第4号証の2:知財高裁平成23年1月31日判決(平成22年(行ケ)第10075号)
乙第4号証の3:知財高裁平成21年1月28日判決(平成20年(行ケ)第10096号)
乙第5号証:特許研究N0.51 2011.3 2?5頁「同一技術分野論は終焉を迎えるか」
乙第6号証:演漆(ENSHITSU)業務用家具電子カタログの一部(http://www.hust-enshitsu.com/web/dienst/_SWF_Window.html)
乙第7号証の1:ニチエス株式会社製造の「型番NC-206」とされるチェアに実際に座った状態を示す写真
乙第7号証の2:ニチエス株式会社製造の「型番NC-206」とされるチェアに実際に座ったときの座面の沈み込みを示す写真
乙第7号証の3:ニチエス株式会社製造の「型番NC-206」とされるチェアを積み重ねた状態を示す写真
乙第8号証:意匠登録第1083249号公報
乙第9号証:(有)タナベ事務機器ホームページ中の寺院用家具のページ(http://tanabe.tank.jp/temple-furniture/temple-top.html)
乙第10号証:株式会社サンケイウェブカタログVol.24(http://www.isu-sankei.co.jp/resources/webcatalog/vol24/#page=2)

第4 訂正の可否についての当審の判断
1.訂正の目的について
(訂正事項1)
訂正後の「寺院用スツール」との記載は、訂正前の「スツール」の用途を「寺院用」に限定するものといえる。
そうすると、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(訂正事項2)
訂正後の「前記座の左右両側部より上方へ肘が当たらない突出高さで突出し、前記座から安全に立ち上がるために握られる頂部」との記載は、訂正前の「前記座の左右両側部より上方へ突出する頂部」を「肘が当たらない突出高さで」ある点及び「前記座から安全に立ち上がるために握られる」点で限定するものといえる。
そうすると、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(訂正事項3)
訂正後の「とからなる垂直方向に安定して積み重ねが可能な・・・スツール」との記載は訂正前の「スツール」を「直方向に安定して積み重ねが可能な」点で限定するものといえる。
そうすると、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(訂正事項4)
訂正事項4は、訂正事項1に対応して、願書に添付した明細書の段落【0001】における記載を明瞭にするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(訂正事項5)
訂正事項5は、訂正事項1?3に対応して、願書に添付した明細書の段落【0005】における記載を明瞭にするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

したがって、訂正事項1?5は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮又は第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

2.新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更
(訂正事項1)
願書に添付した明細書の段落【0002】?【0004】の記載からして、訂正事項1は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(訂正事項2)
願書に添付した明細書の段落【0012】、【0016】、【0017】の記載からして、訂正事項2は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(訂正事項3)
願書に添付した明細書の段落【0013】、【0016】、【0017】の記載及び図5、図8の図示内容からして、訂正事項3は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(訂正事項4)
訂正事項4は、訂正事項1に対応して、願書に添付した明細書の【0001】における記載を明瞭にするものであるから、訂正事項1について示したのと同様の理由で、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(訂正事項5)
訂正事項5は、訂正事項1?3に対応して、願書に添付した明細書の【0005】における記載を明瞭にするものであるから、訂正事項1?3について示したのと同様の理由で、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

したがって、訂正事項1?5は、特許法第134条の2第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

3.まとめ
よって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号又は第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、特許法第134条の2第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第5 本件訂正後の各請求項の記載
上記のとおり、本件訂正は認められるから、訂正された請求項1,2に係る特許発明は、全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 座と、該座を支える支持部材とからなる寺院用スツールであって、前記支持部材が、
前記座の左右両側部において対向してハの字状に配置された一対の第一脚部と、一方の第一脚部の先端部と、前記座をはさんで対向する他方の第一脚部の先端部とを連結する一対の第二脚部とからなる脚部と、前記座の左右両側部から座面より上方へ肘が当たらない突出高さで突出し、前記座から安全に立ち上がるために握られる頂部
とからなる垂直方向に安定して積み重ねが可能な寺院用スツール。
【請求項2】 前記支持部材が、2本の金属パイプ材から作製されており、該金属パイプ材はそれぞれ逆U字状に曲げられるとともに、自由端側がL字状に曲げられており、一方の金属パイプ材の自由端が他方の金属パイプ材の自由端に接合されてなる請求項1記載のスツール。」

第6 無効理由についての当審の判断
まず、訂正された請求項1の記載不備についての無効理由である無効理由5から検討する。
次に、訂正された請求項1,2に係る特許発明の進歩性についての無効理由である無効理由1?4に関連する甲各号証の記載内容と甲各号証に記載された発明について確認した後、順次無効理由1?4について検討する。

I.無効理由5
1.請求人の主張
請求人の主張する無効理由は、概略次のようなものである。
訂正された請求項1の記載において、頂部の高さは「肘が当たらない突出高さ」である点で限定されているが、肘の位置は人の年齢や個人差によって異なるから、「肘が当たらない突出高さ」との記載は不明確であり、訂正された請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。

2.判断
肘の位置が人の年齢や個人差によって異なるとしても、スツールに座った人間の肘の位置は、極端な例を除き一定の範囲内に納まることは明らかであって、当業者であれば「肘が当たらない突出高さで突出」する「頂部」を明確に把握できるといえるから、訂正された請求項1の記載における「肘が当たらない突出高さ」との記載は明確である。
したがって、請求人の無効理由5(記載不備)についての上記主張を採用することはできず、訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1の記載は明確であるから、訂正された請求項1に係る発明は、その記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

3.まとめ
以上のとおり、訂正された請求項1に係る発明は、その記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているから、訂正された請求項1に係る特許発明の特許についての無効理由5には理由がない。

II.甲各号証の記載内容と甲各号証に記載された発明
1.甲第5号証の1
甲5の1ア:カタログ表紙の上段に「NICHIESU BEST SELECTION’89」との記載が存在し、下段に「ニチエス株式会社」との記載が存在する。

甲5の1イ:カタログ18頁の上段に「SIESTA chair シエスタ<チェア>」との記載が存在し、該記載の下から19頁にかけて「NC」で始まる型番を付された複数の類似した構成のチェアが掲載されている。

甲5の1ウ:カタログ18頁中段に以下のような構成のチェアが掲載され、該チェアについての説明として「●NC-206 ¥28,000 W550×D630×SH385・H770mm」との記載、○の中に「積」の文字が記載された記号が存在する。
「平行な円柱状フレームの間に複数のベルトを張り渡すことにより連続して形成された座と背凭れと、前記座を支える円柱状フレームとからなるチェアであって、前記座を支える円柱状フレームが、
前記座の左右両側部において対向してハの字状に配置された一対の第一脚部と、一方の第一脚部の先端部と、前記座をはさんで対向する他方の第一脚部の先端部とを連結する一対の第二脚部とからなる脚部と、
前記座の左右両側部から座面より上方へ突出し、前記ハの字状に配置された第一脚部の上端部を連結する山形の頂部とからなる積み重ねが可能なチェア。」


2.甲第5号証の2
甲5の2ア:カタログ表紙の下段に「MINORI’94?’95CATALOGUE」との記載が存在する。

甲5の2イ:カタログ裏表紙の中段に「Technology of Sports Life 株式会社 美濃利」との記載が存在する。

甲5の2ウ:カタログS10頁の上段には「LAWN COMFORT 泳ぐためだけの空間から深い充実感の得られる空間へ。今スポーツ施設のプールに求められるのはリゾート感覚といった新しい価値。そのためにもプールサイドの備品にはもっと気を配りたい。チェアやベンチ等、プールに調和した機能性と美しさが今までにない空間を作り出します。」との記載が存在する。

