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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1284691
審判番号 不服2012-23492  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-28 
確定日 2014-02-13 
事件の表示 特願2008-552485「視覚システム付き試料処置装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年8月9日国際公開,WO2007/089702,平成21年7月9日国内公表,特表2009-525467〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成19年1月29日(パリ条約による優先権主張日 平成18年1月30日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成23年9月9日付けで拒絶理由が通知され,平成24年3月8日付けで手続補正がなされ,同年7月30日付で拒絶査定がされたのに対し,同年11月28日に拒絶査定不服の審判請求がされるとともに,同日付で手続補正(以下,「本件補正」という。)がなされた。これに対し,当審より平成25年5月14日付けで審尋をしたが,請求人から回答がなかったものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正後の請求項7に係る発明
本件補正により,装置の発明である補正前の請求項8は,請求項7として,
「【請求項7】
試料取扱装置において、
液体試料を保持することができる少なくとも1つのピペット先端部であって、前記ピペット先端部に対して前記液体試料の吸引又は分注を許容する、ピペット先端部と、
前記ピペット先端部の少なくとも一部の二次元画像を捕捉するために配置されている画像捕捉装置(11)を有する機械視覚システム(20)であって、前記試料処理過程の結果として前記少なくとも1つのピペット先端部に対して、前記二次元画像に基づき、前記ピペット先端部と関係する凝塊の存在又は不在、及び、前記液体試料の吸引又は分注の確認を許容することができる、機械視覚システムとを備えており、
前記機械視覚システムが、前記二次元画像を分析し且つ前記液体試料内の凝塊を検出する画像分析器(21)を有する試料取扱装置。
」と補正された。なお,下線は補正箇所を示すものであるが,「不在、及び、前記液体試料の吸引又は分注の確認をを許容する」の補正部分については,当審において下線を引いたものである。

2 補正事項について
(1)補正事項1
補正前の「前記二次元画像に基づき、前記ピペット先端部と関係する凝塊の存在又は不在の確認、及び、前記液体試料の吸引又は分注を許容することができる」を「前記二次元画像に基づき、前記ピペット先端部と関係する凝塊の存在又は不在、及び、前記液体試料の吸引又は分注の確認を許容することができる」とした補正については,「二次元画像に基づき」「液体試料の吸引又は分注を許容することができる」では技術的に明りょうでないことは明らかであるから,これを「前記液体試料の吸引又は分注の確認を許容する」と補正したものであり,これに伴い,「凝塊の存在又は不在の確認」における「確認」は,「の確認を許容することができる」の表現にまとめれるため,削除したものである。してみれば,当該補正事項は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年改正前特許法」という。)17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(2)補正事項2
「前記機械視覚システムが、前記二次元画像を分析し且つ前記液体試料内の凝塊を検出する画像分析器(21)を有する」を追加した補正については,「機械視覚システム」にさらに限定を付加するものであるから,平成18年改正前特許法17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項7に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3 引用刊行物及びその記載事項
(1)引用刊行物の記載事項
本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-174469号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。なお,以下の摘記事項においては,下記の引用発明1の認定で使用した箇所に下線を付与した。
(1-ア)
「【請求項1】プローブに液を吸引させ、吐出する分注機能を具備する分析装置であって、
上記プローブが液を吸引および/または吐出した状態を、画像処理手段を用いて検知するセンサを備えることを特徴とする分析装置。」

(1-イ)
「【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1?図5は、本発明の一実施例を示すものである。このうち、図1は、本発明の一実施例に係る分析装置の構成の一例、また、図2は、画像処理による分注状態のモニタの一例の説明に供するものでプローブのモニタ例であり、図3は、画像処理・制御系の構成の一例を示す図である。また、図4、図5はそれぞれ試料容器への応用、反応容器への応用を示す図である。図6については、使用するプローブが取換え使いすてるものでなくとも、透明性を有し、内部の検体試料の画像情報がとり込める場合には適用可能なことを示す。」

