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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B25B
管理番号 1284582
審判番号 不服2012-22787  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-19 
確定日 2014-02-06 
事件の表示 特願2006-546925「ねじジョイントの締付け用動力工具システム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月14日国際公開、WO2005/063448、平成19年 6月28日国内公表、特表2007-516852〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本件発明
本願は2004年12月27日の国際出願(パリ条約に基づく優先権主張2003年12月29日、スエーデン)であって、平成18年8月16日に国際出願翻訳書が提出され、平成22年8月6日付拒絶理由通知に対しては平成23年2月14日に意見書と手続補正書が提出され、さらに平成23年7月7日付拒絶理由通知に対しては平成24年1月13日に意見書と手続補正書が提出されたが、平成24年7月9日付で本願を拒絶すべき旨の査定がなされたものである。これに対し、該査定の取消を求めて平成24年11月19日に本件審判が請求された後、平成24年12月28日に請求の理由を補充する手続補正書が提出された。その後、当審による平成25年3月6日付拒絶理由通知に対して平成25年7月16日に意見書が提出されている。
本願の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、平成24年1月13日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおり、次のものと認める。
「空気力インパルスレンチ(10)、及び目標トルクレベルの一つ以上の締付けパラメータの一つ又は複数の設定値を含む所望の締付け計画に従ってプログラム可能な制御ユニット(22)を有し、上記インパルスレンチ(10)がロータ(12)を備えた圧力空気駆動型モータ(11)と、モータのロータ(12)に接続した慣性駆動部材(14)を備えたインパルスユニット(13)と、モータ(11)に接続した圧力空気供給手段(25、26)とから成るねじジョイントの締付け用動力工具システムにおいて、
制御ユニット(22)に、上記慣性駆動部材(14)の角度運動を検出するようにされた角度エンコーダ(16)が接続され、
上記制御ユニット(22)が、締付け中に上記慣性駆動部材(14)の検出した角度運動に基づいて、各トルクインパルスにおける一つ以上の締付けパラメータの一つ又は複数の瞬時値を確認し、一つ又は複数の瞬時値を目標トルクレベルの設定された一つ又は複数のパラメータ値と比較する手段を備え、
前記制御ユニットは、1又は2以上の締付けパラメータの瞬時値が締付け目標レベルに到達するように、前記流量調節装置(26)が調整されて前記インパルスレンチ(10)の動力減が達成されるように配置され、また、
上記圧力空気供給手段(25、26)が制御ユニット(22)に接続され、そして締付け中に、制御ユニット(22)で決められたゼロとフルパワー流量との間の範囲でモータ(11)への圧力空気の流量を連続して調整するようにされた流量調整装置(26)を備えていることを特徴とする動力工具システム。」

2.当審の拒絶理由の概要
当審が平成25年3月6日付で通知した拒絶理由は、概略、本願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に日本国内または外国において頒布された、以下の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
刊行物1: 国際出願公開(WO,A1)02/083366号
(特表2004-522604号公報参照)
刊行物2: 特開昭62-271684号公報