甲5の2エ:カタログS10頁の上段には「DELUX CHAIR SIESTA/高級チェア・シエスタ」との記載が存在し、該記載の下に「NC」で始まる型番を付された複数の類似した構成のチェアが掲載されている。

甲5の2オ:カタログS10頁の中段に甲5の1ウと同じ構成のチェアが掲載され、該チェアについての説明として「NC-206・・・¥30,000 ●W550×D630×SH385・H770mm」との記載が存在する。

甲5の2カ:カタログS10頁の下段には、「(この頁のシエスタシリーズのフレームは、全て、アルミにポリエステル樹脂粉体塗装)」との記載が存在する。

甲5の2キ:「’94?’95カタログ正誤表」の上段には「1994.5.25 ’94?’95年カタログに誤りがありましたので、この正誤表をもってお詫びと訂正をさせていただきます。」との記載が存在する。

甲5の2ク:「’94?’95カタログ正誤表」の下段には印章とともに「株式会社 美濃利」との記載が存在する。

3.甲第5号証の3
甲5の3ア:カタログ表紙の下段には「SWIMMING EQUIPMENT CATALOG ’97-’98 EVERNEW」との記載が存在する。

甲5の3イ:カタログ裏表紙の下段には「株式会社エバニュー アスレチック&フィールド事業部 アスレチック&フィールド用品販売部/フィットネス&プール企画販売部」との記載、「★商品の仕様及び価格は予告なしに一部変更する場合が生じますが、あらかじめご了承下さい。」との記載、「当社カタログに掲載の標準小売価格には消費税は含まれておりません。」との記載及び「頒布価格500円」との記載が存在する。

甲5の3ウ:カタログ27頁の上段に「プールサイド用品」との記載が存在する。

甲5の3エ:カタログ27頁の中段に甲5の1ウと同じ構成のチェアが掲載され、該チェアについての説明として「★HC-121 シェスタチェアーNC-206・¥30,000●材質=アルミフレームに粉体塗装、軟質塩ビベルト●サイズ=W55cm×D63cm×H(座面)38.5cm、H77cm●自重=3kg」との記載が存在する。

4.甲第5号証の4
甲5の4ア:ウェブページの上段に「【NC?206】ニチエス(NICHIESU)プールサイドファニチャー卸販売 プールサイドファニチャーNC206-ニチエス(NICHIESU)をご案内しております。 NC-206 ガーデン家具、アウトドア家具のイス、ソファー、テーブル。【NC-206】の最安値を目指した卸価格販売。」との記載及び「ガーデン家具 HOME⇒ビーチプールサイド家具⇒【NC-206】 【NC-206】ニチエス(NICHIESU)21,420円?」との記載が存在する。

甲5の4イ:ウェブページの中段に甲5の1ウと同じ構成のチェアが掲載され、該チェアについての説明として「SIESTA NC-206 材質:アルミニウム 塗装:ポリエステル樹脂粉体塗装 座面:軟質塩化ビニール 機能:スタッキング可能 寸法:W550 D630 H770 SH385 重量:3.0kg」との記載が存在する。

甲5の4ウ:ウエブページの下段に「【業務用ガーデン家具 屋外ファニチャー ベンチ 激安】hust 運営:ハストネット株式会社」との記載が存在する。

5.甲第5号証の5
甲5の5ア:写真a?cには、正面、側面、斜めから見た、審判請求人が購入した「型番NC-206」のチェアとされる、甲5の1ウと同じ構成のチェアが示され、写真a、bには、前記チェアに「座」、「背もたれ」、「頂部」、「第一脚部」、「第二脚部」、「脚」、「支持部材(金属パイプ材)」、「L字状」、「接合部」の名称が記入された態様が示され、写真dには、前記チェアの背面の支持部材に「Distributed by NICHIESU」と記載されたシールが付された態様が示されている。

甲5の5イ:写真e、fには、審判請求人が購入した「型番NC-206」のチェアとされる、甲5の1ウと同じ構成のチェア2脚を積み重ねた態様が示されている。

6.甲第5号証の6
甲5の6ア:審判請求人が購入した「型番NC-206」とされるチェアについて、審判請求人が作成し各部の名称が記入された線図(正面図、側面図、平面図、底面図、背面図、斜視図、3脚のチェアを積み重ねた状態を示す図)が示されている。

7.甲第5号証の7
甲5の7ア:審判請求人が「型番NC-206」のチェアを購入する際に該チェアが梱包されていたとされる箱の写真には、「120121008 NC-206 2台入 23960401」と記載されたシールが該箱に付された態様が示されている。

8.甲第5号証の8
甲5の8ア:審判請求人が購入した「型番NC-206」のチェアの納品書とされるものには、上段に「納品書 株式会社ナルコ岩井大阪本社様 平成24年10月7日 SANKI 有限会社 三輝 下記の通り納品致しました」との記載が存在し、中段の表の「品名」の欄にそれぞれ「シェスタSIESTA/NC-206 ニチエス(株)製」、「送料」との記載が存在し、「数量」の欄にそれぞれ「2台」、「一式」との記載が存在し、「単価」の欄にそれぞれ「19,500」、「1,000」との記載が存在し、「金額」の欄にそれぞれ「39000」、「1000」との記載が存在し、下段に「大阪本社 工芸部 40000」との記載が存在する。

9.甲第6号証
本件特許発明の出願前に頒布された刊行物である甲第6号証(意匠登録第1010452号公報)には、以下の記載が存在する。
甲6ア:「いす」(意匠に係る物品)
甲6イ:「説明 この意匠に係る物品(以下、本物品という)はいすであり、主として寺院において法会などの参列者が座るいすとして用いられる。」(説明の欄)

甲6ア、イの記載及び図面(斜視図、正面図、右側面図、平面図、平面図中央断面図、平面図中央縦断面図、底面図、参考図1(積み重ねた状態の正面図)、参考図2(積み重ねた状態の右側面図)の図示内容からして、甲第6号証には次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されている。
「座と、該座を支える支持部材とからなる椅子であって、前記支持部材が、
前記座の左右両側部において対向してハの字状に配置された一対の第一脚部と、一方の第一脚部の先端部と、前記座をはさんで対向する他方の第一脚部の先端部とを連結する一対の第二脚部とからなる脚部と、
前記ハの字状に配置された第一脚部をその上端部より少し下の部分で連結し、下部に2つの突状部を有する板状の連結部材とからなり、
前記ハの字状に配置された一対の第一脚部の前記座面より突出していない各上端と前記連結部材の各突状部が接触することにより、垂直方向に安定して積み重ねが可能な椅子。」

10.甲第7号証
本件特許発明の出願前に頒布された刊行物である甲第7号証(意匠登録第477094号公報)には、以下の記載が存在する。
甲7ア:「小児用折畳腰掛」(意匠に係る物品の欄)

甲7アの記載及び図面(正面図、背面図、平面図、底面図、右側面図)の図示内容からして、甲第7号証には次の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されている。
「座と、該座を支える支持部材とからなる小児用折畳腰掛であって、前記支持部材が、
前記座の左右両側部において対向してハの字状に配置された一対の第一脚部と、一方の第一脚部の先端部と、前記座をはさんで対向する他方の第一脚部の先端部とを連結する一対の第二脚部とからなる脚部と、
前記座の左右両側部より上方へ突出し、前記ハの字状に配置された第一脚部の上端部を連結する山形の頂部とからなる小児用折畳腰掛。」

11.甲第8号証
本件特許発明の出願前に頒布された刊行物である甲第8号証(意匠登録第762446号公報)には、以下の記載が存在する。
甲8ア:「いす」(意匠に係る物品の欄)