(1-ウ)
「【0017】装置1は、さらに、図2,3に併せて示すごとくの制御部を含んで構成することができ、ここでは、本装置1の制御全体を司る制御部として制御ユニット100を有するものとすることができる。該制御ユニットの制御のもと、図1図示の各構成部分は、後述する分注器での液吸引・吐出操作を含んで、検査すべきサンプルに対する所定の分析項目等に応じた順序で動作制御されるものとする。ここに、制御ユニット100は、コンピュータを含んで構成できる。」

(1-エ)
「【0030】計測部80は、分析項目に応じた測定対象物を計測する手段で、たとえば、上記酵素標識試薬と発光試薬による発光反応を利用する場合は、容器11を反応ターンテーブル10上から反応容器移送機構(不図示)により計測部80に移送した後、該計測部において、その酵素標識試薬と発光試薬との発光反応に基づく発光量につき容器11外部から計測を行い、その計測値を得ることができる。」

(1-オ)
「【0032】好適には、本発明非採用の従来の既述の難点を回避するため、液を吸引後、吐出後のプローブを画像処理により、その状態をモニタすることで、液の吸引、吐出の検知を確実に行えるよう、プローブが液体を吸引、吐出した状態を、画像処理手段を用いて検知するセンサを備える構成とする。これがため、本実施例にあっては、そのセンサ(画像センサ)ならびに画像処理手段として、図2および図3に例示するごとくに、たとえば、CCDカメラ130と制御ユニット100に接続された画像処理ユニット101を設け、画像処理により分注状態をモニタする装置を具備させる。該画像処理により分注状態をモニタする装置は、図3に機能ブロックとして表されるように、CCDカメラ130のほか、該CCDカメラ130で取り込む画像情報をデジタルデータに変換するA/D変換器111と、デジタルデータの記憶等に用いられるメモリ112と、画像処理その他のデータ処理を含む処理を実施するためのデータ処理部113とを有するとともに、入力部115と、出力部116と、表示部118と、タイミングコントロール部120とを有して構成することができる。」

(1-カ)
「【0036】好ましくはまた、画像処理により分注状態をモニタする装置は、たとえば、予め設定された液体の吸引量、吐出量の画像情報、ないしはプローブ、試料容器、反応容器の画像情報に対し、測定時にCCDカメラ130で得た画像情報と比較し、上記液体の吸引、吐出が正常に行われたか否かを判断する手段を有し、その判断結果を通知する手段をも有する。ここに、既に撮像して事前に予め取り込まれている画像情報と、実際の分注操作の際の該当する測定時点でCCDカメラ130で得た画像情報との比較・判断、およびその判断結果の通知のための各手段も、上記図2,3の画像処理・制御系(100,101)に含んで構成することができる。当該比較判断(測定、判定手順)処理、および通知処理を実行させるための制御プログラムについても、上記分析装置1における先に触れた図1中のターンテーブル10その他の機構部分等の制御のための制御プログラムと同様、予めプログラム格納部(記憶回路;ROM)に格納しておくことができ、また、その判断結果を通知は、上記したディスプレイ、プリンタ等による表示部118を通じて行わせることができる。」

(1-キ)
図6には,プローブの先端部に液を保持し,液の吸引又は分注を許容すること,及び,CCDカメラ103が,そのプローブ先端部の少なくとも一部の二次元画像を捕捉するように配置されていることが示されている。図6では,CCDカメラに「103」の番号が付与されているが,「CCDカメラ130」と同じものである。


上記引用例1の記載事項を総合すると,引用例1には,以下の発明が記載されていると認められる。
「プローブに液を吸引させ,吐出する分注機能を具備する分析装置であって,上記プローブが液を吸引および/または吐出した状態を,画像処理手段を用いて検知するセンサを備える分析装置において,
そのセンサ(画像センサ)ならびに画像処理手段として,CCDカメラ130と制御ユニット100に接続された画像処理ユニット101を設け,画像処理により分注状態をモニタする装置を具備させ,
該画像処理により分注状態をモニタする装置は,CCDカメラ130のほか,該CCDカメラ130で取り込む画像情報をデジタルデータに変換するA/D変換器111と,デジタルデータの記憶等に用いられるメモリ112と,画像処理その他のデータ処理を含む処理を実施するためのデータ処理部113とを有し,
該プローブの先端部に液を保持し,液の吸引又は分注を許容し,
該CCDカメラ130が,そのプローブ先端部の少なくとも一部の二次元画像を捕捉するように配置されている,分析装置。」(以下,「引用発明1」という。)