3.刊行物に記載された発明または事項
3.1 刊行物1
刊行物1には以下の記載が見受けられる。なお、翻訳文として、特表2004-522604号公報の記載を参考として援用する。
a.(明細書第1ページ第3?10行)
「The invention relates to a method for determining the torque magnitude transferred to a threaded fastener at each one of a number of repeated torque impulses delivered to the fastener by an impulse tool, as well as a device for tightening threaded fasteners by repeated torque impulses, including means for determining the torque transferred to the fastener by determining the retardation magnitude of the rotating parts of the impulse tool.
(本発明は、衝撃工具によってネジ部品に送られる、多数の繰返しトルク衝撃の各一回ごとにネジ部品に伝えられるトルクの大きさを検知する方法と、繰返しトルク衝撃によってネジ部品を締める装置であって、衝撃工具の回転パーツの減速度の大きさを検知することによって、ネジ部品に伝わるトルクを検知する手段を具備するものに関する。)」
b.(同、第4ページ第15?26行)
「The torque delivering impulse tool schematically illustrated in Fig. 1 comprises a housing 10 with a handle 11, a throttle valve12, a pressure air inlet connection 13 and an exhaust air outlet 14. As illustrated in Fig. 2, the tool further comprises a pneumatic vane motor 20 with a rotor 21 and a stationary cylinder 22, a torque impulse generating pulse unit 23 with an output shaft 24 for connection to a threaded fastener 25 via a nut socket 26.
The pulse unit 23 consists of a cylindrical inertia drive member 27 which is rigidly connected to the motor rotor 21 and which contains a hydraulic fluid chamber 29.
(図1に概略が図示されたトルク伝達衝撃工具は、ハンドル11を具備したハウジング10と、スロットル弁12と、加圧空気入口接続部13と、排出空気出口14とを備えている。図2に示されているように、工具は更に、回転子21及び固定シリンダー22を具備した空気圧ベーンモーター20と、ナットソケット26を介してネジ部品25に接続する出力シャフト24を具備した、トルク衝撃発生パルスユニット23とを備えている。
パルスユニット23は、モーター回転子21に固く接続され、且つ作動液チャンバ29を収容した、円筒形の慣性駆動部材27から成っている。)」
c.(同、第5ページ第10行?第6ページ第2行)
「In order to detect the rotational movement and to be able to calculate the retardation magnitude of the rotating parts of the torque delivering tool, the inertia drive member 27 is provided with a ring element 35 of a resinous material which is magnetised in a large number of parallel bands 36 representing magnetic poles equidistantly distributed throughout the circumference of the ring element 35. Se Fig. 3a. As illustrated in Fig. 2, the ring element 35 is secured to the inertia drive member 27 by two screws 37 and forms a rigid unit with the inertia drive member 27, which means that the inertia moment of the ring element 35 contributes to the total inertia moment of the rotating parts of the tool.
The angle encoder further comprises a stationary sensor unit 38 which is located on a circuit board 39 and which is arranged to detect the rotation of the inertia drive member 29 as a movement of the magnetic bands 36 of the ring element 35 past the sensor unit 38. The circuit board 39 is secured to the tool housing 10 which also contains power supply means connected to the motor 20. The sensor unit 38 is arranged to deliver signals in response to the number of passing magnetised bands 36, and an external control unit 40 connected to the sensor unit 38. The control unit 40 includes calculating means for determining the retardation magnitude of the rotating parts from the signals received from the sensor unit 38 and from the total inertia moment value as a tool related constant.
(回転動作を検出し、且つトルク伝達工具の回転パーツの減速度の大きさを計算できるようにするため、慣性駆動部材27は、樹脂製材料のリング要素35を備えており、リング要素35は、リング要素35の周辺にかけて等しく配分された磁極を表す多数の並行バンド36で、磁化される。図3aを参照のこと。図2に示されているように、リング要素35は、二つのネジ37によって慣性駆動部材27に固定されていて、慣性駆動部材27とともに剛体ユニットを形成しており、それはリング要素35の慣性モーメントが、工具の回転パーツの総慣性モーメントに加わることを意味している。
更に角度エンコーダーは、固定センサーユニット38を備えており、それは回路基盤39に配置され、且つセンサーユニット38を通ってリング要素35の磁気バンド36が移動すると、慣性駆動部材の回転を検出するように配置されている。回路基盤39は、モーター20に接続された動力供給手段も収容した、工具ハウジング10に固定されている。センサーユニット38は、磁気バンド36が通る数に応答して、信号を送信するように配置されており、外部制御ユニット40が、センサーユニット38に接続されている。制御ユニット40は、センサーユニット38から受信した信号からと、工具に関連した定数として、総慣性モーメント値とから、回転パーツの減速度の大きさを決定するための、計算手段を具備している。)」
d.(同、第3ページ第17?24行)
「The delivered torque can be expressed by the formula:
M(t) = C_(J)・φ”(t) + M_(m)(t)
wherein M(t) is the delivered torque as a function of time,
C_(J)is a constant including the total inertia moment of the inertia drive member and those rotating parts of the tool forming a rigid unit with the inertia drive member,
φ”(t) is the retardation of the rotating parts as a function of time,
M_(m)(t) is the torque delivered by the motor as a function of time.
Since the output torque of the motor is relatively low and has no real influence on the installed torque, the most important factor is the dynamic torque which is dependent on the retardation magnitude and the total inertia moment of the inertia drive member and those rotating parts of the power tool rigidly connected to the drive member.
(伝達トルクは次の公式によって表すことができる:
M(t) = C_(J)・φ”(t) + M_(m)(t)
ここで
M(t)は時間の関数としての伝達トルクであり、
C_(J)は、慣性駆動部材と、慣性駆動部材と共に剛体ユニットを形成する工具のそれら回転パーツの総計の慣性モーメントを含む定数であり、
φ”(t)は、時間の関数としての回転部分の減速度であり、
M_(m)(t)は、時間の関数としてのモーターにより伝えられるトルクである。
モーターの出力トルクが、相対的に低く、加わるトルクに現実的な影響がないので、最も重要な要因は、減速度の大きさと、慣性駆動部材及び駆動部材に固く結合された動力工具のそれら回転部分との総計の慣性モーメントに依存する、動的トルクである。)」
そこで、技術常識を勘案しつつ上記を整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。
「外部制御ユニットを有するトルク伝達衝撃工具であって、上記トルク伝達衝撃工具が回転子を備えた空気圧ベーンモーターと、空気圧ベーンモーターの回転子に接続した慣性駆動部材を備えたトルク衝撃発生パルスユニットと、空気圧ベーンモーターに接続したスロットル弁と加圧空気入口接続部とから成るネジ部品を締める装置において、
外部制御ユニットに、上記慣性駆動部材の角度運動を検出するようにされた角度エンコーダが接続され、
上記外部制御ユニットが、締付け中に上記慣性駆動部材の検出した角度運動に基づいて、各トルク衝撃におけるネジ部品に伝えられるトルクの大きさを確認する手段を備えている、ネジ部品を締める装置。」