甲8アの記載及び図面(正面図、平面図、底面図、右側面図、斜視図)の図示内容からして、甲第8号証には次の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されている。
「座と、該座を支える支持部材とからなるいすであって、前記支持部材が、
前記座の左右両側部において対向してハの字状に配置され、下端部が前後方向に平行して曲げられた一対の第一脚部と、
前記座の左右両側部から座面より上方へ突出し、前記ハの字状に配置された一対の第一脚部の上端部を連結する山形の頂部とからなるいす。」

12.甲第9号証
本件特許発明の出願前に頒布された刊行物である甲第9号証(意匠登録第579760号公報)には、以下の記載が存在する。
甲9ア:「いす」(意匠に係る物品の欄)

甲9アの記載及び図面(正面図、平面図、底面図、右側面図、斜視図)の図示内容からして、甲第9号証には次の発明(以下「甲9発明」という。)が記載されている。
「座と、該座を支える支持部材とからなるいすであって、前記支持部材が、
前記座の左右端部において対向してほぼ平行に配置された一対の第一脚部と、
前記ほぼ平行に配置された第一脚部の上方部分を連結する一対の横部材と、
前記座は前記一対の横部材の間に張り渡された布状部材から形成され、
前記座の左右両端部から座面より上方へ突出し、前記ほぼ平行に配置された第一脚部の上端部を連結する台形状の頂部とからなるいす。」

13.甲第10号証
本件特許発明の出願前に頒布された刊行物である甲第10号証(実公昭4-6555号公報)には、以下の記載が存在する。
甲10ア:「重ネ椅子」(1頁右から8行)
甲10イ:「実用新案ノ性質、作用効果ノ要領
本考案ハ前脚(1’)及後脚(1’’)ヲ傾斜セシメ其上端ヲ互ニ連結一体トナシテ山形ニ形成シ其頂部(1’’’)ノ下方ニ於テ傾斜背枠(2’)ト連続セル座枠(2’’)ノ外側ニ取付ケ以テ第一図ニ示ス如ク一ツノ椅子ノ両脚及背枠ヲ夫々他ノ椅子ノ両脚及ヒ背枠ニ重合シテ椅子ヲ多数重積スルヲ得へカラシメタルモノニシテ構造簡単製作容易ナリトス」(1頁右から10?12行)

甲10ア、イの記載及び図面(第一図、第二図)の図示内容からして、甲第10号証には次の発明(以下「甲10発明」という。)が記載されている。
「背凭れと、座と、該座を支える支持部材とからなる重ね椅子であって、前記支持部材が、
前記座の左右両側部において対向してハの字状に配置された一対の第一脚部と、
前記座の左右両側部から座面より上方へ突出し、前記ハの字状に配置された第一脚部の上端部を連結する山形の頂部
とからなる垂直方向に安定して積み重ねが可能な重ね椅子。」

14.甲第11号証
本件特許発明の出願前に頒布された刊行物である甲第11号証(実公昭43-12262号公報)には、以下の記載が存在する。
甲11ア:「この考案は横方向に多数個連結して使用できる椅子に関し、特に不使用時には積重ねられるようにして狭小な場所にも容易に保管できるようにしたものである。
体育館、競技場、講堂等において使用される椅子は、使用時に簡単に連結でき、また不使用時に積重ねて保管できれば上記施設を他の用途に使用する場合に全く便利である。」(1頁左欄15?22行)

甲11イ:「この考案は上記欠点を改善するためになされたもので、簡単な操作によって多数個連結が可能であると共に積重ねて保管する場合にも安定して積重ねられるようにした椅子を提供することを目的とするものである。」(1頁左欄28?32行)

甲11ウ:「次に積重ねる場合には第5図乃至第6図に示すように先ず一番下側となる椅子を所要な場所に位置させ、この上に順次他の椅子を積重ねてゆき、上側となる椅子の連結棒12,13を下側の椅子の間隙15,15’に挿入し連結棒12,13の下面を連結桿5,6の上面に支持させる。即ち第6図に示す状態で載設されるようになる。
従って、この椅子を多数個積重ねても、夫々が下側に位置する椅子の間隙15、15’に脚体2の連結棒12,13が挿入されて支持されることから、積重ねた椅子に振動が与えられたり外力が加わっても崩れ落ちる虞れがなく安定して保管することができる。」(1頁右欄21?34行)

甲11エ:第1図には、椅子において座の左右両側部から座面より上方へほんの僅か突出する頂部を有する態様が示されている。

甲11ア?エの記載及び第1?6図の図示内容からして、甲第11号証には次の発明(以下「甲11発明」という)が記載されている。
「背凭れと、座と、該座を支える支持部材とからなる椅子であって、前記支持部材が、
前記座の左右両側部において対向してハの字状に配置された一対の第一脚部と、
前記座の左右両側部から離間するとともに座面より上方へほんの僅か突出し、前記ハの字状に配置された第一脚部の上端部を連結する山形の頂部
とからなる垂直方向に安定して積み重ねが可能な重ね椅子。」

15.甲第12号証の1
甲12の1ア:「型番NC-206」とされるチェアについて、上下左右4つの写真に、甲5の1ウと同じ構成のチェアが示され、上部右側の写真にはハの字状に配置された第一脚部の山形の頂部の高さを測っている様子が示され、上部左側の写真には該頂部の高さが座面から約15cmであることが示され、下部右側の写真にはチェアに座った人が両手、両足を前で揃え姿勢を正しくした状態で背もたれに凭れた場合に、その人の肘が前記頂部に当たらない態様が示され、下部左側の写真にはチェアに座った人が両手、両足を前で揃え姿勢を正しくした状態で背もたれに凭れない場合に、その人の肘が前記頂部に当たらない態様が示されている。

16.甲第12の2
甲12の2ア:甲第12の2には、甲第5号証の6の線図から各部の名称の記載を取り除いて頂部の高さを記入したものが示されている。

17.甲第13号証
甲13ア:カタログ表紙の上段に「NICHIESU FURNITURE CATALOGUES 2012」との記載が存在する。

甲13イ:カタログ裏表紙の下段に「ニチエス株式会社」との記載が存在する。

甲13ウ:カタログ「CONTENTS」頁の右欄に「記号の表記について 製品の品番、仕様の最後に記号が表記されている場合、その意味は以下の通りです。」との記載が存在し、○の中に「積」の文字が記載された記号の説明として「積み重ね可能な製品」との記載が存在し、「製品のご注文・お問合せについて●ページ●品名/型番●色柄●数量●納期 以上の項目をご指定の上、お願いいたします。」との記載が存在する。

甲13エ:カタログ「CONTENTS」頁の左欄に「シエスタラインSIESTA LINE-392?401」との記載が存在する。

甲13オ:カタログ396頁左欄には複数の類似した構成のチェアが掲載され、その中に「7」のチェアとして甲5の1ウと同じ構成のチェアが掲載され、カタログ396頁右欄に「SIESTA シエスタ標準仕様 フレーム 軽くて耐食性にすぐれたアルミニウム製。ジョイント部分は溶接加工による一体フレームで十分な強度と耐久性をもたせました。また、ほとんどの製品がスタッキング(積み重ね)及び、折りたたみできますから保管スペースをとりません。 塗装/ポリエステル樹脂粉体塗装仕上 ベルト チェア類の座面には軟質塩化ビニールを使用しています。伸縮性、弾力性に富んだ素材ですので座り心地がよく、長時間の使用にもたるみがおきません。」との記載、「7 NC-206¥31,500(本体価格¥30,000)W550×D630×SH385・H770mm 重量/3.0kg」との記載及び○の中に「積」の文字が記載された記号が存在する。