(2)本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-242164号公報(以下,「周知例」という。)には,次の事項が記載されている
(ア)
「【0004】従来技術では、分注時に血清中に析出したフィブリンが分注ノズルに詰まり、検体の吸引・吐出を阻害する場合がある。吸引詰まりを起こすと処理が中断されるので、システムの処理効率を低下させる要因となる。」

(イ)
「【0044】図7は、本発明の第6の実施の形態であって、フィブリン検出を映像的に行うフィブリン検出手段を含むシステムの構成および処理手順を示すものである。フィブリンの検出手段は、例えば、CCDカメラ84による血清画像を画像処理する等により実現される。CCDカメラ84の信号は映像認識処理部86で処理され、この処理でフィブリンの存在が検出された検体のみフィブリン除去対象として、フィブリン除去制御部74にその旨の指示を出力する。フィブリン除去後は通常の分注処理を行う。この方法によると全ての検体に対してフィブリン除去操作を行う必要がなくなるのでより効率的かつ経済的である。」


4 対比・判断
(1)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「プローブに液を吸引させ、吐出する分注機能を具備する分析装置」ついて,「液」は「液体試料」であり,それを「吸引させ、吐出する」ことは「取扱」といえるから,引用発明1の「分析装置」は,本願補正発明の「試料取扱装置」に相当する。

イ 引用発明1の「プローブ」は,「液を吸引させ、吐出する分注機能を具備する」ものであるから,本願補正発明の「ピペット」に相当するものであり,引用発明1の「プローブの先端部に液を保持し,液の吸引又は分注を許容」することは,本願補正発明の「液体試料を保持することができる少なくとも1つのピペット先端部であって、前記ピペット先端部に対して前記液体試料の吸引又は分注を許容する」ことに相当している。

ウ 本願補正発明の「機械視覚システム(20)」について,本願明細書で「試料処理装置1は、ピペットヘッド12、マニプレータ14、又は装置1の他の部分の様な、試料処理装置1の様々な部分の動作を調整し又は他のやり方で制御する制御器20を含んでいる。更に、制御器20は、画像捕捉装置11と画像分析器21を含んでいる機械視覚システムを有している。」(【0019】)と記載されていることから,「視覚システム」に制御機構が備わったものを「機械視覚システム(20)」としている。
一方,引用発明1の「制御ユニット100」の機能は,引用例1の摘記(1-ウ)を参照するに,上記制御機構と共通するものであるから,引用発明1の「CCDカメラ130と制御ユニット100に接続された画像処理ユニット101を設け,画像処理により分注状態をモニタする装置」は,本願補正発明の「機械視覚システム(20)」に相当しているといえる。

エ 引用発明1の「プローブが液を吸引および/または吐出した状態を、画像処理手段を用いて検知する」は,本願補正発明の「前記試料処理過程の結果として前記少なくとも1つのピペット先端部に対して、二次元画像に基づき」「前記液体試料の吸引又は分注の確認を許容する」ことに相当している。

オ 本願補正発明の「画像分析」とは,本願明細書で「画像分析には、画像の各部分を切断すること、画像に注釈を付けること、2つ又はそれ以上の画像を互いに比較すること、画像に表れた物理的状態を査定すること(例えば、画像情報を使用してホルダ内の試料の量を推定すること)、その他が含まれる。」と記載されており,引用例1の摘記(1-カ)を参照するに,引用発明1の「画像処理その他のデータ処理を含む処理を実施するためのデータ処理部113」で行うことと共通するものである。してみれば,引用発明1の「画像処理その他のデータ処理を含む処理を実施するためのデータ処理部113」は,本願発明の「画像分析器(21)」に相当するといえる。