3.2 刊行物2
刊行物2には以下の記載が見受けられる。
a.(第2ページ右下欄第6行?第3ページ右上欄第6行)
「次にその作用について述べると、スタートスイッチ16を押すと、まず変速切換用電磁プランジャ5は変速ギヤを高速側の噛み合い位置に移動させ保持する。次に、制御用コンピュータ11により指令され、コントロール回路7および定電流回路8により制御された駆動電流がドライバ回路6よりナットランナ駆動用モータ1に供給されナットランナは回転を始める。ナットランナ駆動用モータ1の駆動力(トルク)はナットランナハウジング3に組込まれた減速ギヤを介してナットランナソケット4に伝わり、ナットまたはボルトの締付けが開始される。ナットまたはボルトの締付けに必要とする駆動力はナットまたはボルトの着座までは非常に小さな値であり、コントロール回路7および定電流回路8は高速モードでナットランナ駆動用モータには高い電圧の中の狭いパルスが印加される。
着座点に達すると、ナットまたはボルトの締付けに要するトルクが急増するが、コントロール回路7および定電流回路8による駆動電流が強制的に制御されていることにより、ナットランナ駆動用モータの回転数が低下する。この回転数の低下を回転速度減小検出回路9が認識し、制御用コンピュータ11に信号を送り込むことにより、制御用コンピュータ11は変速切換用電磁プランジャ5を作動させ変速ギヤを低速側の噛み合い位置に切換え、引き続き、コントロール回路7および定電流回路8に制御信号を送り、これらの回路を低速モードに切換え、幅の広いパルスでドライバ回路6を制御し、所定の締付けトルクに対応する着座後の本格的な締付けを続行させる。本格的な締付けが進み、所定のトルクに達した時点で、再び回転数は減小するので、回転速度減小検出回路9が信号をだし、これが締付け完了信号として制御用コンピュータ11へ入力され、制御用コンピュータ11は締付け完了時点における逆転可動、停止などの一連の制御信号をコントロール回路7、定電流回路8、駆動電流開閉制御回路17に送り込み、作業が完結する。」
b.(第4ページ左上欄第14行?右上欄第2行)
「第1図、第2図、第3図に示される各実施例では、ナットランナ駆動用モータ(駆動パワー)としてブラシレスDCモータ、直巻整流子電動機等の電動モータを想定しているが、電動モータの代りにエアモータ、あるいは油圧モータを使用することも可能であり、この場合は定電流制御の代りに空気圧、油圧等の流量を制御し、ナットランナ駆動トルクを回転数に無関係に設定トルク値に制御する必要がある。」
上記において、制御用コンピュータがプログラム可能であることは当業者にとって明白であり、制御用コンピュータは締付けトルクの増大による回転数の減小に応じてナットランナの動作を切り換えるため、「目標トルクレベルの一つ以上の締付けパラメータの一つ又は複数の設定値を含む所望の締付け計画に従ってプログラム可能」であるということができる。そして、所定の締付けトルクに達した時点で再び回転数が減少するということが、締付けトルクが所定値と比較してこれを上回ったことを表すことは、当業者が容易に理解し得るものである。
そこで技術常識を勘案しつつ上記を整理すると、刊行物2には次の事項が記載されていると認めることができる。
「動力式ナットランナにおいて、目標トルクレベルの一つ以上の締付けパラメータの一つ又は複数の設定値を含む所望の締付け計画に従ってプログラム可能な制御コンピュータを有し、ナットランナがエアモータを備え、
制御用コンピュータに、ナットランナソケットの角度運動を検出するようにされた回転位相検出センサが接続され、
上記制御用コンピュータが、締付け中に上記検出した角度運動に基づいて、一つ以上の締付けパラメータの一つ又は複数の瞬時値が目標トルクレベルの設定された一つ又は複数のパラメータ値と比較してこれを上回ったことを検出する手段を備え、
前記制御用コンピュータは、1又は2以上の締付けパラメータの瞬時値が締付け目標レベルに到達するように、締付け中に、前記エアモータへの流量を調節して前記ナットランナの動力減が達成されるように配置される、動力ナットランナ。」(以下、「刊行物2記載の事項」という。)