III.無効理由1
1.甲第5号証の1乃至甲第5号証の8、甲第12号証の1、甲第12号証の2から特定されるチェア
(1)甲第13号証のカタログと甲第5号証の1のカタログは、ともに株式会社ニチエスにより頒布され、型番「NC-206」のチェアを含む名称が「シエスタ」のチェアが掲載されたものであることからすると、甲第5号証の1のカタログに掲載された○の中に「積」の文字が記載された記号は甲第13号証の同じ記号と当然同じ内容(積み重ね可能な製品)を意味すると解される。
そうすると、甲第5号証の1に掲載され、○の中に「積」の文字が記載された記号で説明された「型番NC-206」のチェアは積み重ね可能な製品といえる。
以上によれば、甲第5号証の1のア?甲5の1のウの記載からして、「SIESTA chair シエスタ<チェア>」の1つとして、甲5の1ウの構成を有し、積み重ねが可能であり、寸法が「W550×D630×SH385・H770mm」である、甲第5号証の1に掲載された「型番NC-206」のチェアが、株式会社ニチエスにより本件特許発明の出願前の1989年(平成元年)頃に販売されていたといえる。

(2)甲5の2のア?甲5の2クの記載からして、「DELUX CHAIR SIESTA/高級チェア・シエスタ」の1つとして、甲5の1ウの構成を有し、フレームがアルミニウムから作製され、寸法が「W550×D630×SH385・H770mm」である、甲第5号証の2に掲載された「型番NC-206」のチェアが、株式会社美濃利により本件特許発明の出願前の1994年(平成6年)頃に販売されていたといえる。

(3)甲5の3ア?甲5の3エの記載からして、「シェスタチェアー」として、甲5の1ウの構成を有し、フレームがアルミニウムから作製され、座を形成するベルトが軟質塩化ビニールから作製され、寸法が「W55cm×D63cm×H(座面)38.5cm、H77cm」であり、重量が3kgである、甲第5号証の3に掲載された「型番NC-206」のチェアが、株式会社エバニューにより本件特許発明の出願前の1998年(平成10年)頃に販売されていたといえる。

(4)甲5の8アの記載からして、甲第5号証の8は「シェスタSIESTA」の「型番NC-206」のチェア2脚が有限会社三輝により請求人である株式会社ナルコ岩井に平成24年10月7日頃販売された際の納品書であるといえる。
該納品書の「シェスタSIESTA/NC-206 ニチエス(株)製」との記載からして、上記販売された「型番NC-206」のチェアは株式会社ニチエスにより製造されたものといえる。
加えて、甲第5号証の7(「NC-206」と記載されたシールが付された箱)の甲5の7アの記載を参酌すると、株式会社ニチエスにより製造された「シェスタSIESTA」の「型番NC-206」のチェア2脚が有限会社三輝により請求人(株式会社ナルコ岩井)に本件特許発明の出願後の平成24年10月7日頃に販売されたといえる。

(5)甲13ア?甲13オの記載からして、「シエスタライン」の内の1つとして、甲5の1ウの構成を有し、フレームがアルミニウムから作製され、座を形成するベルトが軟質塩化ビニールから作製され、積み重ねが可能であり、寸法が「W550×D630×SH385・H770mm」であり、重量が3.0kgである、甲第13号証に掲載された「型番NC-206」のチェアが、株式会社ニチエスにより本件特許発明の出願後の2012年(平成24年)頃に販売されていたといえる。

(6)甲第5号証の4は、本件審判請求(平成25年3月19日)の準備のために、平成25年初旬頃にインターネットで取得されたウェブページと解される。
そうすると、甲5の4ア?ウの記載からして、「SIESTA」として、甲5の1ウの構成を有し、フレームがアルミニウムから作製され、座を形成するベルトが軟質塩化ビニールから作製され、寸法が「W550 D630 H770 SH385」あり、重量が3.0kgである、甲第5号証の4に掲載された「型番NC-206」のチェアが、ハストネット株式会社により本件特許発明の出願後の平成25年初旬頃に販売されていたといえる。

(7)以上によれば、本件特許発明の出願前の平成元年頃に株式会社ニチエスにより販売されていた甲第5号証の1に掲載の「型番NC-206」のチェア、本件特許発明の出願前の平成6年頃に株式会社美濃利により販売されていた甲第5号証の2に掲載の「型番NC-206」のチェア及び本件特許発明の出願前の平成10年末頃に株式会社エバニューにより販売されていた甲第5号証の3に掲載の「型番NC-206」のチェアは、その名称(SIESTA、シエスタ)、型番(NC-206)、構成(甲5の1ウの構成)、寸法(W550×D630×SH385・H770mm)が共通すること、本件特許発明の出願後の平成24年10月7日頃に販売された「シェスタSIESTA」の「型番NC-206」のチェアが株式会社ニチエスにより製造されていたことを総合すると、株式会社ニチエスにより製造された同一の製品であるといえる。
そして、株式会社ニチエス、株式会社美濃利、株式会社エバニューによる甲第5号証の1?3のカタログは、同一の「型番NC-206」のチェアについて、各社が強調したい点が記載されていると解されるから、株式会社ニチエスにより製造された「型番NC-206」のチェアは、甲第5号証の1?3のカタログに記載された構成、材質、機能、寸法、重量に係る事項を全て有するものといえる。
そうすると、本件特許発明の出願前に株式会社ニチエス、株式会社美濃利、株式会社エバニューにより販売されていた、甲第5号証の1?3に掲載の株式会社ニチエスにより製造された「型番NC-206」のチェアは、甲5の1ウの構成を有し、フレームがアルミニウムから作製され、座を形成するベルトが軟質塩化ビニールから作製され、積み重ねが可能であり、寸法が「W550×D630×SH385・H770mm」であり、重量が3kgであったといえる。

(8)本件特許発明の出願後の平成24年頃に株式会社ニチエスにより販売されていた甲第13号証に掲載の「型番NC-206」のチェア及び本件特許発明の出願後の平成25年初旬頃にハストネット株式会社により販売されていた甲第5号証の4に掲載の「型番NC-206」のチェアも、甲第5号証の1?3に掲載の「型番NC-206」のチェアと、その名称(SIESTA、シエスタ)、型番(NC-206)、構成(甲5の1ウの構成)、フレーム(支持部材)がアルミニウムから作製されていること、座を形成するベルトが軟質塩化ビニールから作製されていること、積み重ねが可能であること、寸法(W550×D630×SH385・H770mm)、重量(3kg)が共通し、平成元年から平成25年初旬頃の間に「型番NC-206」のチェアの設計が変更されたと解すべき事情も見出せなことを総合すると、株式会社ニチエスにより製造された甲第5号証の1?3に掲載の「型番NC-206」のチェアと同一の製品であるといえる。
そして、審判事件弁駁書に添付された甲第12号証の1に示されたチェアは、請求人が平成24年10月7日頃に購入した、株式会社ニチエスにより製造された「型番NC-206」のチェアと解するのが合理的であるから、甲第12号証の1に示されたチェアも、ほぼ同時期(平成24年から平成25年頃)に販売された甲第13号証に掲載の「型番NC-206」のチェア及び甲第5号証の4に掲載の「型番NC-206」のチェアと同様に、株式会社ニチエスにより製造された甲第5号証の1?3に掲載の「型番NC-206」のチェアと同一の製品であるといえる。