してみれば,本願補正発明と引用発明1とは,
(一致点)
「試料取扱装置において,
液体試料を保持することができる少なくとも1つのピペット先端部であって,前記ピペット先端部に対して前記液体試料の吸引又は分注を許容する,ピペット先端部と,
前記ピペット先端部の少なくとも一部の二次元画像を捕捉するために配置されている画像捕捉装置を有する機械視覚システムであって,前記試料処理過程の結果として前記少なくとも1つのピペット先端部に対して,前記二次元画像に基づき,前記液体試料の吸引又は分注の確認を許容することができる,機械視覚システムとを備えており,
前記機械視覚システムが,前記二次元画像を分析する画像分析器を有する試料取扱装置。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点)
本願補正発明では,二次元画像に基づき「ピペット先端部と関係する凝塊の存在又は不在」の確認を許容することができるもので,二次元画像を分析し且つ「液体試料内の凝塊を検出する」ものであるのに対し,引用発明1では,「凝塊」についての特定がない点。

(2)当審の判断
周知例に記載されているように,生化学検査分野で,分注作業を行う際に好ましくない凝塊(周知例では「血清中に析出したフィブリン」)の存在又は不存在の検出を,CCDカメラによる画像の画像処理によって行うことは,本願の優先日前に当業者において周知技術といえる。
一方,引用例1の摘記(1-イ)の「検体試料」,(1-エ)の「酵素標識試薬」及び「発光試薬」との記載から,引用発明1において分注されるものは,生化学検査関連の液体であることは明らかであり,分注作業を行う際に好ましくない凝塊が生じる得ることは引用発明1においても当然考慮される課題であり,当該課題を解決するために,引用発明1において,CCDの二次元画像を,液体試料の吸引又は分注の確認に使用するだけでなく,凝塊の存在又は不在の確認にも使用すること,すなわち,二次元画像に基づき「ピペット先端部と関係する凝塊の存在又は不在」の確認を許容することができるようにすること,二次元画像を分析し且つ「液体試料内の凝塊を検出する」ことは,上記周知技術を鑑みれば,当業者が容易になし得たことである。
そして,本願補正発明に基づく効果として,引用例1の記載事項及び周知技術から当業者が予期し得ない格別顕著な効果は認められない。

したがって,本願補正発明は,引用発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 まとめ
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。


第3 本願発明について

1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されることとなるので,本願の請求項に係る発明は,平成24年3月8日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定されるものであるところ,装置の発明である請求項8に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。
「【請求項8】
試料取扱装置において、
液体試料を保持することができる少なくとも1つのピペット先端部であって、前記ピペット先端部に対して前記液体試料の吸引又は分注を許容する、ピペット先端部と、
前記ピペット先端部の少なくとも一部の二次元画像を捕捉するために配置されている画像捕捉装置(11)を有する機械視覚システム(20)であって、前記試料処理過程の結果として前記少なくとも1つのピペット先端部に対して、前記二次元画像に基づき、前記ピペット先端部と関係する凝塊の存在又は不在の確認、及び、前記液体試料の吸引又は分注を許容することができる、機械視覚システムと、を備えている試料取扱装置。」