4.対比
本件発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「トルク伝達衝撃工具」、「トルク衝撃」、「空気圧ベーンモーター」、「回転子」、「トルク衝撃発生パルスユニット」が、前者の「空気力インパルスレンチ」、「トルクインパルス」「圧力空気駆動型モータ」、「ロータ」、「インパルスユニット」にそれぞれ相当することは明白であり、後者の圧力空気駆動型モータが「加圧空気入口接続部」を有することから、「圧力空気供給手段」に接続されていることは明白であり、該圧力空気供給手段がスロットル弁、すなわち「流量調整装置」を備えているということができる。また、後者において、「ネジ部品に伝えられるトルクの大きさ」は、「各トルクインパルスにおける一つ以上の締付けパラメータ」の一つであることは自明である。後者の「ネジ部品を締める装置」は「ねじジョイントの締付け用動力工具システム」と呼ぶことができるものである。そして、後者の「外部制御ユニット」は、慣性駆動部材の角度運動を検出する角度エンコーダに接続されて、各トルクインパルスにおける一つ以上の締付けパラメータの一つ又は複数を確認する手段を備える制御ユニットである限りにおいて、前者の「制御ユニット」と共通する。
したがって、本件発明と刊行物1記載の発明とは、以下の点において一致及び相違すると認められる。
<一致点>
「空気力インパルスレンチ、および制御ユニットを有し、上記インパルスレンチがロータを備えた圧力空気駆動型モータと、モータのロータに接続した慣性駆動部材を備えたインパルスユニットと、モータに接続した圧力空気供給手段とから成るねじジョイントの締付け用動力工具システムにおいて、
制御ユニットに、上記慣性駆動部材の角度運動を検出するようにされた角度エンコーダが接続され、
上記制御ユニットが、締付け中に上記慣性駆動部材の検出した角度運動に基づいて、各トルクインパルスにおける一つ以上の締付けパラメータの一つ又は複数の瞬時値を確認する手段を備え、
上記圧力空気供給手段が流量調整装置を備えている、動力工具システム。」である点。
<相違点1>
制御ユニットが、前者では目標トルクレベルの一つ以上の締付けパラメータの一つ又は複数の設定値を含む所望の締付け計画に従ってプログラム可能であって、各トルクインパルスにおいて確認した一つ以上の締付けパラメータの一つ又は複数の瞬時値を目標トルクレベルの設定された一つ又は複数のパラメータ値と比較する手段を備え、1又は2以上の締付けパラメータの瞬時値が締付け目標レベルに到達するように、流量調節装置が調整されてインパルスレンチの動力減が達成されるように配置されるのに対し、後者ではどのように制御するのか不明である点。
<相違点2>
圧力空気供給手段が、前者では制御ユニットに接続され、そして締付け中に、制御ユニットで決められたゼロとフルパワー流量との間の範囲でモータへの圧力空気の流量を連続して調整するようにされた流量調整装置を備えているのに対し、後者では流量調整手段の作用が不明であるこ点。