(9)ところで、甲5の2ウの「今スポーツ施設のプールに求められるのはリゾート感覚といった新しい価値。そのためにもプールサイドの備品にはもっと気を配りたい。」との記載、甲5の3ウの「プールサイド用品」との記載及び「シエスタ」が「スペインなどで、昼食後にとる昼寝。」を意味する(広辞苑第6版)ことからして、株式会社ニチエスにより製造された甲第5号証の1?3に掲載の名称が「シエスタ」である「型番NC-206」のチェアは、プールサイド等でリラックスして座るためのものといえる。
このことは、甲5の4アの「【NC?206】ニチエス(NICHIESU)プールサイドファニチャー卸販売 プールサイドファニチャーNC206-ニチエス(NICHIESU)」との記載や甲13オの「伸縮性、弾力性に富んだ素材ですので座り心地がよく、長時間の使用にもたるみがおきません。」との記載からも裏付けられる。
そして、人がリラックスしてチェアに座る場合、人は姿勢を正して両手、両足を前で揃えたりせず、両腕をそれぞれ身体の両側に沿って自然に伸ばすようになることは明らかだから、甲第12号証の1に示された、人が両手、両足を前で揃え姿勢を正しくした状態で背もたれに凭れてチェアに座る態様や人が両手、両足を前で揃え姿勢を正しくした状態で背もたれに凭れないでチェアに座る態様は、株式会社ニチエスにより製造された甲第5号証の1?3に掲載の「型番NC-206」のチェアにおいて通常予定されていない座り方であって、「型番NC-206」のチェアに人がリラックスして座った場合、ハの字状に配置された一対の第一脚部の山形の頂部は、身体の両側に沿って自然に伸ばされた両腕を支える肘掛けの機能を奏することは明らかである。
そうすると、本件特許発明の出願前に販売されていた、甲第5号証の1?3に掲載の「型番NC-206」のチェアは、甲第12号証の1に示されたチェアと株式会社ニチエスにより製造された同一の製品であるから、甲第12号証の1に示されたチェアと同様、ハの字状に配置された第一脚部の山形の頂部の高さが座面から約15cmであるといえるものの、該頂部は肘掛けの機能を奏するものと解される。
加えて、チェアを積み重ねた状態を示す甲第5号証の5のeの写真や甲第5号証の6の図を検討しても、甲第5号証の1?3に掲載の「型番NC-206」のチェアを「垂直方向に安定して」積み重ねが可能なものとまで解すべき根拠は見出せない。

(10)以上の事項を総合すれば、株式会社ニチエスにより製造された、甲第5号証の1乃至甲第5号証の8、甲第12号証の1、甲第12号証の2から特定される次のとおりの発明(以下「シエスタチェア発明」という。)に係る「型番NC-206」のチェアが、本件特許発明の出願前に日本国内において、株式会社ニチエス、株式会社美濃利、株式会社エバニューにより販売されていたといえる。
「平行なアルミニウム製の円柱状フレームの間に複数の塩化ビ二-ル製ベルトを張り渡すことにより連続して形成された座と背凭れと、前記座を支えるアルミニウム製の円柱状フレームとからなるプール等でリラックスして座るチェアであって、前記座を支えるアルミニウム製の円柱状フレームが、
前記座の左右両側部において対向してハの字状に配置された一対の第一脚部と、一方の第一脚部の先端部と、前記座をはさんで対向する他方の第一脚部の先端部とを連結する一対の第二脚部とからなる脚部と、
前記座の左右両側部から座面より上方へ15cm突出するとともに肘掛けの機能を奏する、前記ハの字状に配置された第一脚部の上端部を連結する山形の頂部
とからなる積み重ねが可能なチェア。」

2.対比
訂正された請求項1に係る特許発明とシエスタチェア発明とを対比する。
シエスタチェア発明の「平行なアルミニウム製の円柱状フレームの間に複数の塩化ビニール製ベルトを設けることにより連続して形成された座」は訂正された請求項1に係る特許発明の「座」に相当し、シエスタチェア発明の「座を支えるアルミニウム製の円柱状フレーム」は訂正された請求項1に係る特許発明の「座を支える支持部材」に相当する。
シェスタチェア発明の「プール等でリラックスして座るチェア」と訂正された請求項1に係る特許発明の「寺院用スツール」とは、「椅子」である点で一致する。
シエスタチェア発明の「前記座の左右両側部から座面より上方へ15cm突出するとともに肘掛けの機能を奏する、前記ハの字状に配置された第一脚部の上端部を連結する山形の頂部」と訂正された請求項1に係る特許発明の「前記座の左右両側部から座面より上方へ肘が当たらない突出高さで突出し、前記座から安全に立ち上がるために握られる頂部」とは、「前記座の左右両側部から座面より上方へ突出する頂部」である点で一致する。

以上によれば、訂正された請求項1に係る特許発明とシエスタチェア発明とは次の点で一致する。
「座と、該座を支える支持部材とからなる椅子であって、前記支持部材が、
前記座の左右両側部において対向してハの字状に配置された一対の第一脚部と、一方の第一脚部の先端部と、前記座をはさんで対向する他方の第一脚部の先端部とを連結する一対の第二脚部とからなる脚部と、
前記座の左右両側部から座面より上方へ突出する頂部
とからなる積み重ねが可能なチェア。」

そして、両者は、次の点で相違する。

(相違点1)
訂正された請求項1に係る特許発明では、
「椅子」が、「座と、該座を支える支持部材とからなる『寺院用スツール』」であって、
「頂部」が、「前記座の左右両側部から座面より上方へ『肘が当たらない突出高さで』突出し、『前記座から安全に立ち上がるために握られる』頂部」であるのに対して、
シエスタチェア発明では、
「椅子」が、「平行なアルミニウム製の円柱状フレームの間に複数の塩化ビニール製ベルトを設けることにより連続して形成された座と背凭れと、前記座を支えるアルミニウム製の円柱状フレームとからなる『プール等でリラックスして座るチェア』」であって、
「頂部」が、「前記座の左右両側部から座面より上方へ『15cm』突出するとともに『肘掛けの機能を奏する』、前記ハの字状に配置された一対の第一脚部の上端部を連結する山形の頂部」である点。

(相違点2)
「椅子」が、
訂正された請求項1に係る特許発明では、「『垂直方向に安定して』積み重ねが可能」であるのに対して、
シエスタチェア発明では、「積み重ねが可能」である点。

3.判断
(相違点1)
(1)甲第5号証の1?甲第5号証の8、甲第12号証の1、甲第12号証の2をみても、シエスタチェア発明から背凭れを取り除き、座の左右の山形の頂部を「肘が当たらない突出高さで突出」するように構成することの示唆は見いだせない。
そもそも、シエスタチェア発明は、前記「1(9)」で説示したように、プールサイド等で、身体を、伸縮性、弾性力に富んだ塩化ビニール製のベルトで連続して形成した座と該座に背凭れに凭せ掛け、両腕を左右の山形の頂部に載せて、つまり肘を掛けることにより、リラックスして座るものといえる。
そうすると、仮にシエスタチェア発明から背凭れを取り除き、座の左右の山形の頂部を「肘が当たらない突出高さで突出」するように構成すると、リラックスして座ることができなくなるから、シエスタチェア発明を、左右の山形の頂部が「肘が当たらない突出高さで突出」する背凭れの無い腰掛け、つまりスツールとすることには、阻害要因が存在するというべきである。
以上によれば、訂正された請求項1に係る特許発明の相違点1の発明特定事項は、当業者といえども、甲第5号証の1乃至甲第5号証の8、甲第12号証の1、甲第12号証の2から特定されるシエスタチェア発明に基いて容易に想到することができたものではない。
そして、訂正された請求項1に係る特許発明は上記発明特定事項を備えることにより全文訂正明細書に記載された効果を奏することができるものである。
したがって、訂正された請求項1に係る特許発明は、相違点2の容易想到性について検討するまでもなく、当業者といえども、甲第5号証の1乃至甲第5号証の8、甲第12号証の1、甲第12号証の2から特定される、本件特許発明1の出願前に日本国内において販売されたニチエス株式会社製造の「型番NC-206」のチェアに基いて容易に発明をすることができたものではない。

(2)請求人は、通常各甲第5号証から特定されるチェアは家屋内外のデッキチェアとして使用されることも多い旨主張する。
しかしながら、仮に各甲第5号証から特定されるチェアがデッキチェアであるとしても、リラックスして座るものであることにかわりはないから、請求人の上記主張は、以上説示した各甲第5号証から特定されるチェアに基づく容易想到性についての検討結果を左右するものではない。