2 引用刊行物及びその記載事項
本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平10-227797号公報(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。なお,以下の摘記事項においては,下記の引用発明2の認定で使用した箇所に下線を付与した。
(2-ア)
「【0021】分析ユニットは、図2(a)に示すように撹拌アーム11,乾燥ノズル12,洗浄ノズル13,回転軸15を中心として回動する分柱アーム14に設けられたプローブ16及びサンプラ17等で構成されており、入力部4を介して入力された動作シーケンスに基づいて、生化学検査,免疫血清検査等を行うようになっている。
【0022】また、この分析ユニットには、前記撹拌アーム11,乾燥ノズル12,洗浄ノズル13等の近傍に、これらの動作状態を撮像するための各撮像部10が設けられている。また、撮像部10は、図2(b)に示すように前記ダストカバー2の裏面部にも設けられており、これにより、分析ユニット全体を撮像するようになっている。
【0023】この撮像部10としては、いわゆる固体イメージセンサ(CCDイメージセンサ)が用いられており、前記各部或いは分析ユニット全体の動作状態のカラー撮像を行うようになっている。そして、この各撮像出力は、本体1内に設けられた画像処理部を介して表示部3に供給されるようになっており、オペレータ等は、この表示部3に表示される画像により分析ユニットの動作状態を確認可能となっている。
【0024】次に、当該第1の実施の形態に係る自動分析装置は、図3に示す電気的構成を有しており、撮像部10からの分析ユニットの各部、或いは分析ユニット全体の撮像信号を所定の利得でそれぞれ増幅する各増幅回路20と、この各増幅回路20からの撮像信号に対してそれぞれ所定の画像プロセス処理を施す画像処理部21と、ダストカバー2の前面部2aに設けられた入力部4を介してオペレータにより指定された1つ或いは複数の画像に対応する撮像信号を選択して出力するセレクタ22と、セレクタ22で選択された撮像信号による画像を、ダストカバー2の前面部2aに設けられた表示部3に表示制御する表示制御部23とを有している。
【0025】また、画像処理部21からの撮像信号のうち、入力部4を介してオペレータにより指定された画像に対応する撮像信号を、例えばハードディスクや光磁気ディスク等の記録媒体に記録し再生する記録再生部25と、拡大,縮小,パン,チルト等のオペレータにより指定された撮像状態に各撮像部10を制御し、セレクタ22の選択状態を制御すると共に、分析メニューや分析結果を示すデータ等を分析ユニットの画像に重畳して表示するように表示制御部23を制御する他、当該自動分析装置全体の制御をする制御部24とを有している。」

(2-イ)図2(a)には,分柱アーム14に設けられたプローブ16の先端部に液を保持し,液の吸引又は分注を許容すること,及び,撮像部10の一つが,そのプローブ16の先端部の少なくとも一部の二次元画像を捕捉するように配置されていることが示されている。

上記引用例2の記載事項を総合すると,引用例2には,以下の発明が記載されていると認められる。
「撹拌アーム11,乾燥ノズル12,洗浄ノズル13,回転軸15を中心として回動する分柱アーム14に設けられたプローブ16及びサンプラ17等で構成されており,入力部4を介して入力された動作シーケンスに基づいて,生化学検査,免疫血清検査等を行うようになっている分析ユニットにおいて,
これらの動作状態を撮像するための各撮像部10が設けられており,この撮像部10としては,いわゆる固体イメージセンサ(CCDイメージセンサ)が用いられており,前記各部或いは分析ユニット全体の動作状態のカラー撮像を行うようになっており,この各撮像出力は,本体1内に設けられた画像処理部を介して表示部3に供給されるようになっており,オペレータ等は,この表示部3に表示される画像により分析ユニットの動作状態を確認可能となっており,
画像処理部21からの撮像信号のうち,入力部4を介してオペレータにより指定された画像に対応する撮像信号を,例えばハードディスクや光磁気ディスク等の記録媒体に記録し再生する記録再生部25と,拡大,縮小,パン,チルト等のオペレータにより指定された撮像状態に各撮像部10を制御し,セレクタ22の選択状態を制御すると共に,分析メニューや分析結果を示すデータ等を分析ユニットの画像に重畳して表示するように表示制御部23を制御する他,自動分析装置全体の制御をする制御部24とを有し,
上記分柱アーム14に設けられたプローブ16の先端部に液を保持し,液の吸引又は分注を許容し,
上記撮像部10の一つが,そのプローブ16の先端部の少なくとも一部の二次元画像を捕捉するように配置されている,分析ユニット。」(以下,「引用発明2」という。)

3 対比・判断
(1)対比
ア 引用発明2の「プローブ16」は,「分柱アーム14に設けられ」ていることから,本願発明の「ピペット」に相当するものであり,引用発明2の「分析ユニット」は,分注することを含むもので試料を取扱っているといえるから,本願発明の「試料取扱装置」に相当している。