5.当審の判断
そこで、上記各相違点について検討する。

5.1 <相違点1>について
刊行物2記載の事項における「動力ナットランナ」が「ねじジョイントの締付け用動力工具システム」と呼ぶことができるものであって、「制御用コンピュータ」が「制御ユニット」であること当業者にとって明白であるから、刊行物2には「ねじジョイントの締付け用動力工具システムにおいて、制御ユニットが、目標トルクレベルの一つ以上の締付けパラメータの一つ又は複数の設定値を含む所望の締付け計画に従ってプログラム可能であって、各トルクインパルスにおいて確認した一つ以上の締付けパラメータの一つ又は複数の瞬時値が目標トルクレベルの設定された一つ又は複数のパラメータ値と比較してこれを上回ったことを検出する手段を備え、1又は2以上の締付けパラメータの瞬時値が締付け目標レベルに到達するように、エアモータへの流量を調節して締付け用動力工具の動力減が達成されるように配置されること。」が記載されているということができる。
刊行物2記載の事項は刊行物1記載の発明と同じく「ねじジョイントの締付け用動力工具システム」に関するから、刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明に適用することは当業者が容易に想到し得るものである。
なお、刊行物2記載の事項では、検出した角度運動に基づく回転数の減少が締付けトルクを示すパラメータであり、回転数の減少によって締付けトルクが目標値を上回ったことを検出しているが、本件発明のように締付けトルクを示すパラメータを設定値と比較する手段を別途備えるようにすることは、当業者が適宜なし得る設計変更の域を出ない。

5.2 <相違点2>について
刊行物2記載の事項では、制御ユニットが締付け中にエアモータへの流量を調整しており、このためには、圧力空気供給手段が制御ユニットに接続され、そして締付け中に、エアモータへの圧力空気の流量を制御ユニットで決められた量に調整するようにされた流量調整装置を備えていることは、当業者にとって自明である。
流量を、連続してゼロとフルパワー流量との間の範囲で調整することは、流量調整ユニットの使用上、従来より周知かつ慣用であるから、刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明に適用した場合に、流量調整ユニットをしてゼロとフルパワー流量との間の範囲で流量を調整させることは、当業者が容易になし得る設計である。

5.3 まとめ
本件発明には、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項及び従来周知の技術事項に基づいて普通に予測される範囲を超える格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本件発明は、当審の拒絶理由で指摘したように、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、当審の拒絶理由通知で指摘したように、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願は拒絶すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
.
 
審理終結日 2013-08-30 
結審通知日 2013-09-04 
審決日 2013-09-24 
出願番号 特願2006-546925(P2006-546925)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 八木 誠  
特許庁審判長 豊原 邦雄
特許庁審判官 野村 亨
刈間 宏信
発明の名称 ねじジョイントの締付け用動力工具システム  
代理人 浜野 孝雄  

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