4.無効理由1についてのまとめ
以上のとおり、訂正された請求項1に係る特許発明は、甲第5号証の1乃至甲第5号証の8、甲第12号証の1、甲第12号証の2から特定される、本件特許発明の出願前に日本国内において販売されたニチエス株式会社製造の「型番NC-206」のチェアに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、訂正された請求項1に係る特許発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、訂正された請求項1に係る特許発明の特許についての無効理由1は理由がない。

IV.無効理由2
1.対比
訂正された請求項1に係る特許発明と甲6発明とを対比する。
甲6発明の「寺院用いす」は、背凭れの無い腰掛けといえるから、訂正された請求項1に係る特許発明の「寺院用スツール」に相当する。

そうすると、訂正された請求項1に係る特許発明と甲6発明とは次の点で一致する。
「座と、該座を支える支持部材とからなる寺院用スツールであって、前記支持部材が、
前記座の左右両側部において対向してハの字状に配置された一対の第一脚部と、一方の第一脚部の先端部と、前記座をはさんで対向する他方の第一脚部の先端部とを連結する一対の第二脚部とからなる脚部
とからなる垂直方向に安定して積み重ねが可能な寺院用スツール。」

そして両者は次の点で相違する。
(相違点3)
訂正された請求項1に係る特許発明は、「前記座の左右両側部から座面より上方へ肘が当たらない突出高さで突出し、前記座から安全に立ち上がるために握られる頂部」を有するのに対して、
甲6発明は、上記「頂部」を有していない点。

2.判断
(相違点3)
(1)意匠公報である甲第6号証に記載された「いす」は、甲6発明の構成を有することにより、「いす」として視覚を通じて美観を起こさせることを目的としたものであって、甲第6号証には、甲第6号証に記載された「いす」に係る甲6発明の構成を変更することの示唆は見出せない。

(2)甲第5号証の1乃至甲第5号証の8、甲第12号証の1、甲第12号証の2から特定されるシエスタチェア発明は、「前記座の左右両側部から座面より上方へ15cm突出し、前記ハの字状に配置された第一脚部の上端部を連結する山形の頂部」を有する。
しかしながら、シエスタチェア発明は「プール等でリラックスして座るチェア」であって、年配者などが座る「寺院用スツール」ではなく、甲第5号証の1乃至甲第5号証の8、甲第12号証の1、甲第12号証の2には、シエスタチェア発明の上記構成を甲6発明に適用することの示唆は見出せない。
しかも、シエスタチェア発明の「山形の頂部」は、あくまでも背凭れのある椅子を前提として「肘掛けの機能」を持たせたものといえるから、このようなシエスタチェア発明の「山形の頂部」に係る上記構成を甲6発明に適用しても、相違点3の「肘が当たらない」「頂部」に係る構成とはなり得ない。

(3)甲第7号証には、「前記座の左右両側部より上方へ突出し、前記ハの字状に配置された第一脚部の上端部を連結する山形の頂部」を有する「小児用折畳腰掛」に係る甲7発明が記載されている。
しかしながら、意匠公報である甲第7号証に記載された「小児用折畳腰掛」は、甲7発明の構成を有することにより、「小児用折畳腰掛」として視覚を通じて美観を起こさせることを目的としたものであって、甲第7号証には、「山形の頂部」が「肘に当たらない」ものと解すべき根拠や、甲第7号証に記載された「小児用折畳腰掛」に係る甲7発明の上記構成を甲6発明に適用することの示唆は見出せない。
むしろ、「小児用折畳腰掛」である甲7発明の「前記座の左右両側部より上方へ突出」する「山形の頂部」は、腕の短い小児の肘が当たって、「肘掛けの機能を奏する」と解するのが自然である。
そうすると、このような甲7発明の「山形の頂部」に係る上記構成を甲6発明に適用しても、相違点3の「肘が当たらない」「頂部」に係る構成とはなり得ない。

(4)甲第8号証には、「前記座の左右両側部から座面より上方へ突出し、前記ハの字状に配置された第一脚部の上端部を連結する山形の頂部」を有する「いす」に係る甲8発明が記載され、甲第9号証には、「前記座の左右両端部から座面より上方へ突出し、前記ほぼ平行に配置された第一脚部の上端部を連結する台形状の頂部」を有する「いす」に係る甲9発明が記載されている。
しかしながら、意匠公報である甲第8号証、甲第9号証に記載された「いす」は、各甲号証に記載された構成を有することにより、「いす」として視覚を通じて美観を起こさせることを目的としたものであって、甲第8号証、甲第9号証には、「山形の頂部」、「台形状の頂部」が「肘が当たらない」ものと解すべき根拠や、甲第8号証、甲第9号証に記載された「いす」に係る甲8発明、甲9発明の上記各構成を甲6発明に適用することの示唆は見出せない。

(5)甲第10号証には、「前記座の左右両側部から座面より上方へ突出し、前記ハの字状に配置された第一脚部の上端部を連結する山形の頂部」を有する「重ね椅子」に係る甲10発明が記載されているものの、甲第10号証には、甲10発明の上記構成を甲6発明に適用することの示唆は見出せない。
しかも、甲10発明は背凭れのある椅子であることからして、甲10発明の「前記座の左右両側部から座面より上方へ突出」する「山形の頂部」は「肘掛けの機能を奏する」と解するのが自然である。
そうすると、このような背凭れのある椅子を前提として「肘掛けの機能」を持たせた甲10発明の「山形の頂部」に係る上記構成を甲6発明に適用しても、相違点3の「肘が当たらない」「頂部」に係る構成とはなり得ない。

(6)甲第11号証には、「前記座の左右両側部から離間するとともに座面より上方へほんの僅か突出し、前記ハの字状に配置された第一脚部の上端部を連結する山形の頂部」を有する「椅子」に係る甲11発明が記載されているものの、甲第11号証には、甲11発明の上記構成を甲6発明に適用することの示唆は見出せない。
しかも、甲11発明の「山形の頂部」は、「前記座の左右両側部から離間するとともに座面より上方へほんの僅か突出し」ているにすぎず、人が「座から安全に起ち上がるために握られる頂部」として機能すると解すべき根拠は見出せない。
そうすると、このような甲11発明の「山形の頂部」に係る上記構成を甲6発明に適用しても、相違点3の「前記座から安全に立ち上がるために握られる頂部」に係る構成とはなり得ない。