イ 本願発明の「機械視覚システム(20)」については,本願補正発明と同様,本願明細書の【0019】の記載から,「視覚システム」に制御機構が備わったものを「機械視覚システム(20)」としている。
一方,引用発明2の「制御部24」は「画像処理部21からの撮像信号のうち,入力部4を介してオペレータにより指定された画像に対応する撮像信号を,例えばハードディスクや光磁気ディスク等の記録媒体に記録し再生する記録再生部25と、拡大,縮小,パン,チルト等のオペレータにより指定された撮像状態に各撮像部10を制御し,セレクタ22の選択状態を制御すると共に,分析メニューや分析結果を示すデータ等を分析ユニットの画像に重畳して表示するように表示制御部23を制御する他,自動分析装置全体の制御をする」ものであるから,引用発明2において「撮像部10」と「制御部24」を備えたものは,本願発明の「機械視覚システム(20)」に相当しているといえる。

ウ 本願発明の「前記二次元画像に基づき」「前記液体試料の吸引又は分注を許容する」については,上記「第2」「2 補正事項について」の「(1)補正事項1」で請求人も補正しているように明りょうなことといえないが,引用発明2の「前記各部或いは分析ユニット全体の動作状態のカラー撮像を行うようになっており,この各撮像出力は,本体1内に設けられた画像処理部を介して表示部3に供給されるようになっており,オペレータ等は,この表示部3に表示される画像により分析ユニットの動作状態を確認可能となっており」において,各部は分柱アームに設けられたプローブのことでもあり,その動作状態を撮像した画像に基づいて確認していることから,本願発明の「前記試料処理過程の結果として前記少なくとも1つのピペット先端部に対して、前記二次元画像に基づき」「前記液体試料の吸引又は分注を許容する」ことに相当しているといえる。

してみれば,本願発明と引用発明2とは,
(一致点)
「試料取扱装置において,
液体試料を保持することができる少なくとも1つのピペット先端部であって,前記ピペット先端部に対して前記液体試料の吸引又は分注を許容する、ピペット先端部と,
前記ピペット先端部の少なくとも一部の二次元画像を捕捉するために配置されている画像捕捉装置を有する機械視覚システムであって,前記試料処理過程の結果として前記少なくとも1つのピペット先端部に対して,前記二次元画像に基づき,前記液体試料の吸引又は分注を許容することができる,機械視覚システムと,を備えている試料取扱装置。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点)
本願発明では,二次元画像に基づき「ピペット先端部と関係する凝塊の存在又は不在の確認」することができるのに対し,引用発明2では,「凝塊」についての特定がない点。

(2)当審の判断
上記「第2」「4 対比・判断」の「(2)当審の判断」で記載したように,生化学検査分野で,分注作業を行う際に好ましくない凝塊の存在又は不存在の検出を,CCDカメラによる画像の画像処理によって行うことは,本願の優先日前に当業者において周知技術である(周知例【0004】及び【0044】参照)。
一方,引用発明2は「生化学検査,免疫血清検査等を行う」ものであるから,分注作業を行う際に好ましくない凝塊が生じる得ることは引用発明2においても当然考慮される課題であり,当該課題を解決するために,引用発明2においても,CCDの二次元画像を,液体試料の吸引又は分注の許容に使用するだけでなく,凝塊の存在又は不在の確認にも使用すること,すなわち,二次元画像に基づき「ピペット先端部と関係する凝塊の存在又は不在の確認」することができるようにすることは,上記周知技術を鑑みれば,当業者が容易になし得たことである。
そして,本願発明に基づく効果として,引用例2の記載事項及び周知技術から当業者が予期し得ない格別顕著な効果は認められない。

したがって,本願発明は,引用発明2及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり,審決する。
 
審理終結日 2013-09-19 
結審通知日 2013-09-20 
審決日 2013-10-03 
出願番号 特願2008-552485(P2008-552485)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野村 伸雄  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 三崎 仁
信田 昌男
発明の名称 視覚システム付き試料処置装置  
代理人 北来 亘  
代理人 星野 修  
代理人 小野 新次郎  
代理人 小林 泰  
代理人 富田 博行  

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