(7)以上によれば、「いす」に係る甲6発明に、甲第5号証の1乃至甲第5号証の8、甲第12号証の1、甲第12号証の2から特定される「シエスタチェア発明」、甲第7号証?甲第11号証に記載された、「小児用折畳椅子」、「いす」、「重ね椅子」、「椅子」に係る甲7発明?甲11発明の「前記座の左右両側部から座面より上方へ突出する山形の頂部」や「前記座の左右両端部から座面より上方へ突出する台形状の頂部」の構成を適用する動機付けは見出せず、甲7発明?甲11発明の「山形の頂部」や「台形状の頂部」に係る構成を甲6発明に適用しても、相違点3の「肘が当たらない」「頂部」に係る構成や「前記座から安全に立ち上がるために握られる頂部」に係る構成になるとはいえない。
しかも、甲7発明?甲11発明の「山形の頂部」や「台形状の頂部」は、「前記ハの字状に配置された第一脚部の上端部」や「前記ほぼ平行に配置された第一脚部の上端部」を連結するものであるから、仮に甲6発明に、「シエスタチェア発明」、甲7発明?甲11発明の「山形の頂部」や「台形状の頂部」に係る構成を適用したとすると、甲6発明に該構成を適用したものは、甲6発明の「前記ハの字状に配置された一対の第一脚部の各上端」に「座面より上方へ突出」する「山形の頂部」や「台形状の頂部」を継ぎ足したものとなる結果、「前記ハの字状に配置された一対の第一脚部の前記座面より突出していない各上端と前記連結部材の各突状部が接触すること」ができず、「垂直方向に安定して積み重ねが可能な」ものではなくなる。
加えて、意匠公報(甲第6号証)に示された甲6発明は、「いす」として視覚を通じて美観を起こさせることを目的として、座面より上に突出部が存在しないように構成したものと解されるところ、甲6発明に、「シエスタチェア発明」、甲7発明?甲11発明における「座面より上方へ突出」する「山形の頂部」や「台形状の頂部」の構成を適用すれば、「いす」として視覚を通じて美観を起こさせることを目的とした上記構成を損なうものとなる。
そうすると、甲6発明に甲7発明?甲11発明における上記構成を適用することには、動機付けが存在せず、むしろ阻害要因が存在するというべきである。
したがって、訂正された請求項1に係る特許発明の相違点3の発明特定事項は、当業者といえども、甲6発明と、甲第5号証の1乃至甲第5号証の8、甲第12号証の1、甲第12号証の2から特定されるシエスタチェア発明、又は甲7発明?甲11発明に基いて容易に想到することができたものではない。
そして、訂正された請求項1に係る特許発明は上記発明特定事項を備えることにより全文訂正明細書に記載された効果を奏することができるものである。

(8)以上のとおり、訂正された請求項1に係る特許発明は、本件特許発明の出願前に日本国内において頒布された甲第6号証と、甲第5号証の1乃至甲第5号証の8、甲第12号証の1、甲第12号証の2から特定される、本件特許発明の出願前に日本国内において販売されたニチエス株式会社製造の「型番NC-206」のチェア、又は本件特許発明の出願前に日本国内において頒布された甲第7号証乃至甲第11号証のいずれかとの組み合わせに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(9)請求人は、各甲第5号証から特定されるチェア、甲第7号証乃至甲第11号証のいす等は頂部を有するものであって、該頂部は座面から安全に起ち上がるために握ることができるものであり、特に甲第8号証、甲第9号証、甲第11号証のいす等の頂部は明らかに肘が当たらない突出高さで突出しているところ、各甲第5号証から特定されるチェア、甲第7号証乃至甲第11号証のいす等の頂部を、頂部の無い甲6発明に適用することは当業者が容易に想到し得る旨主張する。
しかしながら、各甲第5号証、甲第7号証乃至甲第11号証を検討しても、請求人の上記主張を裏付ける具体的記載や、合理的根拠は見出せず、しかも、甲6発明に甲7発明?甲11発明における頂部に係る構成を適用することには、動機付けが存在せず、阻害要因が存在することは以上説示したとおりである。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

3.無効理由2についてのまとめ
以上のとおり、訂正された請求項1に係る特許発明は、本件特許発明の出願前に日本国内において頒布された甲第6号証と、甲第5号証の1乃至甲第5号証の8、甲第12号証の1、甲第12号証の2から特定される、本件特許発明の出願前に日本国内において販売されたニチエス株式会社製造の「型番NC-206」のチェア、又は本件特許発明の出願前に日本国内において頒布された甲第7号証乃至甲第11号証のいずれかとの組み合わせに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、訂正された請求項1に係る特許発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、訂正された請求項1に係る特許発明の特許についての無効理由2は理由がない。

V.無効理由3について
訂正された請求項2に係る特許発明は、訂正された請求項1に係る特許発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である。
そうすると、訂正された請求項2に係る特許発明は、訂正された請求項1に係る特許発明の特許についての無効理由1の検討において説示したのと同様の理由により、甲第5号証の1乃至甲第5号証の8、甲第12号証の1、甲第12号証の2から特定される、本件特許発明の出願前に日本国内において販売されたニチエス株式会社製造の「型番NC-206」のチェアに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、訂正された請求項2に係る特許発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、訂正された請求項2に係る特許発明の特許についての無効理由3は理由がない。

VI.無効理由4について
訂正された請求項2に係る特許発明は、訂正された請求項1に係る特許発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である。
そうすると、訂正された請求項2に係る特許発明は、訂正された請求項1に係る特許発明の無効理由2について示したのと同様の理由により、本件特許発明の出願前に日本国内において頒布された甲第6号証と、甲第5号証の1乃至甲第5号証の8、甲第12号証の1、甲第12号証の2から特定される、本件特許発明の出願前に日本国内において販売されたニチエス株式会社製造の「型番NC-206」のチェア、又は本件特許発明の出願前に日本国内において頒布された甲第7号証乃至甲第11号証のいずれかとの組み合わせに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、訂正された請求項2に係る特許発明は、無効理由2の理由に加えて、甲第5号証の1乃至甲第5号証の8、甲第12号証の1、甲第12号証の2から特定される、本件特許発明の出願前に日本国内において販売されたニチエス株式会社製造の「型番NC-206」のチェアのパイプ支持部材の構成を採用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
以上によれば、訂正された請求項2に係る特許発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、訂正された請求項2に係る特許発明の特許についての無効理由4は理由がない。

第7 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号又は第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、特許法第134条の2第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
そして、訂正された請求項1,2に係る特許発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、また、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでもなく、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、訂正された請求項1,2に係る特許発明の特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
寺院用スツール
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】座と、該座を支える支持部材とからなる寺院用スツールであって、前記支持部材が、
前記座の左右両側部において対向してハの字状に配置された一対の第一脚部と、一方の第一脚部の先端部と、前記座をはさんで対向する他方の第一脚部の先端部とを連結する一対の第二脚部とからなる脚部と、
前記座の左右両側部から座面より上方へ肘が当たらない突出高さで突出し、前記座から安全に立ち上がるために握られる頂部
とからなる垂直方向に安定して積み重ねが可能な寺院用スツール。
【請求項2】前記支持部材が、2本の金属パイプ材から作製されており、該金属パイプ材はそれぞれ逆U字状に曲げられるとともに、自由端側がL字状に曲げられており、一方の金属パイプ材の自由端が他方の金属パイプ材の自由端に接合されてなる請求項1記載のスツール。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は寺院用スツールに関する。さらに詳しくは、安全に立ち上がれるとともに、安定した収納ができる寺院用スツールに関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来より、たとえば寺院などにおいて法会などの参列者が座るスツールまたは椅子として、フットスツール、折りたたみ椅子、背付き椅子が用いられている。
【0003】
前記フットスツールでは、積み重ねて収納することができるが、参列者が、とくに年配者、障害者および子供の場合、立ち上がるときに身体を支える部分がないので、立ち上がりにくく、足元がふらつきやすくなる。また該フットスツールでは、4本の脚であるため、室内で使用すると、畳を4点で支えることになり、畳みズレを起こすという問題がある。また前記折りたたみ椅子では、折り畳んで縦にして複数収納するときや、横にして積み重ねて収納するときに、各椅子を支える部材がないとすぐ横ずれを起こしてしまう。そして、立ち上がるときに身体を支える部分がないので、前記フットスツールと同様に、立ち上がりにくく、足元がふらつきやすくなる。さらに背付き椅子の場合、肘掛けがない椅子と肘掛けがある椅子があるが、肘掛けがない椅子では、積み重ねて収納することができるが、立ち上がるときに身体を支える部分がないので、前記フットスツールおよび折りたたみ椅子と同様に、立ち上がりにくく、足元がふらつきやすくなる。また4本の脚により、前記フットスツールと同様に、室内における使用では畳みズレを起こすという問題がある。一方、肘掛けがある椅子では、年配者などが安全に立ち上がれるようになるが、4本の脚であるため、室内における使用では畳みズレを起こすという問題がある。
【0004】
本発明は、叙上の事情に鑑み、年配者などが安全に立ち上がれるとともに、安定して積み重ねて収納することができ、室内使用における畳みズレを防止することができるスツールを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の寺院用スツールは、座と、該座を支える支持部材とからなる寺院用スツールであって、前記支持部材が、前記座の左右両側部において対向してハの字状に配置された一対の第一脚部と、一方の第一脚部の先端部と、前記座をはさんで対向する他方の第一脚部の先端部とを連結する一対の第二脚部とからなる脚部と、前記座の左右両側部から座面より上方へ肘が当たらない突出高さで突出し、前記座から安全に立ち上がるために握られる頂部とからなり、垂直方向に安定して積み重ねが可能であることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて本発明のスツールを説明する。
【0007】
図1は本発明のスツールの一実施の形態を示す正面図、図2は図1におけるスツールの側面図、図3は図1におけるスツールの底面図、図4は図1におけるX-X線断面図、図5は図1におけるスツールの積み重ね状態を示す側面図、図6は本発明のスツールの他の実施の形態を示す正面図、図7は図6におけるスツールの側面図、図8は図6におけるスツールの積み重ね状態を示す側面図である。
【0008】
図1?2に示すように、本発明の一実施の形態にかかわるスツールAは、座1と、該座1を支える支持部材2とから構成されている。
【0009】
前記座1としては、クッション性があるとともに、軽量で耐久性があれば、本発明においては、とくに限定されるものではないが、たとえば座面1a側には、板とその上に敷かれるポリウレタン発泡体とを皮3で覆うとともに、図3に示されるように、座面1aの反対側には、裏張り材4を貼り付けたものを用いることができる。
【0010】
前記支持部材2は、脚部5と頂部6とからなり、前記脚部5は、さらに前記座1の左右両側部において対向してハの字状に配置された一対の第一脚部5aと、一方の第一脚部5aの先端部と、前記座1をはさんで対向する他方の第一脚部5aの先端部とを連結する一対の第二脚部5bとからなる。この支持部材2は、たとえば所定の強度を有するアルミニウム管またはステンレス鋼鋼管などの2本のパイプ材を、それぞれ逆U字状に曲げるとともに、自由端側をL字状に曲げる。ついで図3?4に示されるように、当該折曲パイプ材のそれぞれに形成した貫通横孔7に前記座1を載せる2本の補助支持バー8を差し込みながら、図1?2に示されるように、各折曲パイプ材における前記頂部6が座1の左右両側部から座面1aより上方へ突出するように、前記ハの字状の第一脚部5aを前記座1の左右両側部に対向して配置する。そののち、該折曲パイプ材における脚部5の第二脚部5b(接地部分)の自由端を略水平方向に突き合わせ、ついで前記補助支持バー8の端面穴9にビス10を、該ビス頭がパイプ外周面内に入るように捩じ込み、そして継目11を溶着して作製することができる。前記座1は、補助支持バー8に予め支持金具12を用いて裏張り材4と板にビス止めされていてもよいし、補助支持バー8を前記折曲パイプ材に組み付けたのちに、支持金具12を用いて裏張り材4と板にビス止めしてもよい。また前記支持部材2には、サビ止めと美観のために、塗装を施すことができる。
【0011】
なお、本実施の形態では、支持部材が2本のパイプ材をそれぞれ折り曲げて作製されているが、本発明においては、これに限定されるものではなく、たとえば1本のパイプ材を折り曲げて作製することもできる。または支持部材としては、頂部とハの字状の第一脚部5aとをそれぞれ1本のパイプ材を折り曲げて作製したのち、脚部の第二脚部5bを別のパイプ材によりコの字状に折り曲げて作製し、ついで該第二脚部5bのパイプ材の自由端と前記ハの字状の第一脚部5aの自由端とを溶着して作製することもできる。この場合、第一脚部のパイプ材と接地部分である第二脚部のパイプ材との継目は、モーメントが掛かりにくい接地側に設けるのが好ましい。また前記第二脚部としては、各第一脚部の先端部同士を連結するとともに、積み重ねて収納するのを可能ならしめるために、座の中心を通る中心線に対して外方に突出する突出部を有する構造とすることもできる。さらにパイプ材に代えて木材から作製することもできる。また本実施の形態では、支持部材が脚部と頂部とを一体にして作製されているが、本発明においては、これに限定されるものではなく、別々に作製することもできる。
【0012】
本実施の形態では、頂部6が座1の左右両側部から座面1aより上方へ突出するようにされているため、年配者などが立ち上がるときに、左右の頂部6をそれぞれ左右の手で握り、該頂部6を支点に押し下げると、その反作用で体が持ち上がるので、年配者などは安全に、かつ、容易に立ち上がることができる。前記頂部6の突出高さとしては、肘が当たらないとともに、頂部6を握れる程度の高さであれば、適宜選定されるが、たとえば5?20cm、好ましくは10cm位にすることができる。なお、前記頂部6を握るため、該頂部6には、握りやすいグリップ部材または滑り止め部材などを設けるのが好ましい。
【0013】
また図5に示すように、スツールAの脚部6は側面から見ると、ハの字状を呈しているため、積み重ねたときには、上方のスツールAの脚部6と下方のスツールAの脚部6とが嵌合しやすい。そのため、複数個のスツールAを安定して垂直方向に積み重ねて収納することができ、収納場所をとることがない。
【0014】
さらに前記脚部の接地部分である第二脚部が略水平方向に連結されているため、室内使用の場合、畳みとの接触が線接触となり、畳みズレを起こす惧れがない。
【0015】
つぎに本発明の他の実施の形態を説明する。本実施の形態にかかわるスツールBでは、図6?7に示すように、前記実施の形態にかかわるスツールAよりも、頂部21が大きく曲げられ、脚部20の接地面から座面1aまでの座高が高くされている。
【0016】
本実施の形態においても、前記実施の形態と同様に、年配者などは安全に、かつ、容易に立ち上がることができるとともに、図8に示すように、複数個のスツールBを安定して垂直方向に積み重ねて収納することができ、収納場所をとることがない。また脚部の第二脚部が略水平方向に連結されているため、畳みズレを防止することができる。
【0017】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明のスツールによれば、極めてシンプルな構成によって、年配者などが安全に立ち上がれるとともに、安定して積み重ねて収納することができ、また畳みズレを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】
本発明のスツールの一実施の形態を示す正面図である。
【図2】
図1におけるスツールの側面図である。
【図3】
図1におけるスツールの底面図である。
【図4】
図1におけるX-X線断面図である。
【図5】
図1におけるスツールの積み重ね状態を示す側面図である。
【図6】
本発明のスツールの他の実施の形態を示す正面図である。
【図7】
図6におけるスツールの側面図である。
【図8】
図6におけるスツールの積み重ね状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 座
1a 座面
2 支持部材
5 脚部
5a 第一脚部
5b 第二脚部
6 頂部
8 補助支持バー
A、B スツール
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2013-11-15 
結審通知日 2013-11-19 
審決日 2013-12-06 
出願番号 特願平10-252413
審決分類 P 1 113・ 851- YAA (A47C)
P 1 113・ 85- YAA (A47C)
P 1 113・ 537- YAA (A47C)
P 1 113・ 121- YAA (A47C)
P 1 113・ 855- YAA (A47C)
P 1 113・ 854- YAA (A47C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨岡 和人  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 蓮井 雅之
松下 聡
登録日 2003-10-03 
登録番号 特許第3479455号(P3479455)
発明の名称 寺院用スツール  
代理人 西教 圭一郎  
代理人 玉田 修三  
代理人 河村 洌  
代理人 河村 洌  
代理人 藤森 洋介  
代理人 藤森 洋介  

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